JPH06196734A - 半導体太陽電池の製造方法及びその半導体太陽電池 - Google Patents

半導体太陽電池の製造方法及びその半導体太陽電池

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JPH06196734A
JPH06196734A JP43A JP34495792A JPH06196734A JP H06196734 A JPH06196734 A JP H06196734A JP 43 A JP43 A JP 43A JP 34495792 A JP34495792 A JP 34495792A JP H06196734 A JPH06196734 A JP H06196734A
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zinc oxide
semiconductor
substrate
transparent
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Jo Toyama
上 遠山
Katsumi Nakagawa
克己 中川
Toshihiro Yamashita
敏裕 山下
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    • Y02E10/50Photovoltaic [PV] energy

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、太陽光を有効に利用でき高い変換
効率が得られ、しかも半導体層と金属層の直接の接触や
欠陥箇所でのリーク電流が防止でき、信頼性が高く、さ
らには、安価である等とした薄膜半導体太陽電池の製造
方法を提供することを目的とする。 【構成】 基板101上に、表面が光に対して高い反射
率を有する金属層102、凹凸状の透明層103、半導
体層104、透明な電極層108をその順序で形成する
半導体太陽電池の製造方法において、前記透明層103
を形成する際に、酸化亜鉛層を堆積した後に、該酸化亜
鉛層の表面が少なくとも2価カルボン酸を含む溶液に浸
される工程を含むことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高性能で信頼性が高
く、しかも量産が可能な半導体太陽電池の製造方法及び
その半導体太陽電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】薄膜太陽電池は、結晶シリコン太陽電池
に比べて変換効率が低く、しかも長期の使用に対する信
頼性が欠如している等、性能上に問題があり、汎用性に
乏しいものであったが、近年、その性能改善のための種
々の提案がなされている。その一つが入射光の有効利用
を図るべく裏面反射層を形成する手法である。すなわ
ち、基板表面の光の反射率を高めることにより、薄膜半
導体層で吸収されなかった太陽光を、再び薄膜半導体層
に戻すようにしたものである。
【0003】この場合、基板が透明であって該基板の側
から太陽光を入射させる構成のときには、薄膜半導体の
表面に形成する電極を銀(Ag)、アルミニウム(A
l)、銅(Cu)など反射率の高い金属で形成し、薄膜
半導体層の表面側から太陽光を入射させる構成のときに
は、前記と同様の金属の層を基板上に形成した後半導体
層を形成している。また、金属層と薄膜半導体層の間に
適当な光学的性質を有する透明層を介在させ、多重干渉
効果によりさらに反射率を高める手法もある。
【0004】図2(a)及び図2(b)は、シリコンと
各種金属の間に透明層として酸化亜鉛(ZnO)を介在
させなかった場合及び介在させた場合を夫々示すもので
あり、ZnOを介在させた場合に、反射率が如何なる態
様で高くなるかを示したシミュレーションの結果であ
る。これを裏付けるものとして、特公昭60−4187
8号公報には、前記透明層を用いることにより、薄膜太
陽電池の信頼性を高めるべく、半導体層と金属層が合金
化することを防止できる旨の記載がある。また、米国特
許第4,532,372号および第4,598,306
号には、適当な抵抗を有する透明層を用いることによ
り、仮に半導体層に短絡箇所が発生しても電極間に過剰
な電流が流れるのを防止できる旨の記載がある。
【0005】さらに、薄膜太陽電池の変換効率を高める
ための他の解決手段として、太陽電池の表面又は/及び
裏面反射層との界面を微細な凹凸状とする(テクスチャ
ー構造)手法がある。かかるテクスチャー構成とする
と、太陽光は太陽電池の表面又は/裏面反射層との界面
で散乱され、更に半導体の内部に閉じ込められ(光トラ
ップ効果)、半導体中で有効に吸収できることになる。
従って、基板が透明な場合には、基板上の酸化錫(Sn
2)等の透明電極の表面をテクスチャー構造にする一
方、薄膜半導体の表面側から太陽光を入射する場合に
は、裏面反射層に用いる金属層の表面をテクスチャー構
造とすればよい。
【0006】M.Hirasaka, K.Suzuk
i, K.Nakatani, M.Asano,
M.Yano, H.Okaniwa等は、Alを基板
温度や堆積速度を調整して堆積することにより裏面反射
層用のテクスチャー構造が得られる旨を開示している
( Solar Cell Materials 20
(1990)pp99−110)。
【0007】図3は、かかるテクスチャー構造の裏面反
射層を用いた場合における入射光の吸収の増加の例を示
すものである。同図の曲線(a)は、金属層として平滑
なAgを用いた場合におけるa−Si太陽電池の分光感
度、曲線(b)は、テクスチャー構造のAgを用いた場
合における分光感度を示す。さらに、金属層及び透明層
の2層にて裏面反射層を構成する手法と、テクスチャー
構造の手法を組み合わせたものとして、米国特許第4,
419,533号には、金属層の表面がテクスチャー構
造に形成され、且つその表面上に透明層を形成するよう
にした裏面反射層が開示されている。そして、本明細書
には、かかる組み合わせた手法を用いた構成とすること
により、太陽電池の変換効率が著しく向上できる旨記載
されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記組
合せの手法による従来技術は、本発明者等の知見によれ
ば、実際には、上記明細書に記載された内容の効果が得
られないという実証を得た。例えば、薄膜半導体の堆積
条件によっては、透明層が設けられているにも拘らず、
形成された太陽電池の高温高湿下での使用に対する十分
な信頼性が得られない。このため、薄膜半導体太陽電池
は、低価格にて生産できるという有利性を生かせること
ができず、太陽光発電用としての本格的な普及を妨げる
要因となっていた。
【0009】具体的には、上記従来の裏面反射層につい
ては以下のような問題点がある。 (1) 金属層のテクスチャー構造化に伴う反射率の低
下 金属層をテクスチャー構造とすると、表面で反射される
光は多方向に乱反射されるので、この点を考慮して、あ
らゆる方向に反射された光を集め得る積分球を備えた反
射率測定装置を用いて測定しても、テクスチャー構造と
された金属層は平滑な金属に比べ、反射率がかなり低下
する傾向がある。特に、該金属層が、AlやCuから成
る場合にはその傾向が著しい。従って、薄膜半導体を通
過した光を有効に反射して薄膜半導体に送り返すことが
できず、この結果、太陽電池の変換効率が期待したほど
高くならない。 (2) 透明層表面への金属の拡散 裏面反射層の上に薄膜半導体を堆積する際には、通常2
00度以上の基板温度が必要とされるが、かかる温度で
は金属原子が透明層を貫通して透明層の表面まで拡散す
ることもある。かかる金属原子が薄膜半導体層と直接接
触すると、透明層の機能が不十分となり信頼性の低下を
招く要因となる。 (3) 後の使用上の問題 薄膜半導体層にはピンホール等の欠陥箇所が生じるの
で、かかる欠陥箇所を介して薄膜半導体表面の電極と透
明層とが直接的に接触することもある。従って、透明層
は適度な抵抗を有していない場合には、この接触部分で
の不可避的な過剰な電流が流れる。
【0010】本発明は、上記従来技術の課題を解決する
べくなされたものであり、入射する太陽光を有効に利用
できて高い変換効率が得られ、しかも半導体層と金属層
の直接の接触や欠陥箇所でのリーク電流が防止でき、信
頼性が高く、さらには、安価である等とした薄膜半導体
太陽電池の製造方法及びその半導体太陽電池を提供する
ことを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するべ
く、本発明に係る製造方法は、基板上に、表面が光に対
して高い反射率を有する金属層、凹凸状の透明層、半導
体層、透明な電極層をその順序で形成する半導体太陽電
池の製造方法において、前記透明層を形成する際に、酸
化亜鉛層を堆積した後に、該酸化亜鉛層の表面が少なく
とも2価カルボン酸を含む溶液に浸される工程を含むこ
とを特徴とする。
【0012】また、本発明に係る太陽電池は、少なくと
もその表面が光に対して高い反射率を有し、かつ、平滑
な金属層から成る基板と、該基板上に形成される透明層
から成る裏面反射層と、該裏面反射層上に形成される半
導体層と、該半導体層上に形成される透明な電極とから
成る半導体太陽電池において、前記透明層は、少なくと
も水酸化亜鉛又は酸化亜鉛と水酸化亜鉛を含む物質から
成り、かつ、その表面が微細な凹凸状に形成されたこと
を特徴とする。
【0013】
【作用】以下に、本発明に係る製造方法の基本概念を説
明する。図1は、本発明に係る太陽電池の製法の手順の
一例を示すものである。まず、同図(a)に示すよう
に、導電性の基板101を用意するが、該基板101の
表面には反射率の高い金属層102が形成されている。
ここで、基板101自体が十分に反射率の高い材料から
成る場合は、金属層102は省略しても良い。なお、少
なくとも金属層102の表面は、平滑面となるように形
成する。
【0014】次いで、同図(b)に示すように、該金属
層102の上にその表面が平滑な酸化亜鉛透明層103
aを形成する。続いて、同図(c)に示すように、酸化
亜鉛透明層103aの表面を容器110内に貯溜された
2価カルボン酸溶液111に浸す。その結果、酸化亜鉛
と溶液の間で化学反応が起こり、酸化亜鉛透明層103
aの表面が少なくとも水酸化亜鉛又は酸化亜鉛と水酸化
亜鉛を含む物質から成る微細な凹凸形状を持った透明層
103が形成される(同図(d)参照)。
【0015】こうして得られた透明層103は、半導体
接合104を透過した太陽光に対しては透明であり、適
度な電気抵抗を有し、その表面はテクスチャー構造とな
っている。透明層103上の半導体接合104として
は、例えばpin型のa−Si太陽電池を用いる。ここ
で、105はn型a−Si、106はi型a−Si、1
07はp型a−Siである。
【0016】半導体接合104が薄い場合には、図1
(e)に示すように、半導体接合104の全体が、透明
層103と同様のテクスチャー構造を呈し易い。なお、
108は表面の透明電極であり、該透明電極108の上
には、櫛型の集電電極109が設けられている。
【0017】
【実施例】(実施例1)本実施例においては、図1に示
すものと同様の構成のpin型a−Si(ただし金属層
102は設けなかった)太陽電池素子を作製した。ま
ず、図4に示すような装置を用い、基板として、表面を
研磨した5×5cmのサイズで、厚みが1mmのAl板
101を用い、ターゲットとして、酸化亜鉛ターゲット
を用い、基板温度を100度として該基板上に平均的な
厚さが6000Åの酸化亜鉛層103を堆積した。この
場合、酸化亜鉛の表面は平滑な光沢面となった。
【0018】次に、酸化亜鉛の表面をシュウ酸(2水和
物)3wt%を含む水溶液中に90秒間浸した後、1分
間水洗いを行い、110℃の乾燥器に30分間投入し
た。SEM観察によると、6000〜11000Å程度
の凹凸が見られ、外観上は白濁していた。続いて、該下
部電極の形成された基板を市販の容量結合型高周波CV
D装置(アルパック社製CHJ−3030)にセットし
た。排気ポンプにて、反応容器の排気管を介して、荒引
き、高真空引き操作を行った。この時、基板の表面温度
が250℃になるように、温度制御機構により制御し
た。
【0019】十分に排気が行われた時点で、ガス導入管
を介して、反応容器内にSiH4 を300sccm、S
iF4 を4sccm、PH3 /H3 (1%H3 希釈)を
55sccm、H2 を40sccmの流量で夫々導入
し、スロットルバルブの開度を調整して、反応容器の内
圧を1Torrに保持し、圧力が安定したところで、直
ちに高周波電源より200Wの電力を投入した。この場
合、プラズマは5分間持続させた。これにより、n型a
−Si層105が透明層103上に形成された。
【0020】再び反応容器内を排気した後に、ガス導入
管を介して、反応容器内に新たにSiH4 を300sc
cm、SiF4 を4sccm、H2 を40sccmの流
量で夫々導入する一方、スロットルバルブの開度を調整
して、反応容器の内圧を1Torrに保持した。該反応
容器の圧力が安定したところで、直ちに高周波電源より
150Wの電力を投入し、プラズマを40分間持続させ
た。これによりi型a−Si層106がn型a−Si層
105上に形成された。
【0021】再び反応容器内を排気をした後に、さらに
新たにガス導入管を介して、反応容器内にSiH4 を5
0sccm、BF3 /H2 (1%H2 で希釈)を50s
ccm、H2 を500sccmの流量で夫々導入し、ス
ロットルバルブの開度を調整して、反応容器の内圧を1
Torrに保持し、圧力が安定したところで、直ちに高
周波電源より300Wの電力を投入した。プラズマは2
分間持続させた。これによりp型μc−Si層107が
i型a−Si層106上に形成された。 次に、試料を
高周波CVD装置より取り出し、抵抗加熱の真空蒸着装
置にてITOを堆積した後、塩化鉄水溶液を含むペース
トを印刷し、所望の透明電極108のパターンを形成し
た。更にAgペーストをスクリーン印刷して集電電極1
09を形成し薄膜半導体太陽電池を完成した。
【0022】かかる手順で10枚の試料を作製し、AM
1.5(100mW/cm2 )の光照射下にて特性評価
を行ったところ、光電変換効率で9.9±0.2%とい
う優れた値を有するものが再現性良く得られた。なお、
前記作製された太陽電池を、温度が50度、湿度が90
%の環境下で1000時間放置したが、変換効率は9.
6±0.6%となってほとんど低下が認められなかっ
た。
【0023】(実施例2)本実施例においては、図1に
示すものと同様の構成ではあるが半導体層104がpi
n型a−SiGe太陽電池素子を作製した。まず、表面
を研磨した5×5cm厚さ1mmのステンレス板101
にメッキ法にて厚さ1500Åの表面が平滑なAgの金
属層102を形成した。次いで、DCマグネトロンスパ
ッタ法にて、基板温度を200℃として酸化亜鉛を堆積
させた。該堆積した酸化亜鉛層は、平均的な厚さが70
00Åであり、透明でかつ表面が平滑なものであった。
【0024】次に、酸化亜鉛層の表面をシュウ酸(2水
和物)/イソプロピルアルコール=2g/98gの混合
溶液に15分間浸し、i層として、Si2 5 を50s
ccm、GeH4 を10sccm、H2 を300scc
mの流量で導入し、反応容器の内圧を1Torrに保持
し、100Wの電力を投入し、プラズマを10分間持続
させた。半導体層としてa−SiGeを用いた以外は実
施例1と同様にして10枚の試料を作製した。これらの
試料をAM1.5(100mW/cm2 )光照射下にて
特性評価を行ったところ、光電変換効率で8.6±0.
3%と優れた変換効率が再現性良く得られた。
【0025】(実施例3)本実施例においては、酸化亜
鉛の堆積を行う工程までは上記実施例2と同様の手順で
行った。次に、酸化亜鉛表面を2wt%のマレイン酸水
溶液/10wt%の酢酸水溶液=1/3の混合溶液に3
分間浸した後、1分間水洗いし、更に210℃、大気中
で1時間アニールを行った。
【0026】その後、再び実施例2の場合と同様の手順
で10枚の試料を作製した。これらの試料をAM1.5
(100mW/cm2 )の光照射下にて特性評価を行っ
たところ、光電変換効率で8.3±0.3%という優れ
たものとなり、しかも再現性も良いものが得られた。 (実施例4)本実施例は、図7に示す装置を用いて連続
的に裏面反射層の形成を行った。ここで、基板の送り出
し室703には洗浄済みのステンレスシート702の卷
装ロール701がセットされており、該ステンレスシー
トは幅が350mm、厚さが0.2mm、長さが500
mである。
【0027】前記卷装ロール701から引き出されたス
テンレスシート702は、金属層堆積室704、透明層
堆積室705、真空シール室750a、750b、75
0c、溶液浸し室720、水洗い室730、乾燥室74
0を順次経て基板巻き取り室706に送られるようにし
た。前記シート702は、各堆積室において、基板ヒー
ター707、708により所望の温度に加熱できるよう
にした。
【0028】前記堆積室704のターゲット709は純
度99.99%のAlを用い、DCマグネトロンスパッ
タリング法によりシート702上にAl層を堆積した。
堆積室705のターゲット710は純度99.5%の酸
化亜鉛で、DCマグネトロンスパッタリング法により連
続的に酸化亜鉛層を堆積した。この場合、ターゲット7
10は堆積速度や、所望の膜厚の関係から4枚セットし
た。
【0029】透明層堆積室705と真空シール室750
aの間、真空シール室750aと真空シール室750b
との間、及び真空シール室750cと溶液浸し室720
の間にはそれぞれステンレス製の一対のローラ760
a、760b、760c、760dが配置され、各一対
のローラはステンレスシート702の搬送および各室間
のしきいとしての機能を有している。
【0030】前記各真空シール室750a、750b、
750cは、それぞれ不図示の真空排気系に接続し、透
明層堆積室705内の真空度を保持するように排気し
た。溶液浸し室720には、シュウ酸(2水和物)1w
t%の水溶液を入れた。このシュウ酸水溶液中にはステ
ンレスシート702が3分間で通過するように不図示の
液面制御を行った。水洗い室730には純水を3リット
ル/分の流量で供給し、透明層表面の洗浄を行った。乾
燥室740中では、ヒーター741にて所望の温度に加
熱を行い、不図示のファンによって熱風を透明層表面に
吹き付けた。
【0031】上記のように構成された装置を用いて裏面
反射層の形成を行った。ステンレスシート702は送り
速度を毎分10cmとし、基板ヒーター708のみを用
いて酸化亜鉛堆積時の基板温度を100度となるように
調整した。乾燥室704にArを流してその圧力を1.
5mTorrとし、各々のカソードに500VのDC電
圧を加えた。ターゲット709には6アンペア、ターゲ
ット710には夫々4アンペアの電流を流し、乾燥室内
の温度は100度±5度となるように温度調節を行っ
た。巻き取られたシートを調べると、Al層の厚さは3
200Å、酸化亜鉛層の厚さは平均7600Åであり、
酸化亜鉛層の表面は白濁していた。
【0032】図8は、二層構造の半導体層を有する太陽
電池、すなわちa−Si/a−SiGeタンデム太陽電
池を示すものである。同図において、801は基板、8
02は金属層、803は透明層、804はボトムセル、
808はトップセルである。さらに805、809はn
型a−Si層、807、811はp型μc−Si、80
6はi型a−SiGe層、810はi型a−Si層であ
る。該各薄膜半導体層は、米国特許第4,492,18
1号に記載されているようなロール・ツー・ロール型成
膜装置を用いて連続的に製造した。
【0033】なお、812は透明電極、813は集電電
極であり、該透明電極812は、図7に示す装置に類似
したスパッタリング装置を用いて堆積した。透明電極8
12のパターンニング及び集電電極813の形成を行っ
た後にシート702を切断した。こうして全工程は連続
的に処理された。上記方法で100枚の試料を作製し、
AM1.5(100mW/cm2 )の光照射下にて特性
評価を行ったが、光電変換効率は11.3±0.3%と
いう優れたものとなり、しかも再現性が良かった。な
お、これらの太陽電池を温度50度湿度90%の環境下
に1000時間放置したが変換効率は10.7±0.6
%とほとんど劣化が認められなかった。
【0034】また、上記方法で作製した他の試料である
100枚について、開放状態にてAM1.5相当の光に
600時間照射したが、光電変換効率は10.5±0.
4%という値となり光による劣化も少なかった。これ
は、半導体層をタンデム構成とすることにより、より波
長の長い光まで有効に吸収され、出力電圧をより高くす
ることができたためである。
【0035】(実施例5)表面を研磨したCu板を基板
として用いた以外は実施例1と同様の方法で裏面反射層
を形成した。この基板の上にスパッタリング法にてCu
を0.2μm、インジューム(In)を0.4μmの各
厚みで堆積した。次いでこの試料を石英ガラス製のベル
ジャーに移し400度に加熱しながらベルジャー内に水
素で10%に希釈したセレン化水素(H2 Se)を流
し、CuInSe2 (CIS)の薄膜を形成した。該薄
膜の上に再びスパッタリング法によりcdSの層を0.
1μmの厚みで堆積した後250度でアニールし、これ
によりp/n接合を形成した。該接合部の上に実施例1
と同様にして透明電極、集電電極を形成した。
【0036】このように作製された太陽電池をAM1.
5(100mW/cm2 )の光照射下にて特性評価を行
ったが、変換効率が9.4%という優れたものが得られ
た。すなわちa−Si以外の薄膜半導体に対しても本発
明の効果を奏することがわかった。上記各実施例以外
に、本発明の効果をさらに検証するべく本発明者は以下
の各実験例について夫々の評価を行った。
【0037】(実験例1)まず、5×5cmのステンレ
ス基板(SUS430)上にDCマグネトロンスパッタ
法にてAlを1500Å堆積した。この堆積時のステン
レス基板温度は室温に設定した。次いで、該Al層上に
DCマグネトロンスパッタ法にて酸化亜鉛を8000Å
堆積した。該堆積時の基板温度を100℃とした。外部
観察をした結果は、Alの表面は平滑であり光沢があっ
た。また、酸化亜鉛の表面も平滑であり透明であった。
【0038】次に、基板ごと酸化亜鉛の表面を2%シュ
ウ酸水溶液に2分間浸した後、水洗いし、110℃の乾
燥器に約30分間投入し、裏面反射層を形成した。SE
M観察によると、ピッチ7000〜12000Å程度の
凹凸が見られ、外観上は白濁状態となっていた。また、
X線回折によると、水酸化亜鉛結晶と酸化亜鉛の存在が
確認された。
【0039】このようにして形成した裏面反射層の上に
グロー放電分解法にて、SiH4 、PH3 を原料ガスと
してn型a−Si層を200Å、SiH4 を原料ガスと
してi型a−Si層を4000Å、SiH4 、BF3
2 を原料ガスとしてp型微結晶(μc)Si層を10
0Å堆積し半導体接合とした。なお、SiH4等のグロ
ー放電分解法により形成したa−Si中には、10%程
度の水素(H)が含まれるので、一般にはa−Si:H
と表記されるべきものであるが、本明細書中では単にa
−Siと略記する。
【0040】続いて、該半導体接合上に透明電極として
抵抗加熱蒸着法によりITO膜を650Å堆積した。さ
らに、該ITO膜上に銀ペーストで幅300μmの集電
電極を形成した。このようにして得られた半導体太陽電
池を試料1aとした。次に、酸化亜鉛表面を2%シュウ
酸水溶液に浸さなかった以外は、前記試料1aと同様の
手順で試料1bを得た。
【0041】さらに、Alの堆積時の基板温度を300
℃とした以外は、前記試料1aと同様の手順で試料1c
を得た。次に、基板として、ステンレス基板と同サイズ
であってその表面を研磨したAl基板を用い、A1の堆
積を行わなかった以外は、前記試料1aと同様の手順で
試料1dを得た。
【0042】こうして得られた4種の試料1a〜1dを
AM−1.5のソーラーシミュレーターの下で測定し、
太陽電池としての変換効率を評価した。表1はその評価
結果を示すものである。
【0043】
【表1】 上記表1から次のことが理解できる。即ち、 (1) 平滑な酸化亜鉛の膜を2価カルボン酸溶液の一
種であるシュウ酸水溶液に浸すことにより、透明層を有
する裏面反射層を形成した場合には、浸さないで形成し
た場合に比べて変換効率は向上する。 (2) 変換効率の向上効果が最も高いのは、裏面反射
層はAl層が平滑面で、平滑な酸化亜鉛の膜を2価カル
ボン酸溶液の一種であるシュウ酸水溶液に浸した場合で
ある。 (3) 基板として研磨したAlを用いた場合であって
も、平滑なAl層を形成したのと同等の効果がある。
【0044】(実験例2)上記実験例1において、裏面
反射層を形成するAlの代わりにAgを用い、集電電極
を形成しなかった以外は、前記試料1aと同様の手順で
試料2aを得た。また、Agの堆積時の基板温度として
室温の代わりに250度とした以外は前記試料2aと同
様の手順で試料2bを得た。
【0045】前記試料2aについては、Agの表面は平
滑であったが、シュウ酸水溶液に浸した透明層の表面が
テクスチャー構造であるので、裏面反射層全体として
は、若干黄色味を帯びて光沢がなかった。他方、前記試
料2bについては、Agの表面がテクスチャー構造を示
していた。表2は、前記両試料についてのAM−1.5
下での変換効率の測定結果を示すものである。
【0046】
【表2】 表2の結果から、試料2bは著しく変換効率が低いこと
が解る。これは電流電圧特性から短絡が生じているため
と考えられる。さらに両試料をSEMで観察すると、試
料2bでは各所にスポット状の欠陥が観察され、さらに
オージェ分析の結果よりこれらの箇所ではAgが表面ま
で拡散していることが解った。
【0047】(実験例3)上記実験例2において、2%
シュウ酸水溶液の代わりに2%シュウ酸水溶液/10%
酢酸水溶液=1/4を用いた以外は、前記試料2aと同
様の手順で試料3aを得た。該試料3aについてAM−
1.5下で測定すると、変換効率は10.2%であっ
た。すなわち、試料3aについては試料2aとほぼ同様
の変換効率が得られた。
【0048】基板温度を、室温、100度、200度、
300度と順次変えた場合にそれぞれ得られた試料を3
a、3b、3c、3dとした。表3は、これらの試料の
外観、SEM観察の結果をまとめたものである。
【0049】
【表3】 上記表3の結果から、基板温度を高くするに応じてAl
の表面が平滑面からテクスチャー構造へと変化していく
のが理解できる。他の金属層を、他の堆積法にて行って
も概ね同様の傾向がみられた。
【0050】(実験例4)本実験例は、透明層の堆積条
件を変えた場合の例を示したものである。まず、基板と
して、表面を研磨した5cm×5cmのサイズで、厚み
が1mmのステンレス板(sus430)を用いた。次
いで、直径が6インチで純度が99.9%の酸化亜鉛タ
ーゲットを用い、ターゲットと基板との離隔距離を5c
mとして、Arを10sccm流しつつ、圧力を1.5
mTorrに保ち、直流電圧を加えると、プラズマが発
生して1アンペアの電流が流れた。この状態で5分間放
電を継続した。
【0051】基板温度を、室温、100℃とそれぞれ変
えて試料4a、4bとした。表4は、両試料の外観、S
EM観察の結果を示したものである。
【0052】
【表4】 上記表4の結果により、比較的低い温度で平滑な酸化亜
鉛表面が得られことが理解できる。
【0053】次に、本発明に係る半導体太陽電池におけ
る裏面反射層の構成について更に補足的に説明する。 (基板及び金属層)基板としては各種の金属を用いるこ
とができるが、そのうち価格の面からは、ステンレスス
ティール板、亜鉛鋼板、アルミニューム板、銅板等が好
適である。これらの金属板は、一定の形状に切断して用
いても良いし、板厚によっては長尺のシート状の形態で
用いても良い。かかるシート状にすると、コイル状の卷
装が可能となるので連続生産性の面で好適であり、保管
や輸送も容易になる。また、用途によってはシリコン等
の結晶基板、ガラスやセラミックスの板を用いることも
できる。基板の表面は研磨しても良いが、例えばブライ
トアニール処理されたステンレス板のごとく仕上がりの
良いものについはそのまま用いても良い。
【0054】ステンレススティールや亜鉛鋼板のよう
に、それ自体では光の反射率が低い基板、ガラス等の絶
縁性基板の場合には、該基板上に銀やアルミニュームの
ような高反射率の金属層を堆積して用いる。但し、裏面
反射層として用いる場合には、太陽光スペクトル中の短
波長の成分は、既に半導体に吸収されてしまうので、そ
れに比べて長波長の成分に対して反射率が高ければ十分
である。
【0055】反射率がいずれの波長以上の成分に対して
高ければ良いかは、使用される半導体の光吸収係数、膜
厚に依存するが、例えば厚みが4000Åのa−Siを
用いる場合には、この波長のしきい値は約6000Åと
なり、図2に示すように、金属層としては銅が好適であ
る。これを裏からいえば、ガラスやセラミックスのよう
にそれ自体では導電性の低い材料でも、金属層を設ける
ことにより基板として使用可能なものとなる。
【0056】金属層を堆積する手法としては、抵抗加
熱、電子ビームによる真空蒸着法、スパッタリング法、
イオンプレーティング法、CVD法、メッキ法、等が用
いられる。以下に、前記堆積する手法の一例としてスパ
ッタリング法の場合を説明する。図4は、スパッタリン
グ装置の一例を示すものであり、401は堆積室であ
り、該堆積室内は不図示の排気ポンプにより真空排気で
きる。また、堆積室401内には、不図示のガスボンベ
に接続されたガス導入管402を介して、アルゴン(A
r)等の不活性ガスが所定の流量導入されるようになっ
ており、排気弁403の開度を調整すれば、堆積室40
1内は所定の圧力に設定されるようになっている。
【0057】前記堆積室401内には、アノード406
とカソード電極408とが対向するように配置されてお
り、該アノード406の表面には基板404が固定され
ている一方、カソード407の表面にはターゲット40
7が固定されている。なお、該アノード406はその内
部にヒーター405が設けられている。前記ターゲット
407は堆積されるべき金属のブロックであり、通常は
純度99.9%乃至99.999%程度の純金属が用い
られるが、場合により特定の不純物を導入しても良い。
【0058】前記カソード電極408には、電源409
に接続されており、該電源409の種類に応じて、ラジ
オ周波数(RF)や直流(DC)の高電圧を加え、カソ
ード・アノード間にプラズマ410を発生させ得るよう
になっている。このプラズマの作用によりターゲット4
07の金属原子が基板404上に堆積されるようになっ
ている。なお、カソード電極408の内部に磁石を設け
てプラズマの強度を高めたマグネトロンスパッタリング
装置では、堆積速度を高めることができる。
【0059】次に、堆積条件の一例を挙げる。ターゲッ
ト407としては、直径が6インチで純度が99.99
%のAlターゲットを用い、基板404としては、表面
を研磨した5cm×5cmのサイズで、厚みが1mmの
ステンレス板(SUS430)を用いた。ターゲット4
07と基板404との対向間隔は5cmとし、堆積室4
01内にArを10sccm流しつつ、圧力を1.5m
Torrに保った。
【0060】かかる状態で電源409としての500V
の直流電圧を印加したところ、プラズマが発生して2ア
ンペアの電流が流れた。該プラズマ放電は1分間継続し
た。 (透明層及びそのテクスチャー構造)酸化亜鉛透明層の
堆積には、抵抗加熱や電子ビームによる真空蒸着法、ス
パッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法、
スプレーコート法、低級脂肪酸亜鉛等を含む溶液を用い
た塗布−焼成法等が用いられる。ここでは、堆積の一例
としてスパッタリング法を説明する。
【0061】この堆積に際しても上述した図4に示すス
パッタリング装置が使用できる。ただしターゲットとし
ては酸化亜鉛そのものを用いる場合と、亜鉛のターゲッ
トを用いる場合がある。後者の場合では、堆積室にAr
と同時に酸素を流す必要がある(この堆積法は反応性ス
パッタリング法と称される。)次に、上記のいずれかの
方法で堆積された平滑な酸化亜鉛の表面を、少なくとも
2価カルボン酸を含む溶液に浸し、その表面に微細な凹
凸形状を形成させる。2価カルボン酸としては、シュウ
酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸等が用いられる。
2価カルボン酸を含む溶液の溶媒、濃度、温度、浸す時
間等は、後述する好ましいテクスチャー構造が得られる
ように適宜設定する。該溶媒としては、後述する2価カ
ルボン酸と酸化亜鉛との化学反応を阻害しないものであ
ればよく、例えば水、エタノール、メタノール、イソプ
ロピルアルコール等のアルコール等であり、それらの混
合物であってもかまわない。
【0062】該混合物の混合比に関しても後述する好ま
しいテクスチャー構造が得られるように適宜設定すれば
良い。更にまた、2価カルボン酸とともに酢酸、硫酸、
硝酸等の酸、塩化鉄、塩化アルミニウム等の塩、水酸化
カリウム、水酸化アルミニウム等のアルカリ、又はそれ
らの混合物を含んでも差し支えない。この際にも後述す
る2価カルボン酸と酸化亜鉛との化学反応を阻害しない
ものを選び、また、後述する好ましいテクスチャー構造
が得られるように濃度、混合比等を適宜設定すれば良
い。
【0063】また、テクスチャー構造の形成後におい
て、透明層表面に残る物質がその後の半導体層形成に影
響を及ぼす可能性がある場合には、必要に応じて透明層
表面を水等で洗浄してもよい。更に洗浄後、水等が残る
場合には必要に応じて透明層表面を乾燥してもよい。さ
らには、後述する化学反応の過程で透明層表面の酸化亜
鉛または水酸化亜鉛中に取り込まれた水分等を除去する
ために、最終工程でその表面をアニールしてもよい。こ
のときのアニール温度は基板上に形成された平滑な金属
層の種類、アニール雰囲気によって異なるが、例えばA
lを用いて大気中でアニールする場合には、100℃〜
300℃、好ましくは100℃〜250℃、更に好まし
くは、100℃〜200℃に設定する。また、Agを用
いて大気中でアニールする場合には、100℃〜350
℃、好ましくは150℃〜300℃、更に好ましくは、
150℃〜250℃に設定するとよい。なお、アニール
時間については設定したアニール温度によって適宜設定
すればよい。
【0064】ここで少なくとも2価カルボン酸を含む溶
液に浸す一例を挙げる。シュウ酸溶液に浸す平滑な酸化
亜鉛膜は、表面を研磨した5cm×5cmのサイズで厚
みが1mmのステンレス基板(SUS430)上にDC
マグネトロンスパッタ法にてAgを1500Å、基板温
度を室温で堆積した後、同じくDCマグネトロンスパッ
タ法にて酸化亜鉛を8500Å、基板温度100℃で堆
積したものを用いた。シュウ酸溶液は、その溶媒を水と
し、シュウ酸(2水和物)を2wt%含む水溶液を用い
た。この水溶液中に前記酸化亜鉛の膜の表面を1分間浸
した。この時の水溶液の温度は室温とした。
【0065】図5は、SEM観察の結果を示す写真であ
るが、その結果から、予め堆積されていた酸化亜鉛表面
とは異なる結晶が成長し始めているのが分かる。そこで
更に前記シュウ酸水溶液に酸化亜鉛の表面を浸す時間を
2分間としたところ、前記結晶はSEMによる観察では
表面全体に広がっていた。この場合における凹凸ピッチ
は7000〜12000Å程度であり、外観上は若干黄
色味を帯びたものとなっており光沢がなかった。
【0066】図6は、上記のようにして得られた試料
を、X線回折により測定した結果である。同図から、例
えば、2θ=34.4°のピークがZnOに、2θ=3
3.3°のピークがβ−Zn(OH)2 に対応するのを
確認した。この結果から、反応のメカニズムについては
不明だが、酸化亜鉛透明層表面をシュウ酸溶液に浸した
ことにより化学反応が起こり、水酸化亜鉛の結晶が析出
し、表面に微細な凹凸が形成されたと考えられる。
【0067】上記表面が微細な凹凸状を呈した透明層
は、光の透過率が高い程好適ではあるが、半導体に吸収
される波長域の光に対しては透明である必要はない。ま
た、ピンホールの存在による電流を抑制するためには、
透明層には抵抗を持たせた方がよい。ただし、この抵抗
による直列抵抗損失は太陽電池の変換効率に与える影響
を無視し得る範囲である必要がある。かかる観点から単
位面積(1cm2 )当りの抵抗の範囲は、好ましくは1
-6〜10Ω、更に好ましくは10-5〜3Ω、最も好ま
しくは10-4〜1Ωである。この場合、透明層の膜厚は
透明性の点からは薄い程好適であるが、表面にテクスチ
ャー構造を帯有させるためにはその膜厚が平均的には1
000Å以上である必要がある。なお、信頼性の観点か
らはこの膜厚以上のものが必要な場合もある。
【0068】透明層がテクスチャー構造を帯有すると光
閉じ込めが起こるが、その理由は次のように考えられ
る。すなわち、金属層自体がテクスチャー構造を帯有し
ている場合には、該金属層での光の散乱が生じるものと
考えられるが、該金属層が平滑で透明層がテクスチャー
構造を帯有する場合には、半導体の表面及び/又は透明
層との界面における入射光の位相が、夫々凹部と凸部と
で異なることによる散乱が考えられる。凹凸のピッチと
しては、好ましくは3000〜20000Å程度、に、
より好ましくは4000〜15000Åであることが望
まれ、また、凹凸の高低差としては、好ましくは500
〜20000Å、より好ましくは700〜10000Å
が望まれる。
【0069】なお、半導体の表面が透明層と同様なテク
スチャー構造である場合には、光の位相差による光の散
乱が起こり易く光トラップの効果が高くなる。 (もう一つの透明層及びそのテクスチャー構造)他の透
明層の作製例として、少なくとも水酸化亜鉛または酸化
亜鉛と水酸化亜鉛を含む物質からなる場合について説明
する。
【0070】この作製に際しては、大別して次の2段階
から成る。すなわち、(1)酸化亜鉛の堆積後、(2)
シュウ酸溶液に前記酸化亜鉛表面を浸すという工程を踏
む。以下に、上記(1)、(2)の順序でその一例を示
す。 (1)の酸化亜鉛の堆積工程 酸化亜鉛の堆積については、抵抗加熱や電子ビームによ
る真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティン
グ法、CVD法、スプレーコート法、低級脂肪酸亜鉛等
を含む溶液を用いた塗布―焼成法等が用いられる。ここ
では、成膜法の一例としてスパッタリング法を説明す
る。この場合も上記実施例と同様に、図4に示すような
スパッタリング装置が使用できる。ただしターゲットと
しては酸化亜鉛そのものを用いる場合と、亜鉛のターゲ
ットを用いる場合がある。後者の亜鉛の場合には、堆積
室にArと同時に酸素を流す必要がある(反応性スパッ
タリング法と称される。)堆積条件の一例を挙げると、
基板として表面を研磨した5cmx5cmのザイズで、
厚みが1mmのステンレス板(SUS430)を用い、
ターゲットとしては、直径が6インチで純度99.9%
の酸化亜鉛ターゲットを用いた。そして、ターゲットと
基板との間の離隔距離を5cmとして、Arを10sc
cm流しつつ、圧力を1.5mTorrに保ち、直流電
圧を加えたところ、プラズマが発生し、1アンペアの電
流が流れた。この状態で5分間放電を継続した。
【0071】基板温度を、室温、100℃と変えて試料
4a、4bとした。該両試料の外観、SEM観察の結果
は上記表4に示すものと同様の結果を得た。このように
比較的低い温度で平滑な酸化亜鉛表面が得られた。 (2)シュウ酸溶液に酸化亜鉛表面を浸す工程 次に上記(1)のいずれかの方法で堆積された平滑な酸
化亜鉛表面をシュウ酸溶液に浸す。シュウ酸溶液の濃
度、温度、溶媒、浸す時間等は、後述する好ましいテク
スチャー構造が得られるように適宜決めてやれば良い。
【0072】ここでその一例を挙げる。シュウ酸溶液に
浸す平滑な酸化亜鉛膜は、表面を研磨した5cmx5c
mのサイズで、厚みが1mmのステンレス基板(SUS
430)上にDCマグネトロンスパッタ法にてAgを1
500Å、基板温度を室温で堆積した後、同じくDCマ
グネトロンスパッタ法にて酸化亜鉛を8500Å、基板
温度100℃で堆積したものを用いた。シュウ酸溶液
は、溶媒を水とし、シュウ酸(2水和物)が2wt%の
水溶液を用いた。この水溶液中に前記酸化亜鉛の膜の表
面を1分間浸したが、この時の水溶液の温度は室温とし
た。SEM観察の結果は上記図5と同様のものであっ
た。この結果から、予め堆積されていた酸化亜鉛表面と
は異なる結晶が成長し始めているのが理解できる。
【0073】そこで、更に酸化亜鉛の表面をシュウ酸水
溶液に浸す時間を2分間とすると、前記結晶が表面全体
に広がっているのがSEMによって観察された。この時
の凹凸ピッチは7000〜12000Å程度であり、外
観上はやや黄色味を帯び、光沢がなかった。こうして得
られた試料をX線回折により測定した結果は、上記図6
と同様である。同図から、例えば、2θ=34.4゜の
ピークがZnOに、2θ=33.3゜がβ−Zn(O
H)2 に対応することを確認した。
【0074】以上の結果を解析すると、反応のメカニズ
ムについては不明であるが、酸化亜鉛がシュウ酸溶液中
で化学反応を起こし、水酸化亜鉛結晶が析出したものと
考えられる。こうして得られた少なくとも水酸化亜鉛ま
たは酸化亜鉛と水酸化亜鉛を含む物質から成り、かつ、
その表面が微細な凹凸状の透明層の光の透過率は一般的
には高いほど良いが、半導体に吸収される波長域の光に
対しては、透明である必要はない。
【0075】透明層はピンホールなどによる電流を抑制
するためにはむしろ抵抗があった方がよい。一方、この
抵抗による直列抵抗損失が太陽電池の変換効率に与える
影響が無視できる範囲でなくてはならない。この様な観
点から単位面積(1cm2)あたりの抵抗の範囲は好ま
しくは10-6〜10Ω、更に好ましくは10-6〜3Ω、
最も好ましくは10-4〜1Ωである。
【0076】また、透明層の膜厚は透明性の点からは薄
いほどよいが、表面のテクスチャー構造を取るためには
平均的な膜厚として1000Å以上必要である。また信
頼性の点からこれ以上の膜厚が必要な場合もある。テク
スチャー構造によって光閉じ込めが起こる理由として
は、金属層自身がテクスチャー構造を取っている場合に
は金属層での光の散乱が考えられるが、金属層が平滑で
透明層がテクスチャー構造を取る場合には、半導体の表
面及び/又は透明層との界面に於いて入射光の位相が凹
部と凸部でずれることによる散乱が考えられる。
【0077】ピッチとして好ましくは3000〜200
00Å程度、より好ましくは4000〜15000Å、
また高さの差として好ましくは500〜20000Å、
より好ましくは700〜10000Åとなる。また半導
体の表面が透明層と同様なテクスチャー構造になると光
の位相差による光の散乱が起こり易く光トラップの効果
が高い。
【0078】
【発明の効果】本発明によって作製される裏面反射層を
用いることにより、光の反射率が高くなり、光が半導体
中に有効に閉じ込められるため、半導体への光の吸収が
増加し、変換効率が高い太陽電池が得られる。また金属
原子が半導体膜中に拡散しにくくなり、さらに半導体中
に部分的な短絡箇所があっても適度な電気抵抗によって
リーク電流が抑えられ、信頼性の高い太陽電池が得られ
る。更にこの様な裏面反射層はロール・ツー・ロール法
等の量産性に富む方法の一環として製造できる。このよ
うに本発明は太陽光発電の普及に大いに寄与するもので
ある。
【0079】かかる手順によって作製した半導体太陽電
池は次のような効果が生じる。 (1) 金属層102(又は基板101自身)の表面が
平滑であるため、金属面での光の反射率が高まる。しか
も透明層103(及び半導体接合104)の表面がテク
スチャー構造を持っていることにより、半導体接合10
4内部での光トラップ効果が生じる。そのため入射した
太陽光が効果的に吸収され、太陽電池の変換効率が向上
する。 (2) 金属層102(又は基板101自身)の表面が
平滑であるため、透明層103との接触面積が減少し、
透明層103への金属原子の拡散等の反応が起こりにく
くなる。 (3) 透明層103が適度な抵抗を持っているため、
たとえ半導体層に欠陥を生じても過剰な電流が流れな
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄膜半導体太陽電池の一実施例の断面
構造を示す図である。
【図2】シリコンと金属の界面での反射率に対するZn
Oの効果を示す図であり。(a)ZnOが無い場合、
(b)ZnOがある場合を示す。
【図3】テクスチャー構造による太陽電池の分光感度の
改善を示す図である。
【図4】本発明の裏面反射層を製造するに好適なスパッ
タリング装置の構造を示す図である。
【図5】本発明に係る裏面反射層の表面のSEM写真で
ある。
【図6】本発明に係る裏面反射層表面のX線回折パター
ンである。
【図7】本発明に係る裏面反射層を製造するに好適な別
のスパッタリング装置の構造を示す概略構成図である。
【図8】本発明の薄膜半導体太陽電池の別の実施例の断
面構造を示す図である。
【符号の説明】
101,801 基板、 102,802 金属層、 103,803 透明層、 105,805,809 n型a−Si、 106,810 i型a−Si、 806 i型a−SiGe、 107,807,811 p型μc−Si、 108,812 透明電極、 109,813 集電電極、 704 金属層堆積室、 705 透明層堆積室、 720 溶液浸し室、 730 水洗い室、 740 乾燥室、 404,702 基板、 701 基板のロール、 407,709,710 ターゲット、 405,707,708 基板加熱ヒーター、 741 乾燥用ヒーター、 409 電源。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に、表面が光に対して高い反射率
    を有する金属層、凹凸状の透明層、半導体層、透明な電
    極層をその順序で形成する半導体太陽電池の製造方法に
    おいて、前記透明層を形成する際に、酸化亜鉛層を堆積
    した後に、該酸化亜鉛層の表面が少なくとも2価カルボ
    ン酸を含む溶液に浸される工程を含むことを特徴とする
    半導体太陽電池の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記酸化亜鉛層の表面が2価カルボン酸
    を含む溶液に浸される工程の後、該表面を洗浄、乾燥す
    る工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体
    太陽電池の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記酸化亜鉛層の表面が2価カルボン酸
    を含む溶液に浸される工程の後、該表面をアニールする
    工程を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記
    載の半導体太陽電池の製造方法。
  4. 【請求項4】 少なくともその表面が光に対して高い反
    射率を有し、かつ、平滑な金属層から成る基板と、該基
    板上に形成される透明層から成る裏面反射層と、該裏面
    反射層上に形成される半導体層と、該半導体層上に形成
    される透明な電極とから成る半導体太陽電池において、
    前記透明層は、少なくとも水酸化亜鉛又は酸化亜鉛と水
    酸化亜鉛を含む物質から成り、かつ、その表面が微細な
    凹凸状に形成されたことを特徴とする半導体太陽電池。
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