JPH061845A - 芳香族スルフィド重合体の製造法 - Google Patents

芳香族スルフィド重合体の製造法

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JPH061845A
JPH061845A JP4159389A JP15938992A JPH061845A JP H061845 A JPH061845 A JP H061845A JP 4159389 A JP4159389 A JP 4159389A JP 15938992 A JP15938992 A JP 15938992A JP H061845 A JPH061845 A JP H061845A
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water
reaction
sulfide
alkali metal
polymer
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JP4159389A
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Hitoshi Hayakawa
均 早川
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DIC Corp
Original Assignee
Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
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  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 高分子量の線状芳香族スルフィド重合体を再
現性良く製造する。 【構成】 ジハロ芳香族化合物、例えばジクロロベンゼ
ンと有機溶媒、例えばN−メチルピロリドンとからなる
反応液(A)中に、無水アルカリ金属硫化物、例えば無
水硫化ナトリウムと有機溶媒、例えばN−メチルピロリ
ドンと水からなる反応液(B)を滴下し、水の存在下で
反応させることを特徴とする芳香族スルフィド重合体の
製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属硫化物によるジハ
ロ芳香族化合物の脱ハロゲン化/硫化反応による芳香族
スルフィド重合体の製造方法に関するものである。さら
に具体的には、本発明は、特定の方法でこの反応を実施
することに主要な特色を有するところの、高分子量の芳
香族スルフィド重合体を再現性よく製造する方法に関す
るものである。
【0002】近年、電子機器部材、自動車機器部材など
として、ますます高い耐熱性の熱可塑性樹脂が要求され
てきている。芳香族スルフィド重合体もその要求に応え
得る樹脂としての性質を有しているが、この樹脂は高結
晶性であり且つ分子量の充分高いものが得られ難いとい
う事情があるために、フィルム、シート、繊維などに成
形加工するのが極めて難しいということや、その成形物
が極めて脆弱であるという大きな問題点があった。本発
明はこれらの問題点を解決すべく高分子量の線状の芳香
族スルフィド重合体を製造する方法を提供するものであ
る。
【0003】
【従来の技術】芳香族スルフィド重合体の製造方法とし
ては、従来次のようなものが知られている。 (1) アルカリ金属硫化物、特に結晶水を有する硫化
ナトリウム(含水硫化ナトリウム)を極性溶媒中で加熱
して該硫化ナトリウムが含有する水を除去し、そこへジ
クロルベンゼンを加えて加熱重合させる方法(米国特許
第 3,354,129号明細書など)。 (2) 上記の(1)法において極性溶媒中にカルボン
酸塩を共存させて加熱して含水硫化ナトリウムの含有す
る水を除去し、そこへジクロルベンゼンを加えて加熱重
合させる方法(米国特許第3,919,177号、同第
4,089,847号明細書など)。 (3) 上記(1)法において金属硫化物とアルカリ土
類金属水酸化物との実質的に無水の混合物を用い、水を
加えて系内の水分量をコントロールしてジクロルベンゼ
ンと加熱重合させる方法(特開昭60−55029号公
報など)。 (4) ジクロルベンゼンを極性溶媒中で加熱し、そこ
へアルカリ金属硫化物の水溶液を滴下すると同時に水を
留去し、無水系で重合させる方法(特開昭60−104
130号公報など)。
【0004】しかしながら、これらの方法は、本発明者
らの知る限りでは、充分に満足なものとはいい難い。す
なわち、上記(1)の方法では、実用性の高い線状芳香
族スルフィド重合体として充分な分子量のものを得るの
が困難である。(2)の方法では(1)の方法における
生成重合体の分子量の低い欠点を改良するために提案さ
れた方法であり、これによって生成重合体の分子量は相
当改良されることになった。しかしながらこの方法でも
強靱なフィルム、シート、繊維などを製造するのに充分
な分子量の重合体を再現性よく経済的に製造することは
発明者らが知る限りにおいてかなり難しい。再現性とい
うことは、工業的生産において特に重要である。
【0005】上記の(1)または(2)の方法において
再現性よく高分子量の重合体を得るのが難しい主な理由
は、原料の一つである含水硫化ナトリウム(含水水硫化
ナトリウムと水酸化ナトリウムとの反応生成物を含む)
の水分を除く手段が、重合溶媒中で物理的に加熱留去す
る方法によるためと考える。即ち、かかる方法による
と、イ.充分な脱水が困難であり、残存水分量のコント
ロールが困難であること、ロ.水分留出の際に金属硫化
物中の硫化分がH2S等の形で同伴されて損失となり、
そのため反応系中の硫黄分の存在量が変動すること、
ハ.水分が相当量残存している状態では金属硫化物が反
応缶を侵食し、溶出した重金属イオンが生成高分子の高
分子量化を阻害すること等の問題があり、これが再現性
よく高分子量の重合体を得るのを難かしくする主な理由
であろうと推定される。
【0006】(3)の方法では含水硫化ナトリウムを用
いないため、系内の過剰な水分を加熱留去する必要がな
く、これに起因する再現性の不良はなくなるが、発明者
らの知る限りでは反応時間が長く、また、多量のアルカ
リ土類金属水酸化物を使用しているために後処理で中和
等をする必要があり、工程上不利であると考えられる。
【0007】(4)の方法ではジクロルベンゼンや反応
溶媒が過剰なアルカリ金属硫化物と長時間接することが
なく、副反応等が抑えられる為に高分子量化が期待され
るが、これも(1)、(2)と同様な脱水工程を高温で
ある反応中行うため、H2Sとしての損失量が(1)、
(2)よりもかなり多くなって効率的でない。また、先
にも述べたように脱水工程を有するために充分な分子量
の重合体を再現性よく製造することが困難となる。
【0008】(2)の方法では、さらに、多数の水溶性
有機塩、特に酢酸塩を重合系に共存させて重合させるの
で、重合後の処理水に多量の有機酸が混入することにな
って公害上の問題を生ずるおそれがあり、またそれを除
外するためには多大の費用を必要とすることである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の従来の
製法の欠点を解決して、強靱なフィルム、シート、繊維
などの成形物に加工するのに好適な、副生成物の少ない
高分子量の線状芳香族スルフィド重合体を再現性よく、
かつ経済的に製造する方法であって、公害問題の実質的
にない方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは高分子量の
線状芳香族スルフィド重合体を再現性よく得る方法につ
いて鋭意検討を重ねた結果、多量のアルカリ金属硫化物
とジハロ芳香族化合物もしくは反応溶媒による副反応を
抑えること、そして重合系内の水分量を正確にコントロ
ールすることが重要であることをつきとめた。
【0011】これを実現する方法の1つとしてジハロ芳
香族化合物と有機溶媒とからなる反応液中に、無水アル
カリ金属硫化物と有機溶媒と水からなる反応液を滴下
し、水の存在下で反応させることを考え、この考えに基
づいて種々の重合を行ったところ、高分子量の芳香族ス
ルフィド重合体を再現性よく得ることができ、本発明を
完成させるに至った。
【0012】即ち、本発明は、ジハロ芳香族化合物と有
機溶媒とからなる反応液(A)中に、無水アルカリ金属
硫化物と有機溶媒と水からなる反応液(B)を滴下し、
水の存在下で反応させることを特徴とする芳香族スルフ
ィド重合体の製造法を提供するものである。
【0013】
【構成】本発明において「ジハロ芳香族化合物」、「ア
ルカリ金属硫化物」及び「溶媒」という用語は、言及さ
れている各化合物ないし物質がそれぞれ定義された範囲
内で混合物である場合を包含していることが理解されな
ければならない。例えば、「ジハロ芳香族化合物」が複
数種の化合物からなっていて生成芳香族スルフィド重合
体が共重合体である場合を本発明は1つの具体例として
包含するものである。
【0014】(重合体の製造)本発明による芳香族スル
フィド重合体の製造法は、アルカリ金属硫化物によるジ
ハロ芳香族化合物の脱ハロゲン化/硫化反応に基くもの
である。
【0015】(アルカリ金属硫化物)本発明の重合反応
において硫黄源及び脱ハロゲン化剤として機能する無水
アルカリ金属硫化物としては、アルカリ金属から選ばれ
た金属の硫化物が使用される。ナトリウム、カリウムな
どのアルカリ金属の硫化物が好ましい。なかでも、ハン
ドリングのしやすさや安定性の点からナトリウムの硫化
物が特に好ましい。
【0016】本発明でいう無水のアルカリ金属硫化物と
は、含水量が5重量パーセント以下、より好ましくは2
重量パーセント以下の実質的に無水のものである。
【0017】無水アルカリ金属硫化物の製造法について
無水硫化ナトリウムの場合を例として示すると、たとえ
ば、(1)硫化ナトリウム水和物を一部融解する温度ま
で加熱し、減圧下で脱水する方法、(2)水和硫化ナト
リウムをパイプに充填し、攪拌することなく、1トール
の減圧下で、特定の条件で加熱して、溶融を避けながら
徐々に800℃まで昇温し、強制脱水する方法、(3)
高水和硫化ナトリウム結晶を原料として用い、これを減
圧下で、融点以下の特定の温度で一定時間保持すること
によって、溶融することなく、固相転換によって硫化ナ
トリウム1水和物(Na2S・H2O)を形成させ、さら
にこれを特定の温度範囲で加熱することによって、固相
転換を完成させる方法(特開平2−51404号公報な
ど)等が挙げられるが、実質的に無水であれば他の方法
で脱水されたものでもよい。
【0018】使用するアルカリ金属硫化物が、実質的に
無水であってかつ不純物が少ないアルカリ金属硫化物で
あると、より高分子量のものを再現性良く得ることがで
き、その使用は特に好適である。例えば、前記に例示し
た製造方法中では(3)の方法によるものが、緻密な立
方晶で潮解性や被酸化性が非常に小さく、不純物も少な
いものである。
【0019】実質的に無水のアルカリ金属硫化物に水硫
化アルカリ金属化合物及び/または水酸化アルカリ金属
化合物を加えて重合系の微調整をすると重合体の分子量
が増加することがある。
【0020】無水のアルカリ金属硫化物に系内の水分量
を調整する等の目的で、水硫化アルカリ金属化合物と水
酸化アルカリ金属化合物の反応から得られるアルカリ金
属硫化物、及び/または結合水もしくは結晶水を有する
アルカリ金属硫化物を併用してもかまわない。
【0021】本発明方法においては無水アルカリ金属硫
化物の単独を芳香族スルフィド重合体製造のための全硫
黄源として用いるほか、必要によっては水硫化アルカリ
金属化合物と水酸化アルカリ金属化合物の反応から得る
アルカリ金属硫化物や化学的に安定で不純物の少ない結
合水もしくは結晶水を有するアルカリ金属硫化物等を混
合して用いてもよい。
【0022】必要によって使用されうる結合水もしくは
結晶水を有するアルカリ金属硫化物としては、ナトリウ
ム、カリウムなどのアルカリ金属の硫化物が好ましい。
なかでも、ハンドリングのしやすさや安定性の点からナ
トリウムの硫化物が特に好ましい。硫化ナトリウムの場
合は結合水もしくは結晶水を有しているものとして、例
えば9水塩、5水塩、3水塩などが工業的に供給されて
いる。
【0023】また、水硫化アルカリ金属化合物として
は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水硫化
物が好ましい。なかでも、ハンドリングのしやすさや安
定性の点からナトリウムの水硫化物が特に好ましい。水
硫化ナトリウムは結合水もしくは結晶水を有していても
よい。例えば、約1.5水塩のものは工業的に供給され
ている。
【0024】水酸化アルカリ金属化合物としては、ナト
リウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物が好ま
しい。なかでも、ハンドリングのしやすさや安定性の点
からナトリウムの水酸化物が特に好ましい。
【0025】(ジハロ芳香族化合物)芳香族スルフィド
重合体の骨格を形成すべき単量体に相当するジハロ芳香
族化合物は、芳香族核と該核状の2ケのハロ置換基とを
有するものである限り、そしてアルカリ金属硫化物によ
る脱ハロゲン化/硫化反応を介して重合体化しうるもの
である限り、任意のものでありうる。従って、芳香族核
は芳香族炭化水素のみからなる場合の外に、この脱ハロ
ゲン化/硫化反応を阻害しない各種の置換基を有するも
のでありうる。
【0026】具体的には、本発明において使用されるジ
ハロ芳香族化合物の例には下式で示される化合物が包含
される。
【0027】
【化1】
【0028】ここで各置換基は下記の意味を持つ。 X:Cl、Br、IまたはF。特に、Cl及びBrより
成る群から選ばれた少なくとも1種のハロゲン。
【0029】Y:−R、−OR、−COOR、−COO
Na、−CN及び−NO2(Rは、H、アルキル基、シ
クロアルキル基、アリール基及びアラルキル基より成る
群から選ばれたもの)より成る群から選ばれたもの。こ
こで、アルキル基又はアルキル基部分は炭素数1〜18
程度、アリール基またはアリール基部分は炭素数6〜1
8程度のものがふつうである。
【0030】 (R'及びR''は、H、アルキル基、シクロアルキル
基、アリール基及びアラルキル基より成る群から選ばれ
たもの)より成る群から選ばれたもの。ここでアルキル
基またはアルキル基部分及びアリール基またはアリール
基部分は上記と同様に定義される。
【0031】式(A)中でm及びnは、それぞれm=
2、0≦n≦4の整数。式(B)中でa及びbは、それ
ぞれa=2、0≦b≦6の整数。式(C)中でc、d、
e及びfは、それぞれ0≦c≦2、0≦d≦2、c+d
=2、0≦e、f≦2の整数。
【0032】式(D)中でg、h、i及びjは、それぞ
れ0≦g≦2、0≦h≦2、g+h=2、0≦i、j≦
2の整数。
【0033】上記一般式のジハロゲン置換基芳香族化合
物の例として、次のようなものがある。
【0034】p−ジクロルベンゼン、m−ジクロルベン
ゼン、2,5−ジクロルトルエン、p−ジブロムベンゼ
ン、1,4−ジクロルナフタリン、1−メトキシ−2,
5−ジクロルベンゼン、4,4’−ジクロルビフェニ
ル、3,5−ジクロル安息香酸、2,4−ジクロル安息
香酸、2,5−ジクロルニトロベンゼン、2,4−ジク
ロルニトロベンゼン、2,4−ジクロルアニソール、
p,p’−ジクロルジフェニルエーテル、4,4’−ジ
クロルベンゾフェノン、4,4’−ジクロルジフェニル
スルホン、4,4’−ジクロルジフェニルスルホキシ
ド、4,4’−ジクロルジフェニルスルフィドなど。な
かでも、p−ジクロルベンゼン、m−ジクロルベンゼ
ン、4,4’−ジクロルベンゾフェノンおよび4,4’
−ジクロルジフェニルスルホンは特に好適に使用され
る。
【0035】ジハロ芳香族化合物の適当な選択組合せに
よって2種以上の異なる反応単位を含む共重合体を得る
ことができることは前記した通りである。p−ジクロル
ベンゼンと4,4’−ジクロルベンゾフェノンもしくは
4,4’−ジクロルフェニルスルホンとを組み合わせて
使用すれば、
【0036】
【化2】
【0037】単位と
【0038】
【化3】
【0039】単位もしくは
【0040】
【化4】
【0041】単位とを含んだ共重合物を得ることができ
る。
【0042】本発明で使用するジハロ芳香族化合物の使
用量はアルカリ金属硫化物1モルあたり0.8〜1.3
モルの範囲が望ましく、特に0.9〜1.05モルの範
囲が高分子量のポリマーを得るのに好ましい。
【0043】なお、本発明による芳香族スルフィド重合
体は上記ジハロ芳香族化合物の重合体であるが、生成重
合体の末端を形成させあるいは重合反応ないし分子量を
調節するためにモノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物
でなくともよい)を併用することも、分岐または架橋重
合体を形成させるためにトリハロ以上のポリハロ化合物
(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を併用するこ
とも可能である。これらのモノハロまたはポリハロ化合
物が芳香族化合物である場合の具体例は、上記具体例の
モノハロまたはポリハロ誘導体として当業者にとって自
明であろう。具体的には、例えばジハロベンゼンに若干
量のトリクロルベンゼンを組み合わせて使用すれば、分
岐を持ったフェニレンスルフィド重合体を得ることがで
きる。
【0044】(溶媒および水)本発明の重合反応に使用
する溶媒は、活性水素を有しない有機溶媒、すなわちア
プロチック溶媒であることが好ましい。活性水素を有す
る溶媒でも、そのもの自身が重合反応を阻害したりある
いは活性水素が関与する反応によって生成したものが二
次的に有害反応をひき起したりするおそれがないものな
らば使用できる。
【0045】この溶媒は、本発明重合反応を不当に阻害
するものであってはならない。また、この溶媒は、少な
くとも原料であるジハロ芳香族化合物及びS2-を与える
アルカリ金属硫化物を反応に必要な濃度に溶解すること
ができる程度の溶解能を持つものであるべきである。従
って、この溶媒は、窒素原子、酸素原子および(また
は)硫黄原子を有する極性溶媒であることが普通であ
る。更に、この溶媒は原料ジハロ芳香族化合物と同様な
脱ハロゲン化/硫化反応に関与しうるものでないことが
望ましく。従って例えばハロ芳香族炭化水素ではないこ
とが望ましい。
【0046】本発明で使用する溶媒は、制御された微小
の量の水を重合反応に提供するためのものであるから、
溶質としてのこの水が溶媒和しうるものであることが望
ましい。
【0047】このような溶媒の具体的例を挙げれば、
(1)アミド、たとえば、ヘキサメチルリン酸トリアミ
ド(HMPA)、N−メチルピロリドン(NMP)、N
−シクロヘキシルピロリドン(NCP)、N−メチルカ
プロラクタム、テトラメチル尿素(TMU)、ジメチル
ホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DM
A)、その他、(2)エーテル化ポリエチレングリコー
ルたとえばポリエチレングリコールジアルキルエーテル
(重合度は2000程度まで、アルキル基は C1〜C20
程度)など、(3)スルホキシド、たとえばテトラメチ
レンスルホキシド、ジメチルスルホキシド(DMSO)
その他、がある。これらのうちでも、N−メチルカプロ
ラクタムおよびNMPは、化学的安定性が高いので、特
に好ましい。
【0048】溶媒の使用量は、均一な重合反応が可能な
反応系の粘度を保持すること、また、経済的な見地から
重合に用いる硫化物1モル当り0.1〜10リットルの
範囲内が望ましい。
【0049】水は、蒸留水、イオン交換水等、反応を阻
害するアニオンやカチオンを除いた水が使用される。本
発明の重合反応において溶媒和水として添加すべき水分
の量は、重合系に加えられるアルカリ金属硫化物1モル
当り0.5〜1.5モルの水分量が好ましく、なかでも
0.5〜1.0モルが特に好ましい。
【0050】また、実質的に無水のアルカリ金属硫化物
に含水硫化アルカリ金属化合物とアルカリ金属水酸化
物、および/または結晶水もしくは結合水を有するアル
カリ金属硫化物を併用した場合には、水は、水硫化アル
カリ金属化合物と水酸化アルカリ金属化合物の反応で形
成される水、これらの結晶水もしくは結合水、という形
で重合系内に供給することも可能である。
【0051】(重 合)水の存在下で行われる本発明方
法による重合は、ジハロ芳香族化合物と有機溶媒とから
なる反応液(A)を重合が進行し得る150〜250℃
に保ちながら、無水アルカリ金属硫化物と有機溶媒と水
からなる反応液(B)を溶液、もしくはスラリーという
形で20分〜20時間かけて滴下し、さらにこの反応混
合物を150〜300℃の範囲の温度に加熱することに
よって進行する。
【0052】反応液(B)の滴下時間とそのときの反応
液(A)の温度には大きな関係がある。即ち、反応溶媒
等との副反応を防ぐためには、滴下されるアルカリ金属
硫化物がジハロ芳香族化合物と脱ハロゲン化/硫化反応
に消費され、その多くが反応系にアルカリ金属硫化物と
してそのままでは存在しないようにする必要がある。か
かるためには、反応液(A)の温度を反応速度の速い高
温に設定した場合は反応液(B)の滴下時間は短く、反
応液(A)の温度が低い場合は滴下時間を長くするとよ
い。また、反応液(B)の滴下は、反応液(A)の温度
を定温下で行わせることも、段階的にまたは連続的に昇
温、降温下で行わせることもできる。
【0053】反応液(B)の滴下終了後の反応混合物の
温度は150〜300℃に保つことが経済的な見地から
問題のない程度の反応速度を維持し、なおかつ、異常反
応による重合体や溶媒の分解が活発にはならない等の理
由から好ましい。特に180〜260℃の範囲が、高分
子量のものを迅速に得ることができるので好ましい。こ
の重合段階は定温で行わせることもできるが、段階的に
または連続的に昇温しながら行わせることもできる。
【0054】重合は、バッチ方式、連続方式など通常の
各重合方式を採用することができる。重合の際における
雰囲気は非酸化性雰囲気であることが望ましく、重合反
応のスタート時に窒素、アルゴンなどの不活性ガスで系
内を置換して置くことが好ましい。
【0055】重合体の回収は、反応終了時にまず反応混
合物を減圧下または常圧下で加熱して溶媒だけを留去
し、ついで缶残固形物を水、アセトン、メチルエチルケ
トン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗
浄し、それから中和、水洗、ろ別および乾燥をすること
によって行うことができる。また、別法としては、反応
終了後に反応混合物に水、アセトン、メチルエチルケト
ン、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、
芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素などの溶媒(使用した
重合反応に可溶であり、かつ少なくとも生成重合体に対
しては非溶媒であるもの)を沈降剤をして添加して重合
体、無機塩等の固体状生成物を沈降させ、それを濾別、
洗浄及び乾燥することによって行うこともできる。これ
らの場合の「洗浄」は、抽出の形で実施することができ
る。また、反応終了後、反応混合物に反応溶媒(もしく
はそれと同等の低分子重合体の溶解度を有する溶媒)を
加えて攪拌した後、ろ別して低分子量重合体を除いた
後、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類
などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、その後中和、
水洗、ろ別および乾燥をすることによっても行うことが
できる。
【0056】いずれの方法にしても有機酸塩を共存させ
なければ、洗浄水に溶解して放出されるべき有機酸塩に
よる汚染問題は生じない。
【0057】(生成重合体)本発明の方法によって得ら
れる重合体(粉末で得られることがふつうである)は、
従来の芳香族スルフィド重合体粉末に比較して飛躍的に
高分子量で且つ易酸化処理性の線状重合体である。この
ため重合物粉末そのままで、また必要に応じて若干の酸
化処理を施すことによって、高溶融粘度であっても曳糸
性の優れたものとなり、強靱な耐熱性フィルム、シー
ト、繊維等に極めて容易に成形加工できる。さらにまた
射出成形、押出成形、回転成形などによって種々のモー
ルド物に加工することができるが、これは肉厚のもので
あってもクラックが入り難い。
【0058】本発明のよる重合体は熱可塑性重合体の範
躊に入るものであるから、熱可塑性重合体の適用可能な
各種の改変が可能である。従って、たとえば、この重合
体はカーボン黒、炭酸カルシウム粉末、シリカ粉末、酸
化チタン粉末等の粉末状充填材、または炭素繊維、ガラ
ス繊維、アスベスト、ポリアラミド繊維などの繊維状充
填材を充填して使用することができる。この重合体はま
た、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリ
スルホン、ポリアリーレン、ポリアセタール、ポリイミ
ド、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ABS
などの合成樹脂の一種以上を混合して使用することもで
きる。
【0059】
【実施例】以下に、実施例、比較例及び参考例をあげて
本発明を更に説明する。
【0060】(参考例) 使用原料 1.硫黄源 実質的に無水の硫化ナトリウム(以下、Na2S)は三
協化成製の5水塩(Na2S・5H2O)をロータリーエ
バポレーターを用いて19〜20mmHgの圧力下、7
6℃で3.5時間加熱攪拌し、さらに急速に昇温して、
100℃とし、100mmHgの圧力下、3時間を要し
て攪拌下に115℃まで加熱して調製した。
【0061】2.溶媒 N−メチルピロリドン(以下、NMP)は三菱化成
(株)製品を使用。
【0062】3.ジハロ芳香族化合物 パラ−ジクロルベンゼン(以下、p−DCB)は住友化
学(株)製品を使用。
【0063】4.水 水道水を蒸留した後イオン交換を施したものを使用。
【0064】〈物性評価〉得られた重合体の溶融粘度
(η)は、ポリマー粉約2gを直径1.12cmの円筒
状のタブレットにプレスし、島津製高化式フローテスタ
ーを用いて測定した(316℃、10Kg荷重、ノズル
孔径0.5mm、長さ1.0mm)。
【0065】(実施例1)攪拌翼付ステンレス製(チタ
ンライニング)4リットルオートクレーブにp−DCB
588.0g、NMP 1000gを仕込み、攪拌しな
がら系内を窒素で充分に置換した後に220℃まで昇温
した。これを保持しながら、密閉系でNa 2S 312.
2g、水 72.1g、NMP 600gからなる混合物
を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに220℃
で2時間保持し、次に240℃に昇温し、2時間保持し
て反応を終了した。
【0066】得られたスラリーを20リットルの水に注
いで1時間攪拌した後、濾過した。このケーキを再び2
0リットルの湯で1時間攪拌、洗浄した後、濾過し、最
後に10リットルのアセトンで1時間攪拌洗浄し、濾過
後、真空乾燥機で一晩(80℃)乾燥して白色の粉末状
のポリマーを得た。得られたポリマーの溶融粘度は15
00ポイズであった。
【0067】(実施例2〜4)実施例1と同様な方法で
反応及び後処理を行ったが、実施例2〜4は系内の水分
量を変えるために水の仕込量を変えた。仕込量、得られ
たポリマーの溶融粘度を表1にまとめる。
【0068】
【表1】
【0069】(実施例5〜8)実施例1〜4と同様な方
法で反応及び後処理を行ったが、実施例5〜7は水分量
をNa2S・5H2Oを併用するという形で供給した。ま
た、水分量を変えるためにNa2S・5H2OとNa2
の仕込量を変えた。仕込量、得られたポリマーの溶融粘
度を表2にまとめる。
【0070】
【表2】
【0071】(比較例1)攪拌翼付ステンレス製(チタ
ンライニング)4リットルオートクレーブにNa 2S 3
12.2g、p−DCB 588.0g、NMP 160
0g、水 57.7g(H2O/S=0.8)を仕込み、
攪拌しながら系内を窒素で充分に置換した後に220℃
まで昇温し、6時間保持した。この後、240℃に昇
温し、2時間保持して反応を終了した。
【0072】得られたスラリーを20リットルの水に注
いで1時間攪拌した後、濾過した。このケーキを再び2
0リットルの湯で1時間攪拌、洗浄した後、濾過し、最
後に10リットルのアセトンで1時間攪拌洗浄し、濾過
後、真空乾燥機で一晩(80℃)乾燥して白色の粉末状
のポリマーを得た。得られたポリマーの溶融粘度は12
00ポイズであった。
【0073】(比較例2)比較例1と同様な方法で反応
及び後処理をおこなったが、系内の水分量を変化させる
ため、水を108.1g(H2O/S=1.3)とし
た。得られたポリマーの溶融粘度は1000ポイズであ
った。
【0074】(比較例3)比較例1と同じオートクレー
ブにまずNa2S 312.2g、NMP 1000g、
水 57.7g(H2O/S=0.8)を仕込み、攪拌し
ながら系内を窒素で充分に置換した後に220℃まで昇
温した。この後220℃に保持しながら、p−DCB
588.0gをNMP 600gに溶かした溶液を1時
間かけて滴下、加え、さらに5時間220℃で保持し
た。最後に、240℃に昇温し、2時間保持して反応を
終了した。
【0075】得られたスラリーを20リットルの水に注
いで1時間攪拌した後、濾過した。このケーキを再び2
0リットルの湯で1時間攪拌、洗浄した後、濾過し、最
後に10リットルのアセトンで1時間攪拌洗浄し、濾過
後、真空乾燥機で一晩(80℃)乾燥して白色の粉末状
のポリマーを得た。得られたポリマーの溶融粘度は90
0ポイズであった。
【0076】
【発明の効果】ジハロ芳香族化合物と有機溶媒とからな
る反応液中に、無水アルカリ金属硫化物と有機溶媒と水
からなる反応液を滴下し水の存在下で反応させる本発明
方法では、過剰なアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化
合物もしくは反応溶媒による副反応を抑え、副生物の少
ない高分子量の線状芳香族スルフィド重合体を再現性よ
く得ることができる。かかる方法によって得られる高分
子量の線状芳香族スルフィド重合体は、強靱なフィル
ム、シート、繊維などの成形物に加工するのに好適であ
る。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ジハロ芳香族化合物と有機溶媒とからな
    る反応液(A)中に、無水アルカリ金属硫化物と有機溶
    媒と水からなる反応液(B)を滴下し、水の存在下で反
    応させることを特徴とする芳香族スルフィド重合体の製
    造法。
  2. 【請求項2】 水の量が無水アルカリ金属硫化物中の硫
    黄1モルに対して1.5モル以下である請求項1記載の
    製造法。
  3. 【請求項3】 水の量が無水アルカリ金属硫化物中の硫
    黄1モルに対して0.5〜1.0モルである請求項1記
    載の製造法。
  4. 【請求項4】 無水アルカリ金属硫化物が、無水硫化ナ
    トリウムである請求項1、2又は3記載の製造法。
  5. 【請求項5】 有機溶媒が非プロトン性極性溶媒である
    範囲項1〜4のいずれか1つに記載の製造法。
JP4159389A 1992-06-18 1992-06-18 芳香族スルフィド重合体の製造法 Pending JPH061845A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104744697A (zh) * 2015-03-04 2015-07-01 常州大学 含有对苯二苄基结构单元的聚苯硫醚共聚物及其制备方法
US9080602B2 (en) 2010-11-20 2015-07-14 Schaeffler Technologies AG & Co. KG Bearing device having a safety bearing

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US9080602B2 (en) 2010-11-20 2015-07-14 Schaeffler Technologies AG & Co. KG Bearing device having a safety bearing
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