JPH06176911A - 耐食性永久磁石とその製造方法 - Google Patents

耐食性永久磁石とその製造方法

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JPH06176911A
JPH06176911A JP4353007A JP35300792A JPH06176911A JP H06176911 A JPH06176911 A JP H06176911A JP 4353007 A JP4353007 A JP 4353007A JP 35300792 A JP35300792 A JP 35300792A JP H06176911 A JPH06176911 A JP H06176911A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 Fe−B−Ra系永久磁石下地との密着性に
すぐれ、磁石表面の溶出を防止し、温度80℃、相対湿
度90%の雰囲気条件下で長時間放置した場合の初期磁
石特性からの劣化を極力少なくし、安定した高磁石特性
を有するFe−B−Ra系永久磁石の提供。 【構成】 Fe−B−Ra系磁石体をスズアルコキシド
化合物溶液に浸漬又はスプレーした磁石体表面を乾燥
後、200℃〜450℃に30分〜10時間の熱処理に
より被膜し、さらに該磁石体を樹脂液に浸漬して電着塗
装処理し、該磁石体表面に耐食性樹脂層を所要厚みに被
着する。 【効果】 温度80℃、相対湿度90%の条件下で、1
000時間放置した後、その磁石特性の劣化がほとんど
ない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高磁気特性を有しか
つ耐食性にすぐれたFe−B−Ra系永久磁石に係り、
磁石体表面に酸化錫膜を介して電着塗装による耐食性樹
脂層を設けて、耐食性、特に80℃、相対湿度90%の
雰囲気に長時間放置した場合の初期磁石特性からの劣化
が少なく、きわめて安定した磁石特性を有するFe−B
−Ra系永久磁石とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】先に、NdやPrを中心とする資源的に
豊富な軽希土類を用いてB,Feを主成分とし、高価な
SmやCoを含有せず、従来の希土類コバルト磁石の最
高特性を大幅に超える新しい高性能永久磁石として、F
e−B−Ra系永久磁石が提案されている(特開昭59
−46008号公報、特開昭59−89401号公
報)。
【0003】前記磁石合金のキュリー点は、一般に30
0℃〜370℃であるが、Feの一部をCoにて置換す
ることにより、より高いキュリー点を有するFe−B−
Ra系永久磁石(特開昭59−64733号、特開昭5
9−132104号)を得ており、さらに、前記Co含
有のFe−B−Ra系希土類永久磁石と同等以上のキュ
リー点並びにより高い(BH)maxを有し、その温度
特性、特にiHcを向上させるため、希土類元素(R
a)としてNdやPr等の軽希土類を中心としたCo含
有のFe−B−Ra系希土類永久磁石のRaの一部にD
y、Tb等の重希土類のうち少なくとも1種を含有する
ことにより、25MGOe以上の極めて高い(BH)m
axを保有したままで、iHcをさらに向上させたCo
含有のFe−B−Ra系希土類永久磁石が提案(特開昭
60−34005号)されている。
【0004】しかしながら、上記のすぐれた磁気特性を
有するFe−B−Ra系磁気異方性焼結体からなる永久
磁石は主成分として、空気中で酸化し易い希土類元素及
び鉄を含有するため、磁気回路に組込んだ場合に、磁石
表面に生成する酸化物により、磁気回路の出力低下及び
磁気回路間のばらつきを惹起し、また、表面酸化物の脱
落による周辺機器への汚染の問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、上記のFe−
B−Ra系永久磁石の耐食性の改善のため、磁石体表面
に電着塗装による耐食性樹脂層を被覆した永久磁石(特
開昭61−130453号)が提案されているが、この
方法では永久磁石体が焼結体で有孔性のため、この孔内
に十分に電着液が侵入せず、経年変化とともに腐食する
恐れがあり、密着性、防蝕性が劣る問題があった。
【0006】この発明は、Fe−B−Ra系永久磁石下
地との密着性にすぐれ、磁石表面の溶出を防止し、その
耐食性の改善を目的とし、特に温度80℃、相対湿度9
0%の雰囲気条件下で長時間放置した場合の初期磁石特
性からの劣化を極力少なくし、安定した高磁石特性を有
するFe−B−Ra系永久磁石とその製造方法の提供を
目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、すぐれた耐
食性、特に温度80℃、相対湿度90%の雰囲気条件下
で長時間放置した場合においても、下地との密着性がす
ぐれ磁石表面の溶出を防止し、その磁石特性が安定した
Fe−B−Ra系永久磁石を目的に、永久磁石体の表面
処理について種々研究した結果、特定成分を有するFe
−B−Ra系磁石体表面に、スズアルコキシド化合物溶
液を用いて熱分解法により酸化錫膜を被着、さらに、電
着塗装による耐食性樹脂層を被着することにより、すぐ
れた耐食性と共にFe−B−Ra磁石表面との密着性が
すぐれ、導電性を有し、すぐれた耐食性ときわめて安定
した磁石特性が安価に得られることを知見し、この発明
を完成したものである。
【0008】すなわち、この発明は、主相が正方晶相か
らなるFe−B−Ra系永久磁石体表面に、Cを100
ppm〜1000ppm含有する膜厚500Å以下の酸
化錫膜を介して、電着塗装による耐食性樹脂層を有する
ことを特徴とする耐食性永久磁石である。
【0009】また、この発明は、主相が正方晶相からな
るFe−B−Ra系永久磁石体表面を清浄化処理した
後、前記磁石体をスズアルコキシド化合物溶液に浸漬す
るか前記磁石表面にスズアルコキシド化合物溶液を塗布
した後、200℃〜450℃に30分〜10時間保持す
る熱処理によりCを100ppm〜1000ppm含有
する酸化錫膜層を形成し、さらに、該磁石体を樹脂液に
浸漬して電着塗装処理し、該磁石体表面に耐食性樹脂層
を形成することを特徴とする耐食性永久磁石の製造方法
である。
【0010】この発明において、磁石体表面の酸化錫被
膜層は、スズアルコキシド化合物溶液(一般式 Sn
(OR)n、R:アルキル基またはアルキル基+他の官
能基、n:酸化数)に浸漬又はスプレーした磁石体表面
を乾燥後、200℃〜450℃に30分〜10時間の熱
処理により被膜され、酸化錫膜の厚みは500Å以下が
好ましい。かかる酸化錫膜厚が500Åを超えると、膜
の密着強度が低下して、酸化錫膜表面に被着の耐食性樹
脂層が剥離する恐れがあるため、500Å以下の厚みと
する。また、この発明の酸化錫膜中には、Cを100p
pm〜1000ppm含有することを特徴とするが、C
量が100ppmでは膜内でクラックが生じ、1000
ppmを超えると熱分解が十分でなく、好ましくないた
めである。
【0011】また、この発明において、電着塗装による
耐食性樹脂層を形成するには、表面に酸化錫膜を被着し
た永久磁石体を水性塗料中に浸漬し、永久磁石体を陽極
または陰極として、永久磁石体と対極との間に直流電流
を給電して、該永久磁石体全体に電気的に塗装を施し、
表面に耐食性樹脂層を形成する電着塗装法を採用するこ
とができ、被処理永久磁石体を陽極にしたアニオン電着
塗装法、あるいは被処理永久磁石体を陰極にしたカチオ
ン電着塗装法を採用することができる。アニオン電着塗
装法に使用される樹脂は、乾性油、ポリエステル、ポリ
ブタジエン、エポキシエステル、ポリアクリル酸エステ
ルなどを骨核としたポリカルボン酸樹脂であり、通常、
有機アミンあるいは苛性カリなどの塩基で中和し、水溶
液化あるいは水分散化されて負に荷電する。また、カチ
オン電着塗装法に使用される樹脂は、主としてエポキシ
系樹脂、アクリル系樹脂等を骨核としたポリアミン樹脂
であり、通常、有機酸で中和し、水溶液化あるいは水分
散化されて正に荷電する。また、電着塗装による耐食性
樹脂層厚みは、50μm以下の厚みに被着されるのが好
ましく、更に好ましくは5〜30μmの厚みである。さ
らに、防錆塗膜補強改善の目的で、上記樹脂中に酸化亜
鉛、クロム酸亜鉛、クロム酸亜鉛ストロンチウム、鉛丹
などの防錆用顔料を含有してもよく、あるいはベンゾト
リアゾールを含有するものでもよい。
【0012】この発明の永久磁石に用いる希土類元素R
aは、組成の10原子%〜30原子%を占めるが、N
d、Pr、Dy、Ho、Tbのうち少なくとも1種、あ
るいはさらに、La、Ce、Sm、Gd、Er、Eu、
Tm、Yb、Lu、Yのうち少なくとも1種を含むもの
が好ましい。また、通常Raのうち1種をもって足りる
が、実用上は2種以上の混合物(ミッシュメタル,ジジ
ム等)を入手上の便宜等の理由により用いることができ
る。なお、このRaは純希土類元素でなくてもよく、工
業上入手可能な範囲で製造上不可避な不純物を含有する
ものでも差支えない。Raは、上記系永久磁石における
必須元素であって、10原子%未満では結晶構造がα−
鉄と同一構造の立方晶組織となるため、高磁気特性、特
に高保磁力が得られず、30原子%を超えるとRaリッ
チな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(Br)が低下
してすぐれた特性の永久磁石が得られない。よって、R
a10原子%〜30原子%の範囲が望ましい。
【0013】Bは、上記系永久磁石における必須元素で
あって、2原子%未満では菱面体構造が主相となり、高
い保磁力(iHc)は得られず、28原子%を超えると
Bリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(Br)
が低下するため、すぐれた永久磁石が得られない。よっ
て、Bは2原子%〜28原子%の範囲が望ましい。
【0014】Feは、上記系永久磁石において必須元素
であり、65原子%未満では残留磁束密度(Br)が低
下し、80原子%を超えると高い保磁力が得られないの
で、Feは65原子%〜80原子%の含有が望ましい。
また、Feの一部をCoで置換することは、得られる磁
石の磁気特性を損うことなく、温度特性を改善すること
ができるが、Co置換量がFeの20%を超えると、逆
に磁気特性が劣化するため、好ましくない。Coの置換
量がFeとCoの合計量で5原子%〜15原子%の場合
は、(Br)は置換しない場合に比較して増加するた
め、高磁束密度を得るために好ましい。
【0015】また、Ra、B、Feの他、工業的生産上
不可避的不純物の存在を許容でき、例えば、Bの一部を
4.0wt%以下のC、2.0wt%以下のP、2.0
wt%以下のS、2.0wt%以下のCuのうち少なく
とも1種、合計量で2.0wt%以下で置換することに
より、永久磁石の製造性改善、低価格化が可能である。
さらに、Al、Ti、V、Cr、Mn、Bi、Nb、T
a、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Zr、Ni、Si、
Zn、Hf、のうち少なくとも1種は、Fe−B−Ra
系永久磁石材料に対してその保磁力、減磁曲線の角型性
を改善あるいは製造性の改善、低価格化に効果があるた
め添加することができる。なお、添加量の上限は、磁石
材料の(BH)maxを20MGOe以上とするには、
(Br)が少なくとも9kG以上必要となるため、該条
件を満す範囲が望ましい。
【0016】また、この発明の永久磁石は平均結晶粒径
が1〜80μmの範囲にある正方晶系の結晶構造を有す
る化合物を主相とし、体積比で1%〜50%の非磁性相
(酸化物相を除く)を含むことを特徴とする。この発明
による永久磁石は、保磁力iHc≧1kOe、残留磁束
密度Br>4kG、を示し、最大エネルギー積(BH)
maxは、(BH)max≧10MGOeを示し、最大
値は25MGOe以上に達する。
【0017】
【作用】この発明による酸化錫膜を介して電着塗装によ
る耐食性樹脂層を有するFe−B−Ra系永久磁石が、
苛酷な雰囲気条件下において、初期磁石特性からの劣化
が少なく、磁石特性値が極めて安定する理由は未だ明ら
かではない。しかし、前記Fe−B−Ra系焼結磁石体
表面に、直接電着塗装による耐食性樹脂層を被着した場
合は、温度60℃、相対湿度90%に100時間放置の
苛酷な耐食性試験条件で、その磁石特性値は劣化し不安
定となるが、これに対して、前記焼結磁石体表面に特定
膜厚を有する酸化錫膜を介して、電着塗装による耐食性
樹脂層を形成することにより、下地との密着性が改善し
該耐食性樹脂層は緻密となり、湿気、ガス等の外部環境
の変化に対して、永久磁石を完全に保護できることが明
らかとなった。
【0018】
【実施例】
実施例1 公知の鋳造インゴットを粉砕し、微粉砕後に成形、焼
結、熱処理後に、14Nd−0.5Dy−7B−78.
5Fe組成の径12mm×厚み2mm寸法の磁石体試験
片を得た。その磁石特性を表1に示す。次に、Sn(O
374 1grをトリエタノールアミン1lに溶解
して、Snアルコキシド溶液を調製し、この溶液をよく
撹拌した後、前記磁石体試験片を浸漬し、引き上げて余
分な液を除去して、80℃で乾燥後、Ar雰囲気中で4
00℃に5時間の熱処理にて酸化錫被膜を生成し、膜厚
200Åの被膜を得た。膜中のC量は300ppmであ
った。
【0019】さらに、カチオン電着塗料として、エポキ
シ系のエスビアCED,S−20(神東塗料社製)を使
用し、前記の酸化錫膜を表面に被着したNd−Dy−B
−Fe系永久磁石を陰極とし、SUS316材を陽極と
して、温度28℃、電圧150V、3分間の条件で電着
塗装を施した後、水洗、乾燥し、さらに180℃で30
分間保持して、表面にエポキシ系樹脂層を形成した。な
お、樹脂層厚は16μmであった。
【0020】その後、得られたこの発明による酸化錫膜
を介して電着塗装による耐食性樹脂層を設けた永久磁石
を、温度80℃、相対湿度90%の条件下で500時間
放置した後の磁石特性、及びその劣化状況を測定した。
その結果を表1に表す。
【0021】比較例1 実施例1と同一組成、同一製造条件にて得られた焼結磁
石体に、直接実施例1と同一の電着塗装によるエポキシ
系樹脂層を形成した。樹脂層厚は17μmであった。そ
の後、比較例永久磁石を、温度80℃、相対湿度90%
の条件下で300時間放置したところ、エッジ部に膨れ
が生じ、500時間放置した後では一部に錆びが発生し
ていた。なお、500時間放置した後の磁石特性、及び
その劣化状況を測定した結果を表1に表す。
【0022】
【表1】
【0023】この発明の永久磁石を、温度80℃、相対
湿度90%の条件下で500時間放置した後の磁石特
性、及びその劣化状況を測定した結果を第1表に表す
が、さらに1000時間後の表面においても、錆は発生
せず、磁石特性もほとんど変わらない。これに対して、
比較焼結磁石体の耐食試験前後の磁石特性の劣化は、温
度80℃、相対湿度90%の条件下で500時間放置後
の特性を表1に示すとおりであり、その後1000時間
では表面に部分的に錆が発生した。
【0024】
【発明の効果】この発明によるFe−B−Ra系永久磁
石体は、実施例の如く、苛酷な耐食試験条件、特に、温
度80℃、相対湿度90%の条件下で、1000時間放
置した後、その磁石特性の劣化はほとんどなく、現在、
最も要求されている高性能かつ安価な永久磁石として極
めて適している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01F 41/02 G 8019−5E

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主相が正方晶相からなるFe−B−Ra
    系永久磁石体表面に、Cを100ppm〜1000pp
    m含有する膜厚500Å以下の酸化錫膜を介して、電着
    塗装による耐食性樹脂層を有することを特徴とする耐食
    性永久磁石。
  2. 【請求項2】 主相が正方晶相からなるFe−B−Ra
    系永久磁石体表面を清浄化処理した後、前記磁石体をス
    ズアルコキシド化合物溶液に浸漬するか前記磁石表面に
    スズアルコキシド化合物溶液を塗布した後、200℃〜
    450℃に30分〜10時間保持する熱処理によりCを
    100ppm〜1000ppm含有する酸化錫膜層を形
    成し、さらに、該磁石体を樹脂液に浸漬して電着塗装処
    理し、該磁石体表面に耐食性樹脂層を形成することを特
    徴とする耐食性永久磁石の製造方法。
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