JPH06172263A - 高純度アラキドン酸トリグリセリド及びその製造方法 - Google Patents

高純度アラキドン酸トリグリセリド及びその製造方法

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JPH06172263A
JPH06172263A JP4238899A JP23889992A JPH06172263A JP H06172263 A JPH06172263 A JP H06172263A JP 4238899 A JP4238899 A JP 4238899A JP 23889992 A JP23889992 A JP 23889992A JP H06172263 A JPH06172263 A JP H06172263A
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arachidonic acid
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acid triglyceride
triglyceride
purity
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Yoshiji Kosugi
佳次 小杉
Noboru Tomizuka
登 冨塚
Naoteru Azuma
直輝 東
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BOOSOO YUSHI KK
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
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BOOSOO YUSHI KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高純度アラキドン酸トリグリセリド及びその
製造方法を提供する。 【構成】 アラキドン酸とグリセリンを固定化リパーゼ
の存在下で反応させて得られた反応生成物の精製品から
なり、アラキドン酸トリグリセリド濃度が99重量%以
上であることを特徴とする高純度アラキドン酸トリグリ
セリド。アラキドン酸とグリセリンを化学量論量又はそ
の近傍の配合割合で混合して基質を調製し、該基質を固
定リパーゼと接触させて反応させるとともに、その反応
に際して副生した水を除去し、反応液中の水分濃度を1
000ppm以下に保持することを特徴とするアラキド
ン酸トリグリセリドの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高純度アラキドン酸ト
リグリセリド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】身体機能を調節する上で必要な必須脂肪
酸であるリノール酸は、動物体内では合成することがで
きないため食物から摂取する必要がある。そのリノール
酸は、動物体内に於いて鎖長延長、不飽和化され、アラ
キドン酸が合成される。更にアラキドン酸から必要に応
じて、ホルモン様物質である多くのイコサノイド(プロ
スタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン、そ
の他関連物質)が生成される。これらのイコサノイドは
各種の特異的生理活性を有しており、その生理活性のほ
とんどは、母分子であるリノール酸よりも代謝産物に於
いて強い。さらに、上記代謝過程に於ける酵素反応が、
数多くの因子により阻害を受けることが知られており、
予防医学又は治療学においてはこれら高度不飽和脂肪酸
(PUFA)誘導体を直接供給する方が好ましい状況が
生まれている。このことからPUFAは条件付きで必須
であると次第に認められるようになっている。PUFA
は上記のような必要性を持ちながら天然界には供給源が
少ないため、微生物などによる生産が研究され、将来増
加すると予想される成人病の予防、治療を目指した開発
も行われている。(S.R.Gandhi and J.D.Weeta,J.Gen.Mi
crobio1,137,(1991)1825-1830.)
【0003】ところが、そのPUFAを含有する油脂
も、必要とするPUFAのみが存在するわけでなく、混
酸型油脂として生産されるため、その混酸型油脂を直接
機能性食品等として利用すると、単体のPUFA(例え
ばn−6系列の脂肪酸に属するアラキドン酸)の持つ機
能を、他の脂肪酸(例えばn−3系列の脂肪酸に属する
イコサペンタエン酸)が打ち消す場合があり(鬼頭
誠,油化学,40,(1991)838−844.)、
あまり効率的な利用方法とはいえない。アラキドン酸の
もつ機能を有効的に利用するためにはトリグリセリド中
のアラキドン酸含量を増やすことが重要である。また、
医薬品的な利用を考えた場合においては、アラキドン酸
単体としての高純度品が必要となるため、遊離脂肪酸、
あるいは脂肪酸エチルエステル等、油脂から脂肪酸を単
離させた状態で使用される場合がある。しかし、アラキ
ドン酸は、遊離脂肪酸のままでの製品化では、安定性の
面から品質劣化を起こす事が懸念され好ましいとは言い
難い。又、エチルエステル態での経口摂取は医薬品とし
ての利用の可能性は有するものの、人における生体吸収
率が悪いとの報告がある(Carol M.Wojenski et al.Bio
chem.Biophys.Acta 1081(1991)33-38,Larry D.Lawson e
t al.Biochem.Biophys.Res.Commun.152,(1988)328-33
5.)。上記のことから、アラキドン酸は、天然形態であ
るトリグリセリド態に再合成することが好ましいという
ことになるが、一方、アラキドン酸は、分子内に反応性
の高い二重結合を多数有するため、ナトリウムメチラー
ト等の化学触媒を用いた従来のエステル合成法では、酸
化、重合等による品質の劣化を起こし、目的のトリグリ
セリドを得ることは困難である。また、純粋なるアラキ
ドン酸を用いてリパーゼによるアシドリシス反応により
トリグリセリド中のアラキドン酸含有量を高めようとす
る研究報告(長田 恭一ら、油化学,Vol40,(1991)1037
-1040,)があるが、トリグリセリドへのアラキドン酸導
入率は20%前後であった。上記のように、従来技術で
は高純度のアラキドン酸トリグリセリドを合成する手段
は存在せず、アラキドン酸の有効的な利用は望めなかっ
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高純度アラ
キドン酸トリグリセリド及びその製造方法を提供するこ
とをその課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成する
に至った。すなわち、本発明によれば、アラキドン酸と
グリセリンを固定化リパーゼの存在下で反応させて得ら
れた反応生成物の精製品からなり、アラキドン酸トリグ
リセリド濃度が99重量%以上であることを特徴とする
高純度アラキドン酸トリグリセリドが提供される。ま
た、本発明によれば、アラキドン酸とグリセリンを化学
量論量又はその近傍の配合割合で混合して基質を調製
し、該基質を固定リパーゼと接触させて反応させるとと
もに、その反応に際して副生した水を除去し、反応液中
の水分濃度を1000ppm以下に保持することを特徴
とするアラキドン酸トリグリセリドの製造方法が提供さ
れる。
【0006】本発明によるアラキドン酸トリグリセリド
は、次の化学式で表される。 (式中、Rはアラキドン酸残基を示す)
【0007】本発明により高純度アラキドン酸トリグリ
セリドを製造するには、アラキドン酸とグリセリンを配
合して基質を調製する。アラキドン酸とグリセリンの混
合比は、化学量論量付近とすることにより、トリグリセ
リド収率90%以上の高濃度でアラキドン酸トリグリセリ
ドを含む反応液を得ることができるが、反応に於ける諸
条件により、アラキドン酸が重合化等の変性を起こすこ
とが観察される場合は、グリセリンの添加量をトリグリ
セリド合成のための化学量論量より若干少なくすること
により、副産物であるジグリセリド生成量を減少させ、
高収率でアラキドン酸トリグリセリドを得ることができ
る。
【0008】本発明の酵素反応において用いる酵素は、
固定化リパーゼである。本発明の方法においては、反応
液中の水分濃度を1000ppm以下に保持して反応を
行うことから、その反応液中にリパーゼが均一に分散し
やすいように、リパーゼは固定化して使用することが必
要である。また、固定化リパーゼとしては、従来公知の
各種のものを使用し得るが、本発明では、反応液は前記
のように1000ppm以下の超微小環境下でもリパー
ゼ活性を有するものであることが必要である。本発明で
用いる好ましい固定化リパーゼとしては、例えば、ムコ
ール属のリパーゼを陰イオン交換樹脂に固定化したもの
(ノボ社製LipozymeIM60)、キャンディダ
属のリパーゼをアクリル樹脂に固定化したもの(ノボ社
製SP382)等が挙げられる。また、化学的、または
物理的処理により微水系で反応可能なように修飾した固
定化リパーゼを用いることもできる。
【0009】基質と固定化リパーゼとの接触反応温度
は、通常、30〜60℃である。また、本発明では、基
質と固定化リパーゼとの接触反応に際して副生する水を
反応液から系外へ脱水除去するが、この場合の脱水方式
としては、真空脱水方式や、乾燥不活性ガスの通気方式
等を採用することができる。本発明では、反応液中の含
水量を1000ppm以下、好ましくは500ppm以
下の超微水環境に保持する。反応液中の水分濃度が高く
なると、アラキドン酸トリグリセリドの生成率が悪くな
り、反応生成物中にはモノグリセリドやジグリセリド等
のトリグリセリドから分離困難な副生物が多量生成する
ようになるので好ましくない。また、反応液中の水分濃
度が低くなりすぎると、固定化リパーゼの活性が著しく
低下するようになる。従って、本発明では、反応液中の
水分濃度は、0〜1000ppm、好ましくは5〜50
0ppmの範囲に限定するのがよい。
【0010】本発明により得られた反応生成物は、従来
公知の精製処理を施してアラキドン酸トリグリセリド濃
度が95重量%以上、好ましくは99重量%以上の精製
品とされる。精製方法としては、塩基性アルミナ等の吸
着性物質を用いる吸着分離法が好ましく採用される。本
発明による反応生成物は、トリグリセリドから分離困難
なモノグリセリドやジグリセリドの副生量が非常に低い
ので、その精製は容易に行うことができる。
【0011】
【実施例】次に本発明を実施例を持って詳細な説明を行
う。
【0012】実施例1 容器中の大気を窒素で置換した反応容器に、アラキドン
酸(純度99%)1.0gと、グリセリン0.101g
(化学量論量)とを配合した基質に、固定化リパーゼと
してLipozymeIM60を0.1gを加え、真空
ポンプにより10mmHg程度まで脱気しながら60℃
で24時間及び、48時間振とう反応を行った。任意時
間反応後に反応液から固定化酵素を濾別し、エーテル:
エタノール(1:1)に反応液を溶解させることにより
完全に反応を停止させた。該反応溶液を、GPCカラム
を装着した高速液体クロマトグラフ(HPLC)により
分析を行ったところ、24時間反応で82.5%、48
時間反応で93.7%の割合で、アラキドン酸トリグリ
セリドが合成されていた。
【0013】実施例2 容器中の大気を窒素で置換した容器に、アラキドン酸
1.20g、グリセリン0.121g、固定化リパーゼ
SP382を0.12g加え、真空ポンプにより10m
mHg程度まで脱気しながら、60℃で24時間振とう
反応を行った。実施例1と同様な操作を行い反応停止を
行い、HPLCにより分析を行ったところ反応液中には
97.7%のアラキドン酸トリグリセリドが生成してお
り、不純物として1.7%のジグリセリド及び0.6%
のアラキドン酸が検出された。得られた反応生成物の不
純物を塩基性活性アルミナにより吸着除去した精製品を
HPLCにより分析すると、トリグリセリド純度は99
%であった。
【0014】次に、この精製品を常法によりメチルエス
テル化し、キャピラリーガスクロマトグラフィーにより
脂肪酸純度の分析を行ったところ、アラキドン酸純度は
99%であり、合成反応中にアラキドン酸の変性は起こ
らないことを確認した。この精製品につき、1H−NM
R(JEOL JNM−GSX500型)及びIR分析
(JEOL JIR−100)を行った。1H−NMR
の分析結果、全てのメインピークの化学シフトはアラキ
ドン酸トリグリセリドに帰属された。化学シフトの位置
は、5.37,4.29,4.15,2.81,2.3
3,2.05,1.70,1.30,0.89ppmで
ありピークの大きさから推定される水素原子数も理論値
とほぼ一致した。一方、NaCl板に塗布したFT−I
Rスペクトラムは図1に示すとおりであり、3012c
-1にCH=の吸収、1745cm-1にエステルC=0
の吸収、1655cm-1にシス体のC=Cの吸収、11
43cm-1にエステルのC−0の吸収があることが確認
された。更に、該精製品は下記の構造特性と理化学特性
を有する。即ち、その元素組成は炭素、酸素、水素であ
る。ガスクロマトグラフィーのキャピラリーカラムによ
る溶出パターンより構成脂肪酸は、アラキドン酸であ
る。また、高速液体クロマトグラフィーのGPC(ゲル
パーミエイション)カラムによる溶出パターン及びNM
Rのプロトン強度と帰属から推定される構造式により、
分子量は951.4である。−30℃においても液状を
保つ該精製品は、ノルマルヘキサン、エチルエーテル、
アセトン、クロロホルムに可溶な無色透明な中性物質で
あり、薄層クロマトグラフィーのスポットは沃素蒸気下
で、褐色に発色する。以上の結果より、該精製品は、ア
ラキドン酸トリグリセリドであることを特定した。
【0015】
【発明の効果】このように本発明により得られるアラキ
ドン酸トリグリセリドは非常に高い純度を有するため、
医学用の実験(例えば静脈注射剤として)などに有効で
あり、又その生理活性が解明されることにより医薬品と
しての可能性を有する。又、化学的形態が天然の食用油
と同様の構造を有するため食品としての利用が可能であ
り、アラキドン酸の有する機能を抑制するといわれてい
るn−3系列の脂肪酸を含まないため、機能性食品へ所
定量を的確に添加することができるなどの効果を有す
る。更に、本発明の方法によれば、従来の化学触媒を用
いた合成法に不可欠であった触媒分離、水洗等の煩雑な
操作を必要とする事なく、且つ人体にとって有害なメチ
ルアルコールエステルを生成する恐れもなく、アラキド
ン酸トリグリセリドを高濃度に有する反応生成物を得ら
れるため、容易に高純度の精製品が得られる効果を有す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】アラキドン酸トリグリセリドのFT−IRスペ
クトラムの図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12N 9/20 C12R 1:72) (72)発明者 冨塚 登 茨城県つくば市東1丁目1番3号 工業技 術院微生物工業技術研究所内 (72)発明者 東 直輝 千葉県船橋市日の出2丁目17番1号 ボー ソー油脂株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 純度99重量%以上の高純度アラキドン
    酸トリグリセリド。
  2. 【請求項2】 アラキドン酸とグリセリンを固定化リパ
    ーゼの存在下で反応させて得られた反応生成物の精製品
    からなり、アラキドン酸トリグリセリド濃度が99重量
    %以上であることを特徴とする高純度アラキドン酸トリ
    グリセリド。
  3. 【請求項3】 アラキドン酸とグリセリンを化学量論量
    又はその近傍の配合割合で混合して基質を調製し、該基
    質を固定化リパーゼと接触させて反応させるとともに、
    その反応に際して副生した水を除去し、反応液中の水分
    濃度を1000ppm以下に保持することを特徴とする
    アラキドン酸トリグリセリドの製造方法。
  4. 【請求項4】 該リパーゼとして、ムコール属又はキャ
    ンディダ属に属するリパーゼを用いる請求項3の方法。
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