JPH06164186A - 電磁波遮蔽体 - Google Patents

電磁波遮蔽体

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Publication number
JPH06164186A
JPH06164186A JP33369692A JP33369692A JPH06164186A JP H06164186 A JPH06164186 A JP H06164186A JP 33369692 A JP33369692 A JP 33369692A JP 33369692 A JP33369692 A JP 33369692A JP H06164186 A JPH06164186 A JP H06164186A
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JP
Japan
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film
electromagnetic wave
silver layer
wave shielding
sample
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JP33369692A
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Inventor
Hidemi Nakai
日出海 中井
Etsuo Ogino
悦男 荻野
Toshio Sumi
俊雄 角
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Nippon Sheet Glass Co Ltd
Original Assignee
Nippon Sheet Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 優れた電磁波遮蔽性能と高い可視光線透過率
との両立を図るとともに、低コストの単板の電磁波遮蔽
体を提供する。 【構成】 透明誘電体層11と銀層12とをこの順序で
交互に透明基体10上に形成して多層膜が構成されてい
る。そして、この多層膜上には、酸化シリコン、酸窒化
シリコン及び窒化シリコンのうちの何れかの膜13が形
成されている。そして、この膜13は、1μm乃至20
μmの範囲内の膜厚で形成されている。この膜13の形
成は、反応ガス供給後の反応室の真空度が10Pa以下
であって、且つ電子の数密度が1011/cm3 以上のア
ーク放電プラズマ中の化学的気相合成法で形成されてい
る。この膜13は銀層12に対して極めて優れた保護膜
として作用するため、単板で使用可能な耐久性を有する
電磁波遮蔽体を得ることが出来る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電磁波の遮蔽性能に優
れるとともに、可視光線について高透過率を有し、単板
で使用することが出来る電磁波遮蔽体に関する。
【0002】
【従来の技術】今日の情報化社会においては、種々の電
磁波が、種々の役割を果たすために多くの装置で用いら
れている。そして、この傾向は今後ますます強まるもの
と考えられている。しかし、これらの電磁波によって、
コンピュータ、電子制御機器、工業用ロボット等の装置
の誤動作を生じ、いわゆる電磁波障害が発生していた。
また、機密保持の点から、コンピュータ等の装置内の情
報を含んだ電磁波の漏洩を防止することが必要とされて
いた。
【0003】そこで、電磁波を遮蔽するために、オフィ
イスとして使用する部屋を地下に設置したり、地上に設
置する場合は窓のない部屋にするといった手段がとられ
ていた。
【0004】しかし、地下室や窓のない部屋をオフィス
として使用するには、オフィス内に居る人にとって精神
衛生上の問題があった。この問題を解決するため、従
来、電磁波を遮蔽しながら、地上の窓のあるオフィスと
同等の快適性をもたせるために、電磁波を遮蔽する透明
な窓ガラスが提案されていた。
【0005】このような窓ガラスとして使用できる第1
従来例として、銀のような金属膜を透明誘電体膜で挟ん
で、サンドイッチ構造にした被膜をガラス基板上に形成
したものがある。特に、銀膜を用いることにより、高い
電磁波遮蔽性能を得ることが出来るとともに、可視光線
領域での吸収を少なくすることが出来、これにより透過
率を高くすることが出来る。
【0006】しかし、第1従来例によれば、銀膜の化学
的、機械的耐久性が十分ではないので、外部環境に直接
曝されないようにいわゆる複層ガラスとして使用しなけ
ればならなかった。
【0007】また、第1従来例において、銀膜の代わり
に耐久性に優れたタンタルやチタンのような金属膜を用
いた場合には、電磁波遮蔽能を高めるために金属膜の膜
厚を厚くしなければならず、これにより可視光線領域の
透過率が大幅に低減するという問題があった。
【0008】更に、第2従来例としては、耐久性が高い
電磁波遮蔽ガラスとして、ニッケルメッキしたポリエス
テル繊維をネット状に組んでなる電磁波遮蔽材料を、2
枚のプラスチックフィルムを介して2枚の透明ガラスの
間に挟み込んだ合わせガラス(日本板硝子社製品名マグ
ペーンR )が市販されている。
【0009】しかし、第1従来例の複層ガラスや第2従
来例の合わせガラスは、自動車のリアガラスやサイドガ
ラスに使用出来ず、使用する場所の制限を受けていた。
また、第1従来例の複層ガラスや第2従来例の合わせガ
ラスをコストの面から使用したくないという用途に対し
ては、単板の状態で使用出来る低コストの電磁波遮蔽体
が要望されていた。
【0010】そこで、第3従来例としては、単板で使用
することが出来る電磁波遮蔽体として、少量の酸化錫を
ドープ剤として含む酸化インジウムのような酸化物半導
体の厚膜(1μm以上)を利用するものが提案されてい
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかし、酸化物半導体
の厚膜を利用する場合には、銀膜と比べて電磁波遮蔽性
能が劣るため、電磁波遮蔽性能を高めるためには少なく
とも1μm以上の膜厚が必要であり、少量の酸化錫をド
ープ剤として含む酸化インジウムのような高価な半導体
材料を厚膜で利用するため高コストであった。
【0012】そこで、本発明の目的は、優れた電磁波遮
蔽性能と高い可視光線透過率との両立を図ることが出来
るとともに、低コストな単板の電磁波遮蔽体を提供する
ことにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明に係る電磁波遮蔽
体は、透明基体10と、この透明基体10上に、透明誘
電体層11と銀層12とがこの順序で交互に積層されて
構成されている多層膜と、この多層膜上に形成され、酸
化シリコン、酸窒化シリコン及び窒化シリコンのうちの
何れかの膜であって且つ1μm乃至20μmの範囲の膜
厚を有する膜13とを備えてなり、この膜13は、反応
ガス供給後の雰囲気の圧力が10Pa以下であって、且
つ電子の数密度が1011/cm3 以上のアーク放電プラ
ズマ中における化学的気相合成法で形成された膜である
ことを特徴とする。
【0014】
【作用】酸化シリコン、酸窒化シリコン及び窒化シリコ
ンのうちの何れかの膜であって且つ1μm乃至20μm
の範囲の厚さを有する膜を、高真空高密度アーク放電プ
ラズマ中の化学的気相合成法により形成したため、この
膜にクラックが発生するのを防止することが出来る。更
に、この膜は、多層膜の最上層の膜との密着性に優れて
いる。従って、この膜は、多層膜中の銀層に対して極め
て優れた保護膜として作用する。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面を参照しな
がら説明する。なお、図1及び図2の共通部分には同一
の符号を付してある。
【0016】図1は、本発明に係る電磁波遮蔽体の一例
を示す側面図である。図中、透明基体10としては、本
実施例では、耐久性を考慮してガラス基板が使用されて
いる。このガラス基板10の代わりにアクリル板やポリ
カーボネート板のようなプラスチック板を用いてもよ
い。そして、ガラス基板10上には、透明誘電体層11
及び銀層12がこの順序で順次に積層されている。この
透明誘電体層11及び銀層12を、後述する実施例1〜
5では3層積層した場合及び5層積層した場合について
示したが、2層以上であれば何層積層してもよい。
【0017】次に電磁波遮蔽体の製造方法について説明
する。先ず、透明誘電体層11としては、酸化錫、酸化
亜鉛、酸化タンタル、及び酸化ジルコニウムなどの何れ
かを用いることができる。これらの透明誘電体層11
は、銀層12とガラス基板10との間の付着力を保つた
めに必要である。また透明誘電体層11の屈折率は、可
視光線の反射率を下げるために2.0程度であることが
望ましい。更に、この透明誘電体層11の膜厚は、可視
光線領域での透過率が高くなるように、即ち反射率が低
くなるように10〜100nmの範囲で調整されてい
る。この範囲から透明誘電体層11の膜厚が外れると可
視光線の反射率が増加する。
【0018】次に、透明誘電体層11の上に銀層12を
形成する。この銀層12の膜厚の範囲は、電磁波遮蔽性
能を高くし、且つ可視光線領域の透過率を高くするため
に、6〜20nmであることが好ましい。銀層12の膜
厚がこの範囲の上限より厚くなると、可視光線領域での
透過率が減少し、約50%以上の透過率の値を確保する
ことが困難となる。この約50%以上の可視光線の透過
率は、建物や自動車の窓ガラスに適用する場合に、薄暮
のように室外や車外が暗くなってきても、自然に十分な
視界を確保できるために必要な値である。また、銀層1
2の膜厚がこの範囲の下限より薄くなると、銀層12が
島状に点在する構造となり、電磁波遮蔽性能が低下する
とともに、化学的耐久性も悪化する。
【0019】また、前記銀層12の直上に、Ni、T
i、Zrなどの金属被膜またはTiN、ZrNなどの金
属窒化物被膜を、1〜5nmの膜厚で形成してもよい。
このように形成することにより、銀層上に透明誘電体層
の酸化物の膜を被覆するときに、銀層の酸化を防止する
ことが出来る。
【0020】次に、透明誘電体層11と銀層12とを積
層して形成した多層膜の上に、酸化シリコン、酸窒化シ
リコン、窒化シリコンのうち何れか1つ又は2つ以上積
層した被膜を1μm乃至20μmの範囲の膜厚の厚膜1
3で形成する。この範囲の下限より薄くなると化学的及
び機械的な外力に対する耐久性が劣化する。また上限よ
り厚くなると膜応力の絶対値が増大する。厚膜13の膜
厚の範囲は1μm〜10μmであることが好ましい。更
に好ましい範囲は、2μm〜5μmである。
【0021】このようにして、銀層12により優れた電
磁波遮蔽性能を実現するとともに、銀層12に対する厚
膜13の保護膜を形成することにより、電磁波遮蔽体を
単板で使用出来る耐久性を確保することが出来る。これ
らの膜は、何れも可視光線領域で透明で、屈折率が2.
0以下であるので、可視光線の透過率を高めることがで
きるとともに、可視光線の反射率を下げることができ
る。
【0022】図2は、透明誘電体層11と、この透明誘
電体層11の上に積層する銀層12とを繰り返して積層
した場合を示す。この繰り返し数は必要に応じて決定す
ることが出来る。このように透明誘電体層11と銀層1
2とを繰り返して積層する場合に、透明誘電体層11の
各層を同じ材料から構成すると製造する上で有利であ
る。しかし、これに限定されるわけではなく、光学特
性、例えば屈折率が満足されるならば、異なる材料を用
いても良い。
【0023】図4は、厚膜13を成膜するのに用いる高
真空高密度アーク放電プラズマを利用した化学的気相合
成装置の概略断面図である。この化学的気相合成装置
は、本出願人が先に提案した特開平4−110473に
示す装置と類似しているが、本願では基板を加熱してい
る点が大きく異なる。
【0024】この化学的気相合成装置は、減圧された雰
囲気を調製することが出来る真空槽21と、この真空槽
21内にプラズマビームを発生させる圧力勾配型のプラ
ズマビーム発生装置38とを備えている。
【0025】真空槽21内には、成膜室(反応室)22
が形成されている。そして成膜室22内には、基板24
の表面に対向して基板24の移動方向に複数のヒータ2
3が配列されている。そして、このヒータ23により基
板24を加熱する。更に、真空槽21には、基板24の
表面を含む平面についてヒータ23と反対側に、放電陽
極29が絶縁体30を介して取り付けられている。そし
て、この放電陽極29は、結線41を介して直流電源3
7のプラス側に接続されているとともに、成膜室22内
に露出する部分が開口31aを有する防着板31で覆わ
れている。
【0026】真空槽21には、放電陽極29と対向して
プラズマビーム発生装置38が取り付けられている。こ
のプラズマビーム発生装置38は、電子加速用の複数の
中間電極27と、これらの中間電極27間及び中間電極
27と真空槽21との間をそれぞれ絶縁する絶縁体30
と、Taパイプ及びディスク状LaB6 を有する複合陰
極28と、成膜室22内にArの放電ガスを導入する導
入管33とを備えている。そして、複合陰極28は結線
42を介して、複数の中間電極27の一方の中間電極5
1は抵抗R1 及び結線43を介して、他方の中間電極5
2は抵抗R2 及び結線44を介して、それぞれ直流電源
37のマイナス側に接続されている。
【0027】前記プラズマビーム発生装置38及び放電
陽極29のそれぞれの近傍には、プラズマビーム発生装
置38により発生させたプラズマビームを放電陽極29
に向かうようにする空芯コイル25が配設されている。
そして、プラズマビーム発生装置38と空芯コイル25
との間には、プラズマビーム発生装置38から引き出さ
れたプラズマ流をシート状にするための一対の永久磁石
26が配設されている。
【0028】更に成膜室22内のシートプラズマ32に
対して基板24と反対側にはガス供給ノズル34が配置
されている。そして、このガス供給ノズル34には、原
料ガス源(不図示)から原料ガスを導入する原料ガス導
入管35と、反応ガス源(不図示)から反応ガスを導入
する反応ガス導入管36とがそれぞれ連結されている。
【0029】上述した化学的気相合成装置により膜形成
を行うには、先ず真空槽21にセットした基板24を加
熱する。次に導入管33から放電ガスを導入する。次
に、プラズマビーム発生装置38と放電陽極29との間
に直流電力を供給して、高密度アーク放電プラズマ流を
成膜室22内に引き出す。次に、一対の永久磁石26に
より、引き出されたプラズマ流をシート状に形成する。
次に、ガス供給ノズル34から原料ガスと反応ガスとを
成膜室22内に導入することにより高速で厚膜13の形
成を行うことが出来る。
【0030】以上のように、酸化シリコン、酸窒化シリ
コン、窒化シリコンのうち何れかの厚膜13を、高真空
高密度アーク放電プラズマ中の化学的気相合成法で形成
したため、高速で成膜出来るので工業的生産手段として
好適である。また、このようにして得られる厚膜13
は、基板10を加熱しない従来法で得られる厚膜に比べ
て緻密である。更に、1μm以上の厚膜13であっても
クラック(膜のひび割れ)の発生がなく、下地との密着
性に優れている。従って、化学的、機械的な外力に対し
て十分な抵抗を示すことが出来る。
【0031】また、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒
化シリコンのうち何れかの厚膜13の膜厚は、少なくと
も1μm以上必要であり、好ましくは2μm以上である
ことが望ましい。このような厚膜13とすることによ
り、銀層12に対して十分な保護効果が得られるととも
に、光学干渉による色むらの発生を抑えることが出来
る。また、厚膜13の表面が化学的に侵されたとして
も、上述した膜厚とすることにより、光学特性の変化量
を小さく抑えることが出来る。
【0032】(実施例1)先ず、周知の直流マグネトロ
ンスパッタ装置を用いてガラス基板10上に多層膜を形
成してなるガラスサンプルを作成する。このガラスサン
プルを作成するには、初めに直流マグネトロンスパッタ
装置の2つのカソードに、それぞれ金属Znと金属Ag
をセットする。次に、表面を清浄にした2mm厚のフロ
ートガラス基板を真空槽にいれ、この真空槽内を真空ポ
ンプで1×10-3Pa以下まで排気する。次に、この真
空槽内に酸素ガスを導入し、スロットルバルブを用いて
0.2Paの圧力に調整する。次に、金属Znターゲッ
トに3Aの電流を流してスパッタを開始する。そして、
ターゲットの上方を所定の速度でガラス基板を通過させ
る。このようにして、約73nmの第1層目の透明誘電
体層11である酸化亜鉛被膜を形成した。
【0033】次いで、真空槽の雰囲気をArガスに置換
し、圧力を0.2Paに調節する。次に、金属Agター
ゲットに1Aの電流を流してスパッタを開始し、ターゲ
ットの上方を所定の速度でガラス基板を通過させる。こ
のようにして、約10nmの銀層12を酸化亜鉛被膜の
上に形成した。
【0034】次いで、再度、真空槽内の雰囲気を酸素ガ
スに置換して、第1層目と同様にして、銀層の上に約3
6nmの酸化亜鉛被膜を形成した。
【0035】このようにして3層の多層膜が形成された
ガラスサンプルを直流マグネトロンスパッタ装置の真空
槽から取り出し、直ちに上述した高真空高密度のアーク
放電プラズマを利用した化学的気相合成装置の真空槽2
1にセットする。次に、ガラスサンプルをヒータ23に
より、約150℃に加熱する。このときのガラスサンプ
ルの加熱温度は、本実施例では約150℃にしたが、約
150℃でなくてもよく、100℃〜200℃の範囲が
好ましい。100℃未満では、厚膜13を形成する際に
SiH4 の原料ガスの未分解生成物がこの厚膜13中に
取り込まれ、厚膜13がポーラスとなる。また、200
℃より高くなると、銀層12が凝集して光学性能が低下
する。なお、ガラスサンプルの加熱の温度範囲として、
さらに好ましいのは130℃〜170℃である。
【0036】次に、成膜室22内を5×10-4Pa以下
に排気する。その後に、放電ガス(Ar)を導入管33
から成膜室22内に約40sccmの流量で導入する。
導入後の成膜室22内の圧力は0.03Paであった。
次に、複合陰極28を予備加熱した後、約80Aの直流
電流を印加し、シート状の高密度プラズマ32を形成す
る。
【0037】次いで、原料ガスとしてSiH4(モノシラ
ン) ガスを導入管35から約400sccm、反応ガス
として酸素ガスを導入管36から約1000sccmの
流量でそれぞれ導入し、ガス供給ノズル34からシート
プラズマ32中に供給する。供給後の成膜室22内の圧
力は約1Paであり、13Pa以上の圧力で行う通常の
プラズマCVDよりもはるかに高真空である。
【0038】次いで、シートプラズマ32上を所定の速
度でガラスサンプルを往復通過させ、酸化亜鉛被膜の上
に厚膜13である約3μmの酸化シリコン被膜を形成す
る。
【0039】上述した如く構成されたサンプルの電磁波
遮蔽性能をKEC法により測定した結果、200MHz
から1GHzにわたる広い周波数帯において、少なくと
も約40dB(電磁波の強度がもとの0.01%程度に
減衰)の遮蔽特性を示していた。また、このサンプルの
可視光線透過率は71.2%、日射光線透過率は53.
4%であった。そして、サンプルの透過色及び反射色
は、共に中性色(ニュートラルな無彩色)であった。
【0040】また、図3の実線15がこのサンプルの赤
外線遮蔽性能を測定した結果を示している。この実線1
5から、このサンプルの赤外線の透過が効果的に抑えら
れていることがわかる。
【0041】次いで、このサンプルの耐湿試験を、50
℃、95%RH(相対湿度)の雰囲気中に約240時間
放置して行った。目視観察の結果では、少数の小さなピ
ンホールが存在する程度で大きな変化は認められなかっ
た。
【0042】(実施例2)先ず、実施例1と同様に、ガ
ラス基板10上に酸化亜鉛膜、銀層及び酸化亜鉛膜から
構成される3層被膜をこの順序で形成してガラスサンプ
ルを作成する。その後に、このガラスサンプルを実施例
1と同一の化学的気相合成装置の真空槽21にセット
し、ヒータ3により約150℃に加熱する。次に、最上
層の膜も実施例1と同様の方法で、前記3層被膜の上に
約3μmの厚さの酸窒化シリコンの膜を形成する。ここ
で、反応ガスとして300sccmの酸素ガスと600
sccmの笑気ガス(N2 O)を用いることにより、酸
化シリコンの代わりに酸窒化シリコンを成膜した点だけ
が実施例1と異なる。
【0043】そして、ガラスサンプルは、ガラス基板1
0上の72nm厚の酸化亜鉛膜、この酸化亜鉛膜上の8
nm厚の銀層、この銀層上の17nm厚の酸化亜鉛膜及
び3μm厚の酸窒化シリコン厚膜を備えて構成されてい
る。このサンプルの電磁波遮蔽性能をKEC法により測
定した結果、200MHzから1GHzにわたる広い周
波数帯において、少なくとも30dB以上(電磁波の強
度がもとの0.1%以下に減衰)の遮蔽特性を示してい
た。また、このサンプルの可視光線透過率は71.8
%、日射光線透過率は59.0%であった。そして、サ
ンプルの透過色及び反射色は、実施例1と同様に共に中
性色であった。
【0044】また、図3の一点鎖線16がこのサンプル
の赤外線遮蔽性能を測定した結果を示している。この一
点鎖線16から、このサンプルの赤外線の透過が効果的
に抑えられていることがわかる。
【0045】次いで、このサンプルの耐湿試験を、50
℃、95%RHの雰囲気中に約240時間放置して行っ
た。目視観察の結果では、実施例1と同様に少数の小さ
なピンホールが存在する程度で大きな変化は認められな
かった。
【0046】(実施例3)先ず、実施例1及び2と同様
に、ガラス基板10上に酸化亜鉛膜、銀層及び酸化亜鉛
膜から構成される3層被膜をこの順序で形成してガラス
サンプルを作成する。
【0047】その後に、このガラスサンプルを実施例1
と同一の化学的気相合成装置の真空槽21にセットし、
ヒータ23により約150℃に加熱する。次に、厚膜1
3も実施例1及び2と同様の方法で、3層被膜の上に約
3μmの厚さの窒化シリコンの膜を形成する。ここで、
反応ガスとして1000sccmの窒素ガスを用いて、
酸化シリコン又は酸窒化シリコンの代わりに窒化シリコ
ンを成膜した点だけが実施例1及び2と異なる。
【0048】このようにして、ガラスサンプルは、ガラ
ス基板上の71nm厚の酸化亜鉛膜、この酸化亜鉛膜上
の15nm厚の銀層、この銀層上の14nm厚の酸化亜
鉛膜及び3μm厚の窒化シリコン厚膜を備えて構成され
ている。このサンプルの電磁波遮蔽性能をKEC法によ
り測定した結果、200MHzから1GHzにわたる広
い周波数帯において、少なくとも40dB以上(電磁波
の強度がもとの0.01%以下に減衰)の遮蔽特性を示
していた。また、このサンプルの可視光線透過率は5
2.2%、日射光線透過率は41.6%であった。そし
て、可視光線反射率は約28%と高いものの、サンプル
の透過色及び反射色は、実施例1と同様に共に中性色で
あった。
【0049】(実施例4)実施例4では、酸化亜鉛膜、
銀層及び酸化亜鉛膜から成る多層膜の膜厚のみが実施例
3と異なる。即ち、実施例4では、ガラス基板上の80
nm厚の酸化亜鉛膜、この酸化亜鉛膜上の6.5nm厚
の銀層、この銀層上の20nm厚の酸化亜鉛膜及び3μ
m厚の窒化シリコン厚膜を備えて構成されている。この
サンプルの可視光線透過率は70.5%、日射光線透過
率は63.6%であった。そして、可視光線反射率は約
15%とやや高いものの、サンプルの透過色及び反射色
は、共に中性色であった。
【0050】また、図3の二点鎖線17が、このサンプ
ルの赤外線遮蔽性能を測定した結果を示している。この
二点鎖線17から、このサンプルの赤外線の透過が効果
的に抑えられていることがわかる。
【0051】次いで、このサンプルの耐湿試験を、50
℃、95%RHの雰囲気中に約240時間放置して行っ
た。目視観察の結果では、実施例1又は2と同様に少数
の小さなピンホールが存在する程度で大きな変化は認め
られなかった。
【0052】(実施例5)実施例1と同様の成膜を反復
することにより、ガラス基板上に酸化亜鉛膜、銀層、酸
化亜鉛膜、銀層及び酸化亜鉛膜をこの順序で成膜して5
層被膜の多層膜を形成する。その後に、このガラスサン
プルを実施例1と同一の化学的気相合成装置の真空槽に
セットし、ヒータ23により約150℃に加熱する。次
に、厚膜13も実施例1と同様の方法で、前記3層被膜
の上に約3μmの厚さの酸化シリコンの膜を形成する。
【0053】このようにして得られたガラスサンプル
は、ガラス基板上の38nm厚の酸化亜鉛膜、この酸化
亜鉛膜上の12nm厚の銀層、この銀層上の88nm厚
の酸化亜鉛膜、この酸化亜鉛膜上の12nm厚の銀層、
この銀層上の32nm厚の酸化亜鉛膜及びこの酸化亜鉛
膜上の3μmの酸化シリコン膜を備えて構成されてい
る。このガラスサンプルの電磁波遮蔽性能をKEC法に
より測定した結果、200MHzから1GHzにわたる
広い周波数帯において、少なくとも50dB以上(電磁
波の強度がもとの0.001%以下に減衰)の遮蔽特性
を示していた。また、このサンプルの可視光線透過率は
63.1%、日射光線透過率は31.9%、可視光線反
射率は9.4%であった。そして、サンプルの透過色は
淡いグリーン、反射色は、ブルーであった。
【0054】次いで、このサンプルの耐湿試験を、50
℃、95%RHの雰囲気中に約240時間放置して行っ
た。目視観察の結果では、実施例1又は2と同様に少数
の小さなピンホールが存在する程度で大きな変化は認め
られなかった。
【0055】(比較例1)実施例1、2及び3と同様の
方法で、ガラス基板上に酸化亜鉛膜、銀層及び酸化亜鉛
膜の構成の3層被膜を形成した。そして、実施例1、2
及び3とは異なり最外側層の酸化亜鉛被膜の上には、酸
化シリコン、酸窒化シリコン及び窒化シリコンのいずれ
の被膜も保護膜として形成しなかった。
【0056】このようにして、比較例1のガラスサンプ
ルは、ガラス基板上に、44nmの酸化亜鉛膜、12n
mの銀層及び41nmの酸化亜鉛膜がこの順序で積層さ
れて構成された。この比較例1のサンプルの電磁波遮蔽
性能をKEC法により測定した結果、実施例1、2及び
3と同様に、200MHzから1GHzにわたる広い周
波数帯において、少なくとも40dB以上の遮蔽特性を
示していた。
【0057】また、図3の破線18から明らかなよう
に、赤外線の透過が効果的に抑えられている。また、こ
の比較サンプルの可視光線透過率は78.9%、日射光
線透過率は54.7%であった。但し、透過色はニュー
トラルであるものの、反射色がかなり明確な赤色を呈し
ていた。このサンプルを50℃、95%RHの雰囲気中
に約240時間放置して耐湿試験を行った。目視観察の
結果では、実施例1、2及び3とは全く異なり全面にひ
ろがる無数のピンホールが観察された。
【0058】(比較例2)実施例1、2及び3と同様の
方法で、ガラス基板上に酸化亜鉛膜、窒化チタン膜及び
酸化亜鉛膜の構成の3層被膜を形成した。そして、実施
例1、2及び3とは異なり、銀層を形成する代わりに窒
化チタン膜を形成し、保護膜は形成しなかった。この窒
化チタン膜の形成は、先ず、スパッタ装置内に窒素ガス
を導入し、スロットルバルブを用いて0.2Paの圧力
に調整する。次に金属Agターゲットの代わりにセット
した金属チタンターゲットに3Aの電流を流してスパッ
タを開始し、ターゲットの上方を所定の速度でガラス基
板を通過させることにより、約4nmの窒化チタン被膜
を形成した。
【0059】このようにして、比較例2のガラスサンプ
ルは、ガラス基板上に、62nmの酸化亜鉛膜、4nm
の窒化チタン膜、45nmの酸化亜鉛膜がこの順序で積
層されて構成された。この比較例2のガラスサンプルの
赤外線遮蔽性能を測定した結果を図3に示す。図3の破
線19から赤外線の遮蔽性能が実施例1、2及び3や比
較例1に比べて劣っていることがわかる。この比較サン
プルの可視光線透過率は70.1%、日射光線透過率は
67.4%であった。また、透過色はほぼ中性色であっ
たが、反射色は明らかな黄色であった。このサンプルを
50℃、95%RHの雰囲気中に約240時間放置して
耐湿試験を行った。目視観察の結果では、実施例1、2
及び3と同様に大きな変化は認められなかった。
【0060】
【発明の効果】本発明による電磁波遮蔽体では、透明基
体上に形成されている多層膜上にこの多層膜中の銀層に
対する保護膜が形成されているので、銀層の外部環境に
対する耐久性が高く、銀層の有している優れた電磁波遮
蔽性能及び高い可視光線透過率を維持したまま単板で使
用することが出来る。従って、優れた電磁波遮蔽性能等
を得るために複層ガラスや合わせガラスとする必要がな
く低コストである。
【0061】また酸化錫をドープ剤として含む酸化イン
ジウムのような高価な半導体材料を厚膜で使用する必要
がなく、これによっても低コストの電磁波遮蔽体を得る
ことが出来る。更には、単板で使用出来るため、設計の
自由度が広がるとともに、施工性も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1〜4の側面図である。
【図2】本発明の実施例5の側面図である。
【図3】本発明の実施例1、2及び4の分光透過率曲線
図である。
【図4】化学的気相合成装置の概略断面図である。
【符号の説明】
10 透明基体 11 透明誘電体層 12 銀層 13 厚膜

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明基体と、 この透明基体上に、透明誘電体層と銀層とがこの順序で
    交互に積層されて構成されている多層膜と、 この多層膜上に形成され、酸化シリコン、酸窒化シリコ
    ン及び窒化シリコンのうちの何れかの膜であって且つ1
    μm乃至20μmの範囲の膜厚を有する膜とを備えてな
    り、 この膜は、反応ガス供給後の雰囲気の圧力が10Pa以
    下であって、且つ電子の数密度が1011/cm3 以上の
    アーク放電プラズマ中における化学的気相合成法で形成
    された膜であることを特徴とする電磁波遮蔽体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の電磁波遮蔽体において、
    前記多層膜上の膜は、前記透明基体が100℃乃至20
    0℃の範囲に加熱された状態で形成されたことを特徴と
    する電磁波遮蔽体。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の電磁波遮蔽体において、
    前記銀層と透明誘電体層との間に金属被膜又は金属窒化
    物被膜が介在していることを特徴とする電磁波遮蔽体。
JP33369692A 1992-11-19 1992-11-19 電磁波遮蔽体 Pending JPH06164186A (ja)

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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4897918A (en) * 1985-07-16 1990-02-06 Nippon Telegraph And Telephone Method of manufacturing an interboard connection terminal
JPH08264991A (ja) * 1995-03-22 1996-10-11 Toppan Printing Co Ltd 透明電磁波シールド基板
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JP2007073563A (ja) * 2005-09-02 2007-03-22 Kochi Prefecture Sangyo Shinko Center 薄膜トランジスタ
JP2007073561A (ja) * 2005-09-02 2007-03-22 Kochi Prefecture Sangyo Shinko Center 薄膜トランジスタ
CN109320276A (zh) * 2018-10-15 2019-02-12 西北工业大学 氮化硅晶须与氮化硅纳米线增强氮化硅基透波陶瓷制备方法

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