JPH0615909U - スローアウェイ式切削工具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 スローアウェイチップの刃先位置精度及びク
ランプ剛性に優れるとともに、スローアウェイチップの
着脱操作性を向上させることのできるスローアウェイ式
切削工具を得る。 【構成】 工具本体４４のチップ着座部に、チップ４２
の側面に当接して位置決め面とされる側壁６２を形成
し、このチップ着座部の下方に側面視略Ｌ字状をなすレ
バー部材５６を、その一端部７４をチップ４２の凹部４
０に係合させ、その他端部をクランプねじ５２の縮径部
７０に係合させ、その角部７８を摩擦面５４ａに当接す
る状態で配設する。レバー部材５６の下部には、該レバ
ー部材５６を略上方に付勢するスプリング５８を設け
る。また、クランプねじ５２の頭部６６と工具本体４４
との間に、クランプ駒５１を設ける。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、バイトやボーリングバー等、厚さ方向に延びる凹部が形成された スローアウェイチップ（以下、「チップ」と略称する。）がチップ着座部に装着 固定されてなるスローアウェイ式切削工具の、チップ装着構造の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術及びその課題】

図４は、実開昭５８−４７４０５号公報に示されたこの種のスローアウェイ式 切削工具の、従来のチップ装着構造の一例を示すものである。このスローアウェ イ式切削工具（バイト）のクランプホルダー（工具本体）２の一端に切欠的に設 けられたチップ座４内には、中央取付穴６を有するチップ８が、クランプ片１０ 及びこれにねじ込まれる締付ねじ１１の協働作用によって固定されるようになっ ている。チップ８は、正三角形板に対し、その頂角を拡大するように振分け的に 斜載した等辺六角形板からなり、しかも前記チップ座４内に載置されたときには 、その中央取付穴６内に直立ピン１２が位置するようになっている。また、クラ ンク片１０は、前記チップ座４の後壁に連接された凹部１４内に配置されるとと もに、チップ８に対し、その上面方向からの押圧部分１６及び２つの後側面方向 からの押圧部分１８，１８を形成しており、前記締付ねじ１１のねじ込みによっ て前記押圧部１６，１８，１８が、三支点方向からチップ８を固定するようにな っている。

【０００３】 上記のような従来のスローアウェイ式切削工具においては、締付ネジ１１の締 付作業のみによってチップ８をホルダー２に対して固定できるため、操作性に優 れ、また、チップ８を押圧部分１６，１８，１８により上方及び側方から強固に 締め付けることができる長所を有するが、チップ８に形成される中央取付穴６の 形状、穴径、形成位置等の精度誤差、直立ピン１２の撓み等により、チップ８の 刃先位置に微小な誤差が出るおそれがあった。

【０００４】 また、図５は他の従来のチップ装着構造を示すものである。このスローアウェ イ式切削工具（バイト）は、工具本体（ホルダー）２０の先端角部に形成された チップ取付座の底面２２に、板状のシート２４を介してチップ２６を載置し、そ のチップ２６のチップ取付穴２８内に挿入された偏心ピン３０を回転させること により、その偏心された偏心凸部３０ａでチップ取付穴２８の内周面をチップ取 付座の側壁３２方向へ押圧する。そして、さらにクランプネジ３３を締め付ける ことによりチップ取付座の基端部側に配設されたクランプ駒３４を垂下させ、ク ランプ駒３４の先端部に形成された押圧面３４ａでチップ２６の上面をチップ取 付座の底面２２方向へ押圧することにより、チップ２６をチップ取付座に固定す るようになっている。

【０００５】 上記図５に示すスローアウェイ式切削工具においては、刃先位置精度を向上で きるとともに、チップ２６の工具本体２０への強固な固定が可能となるが、チッ プ２６の締付固定を、偏心ピン３０とクランプねじ３３とによる２段階操作で行 っているため、チップ２６を取り付ける際に手間がかかり、操作性に欠けるとい う課題があった。 本考案は、上記の如き課題を解決することを目的とするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

本考案は、工具本体に設けられたチップ着座部に、厚さ方向に延びる凹部が形 成されたチップが、前記厚さ方向を前記チップ着座部の法線方向と平行にする状 態で装着固定されてなるスローアウェイ式切削工具において、前記工具本体の前 記チップ着座部に形成した側壁を前記チップの側面の当接する位置決め面となし 、側面視略Ｌ字状をなすレバー部材を前記工具本体の前記チップ着座部の下方に 、その一端部を前記チップの前記凹部に係合させ、その他端部を前記側壁側を指 向させるとともに、その角部の一部が工具本体に形成された摩擦面に当接する状 態で配設し、このレバー部材の下部に、該レバー部材の前記角部近傍を略前記法 線方向に付勢する弾性部材を設け、さらに、前記工具本体に略前記法線方向にね じ穴を穿設し、このねじ穴に前記レバー部材の前記他端部を該ねじ穴方向に向け て押圧するクランプねじを螺合して設け、且つ、前記クランプねじの軸線回りに 回動可能に、該クランプねじの締付けと同時に前記チップを前記法線方向に押圧 するクランプ駒を設けたことを特徴とするものである。

【０００７】 前記クランプ駒は、その回動範囲が前記チップの締付位置と非締付位置との間 に規制され、且つ、その締付位置は、前記クランプねじの締付方向に位置する構 成としてもよい。

【０００８】

【作用】

上記構成に係るスローアウェイ式切削工具にあっては、チップをチップ着座部 に載置し、クランプ駒がチップ上に位置する状態において、クランプねじを工具 本体に対して漸次締め付けてゆくと、レバー部材が摩擦面で支持された角部を支 点として側壁側に回動し、その一端部でチップを側壁側に押圧して固定する。一 方、クランプねじの締付けに伴ってクランプ駒がクランプねじの移動方向に移動 し、チップをチップ着座部に対して押圧せしめ、固定する。従って、クランプね じの締付動作のみにより、チップの厚さ方向及び厚さ方向に直交する方向の締付 けが行われる。

【０００９】 クランプ駒を、その回動範囲をチップの締付位置と非締付位置との間に規制し 、且つ、その締付位置をクランプねじの締付方向に位置させた場合には、クラン プ駒を非締付位置とした上でチップをチップ着座部に載置し、この状態でクラン プねじを締め付けてゆくと、クランプねじとクランプ駒との間に作用する摩擦力 によりクランプ駒がクランプねじの締付方向に回動して締付位置となり、このま まクランプねじの締付が行われてチップがチップ着座部に正確に装着固定される 。また、チップがチップ着座部に装着固定された状態において、クランプねじを 緩めてゆくと、該クランプねじとともに、クランプ駒がクランプねじの締付方向 と反対の方向に回動して非締付位置となり、チップの固定が解除される。

【００１０】

【実施例】 以下、添付図面を参照して本考案の実施例を説明する。 図３は本考案の一実施例に係るスローアウェイ式切削工具（スローアウェイ式 バイト）、図２は図１の要部の拡大図、図１は図２のＡ−Ａ線断面図である。

【００１１】 これらの図に示すスローアウェイ式切削工具は、中央に厚さ方向に延びる貫通 孔（凹部）４０が形成された、ひし形平板状のチップ４２を切刃として用いるも のである。

【００１２】 本スローアウェイ式切削工具の概略構成について説明すると、工具本体４４の 先端部の角部にはチップ座４６が形成されており、このチップ座４６上に、シー ト部材４８を介して前記チップ４２が装着されている。また、工具本体４４の先 端部上面４４ａにほぼ垂直にねじ穴５０が穿設され、クランプ駒５１に挿通され たクランプねじ５２が、このねじ穴５０中に螺合せしめられる一方、チップ座４ ６の下方には、前記ねじ穴５０とほぼ平行に延び且つねじ穴５０の一部に連通す る空間５４が形成されている。そして、この空間５４内には、側面視略Ｌ字状を なすレバー部材５６がスプリング（弾性部材に相当）５８とともに配置されてい る。以下に、各構成要素について詳述する。

【００１３】 前記チップ座４６は、平滑面とされた座面６０と、この座面６０の法線方向に 延びる側壁６２とから構成されており、側壁６２は、チップ４２の側面に隙間な く当接して該チップ４２の座面６０に平行な方向の位置（刃先位置）を正確に定 める位置決め面とされている。

【００１４】 前記シート部材４８は、平面視においてチップ４２と同一形状に形成され、そ の厚さは全体に渡って均一とされている。また、このシート部材４８の中央部に は、チップ４２の貫通孔４０より大径の貫通孔４８ａが厚さ方向に形成されてお り、この貫通孔４８ａに半円筒状のバネブッシュ５９が嵌挿されて、シート部材 ４８がチップ座４６に固定されている。本実施例においては、チップ座４６上に シート部材４８が載置された状態において、チップ４２を着座するためのチップ 着座部が形成されるが、必ずしもシート部材を用いた構成とする必要はない。な お、本明細書において、チップ着座部にチップを装着した状態における該チップ の厚み方向と平行となる方向を、チップ着座部の法線方向と定義する。本実施例 の場合、座面６０の法線方向がチップ着座部の法線方向となる。

【００１５】 前記クランプねじ５２は、レンチ穴６４の形成された頭部６６と、略円柱状を なし外周部に雄ねじの切られたねじ部６８とから構成され、その頭部６６はねじ 部６８より大径に形成されており、また、そのねじ部６８の中央には縮径部７０ が形成されている。

【００１６】 前記空間５４を画成する壁面の内、側壁６２に対向する側の部分は、前記レバ ー部材５６との間に所定の摩擦を作用せしめる摩擦面５４ａとされている。また 、空間５４の下方には凹部７２が形成され、この凹部７２に前記ばね５８の一端 側が固定されている。そして、この空間５４内にレバー部材５６が、その一端部 ７４を、シート部材４８の貫通孔４８ａを貫いてチップ４２の貫通孔４０の内壁 部に係合させ、その他端部７６をクランプねじ５２の縮径部７０に係合させると ともに、その角部７８の一部が摩擦面５４ａに当接する状態で配置されている。 また、角部７８の下部側は、ばね５８によって上方（略チップ着座部の法線方向 ）に付勢されている。

【００１７】 前記クランプ駒５１は、その中心側に、下方に向かうにつれて縮径する穴部８ ０が形成され、該穴部８０は、クランプねじ５２のねじ部６８を貫通させ且つ頭 部６６を係止する大きさに形成されている。前記ねじ穴５０の上端部には、該ね じ穴５０より大径の円柱状の穴部８２が形成され、その段差部に一端を係止され たスプリング８４が、クランプ駒５１を上方に付勢した状態で配設されている。

【００１８】 クランプ駒５１の後端部中央には、円柱状の突起部８６が下方に突出して設け られている。なお、この突起部８６を囲むクランプ駒５１の後端部下面８８は、 突起部８６より幅広の平坦面とされ、クランプねじ５２の締付時にクランプ駒５ １が工具本体４４の上面４４ａに対して回動する際の支点となる。

【００１９】 一方、工具本体４４の上部側には、平面視円弧状に溝９０が形成され、この溝 ９０に前記突起部８６が摺動自在に嵌合している。この溝９０が形成される範囲 （図２の角度θ）は、クランプ駒５１が、チップ４２を正確に締め付ける際の位 置（締付位置、図２参照）と、チップ４２を取り外す際の待機位置（非締付位置 ）との間を最小限の移動で行うことのできる範囲に設定されており、およそ１５ ゜〜９０゜の範囲に設定されている。

【００２０】 上記構成に係るスローアウェイ式切削工具において、チップ４２を工具本体４ ４に装着する場合には、クランプねじ５２を緩めてクランプ駒５１を非締付位置 とした後、チップ４２をシート部材４８上に載置し、この状態でクランプねじ６ ６を漸次締め付けてゆく。するとまず、クランプねじ５２との摩擦によりクラン プ駒５１が回動し締付位置で突起部８６を係止されて停止する。

【００２１】 続けてクランプねじ６６を締め付けてゆくと、レバー部材５６の端部７６がク ランプねじ６８の縮径部７０で下方に押し下げられ、摩擦面５４ａに当接する角 部７８を支点としてレバー部材５６が側壁６２側に回動し、その端部７４でチッ プ４２を側壁６２側に押圧して位置決め固定する。

【００２２】 一方、クランプねじ５２の締付けに伴ってクランプ駒５１がクランプねじ５２ の移動方向に移動する。このとき、クランプ駒５１は、前記下面８８を支点とし て工具本体４４の上面４４ａに対して微小量回動し、その先端部５１ａの下面で チップ４２をチップ着座部の法線方向に押圧し、固定する。

【００２３】 従って、クランプねじ５２の締付動作のみにより、チップ４２の厚さ方向及び 厚さ方向に直交する方向の締付けが行われる。

【００２４】 チップ４２をチップ着座部から取り外す場合には、チップ４２がチップ着座部 に装着固定された状態においてクランプねじ５２を緩めてゆけば、クランプねじ ５２とともにクランプ駒５１がクランプねじ５２の締付方向と反対の方向に回動 して非締付位置となり、これによりチップ４２の固定が解除される。

【００２５】 上記のようなスローアウェイ式切削工具によれば、チップ４２をチップ着座部 に装着した状態において、クランプねじ５２を締め付けてゆくだけで、該チップ ４２が、厚さ方向と直交する方向をレバー部材５６の端部７４により、また厚さ 方向をクランプ駒５１の先端部５１ａによって、それぞれ強固に、そして容易に 装着固定され、操作性が向上する。

【００２６】 また、チップ４２の厚さ方向に直交する方向の位置決めが、該チップ４２に形 成された凹部の精度等によらず、チップ着座部に形成された側壁６２を用いて正 確に行われるため、従来のスローアウェイ式切削工具に比べて刃先位置精度が向 上する。

【００２７】 さらに、レバー部材７６の下部にスプリング５８が設けられているため、チッ プ４２の厚さに多少のばらつきがある場合においても、これをスプリング５８が 吸収してチップ４２をチップ着座部に安定して装着固定することができる。

【００２８】 また、クランプ駒５１に設けた突起部８６と工具本体に形成した溝９０により 、チップ装着時のクランプ駒５１の位置が正確になるとともに、クランプねじ５ ２の締付け及び緩め動作によってクランプ駒５１が自動的に締付位置及び非締付 位置に移動するため、これら突起部８６及び溝９０を設けない場合に比べてクラ ンプ駒５１を操作する手間が減少し、操作性及び作業効率を向上させることがで きる。

【００２９】 なお、上記実施例においてはスローアウェイ式切削工具の一例としてバイトを 示したが、本考案はこれに限られるものではなく、例えばボーリングバー等、厚 さ方向に延びる凹部が形成されたチップをチップ着座部に装着して用いるスロー アウェイ式切削工具であればどのようなものであってもよい。

【００３０】 また、チップに形成される凹部は、厚さ方向に貫通していないものであっても よい。

【００３１】

【考案の効果】

以上説明したように、この考案によれば、工具本体のチップ着座部に形成した 側壁をチップの側面の当接する位置決め面となし、側面視略Ｌ字状をなすレバー 部材を工具本体のチップ着座部の下方に、その一端部をチップの凹部に係合させ 、その他端部を側壁側を指向させるとともに、その角部の一部が工具本体に形成 された摩擦面に当接する状態で配設し、このレバー部材の下部に、該レバー部材 の角部近傍を略法線方向に付勢する弾性部材を設け、さらに、工具本体に略法線 方向にねじ穴を穿設し、このねじ穴にレバー部材の他端部を該ねじ穴方向に向け て押圧するクランプねじを螺合して設け、且つ、クランプねじの軸線回りに回動 可能に、該クランプねじの締付けと同時にチップを法線方向に押圧するクランプ 駒を設けているので、チップをチップ着座部に装着した状態において、クランプ ねじを工具本体に押し込んでゆくだけで、該チップが、厚さ方向と直交する方向 をレバー部材により、また厚さ方向をクランプ駒によって、それぞれ強固にそし て迅速且つ容易に装着固定され、操作性が向上する。

【００３２】 また、チップの厚さ方向に直交する方向の位置決めが、該チップに形成された 凹部の精度等によらず、チップ着座部に形成された側壁を用いて正確に行われる ため、従来のスローアウェイ式切削工具に比べて刃先位置精度が向上する。

【００３３】 さらに、レバー部材の下部に弾性部材が設けられているため、チップの厚さに 多少のばらつきがある場合においても、これを弾性部材が吸収してチップをチッ プ着座部に安定して装着固定することができる。

【００３４】 また、クランプ駒を、その回動範囲をチップの締付位置と非締付位置との間に 規制し、且つ、その締付位置をクランプねじの締付方向に位置させることにより 、チップ装着時のクランプ駒の位置を正確にしてチップの締付精度を向上できる とともに、クランプねじの締付動作によりクランプ駒が自動的に締付位置に移動 し、また緩め動作によって自動的にクランプ駒が非締付位置に移動するため、作 業量が最小限となり、操作性及び作業効率を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図２のＡ−Ａ線断面図である。

【図２】図３の要部の拡大図である。

【図３】本考案の一実施例に係るスローアウェイ式切削
工具を示す平面図である。

【図４】従来のスローアウェイ式切削工具の一例を示す
側断面図である。

【図５】従来のスローアウェイ式切削工具の他の例を示
す側断面図である。

【符号の説明】

４０ 凹部（チップ） ４２ チップ ５０ ねじ穴 ５１ クランプ駒 ５２ クランプねじ ５４ａ 摩擦面 ５６ レバー部材 ５８ 弾性部材 ６２ チップ着座部の側壁 ７４ レバー部材の一端部 ７６ レバー部材の他端部 ７８ レバー部材の角部

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】工具本体に設けられたチップ着座部に、厚
   さ方向に延びる凹部が形成されたスローアウェイチップ
   が、前記厚さ方向を前記チップ着座部の法線方向と平行
   にする状態で装着固定されてなるスローアウェイ式切削
   工具において、 前記工具本体の前記チップ着座部に形成した側壁を前記
   スローアウェイチップの側面の当接する位置決め面とな
   し、 側面視略Ｌ字状をなすレバー部材を前記工具本体の前記
   チップ着座部の下方に、その一端部を前記スローアウェ
   イチップの前記凹部に係合させ、その他端部を前記側壁
   側を指向させるとともに、その角部の一部が工具本体に
   形成された摩擦面に当接する状態で配設し、このレバー
   部材の下部に、該レバー部材の前記角部近傍を略前記法
   線方向に付勢する弾性部材を設け、 さらに、前記工具本体に略前記法線方向にねじ穴を穿設
   し、このねじ穴に前記レバー部材の前記他端部を該ねじ
   穴方向に向けて押圧するクランプねじを螺合して設け、
   且つ、前記クランプねじの軸線回りに回動可能に、該ク
   ランプねじの締付けと同時に前記スローアウェイチップ
   を前記法線方向に押圧するクランプ駒を設けたことを特
   徴とするスローアウェイ式切削工具。
2. 【請求項２】前記クランプ駒は、その回動範囲が前記ス
   ローアウェイチップの締付位置と非締付位置との間に規
   制され、且つ、その締付位置は、前記クランプねじの締
   付方向に位置していることを特徴とする請求項１記載の
   スローアウェイ式切削工具。