JPH045209Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、軸線回りに回転する工具本体の先
端部外周に、切刃を有するスローアウエイチツプ
が着脱自在に装着されたスローアウエイ式転削工
具に関するものである。

〔従来の技術〕

例えば、第８図〜第１０図に示すように、従来
のスローアウエイ式正面フライス等のスローアウ
エイ式転削工具（以下、転削工具と略称する。）
１においては、その工具本体２の先端部外周の周
方向に沿つて形成された多数の凹状のチツプ取付
座３…内に、切刃を有する超硬合金製等のスロー
アウエイチツプ（以下、チツプと略称する。）４
…がくさび部材５とクランプネジ７とからなるク
ランプ機構により着脱自在に固定されている。

すなわち、上記従来の転削工具１では、工具本
体２の凹状をなす各チツプ取付座３の一方の壁面
３ａ上に、チツプ４がその一側面を上記チツプ取
付座３のチツプ受け面３ｃに当接させて載置され
ている。そして、このチツプ４とチツプ取付座３
の他方の壁面３ｂとの間に、鋼等の金属からなる
上記くさび部材５が設けられ、このくさび部材５
の中央部の孔部６内に上記クランプネジ７が螺合
されている。そして、このクランプネジ７が、上
記チツプ取付座３の受け面３ｃと直交する方向に
向けてさらに上記工具本体２内に締付けられるこ
とにより、上記くさび部材５のくさび効果によつ
て上記チツプ４がチツプ取付座３内に固定されて
いる。

〔考案が解決しようとする問題点〕

ところが、上記従来の転削工具１においては、
そのチツプ４を固定するための上記クランプ機構
について以下に挙げるような各種の問題点があ
り、その改善が望まれていた。

(イ) くさび部材５を締付けるクランプネジ７が小
径であるため充分なクランプ力を得るのに必要
とされる締付けトルクが大きく、よつて締付け
時に互いのネジ部に焼き付き等を生じて上記ク
ランプネジ７が緩まなくなるなど、チツプ交換
作業に手間を要してその作業の非能率化を招い
ていた。

(ロ) チツプ装着時に多数のチツプ４…を順次全て
均一なトルクで締付けて行く必要があるため、
作業に高い熟練度と多大の時間を要していた。

(ハ) この種のクランプ機構においては、くさび部
材５がチツプ４を強固に固定するために、上記
クランプネジ７を第９図に示すチツプ取付座３
のチツプ受け面３ｃと直交する方向に締付ける
必要があるが、チツプ４の形状やこのチツプ４
のコーナー角Ｃの大小より上記受け面３ｃの傾
斜が変わるため各工具毎に締付け方向が変化し
てしまう。このため、この種のクランプネジ７
の締付けの自動化自体が難しいことと相まつ
て、チツプ４の交換作業の自動化を妨げる一因
となつていた。

この考案は、上記従来の転削工具がもつ、以上
のような欠点を取り除いた転削工具を提供するこ
とを目的とするものである。

〔問題点を解決するための手段〕

この考案の転削工具は、チツプを工具本体のチ
ツプ取付座に、上記チツプとチツプ取付座とにく
さびを形成する２面を当接させたくさび部材とこ
のくさび部材に一体的に形成されて上記くさびの
作用方向である工具本体の軸線側に向けて移動自
在に設けられその外周部に凹部が形成されるとと
もにその先端部を工具本体の基端面から突出させ
たくさび軸とからなるクランプ部材と、このクラ
ンプ部材のくさび軸の凹部内に先端部を係合させ
てこのクランプ部材と交差する方向に移動自在に
設けられ、かつその基端部を工具本体の外部に突
出させた挿脱軸と、この挿脱軸を、上記くさび部
材を工具本体の軸線側に向けて押圧する方向に付
勢する付勢部材とを具備してなるクランプ機構に
よつて着脱自在に装着したものである。

〔作用〕

上記構成の転削工具にあつては、くさび部材押
し込み用のクランプネジを用いていないため、そ
れらのネジ部の焼き付き等による不都合を生じる
ことがない。

また、工具本体から突出している挿脱軸の基端
部、または工具本体の基端面から突出しているク
ランプ部材のくさび軸の先端部を各々工具本体側
に押圧することによりチツプの着脱を行なうこと
ができるため、チツプのコーナ角等が変わつても
常に同一の所定箇所を工具本体側に押圧すること
により上記チツプの着脱を行うことができる。

さらに、上記クランプ部材を油圧シリンダ等の
押圧治具で押圧する際に、一旦上記付勢部材の付
勢力でチツプを仮に把持しておくことができるた
め、上記チツプの装着を一層容易かつ確実に行な
うことができる。

〔実施例〕

第１図〜第４図は、この考案の転削工具の第一
実施例を示すもので、図中符号１０が工具本体を
示すものである。

この工具本体１０は、軸線Ｏ回りに回転駆動さ
れる略厚肉円板状のもので、その先端部外周には
周方向に沿つて複数箇所に（図では、その内の１
箇所のみを示す。）チツプ取付座１２が形成され
ている。このチツプ取付座１２は、上記工具本体
１０の先端面１１と外周とに開口する凹状のもの
で、そのチツプ受け面１３は装着されるチツプの
コーナ角に対応して軸線Ｏに対し所定角度傾斜し
て形成されている。そして、このチツプ受け面１
３には、この受け面１３と直交する方向に上記軸
線Ｏ側に延びてこの工具本体１０の基端面１４に
開口する貫通孔１５が穿設されている。

また、上記チツプ取付座１２の回転方向に面す
る壁面１２ａには、切刃１６を有する正方形板状
のチツプ１７がその一側面を上記受け面１３に当
接させて載置されている。そして、これらチツプ
取付座１２と貫通孔１５とに、それぞれ上記チツ
プ１７を固定するためのくさび部材１８とこのく
さび部材１８に一体に形成されたくさび軸１９と
からなるクランプ部材２０が設けられている。

上記くさび部材１８は、第３図および第４図に
示すように鋼等の金属からなる外観略直方体状の
もので、その対向する一対の側面２１，２２のう
ちの一方の側面２１はこれら側面２１，２２間の
厚さ寸法が一方から他方に向けて漸次薄くなる傾
斜面によつて形成されており、これら側面２１，
２２によつてくさびが形成されている。そしてこ
のくさび部材１８は、上記チツプ１７とチツプ取
付座１２の他方の壁面１２ｂとにそのくさびを形
成する上記２側面２１，２２をそれぞれ当接させ
て上記チツプ取付座１２内に設けられている。

また、このくさび部材１８に一体に形成された
上記くさび軸１９は、上記貫通孔１５内にその軸
線方向に沿つて移動自在に挿入された円柱状のも
ので、その外周部の所定位置には凹部２３が形成
されている。そして、このくさび軸１９の凹部２
３に臨む位置には、一端がこの貫通孔１５に連通
し、他端が軸線Ｏ方向に向けて延びて工具本体１
０の先端面１１に開口する貫通孔２５が穿設され
ている。そして、この貫通孔２５内に挿脱軸２６
がその軸線方向に移動自在に挿入されている。

この挿脱軸２６は略円柱状もので、その先端部
を上記くさび軸１９の凹部２３に係合させ、かつ
その基端部を工具本体１０の先端面１１から僅か
に突出させて設けられている。他方、この挿脱軸
２６の基端部には、この挿脱軸２６の基端部が貫
通するとともにこの貫通孔２５の開口部を塞ぐ係
止板２７がボルト２８によつて取り付けられてい
る。そして、この係止板２７と挿脱軸２６の先端
部に形成された大径部２９との間に、上記挿脱軸
２６を工具本体１０の基端面１４側に付勢するス
プリング（付勢部材）３０が組み込まれている。
これにより、上記クランプ部材２０は、くさび部
材１８のくさびの作用方向である工具本体１０の
軸線Ｏ側に付勢されている。

そして、以上のクランプ部材２０、挿脱軸２６
およびスプリング（付勢部材）３０により、この
転削工具におけるチツプ１７のクランプ機構が構
成されている。

次に、以上の構成からなるこの転削工具の作用
について説明する。

先ず、この転削工具においてチツプ１７をチツ
プ取付座１２に装着する場合には、油圧シリンダ
等の押圧治具でくさび軸１９の先端部を工具本体
１０の先端面１１側に向けて押圧する。するとク
ランプ部材２０は、挿脱軸２６を介して作用する
スプリング３０の付勢力に抗して工具本体１０の
外周側に移動する。これにより、クランプ部材２
０のくさび部材１８の側面２１とチツプ取付座の
壁面１２ａとの間の間隔が広がる。

次に、このくさび部材１８の側面２１とチツプ
取付座１２の壁面１２ａとの間にチツプ１７を挿
入し、その一側面をチツプ取付座の受け面１３に
当接させる。次いで、上記クランプ部材２０に対
する押圧を解くと、このクランプ部材２０が上記
挿脱軸２６を介して作用するスプリング３０の付
勢力により工具本体１０の基端面１４側に移動す
る。これにより上記チツプ１７は、くさび部材１
８の側面２１，２２によるくさび効果により上記
側面２１とチツプ取付座１２の壁面１２ａとの間
で仮に把持される。

そして次に、油圧シリンダ等の押圧治具で上記
挿脱軸２６の基端部をさらに工具本体１０の基端
面１４側に押圧する。これにより、上記チツプ１
７は、上記くさび部材１８のくさび効果によりチ
ツプ取付座１２に強固に固定される。

他方、上記チツプ１７を交換する際等このチツ
プ取付座１２から取り外す場合には、上述したチ
ツプ１７の装着時と同様にして押圧治具によりク
ランプ部材２０のくさび軸１９を工具本体１０の
先端面１１側に向けて押圧する。これにより、上
記クランプ部材２０は同様にしてスプリング３０
の付勢力に抗して工具本体１０の外周側に押出さ
れるため、その側面２１とチツプ１７との間に〓
間が生じて上記チツプ１７の拘束が解かれ、チツ
プ取付座１２から取り外し自在となる。

しかして、このような転削工具にあつては、従
来のもののように、くさび部材押し込み用のクラ
ンプネジを用いていないため、それらのネジ部の
焼き付き等による不都合を生じることがない。

また、押圧治具によりクランプ部材２０および
挿脱軸２６を工具本体１０の軸線Ｏ方向に移動さ
せることにより、上記チツプ１７の着脱を行なう
ことができる。したがつて、チツプ１７のコーナ
角等が工具毎に変わつても、常に上記チツプ１７
の装着および交換のための操作方向を工具本体１
０の軸線Ｏ方向に統一することができる。このた
め、その作業性に優れるとともに、さらにこの種
の転削工具におけるチツプ１７の装着および交換
作業の自動化を容易にすることができる。

しかも、チツプ１７装着時に挿脱軸２６を油圧
シリンダ等の押圧治具で押圧する際に、上記スプ
リング３０の付勢力によつて上記チツプ１７を仮
に把持しておくことができるため、上記チツプ１
７の装着および固定を容易かつ確実に行なうこと
ができる。

〔他の実施例〕

第５図はこの考案の第二実施例を示すもので、
第１図〜第４図に示したものと同一構成部分には
同一符号を付してその説明を省略する。

第５図において、この例の転削工具において
は、上記貫通孔１５に連通して挿脱軸２６が挿入
される貫通孔３５が、上記貫通孔１５内のくさび
軸１９の凹部２３に臨む位置から工具本体１０の
半径方向に延びて外周面３６に開口するように穿
設されている。

そして、この貫通孔３５の外周面３６における
開口部には、上記挿脱軸２６の基端部が貫通する
とともにこの開口部を塞ぐ係止板３７がボルト３
８によつて取り付けられている。そして、この係
止板３７と挿脱軸２６の大径部２９との間に、こ
の挿脱軸２６を工具本体１０の軸線Ｏ側に向けて
付勢するスプリング（付勢部材）３０が組み込ま
れている。

以上の構成からなる上記転削工具においては、
第１図〜第４図に示したものと同様にして、油圧
治具によりクランプ部材２０のくさび軸１９先端
部を工具本体１０の先端面１１側に押圧すること
によりチツプ１７が固定が解かれて取り外し自在
となり、また挿脱軸２６を介したスプリング３０
の付勢力によりクランプ部材２０でチツプ１７を
一端把持した後、さらに上記挿脱軸２６の基端部
を油圧治具で工具本体１０の軸線Ｏ側に押圧する
ことにより、上記チツプ１７がチツプ取付座１２
に強固に固定される。

しかして、この例の転削工具にあつても、上記
第一実施例のものと同様の作用効果を得ることが
できる。

なお、上記実施例においては、いずれもクラン
プ部材２０のくさび部材１８として直方体状のも
のを用いた場合について説明したが、これに限る
ものではなく、第６図および第７図に示すくさび
部材４０のように、外観略円柱体状をなしその円
柱側面４１にこの側面４２に対して傾斜すること
によりくさびを形成する側面４３を形成したもの
を用いてもよい。

〔考案の効果〕

以上説明したようにこの考案の転削工具は、チ
ツプを工具本体のチツプ取付座に、これらにくさ
びを形成する２面を当接させたくさび部材とこの
くさび部材に一体的に形成されてその外周部に凹
部が形成されるとともにその先端部を工具本体の
基端面から突出させたくさび軸とからなるクラン
プ部材と、このクランプ部材のくさび軸の凹部内
に先端部を係合させてこのクランプ部材と交差す
る方向に移動自在に設けられ、かつその基端部を
工具本体の外部に突出させた挿脱軸と、この挿脱
軸を、上記くさび部材を工具本体の軸線側に向け
て押圧する方向に付勢する付勢部材とを具備して
なるクランプ機構によつて着脱自在に装着したも
のである。

よつて、この転削工具によれば、従来のものの
ように、くさび部材押し込み用のクランプネジを
用いていないため、それらのネジ部の焼き付き等
による不都合を生じることがなく、これらチツプ
の交換作業の容易化と作業自体に要する時間の大
幅な短縮化を図ることができる。また、上記くさ
び部材の移動方向が変化しても、常に上記クラン
プ部材又は挿脱軸を一定の方向に移動させること
によりチツプの着脱を行うことができるため、そ
の作業性に優れるとともに、さらにこの種の転削
工具におけるチツプの装着および交換作業の自動
化を容易にすることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第４図はこの考案の転削工具の一実施
例を示すもので、第１図は要部の側断面図、第２
図はクランプ部材に沿う平断面図、第３図はくさ
び部材の形状を示す正面図、第４図は第３図の
−線視断面図、第５図はこの考案のたの実施例
を示す要部の側断面図、第６図はくさび部材の他
の形状を示す正面図、第７図は第６図の−線
視断面図、第８図〜第１０図は従来の転削工具を
示すもので、第８図は全体の概略斜視図、第９図
は同径方向に沿う側断面図、第１０図はチツプ取
付部分の側断面図である。 １０……工具本体、１２……チツプ取付座、１
３……受け面、１６……切刃、１７……チツプ
（スローアウエイチツプ）、１８，４０……くさび
部材、１９……くさび軸、２０……クランプ部
材、２１，２２，４１，４２……側面、２６……
挿脱軸、２７，３７……係止板、３０……スプリ
ング（付勢部材）。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 工具本体の先端部外周に形成された凹状をなす
   チツプ取付座に、切刃を有するスローアウエイチ
   ツプがクランプ機構を介して着脱自在に装着され
   てなるスローアウエイ式転削工具において、 上記クランプ機構は、上記スローアウエイチツ
   プと上記チツプ取付座とにくさびを形成する２面
   を当接させたくさび部材と、このくさび部材に一
   体的に形成されて上記くさびの作用方向である上
   記工具本体の軸線側に向けて移動自在に設けられ
   その外周部に凹部が形成されるとともにその先端
   部を上記工具本体の基端面から突出させたくさび
   軸とからなるクランプ部材と、 このクランプ部材のくさび軸の凹部内に先端部
   を係合させてこのクランプ部材と交差する方向に
   移動自在に設けられ、かつその基端部を上記工具
   本体の外部に突出させた挿脱軸と、 この挿脱軸を、上記くさび部材を上記工具本体
   の軸線側に向けて押圧する方向に付勢する付勢部
   材とを具備してなることを特徴とするスローアウ
   エイ式転削工具。