JPH0615450B2

JPH0615450B2 - グルテン加水分解抽出物からなる化粧料配合用保湿成分

Info

Publication number: JPH0615450B2
Application number: JP62086361A
Authority: JP
Inventors: 建次松井; 裕安藤; 京子人見
Original assignee: Ichimaru Pharcos Co Ltd
Current assignee: Ichimaru Pharcos Co Ltd
Priority date: 1987-04-08
Filing date: 1987-04-08
Publication date: 1994-03-02
Anticipated expiration: 2009-03-02
Also published as: JPH0672093B2; JPS63253012A; JPH0648933A

Description

【発明の詳細な説明】［イ］発明の目的本発明は、化粧料へ応用するための植物由来の保湿成分
に関する。

さらに詳しくは、製剤化における種々の利点と長期にわ
たって優れた保湿効果を発揮する、化粧料配合用天然保
湿成分：グルテン加水分解抽出物に関する。

「産業上の利用分野」本発明によるグルテン加水分解抽出物は、水に可溶で優
れた湿潤作用があり、熱に対しても極めて安定な特性を
有し、化粧水、クリーム、乳液などの肌用化粧料、ヘア
ークリーム、ヘアーリキッド、ヘアーシャンプー、ヘア
ーリンスなどの頭髪用化粧料に配合して用いることがで
きる。

また、それら化粧品類の他にも、各種の加工食品に配合
して用いることができ、例えば、カステラ、パン、和菓
子などに使用するとき良好な湿潤性を与え、乾燥を防止
することができる。

「従来の技術」グルテンは植物性の蛋白質で、例えば、小麦やライ麦な
ど穀類の種子から抽出されている。

その栄養価は高く、また消化が良いことなどから、わが
国では、主に焼き麸などの形態に加工され古くから食さ
れてきた。

グルテンを構成する蛋白には、グルテニン（分子量２０
０〜３００万）とグルアディンがあり、グルアディンに
は分子量２０万付近にあるもの、４．７万付近のもの、
４．２万付近のもの、さらに低分子量域のものが確認さ
れている。

グルテンは水には溶解しにくいが、アルコールや稀酸に
は部分的に可溶であり、アルカリ溶液中でよく溶ける性
質をもつ。

また、熱に対しては凝固するなどの性質もあることから
接着剤としても応用されたりしてきた。

その他、グルテンの利用としては、例えばこれを加水分
解すると、構成するアミノ酸であるグルタミン酸やプロ
リンなどが得られることから、調味料の原料としても用
いられてきた。

「発明が解決しようとする問題点」本発明者らは、グルテンの有する粘性に着目しこれまで
に知られている性質をもとに、特に化粧料などにおける
湿潤剤として応用できないかと考え、研究に当った。

しかしながら、前述のごとくグルテン自体は水に対して
難溶であり、また、酸性域での溶解性も悪い。さらに、
熱が加わると沈澱が生じたり、粘度の低下がみられるな
ど、化粧品の製剤化に及んでの問題点が多い。

また、クリームや乳液などの処方において、乳化剤（分
散剤）と併用すると、はじめは伸びのある仕上がり状態
が得られるも、経時的にその性質が消失してしまうなど
の欠点があった。

そこで本発明者らは、これら欠点を満足しうる化粧品配
合用素材として最も適したグルテン蛋白質由来の保湿成
分の開発を目的となし、鋭意研究を進めてきた。

［ロ］発明の構成本発明は、グルテンを加水分解することによって得られ
た分子量２，０００〜５，０００付近の成分を主体とな
す１０，０００以下の抽出物からなる化粧料配合用保湿
成分をもってなる。

「問題点を解決するための手段」（製造例）小麦由来のグルテン１Kgに対して、アルカリ溶液（0.05
〜0.3N−水酸化ナトリウム溶液）40〜50Ｌを準備し、常
温において撹拌しながらグルテンを徐々に添加し溶解さ
せる。

次に、アルカリプロテアーゼ（Sigma社製 TypeVIII）
を、0.5〜1.0ｇ（力価：10単位／mg）加え、温度40〜60
℃にて、４〜８時間程度の酵素分解反応を行う。

反応終了後、系の温度を80℃以上に昇温し、約20分間加
熱処理を行い、次いで、濾液を分取し、これに1N−塩酸
を加え、pHを４〜６に調整し十分に撹拌した後、再度、
濾過してその濾液を得る。

次に、回収した濾液をペリコンカセットシステム（日本
ミリボア・リミテッド製：分子量１万のペリコン膜を使
用）に通し、溶液を得て、これを減圧濃縮した後、乾燥
させる。

尚、乾燥にあたっては、熱風乾燥、真空乾燥、凍結乾
燥、噴霧乾燥などの方法を採用しても、特に差し支えな
い。また、製造における種々の条件についても任意に選
択することは可能であり、これに特定されるものではな
い。

上記の方法によって得られた粉末の収量は、原料のグル
テンから約65〜85％である。

「物性又は作用」製造例で得られたグルテン加水分解抽出物は、水、50％
エタノールに可溶であり、化粧品の処方中に極めて配合
し易い特性をもつ。

また、保湿作用に優れ、肌に塗布することによってベタ
つきのない潤い感が得られ、乾燥後も肌に引っぱり感を
与えない。

また、頭髪に対しては、潤いのある柔軟性と光沢を付与
するも、ベタつき感を与えないことが特徴である。

（分子量分布）第１図は、製造例で得られた抽出物の５％水溶液を調整
し、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー（ＧＰ
Ｃ）によって求めた分子量分布チャートである。

＜条件＞カラム：Sil AF102 温度：40℃ 流量：1.0 mL/min 検出器：UV 280 ｎｍ感度：0.08 チャートスピード：５mm/min 移動層：0.01M KH₂PO₄ 0.01M Na₂HPO₄ 0.2M Na₂SO₄ 本発明による抽出物の優れた特性は、この分子量分布状
態によって達成される。すなわち、１万以下であって、
且つ、２，０００〜５，０００付近の主体成分からなり
アミノ酸をほとんど含まないことが特徴である。

（保湿作用）第２図は、製造例によって得られた抽出物の３％水溶液
における保湿効果を示したものである。

尚、対比のために、グルテンをアルカリ溶液（0.2N−水
酸化ナトリウム）中に３％含有する溶液を製し、加熱処
理、ｐＨ処理をしたものを対象検体として用いた。

その結果は、グルテン溶液では、調整直後では本発明の
抽出物に比べて高い保湿性能を示すも、40℃１ケ月保存
後のものでは、経時的に沈澱物の発生が伴い、その性能
の低下も著しいことがわかる。

尚、第２図中の、対象検体であるグルテン溶液に関し、
１カ月後のものについては沈澱物が多いため、測定に当
たっては十分撹拌した後、濾過した溶液を用いて行っ
た。

もちろん本発明の抽出物については、沈澱の発生は認め
られないので、そのような処理は行なわずに測定した。

＜保湿試験法の概要＞表皮角層水分測定装置（高周波IMPEDANCE METER Model
IB355:アイ・ビー・エス製）を使用し、測定部位の電気
伝導度（Conductance）を求める方法により実施した。

外周直径：６mm 中心電極直径：１mm 測定部位：前腕屈内側温度：28℃ 相対湿度：65.0％（安定性の確認）製造例で得られた抽出出物は、第２図で示すごとく、加
温下（恒温槽40℃、１ケ月）においても、また保湿作用
においても、ほとんど経時的に変化が少ないが、ここで
は更に条件を変えて熱安定性について求めてみた。

その結果、次表（第１表）に示すごとく、極めて高い安
定性を有することが確認された。

（その他の物性又は示性値）製造例によって得られた抽出物の、その他の特徴につい
て理化学的試験を行ってみると、その結果は第２表に示
すごとくである。

（処方例）本発明による抽出物は、あらゆる化粧料に配合できる。
特に水溶性タイプの化粧料には溶解性が良好である。さ
らに、クリームや乳液などの処方中に用いると伸びのあ
る製品となる。

配合量は、肌や髪に対する湿潤作用の向上には３％の添
加量を目安として用いることが最善であるが、他の保湿
剤との併用により任意に配合することもでき、特にその
上限や下限量については何等特定されるものではない。

第３表に、ヘアーリンス、化粧水、クリームについての
処方例を示す。

（効果の確認）第３表中に示す処方例−１のリンス剤と、その処方中か
ら本発明による抽出物を除いた（無添加の）リンス剤を
製し、前者を検体記号Ａ液、後者をＢ液として、それぞ
れ同一形状の容器（500 mL）に充填して、各１本づつ理
容店の理容師５名に渡し、外来男性モニターの２剤方式
によるパーマ処理後の頭髪に対して使用してもらい、そ
のリンス効果の評価を求めてもらった。

但し、両リンスの違いは事前に知らさないでおいた。

その結果、第４表の通り、Ａ液（本発明による抽出物の
入ったリンス剤）の方が、優れているとの回答が寄せら
れた。

評価は、リンス後の櫛通りの良否、風合い（柔軟性）、
保湿性、光沢性の良否の４項目についてそれぞれ４段階
（大変良い、良い、普通、悪い）に区分して行ってもら
った。

上表（第４表）中、光沢性についてはＢ液（無添加）の
方が優れているように思われるが、この原因は、Ａ液及
びＢ液の外観上からの識別をできないようにするために
採用した着色料（シコニックスリキッドＡＢ：一丸ファ
ルコス（株）製シコン抽出物）に起因しているものと考
えられた。

すなわち、シコニックスリキッドＡＢは、シコニンなど
の誘導体とアルブミン蛋白質とのAlによるキレート化状
態にある着色料であるが、本発明による抽出物に含まれ
る蛋白やペプチド、あるいはアミノ酸との関係、あるい
は、毛髪自体を構成する蛋白質との関係において、何ら
かの反応が生じ、これがために光沢性についてはＢ液
（無添加）の方が良かったという結果になったものと推
定された。

つまり、両液の外観上の識別ができないようにするため
に用いたシコン抽出物が、結果的には毛髪に対して光沢
性を与えることも本試験によってわかった。

パーマ処理においては、毛髪に対して相当のダメージを
与えることが知られ、そのために、風合い、光沢性、保
湿性が低下する。また、櫛通りも悪くなる。

このような時、本発明による抽出物の利用は望ましいも
のであることがわかつた。

「ハ」発明の効果本発明は、グルテンの優れた性質に着目し、その加水分
解抽出物をもって、化粧料に配合しやすくしたことにあ
る。

本発明によって、グルテンの利用が促進されることが大
きなメリットである。その具体的な作用又は効果として
は、前項で示したごとくであるがこれをまとめてみると
つぎのように集約される。

(1) 水に良く溶け、しかも熱安定性に優れることから、化粧
料に配合し易く、また熱処理を伴うような製剤化工程に
おいても極めて安心して配合することができる。

(2) 長期的にゼリー状凝集物の発生がないことから製剤の品
質を良好に保つことができる。

(3) 抽出法（製法）が簡易であり、工業的に量産が可能であ
る。

(4) 肌や髪に対してつっぱり感を与えない。

(5) 保湿性に優れ、肌や髪に柔軟性を与えることができる。
つまり、肌や髪に塗布しこれが乾燥するとき、例えば、
高分子な多糖体では被膜を形成し接着剤的な作用を示す
ことが多いが、本発明による抽出物はそのようなことは
なく、ベタつき感を与えない。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本抽出物のＧＰＣによる分子量分布状態のチ
ャートである。第２図は、本抽出物の有する保湿作用を示すグラフであ
る。第２図中、Ａは、本抽出物の溶解直後の保湿作用、Ａ−
１は、Ａの40℃、１ケ月処理後の保湿作用、Ｂは、グル
テンの溶解直後の保湿作用、Ｂ−１は、Ｂの40℃、１ケ
月処理後の保湿作用を示すものである。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】分子量２，０００〜５，０００付近の成分
を主体とする１０，０００以下のグルテン加水分解抽出
物からなる化粧料配合用保湿成分