JP4786041B2 - 渋味、収斂味を低減する方法および渋味、収斂味低減ハス胚芽抽出物製剤 - Google Patents

渋味、収斂味を低減する方法および渋味、収斂味低減ハス胚芽抽出物製剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハス胚芽抽出物にデンプン加水分解物を配合することにより、ハス胚芽抽出物特有の渋味、収斂味等の呈味を改善する方法及び呈味が改善されたハス胚芽抽出物製剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハスは古来より、その実は食され、あるいは漢方薬として使用されており、その安全性は確立されている。このハスの種子の胚芽を用いたものとして、例えば、特開昭63−66126号に、水や水混和性の有機溶媒などを用いて抽出された抽出物が血圧降下作用を有するとして、更には、特開昭64−90129号に、同じくハスの胚芽から水や低級アルコールなどの溶媒を用いて抽出された抽出物が、高血圧などの循環器疾患や気管支喘息などの呼吸器疾患、不眠症などの中枢神経疾患などに作用するとして、それぞれ開示されている。
【0003】
ハス胚芽には、アミノ酸を起源とする含窒素有機化合物等に起因する渋味、収斂味等を有するため服用の際、不快感を生じていた。この渋味等を取り除くため、カゼインなどのタンパク質との反応が試みられているが、この方法では水不溶物が形成され、噴霧乾燥などの方法が用いられず、安価に生産することが困難であると共に呈味改善の程度も十分ではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、食品に使用するハス胚芽抽出物の渋味等を改善することにより、固有の渋味等により使用量及び用途範囲が制限されていたハス胚芽抽出物の使用量及び用途を拡大することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明により提供された呈味改善法及び呈味改善ハス胚芽抽出物製剤は、ハス胚芽抽出物に分子量が1000〜2000のデンプン加水分解物を混合溶解した後、噴霧乾燥、真空乾燥等の方法を行うことを特徴とする。
【0006】
また、本発明により提供された呈味改善ハス胚芽抽出物製剤は、上記本発明の方法により、ハス胚芽抽出物に対して分子量が1000〜2000のデンプン加水分解物を10重量%以上加えた混合物を乾燥したものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるハス胚芽抽出物とは、すいれん科ハス属のハス(Nelumbo nucifera)の種子中にある胚(胚芽)が用いられる。胚芽は、通常緑色で棒状をしており、採取した種子から取り出し、直ちに乾燥させる。
【0008】
ハス胚芽抽出物は、この胚芽を、水やメタノール、エタノール、イソプロパノール等の各種脂肪族低級アルコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、グリセリンなどの親水性有機溶媒、これら親水性有機溶媒の混合物及びこれらの親水性有機溶媒と水との混液などの各種水系溶媒を用いて抽出することにより得られるものである。
【0009】
また、本発明で言うデンプン加水分解物とは、例えば、ばれいしょ、小麦粉、トウモロコシ、タピオカ等を原料とする澱粉を酵素または無機酸によって加水分解処理して分子量が1000〜2000に分解したものを主成分としたものである。
【0010】
分子量が1000以下のデンプン加水分解物では、ハス胚芽抽出物の呈味改善効果はほとんど無く、また、分子量2000以上のデンプン加水分解物は、多少の改善効果は見られるものの、十分な効果ではない。また、分子量が2000以上のデンプン加水分解物は、水への溶解性が悪く、取扱いの面でも本発明に用いることは難しい。
【0011】
デンプン加水分解物は、呈味改善対象であるハス胚芽抽出物に対して10重量%から500重量%、好ましくは100重量%から300重量%を添加して、十分に混合し溶解する。デンプン加水分解物の添加量が多い場合は、予めデンプン加水分解物を水で溶解した液とハス胚芽抽出物を混合しても良い。
【0012】
ハス胚芽抽出物とデンプン加水分解物の溶解液は、直接乾燥するか必要に応じて濃縮した後、乾燥する。
【0013】
乾燥方法としては、加熱真空乾燥、凍結乾燥、熱風乾燥、噴霧乾燥等の何れの方法を用いることもできるが、コスト面や後工程の粉末化を考慮すると噴霧乾燥が好ましい。
【0014】
このように得られた乾燥ハス胚芽抽出物製剤は、元のハス胚芽抽出物特有の渋味や収斂味をほとんど呈せず、経口で服用するに当たり、人に対し何ら不快感を感じることの無い呈味の改善された製剤である。
【0015】
さらに、本発明の方法を付した呈味改善ハス胚芽抽出物製剤は、服用した後、消化器官において容易にデンプン加水分解物が消化され、ハス胚芽抽出物本来の薬理を示す。
【0016】
本発明の呈味改善されたハス胚芽抽出物は、顆粒、錠剤、粉末、チュアブル、カプセル等、各種形態に使用することが出来る。また、使用用途としては、抗菌素材、消臭素材、苦味素材に利用することが出来る。さらに、食品や菓子類などに用いることが出来る。例えば、パン、チューインガム、キャンディ、グミ、ゼリー、錠菓などには容易に用いることが出来る。
【0017】
【実施例】
以下、製造例及び配合例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例で用いるハス胚芽抽出物は、ハス胚芽の粗砕物を50重量%のエタノール水溶液により抽出した抽出物を使用した。
【0018】
〔製造例1〕
平均分子量1500(商品名:パインデックスNo.2、松谷化学工業社製)50gを水500mLに溶かし、分画分子量1000の透析膜(商品名:スペクトラ/ポアCE、分子量1000、メデシナルインダストリー社製)に入れ、水道水流水中で48時間透析し、膜内液を減圧濃縮後、真空乾燥した。ハス胚芽抽出物5gに透析内液乾燥物5gを混合溶解し、減圧乾燥後、真空乾燥・粉砕によりハス胚芽抽出物製剤9.2gを得た。
【0019】
〔製造例2〕
平均分子量2000(商品名:パインデックスNo.1、松谷化学工業社製)50gを水1000mLに溶かし、分画分子量2000の透析膜(商品名:スペクトラ/ポアCE、分子量2000、メデシナルインダストリー社製)に入れ、各6000mLの水に対し、3回透析(温度5℃、10時間、3回)し、透析外液を減圧濃縮後、真空乾燥した。ハス胚芽抽出物15gに透析外液乾燥物5gを混合溶解し、減圧乾燥後、真空乾燥・粉砕によりハス胚芽抽出物製剤19.6gを得た。
【0020】
〔製造例3〕
ハス胚芽抽出物200gにデンプン加水分解物として、平均分子量:1500(市販名:パインデックスNo.2、松谷化学工業社製)600gを混合溶解し、165℃の噴霧乾燥機で噴霧乾燥させ、ハス胚芽抽出物製剤694gを得た。
【0021】
〔製造例4〕
ハス胚芽抽出物200gにデンプン加水分解物として、平均分子量:2000(パインデックスNo.1、松谷化学工業社製)20gを混合溶解し、165℃の噴霧乾燥機で噴霧乾燥させ、ハス胚芽抽出物製剤203gを得た。
【0022】
〔比較例1〕
ハス胚芽抽出物20gにデンプン加水分解物として、製造例2で処理した透析内液乾燥物10gを混合溶解し、減圧乾燥後、粉砕してハス胚芽抽出物製剤28.9gを得た。
【0023】
〔比較例2〕
ハス胚芽抽出物100gにデンプン加水分解物として、平均分子量650(パインデックスNo.3、松谷化学工業社製)100gを混合溶解し、165℃で噴霧乾燥し、ハス胚芽抽出物製剤183gを得た。
【0024】
〔試験例1〕 呈味改善確認試験
製造例1から4及び比較例1、2で得られたハス胚芽抽出物製剤(以下、供試粉末という。)を用いて、ハス胚芽抽出物のマスキングについて試験を行った。パネラーは18歳から55歳までの男女各5人ずつで、各パネラーに供試粉末0.5gを直接口に含んで唾液で口中に分散して呈味を確認し、「渋味、収斂味が強い(味が強い)」「渋味、収斂味が感じられる(味を感じる)」「渋味、収斂味なし(味がない)」の3段階評価で行った。
【0025】
Figure 0004786041
【0026】
上記の結果から明らかなように、ハス胚芽抽出物に対し、分子量1000〜2000のデンプン加水分解物を10重量%以上混合溶解した液を乾燥したハス胚芽抽出物製剤は、呈味が改善されていた。
【0027】
〔配合例1〕 常法に従い、錠剤状健康食品を製造した。
粉糖 100g
デキストリン 80g
モノグリセリン脂肪酸エステル 20g
製造例3のハス胚芽抽出物製剤 100g
【0028】
〔配合例2〕 常法に従い、ハス胚芽抽出物製剤入りキャンディーを製造した。
グラニュー糖 65g
酵素糖化水飴 35g
サイクロデキストリン 0.5g
香料 0.1g
製造例3のハス胚芽抽出物製剤 1g
水 20g
【0029】
〔配合例3〕 常法に従い、ハス胚芽抽出物製剤入りチューインガムを製造した。
チューインガムベース 20g
グラニュー糖 50g
水飴 15g
軟化剤 5g
香料 0.1g
製造例2のハス胚芽抽出物製剤 1g
【0030】
【発明の効果】
本発明により、ハス胚芽抽出物特有の渋み、収斂味が改善されたハス胚芽抽出物製剤が提供され、それにより従来より広い範囲の食品に利用することが可能となった。

Claims (2)

  1. 分子量が1000〜2000のデンプン加水分解物とハス胚芽抽出物を混合溶解した後、乾燥することを特徴とするハス胚芽抽出物の渋味、収斂味低減する方法。
  2. ハス胚芽抽出物に対して、分子量が1000〜2000のデンプン加水分解物10重量%以上を混合溶解した後、乾燥してなる渋味、収斂味低減ハス胚芽抽出物製剤。
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