JPH06146433A - ユニット式建物の耐火構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 上階の建物ユニットと下階の建物ユニットと
にずれがあっても２枚の珪酸カルシウム板を貼り合わせ
る等の特別な構造とすることなく完全に密閉された耐火
空間を形成できるユニット式建物の耐火構造を提供す
る。 【構成】 上階建物ユニット１０Ａの床梁１６をＡＬＣ
版２２、耐火被覆材２４，４０からなる耐火空間上部３
５内に配置するとともに、下階建物ユニット１０Ｂの天
井梁１４を軟質の耐火被覆材３２を含んで構成された耐
火空間下部３７内に配置し、ＡＬＣ版２２の下面に耐火
被覆材３２の上端３２Ａを当接させて耐火空間上部３５
及び耐火空間下部３７を連続させ、これにより密閉耐火
空間３８を形成している。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はユニット式建物の耐火構
造に係り、ユニット式建物の構成要素である建物ユニッ
トの床梁及び天井梁を一括して耐火被覆する場合に適用
されるユニット式建物の耐火構造に関する。

【０００２】

【背景技術】近年、複数の建物ユニットを組み合わせて
住宅等の建物を建設するユニット工法が多用されるよう
になっている。このようなユニット式建物が一定の高さ
を越える場合や共同住宅等の用途に供される場合には、
法律上、ユニット式建物の骨組みを耐火被覆材で被覆し
た耐火構造としなければならない。

【０００３】従来、建物ユニットの骨組みを耐火被覆し
た構造として、特開昭６４−３９４４７号公報記載のユ
ニット住宅の耐火構造が公知である。同公報の耐火構造
は、上階建物ユニットと下階建物ユニットとの間に軟質
の耐火充填材を介在させ、これにより、上階の建物ユニ
ットの床梁に取付けられた被覆材上部と下階の建物ユニ
ットの天井梁に取付けられた被覆材下部とを連続させて
いる。これらの被覆材上部及び下部は床梁と天井梁とを
収納する耐火空間を形成し、この耐火空間内に床梁と天
井梁とを収納して耐火被覆している。

【０００４】これによれば、耐火被覆材の被覆作業の大
部分を工場で行うことができ、建設現場において床梁及
び天井梁に耐火被覆材を個別に被覆するといった作業手
間を省くことができる利点がある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の耐火
構造における被覆材上部の下部と、被覆材下部の上部は
硬質面材である珪酸カルシウム板で形成され、これらの
厚さは薄いため、下階建物ユニットの上に上階建物ユニ
ットを載せたときにこれらのユニットにずれがあると、
軟質の耐火充填材を介して被覆材上部と被覆材下部とが
正確に接続されないおそれがあり、このような場合に
は、前記耐火空間は不完全となり、期待した耐火性能を
得られない。

【０００６】このため、前記従来技術では、被覆材上部
と被覆材下部を各々２枚の珪酸カルシウム板を貼り合わ
せたものとしてその厚さを確保しており、この従来技術
では、前記耐火空間を完全に密閉されたものとするため
に、このような特別な構造としなければならないという
問題がある。

【０００７】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たもので、その目的は上階の建物ユニットの床梁及び下
階の建物ユニットの天井梁をＡＬＣ（軽量気泡コンクリ
ート）版を含んで構成した耐火空間内に一括収納して耐
火被覆する場合に、上階の建物ユニットと下階の建物ユ
ニットとにずれがあっても２枚の珪酸カルシウム板を貼
り合わせる等の特別な構造とすることなく完全に密閉さ
れた耐火空間を形成できるユニット式建物の耐火構造を
提供するところにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、上階建物ユニ
ットの床梁がこの上階建物ユニットに取付けられたＡＬ
Ｃ版を含んで構成された耐火空間上部内に配置されてい
るとともに、下階建物ユニットの天井梁が前記耐火空間
上部と連続する耐火空間下部内に配置されていることに
より前記床梁及び天井梁が一括して収納される密閉耐火
空間が形成されたユニット式建物の耐火構造において、
前記耐火空間下部は前記ＡＬＣ版の下面と当接してこの
耐火空間下部と前記耐火空間上部とを連続させる軟質の
耐火被覆材を含んで構成されていることを特徴としてい
る。

【０００９】

【作用】本発明では、上階建物ユニットの床梁をＡＬＣ
版を含む耐火空間上部内に配置するとともに、下階建物
ユニットの天井梁を耐火空間下部内に配置し、この耐火
空間上部を構成するＡＬＣ版の下面に耐火空間下部を構
成する軟質の耐火被覆材を当接させて耐火空間上部及び
耐火空間下部を連続させ、これにより床梁及び天井梁を
一括して収納する密閉耐火空間を形成している。即ち、
軟質の耐火被覆材を面積の大きなＡＬＣ版に当接させて
いるので、下階建物ユニットと上階建物ユニットとの間
にずれがあって組み付け誤差が大きい場合でも上部耐火
空間と下部耐火空間とを確実に連続させることが可能と
なり、その結果、完全に密閉された耐火空間が形成され
る。

【００１０】

【実施例】以下、添付図面に従って本発明に係るユニッ
ト式建物の耐火構造の実施例について詳説する。

【００１１】図１は、第１実施例に係るユニット式建物
の耐火構造に使用される建物ユニットの概略斜視図であ
る。図１に示すように、ユニット式建物の構成要素であ
る建物ユニット１０は、立設された４本の柱１２と、こ
れらの柱１２の上端間及び下端間に架設された天井梁１
４及び床梁１６によって直方体状に骨組みが形成されて
いる。この建物ユニット１０は工場において組み立てら
れ、その内外部には内装材及び外装材が取付けられてい
る。

【００１２】図２は、第１実施例に係るユニット式建物
の耐火構造が適用される下階建物ユニットの床梁を示す
要部断面図である。上階建物ユニット１０Ａの床梁１６
の開口部側には、図２に示すように当て部材１８が接合
され、この当て部材１８によって床梁１６に内側面１６
Ａが形成されている。この当て部材１８にはブラケット
２０が取付けられ、このブラケット２０にはＡＬＣ版２
２、根太２６、床材２８から構成される床パネル２１が
支持されている。

【００１３】ＡＬＣ版２２は、その側面が内側面１６Ａ
と当接しているとともに、上階建物ユニット１０Ａの床
上面レベルよりも下方に位置し、後述する耐火被覆材２
４等とともに下階建物ユニット１０Ａの床梁１６が配置
される耐火空間上部を構成する。また、内側面１６Ａに
は、珪酸カルシウム板等の耐火被覆材２４が取付けら
れ、これにより内側面１６Ａが耐火被覆されている。

【００１４】図３は、第１実施例に係るユニット式建物
の耐火構造が適用される上階建物ユニットの天井梁を示
す要部断面図である。図３に示すように、下階建物ユニ
ット１０Ｂの天井梁１４の開口部側にも当て部材３０が
取付けられ、この当て部材３０によって天井梁１４に内
側面１４Ａが形成されている。この内側面１４Ａには、
コの字型の通し部材３１が段付きボルト３３によってそ
の開口部を下階建物ユニット１０Ｂの内部側に向けて取
付けられ、内側面１４Ａと通し部材３１との間に一定間
隔の隙間を天井梁１４に沿って形成している。

【００１５】内側面１４Ａと通し部材３１との間に生じ
た前記隙間には軟質の耐火被覆材３２が取付けられて当
て部材１４Ａが耐火被覆されるとともに、天井梁１４の
下面１４Ｂが耐火被覆材３２の中間部３２Ｂによって、
又、外側のウエブ面１４Ｃの一部が先端部３２Ｃによっ
て各々耐火被覆されている。

【００１６】一方、この耐火被覆材３２の上端部３２Ａ
は内側面１４Ａと通し部材３１との間から下階建物ユニ
ット１０Ｂの内部側に向かって延出している。更に、通
し部材３１には小梁３４を介して石膏ボード等の天井材
３６が取付けられ、下階建物ユニット１０Ｂに天井面が
形成されている。

【００１７】耐火被覆材３２には例えばフレックスガー
ド（商品名、ニチアス株式会社製）が用いられ、このフ
レックスガードはロックウール、セラミックファイバ、
不織布、亀甲金網を積層した複合材料から構成されてい
る。

【００１８】図４は、図３の下階建物ユニット上に図２
の上階建物ユニットが積層配置された状態を示す要部断
面図である。図４に示すように、上階建物ユニット１０
Ａと下階建物ユニット１０Ｂとの間には柔軟性を有する
耐火被覆材３２がその上端をＡＬＣ版２２の下面に当接
させた状態で介在され、これによりＡＬＣ版２２と耐火
被覆材３２とが連続している。

【００１９】ここで、耐火被覆材３２は面積の大きなＡ
ＬＣ版２２の下面と当接しているので、上階建物ユニッ
ト１０Ａが下階建物ユニット１０Ｂ上にその組み付け誤
差によってずれて配置された場合でも耐火被覆材３２を
ＡＬＣ版２２に確実に当接させることができ、耐火被覆
材３２とＡＬＣ版２２とを確実に連続させることが可能
となる。

【００２０】また、上階建物ユニット１０Ａの隣接する
床梁１６間には、耐火被覆材４０が架けわたされ、その
両端部は耐火被覆材２４の上端と連続し、これにより、
床梁１６が配置される耐火空間上部３５が構成されてい
る。一方、隣接する下階建物ユニット１０Ｂ間では、耐
火被覆材３２の先端部３２Ｃ同士が当接し、これにより
天井梁１４が配置される耐火空間下部３７が構成され
る。

【００２１】つまり、上階建物ユニット１０Ａの床梁１
６と下階建物ユニット１０Ｂの天井梁１４とは、ＡＬＣ
版２２、耐火被覆材２４，４０からなる耐火空間上部３
５と、軟質の耐火被覆材３２からなる耐火空間下部３７
とによって構成された密閉耐火空間３８内に一括して収
納され耐火被覆されている。

【００２２】前記の上階建物ユニット１０Ａ及び下階建
物ユニット１０Ｂを利用して建設されるユニット式建物
に耐火構造を施工する作業は以下の通りである。

【００２３】先ず、工場にて、図２に示すように上階建
物ユニット１０Ａの床梁１６にブラケット２０を介して
床パネル２１を支持させるとともに耐火被覆材２４を取
付け、内側面１６ＡをＡＬＣ版２２と耐火被覆材２４に
よって予め耐火被覆しておく。尚、耐火被覆材２４は床
パネル２１の配置前に予め根太２６の側面に取付けてお
いてもよい。一方、下階建物ユニット１０Ｂの天井梁１
４の内側面１４Ａと通し部材３１との間にも耐火被覆材
３２を予め取付けて内側面１４Ａ、下面１４Ｂ、ウエブ
面１４Ｃを耐火被覆しておく。

【００２４】そして、上階建物ユニット１０Ａ及び下階
建物ユニット１０Ｂを建設現場へ輸送し、上階建物ユニ
ット１０Ａを下階建物ユニット１０Ｂ上に配置する。こ
の結果、上階建物ユニット１０ＡのＡＬＣ版２２の下面
には、図４に示すように柔軟性を有する耐火被覆材３２
の上端部３２Ａが当接し、これによりＡＬＣ版２２と耐
火被覆材３２とが連続される。

【００２５】このとき、耐火被覆材３２は面積の大きな
ＡＬＣ版２２の下面に当接しているので、下階建物ユニ
ット１０Ｂと上階建物ユニット１０Ａとの間の組み付け
誤差が大きい場合でも耐火被覆材３２とＡＬＣ版２２と
を確実に連続させることができる。

【００２６】また、既に配置された下階建物ユニット１
０Ｂ及び上階建物ユニット１０Ａに隣接して下階建物ユ
ニット１０Ｂ及び上階建物ユニット１０Ａを配置し、上
階建物ユニット１０Ａの床梁１６間に耐火被覆材４０を
架けわたして隣接する上階建物ユニット１０Ａの耐火被
覆材２４間を連続させる。この結果、ＡＬＣ版２２、耐
火被覆材２４，４０からなる耐火空間上部３５が構成さ
れ、この耐火空間上部３５内に床梁１６が配置される。

【００２７】一方、隣接する二つの下階建物ユニット１
０Ｂについては、下階建物ユニット１０Ｂを隣接配置す
るだけで耐火被覆材３２の先端部３２Ｃ同士が当接し、
これにより隣接する天井梁１４が一括して配置される耐
火空間下部３７が構成される。このため、建設現場での
耐火空間下部３７を形成するための作業は不要となり作
業量が低減される。その後、隣接する下階建物ユニット
１０Ｂ間に天井材４２を架けわたし、隣接する下階建物
ユニット１０Ｂの天井材３６間を接続する。

【００２８】以上の構造により、上階建物ユニット１０
Ａの床梁１６及び下階建物ユニット１０Ｂの天井梁１４
は、耐火空間上部３５と耐火空間下部３７とによって形
成された密閉耐火空間３８内に一括して収納され、これ
により耐火被覆されていることになる。

【００２９】また、上階建物ユニット１０Ａに配置され
ているＡＬＣ版２２は、ブラケット２０によって上階建
物ユニット１０Ａの床上面のレベルよりも低い位置に配
置され、このＡＬＣ版２２に根太２６を介して床材２８
が取付けられて床パネル２１が形成されている。このた
め、ＡＬＣ版２２に直接床材を貼り付けて床を形成した
場合に比較して床に弾力性をもたせることができ、歩行
時の衝撃等を緩和することができる。

【００３０】以上のように、本実施例では耐火被覆材３
２の上端部３２Ａを上階建物ユニット１０Ｂに配置され
たＡＬＣ版２２の下面に当接させることにより、耐火空
間上部３５と耐火空間下部３７との間を連続させてい
る。このため、下階建物ユニットと上階建物ユニットと
の間の組み付け誤差が大きい場合でも耐火空間上部３５
と耐火空間下部３７とを確実に連続させることができ、
完全に密閉された密閉耐火空間３８の形成が可能とな
る。

【００３１】次いで、本発明に係るユニット式建物の耐
火構造の第２実施例について説明する。

【００３２】図５は、第２実施例に係るユニット式建物
の耐火構造が適用された上階建物ユニットと下階建物ユ
ニットとの積層状態を示す要部断面図である。ここで、
前述した第１実施例と同一の部材については同一の符号
を付し、重複する説明を省略する。

【００３３】図５に示す耐火構造は、下階建物ユニット
１０Ｃの天井梁１４の開口部に取付けられる当て部材４
４が横長に形成され、且つ天井梁１４が配置される耐火
空間下部４５が珪酸カルシウム板の耐火被覆材４６，４
８、軟質の耐火被覆材５０によって構成されている点で
第１実施例と異なる。

【００３４】即ち、天井梁１４の開口部側には当て部材
４４が取付けられ、この当て部材４４は下階建物ユニッ
ト１０Ｃの内部側に延出しているとともに、この当て部
材４４の側面４４Ａには耐火被覆材４６が取付けられて
いる。また、耐火被覆材４６には軟質の耐火被覆材５０
が取付けられており、その一端が上階建物ユニット１０
ＡのＡＬＣ版２２の下面と当接し、これにより耐火被覆
材４６とＡＬＣ版２２とが連続されている。

【００３５】更に、隣接する下階建物ユニット１０Ｃ間
には耐火被覆材４８が耐火被覆材４６の下端と当接して
架けわたされ、これにより天井梁１４の下面１４Ｂが耐
火被覆されている。この結果、耐火被覆材２４，４０、
ＡＬＣ版２２からなる耐火空間上部３５と、耐火被覆材
４６，４８、軟質の耐火被覆材５からなる耐火空間下部
４５とによって天井梁１４及び床梁１６を一括して収納
する密閉耐火空間５２が構成される。

【００３６】ここで、耐火被覆材２４，４６，５０、Ａ
ＬＣ版２２の取付けは建物ユニットの製造工場にて行わ
れるので、建設現場での作業は、耐火被覆材４０，４８
を架けわたすだけですみ、建設現場での作業量の低減に
寄与する。尚、第２実施例では軟質の耐火被覆材５０を
下階建物ユニット１０Ｃの耐火被覆材４６に取付けた
が、上階建物ユニット１０ＡのＡＬＣ版２２の下面に取
付けてもよい。

【００３７】図６は、第３実施例に係るユニット式建物
の耐火構造が適用された上階建物ユニットと下階建物ユ
ニットとの積層状態を示す要部断面図である。前述した
第２実施例では、耐火被覆材４６の上端に軟質の耐火被
覆材５０を取付けて耐火空間下部４５を形成したが、図
６に示すように当て部材３０に耐火被覆材５４を取付け
るとともに、この耐火被覆材５４に受け部５４Ａを設
け、この受け部５４ＡにＡＬＣ版２２の下面と当接する
軟質の耐火被覆材５６を固定して耐火空間下部５８を構
成し、これにより耐火空間上部３５と耐火空間下部５８
とからなる密閉耐火空間６０を形成してもよい。

【００３８】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
面積の大きなＡＬＣ版に軟質の耐火被覆材を当接させて
いるので、耐火空間上部と耐火空間下部とが確実に連続
した密閉耐火空間を形成することができる。これによ
り、下階建物ユニットと上階建物ユニットとの間の組み
付け誤差が大きい場合でも所定の耐火性能が確保され
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】第１実施例に係るユニット式建物の耐火構造に
使用される建物ユニットの概略斜視図である。

【図２】第１実施例に係るユニット式建物の耐火構造が
適用される上階建物ユニットの床梁を示す要部断面図で
ある。

【図３】第１実施例に係るユニット式建物の耐火構造が
適用される下階建物ユニットの天井梁を示す要部断面図
である。

【図４】図３の下階建物ユニット上に図２の上階建物ユ
ニットが積層配置された状態を示す要部断面図である。

【図５】第２実施例に係るユニット式建物の耐火構造が
適用された上階建物ユニットと下階建物ユニットとの積
層状態を示す要部断面図である。

【図６】第３実施例に係るユニット式建物の耐火構造が
適用された上階建物ユニットと下階建物ユニットとの積
層状態を示す要部断面図である。

【符号の説明】 １０ 建物ユニット １０Ａ 上階建物ユニット １０Ｂ １０Ｃ 下階建物ユニット ２２ ＡＬＣ版 ２４ ４０ ４８ ５４ 耐火被覆材 ２６ 根太 ２８ 床材 ３２ ５０ ５６ 軟質の耐火被覆材 ３５ 耐火空間上部 ３７ ４５ ５８ 耐火空間下部 ３８ ５２ ６０ 密閉耐火空間

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 上階建物ユニットの床梁がこの上階建物
   ユニットに取付けられたＡＬＣ版を含んで構成された耐
   火空間上部内に配置されているとともに、下階建物ユニ
   ットの天井梁が前記耐火空間上部と連続する耐火空間下
   部内に配置されていることにより前記床梁及び天井梁が
   一括して収納される密閉耐火空間が形成されたユニット
   式建物の耐火構造において、 前記耐火空間下部は前記ＡＬＣ版の下面と当接してこの
   耐火空間下部と前記耐火空間上部とを連続させる軟質の
   耐火被覆材を含んで構成されていることを特徴とするユ
   ニット式建物の耐火構造。