JPH0612732Y2 - 指用電子血圧計のカフ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、指用電子血圧計のカフ
に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の電子血圧計のカフとしては、例え
ば次のようなものがある。即ち、図６，図７に示される
従来の指用のカフ１は、水平方向に延びる同じ大きさの
２枚の長方形板状の合成樹脂製の内皮２と外皮３が、周
縁部で溶着一体化されて形成されている。

【０００３】これに対し、図８，図９に示される従来の
指用のカフ４は、内皮５の指装着面側に複数の台形状の
袋５ａが形成されており、カフ４を指Ｆに巻回させたと
きに、これらの袋５ａが指Ｆを圧迫するようにされてい
る。また、図１０，図１１に示される従来の腕用のカフ
７は、特開平３−８２４４０号に示されるものであり、
カフ７全体が腕に沿うよう円筒形状とされるとともに、
内皮８が外皮９に対して周縁部７ａで起立した構成とさ
れている。

【０００４】

【考案の解決しようとする課題】一般的に電子血圧計で
は、カフにより動脈を圧迫し、このカフに加える圧力を
徐々に減じながら脈圧あるいは脈音をモニタして血圧の
測定を行っている。即ち、指用電子血圧計は、血圧計本
体の指挿入孔の内面に沿って配置される帯状のカフを指
（測定指）に巻回させて空気を入れて膨らませ、指の動
脈を圧迫して血圧を測定するように構成されている。と
ころで、指には複数の血管が互いに接近して位置してい
るため、これらの血管すべてを均一に圧迫しないと複数
の脈圧信号が形成されて、血圧を正確に測定することが
できないおそれがある。このため、指用電子血圧計にお
いては、測定指内部のすべての血管を均一に圧迫でき
る、即ち、指の周囲を均一に圧迫できるカフが望まれて
いる。

【０００５】然るに、図６，図７に示される従来の指用
のカフ１は、内皮２と外皮３が同じ大きさとされている
ので、指Ｆに巻回して膨らませると内皮２側が弛み、皺
１ａが生じてしまう。このため、皺１ａのある部分では
指Ｆを圧迫する力が小さく、従って指Ｆの周囲を均一に
圧迫することはできない。これに対し、図８，図９に示
される従来の指用のカフ４は、指を加圧すると袋５ａが
互いに隙間なく密着して指Ｆを取り囲む。このため、指
Ｆの周囲は均一に圧迫されている様に見えるが、実は隣
接する袋５ａの間の部分５ｂでは指Ｆを圧迫する力が小
さく、やはり指Ｆの周囲を均一に圧迫できない。

【０００６】また、図１０，図１１に示される従来の腕
用のカフ７は、予め測定腕の外周形状に略合わせた円筒
形状として、腕に装着する際にあまり変形させないよう
にすることで、内皮８に皺が発生するのを抑えている。
しかし、測定腕の太さは千差万別であり、エアポンプの
性能やエア充填にかかる時間の短縮化を考慮して、カフ
７は、太い腕でも十分に対応できる内径を有する形状と
されて、内径を狭める方向に変形させて腕に装着するよ
うにされている。このとき、内皮８と外皮９が溶着一体
化された２重構造となっている周縁部７ａは、他の部分
に比べて剛性が高く延び縮みしにくいので、この周縁部
７ａと同一面内にある外皮９よりも周縁部７ａ内側にあ
る内皮８側に弛みが生じやすい。すなわち、内皮８に皺
が生じにくいとはいえず、やはり腕Ｆの周囲を均一に圧
迫できない。

【０００７】本考案は前記従来技術の問題点に鑑みなさ
れたもので、その目的は、測定指内にある複数の血管を
均一に圧迫することができる指用電子血圧計のカフを提
供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、請求項１に係る指用電子血圧計のカフでは、指の表
面に圧接する内皮の周縁部と、吸排気パイプの接続され
ている外皮の周縁部とを接合して空気室を形成するとと
もに、前記内皮と外皮の横断面をともに同方向に湾曲す
る円弧状とし、血圧計本体の指挿入孔の内面に沿って配
置する指用電子血圧計のカフにおいて前記外皮の周縁を
内皮から起立させ、前記吸排気パイプの下端に形成して
空気室内で外皮と接合する扁平なフランジ部を、内皮お
よび外皮に沿って湾曲する形状とした。

【０００９】また、請求項２では、前記フランジ部の内
皮に対向する面の吸排気孔周りに突起を形成した。

【００１０】

【作用】カフの空気室を形成する内皮と外皮の横断面
が、ともに同方向に湾曲する円弧状とされているため、
カフをあまり変形させることなく測定指に巻回でき、内
皮に皺が寄りにくい。外皮の周縁を内皮から起立させて
いるので、内皮は内皮の周縁部と外皮の周縁部とが接合
されたカフ周縁部と同一面内にある。カフ周縁部は内皮
と外皮の二重構造であるので、カフ中央部領域に比べて
剛性が高い。即ち、内皮は、剛性が高い周縁部と同一面
内にあるため、指に巻回するようにカフを変形させた際
に皺が寄りにくい。

【００１１】空気室内に位置する吸排気パイプのフラン
ジ部は、内皮および外皮に沿って湾曲する形状とされて
いるため、外皮との接合性に優れるとともに、カフを指
に巻回して膨らませた際に内皮とフランジ部の対向面は
一様に離間する。このため、空気室内に送られる空気の
量が少なくても、フランジ部の一部が内皮を介して測定
指の表面を圧迫するようなことがない。また、フランジ
部は、内皮および外皮に沿って湾曲する形状とされてい
るため、大きさに関係なく測定指の表面を圧迫するおそ
れがない。

【００１２】また、請求項２では、突起が内皮を吸排気
孔から引き離した状態に保つので、吸排気孔が内皮で塞
がれることがない。

【００１３】

【実施例】

次に、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。図
１，図２は、本考案の一実施例である指用電子血圧計の
カフを示しており、図１はカフの全体斜視図，図２は同
カフの横断面図である。図３は同カフを用いた指用電子
血圧計の分解斜視図、図４，図５は、同カフの使用状態
を示す説明図である。

【００１４】これらの図において、符号１０が指用電子
血圧計のカフで、長方形板状の合成樹脂製の内皮２０
と、この内皮２０の外側に沿って配設された長方形板状
の合成樹脂製の外皮３０とが、それぞれの周縁部２０
ａ，３０ａが溶着一体化されることによって、円筒の一
部分を構成するような格好に湾曲された円弧形状に形成
されている。そして、外皮３０は溶着一体化されたカフ
周縁部１０ａから略垂直に起立するように形成され（図
２符号３１は起立部を示す）、内皮２０はこのカフ周縁
部１０ａと同一面内に延在している。符号１０ｂは、内
外皮間に形成された空気室で、符号４０は、この空気室
１０ｂに空気を送る合成樹脂製の吸排気パイプである。
吸排気パイプ４０の下端開口部である吸排気孔４０ａの
周縁にはフランジ部４１が形成され、このフランジ部４
１の上側に外皮３０が熱溶着されている。フランジ部４
１は、内皮２０および外皮３０に沿って湾曲する形状と
されている。空気室１０ｂ内に位置するフランジ部４１
の下面側の吸排気孔４０ａの周りには、突起４１ａが形
成されており、吸排気孔４０ａの周囲に内皮２０が密着
して空気の流れが遮断されることがないようにされてい
る。符号４２は、吸排気パイプ４０の略真中位置付近に
形成されたフランジ状の係合部で、エアソケット（後
述）が係合可能にされている。

【００１５】図３は、カフ１０を用いた指用電子血圧計
の分解斜視図を示しており、符号８１は、カフ１０が収
容されるカフフレームである。そして、上ケース９１と
下ケース９２からなる指用電子血圧計本体の内部に、カ
フ１０を収容したカフフレーム８１、エアポンプ８２、
排気装置８３、圧力センサ８４、エアソケット８５、電
子基板８６等が収容配置される。符号８９はエアチュー
ブである。また、符号９２ａ，９２ａは、下ケース９２
の側面に形成された指挿通孔で、カフフレーム８１に収
容されたカフ１０は、この指挿通孔９２ａに沿った状態
にされる。

【００１６】図４，図５は、カフ１０の具体的な使用状
態を示している。即ち、カフフレーム８１に装着された
カフ１０は、一端がカフ操作用スライド摘み９０に接続
されたカフバンド７０に周回されており、スライド摘み
９０をスライド操作してカフバンド７０を締め込むとカ
フ径が狭まるようになっている。即ち、図４では、カフ
１０の内側に指Ｆが挿入されており（血圧測定準備状
態）、図５では、カフ１０が指Ｆに巻回状態とされると
ともに、カフ１０内に空気が送りこまれ、カフ１０が指
Ｆを周囲から圧迫している（血圧測定状態）。そして、
このとき、指Ｆに接触する内皮３０には皺が殆ど形成さ
れず、均一な圧迫状態が確保されている。即ち、カフ周
縁部１０ａは、内皮２０と外皮３０が合わさった２重構
造とされて、他の部分（カフ中央領域）に比べて剛性が
高く延び縮みしにくいので、この周縁部１０ａと同一面
内にあるカフ内皮２０には皺が寄りにくく、指Ｆの周囲
を均一に圧迫することができる。

【００１７】なお前記実施例では、外皮３０の周縁部と
内皮２０の周縁部とが熱溶着されてカフとして一体化さ
れるとともに、外皮３０の起立部３１が形成されている
が、予め湾曲形状で、しかも起立部３１を有する形状に
外皮３０を成形しておき、同じく湾曲形状に成形した内
皮２０を接着剤を介して接合するようにしてもよい。

【００１８】

【考案の効果】以上の説明から明らかなように、本考案
に係る指用電子血圧計のカフによれば、測定指に巻回し
て膨らませた際に、測定指を圧迫する内皮には皺が寄り
にくい。このため、測定指の周囲を均一に圧迫すること
ができ、測定指内にある複数の血管を同時に均一に圧迫
することができるので、血圧が正確に測定できる。

【００１９】空気室内に送られる空気の量が少なくと
も、吸排気パイプのフランジ部の一部が内皮を介して測
定指の表面を圧迫するようなことがない。このため、カ
フを指に装着した際に不快感がなく、また、より正確に
血圧測定ができる。吸排気パイプのフランジ部は、大き
さに関係なく測定指の表面を圧迫するおそれがない。こ
のため、フランジ部を大きく形成することによりフラン
ジ部と外皮とを広い領域で接合させることができ、フラ
ンジ部と外皮の接合強度を高くできる。

【００２０】また、請求項２では、吸排気孔が内皮で塞
がれることがないので、吸排気パイプと空気室の気道が
確保され、より正確に血圧測定ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例である指用電子血圧計のカフ
の斜視図

【図２】同カフの横断面図

【図３】同カフが用いられた指用電子血圧計の分解斜視
図

【図４】同カフの使用状態を示す説明図

【図５】同カフの使用状態を示す説明図

【図６】従来の指用電子血圧計のカフの横断面図

【図７】同カフの使用状態を示す説明図

【図８】他の従来の指用電子血圧計のカフの斜視図

【図９】同カフの使用状態を示す説明図

【図１０】さらに他の従来の指用電子血圧計のカフの斜
視図

【図１１】同カフの側面図

【符号の説明】

１０ 指用電子血圧計のカフ １０ｂ 空気室 ２０ 内皮 ２０ａ 内皮周縁部 ３０ 外皮 ３０ａ 外皮周縁部 ３１ 外皮周縁である外皮起立部 ４０ 吸排気パイプ ４０ａ 吸排気孔 ４１ フランジ部 ４１ｂ 突起 ９１ 血圧計本体を構成する上ケース ９２ 血圧計本体を構成する下ケース ９２ａ 指挿入孔

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 指の表面に圧接する内皮の周縁部と、吸
   排気パイプの接続されている外皮の周縁部とが接合され
   て空気室が形成されるとともに、前記内皮と外皮の横断
   面がともに同方向に湾曲する円弧状で、血圧計本体の指
   挿入孔の内面に沿って配置される指用電子血圧計のカフ
   であって、 前記外皮の周縁が内皮から起立させられ、前記吸排気パ
   イプの下端に形成され空気室内で外皮と接合される扁平
   なフランジ部が、内皮および外皮に沿って湾曲する形状
   とされたことを特徴とする指用電子血圧計のカフ。
2. 【請求項２】 前記フランジ部の内皮に対向する面の吸
   排気孔周りに突起が形成されたことを特徴とする請求項
   １記載の指用電子血圧計のカフ。