JPH0612635U - 木質系防音床板 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 集合住宅のコンクリート床スラブ上に直接接
着施工される木質系の床材で、生活振動ないし騒音が床
スラブを介して隣室や階下室に伝播するのを防止し、重
量物を長時間置いても沈みにくい木質系防音床板を提供
する。 【構成】 木質化粧板１の下面に、接着剤を介してゴム
又は合成樹脂からなる制振シート２が貼着され、その制
振シート２の下面に接着剤を介して複数の切り溝４が裏
面に形成された木質基板３が貼着され、その木質基板３
の下面に表裏両面に凹凸が形成された発泡合成樹脂シー
ト５が貼着されてなる木質系防音床板を必須要件項と
し、木質基板３の下面に貼着された発泡合成樹脂シート
５は、発泡倍率が１０〜５０倍で厚さが４〜２０ｍｍの
シートを圧締成型して、厚さが３〜６ｍｍで基板と接す
る表面の接触面積率が５０〜８０％、床スラブ面と接す
る裏面の接触面積率が３５〜７０％の範囲にある木質系
防音床板。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、主として、集合住宅のコンクリート床スラブ上に直接接着施工さ れる木質系の床材で、詳しくは、生活振動ないし騒音（軽量床衝撃音や重量床衝 撃音）が床スラブを介して隣室や階下室に伝播するのを防止する為の木質複合防 音床板に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来、合板等を基材とし、集合住宅などの床スラブ上に直接貼着して施工され ている床材は、表面に薄い突板等が貼着された厚さが１２ｍｍ程度の基材の裏面 に、厚さが２〜４ｍｍ程度のクッション性を有する発泡倍率５〜１０倍程度の発 泡合成樹脂シートが貼着されたものが一般的で、床板裏面の発泡シートはクッシ ョン性を有するので、床スラブ面の凹凸を吸収するとともに、歩行感を向上させ る等の効果を有していたが、床板を介して騒音が伝播するのを防止する効果はほ とんど期待出来なかった。

【０００３】 そこで、基板の間にゴムや合成樹脂などに、金属粉や無機質粉を混入したり、 軟化剤等で硬度を調整したり、あるいは発泡等により比重を調整した制振シート を介在させるとともにクッション性を有する発泡合成樹脂シートの発泡倍率を高 くしたり、厚さを厚くするなどの方法により、目的とする防音性能を達成する工 夫がなされていた。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

ところが、床板の厚さを抑えてより防音性能を向上させようと発泡合成樹脂シ ートの発泡倍率を高くすると、防音性能は向上するが、床板表面からの荷重に対 して床板が部分的に沈み込み、家具などの重量物を長時間置くと床面に凹みが生 じて回復しなかったり、歩行時にフワフワして歩きにくく、違和感が有るなどの 問題点があった。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

この考案は、上記の問題点を解決するためなされたもので、その構成は「木質 化粧板の下面に、接着剤を介してゴム又は合成樹脂からなる制振シートが貼着さ れ、その制振シートの下面に接着剤を介して複数の切り溝が裏面に形成された木 質基板が貼着され、その木質基板の下面に表裏両面に凹凸が形成された発泡合成 樹脂シートが貼着されてなる木質系防音床板。」を必須要件項とし、「木質基板 の下面に貼着された発泡合成樹脂シートは、発泡倍率が１０〜５０倍で厚さが４ 〜２０ｍｍのシートを圧締成型して、厚さが３〜６ｍｍで基板と接する表面の接 触面積率が５０〜８０％、床スラブ面と接する裏面の接触面積率が３５〜７０％ の範囲にある凸部が形成されてなる実用新案請求の範囲第１項記載の木質系防音 床板。」を実施態様項とするものである。

【０００６】 以下、この考案を図面を参照しながら詳述する。

【０００７】 図１はこの考案の実施例になる床板の断面図で、図２はこの考案に用いられる 発泡合成樹脂シートの表面と裏面の実施例である。図３はこの考案の実施例と比 較例になる木質系防音床板の軽量床衝撃音による遮音等級試験結果を示している 。図４はこの考案の実施例と比較例になる床板の荷重試験結果を示している。

【０００８】 木質化粧板１は合板、パーティクルボード、ＭＤＦ、ＬＶＬ等を基板とし、そ の表面には厚さが０．２〜０．５ｍｍ程度の常用の薄い化粧単板が貼着された厚 さ２．０〜５．０ｍｍの範囲にある単板貼り化粧板が用いられる。該表面の木質 化粧板１は薄い方が良いが、薄すぎると表面からの荷重により割れたり矯んだり して床材としての耐久性能に問題を生じるため、２．５〜３．５ｍｍの範囲が好 ましい。

【０００９】 そして、その木質化粧板１の下面には接着剤を介してゴム又は合成樹脂からな る制振シート２が貼着される。制振シート２はＪＩＳ Ｋ ６３０１号に規定す るＣ形硬度計による硬度が１０〜４０度の範囲で厚さが０．５〜２．０ｍｍのゴ ム又は合成樹脂からなる制振シート２が好ましく用いられる。

【００１０】 制振シート２の下面は厚さ７ｍｍ前後の合板等の木質基板３に貼着される。な お、木質基板３は床板全体をフレキシブルにして床板の反りを防止し、コンクリ ート床スラブ面へのなじみを良くするために、裏面の短手方向に平行に１〜１０ ｃｍ程度の一定間隔で深さ３〜７ｍｍ程度の切り溝４が形成される。

【００１１】 木質基板３の裏面には、表裏両面に凹凸が形成された発泡合成樹脂シート５が 貼着される。発泡合成樹脂シート５は、発泡倍率が１０〜５０倍で、厚さが４〜 ２０ｍｍの範囲にある発泡ポリエチレンや発泡ウレタンシートを圧締成型して、 厚さが３〜６ｍｍで木質基板と接する表面には接触面積率が５０〜８０％、床ス ラブ面と接する裏面には接触面積率が３５〜７０％の範囲になる凸部が形成され ている。

【００１２】 発泡合成樹脂シート５の両面に形成された凹凸形状は両面で異なり、かつ木質 基板３と接する表面の凸部の高さが床スラブ面と接する裏面に形成された凸部の 高さに比較して低い方が床板の表面から荷重を加えたときの沈み込みが減少して 表面に固さを感じるとともに、防音効果が向上して好ましい。

【００１３】 なお、この考案に用いる発泡合成樹脂シート５の作成例としては、発泡倍率が １０〜５０倍で厚さが４〜２０ｍｍ程度の平坦な発泡樹脂シートを表面に所定の 範囲となるように凸部の面積を形成したエンボス型板を用いてシートの両面から 加熱圧締し、凸部での厚さを３〜６ｍｍ、凹部での厚さを１〜２ｍｍの範囲に仕 上げる。

【００１４】 ゴム又は合成樹脂の制振シート２と化粧板１や木質基板３との接着は常用の合 成樹脂−木材系用の接着剤、例えばゴム系やウレタン、アクリル樹脂系などの合 成樹脂接着剤が用いられる。木質基板３と両面に凹凸を形成した発泡合成樹脂シ ート５との接着もゴム系やビニル、メラミン、フェノール樹脂系等常用の合成樹 脂接着剤が用いられる。

【００１５】 なお、上記木質系防音床材の周辺部には施工性を向上させるために、本実など の接合加工が施される。

【００１６】

【作用】

この考案において、木質化粧板１の厚さを２．０〜５．０ｍｍ程度にするのは 、一般に音を発する化粧板の表面は厚さが薄くて軟らかいほど発生音は少ないこ とが実験的に知られているが、表面材である化粧板１の厚さが２．０ｍｍより薄 すぎると表面からの荷重により割れたり矯んだりして床材としての耐久性能に問 題を生じるため、注意が必要である。

【００１７】 木質化粧板１の下面に貼着されるゴム又は合成樹脂からなる制振シート２の硬 度と厚さを１０〜４０度の範囲で、厚さを０．５〜２．０ｍｍ程度とするのは、 ゴム又は合成樹脂制振シート２の硬度が低く、厚さが厚い方が防音効果は優れる が、硬度が１０度以下であったり厚みが２ｍｍよりも厚い場合には、床面に部分 的な荷重による大きな沈みが生じて、床板の接続面に段差を生じ易くなるためで ある。

【００１８】 木質系基板３の厚さを７ｍｍ前後の範囲とするのは、床材としての全体の厚さ を出来る限り薄く押えながら且つ、床板として実用的な強度を有するためであり 、複数本の切り溝４を裏面に形成するのは、床板をフレキシブルにして床スラブ 面にある軽微な凹凸とのなじみを良くし、施工を容易にすると共に、防音性能を も向上させるためである。

【００１９】 請求項第２項において、木質系基板３の下面に貼着される発泡合成樹脂シート ５の厚さや接触面積比率などの構成を規定するのは、従来の凹凸のない発泡シー トを木質系基板に貼着した床板（比較例２）や床スラブ面と接する片面のみに凹 凸を形成した発泡シートを木質系基板に貼着した床板（比較例１）に比べ、防音 性能が向上するとともに床板表面からの荷重に対する相対的な沈み込み量を少な くすることが出来たことによる。なお、この考案の実施例の床板では、騒音測定 試験の結果が遮音等級（ＬL ）値で軽量床衝撃音５０〜４５に合格することが判 明した。

【００２０】 以下、この考案の実施例を示す。

【００２１】

【実施例】

厚さ２．５ｍｍの合板表面に厚さ０．３ｍｍのナラの突板単板を貼着した厚さ ２．８ｍｍの化粧板１の裏面に厚さ１ｍｍの合成樹脂制振シート２を貼着した。 次いで、遮音シート２の下面に裏面に幅１．５ｍｍの切り溝４を５ｃｍ間隔に切 削形成した厚さ７ｍｍの合板３を接着積層した。続いて、該合板３の下面に、発 泡倍率が２０倍で重さが平方メートル当たり４００ｇ（密度が０．０５程度）、 厚さが８ｍｍの発泡ウレタンシートを両面から型板で熱圧締成型して、凸部の厚 さが４ｍｍで凹部の厚さが１ｍｍ、木質基板と接する表面には接触面積率が７０ ％となる様に１辺が８ｍｍの正方形の凸部を形成し、床スラブ面と接する裏面に は接触面積率が４５％の範囲になる様に直径が９ｍｍの円形凸部を形成した発砲 合成樹脂シート５を貼着して、求める木質系防音床板を得た。

【００２２】 なお、比較例として、この実施例と同様に構成した合板の裏面に厚さが４．５ ｍｍで平方メート当たり４００ｇの両面が平坦な発泡ウレタンシートを貼着して 構成した床板（比較例２）と床スラブ面と接する面のみに接触面積が４５％とな るように凸部を形成した平方メートル当たり４００ｇで厚さが４．５ｍｍの発泡 ウレタン樹脂シートを貼着して構成した床板（比較例１）を作成した。

【００２３】 そして、これらの床板を厚さ１５０ｍｍのコンクリートスラブに接着剤を用い て固着し、床板の上面よりタッピングマシンによる軽量床衝撃音を個別に加え、 スラブの下面で騒音計を用いてそれぞれの周波数毎の騒音を測定し、遮音等級（ Ｌ）値及び、人間の踵の面積と体重を想定した荷重である床板の表面に直径５０ ｍｍ当たり８０Ｋｇの荷重を加えることにより、床板の沈み込み量を求めた。試 験の結果、図３と図４に示す様に遮音等級（ＬL ）値は軽量床衝撃音で５０に合 格するとともに、板の沈み込み量を遮音性能の向上に対して相対的に低く抑えた 結果を得た。

【００２４】

【考案の効果】

この考案の木質系防音床板は上記の様な構成であるため、表面が木質系で、か つ全体の厚みが従来の遮音床材に比較して薄く、実施例では１５ｍｍ以下の厚さ にもかかわらず床材としての強度を保持しながら、遮音等級値 (ＬL)が軽量床衝 撃音で４５〜５０を達成することができる。

【００２５】 また、両面に凹凸を形成した発砲合成樹脂シートが床スラブ面の凹凸も良く吸 収して平滑に施工できるだけでなく、床面からの荷重に対しても防音性能の向上 に比して相対的に沈み込みにくく、歩行時の違和感も解消される等の効果を有し ている。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の実施例になる床板の側面図

【図２】この考案に用いられる発砲合成樹脂シートの表
面と裏面の実施例

【図３】実施例になる床板と比較例になる床板の軽量床
衝撃試験による遮音等級試験結果

【図４】実施例になる床板と比較例になる床板の荷重試
験による沈み込み量試験結果

【符号の説明】

１ 木質化粧板 ２ 制振シート ３ 木質基板 ４ 切り溝 ５ 発泡合成樹脂シート

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 木質化粧板の下面に、接着剤を介してゴ
   ム又は合成樹脂からなる制振シートが貼着され、その制
   振シートの下面に接着剤を介して複数の切り溝が裏面に
   形成された木質基板が貼着され、その木質基板の下面に
   表裏両面に凹凸が形成された発泡合成樹脂シートが貼着
   されたことを特徴とした木質系防音床板。
2. 【請求項２】 木質基板の下面に貼着された発泡合成樹
   脂シートは、発泡倍率が１０〜５０倍で厚さが４〜２０
   ｍｍのシートを圧締成型して、厚さが３〜６ｍｍで木質
   基板と接する表面の接触面積率が５０〜８０％、床スラ
   ブ面と接する裏面の接触面積率が３５〜７０％の範囲に
   ある凸部が形成されたことを特徴とした実用新案請求の
   範囲第１項記載の木質系防音床板。