JPH06118972A - 適応制御装置及び能動型騒音制御装置 - Google Patents

適応制御装置及び能動型騒音制御装置

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JPH06118972A
JPH06118972A JP4270411A JP27041192A JPH06118972A JP H06118972 A JPH06118972 A JP H06118972A JP 4270411 A JP4270411 A JP 4270411A JP 27041192 A JP27041192 A JP 27041192A JP H06118972 A JPH06118972 A JP H06118972A
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noise
signal
filter
filter coefficient
digital filter
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Yoshiharu Nakaji
義晴 中路
Tsutomu Hamabe
勉 浜辺
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Abstract

(57)【要約】 【目的】駆動信号の生成に時間的な遅れを招くことな
く、演算量の大幅な低減を図る。 【構成】コントローラ10内で実行される処理の内、加
速度センサ5a〜5fから供給される基準信号xk を適
応ディジタルフィルタWkmでフィルタ処理してラウドス
ピーカ7a〜7dの駆動信号y1 〜y4 を生成する駆動
信号生成部11における演算処理は時間領域で行い、基
準信号xk 及びマイクロフォン8a〜8hから供給され
る残留騒音信号el に基づいて適応ディジタルフィルタ
kmのフィルタ係数の更新量を決定する適応処理部12
における演算処理は周波数領域で行う構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、制御対象の振る舞い
が未知である場合或いは変動する場合であっても制御が
可能な適応制御装置、並びに騒音源から伝達される騒音
に制御音源から発せられる制御音を干渉させることによ
り騒音の低減を図る能動型騒音制御装置に関し、特に、
制御アクチュエータや制御音源を駆動する信号を生成す
るためにフィルタ係数可変のディジタルフィルタと、こ
のディジタルフィルタのフィルタ係数を所定の適応アル
ゴリズムに応じて更新する適応処理部とを備えた装置に
おいて、制御アクチュエータや制御音源に対する駆動信
号の時間遅れを招くことなく、演算量の低減が図られる
ようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】この種の従来の装置として、英国特許第
2149614号や特表平1−501344号に記載の
ものがある。これら従来の装置は、航空機の客室やこれ
に類する閉空間に適用される騒音低減装置であって、閉
空間の外部に位置するエンジン等の単一の騒音源は、基
本周波数f0 及びその高調波f1 〜fn を含む騒音を発
生するという条件の下において作動するものである。
【0003】具体的には、閉空間内の複数の位置に設置
され音圧を検出するマイクロフォンと、その閉空間に制
御音を発生する複数のラウドスピーカとを備え、騒音源
の周波数f0 〜fn 成分に基づき、それら周波数f0
n 成分と逆位相の信号でラウドスピーカを駆動させ、
もって閉空間に伝達される騒音と逆位相の制御音をラウ
ドスピーカから発生させて騒音を打ち消している。
【0004】そして、ラウドスピーカから発せられる制
御音の生成方法として、PROCEEDINGS OF THE IEEE,VOL.
63 PAGE 1692,1975,“ADAPTIVE NOISE CANSELLATION :
PRINCIPLES AND APPLICATIONS ”で述べられている‘WI
DROW LMS’アルゴリズムを多チャンネルに展開したアル
ゴリズムを適用している。その内容は、上記特許の発明
者による論文、“A MULTIPLE ERROR LMS ALGORITHM AND
ITS APPLICATION TOTHE ACTIVE CONTROL OF SOUND AND
VIBRATION ”,IEEE TRANS.ACOUST.,SPEECH,SIGNAL PRO
CESSING,VOL.ASSP −35,PP.1423−1434,1987 にも述べ
られている。
【0005】即ち、LMSアルゴリズムは、適応ディジ
タルフィルタのフィルタ係数を更新するのに好適なアル
ゴリズムの一つであって、例えばいわゆるFilter
ed−X LMSアルゴリズムにあっては、ラウドスピ
ーカからマイクロフォンまでの伝達関数をモデル化した
伝達関数フィルタを全てのラウドスピーカとマイクロフ
ォンとの組み合わせについて設定し、騒音源の騒音発生
状態を表す基準信号をそのフィルタで処理した値と各マ
イクロフォンが検出した残留騒音とに基づいて閉空間内
の騒音が低減するように、各ラウドスピーカ毎に設けら
れたフィルタ係数可変のディジタルフィルタのフィルタ
係数を更新している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】確かに、上記のような
従来の装置であれば、ラウドスピーカを駆動する信号を
生成するディジタルフィルタのフィルタ係数が制御の進
行に伴って最適値に収束していき最終的に閉空間内の騒
音の低減を図ることができるが、畳み込み演算等を時間
領域で行う通常のLMSアルゴリズム、特に基準信号と
伝達関数フィルタとの畳み込み演算も必要なFilte
red−X LMSアルゴリズムは、タップ数(ディジ
タルフィルタに含まれるフィルタ係数の個数)やチャン
ネル数(取り込む基準信号の数,ラウドスピーカの個
数,マイクロフォンの個数)の増加に伴って演算量が膨
大になってしまう。
【0007】このため、発生する騒音が例えば車両のロ
ード・ノイズのようにランダムな騒音(ランダム・ノイ
ズ)であることからディジタルフィルタに多くのタップ
数が必要となる場合や、制御の精度を上げるためにラウ
ドスピーカやマイクロフォンの個数を増やす必要がある
場合等には、プロセッサの処理能力の大幅な(場合によ
っては非現実的なレベルへの)向上が必要となってしま
う。特に、タップ数の増加は演算量の増加に自乗のオー
ダーで影響を与えるため、ディジタルフィルタのフィル
タ係数の更新処理が間に合わなくなる結果、良好な適応
制御が行えなくなる恐れがある。
【0008】なお、時間領域のLMSアルゴリズムと異
なり、畳み込み演算等の全演算を周波数領域で行うLM
Sアルゴリズム(例えば、『“Adaptive Filtering in
theFrequency Domain”,MAURO DENTIN
O,JOHN McCOOL and BERNARD W
IDROW Proc.IEEE.vol 66,pp1658 −1659,1978
』、『“Fast Implementation of LMS Adaptive Filte
rs ”,EARL R.FERRARA IEEE Trans.Ac
oust,Speech,and Signal Processing vol ASSP −28, P
P.474−475 ,1980』、『“Unconstrained Frequecy−D
omain Adaptive Filter”,DAVID MANSOU
R and AUGUSTINE H.GRAY,JR.,
IEEE Trans.Acoust,Speech,and Signal Processing vol
ASSP −30, PP.726−734 ,1982』等に詳しい。)は、
タップ数の増加に対して“n・log n”のオーダーでし
か演算量が増加しないため、上述したランダム・ノイズ
を低減する能動型騒音制御装置のようにタップ数の多い
場合に有利なアルゴリズムである。
【0009】しかし、かかる周波数領域のLMSアルゴ
リズムでは、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換
する必要がある、即ち一般にはFFT(高速フーリエ変
換)を使用する必要があることから、データを所定個数
のブロック単位で扱うことになるため、取り込まれた基
準信号から駆動信号を生成するのに、最低でもそのブロ
ック長の時間遅れが発生してしまい、騒音に対して遅れ
を持った制御音しか出力できず、充分な制御効果が期待
できなくなってしまうという不具合がある。
【0010】本発明は、このような従来の技術が有する
未解決の課題に着目してなされたものであって、時間領
域における演算処理及び周波数領域における演算処理の
それぞれの長所を生かすことにより、駆動信号の時間遅
れを招くことなく、演算処理の大幅な低減を図ることが
できる適応制御装置及び能動型騒音制御装置を提供する
ことを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の発明は、所定の基準信号をフィルタ
係数可変のディジタルフィルタでフィルタ処理して制御
アクチュエータを駆動する信号を生成する駆動信号生成
手段と、所定の評価関数の値が目標値に一致するように
前記ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応
処理手段と、を備えた適応制御装置において、前記駆動
信号生成手段は時間領域のフィルタ処理を実行し、前記
適応処理手段は周波数領域の演算処理によって前記ディ
ジタルフィルタのフィルタ係数の更新量を決定する。
【0012】また、上記目的を達成するために、請求項
2記載の発明は、騒音源から騒音が伝達される空間に制
御音を発生可能な制御音源と、前記騒音源の騒音発生状
態を検出し基準信号として出力する騒音発生状態検出手
段と、前記基準信号をフィルタ係数可変のディジタルフ
ィルタでフィルタ処理して前記制御音源を駆動する信号
を生成する駆動信号生成手段と、前記空間内の所定位置
における残留騒音を検出し残留騒音信号として出力する
残留騒音検出手段と、前記基準信号及び前記残留騒音信
号に基づいて前記空間内の騒音が低減するように前記デ
ィジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手
段と、を備えた能動型騒音制御装置において、前記駆動
信号生成手段は時間領域のフィルタ処理を実行し、前記
適応処理手段は周波数領域の演算処理によって前記ディ
ジタルフィルタのフィルタ係数の更新量を決定する。
【0013】そして、請求項3記載の発明は、上記請求
項2記載の発明において、複数の残留騒音検出手段を有
し、適応処理手段は、ディジタルフィルタのフィルタ係
数を更新する処理毎に前記複数の残留騒音検出手段の内
の一つを順番に選択し、その選択された一つの残留騒音
検出手段が検出した残留騒音が低減するように前記ディ
ジタルフィルタのフィルタ係数を更新する。
【0014】さらに、請求項4記載の発明は、上記請求
項2又は請求項3記載の発明において、適応処理手段
は、基準信号及び残留騒音信号を周波数領域の信号に変
換する信号変換手段と、この信号変換手段の変換結果に
基づいて前記空間内の騒音が低減するように前記ディジ
タルフィルタのフィルタ係数の更新量を決定する更新量
決定手段と、この更新量決定手段が決定したフィルタ係
数の更新量を時間領域の値に変換する更新量変換手段
と、この更新量変換手段の変換結果に応じて前記ディジ
タルフィルタのフィルタ係数を更新する。
【0015】
【作用】請求項1記載の発明にあっては、駆動信号生成
手段が時間領域のフィルタ処理を実行することによって
制御アクチュエータの駆動信号を生成するため、駆動信
号は基準信号に対して時間的に遅れることなく駆動信号
生成手段から制御アクチュエータに供給される。
【0016】そして、適応処理手段における演算処理は
周波数領域で行われるため、例えば畳み込み演算であれ
ば各周波数成分同士の積算を行えば済むことから、ディ
ジタルフィルタのフィルタ係数の更新量を時間領域の演
算処理で決定する場合に比べて演算量が大幅に低減す
る。なお、フィルタ係数の更新量を周波数領域の演算処
理で行うと、評価関数の演算に必要な信号を周波数領域
の信号に変換する必要があることから、過去の信号の影
響を含んだ情報に基づいて現在のフィルタ係数の更新量
を決定するという時間的な遅れの影響が懸念される。
【0017】しかし、多くのフィルタ係数からなるディ
ジタルフィルタを適応動作させる場合、適応速度を上げ
ようとすると不安定になり易いため、そのようなフィル
タの適用対象は変化しないか或いは変化が極めて緩やか
であることを前提としていることが多い。換言すれば、
ディジタルフィルタのフィルタ係数の変化はそれほど急
激である必要はなく、従って、フィルタ係数の更新量の
演算に多少の時間遅れが生じてもフィルタ係数の最適値
への収束が不可能になるようなことはない。
【0018】請求項2記載の発明の作用も上記請求項1
記載の発明の作用と本質的には同じであり、異なるの
は、この請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発
明を空間内の騒音の低減を図る能動型騒音制御装置に適
用し得るために備えた手段の具体的な作用があるという
点である。即ち、請求項2記載の発明にあっては、駆動
信号生成手段が、騒音発生状態検出手段から出力された
基準信号を時間領域でフィルタ処理して制御音源の駆動
信号を生成するため、駆動信号は基準信号に対して時間
的に遅れることなく駆動信号生成手段から制御音源に供
給される。
【0019】このため、制御音源からは騒音源に発生す
る騒音に相関のある制御音が発生するが、制御開始直後
はフィルタ係数が最適な値に収束しているとは限らない
ので、必ずしも騒音が低減されるとはいえない。しか
し、適応処理手段が、基準信号及び残留騒音検出手段が
検出した残留騒音に基づいて空間内の騒音が低減するよ
うにディジタルフィルタのフィルタ係数を更新するの
で、そのフィルタ係数が最適値に収束していき、制御音
源から発せられる制御音によって騒音が打ち消され、空
間内の騒音が低減する。
【0020】そして、かかる適応処理手段は、周波数領
域の演算処理によってディジタルフィルタのフィルタ係
数の更新量を決定するので、ディジタルフィルタのフィ
ルタ係数の更新量を時間領域の演算処理によって決定す
る場合に比べて演算量が大幅に低減する。また、請求項
3記載の発明は、いわゆるエラースキャンニング法
(“日本音響学会講演論文集”平成2年3月「アクティ
ブ・ノイズコントロール・チェアー」に詳しい。)を、
周波数領域の演算処理によってディジタルフィルタのフ
ィルタ係数の更新量を決定する上記請求項2記載の発明
に適用したものであり、複数の残留騒音検出手段が検出
した残留騒音の内の一つの残留騒音に着目し、その残留
騒音が低減するようにディジタルフィルタのフィルタ係
数を更新し、そして、次の処理では他の残留騒音に着目
して同様の処理を行う、という具合に次々に残留騒音が
スキャンニングされながらフィルタ係数が更新されてい
くことになる。
【0021】即ち、騒音低減効果を上げるために複数の
残留騒音検出手段を配設した場合、本来ならば全ての残
留騒音に基づいてディジタルフィルタのフィルタ係数を
更新することになるから、残留騒音検出手段の個数に対
応してディジタルフィルタのフィルタ係数の更新演算量
が増大してしまうが、この請求項3記載の発明であれ
ば、フィルタ係数の更新処理一回毎に一つの残留騒音が
使用されるため、複数の残留騒音検出手段を設けても、
残留騒音検出手段が一つの場合に比較して演算量が飛躍
的に増大することはない。
【0022】そして、上述したように各残留騒音をスキ
ャンニングしながら更新処理が次々と実行されるため、
全ての残留騒音が小さくなるようにディジタルフィルタ
のフィルタ係数を更新する場合と同様に、空間全体の騒
音が低減するようにフィルタ係数は収束していく。さら
に、請求項4記載の発明は、上記請求項2又は請求項3
記載の発明における適応処理手段をより具体的にしたも
のであって、信号変換手段が基準信号及び残留騒音信号
を周波数領域の信号に変換するから、更新量決定手段に
おける処理は周波数領域の演算処理となり、従って、例
えば畳み込み演算等は各周波数成分の積算で済むように
なり、演算量が大幅に低減する。
【0023】そして、その更新量決定手段で決定された
フィルタ係数の更新量が、更新量変換手段によって時間
領域の値に変換され、その値に応じてフィルタ係数更新
手段がディジタルフィルタのフィルタ係数を更新するの
で、適応処理手段におけるフィルタ係数の更新量の決定
処理のみが周波数領域で行われることになる。
【0024】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づいて説
明する。図1は、本発明の第1実施例の全体構成を示す
図であり、この実施例は、路面及び車輪2a〜2d間の
騒音源から空間としての車室6内に伝達されるロード・
ノイズの低減を図る能動型騒音制御装置1に本発明を適
用したものである。
【0025】先ず、構成を説明すると、車体3は、前輪
2a,2b,後輪2c,2d及び各車輪2a〜2dと車
体3との間に介在するサスペンションによって支持され
ている。なお、図1に示す車両は、前輪2a及び2bが
車体3前部に配置されたエンジン4によって回転駆動さ
れるいわゆる前置きエンジン前輪駆動車である。各車輪
2a〜2d及び車体3間に介在するサスペンションのぞ
れぞれには、騒音発生状態検出手段としての加速度セン
サ5a,5b,5c及び5dが取り付けられ、前輪2
a,2bの中間位置にあるメンバ及び後輪2c,2dの
中間位置にあるメンバには同じく騒音発生状態検出手段
としての加速度センサ5e及び5fが取り付けられてい
て、路面から入力されるロード・ノイズに対応した加速
度信号である基準信号xk (k=1〜K:本実施例では
K=6)をコントローラ10に供給する。
【0026】また、車体3内の空間としての車室6内に
は、制御アクチュエータすなわち制御音源としてのラウ
ドスピーカ7a,7b,7c及び7dが、前部座席
1 ,S 2 及び後部座席S3 ,S4 のそれぞれに対向す
るドア部に配置されている。さらに、各座席S1 〜S4
のヘッドレスト位置には、残留騒音検出手段としてのマ
イクロフォン8a〜8hが、それぞれ二つずつ配設され
ていて、これらマイクロフォン8a〜8hが音圧として
測定した残留騒音信号e1 〜e8 が、コントローラ10
に供給される。
【0027】そして、コントローラ10は、マイクロコ
ンピュータ及び必要なインタフェース回路等から構成さ
れていて、加速度センサ5a〜5fから供給される基準
信号xk と、マイクロフォン8a〜8hから供給される
残留騒音信号e1 〜e8 とに基づいて、後述する演算処
理を実行し、車室6内に伝達されるロード・ノイズを打
ち消すような制御音がラウドスピーカ7a〜7dから発
せられるように、それらラウドスピーカ7a〜7dに駆
動信号y1 〜y4 を出力する。
【0028】コントローラ10は、その機能構成のブロ
ック図である図2に示すように、加速度センサ5a〜5
fから供給される基準信号xk をフィルタ係数可変のデ
ィジタルフィルタとしての適応ディジタルフィルタWkm
でフィルタ処理することにより(具体的には、畳み込み
演算を行うことにより)、ラウドスピーカ7a〜7dを
駆動する駆動信号ym を生成し出力する駆動信号生成手
段としての駆動信号生成部11と、基準信号xk 及び残
留騒音信号el に基づいて後述する演算処理を実行して
適応ディジタルフィルタWkmのフィルタ係数Wkmi を更
新する適応処理手段としての適応処理部12と、を備え
ている。
【0029】そして、本実施例では、駆動信号生成部1
1のフィルタ処理は時間領域で行い、適応処理部12の
演算処理は周波数領域で行うものとしている。つまり、
コントローラ10は、適応処理部12において、適応デ
ィジタルフィルタWkmのフィルタ係数Wkmi の更新量Δ
kmi の決定処理のみを周波数領域のFiltered
−X LMSにより行うものである。
【0030】ここで、先ず時間領域のFiltered
−X LMSアルゴリズムについて説明する。即ち、l
番目(l=1,2,…,L:本実施例ではL=8)のマ
イクロフォンが検出した残留騒音信号をel (n)、ラ
ウドスピーカから制御音が発生していない時のl番目の
マイクロフォンが検出した残留騒音信号をdl (n)、
m番目(m=1,2,…,M:本実施例ではM=4)の
ラウドスピーカとl番目のマイクロフォンとの間の伝達
関数を有限インパルス応答関数の形でモデル化したディ
ジタルフィルタClmのj番目(j=0,1,2,…,J
−1:Jは定数)のフィルタ係数をClmj 、基準信号を
k (n)、基準信号xk (n)が入力されたm番目の
ラウドスピーカを駆動する適応ディジタルフィルタWkm
のi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは定数)の
フィルタ係数をWkmi とすると、 が成立する。
【0031】なお、(n)がつく項は、いずれもサンプ
リング時刻nにおけるサンプル値を表し、また、Jはデ
ィジタルフィルタClmに含まれるフィルタ係数の個数
(タップ数)、Iは適応ディジタルフィルタWkmに含ま
れるフィルタ係数の個数(タップ数)である。上記
(1)式中、右辺の「ΣΣWkmi k (n−j−i)」
の項は適応ディジタルフィルタに基準信号xk (n)を
入力した時の出力ym (n)を表し、「ΣClmj {ΣΣ
kmi k (n−j−i)}」の項はm番目のラウドス
ピーカに入力された信号ym (n)がそこから制御音と
して空間に出力され伝達関数Clmを経てl番目のマイク
ロフォンに到達した時の信号を表し、さらに、「ΣΣC
lmj{ΣΣWkmi k (n−j−i)}」の項はl番目
のマイクロフォンへ到達した信号を足し合わせているか
ら、l番目のマイクロフォンに到達する制御音の総和を
表している。
【0032】次いで、評価関数Jeを、 とする。
【0033】そして、評価関数Jeを最小にするフィル
タ係数Wkmi を求めるのが、LMSアルゴリズムであ
り、具体的には、評価関数Jeを各フィルタ係数Wkmi
について偏微分した値で、フィルタ係数Wkmi を更新す
る。そこで、上記(2)式より、 となるが、上記(1)式より、 となるから、この(4)式の右辺をrklm (n−i)と
おけば、フィルタ係数の更新は、下記の(5)式のよう
になる。
【0034】 なお、αは収束係数と呼ばれる係数であって、フィルタ
が最適に収束する速度やその安定性に関与する。
【0035】つまり、適応処理部12は、時間領域で考
えれば上記(5)式に基づいて適応ディジタルフィルタ
kmのフィルタ係数Wkmi を更新することになるが、本
実施例では適応処理部12は周波数領域の演算処理によ
って更新量ΔWkmi を決定するものであるから、上記
(5)式の内容を周波数領域で実行するための適応処理
部12の具体的な機能構成は、図3に示すようになる。
【0036】即ち、適応処理部12は、時間領域の基準
信号xk をフーリエ変換して周波数領域の基準信号信号
k を生成する信号変換手段としての高速フーリエ変換
部13と、残留騒音信号el をフーリエ変換して周波数
領域の残留騒音信号El を生成する信号変換手段として
の高速フーリエ変換部14と、時間領域のディジタルフ
ィルタClmを周波数領域で表現したディジタルフィルタ
lm(f)と、基準信号Xk 及びディジタルフィルタC
lm(f)を各周波数成分毎に積算して処理信号R
klm (時間領域の処理信号rklm に対応)を演算する更
新量決定手段としての積算部15と、収束係数α,残留
騒音信号El 及び処理信号Rklm を各周波数成分毎に積
算して周波数領域における更新量ΔWkm(f)を演算す
る更新量決定手段としての積算部16と、その周波数領
域における更新量ΔWkm(f)を逆フーリエ変換して時
間領域における更新量ΔWkmi を演算する更新量変換手
段としての逆フーリエ変換部17と、現時点におけるフ
ィルタ係数Wkmi (n)に更新量ΔWkmi を加算して新
たなフィルタ係数Wkmi (n+1)を演算するフィルタ
係数更新手段としての加算部18と、を備えている。
【0037】図4は、コントローラ10内で実行される
処理の概要を示すフローチャートであって、以下、図4
に従って本実施例の動作を説明する。先ず、ステップ1
01においてカウンタTをクリアし、次いでステップ1
02に移行して現時点nにおける基準信号xk (n)及
び残留騒音信号el (n)を読み込む。
【0038】そして、ステップ103に移行してカウン
タTをインクリメントし、ステップ104でカウンタT
が適応ディジタルフィルタWkmのタップ数Iを超えたか
否かを判定し、超えていない場合にはステップ105に
移行する。ステップ105では、基準信号xk (n)を
適応ディジタルフィルタWkmでフィルタ処理して、具体
的には時間領域で表現された適応ディジタルフィルタW
kmの各フィルタ係数Wkmi と基準信号xk との間で畳み
込み演算を行って駆動信号ym を生成し、この駆動信号
m をステップ106で各ラウドスピーカ7a〜7dに
出力する。これらステップ105及び106の処理が、
コントローラ10内の駆動信号生成部11における処理
に対応する。
【0039】ステップ106の処理を実行したら、ステ
ップ102に移行し上述した処理を繰り返し実行する。
すると、ステップ103を実行する度にカウンタTがイ
ンクリメントされ、従って、ステップ102の処理をI
回実行した時点でステップ104の判定が「YES」と
なり、ステップ107以降の処理が実行される。即ち、
ステップ107以降の処理がコントローラ10内の適応
処理部12における処理に対応するものであって、先
ず、ステップ107で、この時点においてI個単位のブ
ロックとして記憶されている時間領域の基準信号xk _
=〔xk (n−I+1),xk (n−I+2),…,x
k (n−2),xk (n−1),x k (n)〕をフーリ
エ変換して、周波数領域の基準信号Xk _を演算する。
なお、添付記号“_”はベクトル量であることを表して
いる。
【0040】次いで、ステップ108に移行し、同様に
I個単位のブロックとして記憶されている時間領域の残
留騒音信号el _=〔el (n),el (n−1),e
l (n−2),…,el (n−I+2),el (n−I
+1)〕をフーリエ変換して、周波数領域の残留騒音信
号El _を演算する。そして、ステップ109に移行
し、基準信号Xk _と周波数領域で表現されているディ
ジタルフィルタClm_(f)とを各周波数成分毎に積算
して、処理信号Rklm _を演算し、次いでステップ11
0に移行して、処理信号Rklm _と残留騒音信号El _
とを周波数成分毎に乗じた値にさらに収束係数αを乗じ
て、周波数領域における更新量ΔWkm_(f)を演算す
る。
【0041】さらに、ステップ111に移行し、周波数
領域の更新量ΔWkm_(f)を逆フーリエ変換して、時
間領域の更新量ΔWkm_=〔ΔWkm0 ,ΔWkm1 ,ΔW
km2,…,ΔWkm(I-1) 〕を演算し、ステップ112に
移行して、上記(5)式に従ってフィルタ係数Wkmi
更新する。ステップ112の処理を実行したら、ステッ
プ101に戻って上述した処理を繰り返し実行する。
【0042】なお、上記ステップ107〜110の処理
は基準信号Xk _をディジタルフィルタClm_(f)で
フィルタ処理した処理信号Rklm _を用いるいわゆるF
iltered−X LMSアルゴリズムであるが、周
波数領域におけるFiltered−X LMSアルゴ
リズムであるため、複素LMSアルゴリズム(B.Wi
drow,J.McCool,and M.Ball,
“The complex LMS algorithm ”,Proc, IEEE(Lett.
),vol.63, pp.719−720 ,Apr.1975)に従って共役
を取ることになる。即ち、I点のデータをフーリエ変換
した結果はI個の複素数の組となるが、前半のI/2点
は負の周波数領域での特性を表し、実数データの場合、
正の周波数領域での特性の共役となることから、実際の
演算では、ディジタルフィルタClm_(f)の負の周波
数部分,基準信号Xk _の負の周波数部分及び残留騒音
信号El _の正の周波数部分との積(以上全てI/2
点)を、更新量ΔWkm_(f)の正の周波数領域のデー
タとし、そして、その共役を負の周波数領域に拡張した
結果に対して逆フーリエ変換を行って時間領域の更新量
ΔWkmi _を求めることになる。
【0043】図4に示す処理を実行すると、基準信号x
k が入力される度に(つまり、所定のサンプリング・ク
ロック毎に)ステップ102〜106の処理が実行され
る結果、ラウドスピーカ7a〜7dから車室6内に基準
信号xk に相関のある制御音が発生するようになるが、
制御開始直後は適応ディジタルフィルタWkmの各フィル
タ係数Wkmi が最適な値に収束しているとは限らないの
で、必ずしも車室6内に伝達されたロード・ノイズが低
減するとはいえない。
【0044】しかし、図4の処理が繰り返し実行される
と、サンプリング・クロックがI個入力される度にステ
ップ107〜112の処理が実行され、上記(5)式に
従って適応ディジタルフィルタWkmの各フィルタ係数W
kmi が適宜更新されていくから、各フィルタ係数Wkmi
は最適値に向かって収束していき、車室6内に伝達され
るロード・ノイズがラウドスピーカ7a〜7dから発せ
られる制御音によって打ち消されるようになり、車室6
内の騒音の低減が図られる。
【0045】そして、本実施例では、フィルタ係数W
kmi の更新量ΔWkmi を決定するための演算処理を、ス
テップ107〜110の処理で説明したように周波数領
域で行うこととしているため、例えば時間領域では畳み
込み演算となるものが各周波数成分毎の積算で済むなど
のように演算量の大幅な低減を図ることができる。この
演算量の低減効果を具体例を示しながら説明する。
【0046】即ち、適応ディジタルフィルタWkmのタッ
プ数Iを128、ディジタルフィルタClmのタップ数を
32とする。また、本実施例の構成では、K=6,M=
4,L=8である。この条件において上記(5)式の更
新演算を時間領域で行う場合を考えると、先ず、処理信
号rklm の演算のための基準信号xk 及びディジタルフ
ィルタClmの畳み込み演算には、 L×M×K×J=6144回 の積算が必要である。また、更新量ΔWkmi の演算のた
めに残留騒音信号el と処理信号rklm との間には、 K×M×L×I=24576回 の積算が必要である。そして、I個単位のデータをブロ
ックとして取り扱う周波数領域の演算と比較するため、
時間領域においてI個の基準信号xk に対する処理を実
行する間には、 (6144+24576)×128=3932160回 の積算が必要となる。
【0047】一方、本実施例の構成にあっては、先ず、
高速フーリエ変換部13はI点×Kチャンネルのデータ
に対してフーリエ変換を行い、高速フーリエ変換部14
はI点×Lチャンネルのデータに対してフーリエ変換を
行い、逆フーリエ変換部17はI点×Kチャンネル×M
チャンネルのデータに対して逆フーリエ変換を行うた
め、これら高速フーリエ変換及び逆フーリエ変換を実行
するためには、フーリエ変換の結果が複素数の組となる
(複素数は実部及び虚部を有するため、複素数同士の積
算には、4回の積算が必要となる)ことも考慮して、 4×(I/2)・log2I×(K+L+K×M)=680
96回 の積算が必要である。また、時間領域における基準信号
k とディジタルフィルタClmとの畳み込み演算に対応
するステップ109における処理には、フーリエ変換の
結果が複素数の組となること、並びに正及び負の周波数
部分の数値が共役の関係にあること(正の周波数部分に
ついてのみ積算すれば済む、つまり積算は半分になるこ
と)も考慮して、 (1/2)×I×K×L×M×4=49152回 の積算が必要である。そして、周波数領域の更新量ΔW
km(f)を演算するステップ110の処理には、やはり
フーリエ変換の結果が複素数の組となること、並びに正
及び負の周波数部分の数値が共役の関係にあることも考
慮して、 (1/2)×I×K×M×L×4=49152回 の積算が必要である。よって、周波数領域の演算処理で
更新量ΔWkm(f)を演算するために必要な全積算回数
は、 68096+49152+49152=166400回 となる。
【0048】以上から、フィルタ係数Wkmi の更新量を
周波数領域で決定する本実施例の構成であれば、それを
時間領域で行う場合に比べて、 166400/3932160=0.0423177≒4
% の演算量で済むことになる。このため、例えば制御効果
を向上させるためにタップ数I,Jやチャンネル数L,
M,K等を大きくしても、更新量ΔWkmi の決定に要す
る演算量の極端な増大を避けることができ、プロセッサ
の処理能力を大幅に向上させなくても充分に実用化が図
られるという利点がある。しかも、本実施例の構成であ
れば、駆動信号生成手段11に対応するステップ105
及び106の処理で説明したように、駆動信号ym の生
成は時間領域のフィルタ処理によって行っているため、
駆動信号ym を基準信号xk に対して時間的に遅れるこ
となく各ラウドスピーカ7a〜7dに供給することがで
きる。
【0049】なお、本実施例にあっては、フィルタ係数
kmi の更新量を周波数領域の演算処理で行っているた
め、1回の更新処理にI個単位のデータが必要となるこ
とから、かかる更新演算処理の時間的な遅れの影響によ
って、フィルタ係数Wkmi の収束が保証されないという
ことも考えられる。しかし、本実施例のように非周期的
性質の強い騒音であるロード・ノイズの低減を図る場
合、制御の基礎となる基準信号xk にはロード・ノイズ
の周期情報,位相情報及び振幅情報が含まれている、つ
まり基準信号xk がロード・ノイズの発生状態を正確に
表しているため、適応ディジタルフィルタWkmのフィル
タ係数Wkmi を急激に変化させなくても充分な騒音低減
効果を得ることができる。換言すれば、フィルタ係数W
kmi の変化が緩やかであるため、フィルタ係数Wkmi
更新量ΔWkmi の演算に多少の時間遅れが生じてもフィ
ルタ係数Wkmの最適値への収束が不可能になるようなこ
とはないのである。
【0050】また、本実施例にあっては、適応ディジタ
ルフィルタWkmのタップ数Iと同数のI点の基準信号x
k ,残留騒音信号el をフーリエ変換し、その結果を積
算部15,16で適宜積算して更新量ΔWkm(f)を求
めているため上述したように極めて大幅な演算量の低減
が図られるが、高速フーリエ変換(FFT)は繰り返し
波形を仮定しているので、そのFFT結果を積算すると
いわゆる循環畳み込みとなり、時間領域の畳み込み(線
形畳み込み)と厳密には一致しないという不具合があ
る。しかし、ロード・ノイズといっても、路面の凹凸等
に起因した周期成分をある程度有しているため、循環畳
み込みとしたことによる不具合はそれほど大きくはな
く、むしろ、上述した極めて大幅な演算量の低減を効果
として得る方が得策である。
【0051】図5は本発明の第2実施例を示すブロック
図であって、適応処理部12の機能構成を示している。
なお、上記第1実施例と同等の構成には同じ符号を付
し、その重複する説明は省略する。即ち、本実施例にあ
っても、フィルタ係数Wkmi の更新量ΔWkmi を周波数
領域の演算によって決定する点は上記第1実施例と同様
であり、異なるのは、周波数領域における積算の結果を
厳密な線形畳み込みの結果に一致させるような工夫がな
されている点である。
【0052】ここで、高速フーリエ変換は、与えられた
データが、そのデータ長の周期を有し且つ同じ波形が繰
り返し現れる信号の一周期分であると仮定して時間領域
の信号を周波数領域の信号に変換する手法であるため、
特に、時間領域で考えた前部分の結果に信頼性の低いデ
ータが含まれてしまうという欠点がある。そして、かか
る欠点を解消するために、オーバーラップセーブ法
(A.V.Oppenhein and R.W.Sc
hafer,Digital Signal Processing.Englewood Cl
iffs,NJ:Prentice−Hall,1975 )という手法が従来から
提案されており、本実施例は、本発明にそのオーバーラ
ップセーブ法を適用したものである。
【0053】先ず、本実施例では、高速フーリエ変換部
13に取り込まれる基準信号xk 及び高速フーリエ変換
部14に取り込まれる残留騒音信号el を、上記第1実
施例の倍の2・I個を単位としたブロックとする。ただ
し、単に図4のステップ104の判定を(T>2・I)
とすることにより連続して2・I個のデータを読み込む
のではなく、基準信号xk に関しては、I個のデータを
読み込む一連の処理をカウンタPで計数しておき、現時
点Pより一つ前の(P−1)の処理で読み込んだI個の
データを繋いで2・I個を単位としたブロックを生成
し、残留騒音信号el に関しては、I個の0データを繋
げることにより2・I個を単位としたブロックを生成す
る。
【0054】従って、基準信号xkP_及び残留騒音信号
lP_は、下記のようになる。 xkP_=〔xk ((n−I)−I+1),xk ((n−
I)−I+2),…,xk ((n−I)−2),x
k ((n−I)−1),xk (n−I),xk (n−I
+1),xk (n−I+2),…,xk (n−2),x
k (n−1),xk(n)〕 elP_=〔0,0,…,0,el (n),el (n−
1),…,el (n−I+2),el (n−I+1)〕 このため、高速フーリエ変換部13から出力される基準
信号XkP及び高速フーリエ変換部14から出力される残
留騒音信号ElPのそれぞれは2・I個のデータ列とな
る。
【0055】そして、基準信号XkPは積算部15におい
てディジタルフィルタClm(f)と各周波数成分毎に積
算されるが、その結果である処理信号Rklm には高速フ
ーリエ変換が上述した欠点を有することから、時間領域
で考えて前部分に信頼性の低い情報が含まれている。そ
こで、本実施例では、処理信号Rklm を逆フーリエ変換
部20において一旦時間領域の信号に戻し、2・I個の
データからなる処理信号rklmPを生成し、その処理信号
klmPを信号置換部21に供給し、ここで処理信号r
klmPの時間的に前半分のI個のデータを取り除くととも
に、前回(P−1)の処理においてこの信号置換部21
の出力として生成された信号rklm(P-1)の時間的に後半
分の部分のI個のデータを、処理信号rklmPの前部分に
繋げ併せて2・I個のデータからなる新たな処理信号r
klmPを生成する。
【0056】そして、この新たな処理信号rklmPを高速
フーリエ変換部22で周波数領域の処理信号Rklm に変
換し、その処理信号Rklm と残留騒音信号El とを積算
部16で各周波数成分毎に乗じた値にさらに収束係数α
を乗じて、周波数領域における更新量ΔWkm(f)を演
算する。次いで、更新量ΔWkm(f)を逆フーリエ変換
17で逆フーリエ変換して時間領域の更新量ΔWkmi
演算することになるが、この更新量ΔWkmi は2・I個
のデータからなり、且つ、その後半部分のデータはやは
り上述した高速フーリエ変換の欠点により信頼性が低い
ため、時間的に後半分のI個のデータを捨てた前半分の
I個のデータを更新量ΔWkmi として加算部18に供給
して、フィルタ係数Wkmi を更新する。
【0057】このような構成であれば、常に処理に必要
なI個のデータの倍の量である2・I個のデータを用い
て高速フーリエ変換が行われ、且つ、信頼性の低い部分
のデータを逐次除去して次の演算処理を実行することに
なるから、上記第1実施例と異なり時間領域における厳
密な線形畳み込みを実施したことと等価になり、高精度
の制御を行うことができる。
【0058】そして、本実施例にあっても、フィルタ係
数Wkmi の更新量ΔWkmi を決定するための演算処理を
周波数領域で行っているため、演算量の大幅な低減が図
られる。即ち、上記第1実施例と同じ条件であれば、高
速フーリエ変換及び逆フーリエ変換を行うためには、 4×(2I/2)・log22I×(K+2×K×L×M+
L+K×M)=1728512回 の積算が必要である。また、積算部15及び16におい
ては、上記第1実施例と同様の点を考慮した上で、それ
ぞれ (1/2)×2I×K×L×M×4=98302回 回の積算が必要となる。従って、本実施例において、周
波数領域の演算処理で更新量ΔWkm(f)を演算するた
めに必要な全積算回数は、 1728512+98302×2=1925116回 となる。以上から、フィルタ係数Wkmi の更新量を周波
数領域で決定する本実施例の構成であれば、それを時間
領域で行う場合に比べて、 1925116/3932160=0.4895823≒
49% の演算量で済むことになる。
【0059】ただし、上記第1実施例に比較しては演算
量が増えるため、ある程度の周期性を示す騒音の低減を
図る場合に本実施例の構成を適用するのは得策ではな
く、循環畳み込みでは充分な騒音低減効果が発揮できな
いような周期性をほとんど示さない騒音の低減を図る場
合に適用するのが好ましい。その他の作用効果は、上記
第1実施例と同様である。
【0060】図6は本発明の第3実施例を示すブロック
図であって、適応処理部12の機能構成を示している。
なお、上記第1実施例,第2実施例と同等の構成には同
じ符号を付し、その重複する説明は省略する。即ち、本
実施例にあっても、フィルタ係数Wkmi の更新量ΔW
kmi を周波数領域の演算によって決定する点は上記第1
実施例と同様であり、また、線形畳み込みと同じ結果が
得られるような工夫がなされている点は上記第2実施例
と同様であり、異なるのは、上述したエラースキャンニ
ング法を適用しているという点である。
【0061】ここで、エラースキャンニング法とは、先
ず複数の騒音発生状態検出手段としてのマイクロフォン
8a〜8hのうちの一つを選択し、その選択されたマイ
クロフォンが検出した残留騒音が低減するようにFil
tered−X LMSアルゴリズムに基づいてフィル
タ係数Wkmi を更新し、次いで他の加速度センサを選択
して同様に騒音が低減するようにフィルタ係数Wkmi
更新し、これを各マイクロフォン8a〜8hに対して順
番に行うという手法であり、各マイクロフォン8a〜8
hについての最適なフィルタ係数Wkmi の値が異なって
いても、それを順番に追求する結果、各マイクロフォン
8a〜8hが検出した残留騒音を同時に考慮してFil
tered−X LMSアルゴリズムを実行した場合と
同様にフィルタ係数Wkmi は最適値に収束するようにな
るから、特に騒音低減制御の効果が低減することにはな
らない。
【0062】そして、エラースキャンニング法を用いた
場合には、1回の処理には一つのマイクロフォンの出力
にしか着目しないから、基本的にはL=1としたことと
等価になり、特に上記(5)式は下記の(6)式のよう
になり、演算量の大幅な低減が図られるようになる。 Wkmi (n+1)=Wkmi (n)+αel (n)rklm (n−i) ……(6) しかも、本実施例のようにエラースキャンニング法を周
波数領域のFiltered−X LMSアルゴリズム
に適用した場合には、同手法を時間領域のFilter
ed−X LMSアルゴリズムに適用した場合よりもさ
らなる演算量低減効果が発揮されるものである。
【0063】その理由は、時間領域にあっては、適応デ
ィジタルフィルタWkmが当然に時間領域で表現されてお
り、その更新量ΔWkmi も直接時間領域の値で表現され
るため、全てのマイクロフォン(l=1,2,…,L)
について処理信号rklm を演算しておかないと、上記
(6)式の右辺第2項の(n−i)に関する部分が欠け
て更新演算が不可能になるのに対し、周波数領域で更新
量ΔWkmi を演算する本実施例の構成であればそのよう
な不具合はないからである。
【0064】なお、上記第2実施例では、厳密な線形畳
み込みと同じ結果を得るために、信号置換部21におい
て一つ前の処理信号rklm(P-1)を利用する構成としてい
るが、本実施例では、エラースキャンニング法を適用し
た結果、時刻(P−1)において読み込む残留騒音信号
l を出力したマイクロフォンと、時刻Pにおいて読み
込む残留騒音信号el を出力したマイクロフォンとが異
なることから、信号置換部21が処理信号rk.mPと処理
信号rk.m(P-1)とに基づいて上記第2実施例と同じ処理
を行うことはできない。従って、逆フーリエ変換部20
では現時点の次のマイクロフォンの分の演算も必要にな
るので、その逆フーリエ変換部20における演算量は上
記第2実施例に比較して単純に(1/L)にはならず、
(1/L)×2となる。
【0065】即ち、上記第1実施例と同じ条件であれ
ば、高速フーリエ変換及び逆フーリエ変換を行うために
は、 4×(2I/2)・log22I×(K+2×K×M+1+
2×K×M)=421888回 の積算が必要である。また、積算部15及び16におい
ては、上記第1実施例と同様の点を考慮した上で、それ
ぞれ (1/2)×2I×K×M×4=12288回 回の積算が必要となる。従って、本実施例において、周
波数領域の演算処理で更新量ΔWkm(f)を演算するた
めに必要な全積算回数は、 421888+12288×2=446464回 となる。以上から、フィルタ係数Wkmi の更新量を周波
数領域で決定する本実施例の構成であれば、それを時間
領域で行う場合に比べて、 446464/3932160=0.3784722≒3
8% の演算量で済むことになる。
【0066】つまり、本実施例の構成であれば、騒音低
減効果を向上させるために複数のマイクロフォンを設け
た場合、そのマイクロフォンの数を増加させた分だけ演
算量が増大してしまうようなことがないという利点があ
る。その他の作用効果は上記第1実施例,第2実施例と
同様である。なお、上記各実施例では、本発明にかかる
能動型騒音制御装置を車室6内に伝達される騒音の低減
を図る装置に適用した場合について説明したが、これ以
外の空間の騒音の低減を図る装置であってもよい。
【0067】また、上記各実施例では、車室6内に伝達
されるロード・ノイズの低減を図る場合について説明し
ているが、本発明によって低減できる騒音はこれに限定
されるものではなく、例えば、ドアミラー付近における
風切り音のピックアップ信号、ディファレンシャルギア
やトランスミッションギアのケース振動に対するピック
アップ信号(駆動力伝達系のケース振動に起因した騒音
に相関のある信号)、車速計測用のトランスミッション
の出力軸の回転に応じたパルス信号(ディファレンシャ
ルギアやトランスミッションの噛み合いによる騒音に相
関のある信号)等を検出する構成とすれば、それら各騒
音の低減を図る装置とすることも可能である。
【0068】そして、上記実施例では、制御音源として
の四つのラウドスピーカ7a〜7dと、残留騒音検出手
段として八つのマイクロフォン8a〜8hを設けている
が、これらの数は任意である。さらに、上記各実施例で
は、本発明に係る適応制御装置を車両用の能動型騒音制
御装置に適用した場合について説明しているが、本発明
の適用対象は騒音の低減を図る装置に限定されるもので
はなく、それ以外の適応制御系であっても適用可能であ
る。
【0069】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
駆動信号の生成は時間領域のフィルタ処理によって行う
一方で、ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新量の
決定は周波数領域の演算処理によって行う構成としたた
め、駆動信号の時間遅れを招くことなく、演算量の大幅
な低減を図ることができるという効果がある。
【0070】特に、請求項3記載の発明であれば、上記
効果に加えて、同数の残留騒音検出手段を単に設けた場
合に比較して少ない演算量で済むという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の全体構成を示す図である。
【図2】コントローラ全体の機能構成を示すブロック図
である。
【図3】第1実施例の適応処理部の機能構成を示すブロ
ック図である。
【図4】第1実施例における処理の概要を示すフローチ
ャートである。
【図5】第2実施例の適応処理部の機能構成を示すブロ
ック図である。
【図6】第3実施例の適応処理部の機能構成を示すブロ
ック図である。
【符号の説明】
1 能動型騒音制御装置(適応制御装置) 2a〜2d 騒音源 5a〜5f 加速度センサ(騒音発生状態検出手段) 6 車室(空間) 7a〜7d ラウドスピーカ(制御アクチュエータ,制
御音源) 8a〜8h マイクロフォン(残留騒音検出手段) 10 コントローラ 11 駆動信号生成部(駆動信号生成手段) 12 適応処理部(適応処理手段) 13,14 高速フーリエ変換部(信号変換手段) 15,16 積算部(更新量決定手段) 17 逆フーリエ変換部(更新量変換手段) 18 加算部(フィルタ係数更新手段)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の基準信号をフィルタ係数可変のデ
    ィジタルフィルタでフィルタ処理して制御アクチュエー
    タを駆動する信号を生成する駆動信号生成手段と、所定
    の評価関数の値が目標値に一致するように前記ディジタ
    ルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、
    を備えた適応制御装置において、 前記駆動信号生成手段は時間領域のフィルタ処理を実行
    し、前記適応処理手段は周波数領域の演算処理によって
    前記ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新量を決定
    することを特徴とする適応制御装置。
  2. 【請求項2】 騒音源から騒音が伝達される空間に制御
    音を発生可能な制御音源と、前記騒音源の騒音発生状態
    を検出し基準信号として出力する騒音発生状態検出手段
    と、前記基準信号をフィルタ係数可変のディジタルフィ
    ルタでフィルタ処理して前記制御音源を駆動する信号を
    生成する駆動信号生成手段と、前記空間内の所定位置に
    おける残留騒音を検出し残留騒音信号として出力する残
    留騒音検出手段と、前記基準信号及び前記残留騒音信号
    に基づいて前記空間内の騒音が低減するように前記ディ
    ジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段
    と、を備えた能動型騒音制御装置において、 前記駆動信号生成手段は時間領域のフィルタ処理を実行
    し、前記適応処理手段は周波数領域の演算処理によって
    前記ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新量を決定
    することを特徴とする能動型騒音制御装置。
  3. 【請求項3】 複数の残留騒音検出手段を有し、適応処
    理手段は、ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新す
    る処理毎に前記複数の残留騒音検出手段の内の一つを順
    番に選択し、その選択された一つの残留騒音検出手段が
    検出した残留騒音が低減するように前記ディジタルフィ
    ルタのフィルタ係数を更新する請求項2記載の能動型騒
    音制御装置。
  4. 【請求項4】 適応処理手段は、基準信号及び残留騒音
    信号を周波数領域の信号に変換する信号変換手段と、こ
    の信号変換手段の変換結果に基づいて前記空間内の騒音
    が低減するように前記ディジタルフィルタのフィルタ係
    数の更新量を決定する更新量決定手段と、この更新量決
    定手段が決定したフィルタ係数の更新量を時間領域の値
    に変換する更新量変換手段と、この更新量変換手段の変
    換結果に応じて前記ディジタルフィルタのフィルタ係数
    を更新するフィルタ係数更新手段と、を有する請求項2
    又は請求項3記載の能動型騒音制御装置。
JP4270411A 1992-10-08 1992-10-08 適応制御装置及び能動型騒音制御装置 Expired - Lifetime JP2924500B2 (ja)

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