JP2827603B2 - 能動型騒音制御装置 - Google Patents

能動型騒音制御装置

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JP2827603B2
JP2827603B2 JP3220659A JP22065991A JP2827603B2 JP 2827603 B2 JP2827603 B2 JP 2827603B2 JP 3220659 A JP3220659 A JP 3220659A JP 22065991 A JP22065991 A JP 22065991A JP 2827603 B2 JP2827603 B2 JP 2827603B2
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泰毅 石川
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、騒音源からの騒音に制
御音源で発生させた騒音抑制信号を干渉させることによ
り騒音を抑制する能動型騒音制御装置に係り、特に空間
伝達関数をモデル化したモデル化空間伝達関数の推定値
から異常部位を検出することができる能動型騒音制御装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の能動型騒音制御装置とし
ては、例えば特許出願公表平1−501344号公報に
記載されているものがある。この従来例は、ラウドスピ
ーカから制御音を放音することにより、車室内に騒音源
から伝達される騒音を低減させる能動型騒音制御装置で
あって、車室内の残留騒音を複数のマイクロフォンで検
出すると共に、騒音源の任意に選択し得る高調波を含む
少なくとも一つの基準信号を発生させ、これら残留騒音
検出信号と基準信号とをプロセッサ/記憶ユニットに供
給することにより、基準信号を適応フィルタ処理してラ
ウドスピーカの駆動信号を形成するようにしている。こ
こで、適応フィルタ処理では、その第i番目のフィルタ
係数Wmi(n+1)を、LMSアルゴリズムに従って、複数
のマイクロフォンの検出信号Vekの平均自乗和として設
定された評価関数Jを最小とするように、下記(1) 式に
従って順次更新するようにしている。
【0003】 ここで、Wmi(n) は前回即ちn番目のサンプル時のフィ
ルタ係数、μは収束係数、Vekはk番目のマイクロフォ
ン出力、xは騒音源に相関のある基準信号、C km′はm
番目のスピーカとk番目のマイクロフォンとの間の実空
間伝達関数をモデル化したモデル空間伝達関数に対応す
る基フィルタ係数である。
【0004】また、プロセッサ/記憶ユニットは、初期
化プログラム中で、ホワイトノイズ発生器から発生させ
たホワイトノイズをスピーカに駆動信号として供給し、
これをマイクロホンで検出してその検出信号を入力する
ことにより、基フィルタ係数Ckm(n) の同定を行うよう
にしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の能動型騒音制御装置にあっては、適応フィルタのフ
ィルタ係数を更新する制御アルゴリズムで、ラウドスピ
ーカ及びマイクロフォン間の実際の空間伝達関数Ckm
のものではなく、これをモデル化したモデル空間伝達関
数Ckm′を使用しているので、例えばラウドスピーカ,
マイクロフォンの劣化等により制御系に異常が発生して
実際の空間伝達関数が変化したときには、前記(1) 式で
算出される適応フィルタのフィルタ係数Wmi(n+1)に誤
差を生じて評価関数Jが収束せずに発散し、異状音を発
生するおそれがある。
【0006】ここで、ラウドスピーカ、マイクロフォン
の断線、短絡等のハード異常に対しては、これらの電流
値を検出することにより、異常検出を行うことができる
が、ラウドスピーカ,マイクロフォン等の電気−音響変
換特性(特に周波数特性)の劣化については従来検出す
ることができず、特性劣化による異状音の発生を未然に
防止することができないという未解決の課題がある。
【0007】そこで、本発明は、上記従来例の未解決の
課題に着目してなされたものであり、モデル空間伝達関
数推定値をもとに制御系の特性劣化を正確に検出するこ
とができる能動型騒音制御装置を提供することを目的と
している。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る能動型騒音制御装置は、図1に示す
ように、制御騒音発生状態に応じた基準信号を適応フィ
ルタ手段を介して複数の制御音源に入力し、当該制御音
源から送出される音圧と周囲の騒音音圧との合成音圧を
複数の残留騒音検出手段で検出し、制御音源及び残留
騒音検出手段間の空間伝達関数をモデル化したモデル空
間伝達関数をフィルタ係数とするフィルタ手段で前記基
準信号をフィルタ処理した信号と前記残留騒音検出信号
とに基づいてフィルタ係数更新手段で前記適応フィルタ
のフィルタ係数を更新するようにした能動型騒音制御装
置において、前記フィルタ手段に前記基準信号に代えて
テスト信号を供給すると同時に、前記各制御音源から選
択した制御音源に前記適応フィルタ手段の出力信号に代
えて前記テスト信号を供給するテスト信号供給手段と、
該テスト信号供給手段で選択した制御音源にテスト信号
を供給する毎に、当該テスト信号、個別に選択した前記
残留騒音検出手段で検出したテスト信号及び前記フィル
タ手段でフィルタ処理されたテスト信号に基づいてモデ
ル空間伝達関数を推定するモデル伝達関数推定手段と、
該モデル伝達関数推定手段で推定したモデル伝達関数推
定値と予め設定されたモデル伝達関数とを比較して異常
を検出する異常検出手段とを備えたことを特徴としてい
る。
【0009】また、請求項2に係る能動型騒音制御装置
は、図2に示すように、制御騒音発生状態に応じた基準
信号を適応フィルタ手段を介して複数の制御音源に入力
し、当該制御音源から送出される音圧と周囲の騒音音圧
との合成音圧を複数の残留騒音検出手段で検出し、制
音源及び残留騒音検出手段間の空間伝達関数をモデル化
したモデル空間伝達関数をフィルタ係数とするフィルタ
手段で前記基準信号をフィルタ処理した信号と前記残留
騒音検出信号とに基づいてフィルタ係数更新手段で前記
適応フィルタのフィルタ係数を更新するようにした能動
型騒音制御装置において、前記フィルタ手段に前記基準
信号に代えてテスト信号を供給すると同時に、前記各制
御音源から選択した制御音源に前記適応フィルタ手段の
出力信号に代えて前記テスト信号を供給するテスト信号
供給手段と、該テスト信号供給手段で選択した制御音源
にテスト信号を供給する毎に、当該テスト信号、個別に
選択した前記残留騒音検出手段で検出したテスト信号と
前記フィルタ手段でフィルタ処理されたテスト信号とに
基づいてモデル空間伝達関数を推定するモデル伝達関数
推定手段と、該モデル伝達関数推定手段で推定したモデ
ル伝達関数推定値をフーリエ変換して伝達系の周波数特
性を算出する周波数特性算出手段と、該周波数特性算出
手段で算出された周波数特性と予め設定された周波数特
性とを比較して異常を検出する異常検出手段とを備えた
ことを特徴としている。
【0010】
【作用】請求項1に係る能動型騒音制御装置において
は、テスト信号供給手段で、テスト信号を制御音源に
択的に供給することにより、この選択された制御音源か
テスト信号を出力する毎に、これを個別に選択した
留騒音検出手段で検出して、選択された制御音源及び残
留騒音検出手段間の実際の空間伝達関数を含んだテスト
信号を得ると共に、テスト信号をフィルタ手段に供給し
て、前記実際の空間伝達関数をモデル化したモデル伝達
関数に対応するフィルタ係数でフィルタ処理する。そし
て、モデル伝達関数推定手段で、テスト信号、残留騒音
検出手段で検出したテスト信号及びフィルタ処理したテ
スト信号に基づいてモデル伝達関数を推定し、この推定
値を異常検出手段で、予め制御音源、残留騒音検出手段
が正常な状態で測定したモデル空間伝達関数とを比較す
ることにより、両者の差値が大きいときに異常と判断す
る。これにより、特性劣化した制御音源、残留騒音検出
手段を含む制御系を特定することができる。
【0011】また、請求項2に係る能動型騒音制御装置
においては、モデル伝達関数推定手段で推定したモデル
伝達関数推定値を周波数特性算出手段で、フーリエ変換
することにより伝達系の周波数特性を算出し、異常検出
手段で、算出された周波数特性と予め設定した周波数特
性とを比較することにより、両者の差値が大きいときに
異常と判断する。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図3は、本発明を4気筒エンジンを搭載した車両
に適用した場合の一実施例を示す概略構成図である。図
3において、1は車体であって、車室2の前方に騒音源
としての4気筒エンジン3が配置されている。車室2内
には、前部座席4F及び後部座席4Rが配設されている
と共に、例えばダッシュボードの下部及び後部座席4R
の後方側に制御音源としてのオーディオ信号を出力する
制御音源を兼ねるラウドスピーカ5a及び5bが配設さ
れ、さらに天井の前方、中央及び後方部に夫々残留騒音
検出手段としてのマイクロフォン6a,6b及び6cが
配設されている。
【0013】また、エンジン3には、クランク角センサ
7が取付けられ、このクランク角センサ7から例えばク
ランク軸が180度回転する毎に1サイクルの正弦波状
信号でなる基準信号としてのクランク角検出信号Xが出
力される。さらに、車両には、自己診断を行う場合のテ
スト信号としてのホワイトノイズをコントローラ15か
らの制御信号CBによって発生するホワイトノイズ発生
器9と、例えば運転席近傍に配置された自己診断スイッ
チ10(図4参照)とが搭載されている。
【0014】そして、マイクロフォン6a〜6cから出
力される残留騒音検出信号e1 〜e 3 がコントローラ1
5に入力されると共に、クランク角センサ7のクランク
角検出信号X、ホワイトノイズ発生器9のホワイトノイ
ズ及び自己診断スイッチ10のスイッチ信号もコントロ
ーラ15に入力される。コントローラ15は、図6に示
すように、クランク角検出信号X及びホワイトノイズX
Wが入力されこれらをマイクロコンピュータ26からの
制御信号CCによって選択するアナログマルチプレクサ
20と、このアナログマルチプレクサ20の選択出力を
A/D変換して出力するA/D変換回路21と、マイク
ロフォン6a〜6cの残留騒音検出信号e1 〜e3 を増
幅する増幅器22a〜22cと、これら増幅器22a〜
22cの増幅出力をA/D変換して出力するA/D変換
回路23a〜23cと、各A/D変換回路21,23a
〜23cの変換出力、自己診断スイッチ10のスイッチ
信号が入力されるマイクロコンピュータ26と、このマ
イクロコンピュータ26から出力されるラウドスピーカ
5a,5bの駆動信号y1,2 をD/A変換して出力す
るD/A変換回路27a,27bと、これらD/A変換
回路27a,27bの出力及びホワイトノイズ発生器9
のホワイトノイズが入力され、これらをマイクロコンピ
ュータ26からの制御信号CAによって選択するアナロ
グマルチプレクサ28a,28bと、これらアナログマ
ルチプレクサ28a,28bから出力されるアナログ信
号を増幅してラウドスピーカ5a,5bに供給する増幅
器29a,29bと、マイクロコンピュータ26から出
力される自己診断結果を表す表示データを表示する例え
ば液晶表示器で構成される表示装置30と、マイクロコ
ンピュータ26から出力される制御信号CA1 及びCA
2が入力され、これらの論理和を制御信号CCとしてア
ナログマルチプレクサ28a,28bに出力するORゲ
ート31とを備えている。
【0015】ここで、マイクロコンピュータ26は、常
時、順次更新されるフィルタ係数W miに基づいて基準信
号としてのクランク角検出信号Xのたたみ込み演算を行
ってラウドスピーカ5a,5bに対する駆動信号y1,
2 を算出する適応ディジタルフィルタ処理と、クランク
角検出信号Xに基づきマイクロフォン及びスピーカ間の
空間伝達関数の組合せ数に応じて、モデル化したモデル
空間伝達関数に対応するフィルタ係数でフィルタ処理さ
れた基準信号rkm(後述する(6),(7) 式参照)を生成す
るディジタルフィルタ処理と、このフィルタ処理された
基準信号rkmと残留騒音検出信号e1 〜e3 とに基づき
適応ディジタルフィルタ処理におけるフィルタ係数Wmi
をLMS(Least Mean Square) アルゴリズムを用いて更
新するフィルタ係数更新処理とを実行すると共に、自己
診断スイッチ10をオン状態とすることにより、各制御
系が正常であるか否かを判断する自己診断処理を実行す
る。
【0016】ここで、マイクロコンピュータ26の制御
原理を一般式を用いて説明する。今、第k番目のマイク
ロフォン6a〜6cが検出した残留騒音検出信号をek
(n)、ラウドスピーカ5a及び5bからの制御音(二次
音)が無いときの第k番目のマイクロフォン6a〜6c
が検出した残留騒音検出信号をept(n) 、第m番目のラ
ウドスピーカ5a及び5bと第k番目のマイクロフォン
6a〜6cとの間の伝達関数HkmをFIR(有限インパ
ルス応答)関数で表したときの第j番目(j=0,1,
2,──Ic - 1 )の項に対応するフィルタ係数をC
kmj ′、クランク角検出信号をX(n) 、このクランク角
検出信号X(n) を入力しm番目のラウドスピーカ5a及
び5bを駆動する適応ディジタルフィルタの第i番目
(i=0,1,2,─IF -1)の係数をWmiとすると、
下記(2) 式が成立する。
【0017】 ここで、(n)が付く項は、いずれもサンプリング時刻
nのサンプル値であり、また、Kはマイクロフォン6a
〜6cの数(本実施例では3個)、Mはラウドスピーカ
5a及び5bの数(本実施例では2個)、IC はFIR
ディジタルフィルタで表現されたフィルタ係数Ckm′の
タップ数(フィルタ次数)、IF は適応ディジタルフィ
ルタで表現されたフィルタ係数Wmiのタップ数(フィル
タ次数)である。
【0018】上記(2) 式中の右辺の「{ΣWmi・X(n-j
-i) }」(=ym )の項は、クランク角検出信号Xを適
応ディジタルフィルタ処理したときの出力を表し、「Σ
km j ・{ΣWmi・X(n-j-i) }」の項は第m番目のス
ピーカ5a及び5bに入力された信号エネルギがこれら
スピーカ5a及び5bから音響エネルギとして出力さ
れ、車室内の空間伝達関数Ckmを経て第k番目のマイク
ロフォン6a〜6cに到達したときの信号を表し、さら
に「ΣΣCkmj ・{ΣWmi・X(n-j-i) }」の右辺第2
項全体は、第k番目のマイクロフォン6a〜6cへの到
達信号を全スピーカについて足し合わせているから、第
k番目のマイクロフォン6a〜6cに到達する二次音の
総和を表す。
【0019】次いで、評価関数Jを下記(3) 式のように
置く。 そして、本実施例では、LMSアルゴリズムを採用し、
評価関数Jを最小とするフィルタ係数Wmiを求め、適応
ディジタルフィルタ処理の各フィルタ係数Wmiを更新す
る。最急降下法であるLMSアルゴリズムは、適応ディ
ジタルフィルタ処理のフィルタ係数としてn番目の値W
mi(n)を用い、平均自乗誤差の勾配∂J/∂Wmiを算出
し、これをα倍して(n+1)番目の値Wmi(n+1)を求
め、評価関数Jの値を小さくするように演算を実行す
る。
【0020】この勾配∂J/∂Wmiの計算式は、(3) 式
より、 そして、前記 (2)式より、 となるので、 ここで、(5) 式の右辺を、 とおくと、フィルタ係数に対する評価関数の勾配∂J/
∂Wmiは、 で表すことができる。
【0021】したがって、フィルタ係数の更新式は、重
み係数γk も含めた形で下記(9) 式で与えられる。 ここで、αは収束係数であり、適応ディジタルフィルタ
処理が最適に収束する速度や、その際の安定性に関与す
る。
【0022】このように、適応ディジタルフィルタ処理
におけるフィルタ係数Wmi(n+1) を、マイクロフォン6
a〜6cから出力される残留騒音検出信号e1(n)〜e
3(n)とクランク角センサ7からのクランク角検出信号X
(n) とに基づいてLMSアルゴリズムに従って順次更新
することにより、入力される残留騒音検出信号e1(n)〜
3(n)を最小とする駆動信号y1(n)及びy2(n)が形成さ
れ、これらがラウドスピーカ5a及び5bに供給され
て、これらから出力される制御音によって車室2内の騒
音が相殺される。
【0023】次に、上記実施例の動作をマイクロコンピ
ュータ26の処理手順を示す図5のフローチャートを伴
って説明する。なお、全体のシステムはキースイッチが
オン状態となったときに、電源が投入され、マイクロコ
ンピュータ26で図7に示すタイマ割込処理を所定時間
(例えば1msec)毎に実行する。なお、電源投入時のメ
インプログラムによる初期化処理によって制御信号CA
1 及びCA2 が共に“0”に設定され、これによりアナ
ログマルチプレクサ28a,28bによってマイクロコ
ンピュータ26から出力される駆動信号y1,2 が選択
されると共に、アナログマルチプレクサ20によってク
ランク角検出信号Xが選択される。
【0024】そして、ステップS1で、自己診断モード
が設定されているか否かを判定する。この判定は運転席
近傍に配設された自己診断スイッチ10がオン状態であ
るか否かによって行い、自己診断スイッチ10がオフ状
態であるときにはステップS2に移行して、図6に示す
通常騒音抑制制御処理を実行し、自己診断スイッチ10
がオン状態であるときにはステップS3に移行して、図
7に示す自己診断処理を実行する。
【0025】通常騒音抑制制御処理は、図6に示すよう
に、先ずステップS21で残留騒音検出信号e1 〜e3
及び基準信号X(n) を読込み、次いでステップS22に
移行して、前記(7) 式に対応するディジタルフィルタ処
理を行ってフィルタ処理された基準信号rkmを算出し、
次いでステップS23に移行して算出されたフィルタ処
理された基準信号rkmと残留騒音検出信号e1 〜e3
に基づいて前記(9) 式に従ったフィルタ係数更新処理を
行ってフィルタ係数Wmi(n+1) を算出し、次いでステッ
プS24に移行して算出されたフィルタ係数Wmi(n+1)
をもとに適応ディジタルフィルタ処理を実行してラウド
スピーカ5a,5bに対する駆動信号y1,2 を算出
し、次いでステップS25に移行して算出した駆動信号
1,2 をD/A変換回路27a,27bに出力してか
ら通常騒音抑制制御処理を終了し、タイマ割込処理を終
了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0026】また、自己診断処理は、図7に示すよう
に、先ずステップS31で駆動信号y 1 及びy2 を共に
零とすると共に、ラウドスピーカ5a,5bを選択する
変数m及びマイクロフォン6a〜6cを選択する変数k
を共に“1”に設定する。次いで、ステップS32に移
行して、“1”の制御信号CA1 をアナログマルチプレ
クサ28aに出力して、その入力側をホワイトノイズ発
生器9側に切換える。これによって、ラウドスピーカ5
aのみがホワイトノイズ信号の出力が可能な状態とな
る。次いで、ステップS33に移行して、論理値“1”
の制御信号CBをホワイトノイズ発生器9に出力して、
これを起動してからステップS34に移行する。
【0027】このステップS34では、各マイクロフォ
ン6a〜6c中の選択されたマイクロフォンからの残留
騒音検出信号ekmを読込むと共に、ホワイトノイズ発生
器9からのホワイトノイズXWを読込み、次いでステッ
プS35に移行して、ホワイトノイズXWをモデル空間
伝達関数Ckm′をフィルタ係数とするディジタルフィル
タ処理することにより、フィルタ処理されたホワイトノ
イズ信号rkm(=Ckm′×XW)を算出する。
【0028】次いで、ステップS36に移行して、実際
のスピーカ5a,5bとマイクロフォン6a〜6c間の
空間伝達関数Ckm′を含む残留騒音検出信号ekmからフ
ィルタ処理されたホワイトノイズ信号rkmを減算して両
者の偏差εkmを算出する。次いで、ステップS37に移
行して、下記(10)式の演算を行って、次回のステップS
35におけるディジタルフィルタ処理のフィルタ係数C
km′(n+1) を算出し、算出したフィルタ係数Ckm′(n+
1) を更新してからステップS38に移行する。
【0029】 Ckm′(n+1) =Ckm′(n) −α・εkm(n) ・X(n-i) …………(10) このフィルタ係数更新式は、ディジタルフィルタ処理の
フィルタ係数Ckm′の評価関数Jを下記(11)式のように
置き、LMSアルゴリズムを採用して、評価関数Jを最
小とするフィルタ係数Ckm′(n+1)を求める。 J=E{εk (n)2} …………(11) 但し、E{ }は期待値である。
【0030】そして、時刻nでのフィルタ係数Ckm′の
値Ckm′(n) で評価関数Jを微分した値即ち勾配に比例
した量をCkm′(n) から減算することで、フィルタ係数
km′(n) を逐次更新することにより、評価関数Jを最
小とする目標フィルタ係数C opt に近づいて行く。具体
的には、 となり、LMSアルゴリズムでは期待値の代わりにεk
(n) X(n-i) の瞬時値をそのまま使うことにより、前記
(10)式のフィルタ係数Ckm′(n+1)を得ることができ
る。
【0031】ステップS38では、フィルタ係数Ckm
を更新するための前記(10)式の右辺第2項即ちフィルタ
係数に対する評価関数Jの勾配(αεk (n) XW(n-i)
)が所定値ΔJ以下となって評価関数Jが最小となる
目標フィルタ係数Copt に達したか否かを判定し、αε
k (n) XW(n-i) ≧ΔJであるときには、フィルタ係数
km′(n) が目標フィルタ係数Copt に達していないも
のと判断して、前記ステップS34に戻り、αεk (n)
XW(n-i) <ΔJであるときには、目標フィルタ係数C
opt に達して同定が完了したものと判断してステップS
39に移行する。
【0032】このステップS39では、最終的に更新さ
れたフィルタ係数Ckm′から予め記憶装置に記憶されて
いる良品のラウドスピーカ5a,5b及びマイクロフォ
ン6a〜6cを使用して測定したフィルタ係数Ckm
(I) との差値の絶対値ΔCkmを算出し、次いでステップ
S40に移行して、算出した差値の絶対値ΔCkmが予め
設定した閾値ΔCT を越えているか否かを判定し、ΔC
km>ΔCT であるときには第m番目のラウドスピーカ及
び第k番目のマイクロフォンを含む制御系に周波数特性
劣化等の異常が発生しているものと判断してステップS
41に移行し、この制御系が異常である旨の異常データ
を記憶装置の不良状態記憶領域に記憶してからステップ
S42に移行し、ΔCkm≦ΔCTであるときには、第m
番目のラウドスピーカ及び第k番目のマイクロフォンを
含む制御系が正常状態であると判断して直接ステップS
42に移行する。
【0033】ステップS42では、マイクロフォン数を
表す変数kが“3”に達したか否かを判定する。この判
定は、第m番目のラウドスピーカからのホワイトノイズ
信号を全てのマイクロフォンで受信してそれらの制御系
の診断が終了したか否かを判定するものであり、k<3
であるときには、ステップS43に移行して、変数kを
インクリメントしてから前記ステップS34に戻り、k
=3であるときには、全てのマイクロフォンについて診
断が終了したものと判断して、ステップS44に移行す
る。
【0034】このステップS44では、ラウドスピーカ
数を表す変数mが“2”に達したか否かを判定する。こ
の判定は全てのラウドスピーカ5a,5bについて診断
を終了したか否かを判定するものであり、m<2である
ときにはステップS45に移行して変数mをインクリメ
ントし、次いでステップS46に移行して制御信号CA
1 を論理値“0”とし、且つ制御信号CA2 を論理値
“1”として、アナログマルチプレクサ28bでホワイ
トノイズ発生器9のホワイトノイズXWを選択してから
前記ステップS34に戻り、m=2であるときには、全
てのラウドスピーカ5a,5bとマイクロフォン6a〜
6cとの間のモデル空間伝達関数Ckm′の診断を完了し
たものと判断してステップS47に移行する。
【0035】このステップS47では、記憶装置の不良
状態記憶領域を検索して不良状態が記憶されているか否
かを判定し、不良状態が記憶されていないときには、騒
音抑制制御系が正常状態であると判断してステップS4
8に移行し、表示装置30に正常状態を表す表示を行っ
てからステップS49に移行して、制御信号CA2 を論
理値“0”としてから処理を終了して図5に戻り、不良
状態が記憶されているときには、ステップS50に移行
して不良となった制御系を表示装置30に表示してから
前記ステップS49に移行する。
【0036】ここで、図6のステップS22の処理がフ
ィルタ手段に対応し、ステップS23の処理がフィルタ
係数更新手段に対応し、ステップS24,S25の処理
が適応フィルタ処理に対応し、図7のステップS31〜
S38、ステップS42〜S46の処理がモデル伝達関
数推定手段に対応し、ステップS39〜S41、S47
〜S49の処理が異常検出手段に対応している。
【0037】したがって、今、自己診断スイッチ10が
オフ状態であるものとすると、図5の処理において、ス
テップS1からステップS2に移行して図6の通常騒音
抑制制御が実行される。このため、ラウドスピーカ5
a,5b及びマイクロフォン6a〜6cに劣化がなく、
これら間の実際の空間伝達関数Ckmとディジタルフィル
タ処理におけるモデル空間伝達関数Ckm′とが略一致し
ている正常状態であるものとすると、マイクロコンピュ
ータ26でLMSアルゴリズムに従って適応デジタルフ
ィルタ処理におけるフィルタ係数を順次更新して、評価
関数Jが最小となるようにラウドスピーカ5a,5bに
対する駆動信号y1,2 が算出され、これがD/A変換
回路27a,27b及びアナログマルチプレクサ28
a,28bを介してラウドスピーカ5a,5bに供給さ
れる。このため、ラウドスピーカ5a,5bから駆動信
号y1,2 に応じた制御音が発せられ、これが騒音と干
渉することにより、マイクロフォン6a〜6cの残留騒
音検出信号e1 〜e3 が最小となるように消音制御され
る。
【0038】消音制御状態から例えば運転席近傍に配設
された自己診断スイッチ10をオン状態とすると、図5
の処理が開始されたときにステップS1で自己診断モー
ドであると判断されるので、ステップS3に移行し、図
7の自己診断処理が実行される。このため、先ずマイク
ロコンピュータ26から出力される駆動信号y1 及びy
2 を零レベルとすると共に、変数k及びmを夫々“1”
に設定し(ステップS31)、次いでアナログマルチプ
レクサ20及び28aを夫々ホワイトノイズ発生器9側
に切換えてから(ステップS32)、ホワイトノイズ発
生器9を起動してホワイトノイズ信号XWを発生させる
(ステップS33)。これにより、ホワイトノイズ信号
XWがアナログマルチプレクサ28a及び増幅器29a
を介してラウドスピーカ5aのみに供給され、このラウ
ドスピーカ5aのみからホワイトノイズが出力され、こ
れらが各マイクロフォン6a〜6cで集音されて、これ
らマイクロフォン6a〜6cから残留騒音検出信号e1
〜e3 が出力される。
【0039】そして、マイクロコンピュータ26では、
変数kが“1”に設定されていることから、マイクロフ
ォン6aから出力され増幅器22aで増幅され且つA/
D変換器23aでディジタル信号に変換された残留検出
信号e1 と、ホワイトノイズ発生器9から出力されアナ
ログマルチプレクサ20を介してA/D変換器25に入
力され、このA/D変換器25でディジタル値に変換さ
れたホワイトノイズ信号XWとを読込み(ステップS3
4)、次いでホワイトノイズ信号XWを、モデル空間伝
達関数C11′をフィルタ係数とするディジタルフィルタ
処理を行ってフィルタ処理された、マイクロフォン6a
の残留騒音検出信号e1 に対応するホワイトノイズフィ
ルタ信号r11を算出する(ステップS35)。次いで、
入力された残留騒音検出信号e1 と算出されたホワイト
ノイズフィルタ信号r11との偏差ε11を算出し(ステッ
プS36)、この偏差ε11をもとに前述した(13)式の演
算を行うことにより、次回のステップS35のディジタ
ルフィルタ処理におけるフィルタ係数C11′を更新し、
上記動作を評価関数Jに対するフィルタ係数C11′の勾
配が設定値ΔJ以下となって評価関数が最小となる目標
フィルタ係数Copt に達するまで繰り返し実行される。
【0040】そして、目標フィルタ係数Copt に達する
と、そのときの更新されたフィルタ係数C11′と予め設
定された正常時のフィルタ係数C11′(I) との差値の絶
対値でなる偏差ΔC11を算出し(ステップS39)、次
いで算出した偏差ΔC11が予め設定した閾値ΔCT を越
えているか否かを判定し、ΔC11<ΔCT であるときに
はラウドスピーカ5a及びマイクロフォン6aを含む制
御系が正常であると判断して直接ステップS42に移行
し、ΔC11≧ΔCT であるときには、ラウドスピーカ5
a及びマイクロフォン6aを含む制御系が異常であると
判断して、その旨を記憶装置の不良状態記憶領域に記憶
して(ステップS41)からステップS42に移行す
る。
【0041】このとき、変数kが“1”であるので、こ
の変数kをインクリメントして“2”とし(ステップS
43)てからステップS34に戻る。このため、ラウド
スピーカ5aからのホワイトノイズ信号を受信したマイ
クロフォン6bから出力される残留騒音検出信号e2
ホワイトノイズ発生器9からのホワイトノイズ信号XW
とを読込み、これらに基づいて前述したと同様に、ラウ
ドスピーカ5aとマイクロフォン6bとの間のモデル空
間伝達関数C12′を推定し、これが正常であるか否かを
判定する。
【0042】以上の診断動作を繰り返して変数kが
“3”となった状態でステップS42に移行すると、ラ
ウドスピーカ5aと全てのマイクロフォン6a〜6cと
の間の各制御系についての診断が終了したものと判断
し、このときのラウドスピーカの数を表す変数mが
“1”であるので、これをインクリメントして“2”と
すると共に、マイクロフォン数を表す変数kを“1”に
セットし(ステップS45)、次いで制御信号CA1
代えて制御信号CA2 を論理値“1”として(ステップ
S46)からステップS34に戻る。このため、アナロ
グマルチプレクサ28aの入力側がマイクロコンピュー
タ26側に復帰すると共に、アナログマルチプレクサ2
8bの入力側がホワイトノイズ発生器9側に切換えら
れ、ラウドスピーカ5aに代えてラウドスピーカ5bか
らホワイトノイズ信号が出力される。
【0043】したがって、ラウドスピーカ5bと各マイ
クロフォン6a〜6cとの間のモデル空間伝達関数
21′〜C23′が推定され、この推定値に基づいて前述
したと同様に各制御系が正常状態であるか否かが判断さ
れる。そして、全てのラウドスピーカ5a,5bとマイ
クロフォン6a〜6cとの組について診断を終了する
と、記憶装置の不良状態記憶領域に不良状態として記憶
されている制御系があるか否かを判定し(ステップS4
7)、不良状態となる制御系が存在しないときには、表
示装置30に正常表示を行い(ステップS48)、次い
で制御信号CA2 を論理値“0”として、アナログマル
チプレクサ20及び28bの入力側を夫々クランク角信
号X及び駆動信号y2側に切換えてから図7の処理を終
了して図5の処理に戻る。
【0044】ところが、記憶装置の不良状態記憶領域に
不良状態である制御系が格納されているときには、その
格納されている制御系の関係を把握する。すなわち、例
えばラウドスピーカ5a(又は5b)に周波数特性等の
特性劣化を生じているものとすると、このラウドスピー
カ5a(又は5b)と各マイクロフォン6a〜6cとの
間のモデル空間伝達関数C11′〜C13′(又はC21′〜
23′)とこれらに対する正常時のモデル空間伝達関数
11′(I) 〜C13′(I) (又はC21′(I) 〜C 23′(I)
)とに大きな差を生じることから、これらの3つの制
御系で異常と判断されて不良状態記憶領域に格納される
ことになる。この結果、不良状態記憶領域に上記3つの
制御系が記憶されているときには、ラウドスピーカ5a
(又は5b)の特性劣化による異常が発生しているもの
と判断することができる。
【0045】一方、マイクロフォン6a〜6cに周波数
特性等の特性劣化を生じているものとしたときには、特
性劣化を生じたマイクロフォンとラウドスピーカ5a,
5bとの間の2つの制御系で異常と判断されて不良状態
記憶領域に格納されることになる。この結果、不良状態
記憶領域に上記2つの制御系が記憶されているときには
マイクロフォン6a〜6cの特性劣化による異常が発生
しているものと判断することができる。
【0046】そして、これらの判断結果が表示装置にラ
ウドスピーカ5a,5b又はマイクロフォン6a〜6c
の不良として表示される(ステップS50)。次に、本
発明の第2実施例を図8を伴って説明する。この第2実
施例は、モデル空間伝達関数Ckm′は実際のラウドスピ
ーカ5a,5b及びマイクロフォン6a〜6c間の空間
伝達関数Ckmを同定することにより決定され、実際の空
間伝達関数Ckmは、ラウドスピーカ5a,5b又はマイ
クロフォン6a〜6cの周波数特性劣化によって周波数
特性が変化することから周波数領域でゲイン又は位相特
性を初期状態と比較することによりラウドスピーカ5
a,5b及びマイクロフォン6a〜6c間の制御系にお
ける異常判断を行うようにしたものである。
【0047】すなわち、マイクロコンピュータ26で前
述した第1実施例における図7の自己診断処理に代えて
図8に示す自己診断処理が実行される。この自己診断処
理は、図7の処理において、ステップS39〜S41が
省略され、これらの処理に代えて、ステップS59〜S
63の処理が設けられている。すなわち、ステップS3
8でαε(n) XW(n-j) <ΔJであるときに、ステップ
S59に移行して、最終的に更新されたモデル空間伝達
関数Ckm′を例えば高速フーリエ変換(FFT)処理し
て周波数に対するゲインGkm及び位相θkmを求め、次い
でステップS60に移行して求めたゲインGkm及び位相
θkmと予め設定した正常時のゲイン基準値Gkm(I) 及び
位相基準値θkm(I) とを制御周波数範囲内で且つ所定周
波数(例えば10Hz)毎に比較して、両者の差値の絶対
値でなるゲイン偏差ΔG1 〜ΔGN 及び位相偏差Δθ1
〜ΔθN を算出し、次いでステップS61に移行して、
算出したゲイン偏差ΔG1 〜ΔGN の内少なくとも1つ
が予め設定した許容閾値ΔGT を越えているか否かを判
定し、ΔGi >ΔGT であるときには、該当するモデル
空間伝達関数Ckm′の制御系で周波数特性劣化が生じて
いるものと判断してステップS62に移行し、記憶装置
の不良状態記憶領域に該当制御系の不良を記憶してから
ステップS42に移行し、ΔG1 〜ΔGN ≦ΔGT であ
るときには、該当する制御系がゲインに関しては正常状
態であると判断してステップS63に移行する。
【0048】このステップS63では、位相偏差Δθ1
〜ΔθNの内少なくとも1つが予め設定した許容閾値Δ
θT を越えているか否かを判定し、Δθi >ΔθT であ
るときには、該当するモデル空間伝達関数Ckm′の制御
系で周波数特性劣化が生じているものと判断して前記ス
テップS62に移行し、Δθ1 〜ΔθN ≦ΔθT である
ときには、該当する制御系に周波数特性の劣化が無いか
又はあるとしても許容範囲内である正常状態であると判
断して前記ステップS42に移行する。
【0049】ここで、図8のステップS59の処理が周
波数特性算出手段に対応し、ステップS60〜S63、
ステップS47,S48,S50の処理が異常検出手段
に対応している。この第2実施例によると、算出したラ
ウドスピーカ5a,5bとマイクロフォン6a〜6cと
の間の実際の空間伝達関数Ckmに対応するモデル空間伝
達関数C km′をフーリエ変換して時間領域から周波数領
域に変換し、そのときのゲインG km及び位相θkmを初期
状態におけるゲイン基準値Gkm(I) 及び位相基準値θkm
(I) とを比較して、両者の偏差を所定周波数毎に算出
し、これら偏差の何れか1つが許容閾値ΔGT 又はΔθ
T を越えたときに、そのときのラウドスピーカ5a,5
bとマイクロフォン6a〜6cの制御系に周波数特性劣
化を生じているものと自己診断するようにしている。
【0050】このため、例えばモデル空間伝達関数
km′の周波数特性が図9(a) に示すように、破線図示
の初期周波数特性Li に対する図8の処理を実行したと
きの実線図示の周波数特性Lp のずれが少ないときに
は、このモデル空間伝達関数Ckm′をフーリエ変換を行
って算出した図9(b) で実線図示のゲインGkm及び位相
θkmと破線図示の初期状態におけるゲイン基準値G
km(I)及び位相基準値θkm(I) との差が少なく、ステッ
プS61でΔG1 〜ΔGN ≦ΔGT と判断されると共
に、ステップS63でΔθ1 〜ΔθN ≦ΔθT と判断さ
れるので、モデル空間伝達関数Ckm′を含む制御系の周
波数特性の劣化が許容範囲内である正常状態と判断され
る。
【0051】ところが、図10(a) に示すように、破線
図示の初期周波数特性Li に対する図8の処理を実行し
たときの実線図示の周波数特性Lp のずれが大きいとき
には、このモデル空間伝達関数Ckm′をフーリエ変換を
行って算出した図9(b) で実線図示のゲインGkm及び位
相θkmと破線図示の初期状態におけるゲイン基準値G km
(I) 及び位相基準値θkm(I) との差が大きく、ステップ
S61でΔG1 〜ΔG N >ΔGT と判断されるので、ス
テップS62に移行して、当該制御系の不良状態が不良
状態記憶領域に記憶される。
【0052】そして、図8の処理を繰り返して、全ての
ラウドスピーカ5a,5bとマイクロフォン6a〜6c
との間の空間伝達関数の自己診断を終了すると、前述し
た第1実施例と同様に不良状態記憶領域の記憶内容から
不良部品を特定することができる。すなわち、例えば位
相についてのみ説明すれば、例えばラウドスピーカ5a
とマイクロフォン6a〜6cとの各制御系について、図
11(a) 〜(c) に示すような位相特性が測定されたもの
とすると、ラウドスピーカ5aとマイクロフォン6aと
の間のモデル空間伝達関数C11′については、図11
(a) に示すように、破線図示の位相基準値θ11′(I) と
実際に測定された実線図示の位相θ11′とのずれは小さ
いのでラウドスピーカ5a及びマイクロフォン6aは正
常であると判断することができるが、ラウドスピーカ5
aとマイクロフォン6b及び6cとの両制御系について
は、図11(b) 及び(c) に示すように、破線図示の位相
基準値θ12′(I) 及びθ13′(I) に対して実線図示の位
相θ12′及びθ13′が大きくずれており、ラウドスピー
カ5aは正常であるので、マイクロフォン6b及び6c
の周波数特性が劣化しているものと判断することができ
る。
【0053】なお、上記第2実施例においては、ゲイン
km及び位相θkmの双方をゲイン基準値Gkm(I) 及び位
相基準値θkm(I) と比較する場合について説明したが、
これに限定されるものではなく、ゲイン又は位相の何れ
か一方のみを比較するようにしてもよい。また、上記第
1及び第2実施例では、モデル伝達関数Ckm′(I) 及び
ゲイン基準値Gkm′(I),位相基準値θkm′(I) を予め設
定する場合について説明したが、これに限らず、ラウド
スピーカ5a,5b及びマイクロフォン6a〜6cを設
置した初期状態で、モデル伝達関数Ckm′(I) 及びゲイ
ン基準値Gkm′(I),位相基準値θkm′(I) を測定して記
憶しておくようにしてもよい。
【0054】さらに、上記第1及び第2実施例では、自
己診断スイッチ10によって自己診断を開始する場合に
ついて説明したが、これに限定されるものではなく、モ
デル空間伝達関数の同定を行うときに、同時に自己診断
処理を行うようにしてもよい。さらにまた、上記第1及
び第2実施例では、制御音源としてラウドスピーカを適
用した場合について説明したが、これに限定されるもの
ではなく、振動子を適用することもでき、また残留騒音
検出手段としてのマイクロフォンも加速度振動センサを
適用することもできる。
【0055】なおさらに、ラウドスピーカ及びマイクロ
フォンの設置数は上記各実施例に限定されるものではな
く、1以上の任意数とすることができる。また、上記各
実施例ではエンジン騒音を抑制する場合について説明し
たが、これに限定されるものではなく、車輪に対する路
面からの振動入力を検出してロードノイズを抑制した
り、窓ガラスの振動を検出して風切り音を抑制したりす
ることができ、これらの複合音を抑制することもでき
る。
【0056】さらに、上記各実施例では、マイクロコン
ピュータ26で、適応ディジタルフィルタ処理、モデル
空間伝達関数に応じたフィルタ係数のディジタルフィル
タ処理を行う場合について説明したが、これらに代えて
独立した適応ディジタルフィルタ及びディジタルフィル
タを適用することもできる。さらにまた、上記各実施例
では本発明を車両に適用した場合について説明したが、
これに限定されるものではなく、航空機の室内の騒音低
減の場合等にも適用できる。
【0057】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係る能
動型騒音制御装置によれば、制御音源及び残留騒音検出
手段間の実際の伝達関数をモデル化したモデル伝達関数
を使用して能動型騒音制御を行う場合に、テスト信号を
フィルタ手段に供給すると共に、制御音源に選択的に
給し、制御音源を選択してテスト信号を出力する毎に、
残留騒音検出手段の残留騒音検出信号を個別に選択して
フィルタ手段に供給することによりモデル伝達関数を推
定し、このモデル伝達関数推定値と予め設定したモデル
伝達関数とを比較し、両者の差が大きいときに、測定し
たモデル伝達関数を含む制御系が異常であると自己診断
することができ、異常結果から特性劣化した部品を特定
することができるという効果が得られる。
【0058】また、請求項2に係る能動型騒音制御装置
によれば、推定したモデル伝達関数推定値をフーリエ変
換して周波数特性を算出し、この周波数特性を予め設定
した周波数特性と比較し、両者の特性のずれから周波数
領域で異常判断を行うようにしたので、上記第1実施例
と同様の効果を得ることができると共に、周波数特性の
劣化を正確に検出することができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の請求項1に対応する機能ブロック図で
ある。
【図2】本発明の請求項2に対応する機能ブロック図で
ある。
【図3】本発明の第1実施例の概略構成図である。
【図4】第1実施例のコントローラのブロック図であ
る。
【図5】第1実施例のフローチャートである。
【図6】第1実施例の通常騒音抑制制御処理を示すフロ
ーチャートである。
【図7】第1実施例の自己診断処理を示すフローチャー
トである。
【図8】第2実施例の図7に対応する自己診断処理を示
すフローチャートである。
【図9】第2実施例の動作の説明に供する正常時の周波
数特性を示す説明図である。
【図10】第2実施例の動作の説明に供する異常時の周
波数特性を示す説明図である。
【図11】第2実施例の動作の説明に供する位相特性を
示す説明図である。
【符号の説明】
2 車室 3 エンジン 5a,5b ラウドスピーカ 6a〜6c マイクロフォン 7 クランク角センサ 9 ホワイトノイズ発生器 10 自己診断スイッチ 15 コントローラ 20 アナログマルチプレクサ 26 マイクロコンピュータ 28a,28b アナログマルチプレクサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G10K 11/178

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 制御騒音発生状態に応じた基準信号を適
    応フィルタ手段を介して複数の制御音源に入力し、当該
    制御音源から送出される音圧と周囲の騒音音圧との合成
    音圧を複数の残留騒音検出手段で検出し、制御音源及
    び残留騒音検出手段間の空間伝達関数をモデル化したモ
    デル空間伝達関数をフィルタ係数とするフィルタ手段で
    前記基準信号をフィルタ処理した信号と前記残留騒音検
    出信号とに基づいてフィルタ係数更新手段で前記適応フ
    ィルタのフィルタ係数を更新するようにした能動型騒音
    制御装置において、前記フィルタ手段に前記基準信号に
    代えてテスト信号を供給すると同時に、前記各制御音源
    から選択した制御音源に前記適応フィルタ手段の出力信
    に代えて前記テスト信号を供給するテスト信号供給手
    段と、該テスト信号供給手段で選択した制御音源にテス
    ト信号を供給する毎に、当該テスト信号、個別に選択し
    た前記残留騒音検出手段で検出したテスト信号及び前記
    フィルタ手段でフィルタ処理されたテスト信号に基づい
    てモデル空間伝達関数を推定するモデル伝達関数推定手
    段と、該モデル伝達関数推定手段で推定したモデル伝達
    関数推定値と予め設定されたモデル伝達関数とを比較し
    て異常を検出する異常検出手段とを備えたことを特徴と
    する能動型騒音制御装置。
  2. 【請求項2】 制御騒音発生状態に応じた基準信号を適
    応フィルタ手段を介して複数の制御音源に入力し、当該
    制御音源から送出される音圧と周囲の騒音音圧との合成
    音圧を複数の残留騒音検出手段で検出し、制御音源及び
    残留騒音検出手段間の空間伝達関数をモデル化したモデ
    ル空間伝達関数をフィルタ係数とするフィルタ手段で
    記基準信号をフィルタ処理した信号と前記残留騒音検出
    信号とに基づいてフィルタ係数更新手段で前記適応フィ
    ルタのフィルタ係数を更新するようにした能動型騒音制
    御装置において、前記フィルタ手段に前記基準信号に代
    えてテスト信号を供給すると同時に、前記各制御音源か
    ら選択した制御音源に前記適応フィルタ手段の出力信号
    に代えて前記テスト信号を供給するテスト信号供給手段
    と、該テスト信号供給手段で選択した制御音源にテスト
    信号を供給する毎に、当該テスト信号、個別に選択した
    前記残留騒音検出手段で検出したテスト信号と前記フィ
    ルタ手段でフィルタ処理されたテスト信号とに基づいて
    モデル空間伝達関数を推定するモデル伝達関数推定手段
    と、該モデル伝達関数推定手段で推定したモデル伝達関
    数推定値をフーリエ変換して伝達系の周波数特性を算出
    する周波数特性算出手段と、該周波数特性算出手段で算
    出された周波数特性と予め設定された周波数特性とを比
    較して異常を検出する異常検出手段とを備えたことを特
    徴とする能動型騒音制御装置。
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