JPH0611704Y2 - スプラインブロ−チ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案は各種の機械に多く用いられている部品に内ス
プライン、内歯歯車などを加工するスプラインブローチ
に関する。

（従来の技術） 被削物の穴の内面に内スプライン・内歯歯車などを切削
加工するには、旋削加工により、あるいはブローチ加工
により被加工物の下穴を加工しておき、次いで該下穴を
基準にしてスプラインブローチを引いたり、あるいは押
したりして該下穴をガイドとして加工するのが一般的で
ある。スプラインブローチの切刃２は、ブローチ本体１
の軸心に対して第１図に示すようにブローチ本体１に直
交する線Ｘ−Ｘで切断した場合に、第５図に部分的に拡
大して示すように、ブローチ本体１の円周上に複数の切
刃２ａ，２ｂ，２ｃ……が設けられている。また、各切
刃の円周方向の間に形成される刃底部３には被加工物９
の下穴１０よりも僅かに小さなすきまｗ（通常０．２mm
程度）を空けて対向する案内面５が設けられている。

ところが、スプラインブローチは切削中において被加工
物９の下穴との間で、相互のバランスがくずれて偏倚し
易い。この時にブローチの刃底部３の表面に形成された
の案内面５と被加工物９の下穴１０との間の上記のすき
まｗ分だけ心ずれが生じてしまうが、案内面が下穴１０
に触れて心ずれが補正されるようになっている。しか
し、時には案内面５はすくい面７側に形成されるコーナ
１３に形成されるシャープエッジによって被加工物９の
下穴１０を切削することになる。これが過切削になると
心ずれが一層大きくなり、前記すきまｗ以上のすきまを
生じてしまい、ついには正確な内スプラインや内歯歯車
を加工することができないという事態を生ずるに至る。
かかる現象は第６図イに示すようにスプライン加工当初
においてはコーナ１３に強い正のすくい角が生ずるの
で、切り屑２１は大きくカールして大きく切削され、切
削量が多く、同図面のロからハに向けて次第に切刃２の
位置が上昇していくに従ってコーナ１３に形成されるす
くい角が正から負に向かって緩くなるので、この傾向が
緩和されることがわかる。

かかる問題点を解決するために刃底部の外面を被加工物
の内径と同径とし、かつ刃底部を切刃のすくい面から前
方に延長させて環状のガイド部を別に設け、このガイド
部の前方の縁部を丸く内側に湾曲させることにより、ブ
ローチ加工中に被加工物の下穴を切削することなく、被
加工物の下穴とスプラインブローチの同心度を良好に保
たせるものが考案された（特開昭６１−７９５１７号公
報参照）。

（考案が解決しようとする問題点） しかし、上記のスプラインブローチでは、再刃付けのた
めにすくい面を研削しようとすると、環状のガイドが邪
魔になり、再研削がきわめて困難となる。環状のガイド
と一緒にすくい面を研削できたと仮定しても、環状の研
削面が切刃となってしまって、これが下穴の穴壁に食い
込み、ブローチによる内歯車加工時にブローチに片寄り
が生じてしまい、ガイドの機能を果たすことが不可能に
なる。このために内歯歯車などの穴中心と一致させるこ
とができなくなってしまい、ひいては精度の高い加工が
不可能となってしまう。さらに、ガイドを別に設けたこ
とによりブローチの長さが極端に長くなり、ブローチの
設計上望ましいピッチを確保することができないことに
なる。

この考案は、被加工物の下穴が切削されることなく、高
精度の内歯歯車加工を可能とするスプラインブローチを
提供することを目的とするものである。

（問題を解決するための手段） そこで、この考案は円周方向に複数の切刃を有し、隣接
する切刃の間に切削加工中に被加工物の下穴と微小間隙
を空けて対向する案内面を刃底部に設けた内スプライン
・内歯歯車などを加工するスプラインブローチにおい
て、刃底部はその前方端面が切刃のすくい面と同一平面
上に設けられ、該すくい面から所定の幅の逃げ面を形成
し、残余の部分を案内面としたことにより、被加工物を
高精度に加工することを可能とした。

（作用）この考案は、上述のように円周方向に複数の切
刃を有し、隣接する切刃の間に切削加工中に被加工物の
下穴と微小間隙を空けて対向する案内面を刃底部に設け
た内スプライン、内歯歯車などを加工するスプラインブ
ローチに関し、刃底部にその前方端面を切刃のすくい面
と同一平面上に設け、該すくい面から所定の幅の逃げ面
を切削方向に形成し、残余の部分を案内面としたのであ
るから、スプラインブローチは切削中において被加工物
の下穴との間において、相互にバランスのくずれが生じ
た時に、ブローチの刃底部３の案内面５と被加工物９の
下穴１０との間のすきまｗ分だけ心ずれが生じて、案内
面５に設けられた逃げ面４が下穴に触れるようなことが
あっても、逃げ面４には所定の逃げ角αが設けられてい
るのであるから、逃げ面４と前方端面８とのなすコーナ
１３には負のすくい角が生じるのであり、逃げ面４に形
成されたコーナ１３が下穴１０に切り込むことがなく、
再び正しい位置に復帰して被加工物とスプラインブロー
チとの位置関係が補正される。また、逃げ面の切削方向
の幅は、少なくとも切刃の再刃付け研削代と略同一に形
成してあるのであるから、再刃付け研削を繰り返して
も、寿命に至るまで常に同一の状態を保って切削を行う
ことになる。

（実施例） 次に、この考案の実施例を図面に基づき説明すると、第
１図は一般的なスプラインブローチの概略図であって、
図面上左側に引っ張り部１６を設けたシャンク１７を、
同右側に後方支持部１８、後方案内部１９がそれぞれ設
けられている。さらに左右のシャンク１７、後方案内部
１９の間に長手方向に次第に切刃の高さが増したり、刃
幅が増大する多数の切刃２が形成されている。該切刃に
スプライン刃部が形成されるのであるが、前丸刃付き、
交互丸刃付き、後丸刃付きなどの公知の構造を採ること
ができることは言うまでもない。切刃は切削方向（第１
図において右側）に向かって次第に切刃の高さを増して
いくのであるが、第５図に詳細に示すように、内スプラ
イン加工時において円周方向に隣合う切刃同士の間に被
加工物９の下穴１０の直径よりも僅かに小さい（下穴精
度によって設定値は異なるが、本実施例では０．０５mm
程度とした）谷径ｄを有する刃底部３が形成されてい
る。なお、下穴１０は既に述べた如く旋削加工によって
加工してもよいし、第１図に示すようなブローチによっ
て加工することもできる。

刃底部３はその前方端面８が切刃２のすくい面７と同一
平面に形成されている。また、後方端面１４は後方に位
置する刃溝１５と同一平面に位置している。刃底部３に
はブローチ製造の際に砥石の外周面によって研削される
逃がし溝１２が両側に設けられる。刃底部３の前方端面
８から後方に向けて所定の案内角αをもつ逃げ面４が形
成される。該逃げ面４の切削方向の幅は切刃２の幅Ｌ
より小であって、少なくとも再刃付け研削代を見込んだ
値をとると、再刃付け研削を繰り返しても常に所期の効
果をうることができる。なお、上記の案内角αは、被加
工物が切削中に心ずれを生じたときに案内面５が切刃と
して作用しないように、すなわちコーナ１３は負のすく
い角となるように設定される。逃げ面の切削方向の幅
は、少なくとも切刃の再刃付け研削代と略同一に形成し
てあるのであるから、再刃付け研削を繰り返しても、寿
命に至るまで常に同一の状態を保つ。

（効果） この考案は、上記のように逃げ面４を刃底部３に設け、
刃底部の前方端面７を切刃のすくい面７と同一平面に形
成したのであるから、被加工物９とスプラインブローチ
本体１との間に心ずれが生じた時にも、被加工物９の下
穴１０を切削することなしに、加工物とスプラインブロ
ーチとのずれが補正される。このため、加工前の下穴中
心と加工後のスプライン又は内歯歯車の中心とほぼ一致
させることができ、円滑、高精度の加工が可能となっ
た。しかも、切刃の再刃付けの際に、従来品のように刃
底部３に形成された案内面５が再研削を阻害することな
く、すくい面７の再研削と底刃部３の前方端面８との研
削とが同時に実施できるので、再研削はきわめて簡単に
実施できるなど多くの優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は、一般的なスプラインブローチの概略図、第２
図は第１図のＸ−Ｘ線による断面図、第３図は第２図の
Ｙ−Ｙ線により切断した切刃の要部断面図、第４図は第
３図の斜視図、第５図は第２図の要部の拡大図、第６図
イ乃至ハは従来品における切刃及び案内面のコーナ１３
における切り屑の排出状況の概略図である。 １……ブローチ本体 ２……切刃 ３……刃底部 ４……逃げ面 ５……案内面 ７……すくい面 ８……前方端面 ９……被加工物 １０……下穴 １３……コーナ ２０……逃がし溝

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】円周方向に隣接する複数の切刃の間に切削
   加工中に被加工物の下穴と微小間隙を空けて対向する案
   内面を刃底部に設けた、内スプライン・内歯歯車などを
   加工するスプラインブローチにおいて、刃底部の前方端
   面が切刃のすくい面と同一平面上に設けられ、該すくい
   面から切削方向に所定幅の逃げ面を形成し、残余の部分
   を案内面としたことを特徴とするスプラインブローチ。
2. 【請求項２】前記逃げ面の切削方向の幅は、少なくとも
   切刃の再刃付け研削代と略同一である実用新案登録請求
   の範囲第１項記載のスプラインブローチ。