JPH0589971U - 電磁クラッチ及び電磁石用リング部材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 寸法精度及び金型寿命を向上させコスト低減
或いは生産性向上を図ることができる電磁石のリング部
材と、それを用いた小径化された電磁クラッチ。 【構成】 電磁石１２０は、リング部材１と、このリン
グ部材のリング状の溝内に収容された電磁コイル１２１
からなる。リング部材は外側部材と内側部材からなり、
ロータ１１０の溝内に同心に収容される。内側部材は内
側筒部と軸方向一端で外方に拡がった端板部２２からな
り、外側部材は内側部材の端板部と重合するリング状の
底部１２を有し、内側部材に軸を揃えて機械的に接続さ
れる。外側部材の外側筒部の端板部より外径の大きい大
径部と、外径の小さい小径部と、この間の段差部を深絞
りで形成される。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は，電磁クラッチに関し，詳しくは，自動車用エアコンのコンプレッサ ーの駆動源の遮断及び接続に用いられる電磁クラッチの構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】

近年，自動車用補器類の小型化に伴い，コンプレッサーにおいて，小型・小容 積しかも高冷房能力を要求されてきている。その為，車両側クランププーリの径 によって決まる回転数比を大きくする必要があり，このクラッチプーリ径は増々 小径化を余儀なくされている。それにつれ，コイルを包含するリング部材の外径 も小さくなってきている。

【０００３】 図４は従来の電磁クラッチを示す電磁クラッチを示す断面図である（例えば， 実開平２−１２５３４号公報参照）。図４で示すように，コンプレッサーハウジ ング１００の一端部にベアリング１０２を介して，ロータ１１０が回転可能に支 持されている。ロータ１１０は，外部駆動源のベルト接続用外周面に溝１１１が 設けられている。このロータの内部の円環状の溝１１２内には，電磁コイル１２ １を内部に収容したリング部材５０からなる電磁石１２０が，カバー６１を介し てハウジング１００に固定されている。クラッチのロータ１１０の一端部には， フランジ部１１３を有し，微小隙間を介して円環板状のアーマチュア１３０が設 けられている。このアーマチュア１３０の中心部は，コンプレッサの主軸１４０ の一端に固定されたハブ部１５０が設けられ，アーマチュア１３０とは，バネ板 １３１を介して接続されている。尚，符号１３６，１５１は，バネ板１３１を各 部材に固定するためのリベットである。また，符号１３３は，弾性部材からなる ストッパーである。このような構造の電磁クラッチにおいて，電磁石１２０に通 電すると電磁石１２０の磁束によって，アーマチュア１３０がロータ１１０側に 吸引されて，フランジ１１３表面に密着する。したがって，ロータ１１０の回転 が，アーマチュア１３０からバネ部材１３１，ハブ１５０を介して主軸１４０が 駆動され，図示しないコンプレッサが駆動される。

【０００４】 図５は，図４の電磁石のコイルを収容するリング部材を示す断面図である。図 ５に示すように，リング部材５０は，リング本体５１と，カバー６１とを備えて いる。

【０００５】 リング本体５１は，外側筒部５３と内側筒部５４を同軸状に組み合わせ，さら に外側筒部５３と内側筒部５４で形成される空間の一端部を，端角部を丸く形成 したリング状の底部５５で封じた形状を有し，これらによって形成される電磁石 を収容する円環状の収容空間５２を有していた。このリング本体５１の底部５５ の外側に平板状カバー６１を電気抵抗溶接により結合してリング部材５０が形成 される。

【０００６】 図６（ａ），（ｂ）は，リング部材５０を構成するリング本体５１及びカバー ６１の夫々の製造方法を示す断面図である。図６（ａ），（ｂ）で示すように， リング本体は，円環状の５ｍｍ程度の板体からなるブランク７０を用意し，この ブランク７０を，成形時の金型とワークとの溶着を防止するために，金属石鹸被 膜を素材表面に形成させる，いわゆる，ボンデ処理し，深絞りして図６（ｂ）で 示すように切削加工することによって製造されている。一方，図５で示すカバー ６１は，図６（ａ）と同様な形状のブランクを絞り加工することで得られている 。尚，これらのリング本体５１とカバー６１とは，前述したように溶接されてリ ング部材となる。

【０００７】 図４を参照して，前述したように，リング本体及びカバーは平板リング部材（ 即ち，ブランク）から深絞り加工により形成されており，底部５５と両筒部５３ ，５４とでは肉厚が異なってくる。（内外側筒部の肉厚は，底部の肉厚の４５％ 程度の肉厚になっている。）。特に図６（ａ），（ｂ）で示すように，内外径差 が小さく，しかも高さが高い場合Ｄ１，Ｄ２及びＨが適切に設定されていないと ，内外側筒部の肉厚が薄くなり，寸法精度を不安定にするばかりか，極端な肉厚 減少により，内外筒部の破断を招いていた。したがって，通常は以下に示される 式を目安にＤ１，Ｄ２及びＨを決定している。

【０００８】 Ｈ／（（Ｄ１＋Ｄ２）／２）≦２．４

【０００９】

【考案が解決しようとする課題】

従来の電磁クラッチのリング部材は一般に，冷間深絞り加工によって形成され るが，内外径差が少なく，絞り深さが深い場合には，極度の冷間加工を強いられ ，絞り加工中における円筒部の破断または加工後の寸法制度が不安定あるいは， 金型寿命の低下などに問題を有していた。

【００１０】 さらには，電気抵抗溶接の際，カバーとリングの板厚が異なるために，十分な 溶接強度が得られず，車両側からの伝（搬）振動により溶接部のはがれが懸念さ れていた。

【００１１】 一方，この従来のリング部材は５ｍｍ程度の板厚の素材を使用しているために ，深絞り加工中における金型とワークとの溶着を防止するために，金属石鹸被膜 を素材表面に形成させるボンデ処理を行う必要があった。さらには，材料自体伸 びの良い材料を使う必要性から，材料費の上昇を来してきた。

【００１２】 そこで，本考案の技術的課題は，小径化された電磁クラッチにおいて，リング 部材の寸法精度及び金型寿命を向上させるとともに，コスト低減或いは生産性向 上を図ることができる電磁石のリング部材とそれを用いた電磁クラッチを提供す ることにある。

【００１３】

【課題を解決するための手段】

本考案によれば，電磁コイルを収容するためのリング状溝を有した電磁石用リ ング部材において，外側筒部と該外側筒部の筒軸方向一端から径方向内側にのび た底部とを一体に有する外側部材，及び前記外側筒部の内側に前記リング状溝と なる間隔を残して同心的に配されかつ前記底部に機械的に接続された内側筒部を 有する内側部材を備えたことを特徴とする電磁石用リング部材が得られる。

【００１４】 本考案によれば，前記内側部材は，前記内側筒部の筒軸方向一端から前記底部 に沿って径方向外側にのびかつ前記底部に機械的に接続された端板部を前記内側 筒部と一体に有していることを特徴とする電磁石用リング部材が得られる。

【００１５】 本考案によれば，前記外側筒部は，前記端板部よりも外径の大きい大径部と外 径の小さい小径部とこれらの間の段差部とを有していることを特徴とする電磁石 用リング部材が得られる。

【００１６】 本考案によれば，回転駆動されるロータと前記ロータに対向したアーマチュア と前記アーマチュアを前記ロータに吸着させるための電磁石とを備えた電磁クラ ッチにおいて，前記電磁石は，前記リング部材と，前記リング部材の前記リング 状溝内に収容された電磁コイルとを備えていることを特徴とする電磁クラッチが 得られる。

【００１７】

【作用】

本考案の電磁クラッチにおいては，リング部材は，電磁装置を収容する一軸の 周囲に設けられたリング状の溝を有し，前記溝と前記一軸に関して同位置に設け られたロータの溝内にリング部材の前記リング状の溝が収容される。リング部材 は，軸方向一端に外方に拡がった端板部を一体に有する内側部材と，前記端板部 と重合するリング状の底部を軸方向一端に一体に有するとともに前記内側部材に 軸を揃えて機械的に接続される外側部材とを備えている。

【００１８】 従って，リング部材は，内側部材と外側部材とを別体に夫々成形して，端板部 と底部とを合わせて同心に接合することで容易に形成される。

【００１９】 また，本考案のリング部材において，前記外側部材には，前記端板部よりも外 径の大なる大径部と，前記端板部の外径の小さくなる小径部と，これらを間に設 けられた段差部とを深絞りによって外側筒部を形成することで，接合に溶接を用 いないでも簡単に製造することができる。

【００２０】

【実施例】

以下，本考案の実施例を図面を参照して説明する。

【００２１】 図１は本考案の実施例に係る電磁クラッチを示す斜視図である。図１で示すよ うに，本考案の実施例に係る電磁クラッチは，電磁石２を構成するリング部材１ が異なる他は，図４で示す従来の電磁クラッチと同様の構成を有する。

【００２２】 図２は，図１の電磁クラッチの電磁石２を構成するリング部材を示す断面図で ある。図２で示すように，リング部材１の外側部材１０は円筒からなる外側筒部 １１とこの外側筒部１１の一端に，中心軸に向かって延びた円環板状の底部１２ を有する。一方，内側部材２０は，円筒状の内側筒部２１と，この内側筒部２１ の一端に，外方に向かって延びた円環板状の端板部２２とを有する。端板部２２ は，外側部材１０の底部１２に内側から重ね合わされて，例えば，ろう付け等の 機械的によって接続されているる。

【００２３】 図２で示すリング部材を製造するには，図５で示した従来と同様で，板厚２ｍ ｍ程度のブランクを用意し，ブランクの外周部を深絞り加工して外側部１０を形 成する。また，内側部材２０は，同様な板厚２ｍｍ程度のブランクの内周面を深 絞り加工して形成している。この内側部材２０の端板部２２は，外側部材１０の 底部１２に内側から，内側筒部２１と外側筒部１１とが同心状に重ね合わされて ，電気抵抗溶接によって接合される。

【００２４】 このように形成した，本考案の実施例に係るリング部材１は，Ｌ字状断面を有 する外側部材１０と内側部材２０とを同心状に組み合わせ，結合したものであり ，外側筒部１１と内側筒部２１とは夫々別々に形成されるため，従来例のような 寸法上の制約はない。しかも両部材１０，２０とも，内外側筒部と底部とは均一 な厚みに形成できるので，従来構造のように内外側筒部から底部にかけて極端肉 厚変化は発生しない。従って，両筒部の寸法精度を向上できると共に金型寿命を 向上させることができる。また，底部は両部材を重ね合わせることにより構成し ているので，必要十分な肉厚を確保することができ，組み立てられる電磁石の磁 気特性を損なうことはない。更に，この例では，結合方法は，溶接であるが，同 じ板厚同士の溶接のため，均一な溶着部が得られ，溶接強度を向上することがで きる。

【００２５】 図３は，本考案の他の実施例に係るリング部材を示す断面図である。図示のよ うに，本考案の他の実施例に係るリング部材は，図１で示したものと同様に形成 された外側部材１０及び内側部材２０を用い，両部材１０及び２０を結合後，外 側部材の外側筒部１１をすぼめることにより，端板部２２よりも径の大きな大径 部１３と，径の小さい小径部１５とこれらの間に設けられた段差部１４を形成し ている。このような構成によれば，更に外側筒部１１の径Ｄ４の多様化を容易に し，例えば，小型化クラッチに適用することができる。図３で示すリング部材１ を製造するには，外側部材１０は，前述したように，ブランクの外周部を深絞り 加工して形成されている。また，内側部材２０は，ブランクの内周面を深絞り加 工して形成している。これら外側部材１０と内側部材２０とをかしめ，切削加工 してリング部材１を形成している。また，図３では，内側部材２０の端板部２２ は，外側部材１０の底部１２と外側筒部１１の段差部１３とに挟持され，強固な 結合を可能にしている。従って，溶接工程を削除することができるが，溶接を行 うと更に強固に接続することができる。

【００２６】

【考案の効果】

以上，説明したように，本考案によれば，薄板素材（２ｍｍ程度）を使用し， 材料費低減を図るとともに，従来加工法では不可欠であったボンデ処理を必要と しないので，順送型トランスファープレス工程にて製作可能であり，コストダウ ン，自動化及び大幅な生産性向上を達成できるリング部材とそれをもちいた電磁 クラッチを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例に係る電磁クラッチを示す断面
図である。

【図２】図１の電磁石に用いられるリング部材を示す断
面図である。

【図３】本考案の他の実施例に係る電磁クラッチのリン
グ部材を示す断面図である。

【図４】従来例に係る電磁クラッチを示す断面図であ
る。

【図５】図４の電磁クラッチのリング部材の一例を示す
断面図である。

【図６】図５のリング部材の組み立て工程を示す断面図
である。

【符号の説明】

１ リング部材 ２ 電磁石 １０ 外側部材 １１ 外側筒部 １２ 底部 １３ 大径部 １４ 段差部 １５ 小径部 ２０ 内側部材 ２１ 内側筒部 ２２ 端板部 ５０ リング部材 ５１ リング本体 ５２ 収容空間 ５３ 外側筒部 ５４ 内側筒部 ５５ 底部 ６１ カバー ７０ ブランク １００ ハウジング １０２ ベアリング １１０ ロータ １１１，１１２ 溝 １１３ フランジ部 １２０ 電磁石 １２１ 電磁コイル １３０ アーマチュア １３１ バネ板 １３３ ストッパー １３６，１５１ リベット １４０ 主軸 １５０ ハブ

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 電磁コイルを収容するためのリング状溝
   を有した電磁石用リング部材において，外側筒部と該外
   側筒部の筒軸方向一端から径方向内側にのびた底部とを
   一体に有する外側部材，及び前記外側筒部の内側に前記
   リング状溝となる間隔を残して同心的に配されかつ前記
   底部に機械的に接続された内側筒部を有する内側部材を
   備えたことを特徴とする電磁石用リング部材。
2. 【請求項２】 前記内側部材は，前記内側筒部の筒軸方
   向一端から前記底部に沿って径方向外側にのびかつ前記
   底部に機械的に接続された端板部を前記内側筒部と一体
   に有していることを特徴とする請求項１記載の電磁石用
   リング部材。
3. 【請求項３】 前記外側筒部は，前記端板部よりも外径
   の大きい大径部と外径の小さい小径部とこれらの間の段
   差部とを有していることを特徴とする請求項２又は３記
   載の電磁石用リング部材。
4. 【請求項４】 回転駆動されるロータと前記ロータに対
   向したアーマチュアと前記アーマチュアを前記ロータに
   吸着させるための電磁石とを備えた電磁クラッチにおい
   て，前記電磁石は，請求項１又は２又は３記載のリング
   部材と，前記リング部材の前記リング状溝内に収容され
   た電磁コイルとを備えていることを特徴とする電磁クラ
   ッチ。