JP2001041264A - 電磁クラッチ用ロータの製造方法 - Google Patents

電磁クラッチ用ロータの製造方法

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JP2001041264A
JP2001041264A JP11212443A JP21244399A JP2001041264A JP 2001041264 A JP2001041264 A JP 2001041264A JP 11212443 A JP11212443 A JP 11212443A JP 21244399 A JP21244399 A JP 21244399A JP 2001041264 A JP2001041264 A JP 2001041264A
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Kame Kobayashi
亀 小林
Yasuo Tabuchi
泰生 田渕
Seiji Utsunomiya
誠治 宇都宮
Michihiro Tanabe
満弘 田邊
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 比較的小型のプレス機によって、少なくとも
内壁の肉厚或いは高さを十分に大きくし得る電磁クラッ
チ用のロータを製造する方法を提供すること。 【解決手段】 本発明の製造方法は、円板状の金属材料
を素材とするプレス加工により、環状の底壁10と少な
くとも円筒形の内壁8とを有する電磁クラッチ用のロー
タ3を製造するもので、円板形の素材をカップ状に成形
して立ち上がり部を形成する絞り工程と、立ち上がり部
を外周側から絞ってそれに含まれる材料を中心部へ移動
させる縮径工程と、縮径した立ち上がり部を円筒形の内
壁8に整形するバーリング工程とを含んでいる。縮径工
程によって材料を中心部へ集めるので中心部でも材料が
不足することがなく、内壁8の肉厚や高さを十分に確保
することができ、磁束量の増加を可能とするので高い磁
気吸引力が得られる。また、大型で強力なプレス機を必
要としないので加工のコストが低減する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁クラッチに使
用される環状のロータの製造方法に係り、主に、板状の
磁性材料をプレス加工する工程に特徴を有するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】電磁クラッチのロータのように、中心部
に穴がある環状の底壁と、その内周側及び外周側から立
ち上がっている環状の内壁及び外壁からなるものを、円
板形の金属素材から通常のプレス加工によって成形する
場合には、素材の中心部において材料が不足するため
に、内壁の肉厚を素材の肉厚よりも厚くすることが困難
になるか、或いは内壁の高さを高くすることが困難にな
る。
【0003】電磁クラッチ用ロータの製造方法に関する
ものではないが、カップ状部材の塑性加工方法が特開平
4−258337号公報に記載されている。この方法
は、縦壁部の肉厚が底壁の肉厚よりも大きいカップ状部
材を塑性加工によって成形するために、対向して配置さ
れ成形部の外周寸法の異なる小径押圧工具と大径押圧工
具とを使用して、小径押圧工具よりも大径の厚い板状素
材を、板状素材の外周部を残して底壁となる部分を据え
込み成形し、外周部の肉厚を底壁の肉厚よりも大とする
と共に、小径押圧工具と大径押圧工具の成形部の面積の
違いにより板状素材の外周部を小径押圧工具側へ立ち上
げる予備絞りを行う据え込み工程と、この据え込み工程
により得られた中間成形品を絞り成形し、板状素材の外
周部により形成される縦壁部の肉厚が底壁の肉厚よりも
大きいカップ状部材を得る絞り工程とから構成されてい
る。
【0004】この従来技術においては、厚い板状素材の
うちで底壁となる部分を据え込み加工によって薄肉化
し、次いで絞り加工を施すことによって、相対的に縦壁
部の肉厚が底壁の肉厚よりも厚いカップを成形する点を
特徴としている。しかしながら、このような据え込み加
工は、大きな面積を有する厚い平板に対して工具を強い
力によって圧下することによって、中心部の肉厚を周辺
部の肉厚よりも相対的に薄くするものであるから、肉厚
を減少させるために工具に非常に高い荷重を加える必要
があるので、大型で強力なプレス機を含む大規模な設備
を使用しなければならず、それによって加工のコストが
高くなるという問題を伴う。
【0005】それにもかかわらず、電磁クラッチのロー
タにおいて強い磁気吸引力を発生させるためには、内壁
及び外壁の肉厚を十分に確保して、それらの部分を通過
する磁束量を増加させる必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術に
おける前述のような問題に対処して、大型で強力なプレ
ス機を使用することなく、通常のプレス機によっても容
易に加工を行うことができる絞り加工等によって電磁ク
ラッチ用のロータを成形し、少なくとも内壁の肉厚或い
は高さを十分に確保することができるような、改良され
たロータの製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記の課題を
解決するために特許請求の範囲の請求項1に記載された
電磁クラッチ用ロータの製造方法を提供する。
【0008】本発明によれば、プレス成形の工程におい
て、円板状の金属材料からなる素材を絞ってカップ状に
成形して立ち上がり部を形成した後に、本発明の特徴と
する縮径工程として立ち上がり部を外周側から絞って、
立ち上がり部に含まれる材料を中心部に向かって移動さ
せるので、材料の量が不足しがちな中心部へ材料を補給
することができる結果、電磁クラッチ用ロータの内壁の
肉厚を十分に厚くして、高い磁束量を確保することがで
きる。また、同じ理由から必要な場合に内壁の高さを十
分に高くすることもできる。それによって、電磁クラッ
チの磁気吸引力の強さ、従って、伝達し得るトルクの大
きさ等の性能を従来よりも高めることが可能になる。な
お、絞り工程によって立ち上がり部を形成するときに
も、外周側から中心部に向って材料を移動させることが
好ましい。
【0009】しかも、本発明の方法において行われるプ
レス加工は、従来技術における厚い金属板を押圧して素
材の中心部を薄肉とする据え込み工程のように、工具に
非常に大きな荷重を作用させるために大型で強力なプレ
ス機を必要とするというようなことがなく、比較的小型
のプレス機による簡単な絞り加工によって実行すること
ができるので、加工コストを著しく低減させることが可
能になる。
【0010】本発明の製造方法において特徴とする立ち
上がり部に対する縮径工程は、ダイのような工具を内径
の異なるものと交換しながら漸進的に2回以上繰り返し
て実施することにより、工程数は増えるものの、無理な
く大量の材料を中心部へ移動させることができるので、
本発明の前述のような効果が更に助長される。
【0011】本発明のロータの製造方法においては、素
材の中心部の立ち上がり部をロータの内壁の形状に近づ
けるために、縮径工程に先立って、或いは少なくとも1
回の縮径工程の後に、立ち上がり部の中心部に穴を形成
する穴抜き工程を実行することができる。それによって
穴が形成された立ち上がり部は、穴と共に拡径されて電
磁クラッチのロータの内壁を形成することになる。
【0012】縮径工程、或いはその後のバーリング工程
においては、円板状の素材の周辺部をストッパ、例えば
開口部を有するストッパの開口面によって受け止めて、
素材が半径方向に拡径するのを阻止することが望まし
い。それによって材料が中心部への方向とは反対に周辺
部に向かって流れるのを防止して、中心部の材料量を増
加させることができる。ストッパを多段階の工程にわた
って使用する場合で、しかも、それらの工程の間で中間
成形品を1つのストッパから他のストッパへ移転させる
必要がある場合には、後段のストッパの開口径を前段の
ストッパのそれよりも大きくすることによって、中間成
形品の移転を容易にすることができる。また、使用する
ストッパの例えば開口部に、成形後のワークを抜き易く
するための抜き勾配を設けることが望ましい。
【0013】本発明においては、更に縁絞り工程を付加
することによって、中心部の円筒形の内壁の周囲に形成
される環状の底壁の更に外周側の素材を絞って、底壁の
外周側から内壁と同心円をなすように立ち上がる円筒形
の外壁を形成することができる。それによって内壁のみ
ならず外壁をも一体化したロータを製造することができ
るので、外壁を別体として構成したものに比べて磁路の
磁気抵抗が減少して、より強力な電磁クラッチを製造す
ることができる。
【0014】本発明においては、環状の襞を有する環状
の底壁の内側に非磁性材料を接合すると共に、環状の底
壁の外側の底面を切削して、環状の底壁の内側に接合さ
れた非磁性材料の一部を露出させることにより、ロータ
の摩擦面を形成するのと同時に磁気遮断部を形成するこ
とができる。磁気遮断部を形成することによって磁束が
摩擦面を何回も横断することになるので、ロータの磁気
吸引力を増加させることができる。
【0015】本発明の方法においては多段階にわたって
プレス加工を行うので、それらのプレス工程をまとめて
1基ないし少数のトランスファープレス機によって実施
するようにすれば、同時に多段階のプレス加工を実行し
て、加工のための設備をより簡素なものにすることがで
きる。
【0016】
【発明の実施の形態】図1に、本発明の製造方法によっ
て製造することができるロータを備えている電磁クラッ
チの断面構造を例示する。この電磁クラッチ1は、図示
しない自動車用のエンジンから車両空調装置用の冷媒圧
縮機へ伝達される回転駆動力を断続するために設けられ
るもので、エンジンによって回転駆動されるプーリ2を
外周側に一体的に取り付けられたロータ3と、ロータ3
に向かって摩擦係合し得るアーマチュア4を備えている
回転被動体5と、通電されることによって磁力を発生し
てアーマチュア4を吸引することによりそれをロータ3
に摩擦係合させる電磁コイル6等から構成されている。
電磁コイル6は合成樹脂製のステータ6bの内部に固定
されており、ステータ6b自体は円板状のステー6cを
介して圧縮機のハウジングHに固定されている。
【0017】プーリ2はロータ3の外周に溶接等の方法
によって一体化されており、図示しない多条Vベルトが
それに巻き掛けられる。ロータ3はその内周のベアリン
グ7を介して回転自由に支持されており、ベアリング7
の内周は圧縮機のハウジングHによって支持されてい
る。ロータ3は低炭素鋼のような磁性を有する金属材料
からなる板材を後述のようにプレス機によって加工した
ものを骨格として、更に他の工程を加えて製造されるも
ので、電磁コイル6の内周側に位置する環状の内壁8
と、電磁コイル6の外周側に位置する環状の外壁9と、
アーマチュア4に対して摩擦係合し得る環状の底壁10
とからなり、全体も環状となっているが、部分的な半径
方向断面の形状はU字形となっている。
【0018】なお、図示実施例では内壁8、外壁9、及
び底壁10が全て一体となって前述のように部分的断面
がU字形を呈しているが、本発明の製造方法の対象とす
る電磁クラッチ用ロータは、少なくとも内壁8と底壁1
0が一体となっていて部分的断面がL字形のものであれ
ば、外壁9は必ずしも始めからそれらと一体化されてい
る必要はなく、外壁9を別体のものとして製作して、組
み立ての際にそれらを一体化することにより、一連の磁
路を形成するようにしてもよい。
【0019】底壁10は低炭素鋼のような単一の磁性材
料のみからなるものではなく、磁性材料からなる磁性体
部11と、この磁性体部11の内周側及び外周側の部分
に一体化された非磁性材料からなる磁気遮断部12a,
12bとを備えている。磁性体部11の特に電磁コイル
6が設けられている側の面の断面形は、図2に明示する
ように概ね円弧状に形成されている。
【0020】環状の磁気遮断部12a,12bは銅のよ
うな非磁性の金属材料からなり、いずれも磁性材料から
なる内壁8と底壁10の磁性体部11、磁性体部11と
外壁9をそれぞれ一体的に接続している。磁気遮断部1
2a,12bは、それら内壁8と磁性体部11の間、及
び磁性体部11と外壁9の間に直接に磁路が形成される
のを阻止して、図1の中に鎖線αによって示したよう
に、磁束がロータ3の摩擦面10aとアーマチュア4の
摩擦面4aとの間の摩擦係合面を何回も繰り返して横切
って通過するようにさせるためのものである。それらの
磁気遮断部12a,12bに加えて、底壁10の摩擦面
10aの外周側には環状の溝が形成されていて、その溝
の中に、アーマチュア4との係合力を高めるために磁気
遮断部12a,12bと同様な作用をする非磁性の環状
の摩擦材13が嵌め込まれている。
【0021】電磁コイル6が電気的に付勢されていない
状態において、アーマチュア4はロータ3の摩擦面10
aに対して所定の大きさの間隙を置いて対向して、非係
合の状態で支持されている。ロータ3に対して摩擦係合
し得る摩擦面4aを備えているアーマチュア4は、低炭
素鋼等の磁性を有する金属材料を環状に成形したもの
で、内周側と外周側との間の半径方向の中間部にスリッ
ト状の複数個の磁気遮断溝14が円弧状に形成されてい
る。なお、スリット状の磁気遮断溝14に代えて多数の
円形の磁気遮断穴を略同一円周上に形成してもよい。こ
のような磁気遮断溝14等は、ロータ3の磁性材料から
なる環状の磁性体部11の内周側と外周側との間の半径
方向の中間部分に対向している。
【0022】回転被動体5は、電磁コイル6が電気的に
付勢されてアーマチュア4がロータ3の方へ吸引され、
アーマチュア4の摩擦面4aがロータ3の摩擦面10a
と摩擦係合したときに、プーリ2、ロータ3及びアーマ
チュア4の回転を受けて一体的に回転し、図示しない冷
媒圧縮機の入力軸を回転駆動するもので、アーマチュア
4にリベット15によって固定されたアウターリング1
6、アーマチュア4の回転軸方向の変位を許容するクッ
ションゴム17、入力軸に嵌合されるインナーハブ18
等からなり、アウターリング16とインナーハブ18は
クッションゴム17を介して弾力的に結合されている。
【0023】本発明の電磁クラッチ用ロータの製造方法
は、図示実施例の電磁クラッチ1のようなものに使用す
るために、環状の磁性材料の間に形成された非磁性材料
からなる磁気遮断部12a,12bを有すると共に、全
体が環状で部分的にはU字形或いはL字形断面を呈する
ロータ3を製造するための好適な方法を提供するもので
ある。その製造方法のうちで、まず、本発明の最大の特
徴とする工程(d)及び(e)を含んでいる図3の
(a)から(f)までの各図を用いて詳細に説明するこ
とにする。
【0024】(a)例えば低炭素鋼のような磁性を有す
る金属材料からなる板材をプレス機による打ち抜き加工
によって円板形に打ち抜いて、出発材料のワークとして
の円板材19aを用意する。
【0025】(b)ワークである円板材19aの周辺部
の上下両面を環状のダイ20と環状のクッション21の
間に軽く挟持すると共に、上昇するパンチ22によって
円板材19aの中心部を突き上げることにより、ワーク
19aを塑性変形させてカップ形状のワーク19bを形
成する。この工程はプレス機による通常の絞り加工と同
様なものである。このときの絞り加工により、ワーク1
9aの外周部から中心部へ向って材料が移動する。
【0026】(c)カップ形状のワーク19bの下面を
別の環状のダイ23によって支持しながら、下降するパ
ンチ24によって中心部を打ち抜いて、中心部に円形の
穴25を有するカップ形状のワーク19cを形成する。
これもプレス機による通常の穴抜き加工と同様なもので
ある。
【0027】(d)穴25を有するカップ形状のワーク
19cを環状のストッパ26内に嵌め込むと共に、下面
を円形のノックアウト27によって支持しながら、環状
のダイ28を下降させて第1回の縮径加工を行うことに
より、中心に縮径された立ち上がり部29aを有するワ
ーク19dを得る。ここで使用されるダイ28の開口径
は、先の工程(b)において使用したダイ20の開口径
よりも小さい。なお、後述の工程(f)が終了した後に
ノックアウト27を上昇させてストッパ26からワーク
を抜き取る際に、そのワークが抜け易くなるように、ス
トッパ26の開口面には抜き勾配θ(例.約4°)が形
成されている。
【0028】(e)ここでは前工程(d)において使用
したダイ28の開口径よりも更に小さい開口径を有する
ダイ30をワーク19dの立ち上がり部29aの周りに
嵌合させると共に、それを圧下して第2回目の縮径加工
を行うことにより、中心に一層縮径された立ち上がり部
29bを有するワーク19eを得る。縮径加工は更に繰
り返して3回以上行ってもよい。本発明の最大の特徴
は、このようなプレス機による絞り加工に属する縮径加
工を少なくとも1回、或いは必要に応じてダイを28か
ら30のように徐々に小径のものに替えながら漸進的に
複数回繰り返して行うことにより、ワークの周辺部の金
属材料を中心部に向かって流動させて、ワークの中心部
に十分な肉厚と十分な高さを有する立ち上がり部29b
を形成することにある。
【0029】もしこの処理を行わない場合は、もともと
材料の量が少ないワークの中心部では立ち上がり部29
bの肉厚が減少するために、ロータ3の内壁8に十分な
肉厚が得られないので、十分に大きな磁束量が得られな
い結果、ロータ3とアーマチュア4の間に強力な磁気吸
引力を発生させることができないし、円筒形部分32の
高さを十分に高くすることもできない。また、円筒形部
分32の肉厚が減少するとロータ3の内壁8の機械的な
強度が低下するとか、加工の際に割れが入る可能性が高
くなるという問題も発生する。
【0030】この点について更に詳細に説明する。例え
ば、穴抜き後のワーク19cの中心部に存在する材料の
量(Va)を超える量(Vb)の材料によって立ち上が
り部29aの29bを形成することができないのは当然
のことであるし、また、材質がSPCC等の低炭素鋼の
場合、ワークの打ち抜き穴25の径φAに対して、内壁
8の外径φBが2倍以上となるように塑性加工しようと
すると、加工の際に割れが生じる。
【0031】これに対して、図示実施例では、上述のよ
うに絞り加工の工程と縮径工程とにより、ワークの周辺
部の金属材料を中心部に向かって流動させている。この
ため、上記の条件に制約されることなく、内壁8を形成
することができる。
【0032】図7(a)(b)は後述の工程によって得
られるプレス成形品19の具体的な寸法を例示してい
る。プレス成形品19の各部の寸法は図示の通りである
が、内壁8の体積Vbは Vb=(554/16)・πt3 であるのに対し、ワーク中心部の材料の体積Vaは Va=(318/16)・πt3 である。すなわち、材料の中心部への流動により、内壁
8の薄肉化や割れを生ずることがなく、しかも、ワーク
中心部の材料の体積Va以上の量の体積Vbを持つ内壁
8を形成することができるのである。なお、図7に示す
例では、打ち抜かれる穴の径B/2に対して、内壁8の
外径Bは2倍に設定されている。
【0033】縮径加工(d)又は(e)を実施すると、
立ち上がり部29a又は29bの基部に接続する円形の
素材の周辺部の外径も若干拡径するので、それを阻止す
るためにストッパ26を設けると共に、その段階の加工
が終わった後にワークを抜き易くするために、ストッパ
26の開口面には前述のように抜き勾配θを形成してい
るが、図3に示した実施例において工程(d)に続いて
工程(e)を行うというように縮径加工を複数回繰り返
して行う場合には、工程(d)のストッパ26及びノッ
クアウト27から工程(e)のそれらへワーク19dを
移動させる場合が生じる。その場合に、工程(d)によ
って成形されたワーク19dを次の工程(e)のストッ
パ26内へ円滑に挿入し得るように、工程(e)のスト
ッパ26の内径を工程(d)のそれよりも若干大きくし
ておくのがよい。これは、更に次の工程(f)への移行
のためにも言えることである。
【0034】(f)縮径加工(d)、(e)が終わった
後に、バーリング加工として、ワーク19eの立ち上が
り部29bの中へパンチ31を圧入、上昇させて、パン
チ31とダイ30の開口の内面30aとの間で立ち上が
り部29bを整形することにより、円筒形部分32を有
するワーク19fを得る。
【0035】本発明の電磁クラッチ用ロータの製造方法
においては、後述のものを含めて、ロータ3を製造する
ための工程の大部分を占めるプレス加工が、プレス機を
使用する打ち抜き加工、絞り加工、縮径加工、バーリン
グ加工、曲げ加工等の比較的軽度の塑性加工ばかりであ
って、板材の厚さを減少させる据え込み加工のように、
大型で強力なプレス機を必要とする強度の塑性加工は皆
無である。従って、本発明によるロータの製造方法は、
比較的に小型の通常のプレス機によって容易に加工を行
うことができるという大きな利点を有している。
【0036】但し、本発明の方法によれば、少しずつ形
状の異なる複数個のダイやパンチ等の工具を使用して多
段階の工程を順次に実行する必要があるが、この点も、
例えばトランスファープレス機を使用し、その一対の固
定部分と可動部分の間に複数個のダイやパンチ等の工具
を順次に並べて取り付けて、プレス機の1回の行程にお
いていずれか1組の工具によって加工された中間段階の
ワークを、ロボットアーム等を使用して隣接する他の工
具の組へ移動させて、同じプレス機の次の行程において
そのワークに次の段階の加工を行うようにすれば、単一
のトランスファープレス機によって同時に複数の工程を
実行して、一端側からワークを供給すると共に、他端側
から全てのプレス加工が終わった製品を取り出すように
構成することもできる。従って、多数のプレス機を使用
しなくても、単一のトランスファープレス機によって同
時に全てのプレス加工を完了することができるので、工
程数が多いという点も特に問題にはならない。
【0037】このように、本発明の電磁クラッチ用ロー
タの製造方法は、その大部分がプレス加工となってお
り、とりわけその特徴部分は図3の(d)及び(e)に
示された縮径加工を行うことにあるが、以下、工程
(f)に続くプレス機による成形工程の残りの部分につ
いて説明する。図4は本発明の製造方法の実施例におい
て、プレス機による成形加工の全工程における中間的な
成形品としてのワークを順次示したもので、(a)〜
(f)の成形品は前述の図3に示した(a)〜(f)の
工程の成形品と同じものであるから、これらについての
説明は省略する。
【0038】図3(a)〜(f)に示した工程によって
得られる中間成形品としてのワーク19fは中心部から
立ち上がる円筒形部分32を備えていて、この円筒形部
分32が最後にロータ3の内壁8を形成することになる
が、ワーク19fはその外に周辺部へ拡開するフランジ
部分33をも備えている。フランジ部分33が次の工程
において環状の襞を成形するプレス加工を受けることに
より、図4の(g)に示すような襞34と比較的に幅の
狭いフランジ部分36を備えたワーク19gが形成され
る。
【0039】次の工程において、ワーク19gのロータ
3の内壁8となる円筒形部分32が円周側から半径方向
に圧縮されることによって円筒形部分32が整形され、
図4の(h)に示すような断面形状を有するワーク19
hが形成される。
【0040】ワーク19hのフランジ部分36が、プレ
ス機による次の縁絞り工程において中心部の円筒形部分
32と同じ方向に折り曲げられることにより、ロータ3
の外壁9となる部分の原形としての概ね円筒形の立ち上
がり部37を備えているワーク19iが得られる。但
し、目的のロータの部分的断面形がL字形であって外壁
9を底壁10と一体のものとして製作しない場合には、
このような工程は不必要であるから、前段階の工程によ
るワーク19hのフランジ部分36の幅が狭いものが最
終的なプレス成形品となる。
【0041】図示実施例のようにロータ3の底壁10に
対して外壁9を一体的に形成する場合には、ワーク19
iの立ち上がり部37を更にプレス機によって整形する
ことによって、最終的にロータ3の外壁9の形状により
近い形状の立ち上がり部38を備えているプレス成形品
19が得られるので、以上でプレス機によるロータ3の
成形加工の全工程を終了する。
【0042】このようにしてプレス加工の最終的な製品
としてのプレス成形品19が形成されると、こんどはプ
レス成形品19をワークとして次の接合工程に移る。接
合工程においては、プレス成形品19の底壁10内に、
例えば銅のような、プレス成形品19の素材である低炭
素鋼等の磁性材料よりも融点の低い非磁性の金属材料か
らなる環状の非磁性材39を置き、それをプレス成形品
19と共に加熱する。それによって銅のような非磁性材
39が溶融し、底壁10の襞34の環状の突出部40の
内外両側に形成された環状の溝41a,41bへ流れ込
む。そして溶融した銅のような非磁性材料が冷却されて
固化するときに、低炭素鋼のような磁性材料からなるプ
レス成形品19の底壁10の内面に強固に拡散結合す
る。
【0043】非磁性材39の素材としては、銅の他に、
銅に対して錫を5%程度混入させた青銅を使用すること
もできる。また、環状の非磁性材39の代わりに、粒状
や粉状の非磁性金属材料を使用してもよい。なお、この
接合工程は、例えば窒素のような不活性ガスの雰囲気内
において行うことが、熱による金属材料の酸化を防止す
るという点から言って望ましい。
【0044】接合工程において、図5に示すような非磁
性材を融着された後のプレス成形品19は、次の切削工
程において図6に示すように不要な部分を削り落とされ
る。それによって最終的な形状のロータ3が得られる。
切削工程において切削される不要な部分は、図6におい
て鎖線によって例示したプレス成形品19の輪郭と、実
線によって例示したロータ3の輪郭との差の部分であ
る。それによって、ロータ3の底壁10には平坦な摩擦
面10aが形成されるだけでなく、底壁10の磁性材料
が環状の磁性体部11を残して削り落とされて半径方向
には不連続となり、その間に非磁性材料の一部が摩擦面
10aに環状に露出する結果、ロータ3の底壁10に環
状の磁気遮断部12a,12bが形成される。また、円
筒形部分32及び立ち上がり部38は表面が整形されて
完全な円筒面からなる内壁8及び外壁9となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法によって製造されるロータを備え
ている電磁クラッチの構造を例示する縦断正面図であ
る。
【図2】図1におけるロータのみを取り出してその構造
を示す縦断正面図である。
【図3】(a)〜(f)は、本発明のロータの製造方法
の要部となる各工程を順次に例示する断面図である。
【図4】(a)〜(j)は、本発明のロータの製造方法
における多段階のプレス加工の中間成形品を順次に例示
する断面図である。
【図5】本発明のロータの製造方法における非磁性材料
の接合工程を示す部分的な断面図である。
【図6】本発明のロータの製造方法における切削工程を
示す部分的な断面図である。
【図7】(a)はワークの具体的な寸法を例示する断面
図、(b)は本発明の特徴を説明するためのワークの一
部の概念図である。
【符号の説明】
1…電磁クラッチ 3…ロータ 4…アーマチュア 8…内壁 9…外壁 10…底壁 11…磁性体部 12a,12b…磁気遮断部 13…非磁性の摩擦材 14…磁気遮断溝 19…プレス成形品 19a〜19i…中間成形品(次工程のワークピース) 20,23,28,30…ダイ 21…クッション 22,24,31…パンチ 25…中心の穴 26…ストッパ 27…ノックアウト 29a,29b…縮径された立ち上がり部 32…円筒形部分(内壁) 33,36…フランジ部分 34…環状の襞 35…縮径部 37…立ち上がり部 38…整形後の立ち上がり部(外壁) 39…非磁性材 40…突出部 41a,41b…環状の溝
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宇都宮 誠治 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 (72)発明者 田邊 満弘 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円板状の金属材料を素材として、環状の
    底壁と、少なくとも前記底壁の内周側から立ち上がる円
    筒形の内壁とを有する電磁クラッチ用のロータを製造す
    るために、前記素材をカップ状に成形して立ち上がり部
    を形成する絞り工程と、前記立ち上がり部を外周側から
    絞って前記立ち上がり部に含まれる材料を中心部に向か
    って移動させる縮径工程と、縮径した前記立ち上がり部
    を前記円筒形の内壁に整形するバーリング工程とを含ん
    でいることを特徴とする電磁クラッチ用ロータの製造方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記縮径工程を漸進
    的に2回以上実施することを特徴とする電磁クラッチ用
    ロータの製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、前記縮径工
    程に先立って、前記立ち上がり部の中心部に穴を形成す
    る穴抜き工程が挿入されていることを特徴とする電磁ク
    ラッチ用ロータの製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1または2において、少なくとも
    1回の前記縮径工程の後に、前記立ち上がり部の中心部
    に穴を形成する穴抜き工程が挿入されていることを特徴
    とする電磁クラッチ用ロータの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかにおいて、
    前記縮径工程を実施するときに、前記円板状の素材の周
    辺部が半径方向に拡径するのを阻止するためのストッパ
    を使用することを特徴とする電磁クラッチ用ロータの製
    造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかにおいて、
    前記バーリング工程を実施するときに、前記円板状の素
    材の周辺部が半径方向に拡径するのを阻止するためのス
    トッパを使用することを特徴とする電磁クラッチ用ロー
    タの製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項5又は6において、前記ストッパ
    は前記円板状の金属材料の側面に対向する円形の開口部
    を有し、前記ストッパの開口部の内径を、前段階の工程
    における前記ストッパの開口部の内径よりも大きくする
    ことを特徴とする電磁クラッチ用ロータの製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項5ないし7のいずれかにおいて、
    使用される前記ストッパがその開口部に成形後のワーク
    を抜き易くするための抜き勾配を有することを特徴とす
    る電磁クラッチ用ロータの製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれかにおいて、
    前記円筒形の内壁の基部の周囲に形成される前記環状の
    底壁の外周側の素材を絞ることにより、前記底壁の外周
    側から立ち上がる円筒形の外壁を形成する縁絞り工程が
    更に付加されていることを特徴とする電磁クラッチ用ロ
    ータの製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1ないし9のいずれかにおい
    て、前記環状の底壁に環状の襞を形成すると共に、前述
    の底壁の内側に非磁性材料を接合する接合工程が更に付
    加されていることを特徴とする電磁クラッチ用ロータの
    製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項10において、前記環状の底壁
    の外側の底面を切削して、前記環状の底壁の内側に接合
    された前記非磁性材料の一部を露出させることにより、
    摩擦面と共に磁気遮断部を形成する切削工程が更に付加
    されていることを特徴とする電磁クラッチ用ロータの製
    造方法。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし11のいずれかにおい
    て、多段階のプレス加工の工程をトランスファープレス
    機によってまとめて実施することを特徴とする電磁クラ
    ッチ用ロータの製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項1ないし11のいずれかにおい
    て、前記内壁の体積は、前記円板状の金属材料の前記内
    壁が形成されるべき位置に存在していた材料の体積より
    も大きいことを特徴とする電磁クラッチ用ロータの製造
    方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008067555A (ja) * 2006-09-08 2008-03-21 Minebea Co Ltd ロータ組立体とその製造方法
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