JPH0578164B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、各種の映像機器、音響機器、産業機
器などに使用されるスイツチング電源用トランス
に関するものである。

従来の構成とその問題点 近年、民生・産業等の分野を問わず「軽・薄・
短・小」の言葉に代表されるように、機器の小
型・軽量化の市場ニーズは大なるものがある。中
でも、電源回路に対する要求は非常に強く、従来
の大型電源トランスから、小型・軽量・高効率を
果たすべく、磁心にフエライトコアーを用いたパ
ルストランスを利用するスイツチング電源が主流
となつてきた。

以下図面を参照しながら、上述したようなスイ
ツチング電源用トランスについて説明する。

第１図は、一般的な自励式スイツチング電源回
路を示すものである。第１図において、１はパル
ストランスである。２ａ，２ｂはパルストランス
の１次巻線、３はベース巻線、４および５は２次
出力巻線を示す。６は電圧検出器であり、２次出
力電圧の変動を検知する。７は電圧制御回路、８
はスイツチングトランジスタである。フオトカプ
ラー等の電圧検出器６によつて、２次出力電圧の
変動を検出し、電圧制御回路７とパルストランス
１のベース巻線３によつて、スイツチングトラン
ジスタ８のベース電流をコントロールして、２次
出力電圧の安定化を図る構成となつている。

第２図はスイツチング電源用トランスの線輪結
線図を示すものである。スイツチング電源用トラ
ンスは、機器の仕向地によつて、例えば、日本国
内では電気用品取締法と言うように、各国の安全
規格に適合する必要がある。すなわち、１次巻線
２ａ，２ｂ、ベース巻線３と２次出力巻線４，５
の間を所定の絶縁厚み、絶縁距離を確保できるよ
うに電気的に絶縁しなければならない。第３図、
第４図、第５図は従来のスイツチング電源用トラ
ンスの断面図を示すものである。第３図におい
て、９は巻枠を示す。２は１次巻線、３はベース
巻線、１０は絶縁物、４，５は２次出力巻線、１
１はフエライトコアーを示す。１次巻線２を巻回
後、ベース巻線３を施す。ベース巻線３は１ター
ンないし10ターン程度の少巻数で構成される場合
が多く、１次巻線２の真上もしくはその近傍に巻
回されるのが一般的である。次に前述したよう
に、各国の安全規格に適合できるように、規定の
絶縁厚みを有する紙、フイルム等の絶縁物を複数
回巻回して線輪間絶縁物１０を構成する。絶縁処
理後、２次出力巻線４，５を施してトランスを構
成する。第４図は、第３図における絶縁物を廃
し、１次巻線２、ベース巻線３および２次出力巻
線４，５にそれぞれ専用の巻枠１２，１３を設け
た例である。第４図において、１２は１次巻線
２、ベース巻線３用の巻枠、１３は２次出力巻線
４，５用の巻枠、２は１次巻線、３はベース巻
線、４，５は２次出力巻線、１１はフエライトコ
アーを示すものである。１次巻線２を巻回後、ベ
ース巻線３を施す。ベース巻線３の巻回終了後、
２次出力巻線用巻枠１３を１次巻線、ベース巻線
用巻枠１２に嵌合結合して後、２次出力巻線４，
５を巻回してトランスを構成する。２次出力巻線
用巻枠１３そのものが、第３図における絶縁物１
０に相当する構成例である。第５図もトランスの
従来例である。第５図において１２は１次巻線
２、ベース巻線３用の巻枠、３はベース巻線を示
す。第５図の例では、第４図におけるベース巻線
３を、１次巻線、ベース巻線用巻枠１２いつぱい
に、均等にスペース巻（ピツチ巻）した構成のト
ランスである。

上記のような構成例では、前述のように、１次
巻線２、ベース巻線３と２次出力巻線４，５の間
に、安全規格に適合するに十分な絶縁物、いわゆ
る線輪間絶縁を施す必要があり、この線輪間絶縁
の絶縁厚みは比較的厚く、１次巻線２と２次出力
巻線４，５間の結合度を低下させる要因となる。
その結果として１次電圧波形は大きなスパイクと
リンギングを伴う形となる。また、ベース巻線３
は、特別の絶縁処理を施すことなく１次巻線２の
上側またはその近傍に位置するように巻線処理さ
れるため、ベース巻線３と１次巻線２の結合は極
めて強く、従つてベース電圧波形は１次電圧波形
に全く近似し、大きなリンギングを伴うことにな
り、このリンギングによつて異常発振を誘発し、
ついにはスイツチングトランジスタを破壊に至ら
しめる危険を有している。また、１次巻線２との
結合があまりにも強すぎるため、２次出力変動を
十分に検知できず、十分なフイードバツク機能を
有さないと言つた欠点を有するものであつた。さ
らには、ベース巻線３は一般には数ターン程度で
構成される場合が多く、巻位置の規制が困難で、
また引出しリードの処理にも難が多く、巻線、配
線の自動化を阻害する要因となるばかりでなく、
ベース巻線３のバラツキが、スイツチング電源と
しての特性、例えば電圧安定性、負荷変動特性等
のバラツキに直結すると言う大きな欠点を有する
ものであつた。

発明の目的 本発明は上記欠点に鑑み、異常発振の防止を図
るとともに、完璧な１次フイードバツク機能を有
し、安定した電気性能を供給するばかりでなく、
巻線、配線の自動化をも可能としたスイツチング
電源用トランスを提供するものである。

発明の構成 この目的を達成するために本発明のスイツチン
グ電源用トランスは、１次巻線、ベース巻線を巻
回する両端につばを有する巻枠の一部に胴体の底
面までと途中までの切り欠きによる引出しリード
案内溝を備えた中つばを設け、上記中つばによつ
て、ベース巻線専用のスリツト状巻線スペースを
確保した左右分割型の巻枠構造とし、この巻枠に
１次巻線とベース巻線を同一平面上に夫々の線輪
間の結合が比較的粗結合となるように左右分割配
置し、この１次巻線、ベース巻線上に絶縁体を介
して、２次出力巻線を巻回し、上記巻枠に磁心を
組込んで構成され、この構成によつて、１次巻線
とベース巻線を同一平面上に、夫々の線輪間の結
合が比較的粗結合となるべく左右分割配置され、
ベース巻線と１次巻線および２次出力巻線がバラ
ンスよく配置されることから異常発振の防止を図
ることができることとなる。また中つばおよび中
つばに設けた引出しリード案内溝によつて、ベー
ス巻線の位置規制が容易にできるとともにベース
巻線引出しリードの直角引出しが可能で、性能の
安定と巻線の自動化を可能にすることができる。

実施例の説明 以下本発明の一実施例について、図面を参照し
ながら説明する。

第６図は本発明の第１の実施例におけるスイツ
チング電源用トランスの断面図を示す。また第７
図は第６図の実施例における巻枠の構成例を示す
ものである。第６図において、１４は１次巻線１
５、ベース巻線１６用の巻枠であり、その一部に
１次巻線１５とベース巻線１６を分割するための
中つば１７を備えている。１８は２出力巻線１９
用の巻枠であり、１次巻線１５、ベース巻線１６
と２次出力巻線１９間の、いわゆる線輪間絶縁を
も兼ね備えた一体型成型品である。また、１５は
１次巻線、１６はベース巻線、１９は２次出力巻
線、２０はフエライトコアーを示す。

１次巻線１５、ベース巻線１６用の巻枠１４に
１次巻線１５を施した後、中つば１７によつて分
割確保されたスリツト状ベース巻線専用スペース
にベース巻線１６を施し、２次出力巻線用巻枠１
８を嵌合結合する。嵌合結合した後、２次出力巻
線１９を施しトランスコイルを構成するが、巻枠
の構成例については第７図をもつて詳細に説明す
る。第７図において１４は１次巻線、ベース巻線
用巻枠であり、上記巻枠１４には下端つば１４ａ
と中つば１７および上端つば１４ｂが備えられて
いる。また中つば１７には引出しリード案内溝１
７ａ，１７ｂが設けられている。１８は２次出力
巻線用巻枠で、方向判別突起１８ａを設けてあ
る。また、２１は巻枠１４の下端つば１４ａに植
設したピン端子である。

中つば１７は１次巻線、ベース巻線用巻枠１４
の一部に設けられ、この中つば１７によつて１次
巻線１５とベース巻線１６を左右分割配置するよ
う構成している。ベース巻線１６は通常数ターン
程度で設計される場合が多く、中つば１７と上端
つば１４ｂによつてつくられるスリツト状巻枠ス
ペースに巻回する。中つば１７には引出しリード
案内溝１７ａ，１７ｂが数個設けてあり、その一
方は、例えば案内溝１７ａは１次巻線、ベース巻
線用巻枠１４の胴体の底面まで切り欠き、ベース
巻線１６の巻始めリードの引出しを容易にできる
よう構成している。なお第７図では、中つば１７
の引出しリード案内溝の構成を分かり易くするた
め上端つばの一部を切り欠いて示している。下端
つば１４ａにはピン端子２１が植設されている。

以上のように本実施例によれば、１次巻線、ベ
ース巻線用巻枠１４の一部に中つば１７を設け、
１次巻線１５とベース巻線１６の結合度を比較的
粗結合とすることができ、ベース巻線１６と１次
巻線１５および２次出力巻線１９の結合度バラン
スを良好に保てることから、異常発振を防止する
とともに完璧な１次フイードバツク機能を果たす
ことができる。またベース巻線１６にはスリツト
状の巻線スペースを確保できることから巻線のバ
ラツキを極小にすることが可能で、スイツチング
電源用トランスとして電圧安定特性、負荷変動特
性に優れるトランスを構成することができる。さ
らにベース巻線１６の位置規制が容易にできると
ともにベース巻線１６の引出しリードの直角引出
しが可能で巻線の自動化をも可能にすることがで
きる。

以下本発明の第２の実施例について図面を参照
しながら説明する。第８図は第２の実施例におけ
るスイツチング電源用トランスの断面図である。
第８図は、第６図に示すスイツチング電源用トラ
ンスの１次巻線１５と２次出力巻線１９の結合度
をさらに高めるため、１次巻線１５を規定巻線の
１／２ずつに１５ａ，１５ｂと分割し、それぞれの
１次巻線１５ａ，１５ｂで、２次出力巻線１９を
はさみ込む、サンドイツチ巻線法を用いた三重嵌
合方式のスイツチング電源用トランスである。第
８図において１４は１次巻線、ベース巻線用巻
枠、１７は同様に分割用中つば、１８は２次出力
巻線用巻枠、２２は１次巻線用巻枠、１５ａは１
次巻線（規定巻数の1/2）、１６はベース巻線、１
９は２次出力巻線、１５ｂは１次巻線（残りの1/
２）を示す。

１次巻線（規定巻数の1/2）１５ａを巻回後、
ベース巻線１６を施し、２次出力巻線用巻枠１８
を嵌合結合する。この２次出力巻線用巻枠１８に
２次出力巻線１９を巻回し、さらに１次巻枠２２
を嵌合結合して１次巻線１５ｂ（残りの1/2）を施
してコイルを形成する。

以上のように２次出力巻線１９を１次巻線１５
ａ，１５ｂでサンドイツチする巻線法にも応用が
可能で、第２の実施例では、第１の実施例に比
し、さらに１次巻線〜２次巻線間の結合度の向上
が図れ、従つて１次電圧波形のスパイクおよびリ
ンギングの低減が可能で、ベース巻線１６と１次
巻線１５ｂの結合が粗に保てることから、第１の
実施例以上の異常発振防止効果と性能の安定を図
ることができる。

なお、第１の実施例において、第７図に示すよ
うに中つば１７は上端つば１４ｂの側に配した
が、下端つば１４ａの側に配し、中つば１７と下
端つば１４ａによつてベースを巻線専用スリツト
状の巻線スペースを確保しても良い。

発明の効果 以上のように本発明は、コイル部を構成する巻
枠の一部に、引出しリード案内溝を備えた中つば
を設け、この中つばによつて、ベース巻線専用の
スリツト状巻線スペースを確保できる左右分割型
の巻枠構造とし、１次巻線とベース巻線を同一平
面上に、夫々の線輪間の結合が比較的粗となるべ
く左右分割配置することによつて、異常発振を防
止するばかりでなく、完璧な１次フイードバツク
機能を有し、ベース巻線が中つばによつて巻線ス
ペースを確保し引出しリード案内溝によつて巻線
位置の規制が行えて巻線のバラツキを極小に抑え
て電圧安定性、負荷変動特性に優れ、引出しリー
ドも直角引出しが可能で自動巻線も可能になるな
ど、巻線、配線が容易で生産性に富んだものとす
ることができるなど産業的価値の大なるものであ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は自励式スイツチング電源回路図、第２
図はスイツチング電源用トランスの線輪結線図、
第３図は従来のスイツチング電源用トランスの断
面図、第４図は従来のスイツチング電源用トラン
スの断面図、第５図は従来のスイツチング電源用
トランスの断面図、第６図は本発明の第１の実施
例におけるスイツチング電源用トランスの断面
図、第７図は同トランスに用いる巻枠の分解斜視
図、第８図は他の実施例の断面図である。 １４……１次巻線、ベース巻線用巻枠、１５，
１５ａ，１５ｂ……１次巻線、１６……ベース巻
線、１７……中つば、１７ａ，１７ｂ……引出し
リード案内溝、１８……２次出力巻線用巻枠、１
９……２次出力巻線、２０……フエライトコア
ー、２１……ピン端子、２２……１次巻線用巻
枠。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ １次巻線、ベース巻線を巻回する両端につば
   を有する巻枠の一部に胴体の底面までと途中まで
   の切り欠きによる引出しリード案内溝を備えた中
   つばを設け、上記中つばによつて、ベース巻線専
   用のスリツト状巻線スペースを確保した左右分割
   型の巻枠構造とし、この巻枠に１次巻線とベース
   巻線を同一平面上に夫々の線輪間の結合が比較的
   粗結合となるように左右分割配置し、この１次巻
   線、ベース巻線上に絶縁体を介して、２次出力巻
   線を巻回し、上記巻枠に磁心を組込んで構成され
   るスイツチング電源用トランス。