JPH0561120A - レンチキユラーレンズシート - Google Patents

レンチキユラーレンズシート

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JPH0561120A
JPH0561120A JP3298234A JP29823491A JPH0561120A JP H0561120 A JPH0561120 A JP H0561120A JP 3298234 A JP3298234 A JP 3298234A JP 29823491 A JP29823491 A JP 29823491A JP H0561120 A JPH0561120 A JP H0561120A
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一朗 松崎
Hiroshi Kuwata
広志 桑田
Masao Otaki
正男 大滝
Ken Abe
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は透過形スクリーンに使用するレンチ
キュラーレンズシートにおいて、ピッチを極めて小さく
する場合にも安定的に製造でき、十分な視野角を確保で
きるようにすると共に、光の利用効率を向上させ明るい
映像が得られるようにする。 【構成】 本発明のレンチキュラーレンズシートは、少
なくとも出射側レンズ層が光拡散性微粒子を含有した両
面レンチキュラーレンズシートであって、出射側レンズ
層の光拡散性が強化されたものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、背面側より映像をスク
リーンに投影し、そのスクリーンを透過した映像を手前
側から観察する、いわゆる透過型プロジェクションテレ
ビジョン(以下テレビジョンをTVと略記する)に用い
られる透過型スクリーン用レンチキュラーレンズシート
に関し、特にレンチキュラーレンズのピッチ(出射側の
ブラックストライプ(光吸収層)の一周期をいう、以下
単にピッチと称する)が小さい、HDTVプロジェクタ
ーやLCDプロジェクター用レンチキュラーレンズシー
トに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、透過形プロジェクションTVに用
いられる透過形スクリーンには、視野角度を水平および
垂直に拡大するために、レンチキュラーレンズシートが
用いられている。
【0003】図6に示すように、透過形プロジェクショ
ンTVにおいては、一般に赤色、緑色、青色の3本のブ
ラウン管(CRT)9、10、11を横一列に並べて、
各CRT上の画面を投影拡大レンズ12、13、14で
拡大し、フレネルレンズ15及びレンチキュラーレンズ
16より成るスクリーン17上で結像合成する構成がと
られている。
【0004】この構成では、スクリーン中心と各投影レ
ンズ中心とを結ぶ直線のなす角度(図6中ではεとして
いる)は、通常8°以上となっており、各色の光線のス
クリーン17への入射角度は異なっている。このため、
スクリーン17を観察する位置により色調が変化した
り、スクリーン上の位置により色調が異なるというプロ
ジェクションTV特有の問題がある。前者の色調変化を
カラーシフト、後者の色調ずれが大きいことをホワイト
・ユニホーミティが悪いと呼んでいる。
【0005】カラーシフト、ホワイト・ユニホーミティ
のレベルを向上させるために、従来は、図7に示したよ
うに、入射側面にシリンドリカルレンズからなる入射側
レンズ18を形成し、出射側面にもシリンドリカルレン
ズからなる出射側レンズ19を形成し、さらに出射側面
の光の非集光部に光吸収層20を形成した両面レンチキ
ュラーレンズ16が用いられていた。
【0006】この場合、入射側レンズ18および出射側
レンズ19の形状は、通常次式(III)
【0007】
【数4】 (式中、Cは主曲率であり、Kは円錐定数である。)で
表される円、楕円、双曲線あるいは更に4次以上の高次
の項を加えた曲線となっている。
【0008】そして、このような両面レンチキュラーレ
ンズ16を用いたスクリーンにおいて、さらにカラーシ
フトを少なくするなどのために、入射側レンズ18およ
び出射側レンズ19の位置関係や形状を特定することが
提案されている。例えば、入射側レンズと出射側レンズ
の位置関係を、一方のレンズの焦点に他方のレンズ面が
存在するようにしたり(特開昭57−81254、特開
昭57−81255)、さらに入射側レンズの楕円の離
心率をレンチキュラーレンズ16の構成材料の屈折率の
逆数にほぼ等しくなるように特定したりすること(特開
昭58−59436)が提案されている。また、2枚両
面レンチキュラーレンズを組み合わせ、各レンチキュラ
ーレンズの光軸面が相互に直行するようにすること、さ
らにそのような両面レンチキュラーレンズの一方の周辺
部の入射側レンズと出射側レンズを光軸に対して非対称
に形成することも提案されている(特開昭58−108
523)。また、入射側レンズの中央部の集光特性と周
辺部の集光特性を変えること(特開平1−18283
7)も提案されている。また、明るい映像を得るため
に、入射側レンズの垂直方向の視野領域を水平方向の視
野領域に比べて小さくすることも提案されている(実公
昭52−4932)。また、入射側レンズの谷部のみ集
光位置を出射側レンズの表面より観察側に近い方へずら
すことにより、光軸ずれや厚みずれの許容を大きくした
り、カラーシフトを小さくした例もある(特開平1−1
82837)。
【0009】このように入射側レンズ18や出射側レン
ズ19の位置関係や形状を特定する方法の他に、一般的
にレンチキュラーレンズシート全体に、均一に光拡散性
微粒子(以下単に微粒子という)を分散し、水平方向の
視野角は主にレンチキュラーレンズで、垂直方向の視野
角は微粒子の拡散性により確保することがなされてい
る。
【0010】しかしながら、光拡散性微粒子をレンチキ
ュラーレンズ内に分散させることにより垂直方向の視野
角を十分に確保しようとすると、光拡散性微粒子による
光の散乱により映像がぼやけてしまうという問題があ
る。このため、レンチキュラーレンズの出射側には図9
に示したような、入射側レンズ18に対応する出射側レ
ンズ19を形成することに加えて、出射側表面に種々の
方法で細かい凹凸を形成し、これにより垂直方向の視野
角を確保することもなされている。例えば、レンチキュ
ラーレンズとほぼ等しい屈折率のビーズをレンチキュラ
ーレンズの表面に混入させること(特開昭63−163
445)、レンチキュラーレンズとほぼ等しい屈折率の
ビーズを熱可塑性樹脂フィルム材料中に混入させて表面
に細かい凹凸を形成したフィルムを形成しそのフィルム
をレンチキュラーレンズの出射側面に熱圧着すること
(特開平1−161328)、レンチキュラーレンズの
形成用金型の表面を砂擦り研磨する等によりレンチキュ
ラーレンズの出射側表面を粗面化すること(特開平3−
43724)が提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来よ
りレンチキュラーレンズについては、カラーシフトやホ
ワイト・ユニホーミティを低減させ、映像を明るくし、
水平方向および垂直方向に適度な視野を確保するために
種々の提案がなされてきた。
【0012】しかしながら、上記のいずれのレンチキュ
ラーレンズにおいても、より一層映像を明るくすること
が望まれ、また、高解像度の映像を得るためにレンチキ
ュラーレンズのレンズピッチを非常に小さく成形できる
ようにすることが望まれていた。
【0013】すなわち、前述のように、図9に示したよ
うな両面レンチキュラーレンズの入射側レンズ18およ
び出射側レンズ19の形状は式(III)で表されるが、こ
の場合に入射した光を効率よく出射させるためには、定
数Kを−2≦K≦1、好ましくは−0.8≦K≦0と
し、しかも各レンズピッチにおいて入射側レンズ18の
全幅にわたり光の集束点が出射側レンズ19上のほぼ単
一点になるように光集束性を向上させることが必要とな
る。
【0014】しかしながら、従来の両面レンチキュラー
レンズにおいて式(III)の円錐定数Kを上記の範囲と
し、しかも入射側レンズ18の全幅にわたり光の集束点
を実質的に単一にすると、水平方向で輝度が低下する視
野角度付近からスクリーンを見ると縦筋がみえるという
問題が生じる。この縦筋は、スクリーン内の各入射側レ
ンズの谷部18aの形状が各レンズにより微妙に異なる
という形状むらに起因するものである。このため、従来
の両面レンチキュラーレンズにおいては入射側レンズの
谷部18aから入射する光が出射側レンズ面にて全反射
し、出射側レンズから出射しにくくなるように入射側レ
ンズの谷部18aの形状を制御していた。したがって、
光の利用効率が低下していた。
【0015】また、一般に、両面レンチキュラーレンズ
においては、水平方向の視野角は、入射側レンズの形状
とレンチキュラーレンズの厚みによりほぼ決定される
が、ここで水平方向の半値視野角を通常のスクリーンで
必要とされる±37°以上とすると、入射側レンズによ
る光集光点はほぼ出射側レンズの表面付近となっている
ことから、両面レンチキュラーレンズの厚みは入射側レ
ンズのピッチの1.1〜1.3倍以下としなければなら
ない。一方、解像度の優れたHDTV仕様のプロジェク
ションTVにおいては、水平解像度のスクリーンによる
低下を防ぐために、レンチキュラーレンズのピッチを非
常に小さく、例えば約0.6mm以下に、設定することが
要求される。従って、ピッチ0.6mm以下で、水平方向
の半値視野角37°以上を確保するためには、レンチキ
ュラーレンズの厚みは、0.78mm以下という薄いもの
にすることが必要とされる。さらに、LCDプロジェク
ターにおいては、液晶パネルの各画素の光非透過部(暗
部)が大きいため、各画素の配列とレンチキュラーレン
ズシートとの配列でモアレを生じやすいが、このような
モアレを防止するためにはレンチキュラーレンズのピッ
チはより一層小さく、例えば約0.3mm以下とすること
が望まれ、従ってこの場合のレンチキュラーレンズの厚
みはより一層薄くすることが必要とされる。
【0016】しかしながら、現在のレンチキュラーレン
ズシートの最も効率的な量産方法である押出し成形法に
おいて、厚み0.78mm以下でレンチキュラーレンズを
製造するのは成形自体が困難であり、そのような成形物
が得られた場合でも割れやすいという問題点がある。
【0017】一方、押出し成形を安定して行うことがで
きるのは厚み約0.9mm以上とされているが、その厚み
でピッチを0.6mm以下とすると、水平方向の半値視野
角37°以上でカラーシフトの少ないレンチキュラーレ
ンズは得られない。そこで、上記のような厚み約0.9
mm以上及びピッチ0.6mm以下のレンチキュラーレンズ
において、レンズによる水平視野角をやや小さめにし、
その分の水平視野角を光拡散性微粒子による光拡散性に
より大きくすることが考えられる。しかし、このように
光拡散性微粒子を使用すると一般的にはカラーシフトは
低下する傾向にあるものの、レンチキュラーレンズ内部
での光拡散性が増大し、出射側レンズに到達する光量が
減少するため、光の利用効率が低下するという別の問題
点が発生してくる。
【0018】本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、
透過型スクリーンに使用するレンチキュラーレンズにお
いて、ピッチをきわめて小さく、例えば0.6mm以下の
ような領域にする場合でも安定して製造でき、しかも水
平視野角を十分に確保すると共にカラーシフトを少なく
し、光の利用効率を向上させて明るい映像が得られるよ
うにすることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記目的は、次の本発明
により達成することができる。すなわち、本発明のレン
チキュラーレンズシートは、複数の入射側レンズを有す
る入射側レンズ層と、入射側レンズによる光集光点また
はその近傍にレンズ面が形成された複数の出射側レンズ
を有する出射側レンズ層とを有する両面レンチキュラー
レンズシートにおいて、該入射側レンズ層と出射側レン
ズ層とが実質的に透明な熱可塑性樹脂から形成され、さ
らに少なくとも出射側レンズ層には光拡散性微粒子が含
有され、次式(I)および(II) t1 >t2 >0 式(I)
【0020】
【数5】 (式中、t1 は入射側レンズ層の厚さ、t2 は出射側レ
ンズ層の厚さ、Δn1 は入射側レンズ層における熱可塑
性樹脂と光拡散性微粒子との屈折率の差、Δn2 は出射
側レンズ層における熱可塑性樹脂と光拡散性微粒子との
屈折率の差、c1 は入射側レンズ層における光拡散性微
粒子の重量濃度、c2 は出射側レンズ層における光拡散
性微粒子の重量濃度、ρ1 は入射側レンズ層における光
拡散性微粒子の比重、ρ2 は出射側レンズ層における光
拡散性微粒子の比重、d1 は入射側レンズ層中の光拡散
性微粒子の平均粒径、d2 は出射側レンズ層中の光拡散
性微粒子の平均粒径を表す。)を満足することを特徴と
する。
【0021】本発明を図面を参照しながら説明する。
【0022】図1は本発明のレンチキュラーレンズシー
トの断面拡大図を示す。
【0023】同図に示したように、この発明のレンチキ
ュラーレンズシートは、光の入射側に入射側レンズ層1
を有し、光の出射側に出射側レンズ層2を有する両面レ
ンチキュラーレンズとなっている。この入射側レンズ層
1には複数のシリンドリカルレンズからなる入射側レン
ズ1Aが形成されており、また、出射側レンズ層2に
は、入射側レンズ層1の各入射側レンズの光集光点また
はその近傍にレンズ面を有する、シリンドリカルレンズ
からなる出射側レンズ2Aが形成されている。また、出
射側レンズ層2の光の非集光部には光吸収層3が形成さ
れている。
【0024】このような入射側レンズ層1および出射側
レンズ層2は実質的に透明な熱可塑性樹脂から形成され
るが、少なくとも出射側レンズ層2には光拡散性微粒子
が含有され、入射側レンズ層1にも必要に応じて光拡散
性微粒子が含有できる。この場合、各層の微粒子は単一
の種類である必要はなく、いずれかの物性値の異なる2
種類以上の微粒子を混合してもよい。また、2つの層の
透明熱可塑性樹脂は屈折率の異なるものを使用してもよ
い。
【0025】ここで、本発明のレンチキュラーレンズシ
ートは、以下の各パラメータについて、次の関係式
(I),(II) を満たすものである。すなわち、 t1 >t2 >0 式(I)
【0026】
【数6】 (式中、t1 は入射側レンズ層の厚さ、t2 は出射側レ
ンズ層の厚さ、Δn1 は入射側レンズ層における熱可塑
性樹脂と光拡散性微粒子との屈折率の差、Δn2 は出射
側レンズ層における熱可塑性樹脂と光拡散性微粒子との
屈折率の差、c1 は入射側レンズ層における光拡散性微
粒子の重量濃度、c2 は出射側レンズ層における光拡散
性微粒子の重量濃度、ρ1 は入射側レンズ層における光
拡散性微粒子の比重、ρ2 は出射側レンズ層における光
拡散性微粒子の比重、d1 は入射側レンズ層中の光拡散
性微粒子の平均粒径、d2 は出射側レンズ層中の光拡散
性微粒子の平均粒径を表す。)ここで、Δn・c/ρd
は光拡散性微粒子による光拡散性の程度を表わしてい
る。
【0027】すなわち、光拡散性の大小は近似的にS・
Δn・c(式中、Sは比断面積cm2 /gで表されること
が知られている。また、光拡散性微粒子1gあたりの個
数mは
【0028】
【数7】 であり、光拡散性微粒子1個あたりの比断面積はπ(d
/2)2 であるから、
【0029】
【数8】 となる。
【0030】したがって、SΔnc=3Δnc/2dρ
となり、光拡散性は近似的にΔnc/dρに比例するこ
ととなる。
【0031】本発明のレンチキュラーレンズシートは、
このようにΔnc/dρで表される光拡散性微粒子によ
る光拡散性を、式(II) に示したように、入射側レンズ
層1に比べて出射側レンズ層2で強化し、式(I)に示
したように、出射側レンズ層2の厚さt2 を入射側レン
ズ層1に比べて薄くしていることを特徴としている。
【0032】このように、出射側レンズ層2の光拡散性
を入射側レンズ層1に比べて強化するに際しては、出射
側レンズ層2の厚さt2 を、40μm <t2 <500μ
m とし、
【0033】
【数9】 とすることが好ましく、さらには、製造上あるいはスク
リーンとしての特性上の問題がない限り、各層の厚みの
差及び光拡散性の差は大きい程望ましい。第1層の光拡
散性はゼロとなってもよい。
【0034】これにより本発明において出射側レンズ層
2の光拡散性を強化することによる次のような効果を達
成することができる。
【0035】すなわち、従来の両面レンチキュラーレン
ズにおいても、垂直方向および水平方向の視野角を拡大
するために光拡散性微粒子を使用したものはあるが、そ
れらにおいては一般に両面レンチキュラーレンズ全体に
光拡散性微粒子を分散させていたため、光拡散性微粒子
により視野角を大きく増大させようとすると、光がレン
チキュラーレンズ内を通過している間に著しく散乱し、
前述の図9に示したようにレンチキュラーレンズの出射
面に設けられている光吸収層20に到達する光量が増大
するため光利用効率が低下する。これに対して本発明の
レンチキュラーレンズシートは、薄い厚さに形成した出
射側レンズ層2において光を集中的に拡散させているた
め、この出射側レンズ層2内で光の散乱性が増大しても
光吸収層に到達する割合は少ない。従って光利用効率の
低下を小さくし、光拡散性微粒子により視野角を増大さ
せることが可能となる。
【0036】また、本発明のレンチキュラーレンズシー
トにおいては、上述のように出射側レンズ層2の光拡散
性の強化により視野角を増大させることができるので、
入射側レンズと出射側レンズの形状によって決定される
水平視野角を従来例よりもやや小さめに設計しても、目
標とする水平視野角を達成することができる。従って、
レンズ形状による水平視野角を従来のレンチキュラーレ
ンズシートに比べて小さくすることにより、従来と同一
のピッチにおいても入射側レンズ1Aの厚みを大きくす
ることが可能となり、これにより非常にピッチの小さ
い、例えば0.6mmピッチ以下の、レンチキュラーレン
ズシートでも安定的に製造できるようになる。
【0037】更に、フレネルレンズとレンチキュラーレ
ンズにより発生するモアレは、フレネルレンズの出射面
から出来るだけ離れた位置にレンチキュラーレンズの光
拡散層を設けることにより低減できることが知られてい
るが、本発明のレンチキュラーレンズシートは、光出射
側に集中的に光拡散層を設けているので、モアレ低減の
ためにも有効である。
【0038】また更に、本発明のレンチキュラーレンズ
シートにおいては、出射側レンズ層2の光拡散性を強化
しているので、入射側レンズ1Aによる光集光性を高め
るために、入射側レンズ1Aの形状が、その全幅にわた
って前述の式(III) において円錐定数Kが、−2≦K≦
1、さらには−0.8≦K≦0を満たすようにし、しか
も入射側レンズ全幅にわたり光の集束点を出射レンズ表
面付近のほぼ単一にしても従来例のようにスクリーン上
に縦筋が現れることはない。すなわち、このような縦筋
は出射側レンズ層2の光拡散性により十分にぼやかされ
るので実際上問題とならない。したがって、本発明にお
いては、入射側レンズ1Aの形状を、その全幅にわたっ
て前述の式(III) において円錐定数Kが、−0.8≦K
≦0を満たすようにし、しかも入射側レンズ全幅にわた
り光の集束点を出射レンズ表面付近のほぼ単一にして、
これにより光集光性を高めると共に光利用率を向上させ
ることが可能となる。
【0039】以上のように、本発明は、出射側レンズ層
2を薄く形成し、さらにその光拡散性を強化することに
より、光の利用率を高め、視野角を増大し、レンズピッ
チの微細化を可能とするものであるが、この場合、光拡
散性を決定する各パラメータは次の範囲とすることが好
ましい。
【0040】すなわち、入射側レンズ層1および出射側
レンズ層2について、熱可塑性樹脂と光拡散性微粒子と
の屈折率の差Δn1 及びΔn2 は共に0.01以上、
0.12以下とすることが好ましい。屈折率の差が0.
01未満の場合には光の垂直指向性特性が小さく、スク
リーンが好適な明るさを有する範囲が、中心部に対して
上下方向の周辺部で狭くなる。従って所定の光拡散性を
得るために必要とされる光拡散性微粒子の量が多くなる
ので、経済的および機械的強度の点から好ましくない。
また、屈折率の差が0.12よりも大きいとスクリーン
の中心部に対して上下方向の周辺部では明るく、視野角
度は大きくなるが正面付近での輝度の変化率が大きくな
るので好ましくない。また、添加量が少なくなることか
ら、透けによるホットバンドと称される線が見え易くな
り好ましくない。
【0041】光拡散性微粒子の重量濃度については、入
射側レンズ層1においては0重量%以上、3重量%以下
とすることが好ましく、通常は光拡散性微粒子を分散さ
せないこと、すなわち0重量%とすることが好ましい。
本発明においては出射側レンズ層2で光拡散性を強化す
ることにより前述のような優れた効果を得るからであ
る。一方、出射側レンズ層2においては、十分に光拡散
性を強化するために、光拡散性微粒子の重量濃度c2
3重量%以上とすることが好ましい。
【0042】光拡散性微粒子の平均粒径は、入射側レン
ズ層1および出射側レンズ層2について、共に4μm 以
上、30μm 以下とすることが好ましい。平均粒径が4
μm未満であると所望の光拡散性を得るために必要とさ
れる光拡散性微粒子の量は少なくてすむが色温度特性が
低下する。一方、平均粒径が30μm を超えると所定の
光拡散性を得るために必要とされる光拡散性微粒子の量
が多くなるので経済的に好ましくなく、また光拡散性が
低下するので好ましくない。
【0043】また、この発明の出射側レンズ層2として
は、各出射側レンズ2Aの中央部から周辺部になるにつ
れて薄く形成されていることが好ましい。図2および図
3は、このように形成した本発明のレンチキュラーレン
ズシートの拡大断面図である。図2のレンチキュラーレ
ンズシートにおいては、出射側レンズ2Aの光透過部が
三日月形をしており、図1に示したものより出射側レン
ズ2Aの中央部が周辺部よりも厚くなっている。また、
図3のレンチキュラーレンズシートにおいては、図2に
示したものよりさらに出射側レンズ2Aの中央部が周辺
部よりも厚くなっている。
【0044】図7、図8を用いて、この理由を説明す
る。図7に、3種類の構成のレンチキュラーレンズシー
トの断面図を示す。(A)は従来の構成、(B)は2層
構成で出射側レンズ層の厚みがほぼ一定のもの、(C)
は2層構成で出射側レンズ層の厚みがレンズ中央にいく
に従い厚くなっているものである。(A)は全体に拡散
材が分散し、(B),(C)は出射側レンズ層のみに拡散
材が分散されているものとする。
【0045】(A)の構成においては、光路(a−1),
(a−2),(a−3)とも拡散材の分散されている媒質
を通過する光路長はほぼ同一であるため、いずれの光路
の光も同程度に拡散する。従って水平方向の輝度特性
は、レンズ形状のみの輝度特性とほぼ同じとなる。
【0046】(B)の構成においては、拡散材の分散さ
れている媒質を通過する光路長は、(b−2)の方が、
(b−1),(b−3)に比べて短いため、(b−2)の
光路の光は拡散されにくくなるため、半値角度のやや低
下した水平方向の輝度特性となる。
【0047】(C)の構成においては、拡散材の分散さ
れている媒質を通過する光路長の均一性は(A)の構成
に近づくため、水平方向の輝度特性は(A)の特性に近
づき、しかも(A)に比べて光損失が少ないため、同一
のスクリーンゲインにするために拡散材濃度を調整する
と、(A)よりも、より裾をひいた特性が得られる。
【0048】このようにして、(C)の構成のレンチキ
ュラーレンズシートは、光利用効率が高く、しかも水平
方向の輝度特性の半値角度も従来とほぼ同等とすること
ができる。
【0049】また、本発明のレンチキュラーレンズシー
トにおいては、出射側レンズ層2の光集光部に形成する
光吸収層3は、レンズのピッチなどに応じて、図1に示
したように出射側レンズ層2の凸部に形成してもよく、
図4に示したように出射側レンズ層2の凹部に形成して
もよい。すなわち、光吸収層を出射側レンズ層2の凸部
に形成する場合には出射光が凸部側壁で遮断されないよ
うに凸部の高さを形成することが必要となり、レンズの
ピッチが比較的大きい場合にはそのように製造すること
は容易であるので好ましい。一方、レンズのピッチを微
細化する場合には、凸部の高さと出射側レンズの高さの
差をピッチに比例して小さくしなければならなくなるの
で、製法上困難となる。これに対して光吸収層を図4に
示したように出射側レンズ層2の凹部に形成すれば、一
般には凸部に光吸収層を形成する場合に比べてその製法
は複雑となるが、レンズのピッチを微細化した場合でも
出射光が遮断されることがないので光の利用率を高める
ことができるので好ましい。
【0050】以上のような本発明のレンチキュラーレン
ズシートは、入射側レンズ層1を形成する樹脂シートと
出射側レンズ層2を形成する樹脂シートを共押し出し
し、所定の凹凸を有する金型ロール間を通して成形する
共押し出し形成法により容易に製造することができる。
【0051】次に、本発明のレンチキュラーレンズシー
トを製造するため製造方法について説明する。2層構造
のレンチキュラーレンズシートを製造する方法として
は、それぞれの層をダイより押出した後に接着し、更に
成形するラミネート方式と、ダイから押出す前にそれぞ
れの層を重ね、重なった状態で押出して成形する共押出
し方式とがある。ラミネート方式では、少なくとも一方
の層をあらかじめフィルム状に成形しておき、もう一方
の層と接着し、成形する場合もある。
【0052】本発明のレンチキュラーレンズシートを製
造する上では、共押出し方式が有利である。その理由は
次の2点である。まず、第1に、本発明のレンチキュラ
ーレンズシートにおいては、出射側レンズ層に高濃度で
拡散材を分散させる必要があるが、ラミネート方式で出
射側レンズ層に対応するフィルムを形成する際、拡散材
が高濃度であるためフィルム状態を保持することが難し
い。一方、共押出し方式では、押出される際に、既に厚
みの大なる入射側レンズ層に接着されているので問題は
ない。
【0053】第2に、共押出し方式で成形した場合は、
ダイの中で溶融状態のまま2層となり金型ロールに入り
込んでいくので、出射側レンズ層の出射側レンズ部分は
厚み分布を持ち、レンズ中央部分が厚くなる。
【0054】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく
説明する。 実施例1 図1に示した構造のレンチキュラーレンズシートを製造
した。この場合、レンチキュラーレンズシートのピッチ
(p)を0.6mm、t(全体の厚み)=0.95mm、t
1 (入射側レンズ層の厚み)=0.8mm、t2 (出射側
レンズ層の厚み)=0.15mmとした。また入射側レン
ズ層1の熱可塑性樹脂としてポリメチルメタクリレート
を使用し、それに含有させる光拡散性微粒子として粒径
1 =17μm 、熱可塑性樹脂と光拡散性微粒子との屈
折率の差Δn1 =0.026の無機系の微粒子をc1
0.5重量%用いた。
【0055】また出射側レンズ層2の熱可塑性樹脂とし
てはポリメチルメタクリレートを使用し、それに含有さ
せる光拡散性微粒子として粒径d2 =8μm 、熱可塑性
樹脂と光拡散性微粒子との屈折率の差Δn2 =0.1の
有機系の微粒子をc2 =4.0重量%用いた。
【0056】レンズ形状は、前式(III) において入射側
では主曲率C=3.2、円錐定数K=−0.45、出射
側では主曲率C=−2.9、円錐定数K=3.5とし
た。
【0057】このようなレンチキュラーレンズシートを
製造するためには、図5のような押出成形機を用い共押
出成形法により製造した。即ち、この押出成形機は入射
側レンズ層1を押出すためのメイン押出機4と出射側レ
ンズ層2を押出すためのサブ押出機5とから成り、両方
の押出機より2層の樹脂シート6を押出し、あらかじめ
レンチキュラーレンズシートの形状が刻まれている一対
の金型ロール7、8の間に流し込み成形を行った。押出
成形機の押出量を調整することにより二つの層の厚みを
制御した。
【0058】また、このように押出成形したシートに対
して、光吸収層を常法により印刷した。
【0059】このようにして製造されたレンチキュラー
レンズシートをフレネルレンズと組み合わせて画像評価
したところ、従来よりも分解能の優れたスクリーンが得
られた。また、全光線透過率を測定したところ、84%
であり、光量損失の少ないスクリーンであることが明ら
かとなった。 実施例2 図3に示した構造のレンチキュラーレンズシートであっ
て、ピッチ(p)=0.3mm、全体の厚みt=0.9mm
とした。入射側レンズ層1と出射側レンズ層2における
熱可塑性樹脂および光拡散性微粒子は実施例1と同じも
のを使用した。このシートは実施例1と同様にして、図
5で示された共押しにより成形された。メイン押出機4
とサブ押出機5から押出される樹脂の押出し前の温度は
230℃であり、第1金型ロール7の温度は35℃、第
2金型ロール8の温度は100℃であった。
【0060】実施例1と同様に製造したレンチキュラー
レンズシートとフレネルレンズと組合せて画像評価した
ところ、従来のものより分解能に優れたスクリーンが得
られた。 実施例3 図4に示したレンチキュラーレンズシートを成形した
が、そのピッチ、厚みの他樹脂、微粒子の物性、レンズ
形状等すべて実施例1と同一とした。
【0061】実施例1と同様に製造したレンチキュラー
レンズシートとフレネルレンズと組み合せて画像評価し
たところ、従来のものより分解能に優れたスクリーンが
得られた。 実施例4 図4に示す構造のレンチキュラーレンズシートであっ
て、ピッチ(p)=0.3mm、全体の厚みt=0.9m
m、t1 =0.7mm、t2 =0.2mmとした。また入射
側レンズ層1の熱可塑性樹脂としてはポリメチルメタク
リレートを用い、それに含有させる光拡散性微粒子とし
てd1 =17μm 、n1 =1.52の無機系の微粒子を
1 =0.5重量%使用した。
【0062】また出射側レンズ層2の熱可塑性樹脂とし
てはポリメチルメタクリレートを用い、それに含有させ
る光拡散性微粒子としてはd2 =8μm 、n2 =1.5
9の有機系の微粒子をc2 =6.0重量%使用した。
【0063】レンズ形状は前式(III) において入射側で
は主曲率C=2.7、円錐定数K=−0.45、出射側
では主曲率C=−8.0、円錐定数K=0とした。
【0064】このように、この実施例では、水平視野角
を増大させるため出射側レンズの曲率半径を小さくした
ので、通常の3管CRT式プロジェクターのように集中
角εが大きい場合(通常8°以上)には、カラーシフト
が大きくスクリーンとして問題があるが、液晶プロジェ
クターのように、投写レンズが1つであるか、あるいは
投写レンズが3つであっても集中角εの小さい場合に
は、カラーシフトの発生は小さく、スクリーンとして好
適なものが得られた。すなわち、得られたレンチキュラ
ーレンズシートをフレネルレンズと組み合せ、液晶プロ
ジェクターで投写したところモアレの少ない良好なスク
リーンが得られた。なお、投写時のスクリーン面上での
液晶画素ピッチは、レンチキュラーレンズシートのピッ
チの4倍となるようにした。 実施例5〜12 レンチキュラーレンズシートのパラメータを表1のよう
に種々変化させて、レンチキュラーレンズシートを実施
例1と同様に共押出成形法により製造した。そして、こ
れらについて、水平半値角と全光線透過率を測定した。
結果を表1、表2にあわせて示した。これにより、本発
明の実施例において、特に
【0065】
【数10】 とした場合(実施例5、7〜11)に、水平半値角と全
光線透過率が向上することが確認できた。なお、以上の
実施例においては、いずれもレンチキュラーレンズシー
トの成形品に割れが生じることはなく、安定的に製造す
ることができた。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【発明の効果】透過型スクリーンに使用されるレンチキ
ュラーレンズシートにおいて、そのピッチをきわめて小
さく、例えば0.6mm以下のような領域においても安定
に製造でき、しかも水平視野角を十分に確保すると共に
カラーシフトを少なくし、光の利用効率を向上させて明
るい映像が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のレンチキュラーレンズシート
の拡大断面図
【図2】本発明の他の実施例のレンチキュラーレンズシ
ートの拡大断面図
【図3】本発明の他の実施例のレンチキュラーレンズシ
ートの拡大断面図
【図4】本発明の他の実施例のレンチキュラーレンズシ
ートの拡大断面図
【図5】本発明の製造方法の説明図
【図6】透過形プロジェクションTVの概略構成図
【図7】(A)は従来のレンチキュラーレンズにおける
光路状況、(B)は図1における光路状況、(C)は図
3における光路状況を示す図
【図8】図7の(A)(B)(C)等における水平視野
角度と規格化輝度の関係を示す図
【図9】従来のレンチキュラーレンズの拡大断面図
フロントページの続き (72)発明者 阿部 研 新潟県北蒲原郡中条町倉敷町2番28号 株 式会社クラレ内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の入射側レンズを有する入射側レン
    ズ層と、入射側レンズによる光集光点またはその近傍に
    レンズ面が形成された複数の出射側レンズを有する出射
    側レンズ層とを有する両面レンチキュラーレンズシート
    において、該入射側レンズ層と出射側レンズ層とが実質
    的に透明な熱可塑性樹脂から形成され、さらに少なくと
    も出射側レンズ層には光拡散性微粒子が含有され、次式
    (I)および(II) t1 >t2 >0 式(I) 【数1】 (式中、t1 は入射側レンズ層の厚さ、t2 は出射側レ
    ンズ層の厚さ、Δn1 は入射側レンズ層における熱可塑
    性樹脂と光拡散性微粒子との屈折率の差、Δn2 は出射
    側レンズ層における熱可塑性樹脂と光拡散性微粒子との
    屈折率の差、c1 は入射側レンズ層における光拡散性微
    粒子の重量濃度、c2 は出射側レンズ層における光拡散
    性微粒子の重量濃度、ρ1 は入射側レンズ層における光
    拡散性微粒子の比重、ρ2 は出射側レンズ層における光
    拡散性微粒子の比重、d1 は入射側レンズ層中の光拡散
    性微粒子の平均粒径、d2 は出射側レンズ層中の光拡散
    性微粒子の平均粒径を表す。)を満足することを特徴と
    するレンチキュラーレンズシート。
  2. 【請求項2】 出射側レンズ層の厚さt2 が、40μm
    <t2 <500μmである請求項1記載のレンチキュラ
    ーレンズシート。
  3. 【請求項3】 次式 【数2】 を満足する請求項1または2記載のレンチキュラーレン
    ズシート。
  4. 【請求項4】 次式 0.01≦Δn1 ≦0.12 0≦c1 ≦3重量% 4μm ≦d1 ≦30μm を満足する請求項1または2記載のレンチキュラーレン
    ズシート。
  5. 【請求項5】 次式 0.01≦Δn2 ≦0.12 3重量%≦c2 4μm ≦d2 ≦30μm を満足する請求項1または2記載のレンチキュラーレン
    ズシート。
  6. 【請求項6】 各入射側レンズの形状が、次式(III) で
    表され、しかも入射側レンズの全幅に入射する光の収束
    点が実質的に単一である請求項1または2記載のレンチ
    キュラーレンズシート。 【数3】 (式中、Cは主曲率であり、Kは円錐定数であり、−
    0.8≦K≦0である。)
  7. 【請求項7】 出射側レンズ層の厚みが、各出射側レン
    ズにおいてその中央部から周辺部になるにつれて薄く形
    成されている請求項1または2記載のレンチキュラーレ
    ンズシート。
  8. 【請求項8】 レンチキュラーレンズシートが、入射側
    レンズ層を形成する第1の樹脂シートと出射側レンズ層
    を形成する第2の樹脂シートを共押し出しし、所定の凹
    凸を有する金型ロール間を通すことにより成形された請
    求項1記載のレンチキュラーレンズシート。
  9. 【請求項9】 入射側レンズ層を形成する第1の樹脂シ
    ートと出射側レンズ層を形成する第2の樹脂シートを共
    押し出しし、所定の凹凸を有する金型ロール間を通して
    成形する請求項1記載のレンチキュラーレンズシートの
    製造方法。
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