JPH0553021B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［発明の分野］ 本発明は、情報記録媒体用基板に関するもので
あり、さらに詳しくは、高エネルギー密度のレー
ザビームを用いての情報の書き込みおよび／また
は読み取りが可能な情報記録媒体の支持体として
機能する基板の改良に関するものである。

［発明の技術的背景］ 近年において、レーザ光等の高エネルギー密度
のビームを用いる情報記録媒体が開発され、実用
化されている。この情報記録媒体は光デイスクと
称され、大容量静止画像フアイルおよび大容量コ
ンピユータ用デイスク・メモリなどとして使用さ
れており、記録層・記録方式に応じて追記型と消
去書替型に大別される。

光デイスクは、ガラス、合成樹脂などの材料か
らなり、中心部に回転駆動用の円孔を有する円盤
状の基板と、この基板上に設けられたBi，Sn，
In，Te等の金属または半金属からなる記録層と
からなる基本構造を有する。記録層が設けられる
側の基板表面には通常、基板の平面性の改善、記
録層との接着力の向上あるいは光デイスクの感度
の向上などの点から、高分子物質などの材料から
なる中間層が設けられることが多い。

また、記録層を保護するためのデイスク構造と
して、二枚の円盤状基板のうちの少なくとも一枚
の基板上に記録層を設け、この二枚の基板を、記
録層が内側に位置し、かつ空間を形成するように
リング状内側スペーサとリング状外側スペーサと
を介して接合してなるエアーサンドイツチ構造が
提案されている。このようなエアーサンドイツチ
構造を有する光デイスクでは、記録層は直接外気
に接することがなく、情報の記録、再生は基板を
透過するレーザ光で行なわれるために、記録層が
物理的または科学的な損傷を受けたり、あるいは
その表面に塵埃が付着して情報の記録、再生の障
害となることがないとの利点がある。

光デイスクへの情報の書き込みおよび読み取り
は、通常は下記の方法により行なわれる。

情報の書き込みはレーザビームをこの光デイス
クに照射することにより行なわれ、記録層の照射
部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物
理的あるいは化学的な変化（たとえば、ピツトの
生成）が生じてその光学的特性を変えることによ
り情報が記録される。情報の読み取りもまた、レ
ーザビームを光デイスクに照射することにより行
なわれ、記録層の光学的特性の変化に応じた反射
光または透過光を検出することにより情報が再生
される。

上記のように光デイスクへの情報の書き込みお
よび読み取りは、通常デイスク表面の所定の位置
にレーザビームを照射することにより行なわれて
いる。一方、光デイスクへの情報記録量の増加が
強く望まれているところから、ピツトなどの記録
部位の密度の増大が図られている。そして、この
ような記録部位の密度の増大により、レーザビー
ムを正しく所定の位置に照射することが困難にな
るため、最近ではレーザビームを案内して正確に
照射予定位置をたどる（一般にトラツキングと呼
ばれる）ようにするために、トラツキング用案内
溝をデイスク表面上に設けるとが多くなつてい
る。

上記のようにレーザビームを利用する情報記録
媒体は各種の構成にて用いられるが、それらの全
てが基板と記録層とからなる基本構造を有してお
り、また多くのものが基板と記録層との間に中間
層を有している。

基板は、最近では合成樹脂を材料として射出成
形あるいは圧縮成形などの方法で製造されること
が多くなつている。この射出成形あるいは圧縮成
形は一般に、所定の凹凸模様を表面に有するスタ
ンパと呼ばれる金型の該表面に加熱しながら加圧
下にて熱可塑性の合成樹脂を接触させる方法によ
り、該スタンパの凹凸模様の対応する凹凸模様を
表面に有する合成樹脂製円盤を得ることからなる
成形操作である。

上記スタンパは、加圧装置に取り付けられた状
態で上記の成形操作に利用されるが、このスタン
パの加圧装置への取り付け用の治具は通常、スタ
ンパ表面の内周側（成形される円盤状基板の円孔
の周囲で、記録領域よりも内側の部分）に取り付
ける。従つて、そのようなスタンパを用いて得ら
れる基板は、記録領域よりも内周側に環状溝が設
けられた形状、すなわち第１図で示されるような
断面形状を有する基板となる。そのような環状溝
は当然、円盤状基板の円滑な回転を妨げないよう
にその中心位置に対して、対称の位置、形状とな
るように配慮されるため、その存在自体が、その
基板を用いて製造される光デイスクの性能に影響
を与える点は少ないといえる。

また、特開昭57−172546号公報には、円盤状基
板の表面に設定されている記録領域よりも内周側
に溝が設けられてなる情報記録媒体用基板は、そ
のような溝が設けられていない基板に比較して複
屈折が少ない旨の記載がある。

前記のような各形態にて使用される情報記録媒
体は、通常、基板の表面にまず、高分子物質など
からなる中間層をスピンコート法などの塗布法を
利用して形成し、次いでその上に記録層を蒸着も
しくは塗布などの方法で形成して情報記録媒体と
とする工程を含む製造法により製造される。

本発明者は、円盤状基板の表面に設定されてい
る記録領域よりも内周側に環状溝が設けられてな
る情報記録媒体用基板の該表面に、スピンコート
法などの塗布法を利用して高分子物質含有塗布液
を塗布して中間層を形成した場合、その中間層が
不均一になる傾向があることを見い出した。その
ような中間層の不均一さは、得られる情報記録媒
体の感度Ｃ／Ｎが部分的に変動するとの問題を引
き起す。

［発明の目的］ 本発明は、均一な記録性能を有する情報記録媒
体の製造に有効な円盤状の基板を提供することを
主な目的とする。

［発明の構成］ 本発明は、円盤状基板の表面に設定されている
記録領域よりも内周側に環状溝が設けられてなる
情報記録媒体用基板であつて、該環状溝の外周側
開口端部が曲面をなすか、または基板表面と環状
溝の外周側開口裾部とのなす角度が100度以上
（好ましくは120度以上、さらに好ましくは140度
以上）であるように、環状溝が少なくとも外周側
開口裾部において広げられていることを特徴とす
る情報記録媒体用基板にある。

すなわち、中間層の形成に一般的に用いられる
スピンコート法は、高分子物質溶液（中間層塗布
液）を円盤状基板の中央付近に付与し、それを外
側に広げながら、基板表面に塗布を行なう方法で
あるが、本発明者の研究によると、基板の中央部
付近に付与された塗布液が前記の内周側の環状溝
を渡つて基板の外周側に広がる際に、塗布液がそ
の環状溝の外周側裾部において逆方向に強く押し
戻され、これにより塗布液の流れが乱れ、形成さ
れる塗布層が不均一になり、塗布むらが発生する
傾向があることが判明した。

本発明者は更に研究を行なつた結果、環状溝の
外周側開口端部を、曲面とするか、あるいは基板
表面と環状溝の外周側開口裾部とのなす角度が
100度以上となるように、溝を少なくとも外周側
開口裾部において広げた形状とすることにより上
記のような塗布むらの発生を顕著に低減できるこ
とを見い出した。

本発明の情報記録媒体用基板の特徴的構成を添
付図面を参照しながら、更に詳しく説明する。

第１図は、記録領域１１よりも内周側に環状溝
１２が形成された基板１３の構成を示す模式図で
ある。ただし本発明の情報記録媒体基板は、中心
に設定されている回転軸を中心にして対称の関係
にあるため、第１図では、その片側のみを示して
いる。

従来の情報記録媒体においては、基板１１の上
の記録層設定領域よりも内周側に形成される前記
の環状溝１２の断面形状は第２図に示されている
ように正方形もしくは長方形を取つていた。

これに対して、本発明の情報記録媒体用基板に
おける当該環状溝は、たとえば、第３〜６図に示
されているような断面形状を取ることを特徴とす
る。なお、第３〜６図において、各図の左側が内
周側、そして右側が外周側である。

第３図は、環状溝３２の外周側開口端部が曲面
をなして、これによつて溝が少なくとも外周側開
口裾部において広げられている態様を示す。この
曲面は、曲率半径が30μmと２mmとの間にある曲
面であることが望ましい。

第４図は、環状溝４２の外周側開口端部が、溝
底部から立ち上つた面と基板表面とが相接する位
置にて面取りされた形状をなし、これにより、基
板表面と環状溝の外周側開口裾部とのなす角度
（図におけるα）が100度以上であるようにされて
いる態様を示す。

第５図と第６図は共に、環状溝５２，６２の外
周側の開口端部が、溝底部から立ち上つた面と基
板表面とのなす角度（図におけるα）が100度以
上の角度にて相接することにより形成されている
態様を示す。

第３〜６図の溝断面形状は、いずれも本発明の
基板の記録領域よりも内周側に設ける溝がとり得
る代表的な断面形状を示すものであるが、溝の外
周側開口端部が曲面をなすか、または基板表面と
環状溝の外周側開口裾部とのなす角度が100度以
上であるように、溝が少なくとも外周側開口裾部
において広げられている限り、他の任意な断面形
状をとり得るものである。すなわち、そのような
いずれの断面形状であつても、従来の溝の外周側
開口端部による塗布液の乱れ（塗布液の戻り、塗
布液の飛散など）を低減することができる。従つ
て、このような断面形状を有する溝であれば、塗
布液の乱れが発生しにくいため、形成される塗布
層の均一性が顕著に向上する。

なお、上記のような環状溝は基板の両面に形成
されていてもよい。

本発明の情報記録媒体用基板は、その記録領域
の内周側に形成される溝の断面形状が従来のもの
と相違すること以外は従来より知られている基板
と特に相違する点はない。ただし、本発明の基板
は、トラツキング用案内溝を設けるためのプレグ
ループが付けられた基板であることが有利である
ので、以下の説明はプレグループ付き基板を例に
とつて説明する。

プレグループ付き基板は、たとえば、ポリカー
ボネート樹脂、ポリアクリル系樹脂などのプラス
チツク材料をモールデイングして製造する方法、
プラスチツク板、平面基板にプレグループを有す
る樹脂層を積層させる方法などによつて製造する
ことができ、これらの方法は既に一般的に知られ
ている。

本発明に従う基板は、上記のようなモールデイ
ングに際して用いる金型（スタンパ）の環状溝対
応部分を、本発明に従う基板に対応するように形
成し、このような金型（スタンパ）を用いて基板
のモールデイングを行なうことにより容易に形成
することができる。

本発明の基板を用いて情報記録媒体を製造する
方法としては、たとえば、下記の方法を利用する
ことができる。

まず、基板表面上に公知のスピンコート法によ
り中間塗布層を形成させる。

なお、塗布法により形成される中間層の例とし
ては、接着層、断熱層、反射層、感度向上層（ガ
ス発生層）などを挙げることができる。

中間塗布層が断熱層である場合には、例えばポ
リメチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリ
ル酸共重合体、スチレン、無水マレイン酸共重合
体、ポリビニルアルコール、Ｎ−メチロール・ア
クリルアミド共重合体、スチレン・スルホン酸共
重合体、スチレン。ビニルトルエン共重合体、塩
素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレ
ン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエ
ステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共
重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエ
チレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど
の高分子物質を溶剤に溶解した塗布液を用いて形
成することができる。

中間塗布層の層厚（平均層厚）は、中間層に要
求される特性を考慮して決定されている。中間塗
布層の層厚は通常50〜5000オングストローム、好
ましくは100〜1000オングストロームである。

中間塗布層の上には、記録層が設けられる。

記録層に用いられる材料の例としては、Te，
Zn，In，Sn，Zr，Al，Cu，Ge等の金属；Bi，
As，Sb等の半金属；Ge，Si等の半導体；および
これらの合金またはこれらの組合せを挙げること
ができる。また、これらの金属または半金属の硫
化物、酸化物、ホウ化物、ケイ素化合物、炭化物
および窒化物等の化合物；およびこれらの化合物
と金属との混合物も記録層に用いることができ
る。

記録層は、上記の記録材料を蒸着、スパツタリ
ング、イオンプレーテイングなどの方法によつて
中間塗布層上に形成することができる。記録層は
単層または重層でもよいが、その層厚は光情報記
録に要求される光学濃度の点から一般に100乃至
5000オングストロームの範囲である。

なお、基板の裏側（記録層が設けられる側とは
反対側）の表面には、耐傷性、防湿性などを高め
るために、たとえば二酸化ケイ素、酸化スズ、弗
化マグネシウムなどの無機物質からなる薄膜や、
光硬化性樹脂層が設けられていてもよい。

なお、本発明に従う基板を用いた情報記録媒体
の製造について、これまで主として一枚の基板か
らなるタイプのものを例にとつて説明したが、本
発明の基板を用いた情報記録媒体は公知技術に従
つて任意の構成とすることができる。すなわち、
上記の一枚の基板からなる情報記録媒体を二枚貼
り合わせて製造したタイプの情報記録媒体、一枚
の基板からなる情報記録媒体の記録層側の表面に
保護層（樹脂層、保護板など）が形成されたタイ
プの情報記録媒体、エアーサンドイツチタイプの
情報記録媒体など各種の構成をとるようにするこ
とができる。

また、上記発明の説明では、中間層塗布に関し
発明の効果を説明したが、同様の効果は例えば色
素系記録層を塗布法により設ける場合、また記録
面と反対面に保護層を塗布する場合についても全
く同様に適用されるものである。

次に本発明の実施例および比較例を記載する。
ただし、これらの各例は本発明を制限するもので
ない。

［実施例 １］ １ 射出成形によつて、第３図に示すような断面
形状と下記の寸法を有する環状溝が記録領域の
内側（中心位置より40mmの位置）に設けた円盤
状ポリカーボネート樹脂基板を成形した。

基板外周：130mm 基板内周：15mm 基板厚さ：1.2mm 環状溝深さ：200μm 環状溝幅：1.5mm 環状溝の外周側開口端部の曲面の曲率半径：
200μm ２ 上記基板のプレグループ面にニトロセルロー
ス含有塗布液［メチルセロソルブ・ブタノー
ル・イソプロパノール混合溶媒（12：８：80、
体積比）にニトロセルロースが0.3重量％溶解
しているもの］を、スピンコーターを用いて塗
布し、次いで乾燥して中間塗布層を形成した。
スピンコーターによる基板表面への塗布液の付
与は半径20mmの位置付近にて行なつた。

得られた中間塗布層は基板全体にわたつて均
一であつた。

［比較例 １］ 円盤状ポリカーボネート樹脂基板表面の環状溝
の断面形状を深さと幅を変動させるとなく、第２
図に示すような形状とした以外は同様の基板を製
造し、同様な方法により中間塗布層を形成した。

得られた中間塗布層の表面を観察したところ、
溝の周囲から外周側に向つて塗布液の飛散に起因
するとみられる塗布むらが見られた。

［発明の効果］ 中間層および／または記録層を塗布法により設
けて製造する情報記録媒体の基板として本発明の
情報記録媒体用基板を用いた場合には、塗布層の
形成に際して塗布むらが発生しにくいため、均一
性が高い塗布層が得られる。このため、得られる
情報記録媒体の記録層の均一性も向上し、記録媒
体としての性能の均一性が向上する。

【図面の簡単な説明】

第１図は、記録領域の内周側に環状溝を有する
情報記録媒体用基板の構成を示す模式図である。
第２図は、第１図の環状溝部分の拡大断面図であ
り、従来の環状溝断面形状の例を示す模式図であ
る。第３〜６図はそれぞれ、本発明に従う基板の
環状溝の代表的な断面形状を示す模式図である。 １１……記録領域、１２……環状溝、１３……
情報記録媒体用基板、３２，４２，５２，６２…
…環状溝。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 円盤状基板の表面に設定されている記録領域
   よりも内周側に環状溝が設けられてなる情報記録
   媒体用基板であつて、該環状溝の外周側開口端部
   が曲面をなすか、または基板表面と環状溝の外周
   側開口裾部とのなす角度が100度以上であるよう
   に、環状溝が少なくとも外周側開口裾部において
   広げられていることを特徴とする情報記録媒体用
   基板。 ２ 上記環状溝の外周側開口端部が、曲率半径が
   30μmと２mmとの間にある曲面をなすことを特徴
   とする特許請求の範囲第１項記載の情報記録媒体
   用基板。 ３ 上記環状溝の外周側開口端部が、溝底部から
   立ち上つた面と基板表面とが120度以上の角度に
   て相接することにより形成されていることを特徴
   とする特許請求の範囲第１項記載の情報記録媒体
   用基板。 ４ 上記環状溝の外周側開口端部が、溝底部から
   立ち上つた面と基板表面とが相接する位置にて面
   取りされた形状にあることを特徴とする特許請求
   の範囲第１項記載の情報記録媒体用基板。