JPH0542564A - 中空成形型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 外観上支障のない位置にヘジテーションマー
クを発生させ，かつ中空成形品の成形が容易な中空成形
型を提供すること。 【構成】 中空成形品にヘジテーションマークが発生し
ても支障のない停止位置２５までキャビティ２内に樹脂
を注入し，その後空気等の流体を注入してランナー１内
の樹脂を前方成形部２２内へ進めると共に樹脂内に中空
部を形成させる中空成形型１０であって，ランナー１は
上記前方成形部２２内へ注入すべき樹脂量を一旦保留で
きる長尺状空洞部により形成されている。長尺状空洞部
としては，渦巻き，螺線，多曲状などがある。上記停止
位置は，ランナー１内とすることもできる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は，ショートショット成形
法により中空成形品を成形するための中空成形型，特に
そのランナーの構造に関する。

【０００２】

【従来技術】近年，省資源及び軽量化等を目的として，
各種の中空成形品が製造されている。そして，その成形
法として，ショートショット成形法が用いられている。
この中空成形法は，キャビティ内に，その容量の５０〜
９０％の樹脂を予め注入し，その後該樹脂内にガス等の
流体を注入し，中空成形品を成形する方法である。な
お，上記樹脂は加熱軟化された状態で注入され，流体注
入時においても未だ軟化状態を有している。流体注入後
は中空成形型を冷却し，樹脂を硬化させる。

【０００３】

【解決しようとする課題】しかしながら，上記成形法に
おいては，上記のごとく，樹脂をキャビティの途中まで
注入し，ここで一旦樹脂の注入を停止し，その後流体に
より更に樹脂を前方へ送り出し，内部を空洞化してい
る。そのため，樹脂注入完了時点から流体注入開始時点
までの間（約０〜５秒），樹脂流動が一旦停止する。そ
のため，この樹脂の先端部が一旦停止する停止位置にお
いて，中空成形品の表面にヘジテーションマークが発生
する。このヘジテーションマークは，ツヤムラなどとも
称され，中空成形品の外観を悪化させる。

【０００４】図９は，自動車室内に装着するアシストグ
リップ９において，ヘジテーションマーク９９が発生し
ている状態を示している。該アシストグリップ９は，外
殻を形成する樹脂部７と中空部８とよりなる。また該ア
シストグリップ９は，グリップ部９１とその両側の取付
部９２とよりなる。両取付部９２は，それぞれ先端部に
取付穴９３を有する。そして，両取付部９２の表面に，
ヘジテーションマーク９９が発生している。換言すれ
ば，このヘジテーションマーク９９の位置が，樹脂注入
時にその樹脂先端部が停止する停止位置である。また，
アシストグリップにおいては，上記取付部９２は製品の
意匠部となる部分であり，該取付部９２におけるヘジテ
ーションマーク９９は，アシストグリップの外観を悪化
させる。

【０００５】また，従来，かかるヘジテーションマーク
の発生防止のために，樹脂注入の途中より流体注入を行
うなど，種々の提案がなされている。しかし，いずれも
満足できるものではない。本発明者らは，かかる問題を
解決すべく，ヘジテーションマークの発生位置と中空成
形型の構造とにつき，種々の検討を重ね，本発明をなす
に至った。本発明は，支障のない位置にヘジテーション
マークを発生させ，かつ中空成形品の成形が容易な中空
成形型を提供しようとするものである。

【０００６】

【課題の解決手段】本発明は，キャビティ内又はランナ
ー内において中空成形品にヘジテーションマークが発生
しても支障のない停止位置まで樹脂先端部が来たとき一
旦樹脂の注入を停止し，その後ランナーの中に流体を注
入して該流体によりランナー内の樹脂を押し出し，上記
停止位置よりも前方の前方成形部へ樹脂を注入すると共
に樹脂の内部に上記流体による中空部を形成するための
中空成形型であって，上記ランナーは，上記前方成形部
へ注入すべき樹脂量を一旦保留できる長尺状空洞部によ
り形成されていることを特徴とする中空成形型にある。

【０００７】本発明において最も注目すべきことは，中
空成形型のランナーを長尺状空洞部となし，該長尺状空
洞部の容量を，上記前方成形部へ注入すべき樹脂量とほ
ぼ同等の容量に構成したこと，及びヘジテーションマー
クが発生しても支障のない停止位置まで樹脂先端部が来
たとき一旦樹脂の注入を停止させ，その後流体を注入し
て長尺状空洞部内の樹脂を前方成形部へ押し込むと共に
該樹脂内に中空部を形成するよう構成したことである。
即ち，上記ランナーは，上記前方成形部内へ押し出し注
入すべき樹脂量とほぼ同じ容量を有する長尺状空洞部を
構成している。なお，実際には，ランナーの壁面には樹
脂が固着するので，長尺状空洞部の容量は前方成形部内
へ注入すべき樹脂量よりも少し大きく設計しておく。

【０００８】また，上記長尺状空洞部の形状としては，
渦巻き状（図１），螺線状（図７），多曲状（図８）な
どがある。これらは，その通路が互いに接近しているの
で，加熱軟化状態で注入する樹脂が冷却され難く好まし
い。また，この中，渦巻き状，多曲状のものが，金型設
計の点より好ましい。また，樹脂の注入を一旦停止する
上記停止位置は，キャビティ内或いはランナー内であ
る。そして，その停止位置よりも前方のキャビティ内
に，上記前方成形部が形成される。なお，上記停止位置
がランナー内の場合には，キャビティ全体が前方成形部
となる。

【０００９】また，中空成形品にヘジテーションマーク
が発生しても支障のない位置としては，中空成形品にお
いては意匠面としない部分，レザー等の表皮材を被覆す
る部分，或いは中空成形品の外観上美観を要求されない
部分などをいう。上記樹脂としては，ポリプロピレン，
ＡＢＳ，ポリアミド，軟質塩化ビニルなどがある。ま
た，流体としては，窒素ガス，炭酸ガス，空気等のガス
の外，高圧下で液化したガス体，水等の液体がある。

【００１０】

【作用及び効果】本発明の中空成形型においては，ラン
ナーが上記長尺状空洞部を有している。また，成形に当
たっては，ショートショット成形法を用いる。ここに重
要なことは，上記ショートショット成形法は，樹脂の先
端部が，ヘジテーションマークが発生しても支障のない
停止位置まで来たときに，一旦樹脂の注入を停止するこ
とである。このとき，キャビティ内には上記停止位置よ
りも前方に，樹脂が充填されていない前方成形部が残存
している。そして，その後ランナー内へ流体を注入し
て，ランナー内の樹脂を該流体によりキャビティ中へ注
入する。これにより，前方成形部内へも樹脂が注入され
る。また，上記流体が，キャビティ内の樹脂内部へ注入
されていき，中空部を形成する。また，上記前方成形部
内へ注入されるべき樹脂の量は，上記長尺状空洞部内に
確保されている。

【００１１】上記のごとく，本発明においては，樹脂の
注入を，ヘジテーションマークの発生を許容する上記停
止位置において一旦停止している。そのため，中空成形
品にヘジテーションマークが発生しても問題がない。そ
して，上記停止位置よりも前方の前方成形部に注入すべ
き樹脂量は，上記長尺状空洞部の内部に確保されてい
る。そのため，樹脂の注入不足を生ずることもない。し
たがって，本発明によれば，支障のない位置にヘジテー
ションマークを発生させ，かつ中空成形品の成形が容易
な中空成形型を提供することができる。

【００１２】

【実施例】

実施例１ 本発明の実施例にかかる中空成形型につき，図１〜図４
及び前記図７を用いて説明する。本例は，前記従来例に
示した形状のアシストグリップ９（図７）を成形しよう
とするものである。本例の中空成形型１０は，図１，図
２に示すごとく，キャビティ２と，スプルー１５と，両
者の間に設けたランナー１とを有する。また，キャビテ
ィ２はアシストグリップの取付穴９３（図７）を形成す
るための中子２４を有する。また，該中空成形型１０
は，２つ割りの分割型である（紙面に平行に分割）。ま
た，キャビティ２内においては，ヘジテーションマーク
が発生しても支障のない停止位置２５が設定されてい
る。該停止位置２５は，アシストグリップのグリップ部
９１における先端部で，取付部９２よりも内方側であ
る。

【００１３】そして，キャビティ２は，アシストグリッ
プのグリップ部９１，取付部９２を成形するための主成
形部２１と，停止位置２５よりも前方に設けられた前方
成形部２２を有する。また，ここに重要なことは，ラン
ナー１は，渦巻状の長尺状空洞部を有することである。
そして，該ランナー１は，上記前方成形部２２へ注入す
べき樹脂量を一旦保留できる容量を有している。また，
該中空成形型は，図４に示すごとく，ランナー１の入口
１５に対して樹脂注入口７２，樹脂注入シリンダ７３を
接続している。該樹脂注入シリンダ７３は，樹脂注入用
のスクリュー７４を有する。また，ランナー１の入口１
５に対して，流体注入口８２，流体注入シリンダ８３を
接続している。該流体注入シリンダ８３は，加圧用ピス
トン８４を有する。

【００１４】次に，上記中空成形型を用いて，ショート
ショット成形法により中空成形品を成形するに当たって
は，先ず図２に示すごとく，スプルー１５より，ランナ
ー１を通じてキャビティ２内に樹脂７を注入する。該樹
脂７は，加熱により軟化されている。そして，上記樹脂
７の注入は，中空成形品であるアシストグリップにヘジ
テーションマークが発生しても支障のない停止位置２５
まで，樹脂先端部が来たとき，一旦その注入を停止す
る。このとき，図２に示すごとく，ランナー１内には樹
脂７が残存している。そして，上記停止位置２５より前
方は，樹脂が充填されていない前方成形部２２を形成し
ている。また，ランナー１内の樹脂量は，前方成形部２
２へ注入すべき量と同じである。

【００１５】次に，図３に示すごとく，ランナー１内に
流体８０を注入する。これにより，ランナー１内の残存
樹脂７はキャビティ２内に押し込まれ，停止位置２５部
分にあった樹脂７は前方成形部２２内へ進行していく。
また，これに伴ってキャビティ２内の樹脂７の中央部分
へ流体８０が注入されていき，中空部８を形成する。そ
の後は，中空成形型１０を冷却し，樹脂７を固化させ
る。然る後，中空成形型１０内から中空成形品であるア
シストグリップを取り出す。この中空成形品は，図３に
示すごとく，上記停止位置２５の付近にヘジテーション
マーク９８が発生している。なお，ランナー１の壁面に
は，個化した樹脂の固着部７６が残存している。

【００１６】しかし，上記ヘジテーションマーク９８
は，グリップ部９１に形成されているので，外観上支障
はない。その他は，従来の中空成形品と同様である。こ
のように，本例によれば，支障のない位置にヘジテーシ
ョンマークを発生させ，かつ中空成形品の成形が容易な
中空成形型を提供できる。

【００１７】実施例２ 本例は，図５，図６に示すごとく，樹脂の注入を一旦停
止する停止位置２５を，ランナー１内とした例である。
即ち，本例においては，図５に示すごとく，上記停止位
置２５を，キャビティ２近くにおけるランナー１内とし
たものである。したがって，本例においては，キャビテ
ィ２内の全てが前方形成部２２を形成することとなる。

【００１８】中空成形品の成形に当たっては，ランナー
１内に樹脂を注入し，その樹脂先端部がランナー１内に
おいてキャビティ２の直前に来たとき，即ち，停止位置
２５に来たとき，その注入を停止する。その後，ランナ
ー１内に流体８０を注入する。これにより，樹脂がキャ
ビティ２内に充填されていくと共にその内部に流体８０
が注入され，中空成形品９が形成される（図６）。その
他は，実施例１と同様である。得られた中空成形品９に
は，ヘジテーションマークは全く生じていない。なお，
ランナー１内で形成された中空品には上記停止位置２５
の部分に，ヘジテーションマークが発生している。その
他，実施例１と同様の効果を得ることができる。

【００１９】実施例３ 本例は，図７及び図８に示すごとく，ランナーにおける
長尺状空洞部の形状を例示するものである。即ち，図７
に示すランナー１０１は，螺線状の長尺状空洞部を示し
ている。また，図８に示すランナー１０２は，多曲状の
長尺状空洞部を示している。その他は実施例１と同様で
ある。本例においても，実施例１と同様の作用効果を得
ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例１における中空成形型の断面図。

【図２】実施例１における樹脂注入時の状態を示す説明
図。

【図３】実施例１における流体注入時の状態及び成形品
を示す説明図。

【図４】実施例１の中空成形型の説明図。

【図５】実施例２における樹脂注入時の状態を示す説明
図。

【図６】実施例２における流体注入時の状態及び成形品
を示す説明図。

【図７】実施例３におけるランナー形状の説明図。

【図８】実施例３における他のランナー形状の説明図。

【図９】従来のアシストグリップ中空成形品の一部断面
正面図。

【符号の説明】

１，１０１，１０２．．．ランナー， １０．．．中空成形型， １５．．．スプルー， ２．．．キャビティ， ２２．．．前方成形部， ２５．．．停止位置， ７．．．樹脂， ８．．．中空部， ８０．．．流体， ９．．．アシストグリップ，

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 キャビティ内又はランナー内において中
   空成形品にヘジテーションマークが発生しても支障のな
   い停止位置まで樹脂先端部が来たとき一旦樹脂の注入を
   停止し，その後ランナーの中に流体を注入して該流体に
   よりランナー内の樹脂を押し出し，上記停止位置よりも
   前方の前方成形部へ樹脂を注入すると共に樹脂の内部に
   上記流体による中空部を形成するための中空成形型であ
   って，上記ランナーは，上記前方成形部へ注入すべき樹
   脂量を一旦保留できる長尺状空洞部により形成されてい
   ることを特徴とする中空成形型。