JPH0541529U - 車いす - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本考案の目的は、少なくとも座部の幅を変更
調節できる車いすを提供し、この幅変更において車いす
の機能を何ら損なうことのないものを完成することにあ
る。 【構成】 座部を形成するシート材２０は幅方向に長さ
調節自在に構成されると共に、折畳みに使用される揺動
自在な連結桿には長さ調節機構２６が設けられてなる車
いすである。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は重病者、老人や身体障害者等が利用する車いすに関し、詳細には少な くとも車いすにおける座部が幅方向に長さ調節自在であり、且つこの幅調節によ って他の機能に障害を及ぼすことのない車いすに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

図８は車いすの一例を示す正面図であり、車いす１は金属製パイプ材や布製又 は皮革製等のシート材を組合せてなり、乗用者が腰をおろす座部２及び背もたれ 部３が構成される。該座部２の両側部には自走用のハンドリムを備えた大車輪５ ，５が設けられると共に、該大車輪の前方には小キャスタ６，６が配設される。 また背もたれ部３の上方部にはパイプ材１０を延長してその先端を屈曲した手押 し用ハンドル１１が設けられ、該ハンドル１１によって介護者が車いすを後押し できる様に構成される。

【０００３】 また座部２の下方部には、該座部を構成するパイプ材１２に接続して１対の連 結桿２１，２２を設け、該連結桿２１，２２の略中央部同士を支軸２３によって 揺動自在に軸支する。これによって例えば車いす１を乗用車のトランク等に収納 する場合、支軸２３を中心として連結桿２１，２２を揺動し、大車輪５，５間を 縮めて車いす１を幅方向に折畳み、該車いす１がトランク内等に容易に収納でき る様にする。

【０００４】 なお車いす使用時には大車輪５，５間を拡げて座部２を広げ、乗用者の座り込 みを可能とする。座部２は図９に示す様にパイプ材１２，１２間を架け渡す如く シート材２５が張設され、その左右端部２５ａ，２５ａは袋状にして上記パイプ 材１２，１２を挿設しているので、座部２の幅Ｌ_S はシート材２５の幅によって 決定される。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

この様に上記の車いす１においては座部２の幅Ｌ_S はシート材２５の長さによ って決められているので、太った患者等が乗用するときには窮屈であったり、或 はやせた患者が乗用するときには姿勢が不安定になると共に、自走用ハンドリム の手回しストロークが短くなって自走に必要以上の体力を要する等の不具合があ った。

【０００６】 そこで本考案者は車いすの少なくとも座部の幅が調節可能である車いすを提供 することを主たる目的として工夫を重ね、またこの幅変更に伴って発生すること が予測される不都合をも同時に解消することのできる車いすを提供する。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成し得た本考案は、少なくとも１対の連結桿をＸ字状に組合せて 交点部で揺動可能に軸支すると共に、該Ｘ字状連結桿の上部に１対のパイプ材を 平行に配設し、該パイプ材間にシート材を張設して座部を形成し、該連結桿を揺 動させることにより幅方向に折畳みできる車いすであって、前記シート材は車い す幅方向に長さ調節自在に構成されると共に、上記連結桿は長手方向両側に向け て伸縮自在で且つ任意長さで固定できる構造であることを要旨とするものである 。

【０００８】

【作用及び実施例】

図１は本考案車いすの座部２及び背もたれ部３を示す一部斜視説明図である。 座部２は平行に設けられたパイプ材１２，１２及びシート材２０からなり、該シ ート材２０はパイプ材１２，１２を架け渡す様に張設され、上面側は平面状で、 下面側は３対の舌片状ベルト２０Ａ，２０Ｂで形成され、ベルト２０Ａの端部に はバックル２９が取付けられ、該バックル２９にベルト２０Ｂの端部を挿入し、 任意の挿通長さでベルト２０Ａ，２０Ｂを継ぎ止める。従ってバックル２９，２ ９，…を使用してベルト２０Ａ，２０Ｂの継ぎ止め長さを変えれば、パイプ材１ ２，１２の間隔は自由に変更することができ、座部２の幅を調節することができ る。

【０００９】 尚背もたれ部３を備えた車いすにあっては、図１に示す様に座部２と同様の構 造に形成し、バックル３９，３９を使用してベルト３１，３２の継ぎ長さを変更 できることとし、座部２と同じ幅に調節できる様にする。また背もたれ部３を構 成するパイプ材１０，１０は上下方向に延設されており、シート材３０を架け渡 してバックル３９，３９で継ぎ止めるだけでは、該シート材３０はずり落ちてく る。そこでパイプ材１０，１０には予め面ファスナー（商標名；マジックテープ ）の一方を添設しておくと共に、他方の面ファスナーをシート材３０の裏側に取 付けておくことが好ましく、これによってシート材３０がきちっと張設されなく ともシート材３０がずり落ちるのを確実に防止することができる。

【００１０】 上記ベルト２０Ａ−２０Ｂ又は３１−３２を継ぎ止める手段としては、例えば 図４に示す様な構造のバックル２９が用いられる。該バックル２９はピン軸２９ ｂを中心に揺動する係止アーム２９ｃが本体２９ａに取付けられ、一方のベルト ３２がこの本体２９ａに取付けられ、他方のベルト３１を上記係止アーム２９ｃ の把持部と本体２９ａの間に挟持してベルト３１を任意の位置で止めるものであ る。この継ぎ止め手段はこの例に限られず、その他公知のベルト用バックル構造 を利用したもの、或は前述の面ファスナーを使用したもの等であっても良い。

【００１１】 他方図２，図３は座部２の幅方向の長さ調節を模式的に示す正面説明図である 。パイプ材１２，１２は連結桿２１，２２に各々接続され、該連結桿２１，２２ はその略中央部で支軸２３によって揺動自在に軸支される。また各連結桿２１， ２２の両端部には長さ調節機構２６が備えられる。該長さ調節機構２６は例えば 図５に示す様に２本のパイプ２６Ａ，２６Ｂの嵌挿構造が用いられ、袋ナット２ ６ａを環２６ｂに螺合することにより、該環２６ｂのスリットを収縮してストッ パ２６ｃをパイプ２６Ａの外周面に押当てて両パイプ２６Ａ，２６Ｂを任意の位 置で固定する。この長さ調節機構２６は上記の例に限られず、ボルト部材を用い て嵌挿パイプ材を係止するものや、或は嵌挿パイプ材に設けた孔同士を合わせて そこにピンを挿入するもの等を利用したものであってもよい。

【００１２】 図２は座部２の幅Ｌ₁ を小さめに設定した状態を示しており、この状態から連 結桿２１，２２の上下部を広げて座部２を幅Ｌ₂ に変更する場合、幅はシート材 ２０を長く調節してやれば、簡単に変更することができるが、このままでは座部 ２の高さがＨよりＨ_L まで低下することになる。そこでシート材２０の幅をＬ₂ に変更するに際し、各連結桿２１，２２の長さ調節機構２６，２６，…を使用し て該連結桿２１，２２の長さを調節しつつ、該連結桿２１，２２の揺動を行なえ ば、図３に示す様に座部２の高さＨを一定に保ちながら、座部２の幅をＬ₁ から Ｌ₂ に変更することができる。

【００１３】 すなわち図６に示す様に上方のパイプ材１２に大車輪５が接続されると共に、 下方のパイプ材１５に小キャスタ６が接続される様な場合、連結桿２１，２２に 長さ調節機構２６を設けずにこれらを広げる方向に揺動させると、図７に示す様 に小キャスタ６の軸芯Ｏに対する大車輪５の軸芯の関係は、Ｏ₁ よりＯ₂ へ低下 する方向へ位置ずれＤを生じることになる。その結果、小キャスタ６と大車輪５ との位置関係において、小キャスタ６の車軸を支える軸受の芯Ｃ_L が車いすの前 後方向に角度αずれてＣ_A の如く傾いてしまうことになる。上記芯Ｃ_L は鉛直に 延設されていないと小キャスタ６を水平方向に回転することができなくなり、車 いすを任意方向へ方向転換できなくなってしまう。

【００１４】 この様な不具合を生じさせない様にするためには、図２，３で示した様にパイ プ材１２，１５間の距離を変更しない様にすることが必要であり、連結桿２１， ２２における長さ調節機構２６は上記の説明の様に重要な働きを発揮するもので ある。なお座部２の高さを調節自在とすることは、乗用者の体形に合わせられる という効果をも奏する。

【００１５】 また座部２の高さを調節する手段としては、大車輪５や小キャスタ６の車軸高 さを、複数の軸受孔を設けることによって任意の高さに車軸を配置する構造を採 用しても良く、また小キャスタ６の車軸を支える軸受の芯Ｃ_L を鉛直状態に保持 する手段として、該軸受の角度を車いすの前後方向で調節できる取付け構造を採 用するものであっても良い。

【００１６】 より好ましくは連結桿２１，２２における長さ調節機構２６に上記車軸高さ変 更構造及び／又はキャスタ角変更構造を併用することが推奨され、これによって 座部２の幅変更に際して、車いす１の機能を損なうことなく迅速な調整ができる 様になる。

【００１７】

【考案の効果】

本考案は以上の様に構成されているので、座部の幅方向の長さ調節が簡単にで きる様になり、複数の乗用者が利用する場合であっても夫々の乗用者の体形に合 わすことのできる車いすが提供できることとなった。また座部の幅変更に伴う車 いす機能上の不具合も解消することができ、乗用者又は介護者に不便を感じさせ ることもない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の車いすの座部及び背もたれ部を示す斜
視説明図である。

【図２】本考案の作動を示す説明図である。

【図３】本考案の作動を示す説明図である。

【図４】バックルの例を示す断面説明図である。

【図５】連結桿の長さ調節機能の例を示す一部破断説明
図である。

【図６】車いすの作動を示す説明図である。

【図７】車いすの作動を示す説明図である。

【図８】従来の車いすの一例を示す正面説明図である。

【図９】従来の車いす座部を示す模式説明図である。

【符号の説明】

２ 座部 ３ 背もたれ部 20 シート材 21、22 連結桿 23 支軸 26 長さ調節機構

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも１対の連結桿をＸ字状に組合
   せて交点部で揺動可能に軸支すると共に、該Ｘ字状連結
   桿の上部に１対のパイプ材を平行に配設し、該パイプ材
   間にシート材を張設して座部を形成し、該連結桿を揺動
   させることにより幅方向に折畳みできる車いすであっ
   て、前記シート材は車いす幅方向に長さ調節自在に構成
   されると共に、上記連結桿は長手方向両側に向けて伸縮
   自在で且つ任意長さで固定できる構造であることを特徴
   とする車いす。