JPH0540649U - 鋼製組合せオイルコントロールリング - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 幅（板厚）の薄型化によるサイドレールの剛
性低下を防止でき、スペーサエキスパンダ側でも特別な
加工を要せず薄形化が可能であり、所要のオイルシール
性を確保しかつ維持してエンジンのオイル消費量が増加
するのを抑制できる鋼製組合せオイルコントロールリン
グを提供する。 【構成】 スペーサエキスパンダ１３の幅方向の上下面
を平坦に形成し、両平坦面１３ａ、１３ｂに臨む上下一
対のサイドレール１１、１２の幅方向の各側面に厚さ方
向の中心円よりも外側に補強部（実施例の環状凸部１１
ｃ、１２ｃ）を設け、補強部を介してサイドレール１
１、１２をスペーサエキスパンダ１３の平坦面１３ａ、
１３ｂに当接させた構成である。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、内燃機関用ピストンリングに関し、詳しくは鋼製組合せオイルコン トロールリング（油かきリング）と呼ばれるものに関する。

【０００２】

【従来の技術】

この種の鋼製組合せオイルコントロールリングとしては、ＪＩＳＢ８０３２「 ピストンリング」付属書表３．６に示され、図２はその一例である。オイルコン トロールリング１は環状に成形された上下２つのサイドレール２、２と、これら サイドレール２、２間に介装されたスペーサエキスパンダ３とによって構成され ている。オイルコントロールリング１はピストン４のリング溝５に装着され、サ イドレール２、２の外周面をシリンダ壁面６に摺接させる。サイドレール２、２ は薄肉帯状鋼材を環状に成形し、側面は平坦に加工されている。 近年、内燃機関の高速化や軽量化に伴ってピストンが短小化する傾向にあり、 ピストンリングの幅（軸方向）寸法が縮小するのを余儀なくされている。ピスト ンリングの幅寸法の縮小により、図２で示されたサイドレール２、２の幅（板厚 ）も縮小することになる。 オイルコントロール機能に対しサイドレールが寄与できる点は、サイドレール の外周面がシリンダ壁面に摺接して油かきを行う機能の他、サイドレールの側面 をピストンリング溝の側面に圧接することによりオイルシール機能を維持するこ とである。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

ところが、近年のピストン短小化によって、特にオイルコントロールリングの 場合は圧縮リングに比較して幅寸法が大きいために、幅寸法縮小化への要求は強 い。このことは、サイドレール２とスペーサエキスパンダ３の双方の幅寸法を小 さく薄形にすることを意味する。サイドレール２の幅（板厚）が寸法的に薄くな ると、上下方向への剛性が低下し、円周方向に波状のうねり変形が発生してサイ ドレール側面の平坦性が損なわれる。その結果、ピストンリング溝の側面に対し てサイドレール側面の接触が不確実となることでオイルシール性を低下させ、エ ンジンのオイル消費量の増大を招く原因ともなっている。 一方、スペーサエキスパンダの場合、幅寸法を小さく薄くすることによってバ ネ弾性が大きくなり、シリンダ壁面への追従性が低下してオイルコントロール機 能を悪化させる。しかも、薄形化に伴い、従前からの構造のように上下のサイド レール２、２に当接する側に突起段部を設けることが困難になる、といった製作 加工面での新たな問題をも抱えることになる。 従って、本考案は、幅（板厚）の薄型化によるサイドレールの剛性低下を防止 でき、スペーサエキスパンダ側でも特別な加工を要せず薄形化が可能であり、所 要のオイルシール性を確保しかつ維持してエンジンのオイル消費量が増加するの を抑制できる鋼製組合せオイルコントロールリングを提供することを目的として いる。

【０００４】

【課題を解決するための手段】

本考案による鋼製組合せオイルコントロールリング、スペーサエキスパンダの 幅方向の上下面を平坦に形成し、両平坦面に臨む上下一対のサイドレールの幅方 向の各側面に厚さ方向の中心円よりも外側に補強部を設け、補強部を介してサイ ドレールをスペーサエキスパンダの平坦面に当接させた構成である。 本考案の場合、補強部としては、サイドレールの円周に沿って側面に突出させ た環状凸部、又は円周上で断続して突出させた凸部である。

【０００５】

【作用】

スペーサエキスパンダの平坦面に臨むサイドレールの幅方向の側面に厚さ方向 の中心円よりも外側に補強部を設けたことにより、スペースエキスパンダに対す るサイドレールの係合の安定化が図られる。また、補強部によってサイドレール の剛性を補償することができるから、サイドレールの幅方向の薄形化が可能であ る。スペーサエキスパンダもサイドレール側に補強を設けた分、上下面を平坦面 とすることができ、それだけ薄形化が図られる。更に、サイドレールの剛性強化 によってスペーサエキスパンダの押し付け力による変形、エンジン運転中にピス トンから受ける衝撃や振動によるうねりの発生が抑止される。これにより、サイ ドレールの係合安定化に相まって所要のオイルシール性を確保でき、エンジンの オイル消費量の低減が可能である。

【０００６】

【実施例】

以下、本考案による鋼製組合せオイルコントロールリングの実施例を図面に基 づいて説明する。 図１は、実施例のオイルコントロールリング１０を４サイクルガソリンエンジ ンに適用した例を示す。オイルコントロールリング１０は上下２つのサイドレー ル１１、１２を有し、サイドレール１１、１２間にスペーサエキスパンダ１３を 有する。サイドレール１１、１２は冷間圧延鋼板が用いられ、例えば板厚×幅の 寸法が０．３ｍｍ×２．３ｍｍのものである。

【０００７】 スペーサエキスパンダ１３の内周側には上下にそれぞれ耳部１４、１５を突出 させて設けてあり、この上下の耳部１４、１５の傾斜面１４ａ、１５ａに上下の サイドレール１１、１２の内周端１１ａ、１２ａを当接させている。傾斜面１４ ａ、１５ａの傾斜角度はここでは特に限定しない。また、スペーサエキスパンダ １３の幅方向の上下面は平坦面１３ａ、１３ｂになっていて、この平坦面１３ａ 、１３ｂに上下のサイドレール１１、１２を当接させている。

【０００８】 次に、上下のサイドレール１１、１２では、スペーサエキスパンダ１３の上下 平坦面１３ａ、１３ｂに当接する側の側面にそれぞれ環状凸部１１ｃ、１２ｃが 設けられ、これら環状凸部１１ｃ、１２ｃを介して上下のサイドレール１１、１ ２がスペーサエキスパンダ１３の上下平坦面１３ａ、１３ｂに当接している。即 ち、サイドレール１１、１２とスペーサエキスパンダ１３の上下平坦面１３ａ、 １３ｂとの間にはクリアランスＣ₁、Ｃ₂が形成される。環状凸部１１ｃ、１２ｃ は、サイドレール１１、１２の幅方向の剛性を強化する意味で「補強部」となる ものである。従って、環状凸部１１ｃ、１２ｃを設けた分、サイドレール１１、 １２の幅方向の寸法を薄形化できる。所要の剛性が得られれば、凸部１１ｃ、１ ２ｃを全周にわたって環状とせず、周に沿って凸部１１ｃ、１２ｃを好適なピッ チで断続的に突出させた構造も可能である。

【０００９】 図から明らかなように、環状凸部１１ｃ、１２ｃは、サイドレール１１、１２ の厚さ方向で中心円（図中Ａ−Ａ線）よりも外側の位置に設けられている。外側 に設けられる理由は、スペーサエキスパンダ１３との係合を安定させるためであ る。即ち、サイドレール１１、１２の厚さ方向の一方端である内周端１１ａ、１ ２ａを耳部１４、１５に当接させるのに対し、サイドレール１１、１２の他方端 の外周端１１ｂ、１２ｂに近い部分で環状凸部１１ｃ、１２ｃをスペーサエキス パンダ１３の平坦面１３ａ、１３ｂに当接させることで、サイドレール１１、１ ２が厚さ方向で両端支持される姿勢となる。

【００１０】 また、スペーサエキスパンダ１３としても、上下のサイドレール１１、１２と の関係から幅方向の上下面を平坦面１３ａ、１３ｂにすることができ、それだけ 幅方向の寸法の薄形化が可能となる。

【００１２】 以上の構成によるオイルコントロールリング１０はピストン２０のリング溝２ １に装着され、スペーサエキスパンダ１３の弾性力でサイドレール１１、１２を この外周側端がシリンダ壁面３０に当接する方向に押圧している。ちなみに、リ ング溝２１の幅寸法は例えば２．５ｍｍである。

【００１３】 次に、図１を参照しつつ実施例の鋼製組合せオイルコントロールリング１０の 作用を説明する。 エンジン仕様は、４気筒４サイクルのガソリンエンジンで、シリンダ径が８５ ｍｍ、排気量が１８００ｃｃである。オイルコントロールリング１０は組合せ後 の幅２．５ｍｍ、厚さが２．８ｍｍのものが用いられている。

【００１４】 上下のサイドレール１１、１２の各内周側がスペーサエキスパンダ１３の上下 耳部１４、１５の内周傾斜面１４ａ、１５ａに接触しており、斜面の作用で上の サイドレール１１の内周端１１ａが押し上げられてリング溝２１の上面２１ａに 圧接され、下のサイドレール１２の内周端１２ａが押し下げられてリング溝２１ の下面２１ｂに圧接される。同時に、上下のサイドレール１１、１２はスペーサ エキスパンダ１３のばね力でシリンダ壁面３０に押圧される。サイドレール１１ 、１２がリング溝２１の上下面２１ａ、２１ｂに対して圧接されることによって オイルシール性を確保でき、オイルシール機能を維持することができる。

【００１５】 運転中、サイドレール１１（１２）は板厚が薄く低い剛性を環状凸部１１ｃ（ １２ｃ）による補強部で強化することができ、スペーサエキスパンダ１３の耳部 １４、１５による斜面押し上げ、押し下げ力で円周方向に波状のうねりや局部的 な変形が生じるのを抑えることができる。即ち、スペーサエキスパンダ１３に対 し上下のサイドレール１１、１２の係合が運転中でも安定し、リング溝２１に対 してもサイドレール１１、１２の各側面が全周で確実に接触することにより、オ イルの流出を抑制できる。

【００１６】

【考案の効果】

以上説明したように、本考案による鋼製組合せオイルコントロールリングは、 スペーサエキスパンダの平坦面に臨むサイドレールの幅方向の側面に厚さ方向の 中心円よりも外側に補強部を設けたことにより、スペースエキスパンダに対する サイドレールの係合の安定化が図られる。また、補強部によってサイドレールの 剛性を補償することができるから、サイドレールの幅方向の薄形化が可能である 。スペーサエキスパンダもサイドレール側に補強を設けた分、上下面を平坦面と することができ、それだけ薄形化が図られる。 従って、サイドレールの剛性強化によってスペーサエキスパンダの押し付け力 による変形、エンジン運転中にピストンから受ける衝撃や振動によるうねりの発 生が抑止される。これにより、サイドレールの係合安定化に相まって所要のオイ ルシール性を確保でき、エンジンのオイル消費量の低減が可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案による実施例の鋼製組合せオイルコン
トロールリングを装着した状態の断面図。

【図２】 従来例の鋼製組合せオイルコントロールリン
グの運転中の作用態様を示す断面図。

【符号の説明】

１０．．鋼製組合せオイルコントロールリング、１１、
１２．．サイドレール、１１ｃ（１２ｃ）．．環状凸
部、１３．．スペーサエキスパンダ、１３ａ、１３
ｂ．．．上下平坦面、１４、１５．．スペーサエキスパ
ンダ耳部、２１．．ピストンリング溝、３０．．シリン
ダ壁面。

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 スペーサエキスパンダの幅方向の上下面
   を平坦に形成し、両平坦面に臨む上下一対のサイドレー
   ルの幅方向の各側面に厚さ方向の中心円よりも外側に補
   強部を設け、補強部を介してサイドレールをスペーサエ
   キスパンダの平坦面に当接させたことを特徴とする鋼製
   組合せオイルコントロールリング。
2. 【請求項２】 補強部がサイドレールの円周に沿って側
   面に突出させた環状凸部、又は円周上で断続して突出さ
   せた凸部である「請求項１」に記載の鋼製組合せオイル
   コントロールリング。