JP4183995B2 - 組合せピストンリング及びピストン装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関に使用される組合せピストンリング、及び組合せピストンリングを装着したピストン装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の往復動内燃機関の高性能化に伴い、ピストンリングにあっても、ピストンリングの本数を減らすことによる低摩擦化や、一本のピストンリングにガスシール性とオイル掻き能力を併せ持たせる高機能化が求められている。これに対応して、外周にテーパ面を有するピストンリング本体とエキスパンダとからなる1本リング構成の内燃機関用ピストン装置が特開2002−13639において提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特開2002−13639において提案されている組合せピストンリングは、エキスパンダにコイルエキスパンダや板ばね状のプレートエキスパンダが用いられている。コイルエキスパンダの場合は、ピストンリング本体の背面の上下方向(軸方向)中央部を、プレートエキスパンダの場合は、ピストンリング本体の背面の上下方向全体を、シリンダ内周面に向かって押し付けている。一方、ピストンリング本体の外周面は、上下方向の中央部よりも下方でシリンダ内周面と接している。したがって、ピストンリング本体が背面をエキスパンダで押されたとき、ピストンリング本体はモーメントを受けるため、外周面がシリンダ内周面に対して傾斜し、ピストンリング本体の外周テーパ面とシリンダ内周面とで形成する角度が小さくなり、オイル掻き効果が充分発揮されない場合がある。
【0004】
低摩擦化、高速化により、ピストンリングの薄幅化が進んでいるが、1.2mm以下の幅寸法では、コイルエキスパンダは製造が困難である。一方、プレートエキスパンダはピストンリング溝に対して上下のクリアランスが大きい場合、運転時の上方方向のバタツキによってピストンリング溝の摩耗を増加させる場合がある。この対策として、上下方向に波形にし、ピストンリング溝幅と実質的に等しい幅としたプレートエキスパンダが、特公平6−97068号において提案されている。しかしながら、このプレートエキスパンダはピストンリング溝への挿入が容易でない等の問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、低摩擦化を実現でき、かつ、ガスシール性とオイル掻き能力に優れる組合せピストンリングを提供することをにある。更には、プレートエキスパンダ及びピストンリング溝の摩耗を抑制できるピストン装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、次の手段を採る。すなわち、
本発明は、ピストンリング本体と、ピストンリング本体をシリンダ内周面に押し付けるプレートエキスパンダとで構成されている組合せピストンリングにおいて、
前記ピストンリング本体が、外周面と内周面の下部に形成されている平坦部と、半径方向厚さが減少するように前記外周面と内周面の平坦部から上方に延びている傾斜部とを備え、
前記外周側の平坦部の軸方向幅が0.1〜0.4mmで、前記内周側の平坦部の軸方向幅がピストンリング本体の軸方向幅の1/4〜1/2で、前記内周側と外周側の平坦部における軸方向幅の差がピストンリング本体の軸方向幅の1/3以下であり、
前記プレートエキスパンダは、組合せピストンリングがピストンリング溝に装着されたとき、ピストンリング溝の底面と上下面とのコーナー部に形成されている上下の曲面部に当接する軸方向幅を備えていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、エキスパンダにプレートエキスパンダを採用したので、組合せピストンリングの薄幅化を達成でき、低摩擦化に寄与できる。また、ピストンリング本体の内周面において平坦部の上方を傾斜部としたので、ピストンリング本体は背面の下部をプレートエキスパンダで押されることになる。その結果、外周上部に傾斜部を備えているピストンリング本体が受けるモーメントを低減できるので、ピストンリング本体の変形が抑制される。その結果、ピストンリング本体の外周面の傾斜部とシリンダ内周面との角度を所定の傾斜角に保持でき、オイル掻き効果を充分発揮することを可能にする。
【0008】
なお、ピストンリング本体における外周側の平坦部の軸方向幅は、上記のように0.1〜0.4mmとするのが好ましい。0.1mmより小さいと、外周摺動面の面圧が高くなり、摩耗が多くなる。0.4mmより大きいと、外周摺動面の面圧が低くなり、オイル掻き能力が低下する。
【0009】
また、上記のように、ピストンリング本体における内周側の平坦部の軸方向幅がピストンリング本体の軸方向幅の1/4〜1/2で、ピストンリング本体の内周側と外周側の平坦部における軸方向幅の差は、ピストンリング本体の軸方向幅の1/3以下とするのが好ましい。これは、後述するオイル消費試験結果(表1参照)に示されているように、上記範囲でオイル消費がより少ない結果を得られる。
【0010】
上記組合せピストンリングをピストンリング溝に有するピストンにおいて、前記プレートエキスパンダは、ピストンリング溝の底面と上下面とのコーナー部に形成されている上下の曲面部に当接して配置される。
【0011】
このように構成すれば、プレートエキスパンダがリング溝底面のコーナー部で上下方向に固定され、上下方向のバタツキが抑制されるので、プレートエキスパンダ及びピストンリング溝の摩耗を抑制できる。そして、プレートエキスパンダはピストンリング溝の上下面との間に隙間を有するので、ピストンリング溝への挿入が容易である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1において、1はピストン、2はシリンダで、ピストン1の外周に形成されているピストンリング溝3に組合せピストンリング4が装着されている。組合せピストンリング4は、ピストンリング本体5と、ピストンリング本体5をシリンダ内周面2aに押接させるプレートエキスパンダ6とから構成されている。
【0014】
ピストンリング本体5は、合い口を有し、矩形断面の内外周にそれぞれテーパ面を形成した断面形状を有している。即ち、ピストンリング本体5の外周面は下部に形成されている平坦部7と、平坦部7の上端から上方に延びている傾斜部8とから構成されている。そして、内周面も下部に形成されている平坦部9と、平坦部9の上端から上方に延びている傾斜部10とから構成されており、内外周面の傾斜部8,10はピストンリング本体5の半径方向厚さが減少するように形成されている。そして、外周側の平坦部7の軸方向幅は0.1〜0.4mmで、内周側の平坦部9の軸方向幅がピストンリング本体5の軸方向幅の1/4〜1/2で、内周側と外周側の平坦部7,9における軸方向幅の差がピストンリング本体5の軸方向幅の1/3以下に構成されている。
【0015】
プレートエキスパンダ6は、図1及び図2に示されているように、鋼帯を多角形状に成形した板ばねで、ピストンリング本体5の内周側に配置し、ピストンリング本体5を背面から押圧してピストンリング本体5の外周面をシリンダ内周面2aに押接させる。プレートエキスパンダ6は、組合せピストンリング4がピストンリング溝3に配置されたとき、ピストンリング溝3の底面3aと上下面3b,3cとのコーナー部に形成されている上下の円弧曲面部(R部)11,12に当接する軸方向幅を備えている。
【0016】
したがって、組合せピストンリング4がピストンリング溝3に装着された状態で、プレートエキスパンダ6はプレートエキスパンダ6を形成する多角形の各頂点における外周部分がピストンリング本体5の内周面の平坦部9を押圧して、ピストンリング本体5をシリンダ内周面2aに押接させる。また、プレートエキスパンダ6は、プレートエキスパンダ6を形成する多角形の各辺の中央部分における上下端部が、ピストンリング溝3の底面3aにおける上下のコーナー部の円弧曲面部11,12に当接した状態でピストンリング溝3内に配置される。
【0017】
プレートエキスパンダ6を使用すれば、1.2mm以下の幅寸法の薄幅の組合せピストンリング4を実現することができる。
【0018】
以下、オイル消費試験を説明する。
試験は、2.0リッター4気筒ガソリンエンジンに上記組合せピストンリングを組み込んで行われた。試験条件は5000rpm×全負荷で、組合せピストンリングは1気筒当たり1本使用した。ピストンリング本体の寸法(mm)と試験結果を表1に示す。表1において、Bはピストンリング本体の軸方向幅、aはピストンリング本体における外周側の平坦部の軸方向幅、bはピストンリング本体における内周側の平坦部の軸方向幅を示す(図3参照)。
【0019】
【表1】
【0020】
表1に示す試験結果から以下のことが明らかである。ピストンリング本体における外周側の平坦部の軸方向幅が0.1〜0.4mmの範囲にある実施例は、0.4mmを超えている比較例4〜6,11,12と比較して、オイル消費量が少ない。内周側と外周側の平坦部における軸方向幅の差がピストンリング本体の軸方向幅の1/3以下の範囲にある実施例は、1/3を超えている比較例1〜4,7〜10と比較して、オイル消費量が少ない。
【0021】
なお、上記組合せピストンリングは、2〜4本リング構成のピストン装置のみならず、1本リング構成のピストン装置にも採用することができる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の組合せピストンリングによれば、低摩擦化を実現でき、かつ、ガスシール性とオイル掻き能力に優れる。更には、本発明のピストン装置によれば、プレートエキスパンダ及びピストンリング溝の摩耗を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1においてピストンリング本体の平坦部部分で切った組合せピストンリングの平断面図である。
【図3】ピストンリング本体の各部の寸法を示す図である。
【符号の説明】
1 ピストン
2 シリンダ
2a シリンダ内周面
3 ピストンリング溝
3a リング溝底面
3b リング溝上面
3c リング溝下面
4 組合せピストンリング
5 ピストンリング本体
6 プレートエキスパンダ
7,9 平坦部
8,10 傾斜部
11,12 円弧曲面部
Claims (2)
- ピストンリング本体と、ピストンリング本体をシリンダ内周面に押し付けるプレートエキスパンダとで構成されている組合せピストンリングにおいて、
前記ピストンリング本体が、外周面と内周面の下部に形成されている平坦部と、半径方向厚さが減少するように前記外周面と内周面の平坦部から上方に延びている傾斜部とを備え、
前記外周側の平坦部の軸方向幅が0.1〜0.4mmで、前記内周側の平坦部の軸方向幅がピストンリング本体の軸方向幅の1/4〜1/2で、前記内周側と外周側の平坦部における軸方向幅の差がピストンリング本体の軸方向幅の1/3以下であり、
前記プレートエキスパンダは、組合せピストンリングがピストンリング溝に装着されたとき、ピストンリング溝の底面と上下面とのコーナー部に形成されている上下の曲面部に当接する軸方向幅を備えていることを特徴とする組合せピストンリング。 - 少なくとも1つのピストンリング溝を有するピストンにおいて、
ピストンリング溝に請求項1記載の組合せピストンリングが装着され、前記プレートエキスパンダが、ピストンリング溝の底面と上下面とのコーナー部に形成されている上下の曲面部に当接して配置していることを特徴とするピストン装置。
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