JPH0539021A - アンチロツクブレーキ装置 - Google Patents

アンチロツクブレーキ装置

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JPH0539021A
JPH0539021A JP28236091A JP28236091A JPH0539021A JP H0539021 A JPH0539021 A JP H0539021A JP 28236091 A JP28236091 A JP 28236091A JP 28236091 A JP28236091 A JP 28236091A JP H0539021 A JPH0539021 A JP H0539021A
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slip ratio
brake
alternating
road surface
value
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JP28236091A
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Masahiko Fukumoto
将彦 福本
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NDK Inc
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Nihon Denshi Kogyo KK
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Abstract

(57)【要約】 〔目的〕 路面摩擦係数をその最大点付近に常時追随さ
せることにより、最大の制動力、最短の制動距離を実現
するとともに、制動力の変動もなく、最良のブレーキフ
ィーリングを実現するアンチロックブレーキ装置を提供
することを目的とする。 〔構成〕 スリップ比に微小な交番変動を付加する手段
を備え、スリップ比の微小な変動とこれに伴って応答す
る路面摩擦係数の微小な変動の各々の幅、位相等の関係
から路面摩擦係数のスリップ比に対する増加率を算出
し、当該増加率の値の大きさに基づいて、ブレーキ力を
増加、保持、若しくは減少させ、かつ増加若しくは減少
の速さを加減するように構成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車輪の制動時にロック
(車体が走行中にも拘らず車輪のみが静止する現象)を
防止するアンチロックブレーキ装置(ABS)に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】自動車等の車両に於ける市販のアンチロ
ックブレーキ装置(ABS)は、車輪速度センサーの信
号をもとに車輪速度、車輪加速度(または車輪減速
度)、並びに車体速度を演算し、これらの組合せにより
ロックを防止するようブレーキ力(車輪の回転を制動す
る力)の制御を行なうものである。前記の市販のABS
はまず第1に、スリップ比(車輪のスリップの度合を表
わす量で、車輪速度と車体速度の比の1に対する補数で
定義される)を算出し、これが所定の基準値を超えたと
きに、車輪ロック前兆と判断してブレーキ力を緩めるベ
く指令し、ブレーキ力を強める行程からブレーキ力を緩
める行程に移行する。路面の状態により路面摩擦係数
(μ)対スリップ比(S)特性が異なるにも拘らず、μ
を検出する手段を欠いておりμが未知であるために、こ
の基準値は一定に設定される。このために路面の状況に
よって、ブレーキ緩めに入る時期が望ましい時期よりも
遅れる。その結果、車輪の回転が回復するまでに時間を
要し、ブレーキ緩めの行程にある期間が長くなり、制動
力(路面が車体を制動する力の意味であり、路面摩擦力
の全車輪にわたる総和に他ならない)の損失が大きく制
動距離(制動開始から停車までの走行距離)が長くなる
他、制動力の変動が激しくブレーキフィーリングが悪く
なるという欠点を有している。スリップ比は車輪速度と
車体速度とから算出されるが、車体速度は車輪速度から
算出される。スリップを起こしつつある車輪の速度から
算出されるために、車体速度の算出値は本質上推定値で
しか有り得ない。それ故、スリップ比は必然的に誤差を
含んでおり、路面の状況やブレーキペダルの踏み加減に
よっては、特にその誤差が拡大される。このスリップ比
の推定値に於ける誤差によっても、前述のブレーキ緩め
に移行する時期の遅れが生じる。前記市販のABSは第
2に、ブレーキ力を緩める行程の後、再びブレーキ力を
強める行程に移行するが、ここでは車輪加速度(または
車輪減速度)を所定の基準値と比較し、その大小関係に
応じてブレーキ力を強める速さを加減している。このと
きにも、μが未知であることからブレーキ力を回復する
目標値をロック前兆に至るよりも前にあらかじめ定める
ことができないために、車輪ロック前兆に至ることを未
然に回避するためにはブレーキ力を緩慢な速さで上昇さ
せるしかなく、ブレーキ力が回復するまでに不必要に時
間を要する。このため制動力の損失が大きく制動距離が
長くくなるという欠点を有している。前記市販のABS
は第3に、前記の再びブレーキ力を強める行程に於て、
路面が相対的に低いμの路面から高いμの路面に変わっ
たときに、μを検出する手段がなくμの変化を認識する
ことができないために、高いμに応じて高いブレーキ力
に早期に到達することができない。このために制動力の
損失が大きく制動距離が長くなるという欠点を有してい
る。以上のように市販のABSは、センサーとして車輪
速度センサーのみを備えるものであって、路面摩擦係数
を検出する手段を有しないことから、制動力の損失が大
きく制動距離が長くなる他、制動力の変動が激しくブレ
ーキフィーリングが悪くなるという欠点を有している。
【0003】市販のABSの持つ上記の欠点を改善する
ものとして、路面摩擦係数(μ)を検出する手段を有し
たABSが発明され、例えば、特開昭56−39945
号、同一出願人による特願平1−197809号、特開
昭62−166152号などが開示されている。上記前
2件の公知例では、μの時間変化率(μの時間微分dμ
/dt)の大きさによってブレーキ力の強め行程から緩
め行程への切替えを行なうことを構成要件の1つとして
いる。このため、ブレーキ力の緩め行程への移行が路面
の状況によらずにより適切な時期に実現する。これらの
発明に於ては、ブレーキ強め行程と緩め行程とを制動の
過程に於て際限なく反復するものである。このために、
第2回目以降のブレーキ強め行程に於ても短時間でブレ
ーキ力が回復するほか、相対的に低いμの路面から高い
μの路面に変化したときにも、速やかに高いμに対応し
た高いブレーキ力に到達する。しかしながら、ブレーキ
作動開始後第1回目のブレーキ力強め行程に於てのみな
らず、第2回目以降のブレーキ力強め行程に於ても毎回
ロック前兆に至り、ブレーキ緩め行程が後続することか
ら、反面に於て制動力の損失の低減に限界があり、特に
μが変化しない一定路面では制動距離が市販のABSに
比べて大きく改善されることは期待できない。それに加
えて、制動力に体感し得る振動が持続し、ブレーキフィ
ーリングは市販のABSとは別の意味で良くない。ま
た、μの時間変化率を参照するために、ブレーキペダル
の踏み加減によってブレーキ力を強め或は緩める行程を
切り替える時期が誤って設定される危険を有している。
上記第3番目の公知例では、路面摩擦係数を求める手段
とともに、スリップ比を求める手段を具備し、路面摩擦
係数の単位時間毎の変化量とスリップ比の同じく変化量
との比(μのS変化率と称する)の大きさを所定の基準
値と比較して、その大小関係によりブレーキ力の強めま
たは緩め行程の切り替えを行なっている。μの時間変化
率ではなくS変化率を参照するために、ブレーキペダル
の踏み加減によってブレーキ力を強め或は緩める行程を
切り替える時期が誤って設定される危険を回避できるほ
か、μの時間変化率を参照する場合に比べて路面のμ対
S特性をよりよく反映するために、ブレーキ力の緩め行
程への移行がより適切な時期に実現される。また、ブレ
ーキ油圧センサー(ブレーキ油圧はブレーキ力のもとに
なる)を備えて、ブレーキ力強め行程に於てμが最大値
に達したときの油圧の値をあらかじめ記憶しておき、引
き続くブレーキ力緩め行程から再び強め行程へ復帰した
後、まず始めに前記の記憶された油圧の値まで早急に油
圧を(従ってブレーキ力を)上昇させる。このため、第
2回目以降のブレーキ強め行程に於て短時間でブレーキ
力が回復する。更にブレーキ作動開始後2回目以降のブ
レーキ強め行程に於て、前記大小関係に基づいてブレー
キ力を強める速さを加減することを特徴としている。こ
れは、第2回目以降のブレーキ力強め行程に於て、路面
のμの最大値付近を追跡して高いブレーキ力を常時実現
するとともにロック前兆に至ることを事前に防ぎ、制動
力の変動を抑えることを目指したものと解し得る。ま
た、相対的に低いμの路面から高いμの路面に変化した
ときにも、速やかに高いμに対応した高いブレーキ力に
到達し得る。ブレーキ強め行程と緩め行程とを制動の過
程に於て際限なく反復するものではなく、この点市販の
ABSと同様で、μが変化しない一定路面でも制動距離
が市販のABSに比べて大きく改善されることが期待さ
れる。しかしながら、この第3の公知例に於てもブレー
キ作動開始後初回のブレーキ力強め行程に於て、ロック
前兆に至ってブレーキ緩め行程が後続することは避けら
れない。市販のABSよりも制動力の変動は小さく改善
されているとはいえ変動そのものは消滅せず、制動距離
及びブレーキフィーリングにも改善の余地がある。ま
た、第2回目以降のブレーキ力を強める行程に於て、μ
の最大値の付近に動作点がある時にはブレーキ力を強め
る速さを緩和するように動作するが、このときスリップ
比の変化が小さいために、算出されるμのS変化率の精
度が劣ることになり、誤ったブレーキ力の制御に至る危
険がある。それ故、μの最大点付近に動作点を追随させ
続けることは困難である。
【0004】本来ABSの理想的な動作は、μの最大点
付近に常時追随させるところにあり、この時に制動力は
最大となり、制動距離は最短となるばかりでなく、制動
力の変動もなく、ブレーキフィーリングは最良となる。
このような理想的な動作を実現するABSは、上に記述
したように従来の技術の中には未だ実現されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の技術
が有する上記の問題点を除去し、理想的な動作を保障す
るアンチロックブレーキ装置(ABS)を提供すること
を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに提案される請求項1の本発明は、車輪と路面との間
のスリップ比を算出する手段と、車輪に作用する路面摩
擦力を検出する手段を備えたアンチロックブレーキ装置
に於て、スリップ比に微小な交番変動を付加する手段を
備え、スリップ比の微小な変動とこれに伴って応答する
路面摩擦力の微小な変動の各々の幅、位相等の関係から
路面摩擦力のスリップ比に対する変化率を算出し、当該
変化率の値の大きさに基づいてブレーキ力を増加、保
持、若しくは減少させ、かつ増加若しくは減少の速さを
加減することを特徴とするものである。請求項2に記載
の本発明は、車輪と路面との間のスリップ比を算出する
手段と、車輪に作用する路面摩擦係数を検出する手段を
備えたアンチロックブレーキ装置に於て、スリップ比に
微小な交番変動を付加する手段を備え、スリップ比の微
小な変動とこれに伴って応答する路面摩擦係数の微小な
変動の各々の幅、位相等の関係から路面摩擦係数のスリ
ップ比に対する変化率を算出し、当該変化率の値の大き
さに基づいて、ブレーキ力を増加、保持、若しくは減少
させ、かつ増加若しくは減少の速さを加減することを特
徴とするものである。請求項3に記載の本発明は、請求
頁1若しくは請求項2に記載のアンチロックブレーキ装
置に於て、スリップ比に微小な交番変動を付加する手段
が、ブレーキ力に微小な交番変動を付加する手段である
ことを特徴とするものである。請求項4に記載の本発明
は、請求頁1若しくは請求項2に記載のアンチロックブ
レーキ装置に於て、スリップ比に微小な交番変動を付加
する手段が、車輪の車軸に該車軸に略直角かつ路面に略
平行な方向に微小な交番変位を付加する手段であること
を特徴とするものである。
【0007】
【作用】請求項1の本発明では、スリップ比に微小な交
番変動を付加する手段を備えているために、ブレーキ力
の制御の任意の途上に於て、動作点の廻りにスリップ比
の微小な交番変動並びにこれに応答する路面摩擦力に同
じく微小な交番変動を引き起こすことができる。スリッ
プ比を算出する手段と路面摩擦力を検出する手段とによ
り、これらの変動の大きさ、位相を捉えることができ、
これらの関係からその動作点に於ける路面摩擦力のスリ
ップ比に対する変化率(路面摩擦力のS変化率と称す
る)、すなわち路面摩擦力対スリップ比の曲線に於ける
動作点上の傾きを推定することができる。この推定値を
もとに、ブレーキ力の増加、減少、若しくは保持の切り
替えを行なうとともに、増加、減少の速さをも調節す
る。このことにより、路面の状況に拘らず路面摩擦力の
最大点付近に動作点を常時追随させることができる。請
求項2の本発明では、スリップ比に微小な交番変動を付
加する手段を備えているために、ブレーキ力の制御の任
意の途上に於て、動作点の廻りにスリップ比の微小な交
番変動並びにこれに応答する路面摩擦係数に同じく微小
な交番変動を引き起こすことができる。スリップ比を算
出する手段と路面摩擦係数を検出する手段とにより、こ
れらの変動の大きさ、位相を捉えることができ、これら
の関係からその動作点に於ける路面摩擦係数のスリップ
比に対する変化率(路面摩擦係数のS変化率と称す
る)、すなわち路面摩擦係数対スリップ比の曲線に於け
る動作点上の傾きを推定することができる。この推定値
をもとに、ブレーキ力の増加、減少、若しくは保持の切
り替えを行なうとともに、増加、減少の速さをも調節す
る。このことにより、路面の状況に拘らず路面摩擦係数
の最大点付近に動作点を常時追随させることができる。
請求項3の本発明は、請求項1若しくは請求項2に記載
のアンチロックブレーキ装置に於て、ブレーキ力に微小
な交番変動を付加することにより車輪の回転速度に微小
な交番変動を引き起こし、その結果スリップ比に微小な
交番変動が付加されるものである。請求項4の本発明
は、請求項1若しくは請求項2に記載のアンチロックブ
レーキ装置に於て、車軸を車輪の略進行方向に強制的に
微小振動させることによって、スリップ比に微小な交番
変動が付加されるものである。
【0008】
【実施例】ここに示すのは車両、特に自動車に実施した
好ましい実施形態の一例であって、特許請求の範囲はこ
こに示す実施例に限定されるものではない。図1に、本
発明のアンチロックブレーキの実施例に於ける全体構成
のブロック図を示す。実際には車輪毎に必要な構成要素
を、独立にアンチロック制御を行なう車輪の数だけ並列
的に備えているが、図を簡略明快にするために便宜上1
車輪に関してのみ描いている。制御装置1は車輪2に関
わる諸計測データ、並びにそれらを加工した諸データを
もとに、アンチロック制御を目的としてブレーキ油圧の
上昇若しくは下降の速度の指示値(ps)を演算し結果
をアクチュエータ3へ送出する。送出される信号は、ア
ナログ信号、デジタル信号の何れでもよい。制御装置1
は、マイクロプロセッサ、メモリー、及び入出力インタ
フェイスを含む電子回路で構成され、予めメモリーに書
き込まれたプログラムに従って動作する(このように構
成された電子回路を以下に於てコンピュータ回路と表現
する)。アクチュエータ3では、ブレーキ油圧の変化速
度の指示値(ps)に基づいて、ブレーキ油圧の制御を
行なう。例えば比例弁を用いて、ブレーキ油圧の変化速
度の指示値に応じて比例弁の開度を調節する。或はデジ
タル弁を用いてこれをパルス的に開閉動作させ、ブレー
キ油圧の変化速度の指示値に応じて、開閉のパルス時間
幅或は単位時間中の開閉パルス数を調節する。アクチュ
エータにはブレーキ油圧の変化速度の指示値を比例弁の
開度、或はデジタル弁のパルス幅若しくはパルス数に変
換するための電子回路を備える。この電子回路は、コン
ピュータ回路で実現することもできる。制御装置1から
出力されるブレーキ油圧の変化速度の指示値には、交番
油圧指示値生成装置4により出力される交番油圧の変化
速度の指示値が加算器5に於て加算される。この加算さ
れた指示値がアクチュエータ3へ送られる。交番油圧指
示値生成装置4は、アナログ振動電圧を生成する発振器
或はアナログ振動電圧に対応するデジタル信号を生成す
る電子回路により構成される。加算器5は、例えば演算
増幅器により構成されるアナログ電圧加算器、或はデジ
タル加算器を用いる。これにより、アクチュエータ3で
制御されるブレーキ油圧は、アンチロックを目的として
調整された油圧に交番油圧が重畳したものになる。この
ブレーキ油圧はブレーキ装置6へ油圧配管7を経由して
伝達される。交番油圧の周波数(fc)は、例えば20
から50Hz程度の大きさに設定される。路面により車
輪に作用する路面摩擦力(F)及び垂直抗力(N)をそ
れぞれ路面摩擦力センサー8、及び垂直抗力センサー9
により計測する。路面摩擦力センサー8については例え
ば、同一出願人の特願平1−197809号、或は特開
昭62−110554号に開示される公知の計測手段を
用いる。垂直抗力センサー9については、例えば同一出
願人の特願平1−197809号、或は特開昭56−3
9946号に開示される公知の計測手段を用いる。これ
らの計測信号は路面摩擦係数演算装置10へ入力され
る。この路面摩擦係数演算装置10は割算を行なう装置
であり、公知技術により構成される電子回路である。F
とNとの商を演算し得られた結果すなわちμの値を出力
する。出力信号μは制御装置1へ送られ、同時にバンド
パスフィルタ11を経由して路面摩擦係数のスリップ比
変化率演算器12へ送られる。バンドパスフィルタ11
は、入力信号の中から交番油圧指示値生成装置4で生成
される交番油圧の変化速度の指示値に於ける交番振動の
周波数(fc)に相当する周波数成分を選択的に通過さ
せる機能を有したフィルタであり、入力信号μの中から
前記周波数(fc)成分(μのfc成分、或は交番μ)
を選択的に取り出した信号を路面摩擦係数のスリップ比
変化率演算器12へ出力する。車輪速度センサー13は
車輪の回転速度を計測するもので、計測される車輪速度
(Vw)は、微分器14を介して制御装置1へ送られ
る。微分器14は入力信号の時間微分を演算して出力す
るもので、微分器14により、入力信号は車輪加速度
(V’W)に変換されて制御装置へ入力される。車輪速
度(Vw)信号は同時に、ローパスフィルタ15を介し
て車体速度演算器16へ入力される。車体速度演算器1
6は同時に、独立にアンチロック制御される他の全ての
車輪のVwセンサー17からの車輪速度(Vw)計測信
号もローパスフィルタ18(信号の数だけ備える)を介
して入力される。図では便宜上1個だけを図示してい
る。ローパスフィルタ15、並びに18は入力信号から
周波数fcを含む高周波成分を低減して、それよりも低
い周波数成分を選択的に通過させる機能を持ったフィル
ターであり、車体速度演算器16はアンチロック制御す
る車輪の数によらずに、アンチロックブレーキ装置全体
で1台あればよい。車体速度演算器16は、コンピュー
タ回路で構成され、単数以上の車輪速度の低周波成分か
ら車体速度を推定算出し、算出した車体速度(Vs)を
制御装置1へ送出する。またVsは同時に、スリップ比
演算器19にも入力される。スリップ比演算器19には
車輪速度センサー13の車輪速度(Vw)出力信号も同
時に入力される。スリップ比演算器19はコンピュータ
回路で構成され、Vs及びVwとから車輪のスリップ比
(S)を算出し、算出されたSを制御装置1へ送出す
る。車輪速度(Vw)は更に、バンドパスフィルタ20
を介して交番スリップ比演算回路21へ送出される。バ
ンドパスフィルタ20は同じくバンドパスフィルタ11
と同一の機能を有する。それ故、交番スリップ比演算器
21には車輪速度(Vw)のfc周波数成分が入力され
る。同時に車体速度(Vs)も入力され、交番スリップ
比演算器21は、これらVwのfc成分及びVsとから
スリップ比(S)のfc成分(交番S)を算出し、算出
した交番スリップ比を路面摩擦係数のスリップ比変化率
演算器12へ送出する。交番スリップ比演算器21は、
コンピュータ回路で構成される。路面摩擦係数のスリッ
プ比変化率演算器12は、コンピュータ回路で構成さ
れ、交番μ及び交番Sとにより、μのS変化率(i)を
推定算出し、後述するnと共に制御装置1へ送出する。
上記したバンドパスフィルタ11、車輪速度センサー1
3、微分器4、ローパスフィルタ15及び18は公知の
技術手段を適用する。
【0009】図2に、本発明のアンチロックブレーキの
もう1つの実施例に於ける全体構成のブロック図を示
す。この実施例では交番油圧を付加するために、交番ア
クチュエータ3とブレーキ装置6の間の油圧配管7に交
番油圧生成装置22を接続する。すなわち、アンチロッ
ク制御目的のために調整されたブレーキ油圧の上に直接
に交番油圧を重畳する。交番油圧変動がアクチュエータ
3の動作に悪影響を及ぼさないために油圧配管7中のア
クチュエータ3と交番油圧生成装置22の接続部分との
間に絞り23を挿入する。これらの構成上の特徴以外
は、図1と同じである。本実施例では、交番油圧の周波
数(fc)は例えば20から50Hzの間の値である。
交番油圧生成装置22は油圧ポンプを用いることができ
る。或は、図3若しくは図4に示す構造のものを用いて
もよい。図3に示す装置は、偏心カム31をfcの回転
周波数で回転させることにより、周波数fcを有する交
番油圧を生成する。油圧配管接続部32は前記油圧配管
7に接続される。偏心カム31は軸33を回転軸として
回転し、ピストン34の底部を摺りつつ押上げかつ戻し
て振動的な並進運動を強制する。油圧系は、ピストン3
4及びピストン34が摺動するシリンダー35及び油圧
配管接続部32で外界と隔絶されている。スプリング3
6は、圧縮状態でシリンダー35の内に挿入されてお
り、油圧の大きさに拘らずピストン34の底部が偏心カ
ム31に常時圧接するように、ピストン34に圧力を加
える働きをする。ブレーキ油圧経路は安全のために閉回
路であることが望ましい。図4はその一例である。図4
に示す装置は、シリンダー41の中に強磁性体からなる
プランジャ42が摺動可能に置かれ、コイル43に周波
数fcの交番電流を通電することにより、プランジャ4
2がシリンダー41の中を振動的に摺動して周波数fc
の交番油圧を生成する。油圧配管接続部44は前記油圧
配管7に接続される。油圧系は油圧配管接続部44、シ
リンダー41、及び油溜45により外気から隔絶され
る。シリンダー41とプランジャ42とによって形成さ
れる油圧空間は、それらの摺動面間の間隙のために外空
間からの隔絶が不完全である。油圧空間を最終的に外気
から隔絶するために油溜45が設置される。油溜45
は、油の弾性的な体積変化によりプランジャ42の微小
な摺動を許すようにその容積が設計される。スプリング
46はプランジャ42の静止位置をある程度制限するた
めに置かれ、その両端はシリンダー41の端部とプラン
ジャ42の頭部とに固定されている。
【0010】図5に、本発明のアンチロックブレーキの
もう1つの実施例に於ける全体構成のブロック図を示
す。この実施例では、交番油圧をブレーキ油圧に重畳す
るのではなく、車輪の車軸を車輪の進行方向に強制的に
微小振動させる。このことにより車輪のスリップ比に微
小な交番変動を付加する。車輪2の車軸と車体とを連結
するストラットバー51に車軸加振用アクチュエータ5
2が付随している。交番油圧生成装置53により生成さ
れる周波数fcの交番油圧が油圧配管54で車軸加振用
アクチュエータ52へ導かれ、車軸加振用アクチュエー
タ52は交番油圧の作用によりストラットバー51を振
動的に伸縮させ、このことにより車輪2の車軸が周波数
fcをもって振動する。変位計55はストラットバー5
1の伸縮変位を計測し、交番スリップ比演算器24に送
出する。これらの構成上の特徴及び交番スリップ比演算
器24と交番スリップ比演算器21との差違を除いて図
1と同じである。交番変動の周波数fcは、例えば20
から50Hz程度である。図6にストラットバー51の
取付け位置を、いわゆるストラット型のサスペンション
構造を有する前車輪の例を示す。ストラットバー51は
ナックル56を回転自在に支持するロアアーム57と車
体58の間を連結する。ストラットバー51には車軸加
振用アクチュエータ52が介在する。図7に車軸加振用
アクチュエータ52の拡大部分断面図を示す。ストラッ
トバー51の一端59は車体58にボールジョイントを
介して取り付けられる。シリンダー60の中にピストン
61が摺動可能に置かれており、ピストン61はストラ
ットバー51の一片の端部に固定的に連結され、このス
トラットバー51の一片はシリンダー60の底部に摺動
可能に密着している。シリンダー60の他の底部は。ス
トラットバー51の他の一片に固定的に連結されてい
る。スプリング62及び63はともに圧縮状態でシリン
ダー底部とピストン61との間に挿入されており、シリ
ンダー60に対するピストン61の静止位置を決定す
る。スプリングの伸縮剛性は、通常の車両に於てストラ
ットバーを車両に固定する際に、それらの間に介在する
ゴムブッシングの剛性と同程度であればよい。2本の油
圧配管54の各々を通して、それらの間に交番的に変動
する差圧をもった油圧が供給されることにより、ピスト
ン61がシリンダー60に対して交番的に変位し、その
結果ストラットバー51が交番的に伸縮する。この伸縮
変位を変位計55で計測する。変位計55には、例えば
この例のように差動変圧器を用いる。この差動変圧器は
ストラットバー51に固定された磁性体片64と1対の
コイル65とからなり、磁性体片64の変位に伴う1対
のコイル65の自己インダクタンスの差の変化を捉えて
変位を計測する。なお、車軸加振用アクチュエータ52
の油圧空間は、ブレーキ油圧系程には外気との隔絶は完
全に保障される必要はない。なぜならまず第1に、車軸
加振用アクチュエータ52の油圧が油漏れにより喪失さ
れた場合には、アンチロック制御には支障するが、ブレ
ーキの機能そのものは破壊されないからである。また第
2に、車軸を支持するのは油圧ではなくスプリング62
及び63であり、油圧は車軸に微小な振動を付加する程
度の高さがあればよく、その高さはブレーキ油圧の最高
値に比べるとはるかに低くてよいからである。それ故、
シリンダー60とストラットバー51の摺動面間で油圧
の外気との隔絶が施される構造も許される。或は、シリ
ンダー60の底部とストラットバー51の間にベローズ
で密封を施してもよい。車軸加振用アクチュエータ52
に油圧を供給する源である交番油圧生成装置53の構造
は、例えば図7に示す車軸加振用アクチュエータ52と
同様の構造にしてもよい。車軸加振用アクチュエータ5
2とは逆にピストンを外部より駆動してピストンを隔壁
とする2つのシリンダー室内の油圧の間に交番的な差圧
をつくりだして、これを油圧配管54を通して車軸加振
用アクチュエータ52に供給する。この構造に限らず、
交番的な差圧の変動を生成する手段は公知の技術で構成
可能である。
【0011】コンピュータ回路により構成される制御装
置1、車体速度演算器16、スリップ比演算器19、交
番スリップ比演算器21、交番スリップ比演算器24、
並びに路面摩擦係数のスリップ比変化率演算器12の動
作を以下に記述する。コンピュータ回路により構成され
るために、メモリーに予め格納されこれらの装置の動作
を規定するプログラムの流れ(フロー)について記述を
すれば、装置の動作説明としては十分である。それ故、
これらの装置のプログラムのフローについて、望ましい
具体例を以下に記述する。コンピュータ回路からなる前
記の何れの装置に於ても、そのプログラムのフローは、
図8と同様のメインルーチンを有しており、この中でタ
イマー割り込みにより、周期的に別に用意された割り込
みルーチンを実行する。制御装置1の割り込みの周期は
例えば1msecから5msec程度である。そのほか
の各種演算器の割り込み周期はこれと同等若しくは短く
設定される。交番スリップ比演算器21、交番スリップ
比演算器24、及び路面摩擦係数のスリップ比変化率演
算器12に於ける割り込み周期は、交番スリップ比の周
期1/fcよりも略1桁ないしそれ以上短く設定され
る。制御装置の車両のキースイッチを投入することによ
り電源が入力されると、ステップ100よりメインルー
チンが開始される。次にステップ101に進み、書き込
み可能メモリーの初期化、諸変数の初期化、値が予め定
められる定数への値の付与等を行なう。つづいてステッ
プ102に於て割り込みの許可を行なう。次に、ステッ
プ103を反復する無限ループに入って割り込みを待
つ。ステップ103は特に意味のある処理を行なうわけ
ではなく、割り込みを待つために設けられたステップで
ある。
【0012】車体速度演算器16は、タイマー割り込み
により、周期的に図9に示すルーチンを実行し、車体速
度(Vs)を算出する。ローパスフィルタ15並びに1
8を通して車体速度演算器16に入力される各車輪の車
輪速度Vwは、ローパスフィルタの効果により、周波数
fcを含む高周波成分を低減されており、それ故周期1
/fc以上の時間幅での車輪速度(Vw)の時間平均値
(平均Vw)という性格をもっている。すなわち、車体
速度演算器16は平均Vwを基に車体速度を推定する。
これは、車輪速度に於けるある程度高い周波数の振動
は、車体の過大な慣性のために車体速度には影響しない
という事情を、車体速度の推定に反映するためのもので
ある。タイマーの働きで割り込み命令がマイクロプロセ
ッサに送られると、割り込み処理が開始される。割り込
み処理は、図9のステップ110より始まる。次に、ス
テップ111に於て4個の車輪の各平均Vwを読み込
む。ここでは、車体速度演算器16に4車輪の平均Vw
が入力されるものとしている。次に、ステップ112に
於て4車輪の平均Vwの中の最大値を探して、これをV
wmとをいう変数に代入する。次に、車体速度に対応す
る変数VsとVwmとをステップ113に於て比較し、
Vwmが大きければステップ114に進み、VsにVw
mの値を代入し、逆にVwmが大きくなければ、ステッ
プ115に進みVsから所定の値を減じる。ここで、g
は重力の加速度、Δtvsは割り込みの周期である。つ
づいてステップ116に進み、割り込みルーチンの処理
を終了し、メインルーチンの割り込み待ちループに戻
る。そして、次の割り込み命令を待つ。以上の、割り込
みルーチンにより、車体速度Vsは重力の加速度と同じ
大きさの減速度でその大きさを時間とともに減じて行
き、しかも4車輪の中の最も大きな平均Vwよりも常に
小さくはならないように決定される。このように、この
ルーチンによる車体速度Vsの算出値は仮定の上に決定
された推定値である。本来スリップをしつつある車輪の
回転速度だけから算出するところから、車体速度の算出
が推定にとどまることは必然的で避けられない。しかし
ながら、本発明に於ては、車体速度の算出値が推定であ
ることによる弊害は、スリップ比の小さな値(例えば
0.06から0.15程度)を直接に所定の基準値と比
較して判断処理を行なう市販のABSに比べて軽微であ
る。なぜなら、本発明に於てはブレーキ力の制御を行う
上で主としてスリップ比の変化量を参照するのであっ
て、スリップ比そのものの値は重要ではない。それ故、
精度の良い車体速度を要求しないという点が、本発明の
効果の1つとなっている。
【0013】スリップ比演算器19はフローを図示する
までもなく、割り込み処理に於て、車体速度演算器16
から出力される車体速度(Vs)の推定値、及び車輪速
度(Vw)の計測値とを読み取り、数1に示すスリップ
比の定義式により、スリップ比(S)を算出する。
【数1】 交番スリップ比演算器21は、割り込み処理に於て、車
体速度演算器16から出力される車体速度(Vs)の推
定値、及び車輪速度(Vw)のfc成分とを読み取り、
数2に示す式に基づいて交番Sを算出する。これにより
算出された交番Sは、スリップ比のfc成分という本来
の意味を持ち得る。すなわち、ブレーキ油圧に周波数f
cの交番変動を加えた結果スリップ比に現われる同一周
波数の交番変動をここで算出している。
【数2】 交番スリップ比演算器24は、割り込み処理に於て、車
体速度演算器16から出力される車体速度(Vs)の推
定値、ローパスフィルタ15から出力される平均Vw、
車輪速度(Vw)のfc成分、及び変位計55から出力
される車軸の変位(交番Vs)とを読み取り、数3に示
す式に基づいて交番Sを算出する。
【数3】 ここで得られる交番Sの値は、車軸に強制的に交番変位
を付加した結果、スリップ比に現われる同一周波数の交
番変動に対応する。
【0014】路面摩擦係数のスリップ比変化率演算器1
2は、割り込み処理に於て、交番スリップ比演算器21
若しくは交番スリップ比演算器24から出力される交番
S及びバンドパスフィルタ11から出力される交番μと
を読み取り、μのS変化率(i)及び指数nを演算し制
御装置1へ送出する。割り込み処理の手順を図10に示
す。ステップ120より割り込み処理が開始される。次
にステップ121へ進んで、交番Sと交番μとを読みと
る。つづいてステップ122に於て交番Sと交番μの各
々の2乗数の和を計算し変数dへ代入する。次に、ステ
ップ123に於て交番Sの符号を判定し、その符号が負
でなければステップ124ヘ進み、負であればステップ
130へ進む。ステップ124では、変数dp2をゼロ
クリアし、ステップ125へ進む。ステップ125では
変数dと変数dp1との大きさの比較を行い、dが大き
ければステップ126へ進み、dが大きくなければステ
ップ127へ進む。変数dp1及びdp2は図8に示す
メインルーチンのステップ101に於てゼロの値に初期
設定されている。ステップ126では変数dp1、Sp
1、μp1をそれぞれ変数d、交番S、交番μの値で更
新し、ステップ129へ進んで本ルーチンを終了する。
ステップ127では、μのS変化率に相当する変数iを
図のように計算し値を代入する。つづいて、ステップ1
28に於て制御装置1に於て制御変数として利用される
指数nに1を代入し、ステップ129に進んで本ルーチ
ンを終了する。ステップ130では、変数dp1をゼロ
クリアする。つづいて、ステップ131に於て変数dを
変数dp2と大きさの比較を行い、dが大きければステ
ップ132ヘ進み、dが大きくなければステップ133
へ進む。ステップ132では、変数dp2、Sp2、μ
p2をそれぞれ変数d、交番S、交番μの値で更新し、
ステップ135へ進んで本ルーチンを終了する。ステッ
プ133では変数iを図のようにステップ127と同様
に計算し値を決める。つづいて、ステップ134に於て
指数nの値をゼロにして、ステップ134に至って本ル
ーチンを終了する。以上の路面摩擦係数のスリップ比変
化率演算器の割り込みルーチンにより、iと指数nとが
次のように決められる。すなわち、本ルーチンが実行さ
れるたびに次々と読み込まれる交番S及び交番μの値
は、当然ながら交番変動を行なう変数列をなす。この様
子は図11に示す交番Sと交番μとからなる座標上の実
曲線140で表わされる。より正確にはこの実曲線14
0上の不連続な点列で表わされる。車軸の支持構造の柔
軟さ、車輪のタイヤと摩擦現象の機構等から一般に交番
Sと交番μの動きには履歴現象が現われ、動作点の動き
は一つの線分上を往復するのではなく、この図のように
一般には行きと帰りで別の軌跡を描く。前記変数dの平
方根が、座標原点と実曲線140上の点の間の距離に相
当する。前記の変数dp1、並びにdp2は動作点がこ
の座標面上の各々左半平面並びに右半平面に突入したの
ちの、距離dのそのときどきでの最大値を記憶したもの
である。動作点が左半平面に突入してから原点からの距
離dの最大値dp1が新たに更新されつづける間、すな
わち動作点が原点から遠のきつつある間は、iとnの値
は更新されず、もとの値を保持しつづける。そして変数
Sp1、μp1はおのおの交番S,交番μの値で更新さ
れる。同じことは動作点が右半平面に突入した後でも行
なわれる。すなわち、動作点が原点から遠のきつつある
間は、iとnの値は更新されず、もとの値を保持しつづ
ける。そして変数Sp2、μp2はおのおの交番S、交
番μの値で更新される。動作点が原点からの距離dの最
大値を更新しなくなったとき、すなわち図11の点14
1、142、143上ないしこれらを越えたときに、
i、nの値を更新し、その後新たに距離dの最大値を更
新するまで保持する。点線で表わされる線分144、1
45の長さが、定義され次に更新されるまでの間のdp
1に相当し、同じく146はdp2に相当する。変数i
の値は、最も新しく距離dが左半平面上で最大になった
ときの座標上の点と、最も新しく距離dが右半平面上で
最大になったときの座標上の点との間を結ぶ線分(図中
の線分147あるいは148)の傾きとして値が決めら
れる。すなわち、変数iは交番μの交番Sに対する変化
率という意味をもち、その値は、交番Sの周期1/fc
に対しておおよそ半周期毎に更新される。指数nは0と
1の2値のみを持ち、変数iが更新される毎にその値を
1から0若しくは0から1へと変える。指数nは、制御
装置に変数iが更新されたことを知らせるための指数で
ある。
【0015】制御装置1に於ける割り込みルーチンのフ
ローを図12に示す。ステップ150より割り込みルー
チンが開始される。つづいてステップ151へ進み、車
体速度演算器16から入力される車体速度Vsを読み込
む。つぎに、ステップ152でVsを変数Vs1と大き
さの比較を行なう。ここで、Vs1は予め決定される所
定の定数で、ブレーキ力のアンチロック制御を行なう車
体速度の下限値に相当する。その値は、例えば10km
/hである。車体速度Vsが小さければ、ステップ15
3へ進んで油圧変化率の指示値psを最大値に相当する
psmaxに設定する。すなわち、車体速度が所定の基
準値より低ければアンチロック制御を停止し、通常のブ
レーキ状態となる。油圧指示値psが最大値psmax
に設定されると、アクチュエータ3を構成するバルブ
は、ブレーキペダルの踏力に応じてマスターシリンダー
で生成されるブレーキ油圧をそのままブレーキ装置6へ
伝達する。つづいて、ステップ154に於て指数kを1
にセットし、ステップ155に進み、本ルーチンを終了
する。ステップ152に於てVsが変数Vs1よりも小
さくなければ、ステップ156へ進み変数S1、μ1、
i1、n1に1周期以前の割り込みに於て読み込まれた
S、μ、i、nの値をそれぞれ代入する。次に、ステッ
プ157へ進み、スリップ比(S)、路面摩擦係数
(μ)、車輪加速度(V’w)、μのS変化率(i)、
指数(n)を読み込み、それぞれ変数S、μ、V’w、
iへ代入する。つづいてステップ158へ進み、iを計
算するルーチンを実行する。該ルーチンのフローを図1
3に示す。ステップ170より該ルーチンが開始され
る。つづいて、ステップ171へ進み、最も新しいSの
読み取り値を記憶する変数Sと、それよりも1割り込み
周期だけ古いSの読み取り値を記憶する変数S1の差を
所定の基準値a3と比較する。前者が大きければ、ステ
ップ172へ進み、図示するような式の値を計算し変数
iに代入する。つづいて、ステップ173へ進み、本ル
ーチンを終了する。ステップ171でSとS1の差が基
準値a3よりも大きくなければ、ステップ174へ進
み、指数nを1割り込み周期以前のnの値を記憶するn
1の値と比較する。値が一致すればステップ175へ進
み、変数iに1割り込み周期以前のiの値を記憶するi
1の値を代入し、ステップ173へ進む。ステップ17
4に於て互いの値が一致しなければそのままステップ1
73へ進む。ステップ173では本ルーチンを終了して
ステップ159へ進む。制御装置1の割り込みの周期は
1msecから5msec程度である。一方、交番Sの
周期1/fcは20msecから50msec程度で、
それ故路面摩擦係数のスリップ比変化率演算器12でi
の値が更新される周期はおおよそ10msecから25
msecである。すなわち、制御装置1の割り込み周期
は、路面摩擦係数のスリップ比変化率演算器12に於て
iが更新される周期よりも短い。スリップ比演算器19
からの出力であるSの1割り込み周期の間での変化量が
ある程度大きければ、当該変化量の精度は十分良好とな
る。それゆえ、ある程度前記変化量が大きければ、路面
摩擦係数のスリップ比変化率演算器12の出力値を参照
するのではなく、μとSの1割り込み周期の間の変化量
からiを計算する方が、μ、Sの変化により早く対応し
てブレーキ油圧の制御を行なうことができる。図13に
示すiを計算するルーチンはこの目的のために設けられ
るもので、このルーチンに於ける定数a3は、Sの前記
変化量がこの定数a3よりも大きければ、前記変化量の
精度が十分であると判断し得る基準値である。例えば、
ブレーキ作動開始後第1回目のブレーキ力強め行程、す
なわちブレーキ油の第1回目の増圧行程に於て、μの最
大値付近に至るより以前、或は、制動中に於て路面のμ
が急減したときなどに於て、前記ルーチンはその意義を
発揮する。
【0016】ステップ159に至ると、指数kの値によ
って処理の流れが分岐する。指数kが1であればステッ
プ160へ進み、2であればステップ166へ進む。指
数kは、メインルーチンの中のステップ101で1の値
に初期化されている。ステップ160では、車輪加速度
V’wを所定の基準値a1と比較する。車輪加速度V’
wが小さければステップ161ヘ進み、小さくなければ
ステップ164へ進む。基準値a1は負の値で、V’w
がこれよりも小さければロック前兆にあると十分に判断
し得るような適当な値に設定される。ステップ161で
は、psを最小の値psminに設定する。アクチュエ
ータ3に最小の値psminが入力されると、アクチュ
エータ3は最も早い速さでブレーキ油圧の減圧を行な
う。つづいて、ステップ162に於て指数kを2に設定
し、ステップ163へ至って割り込みルーチンを終了す
る。ステップ164ではμのS変化率(i)をもとに油
圧変化速度の指示値(ps)を計算する。ブレーキ油圧
変化速度の指示値psは、iに対して図14の曲線18
0で示される関係で与えられる。すなわち、iが正でか
つゼロに近い適当な値でpsはゼロになるように設定さ
れ(図中の点181)、iが正の方向に大きい程psは
大きくなりかつアクチュエータ3の能力限界の増圧速度
に対応する値psmaxに収斂し、iが逆に小さくなる
程psは値を下げてゆきかつアクチュエータ3の能力限
界の減圧速度に対応する値psminに収斂する。つづ
いて、ステップ165へ至り割り込みルーチンを終了す
る。ステップ166では、車輪加速度V’wをゼロと比
較し、V’wが0よりも大きければステップ167へ進
み、指数kを1に設定し、ステップ168ヘ進む。車輪
加速度V’wが0以下であればそのままステップ168
へ進む。ステップ168ではpsに最小の値psmin
を付与する。次にステップ169へ進み割り込みルーチ
ンを終了する。
【0017】割り込みルーチンの上記のフローにより、
ブレーキ油圧の変化速度の指示値psは、μのS変化率
(i)に応じて図14に示される曲線に従って決定され
る。ブレーキ油圧を増圧する行程でμが最大値よりも十
分に低い間はiが正で大きい値であり、それ故psは大
きく設定され、アクチュエータ3にブレーキ油圧の上昇
速度を高く指示する。ブレーキ油圧の上昇に伴いμが高
くなり、μの最大値に接近するに従ってiが小さくなる
ので、それにともなってpsはゼロに近づき、油圧の上
昇速度は緩んでくる。μが最大値に近い最適値に達する
と指示値psがゼロになり、ここで油圧の上昇は止まり
μ、Sともに静止する。μが最適値を超えて大きくなる
と、psは負の値になり油圧を逆に減少させμを再び最
適値へ引き戻す。このように、μの最適値に対応する点
181に動作点は安定に位置し続けようとする。制動の
過程で車体速度の減少に伴って一般にμの最大値が緩慢
に増加してゆく。これにともなってμの最適値も上昇す
るが、動作点もこれに追随して高く推移してゆく。動作
点が安定していて急な変化をしないときには、従来の技
術であればスリップ比の変化量の精度が悪くなる。本発
明のアンチロックブレーキ装置では、スリップ比に交番
変動が加えられるために常に精度良くスリップ比の変化
量が演算でき、従って精度よくiを算出できる。それ
故、上記のように動作点がμの最適値に追随し続けるこ
とができる。車輪の回転状態がロック前兆に至った時に
はブレーキ油圧を急速度に減圧して、車輪の回転の回復
を早める必要がある。上記割込みルーチンではロック前
兆を車輪加速度(V’w)で捉える。すなわち、V’w
が所定の基準値a1を超えて過剰に小さくなったときに
はロック前兆と判断してブレーキ油圧の変化速度の指示
値(ps)を最も小さい値に設定し、アクチュエータ3
にブレーキ油の最も速い減圧を指示する。車輪加速度
(V’w)が負である間は、車輪2に作用する路面摩擦
力の車軸の周りのトルク(路面トルク)に比べて、ブレ
ーキ装置6によるブレーキ力の車軸の周りのトルク(ブ
レーキトルク)が大きく、車輪の回転は回復しない。そ
れ故、ブレーキ油圧を更に緩めてブレーキトルクを緩和
する必要がある。車輪加速度(V’w)が正であるとき
には、ブレーキトルクに比べて路面トルクが大きくなっ
ており、車輪の回転は回復に向かう。これらのことか
ら、前記割込みルーチンでは、V’wが負から正に転じ
るまで前記の急減圧の行程は継続する。これにより、確
実に車輪の回転の回復を図ることができる。V’wが正
に転じたならば、iの値に基づいてpsを設定する通常
の動作に戻る。このため、iが負であって路面トルクに
比べブレーキトルクを更に減じて車輪速度の回復を早め
る必要があるときには、psが小さくて速い減圧を指示
し、動作点が安定領域(μ対S曲線のピークよりも左側
の領域)に至って、μが最大値から低く遠ざかっている
ほどiが大きくなりpsが大きくなるために速い増圧を
指示する。すなわち、無駄にブレーキ油圧を減じること
なく、しかも速く車輪の回転を回復させ、更に安定領域
に動作点が復帰したならば、動作点を再びμの最大値付
近まで急速に接近させることができる。
【0018】図1、2、若しくは5に全体構成のブロッ
ク図を示す実施例の各々に対して、本発明の目的をより
効果的に実現する実施例の全体構成のブロック図を各々
図15、16、若しくは17に示す。これらは何れも、
ブレーキ油圧センサー200を設けており、ブレーキ油
圧の計測値(P)とブレーキ油圧の指示値(Ps)を互
いに比較してその偏差を縮めるようにブレーキ油圧の制
御を行う構成、すなわち油圧サーボ機構を付加してい
る。これらの実施例は更に、路面摩擦力(F)に平衡す
るブレーキ油圧を算出してブレーキ油圧の指示値(P
s)の設定に応用する。なお路面摩擦力に平衡するブレ
ーキ油圧とは、その大きさの路面摩擦力を均一な路面に
於て定常的に実現し得るブレーキ油圧の意味であり、換
言すれば該路面摩擦力に相応した路面トルクとブレーキ
トルクとが大きさに於て一致するようなブレーキ油圧を
意味する。図15、16、及び17は各々図1、2、及
び4に対してブレーキ油圧センサー200を付加して設
けている。ブレーキ油圧計測値(P)を制御装置201
へ入力する。路面摩擦力センサー8の出力をも制御装置
201へ入力する。制御装置201は、制御装置1へ入
力されるデータ及び上記のF、Pに基づいて、ブレーキ
油圧の指示値(Ps)を算出し出力する。減算器202
に於て、ローパスフィルタ203を通過して前記周波数
fc以上の周波数成分を除去された油圧計測値(P)を
ブレーキ油圧指示値(Ps)から減算し、ps=Pc−
Pを算出し出力する。アクチュエータ3は前記の如く、
psの大きさに応じてブレーキ油圧の増加、減少の速さ
を調節する。それ故、本実施例のアンチロックブレーキ
装置ではpsがゼロになるように、言い替えるとPsに
Pが追随するようにブレーキ油圧の制御が行われる。
【0019】制御装置201も制御装置1と同じくコン
ピュータ回路により構成され、そのプログラムは図8と
同様のメインルーチンを有しており、この中でタイマー
割り込みにより、周期的に別に用意された割り込みルー
チンを実行する。制御装置201の割り込みの周期は例
えば1msecから5msec程度である。割込みルー
チンは図18に示される。図12に示される制御装置1
に於ける割込みルーチンと類似するが、ステップ21
9、220、及び227が付加されている。また、ステ
ップステップ217に於て、S、μ、V’w、i、nの
他に、ブレーキ油圧(P)、並びに路面摩擦力(F)を
も読込む。ステップ223、及び231では、ブレーキ
油圧の指示値(Ps)をゼロに設定し、ステップ213
ではPsをアクチュエータ3が生成し得る限りの最大の
ブレーキ油圧の値(Pmax)に設定する。ステップ2
19では、V’wの大きさを所定の基準値a2及び0と
比較し、V’wの絶対値がa2よりも小さくかつ車輪速
度(Vw)がゼロではないならば、ステップ220へ進
み、そうでなければステップ221へ進む。ステップ2
20では、変数aの値をPとFの比として定義し、ステ
ップ221へ進む。このように算出した係数aを使う
と、積a・Fは路面摩擦力(F)に平衡するブレーキ油
圧(Peq)に相当する。車輪加速度(V’w)、路面
摩擦力(F)とブレーキ油圧(P)の間には、数4に示
される力学的な関係が成立する。
【数4】 ここで、Iは車輪の軸周りの慣性モーメント、Rは車輪
の有効半径、kはブレーキトルクとブレーキ油圧(P)
の間の比例係数である。ここで、比R/kとFとの積R
/k・Fを考えると、この積は任意のFの値に対して車
輪加速度(V’w)をゼロにするためのブレーキ油圧を
意味する。この意味のブレーキ油圧をFに平衡するブレ
ーキ油圧(Peq)と仮に称する。すなわち、比R/k
がわかっておれば、任意のFに対して前記の積を算出す
ることによりPeqを計算することができる。比R/k
は、車輪の種類、車輪の有効半径、ブレーキパッドとブ
レーキディスクの間の摩擦係数などに依存するもので、
タイヤ、ホイール、ブレーキパッド、ブレーキディスク
等の交換に伴って変化し得る。また、経年変化、タイヤ
の空気圧、制動時の摩擦熱によるブレーキパッドとブレ
ーキディスクの温度上昇などによる変化も有り得る。こ
のため、Peqを算出するためには、比R/kの値を制
動中に於て適時に計算し更新するのがよい。前記の変数
aは比R/kで定義される量としての意味を持ち、しか
も制動の過程で適時にその値を計算し更新する。所定の
基準値a2はゼロに近い適当な大きさの正数に設定され
る。そうすれば、車輪加速度(V’w)がゼロに近いと
きに限って変数aの値がその時々のP/Fの値で更新さ
れる。車輪加速度(V’w)がゼロに近い時のP/Fは
数4から明らかなようにR/kと値が略同一である。車
輪速度(Vw)がゼロであるとき、すなわち車輪がロッ
クしているときには、比例係数kはブレーキパッドとブ
レーキディスクの間の摩擦係数には依存せずに、常に路
面トルクとブレーキ油圧(P)との比できまる。それ
故、変数aの値の更新はVwがゼロである場合を排除し
なければならない。ステップ219ではこのことを考慮
している。
【0020】ステップ218はステップ158と同一で
あり、図13に示すルーチンに従ってμのスリップ比変
化率(i)を計算する。ステップ226はステップ16
4と同一であり、図14に従ってブレーキ油圧の変化速
度の指示値(ps)の値が決定される。ステップ227
ではブレーキ油圧の指示値(Ps)を決定する。路面摩
擦力(F)に平衡するブレーキ油圧(Peq)に相当す
るa・Fに対して、ステップ226で計算されたpsを
加算した値でブレーキ油圧の指示値(Ps)を与える。
すなわち、Psの値はPeqを基準に設定される。その
結果、ブレーキ油圧の指示値(Ps)とPeqの関係は
図19に示されるようになる。曲線240と241は高
μ路面に於ける各々Peq対S、及びPs対S曲線であ
り、曲線242と243は低μ路に於ける各々Peq対
S、及びPs対S曲線である。点244及び点245
は、図14に於ける点181に対応する。これらの点で
のPeqのSに対する変化率、すなわち直線246、及
び247の傾きは、点181に於ける路面摩擦係数のス
リップ比変化率(i)の値に、車輪に作用する垂直抗力
(N)と前記の変数aとを乗じたものに一致する。ブレ
ーキ油圧の指示値がこのように設定されるために、動作
点は点244若しくは245に収束し、点244、24
5が制動過程に於て車体速度の変化、路面のμの変化に
より緩やかに変化する場合にも、動作点は安定してこれ
らの点244、若しくは245に追随する。Peqを基
準にPsを設定しているために、ブレーキ油圧の過剰、
不足がなく適正にPsが設定され、動作点がμの最大値
付近の点に対応する点181に、より効果的に追随し得
る。また、油圧サーボ系の働きで、ブレーキ油圧の指示
値(Ps)へのブレーキ油圧(P)の細やかな追随が容
易で、このことも併せてμの最大値付近の点を追随する
機能を、より効果的に実現する。制動の過程に於けるμ
の急減等により、車輪の回転がロック前兆に至る場合に
は、前記の実施例に於ける制御装置1の図12に示され
る割込みルーチンと同様に、車輪加速度(V’w)から
ロック前兆を検知してPsをゼロに設定し、アクチュエ
ータ3にブレーキ油圧の急速な減圧を行わせる。車輪加
速度(V’w)が負から正に転じるまで前記の急減圧の
行程は継続する。これにより、確実に車輪の回転の回復
を図ることができる。V’wが正に転じたならば、iと
a・Fの値に基づいてPsを設定する通常の動作に戻
る。このため、iが負であって路面トルクに比べブレー
キトルクを更に減じて車輪速度の回復を早める必要があ
るときには、Psはa・Fよりも相当に小さくて、ブレ
ーキ油圧はa・Fよりも相当に低い値に向かう。動作点
が安定傾域(μ対S曲線のピークよりも左側の領域)に
至って、μが最大値から低く遠ざかっているほどiが大
きくなりpsが大きくなるために、Psはa・Fよりも
相当に大きくなり、ブレーキ油圧はa・Fよりも相当に
大きい値に向かう。すなわち、無駄にブレーキ油圧を減
じることなく、しかも速く車輪の回転を回復させ、更に
安定領域に動作点が復帰したならば、動作点を再びμの
最大値付近まで急速に接近させることができる。しか
も、ブレーキ油圧の指示値(Ps)がFに平衡するブレ
ーキ油圧a・Fを基準に設定されるために、前記の点が
より効果的に実現される。
【0021】以上に示したのは一例であって、例えば本
発明の実施例を構成する路面摩擦係数演算器10、車体
速度演算器16、交番スリップ比演算器21(又は2
4)、路面摩擦係数のスリップ比変化率演算器12、ス
リップ比演算器19、微分器14、ローパスフィルタ1
5、18、203、バンドパスフィルタ11、20、交
番油圧指示値生成装置4、加算器5、減算器22の全
て、若しくはこれらの一部を制御装置1、若しくは制御
装置201の中へ含めて、制御装置1、若しくは201
のプログラムでそれらの機能を等価的に実現することも
できる。これにより機能上は同等でしかもコストを低減
することができる。車輪を支持する構造であるサスペン
ションの一部に柔軟な構造を有するために、制動の過程
で約30Hz前後の周波数を持つ振動が車軸に生じるこ
とがあり、これが算出されたスリップ比(S)若しくは
交番スリップ比に誤差を生じることがある。この誤差を
低減するために、車軸に加速度センサーを取着し、該セ
ンサーの出力を積分する積分器を備え、更に該積分器の
出力を車体速度演算器16の出力に加算する加算器を備
えて、その出力を車体速度(Vs)の代わりにスリップ
比演算器19、及び制御装置1若しくは201へ入力す
るとよい。本発明のアンチロックブレーキ装置の全体構
成が図5若しくは図17に示されるブロック図で表わさ
れる実施例に於ては、ストラットバー51と車体58の
間、及びストラットバー51とロアアーム57の間をそ
れぞれ剛に接続した構造にして、必要であれば車軸加振
用アクチュエータ52の伸縮を柔軟に行い得る構造に
し、変位計55で変位を捉えることにより、車軸の振動
を計測することができる。車軸の振動の速度を上記と同
じく車体速度(Vs)に加算することにより、前記の誤
差を低減し得る。数5で定義されるような変数qを路面
摩擦係数(μ)のスリップ比(S)変化率(i)の代わ
りに用いてもよい。
【数5】 ここで、Δμ、ΔSは各々μ、Sの変化量である。この
場合、前記のステップ127、133、172、及び2
18に於けるiの値の定義がこれに相応して変更され
る。常時スリップ比に交番変動を付加することは必要で
はなく、例えばブレーキペダルが踏まれたときに限定す
るのがよい。更に限定して、例えばブレーキ作動開始後
の第1回目のブレーキ油圧の増圧過程では交番変動を付
加せず、路面摩擦係数のスリップ比変化率演算器の出力
を制御装置1もしくは201は制御に用いずに、第2回
目以降の増圧過程でのみ交番変動を付加することもでき
る。この場合には、第1回目の増圧過程に於てロック前
兆に至り、そのためにブレーキ油圧を大きく減らす減圧
過程が後続する。それ故、制動距離、ブレーキフィーリ
ング共に最良とはならないが、第2回目以降の増圧過程
で交番変動の効果が現れ、μをその最大点付近に常時追
随させることができるため、従来の技術に比べれば制動
距離、ブレーキフィーリングともに改良される。或は、
交番変動による路面摩擦係数のスリップ比変化率(i)
の値を必要とする時、すなわちスリップ比(S)の変化
量が所定の基準値より小さい場合に限って交番変動を付
加することもできる。垂直抗力センサー8も路面摩擦係
数演算器10も設けずに、路面摩擦力センサー13の出
力(F)をμの代わりに制御装置1または201、バン
ドパスフィルター11、並びに路面摩擦係数のスリップ
比変化率演算器12に入力し、これらの装置ではμの代
わりにFを取り扱ってもよい。路面摩擦係数のスリップ
比変化率演算器12ではμのスリップ比変化率の代わり
にFのスリップ比変化率を計算し出力する。前記のμに
基づいてブレーキ油圧制御を行うアンチロックブレーキ
装置に比べて、μの最大値付近に追随する性能はやや劣
るが、構成がより簡素であり、より低コストで実現し得
る。本発明は、空気圧式ブレーキ機構、電気式ブレーキ
機構、並びにその他のブレーキ機構に於ても同等の機能
が得られるものであって、本発明の実施対象はここに示
した油圧式ブレーキ機構に限定されるものではない。
【0021】
【効果】本発明のアンチロックブレーキ装置では、スリ
ップ比に交番変動が加えられるために常に精度良くスリ
ップ比の変化量が演算でき、従って路面摩擦係数若しく
は路面摩擦力のスリップ比に対する変化率を常に精度良
く算出できる。そのため、車輪に作用する路面摩擦係数
若しくは路面摩擦力をその最大点付近に常時追随させる
ことができる。それ故、制動力は最大となり、制動距離
は最短となるばかりでなく、制動力の変動もなく、ブレ
ーキフィーリングは最良となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアンチロックブレーキ装置の1実施例
を示す全体構成のブロック図である。
【図2】本発明のアンチロックブレーキ装置のもう一つ
の実施例を示す全体構成のブロック図である。
【図3】交番油圧生成装置の一例を示す断面図である。
【図4】交番油圧生成装置のもう一つの例を示す断面図
である。
【図5】本発明のアンチロックブレーキ装置の更にもう
一つの実施例を示す全体構成のブロック図である。
【図6】ストラット型のサスペンション構造を有する前
車輪のストラットバーに本発明に係る車軸加振用アクチ
ュエータの取付状態を示す模式図である。
【図7】図6に示した車軸加振用アクチュエータの拡大
部分断面図である。
【図8】コンピュータ回路により構成される制御装置、
車体速度演算器、スリップ比演算器、交番スリップ比演
算器、並びに路面摩擦係数のスリップ比演算器の各々に
於ける、プログラムの中のメインルーチンの流れ図であ
る。
【図9】車体速度演算器に於けるプログラムの中の割り
込みルーチンの流れ図である。
【図10】路面摩擦係数のスリップ比変化率演算器に於
けるプログラムの中の割り込みルーチンの流れ図であ
る。
【図11】交番Sと交番μとからなる座標面上の動作点
の軌跡を示す図である。
【図12】制御装置1に於けるプログラムの中の割り込
みルーチンの流れ図である。
【図13】図12に於ける割り込みルーチンの中のステ
ップ158に於てiを計算するルーチンの流れ図であ
る。
【図14】油圧変化速度の指示値psとiの関係を模式
的に表すグラフである。
【図15】本発明のアンチロックブレーキ装置の更に別
の実施例を示す全体構成のブロック図である。
【図16】本発明のアンチロックブレーキ装置の更に別
の実施例を示す全体構成のブロック図である。
【図17】本発明のアンチロックブレーキ装置の更に別
の実施例を示す全体構成のブロック図である。
【図18】制御装置201に於けるプログラムの中の割
り込みルーチンの流れ図である。
【図19】ブレーキ油圧の指示値(Ps)と路面摩擦力
(F)に平衡するブレーキ油圧(Peq)の関係を模式
的に示すグラフである。
【符号の説明】
1 制御装置 2 車輪 3 アクチュエータ 4 交番油圧速度指示値生成装置 5 加算器 6 ブレーキ装置 7 油圧配管 8 路面摩擦力センサー 9 垂直抗力センサー 10 路面摩擦係数演算装置 12 路面摩擦係数のスリップ比変化率演算器 13 車輪速度センサー 16 車体速度演算器 19 スリップ比演算器 21 交番スリップ比演算器 22 交番油圧生成装置 24 交番スリップ比演算器 51 ストラットバー 52 車軸加振用アクチュエータ 55 変位計 200 油圧センサー 201 制御装置

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車輪と路面との間のスリップ比を算出する
    手段と、車輪に作用する路面摩擦力を検出する手段を備
    えたアンチロックブレーキ装置に於て、スリップ比に微
    小な交番変動を付加する手段を備え、スリップ比の微小
    な変動とこれに伴って応答する路面摩擦力の微小な変動
    の各々の幅、位相等の関係から路面摩擦力のスリップ比
    に対する変化率を算出し、当該変化率の値の大きさに基
    づいてブレーキ力を増加、保持、若しくは減少させ、か
    つ増加若しくは減少の速さを加減することを特徴とする
    アンチロックブレーキ装置。
  2. 【請求項2】車輪と路面との間のスリップ比を算出する
    手段と、車輪に作用する路面摩擦係数を検出する手段を
    備えたアンチロックブレーキ装置に於て、スリップ比に
    微小な交番変動を付加する手段を備え、スリップ比の微
    小な変動とこれに伴って応答する路面摩擦係数の微小な
    変動の各々の幅、位相等の関係から路面摩擦係数のスリ
    ップ比に対する変化率を算出し、当該変化率の値の大き
    さにに基づいて、ブレーキ力を増加、保持、若しくは減
    少させ、かつ増加若しくは減少の速さを加減することを
    特徴とするアンチロックブレーキ装置。
  3. 【請求項3】スリップ比に微小な交番変動を付加する手
    段が、ブレーキ力に微小な交番変動を付加する手段であ
    ることを特徴とする請求頁1若しくは請求項2に記載の
    アンチロックブレーキ装置。
  4. 【請求項4】スリップ比に微小な交番変動を付加する手
    段が、車輪の車軸に該車軸に略直角かつ路面に略平行な
    方向に微小な交番変位を付加する手段であることを特徴
    とする請求項1若しくは請求項2に記載のアンチロック
    ブレーキ装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003165400A (ja) * 2001-09-18 2003-06-10 Toyota Motor Corp スリップ状態関連量取得装置および前後力制御装置
JP2004249966A (ja) * 2002-06-13 2004-09-09 Soc De Technol Michelin タイヤが最大摩擦係数レベルで機能するようにタイヤのスリップを最適レベルに維持するのに特に使用できる自動制御方法
JP2004249965A (ja) * 2002-06-13 2004-09-09 Soc De Technol Michelin 全てのタイヤを特徴付ける不変量を用いた自動安定性制御システム

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62166152A (ja) * 1986-01-17 1987-07-22 Nippon Denso Co Ltd 車両用アンチスキツド装置

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Effective date: 19970805