JPH11321617A - Abs用路面適応装置 - Google Patents

Abs用路面適応装置

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JPH11321617A
JPH11321617A JP13213198A JP13213198A JPH11321617A JP H11321617 A JPH11321617 A JP H11321617A JP 13213198 A JP13213198 A JP 13213198A JP 13213198 A JP13213198 A JP 13213198A JP H11321617 A JPH11321617 A JP H11321617A
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road surface
road
wheel
deceleration
deviation
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JP13213198A
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English (en)
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Hidekazu Ono
英一 小野
Katsuhiro Asano
勝宏 浅野
Hiroyuki Yamaguchi
裕之 山口
Koji Umeno
孝治 梅野
Masaru Sugai
賢 菅井
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Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ピ−クμ追従制御のときに路面μが変化しても
十分な制動特性を得る。 【解決手段】制動トルク勾配を推定する制動トルク勾配
推定部(28)と、推定された制動トルク勾配が目標値
との偏差Δαが零に一致するように目標減速度を演算す
るPI制御器(14)と、検出された車輪減速度と目標
減速度との偏差Δyが零に一致するようなブレ−キ圧指
令信号を演算するPI制御器(18)と、を有するAB
S装置において、Δαが一定値以上の状態が所定時間継
続したときを低μ路から高μ路への移行時と判定するμ
変化判定部(30)と、低μ路から高μ路への移行時と
判定されたとき、PI制御器(14)が演算する目標減
速度をランプ的或いはステップ的に上昇させる路面μ適
応部(32)と、を備える。低μ路から高μ路への移行
時に目標減速度が上昇することにより制動力が上昇し、
よって、ピークμ追従制御に速やかに戻ることができ、
制動特性が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、路面μ特性に適応
したアンチロックブレーキ制御(ABS)を行うABS
用路面適応装置に係り、より詳しくは、車輪のすべり易
さを表す物理量の目標値偏差に基づいて、μ路の乗り移
り(例えば、低μ路から高μ路への変化)を判定し、フ
ィードフォワード的に制動力を調整することにより、十
分な制動特性を得ることを可能にしたABS用路面適応
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車に対する安全志向の高まり
から、予防安全技術の研究開発が進められ、その代表的
な安全装置であるアンチロックブレーキ制御装置(AB
S装置)は、既に多くの乗用車に装備されている。AB
S装置は、検出された車輪速度や車輪減速度などの車輪
挙動量に基づいてタイヤと路面との間の摩擦状態を演算
し、摩擦係数μがピーク値(ピークμ)を越えるおそれ
があると判定したときに、ブレーキ圧を低減させること
により、タイヤロックを防止するものである。
【0003】中でも、最大制動力保持型ABS装置で
は、ピークμ直前の摩擦状態を維持するようにブレーキ
圧を制御することにより、最大摩擦力で最も効果的なブ
レーキ制動を行っている。すなわち、車輪挙動量などに
基づいて、摩擦係数μのスリップ速度に対する勾配であ
る路面μ勾配を演算し、該路面μ勾配が、ピークμ直前
の状態に対応する正のある小さな値になるようにμ勾配
の目標値偏差をフィードバックすることにより、ピーク
μ付近の最大制動力を得て、タイヤロック防止と共に制
動距離を短縮化している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のABS装置では、単に路面μ勾配の目標値偏差をフ
ィードバックしているため、走行中の路面のμ特性が移
り変わったときに、変化した路面μ特性への制御系の適
応が遅いという問題点があった。特に、低μ路から高μ
路に乗り移った際には、図5(a)に示すように路面μ
勾配が急激に増加して目標値より大きくなる。このた
め、最大制動力保持のためピークμ付近までブレーキ圧
を増加させる必要があるが、目標値偏差のみに基づくブ
レーキ圧のフィードバック増加指令では、図5(b)に
示すように、緩やかにしかブレーキ圧が増大せず、十分
な制動特性が得られなかった。
【0005】本発明は、上記事実に鑑みなされたもの
で、最大制動力保持のためのアンチロックブレーキ動作
の間に路面μ特性が変化したとき、変化した路面に適応
した制御を迅速に行うことによって十分な制動特性を実
現することができるABS用路面適応装置を提供するこ
とを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を実現するため
に、請求項1の発明は、路面とタイヤとのすべり易さを
表す物理量を推定する推定手段と、前記推定手段により
推定された物理量と、タイヤと路面との間の摩擦係数で
ある路面μがピーク近傍となるための前記物理量の目標
値と、の偏差を演算する演算手段と、制動に関連する所
定の物理量が該物理量の目標値となるように、車輪に作
用するブレーキ力を制御するABS制御手段と、前記偏
差に基づいて路面μの変化を判定するμ変化判定手段
と、前記μ変化判定手段により路面μが変化したと判定
されたとき、変化した路面μに適応したブレーキ力が車
輪に作用するように前記所定の物理量の目標値を修正す
る路面μ適応手段と、を含んで構成したものである。
【0007】ここで、路面とタイヤとのすべり易さを表
す物理量には、例えば、路面μ勾配、微小ゲイン、車輪
に対する制動トルク又は制動力のスリップ速度に対する
勾配である制動トルク勾配(図8参照)や制動力勾配等
がある。即ち、これらの物理量が大きいと、タイヤ発生
力に余裕があり、すべりにくい。一方、これらの物理量
が小さいと、タイヤ発生力に余裕がなく、すべり易い。
よって、これらの物理量は、車輪のすべり易さを表す。
【0008】ここで、摩擦係数μは、路面から反力とし
て車輪に作用する制動力をF、輪荷重をW、タイヤ有効
半径をRとしたとき、 F=μW 又は FR = μWR の関係があることから、WRを略定数と仮定したとき、
制動力勾配、又は制動トルク勾配が、摩擦係数μのスリ
ップ速度に対する勾配と等価な物理量であることは明ら
かである。この物理量、例えば制動トルク勾配は、図8
に示すようにピークμとなるスリップ速度よりも小さい
スリップ速度の領域では正値、ピークμとなるスリップ
速度では零、ピークμとなるスリップ速度よりも大きい
スリップ速度の領域では負値となり、タイヤと路面との
間の摩擦状態を反映している。
【0009】請求項1の発明では、推定手段は、路面と
タイヤとのすべり易さを表す物理量を推定する。そし
て、偏差演算手段は、推定された物理量と、タイヤと路
面との間の摩擦係数である路面μがピーク近傍となるた
めの該物理量の目標値と、の偏差を演算し、ABS制御
手段は、制動に関連する所定の物理量が該物理量の目標
値となるように車輪に作用するブレーキ力を制御する。
例えば、この目標値として、正の小さな値を設定してお
けば、物理量が正の小さな値となるようにブレーキ力が
制御される。すなわち、物理量が正の小さな値に対応す
るピークμ直前の状態が保持される。
【0010】このようなフィードバック制御が行われて
いる間、μ変化判定手段は、演算された偏差に基づい
て、路面μの変化を判定する。この路面μの変化の判定
方法として、例えば、推定された物理量が所定値以上変
化したとき、或いは、前記偏差が所定値以上大きくなっ
た状態が所定時間以上継続したとき、を路面μが変化し
たと判定する。例えば、図6(a)に示すように、低μ
路から高μ路へ移行するとき、物理量(例えば、路面μ
勾配)とこの物理量の目標値との偏差が急激に大きくな
るので、路面μ勾配の増加量又は偏差が所定値以上とな
ったとき、低μ路から高μ路へ移行したと判定できる。
【0011】そして、路面μ適応手段は、μ変化検出手
段により路面μが変化したと判定されたとき、変化した
路面μに適応したブレーキ力が車輪に作用するように上
記所定の物理量の目標値を修正する。一例として、請求
項2の発明のように、路面μ適応手段が、μ変化判定手
段により低い路面μから高い路面μへ路面が変化したと
判定されたとき、前記偏差に基づく通常のブレーキ力よ
りも大きいブレーキ力が車輪に作用するように制動に関
する上記物理量の目標値を修正する。例えば、図6
(b)に示すように、ホイールシリンダ圧をランプ的に
徐々に上昇修正する。また、前記偏差に応じた変化量で
ホイールシリンダ圧をステップ的に上昇修正してもよ
い。
【0012】このように本発明では、低μ路から高μ路
へ移行した際に偏差に基づく低μ路でのブレーキ力より
も大きなブレーキ力が印加されることにより、最大摩擦
力がより大きくなった高μ路に適応した大きな制動力が
速やかに発生し、十分な制動特性を得ることができる。
一方、高μ路から低μ路に移り変わったと判定されたと
きは偏差に基づく通常のブレーキ力に戻すようにABS
制御手段をフィードフォワード制御することにより、あ
らゆる路面μに適応した制御が可能となる。
【0013】本発明に基づく路面μ適応フィードフォワ
ード制御が適用されるABS制御系には、様々な実施態
様が考えられる。適応可能な好ましい制御系の例とし
て、減速度サーボなど車輪挙動量サーボで階層制御系が
挙げられる。この減速度サーボの階層制御系では、例え
ば、請求項3の発明のように、請求項1又は請求項2記
載の発明において、制動に関連する所定の物理量として
車輪減速度を検出する車輪減速度検出手段と、をさらに
含んで構成し、前記ABS制御手段は、前記偏差に基づ
いて、目標車輪減速度を演算する目標車輪減速度演算手
段と、前記目標車輪減速度演算手段により演算された目
標車輪減速度と前記車輪減速度検出手段により検出され
た車輪減速度との偏差に基づいて、ブレーキ力制御信号
を演算するブレーキ力演算手段と、を有するように構成
する。
【0014】請求項3の発明では、目標車輪減速度演算
手段が上記偏差に基づいて目標車輪減速度を演算する。
例えば、この偏差が零に一致するように該偏差からPI
制御等により目標車輪減速度を演算する。次に、ブレー
キ力演算手段が、演算された目標車輪減速度と検出され
た実際の車輪減速度との偏差に基づいて、ブレーキ力を
制御するためのブレーキ力制御信号を演算する。例えば
減速度の偏差が零に一致するように、該偏差からPI制
御等によりブレーキ力制御信号を演算する。
【0015】そして、路面μ適応手段は、μ変化検出手
段により路面μが変化したと判定されたとき、変化した
路面μに適応したブレーキ力が車輪に作用するように、
ABS制御手段をフィードフォワード制御する。具体的
には、請求項4の発明のように、路面μ適応手段が、μ
変化判定手段により低い路面μから高い路面μへ路面が
変化したと判定されたとき、目標減速度演算手段により
演算された目標減速度をランプ的或いはステップ的に上
昇させる。これによって、車輪減速度が増大し、高μ路
に適応した大きな制動力を速やかに得ることができる。
PI制御により目標減速度を演算する場合には、目標減
速度演算手段の比例ゲインや積分ゲインを増加させるこ
とにより、目標減速度を上昇させてもよい。
【0016】なお、本発明は、階層的な減速度サーボ以
外の他のABS制御系にも適応可能である。例えば、路
面μ勾配と目標μ勾配との偏差が零に一致するように、
該偏差からPI制御等により、直接、ブレーキ力制御信
号を演算するABS装置にも適用可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明のABS用路面適応
装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。 (第1の実施の形態)第1の実施の形態は、本発明のA
BS用路面適応装置を階層型の車輪減速度サーボ制御系
に適応したものであり、図1には、該装置の構成ブロッ
クが示されている。同図に示すように、ABS用路面適
応装置10は、車輪22の車輪速度信号ωを所定のサン
プリング時間τ毎に検出する車輪速度検出部24と、少
なくとも検出された車輪速度信号ωに基づいて勾配αを
推定する、本発明の推定手段としての勾配推定部28
と、推定された勾配αと予め所定値に設定されている目
標勾配α0 との偏差Δα=(α0 −α)を演算する偏差
演算器12と、比例ゲインGP 及び積分ゲインGI に基
づいて偏差Δαを零に一致させるための目標減速度y0
を演算するPI制御器14と、を備えている。これらは
階層制御系の上位の制御系を構成しており、ピークμ追
従制御の場合、目標勾配α0 は、図8のピークμ直前の
状態に対応する正の小さな値に設定される。なお、本実
施形態では、勾配推定部28を、上記制動トルク勾配を
推定する手段として構成し、その詳細な推定原理につい
ては後述する。
【0018】また、ABS用路面適応装置10は、車輪
22の車輪減速度を検出する車輪減速度検出部26と、
PI制御器14により演算された目標減速度y0 と車輪
減速度検出部26により検出された車輪減速度yとの偏
差Δy=(y0 −y)を演算する偏差演算器16と、比
例ゲインGP 及び積分ゲインGI に基づいて偏差Δyを
零に一致させるためのブレーキ圧指令信号を演算するP
I制御器18と、演算されたブレーキ圧指令信号に基づ
いて車輪22のホイールシリンダ圧を制御する制御バル
ブ20と、を備えている。これらは、階層制御系の下位
の制御系を構成している。
【0019】さらに、ABS用路面適応装置10は、偏
差Δαに基づいて路面μの変化を判定するμ変化検出部
30と、μ変化判定部30により路面μが変化したと判
定されたとき、現在の路面μに適したホイールシリンダ
圧が車輪22に作用するための目標減速度y0 を演算す
るようにPI制御器14を制御する路面μ適応部32
と、を有している。これらは、本発明に係る路面μ適応
を実現する手段である。また、PI制御器14、18
は、微分制御を含めたPID制御器などにより構成して
もよいし、また、いわゆるH∞制御や2自由度制御など
を行うロバスト制御器など、より高次の制御を行う制御
器により構成してもよい。また、車輪減速度検出器26
は、車輪速度ωから車輪減速度yを演算するフィルタで
構成してもよいし、或いは車輪減速度を直接検出する減
速度センサーなどから構成することもできる。
【0020】また、制御バルブ20は、図示しない増圧
バルブ及び減圧バルブを有しており、増圧バルブは、ブ
レーキペダルの踏力に応じて増圧する図示しないマスタ
シリンダと接続され、減圧バルブは、低圧源としての図
示しないリザーバーと接続されている。さらに、制御バ
ルブ20には、図示しないホイールシリンダが接続され
ており、制御バルブは、ブレーキ圧指令信号に応じて、
増圧バルブ及び減圧バルブの開閉時間を調整することに
より、車輪22に作用するホイールシリンダ圧を制御す
る。
【0021】なお、図1では、一つの車輪22について
各構成部が示されているが、複数の車輪を持つ車両(例
えば4輪自動車)の場合、実際には各々の車輪について
図1に示す各構成部が設けられている。
【0022】次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0023】ABS制御を開始するための所定条件が成
立すると、勾配推定部28が、車輪速検出器24により
検出されたサンプリング時間τ毎の車輪速度ωの時系列
データ{ω1、ω2、ω3、...}に基づいて制動ト
ルク勾配αを順次演算する。次に、偏差演算器12が目
標勾配α0 と演算された制動トルク勾配αとの偏差Δα
を演算し、PI制御器14が、偏差Δαに基づいて目標
減速度y0 を演算する。例えば、Δα(=α0 −α)が
負、即ち、αが正の大きな値であるとき、制動力の余裕
度が大きいため、目標減速度y0 が大きな値となるよう
に演算し、逆に、Δαが正のときは、目標減速度が小さ
な値となるように演算する。
【0024】次に、偏差演算器16が、演算された目標
減速度y0 と車輪減速度検出器26により検出された車
輪減速度yとの偏差Δyを演算し、PI制御器18が、
Δyを零に一致させるためのブレーキ圧指令信号を演算
する。制御バルブ20は、ブレーキ圧指令信号に応じて
車輪22に作用するホイールシリンダ圧を制御する。
【0025】このようにしてほぼ一定の摩擦特性を有す
る路面を走行している間では、制動トルク勾配αが目標
μ勾配α0 に一致するようにホイールシリンダ圧がフィ
ードバック制御され、ピークμへ追従するためのアンチ
ロックブレーキ動作が可能となる。
【0026】上記ピークμ追従制御の間、μ変化判定部
30は、偏差Δαに基づいて現在走行中の路面が低μ路
から高μ路へ変化したか否を常時判定しており、低μ路
から高μ路へ変化したと判定した場合、路面μ適応部3
2へ路面μ適応の指令信号を出力する。ここで、μ変化
判定部30による路面μ変化判定方法の一例を図2のフ
ローチャートを用いて説明する。
【0027】図2のフローチャートに示すように、ま
ず、タイマーのカウント値tを0に初期化する(ステッ
プ200)。次に、偏差Δαが所定のしきい値Aを越え
たか否かを判定する(ステップ202)。偏差Δαがし
きい値Aを越えていないと判定した場合(ステップ20
2否定判定)、ステップ200に戻り、同様の判定を繰
り返す。一方、偏差Δαがしきい値Aを越えたと判定し
た場合(ステップ202肯定判定)、タイマーカウント
値tを1だけインクリメントする(ステップ204)。
そして、カウント値tが所定のしきい値Bを越えたか否
かを判定する(ステップ206)。tがBを越えていな
いと判定した場合(ステップ206否定判定)、ステッ
プ202に戻り、再び上記判定を繰り返す。
【0028】偏差ΔαがAを越えた状態が継続してカウ
ント値tが順次更新された結果により、tがBを越えた
と判定した場合(ステップ206肯定判定)、路面が低
μ路から高μ路へ移行したと判断する(ステップ20
8)。そして、路面μ適応部32への指令信号をオンに
する(ステップ210)。すなわち、本実施形態では、
偏差Δαが所定値Aを越えた状態が所定時間継続した場
合、低μ路から高μ路へ移行したと判定する(図6
(a)参照)。
【0029】その後、路面μ適応部32による適応制御
が行われている間、μ変化判定部30は、偏差Δαがま
だ上記しきい値Aを越えているか否かを判定する(ステ
ップ212)。偏差ΔαがAを越えていると判定した場
合(ステップ212肯定判定)、ステップ210に戻
り、路面μ適応部32への指令信号オンの状態を継続す
る。
【0030】一方、適応制御の結果、偏差ΔαがAを越
えなくなったと判定した場合(ステップ212否定判
定)、路面μ適応部32への指令信号をオフにする(ス
テップ214)。これにより、路面μ適応部32による
フィードフォワード制御が終了し、通常のフィードバッ
ク制御に戻る(図6(a)、(b)参照)。そして、ス
テップ200に戻って、以上の処理を再び実行する。
【0031】路面μ適応部32では、μ変化判定部30
からの指令信号がオンになったときからオフになるまで
の間、図3(a)に示すように、目標減速度y0 がほぼ
一定の増加率で増加するようにPI制御器14を制御す
る。この結果、ホイールシリンダ圧がランプ的に上昇す
る(図6(b)参照)。なお、この増加率が偏差Δαの
大きさに応じて変化するようにしてもよい。
【0032】また、図3(b)に示すように、目標減速
度y0 をステップ的に上昇させてもよい。この場合は、
ホイールシリンダ圧がステップ的に増大する。なお、こ
のステップ変化量の大きさが偏差Δαが大きくなるに従
い、増加するようにしてもよい。
【0033】図3(a)、(b)に示すように目標減速
度を上昇させる制御は、以下の方法によって可能とな
る。すなわち、図4(a)に示すように、PI制御器1
4の比例ゲインGp を大きくすることによって、演算出
力される目標減速度y0 をΔαに応じて急激に上昇させ
ることができる(図3(a)に対応)。また、PI制御
器14の積分ゲインGI を大きくすることによって、演
算出力される目標減速度y0 をΔαに応じた傾きでラン
プ的に上昇させることができる(図3(b)に対応)。
【0034】勿論、目標減速度の上昇制御の方法は、上
記例に限定されるものではない。例えば、Δαに応じた
目標減速度の増分量Δyを演算し、このΔyを、PI制
御器14の演算結果に加算することにより目標減速度を
上昇させることもできる。また、低μ路に適した制御を
行うPI制御器と高μ路に適した制御を行うPI制御器
とを用意し、μ変化判定部30による判定結果に応じ
て、いずれかのPI制御器を切り替え選択するようにし
てもよい。
【0035】このように本実施形態のABS用路面適応
装置10では、図6(a)に示すように、アンチロック
ブレーキ動作中に低μ路から高μ路へ移行したと判定し
たとき、図6(b)に示すように、目標減速度をランプ
的或いはステップ的に増加させる制御を行うことによ
り、ホイールシリンダ圧を増加させる制御を行うように
したので、高μ路に適応したピークμ追従制御へ迅速に
移行することができる。これにより、十分な制動特性を
確保して制動距離及び制動時間を短縮することができ
る。
【0036】ここで、勾配推定部28による制動トルク
勾配の推定原理を説明する。 (制動トルク勾配の推定原理)各車輪の車輪運動及び車
体運動は次式の運動方程式によって記述される。
【0037】
【数1】 ただし、Fi ’は、第i輪に発生した制動力、Tbiは踏
力に対応して第i輪に加えられたブレーキトルク、Mは
車両質量、Rc は車輪の有効半径、Jは車輪慣性、vは
車体速度である。なお、・は時間に関する微分を示す。
(1) 式、(2) 式において、Fi ’はスリップ速度(v/
c −ωi )の関数として示されている。
【0038】ここで、車体速度を等価的な車体の角速度
ωv で表すと共に、制動トルクRci ’をスリップ速
度の1次関数(傾きki 、y切片Ti )として記述す
る。
【0039】 v = Rc ωv (3) Rc i ’(ωv −ωi )=ki ×(ωv −ωi )+Ti (4) さらに、(3) 、(4) 式を(1) 、(2) 式へ代入し、車輪速
度ωi 及び車体速度ω v をサンプル時間τ毎に離散化さ
れた時系列データωi [k] 、ωv [k] (kはサンプル時
間τを単位とするサンプル時刻、k=1,2,.....)として
表すと次式を得る。
【0040】
【数2】 ここで、(5) 、(6) 式を連立し、車体の等価角速度ωv
を消去すると、
【0041】
【数3】 を得る。
【0042】ところで、スリップ速度3rad/s という条
件下でRc Mg/4(gは重力加速度)の最大制動トル
クの発生を仮定すると、
【0043】
【数4】 を得る。ここで、具体的な定数として、τ=0.005 (se
c) 、Rc =0.3 (m) 、M=1000(kg)を考慮すると、max
(ki ) =245 となる。従って、
【0044】
【数5】 となり、(7) 式は次式のように近似することができる。
【0045】
【数6】 である。
【0046】このように整理することにより、(8) 式は
未知係数ki 、fi に関し、線形の形で記述することが
可能となり、(8) 式にオンラインのパラメータ同定手法
を適用することにより、スリップ速度に対する制動トル
ク勾配ki を推定することができる。
【0047】すなわち、以下のステップ1及びステップ
2を繰り返すことにより、検出された車輪速度の時系列
データωi [k] から制動トルク勾配の時系列データを推
定することができる。
【0048】
【数7】 i [k] =−ωi [k] + 2ωi [k−1]−ωi [k−2] (10) とおく。なお、(9) 式の行列φi [k] の第1要素は、1
サンプル時間での車輪速度の変化に関する物理量であ
り、(10)式は、1サンプル時間の車輪速度の変化の1サ
ンプル時間での変化に関する物理量である。
【0049】
【数8】 という漸化式から推定行列
【0050】
【数9】 を演算し、該推定行列の第一要素を推定された制動トル
クの勾配として抽出する。ただし、λは過去のデータを
取り除く度合いを示す忘却係数(例えばλ=0.98)
であり、”T ”は行列の転置を示す。
【0051】なお、(11)式の左辺は、車輪速度の変化に
関する物理量の履歴及び車輪速度の変化の変化に関する
物理量の履歴を表す物理量である。
【0052】以上が本発明の実施の形態であるが、本発
明は、上記例にのみ限定されるものではなく、本発明の
要旨を逸脱しない範囲内において任意好適に変更可能で
ある。例えば、上記例では、偏差Δαが一定値を越えた
状態が所定時間継続することをもって低μ路から高μ路
への移行と判定したが、勾配αが一定値を越える増加量
で増大し、かつ勾配αが増大した状態が所定時間継続し
たときに、低μ路から高μ路へ移行したと判定すること
ができる。
【0053】また、上記例では、低μ路から高μ路への
移行のみを対象としたが、路面をさらに細かく分類し
(例えば、低μ路、中μ路、高μ路)、それら路面間の
移り変わりに応じたフィードフォワード制御を行うこと
もできる。
【0054】さらに、車輪減速度サーボの階層制御系に
本発明を適応する例を示したが、偏差Δαに基づいて、
直接、ブレーキ圧指令信号を演算するABS装置にも本
発明を適応することができる。この場合、路面μ適応部
32は、μ変化判定部30の指令信号がオンになったと
き、当該ABS装置の制御器により演算されるブレーキ
圧指令信号が上昇するように、当該制御器を、直接、フ
ィードフォワード制御する。
【0055】さらに、勾配推定部では、車輪速度の時系
列データに基づいて制動トルク勾配を推定したが、本発
明は上記推定方法に限定されるものではない。例えば、
車輪減速度の時系列データとホイールシリンダ圧の時系
列データとに基づいて、オンライン最小二乗法を用いて
制動トルク勾配を推定することもできる。
【0056】以上説明した実施の形態では、制動トルク
勾配を推定しているが、本発明はこれに限定されず、制
動トルク勾配に代えて、制動トルク勾配に対応する、微
小ゲイン、即ち、スリップ速度に対する路面と車輪との
間の摩擦係数の勾配(路面μ勾配)を演算して、同様に
処理するようにしてもよい。以下、微小ゲインと制動ト
ルク勾配とが等価な物理量であることを説明する。
【0057】重量Wの車体を備えた車両が速度ωu で走
行している時の車輪での振動現象、すなわち車体と車輪
と路面とによって構成される振動系の振動現象を、車輪
回転軸で等価的にモデル化した図9に示すモデルを参照
して考察する。
【0058】図9のモデルにおいて、ブレーキ力は、路
面と接するタイヤのトレッド115の表面を介して路面
に作用する。しかし、このブレーキ力は実際には路面か
らの反作用(制動力)として車体に作用する。このた
め、車体重量の回転軸換算の等価モデル117は、タイ
ヤのトレッドと路面との間の摩擦要素116(路面μ)
を介して車輪113と反対側に連結したものとなる。こ
れは、シャシーダイナモ装置のように、車輪下の大きな
慣性、すなわち車輪と反対側の質量で車体の重量を模擬
することができることと同様である。
【0059】図9でタイヤリムを含んだ車輪113の慣
性をJw 、リムとトレッド115との間のばね要素11
4のばね定数をK、車輪半径をR、トレッド115の慣
性をJt 、トレッド115と路面との間の摩擦要素11
6の摩擦係数をμ、車体の重量の回転軸換算の等価モデ
ル117の慣性をJV とすると、ホイールシリンダ圧に
より生じるブレーキトルクTb ’から車輪速ωw までの
伝達特性は、
【0060】
【数10】 となる。なお、sはラプラス変換の演算子である。ま
た、スリップ速度Δωと路面の摩擦係数μとの間には、
前述したように、図8に示すように、あるスリップ率で
摩擦係数μがピークをとる関数関係が成立することが知
られている。ここで、図8の関数関係において、あるス
リップ率の回りで微小振動したときの摩擦係数μのスリ
ップ速度Δωに対する変化を考えると、路面の摩擦係数
μは、 μ = μ0 +αRΔω (12) と近似できる。すなわち、微小振動によるスリップ速度
の変化が小さいため、傾きαRの直線で近似できる。
【0061】ここで、タイヤと路面間の摩擦係数μによ
り生じる制動トルクTb =μWに(12)式を代入する
と、 Tb = μW = μ0 W+αRΔωW (13) となる。(13)式の両辺をΔωで1階微分すると、
【0062】
【数11】 となる。
【0063】ここで、タイヤが路面にグリップしている
時は、トレッド115と車体等価モデル117とが直結
されていると考える。この場合、車体等価モデル117
とトレッド115との和の慣性と、車輪113の慣性と
が共振する。即ち、この振動系は、車輪と車体と路面と
から構成された車輪共振系とみなすことができる。この
ときの車輪共振系の共振周波数ω∞は、上記の伝達特性
において、
【0064】
【数12】 となる。
【0065】ここで、図8において(15)式が成立す
る摩擦状態は、ピークμに達する前の領域A1に対応す
る。
【0066】逆に、タイヤの摩擦係数μがピークμに近
づく場合には、タイヤ表面の摩擦係数μがスリップ率に
対して変化し難くなる。即ち、トレッド115の慣性の
振動に伴う成分は車体等価モデル117に影響しなくな
る。つまり等価的にトレッド115と車体等価モデル1
17とが分離され、トレッド115と車輪113とが共
振を起こすことになる。このときの車輪共振系は、車輪
と路面とから構成されているとみなすことができる。そ
の共振周波数ω∞’は、(15)式において、車体等価
慣性Jv を0とおいたものと等しくなる。すなわち、
【0067】
【数13】 となる。この状態は、図8では、ピークμ近傍の領域A
2に対応する。なお、ピークμを越えてブレーキ制動さ
れると、領域A3に瞬時に移行し、タイヤがロックされ
る。
【0068】車体等価慣性Jv が車輪慣性Jw 、トレッ
ド慣性Jt より大きいと仮定する。この場合、(16)
式の場合の車輪共振系の共振周波数ω∞’は(15)式
のω∞よりも高周波数側にシフトすることになる。
【0069】ここで、ブレーキ圧Pb に対する車輪速ω
w の比(ωw /Pb )の共振周波数ω∞の振動成分
((ωw /Pb )|s=jω∞)を微小ゲインGd とす
る。なお、以下では、ABSアクチュエータにより平均
ブレーキ力の回りに共振周波数ω∞の微小励振を印加し
ているものとする。
【0070】ホイールシリンダ圧により生じるトルクT
b ’はブレーキ圧Pb と比例関係にあることから、微小
ゲインGd は、(ωw /Tb ’)の共振周波数ω∞の振
動成分と比例関係にあり、微小ゲインGd は次式によっ
て表される。
【0071】
【数14】 一般に、 |A| = 0.012 << |B| = 0.1 (20) となることから、(14)式、(17)式より、
【0072】
【数15】 を得る。すなわち、スリップ速度Δωに対する制動トル
クTb の勾配は微小ゲインGd に比例する。
【0073】よって、各制動力勾配演算部に代えて微小
ゲイン演算部36(図10参照)を備え、微小ゲインG
d を求め、求めた微小ゲインGd に基づいて、上記と同
様に処理すればよい。
【0074】次に、各微小ゲイン演算部36による微小
ゲインGd の演算方法を説明する。
【0075】ここで、車輪と車体と路面とからなる振動
系の共振周波数ω∞((15)式)でブレーキ力を微小
励振すると(ここでは、ブレーキ圧Pb を微小励振する
とする)、車輪速度ωw も平均的な車輪速度の回りに共
振周波数ω∞で微小振動する。ここで、このときのブレ
ーキ圧Pb の共振周波数ω∞の微小振幅をPv 、車輪速
度の共振周波数ω∞の微小振幅をωwvとした場合、微小
ゲインGd を Gd =ωwv/Pv (22) となる。
【0076】この微小ゲインGd は、前述したように
(ωw /Pb )の共振周波数ω∞の振動成分でもあるの
で、摩擦状態がピークμ近傍の領域に至ったとき、共振
周波数がω∞’にシフトするため急激に減少する。すな
わち、微小ゲインGd は、路面μ特性を規定する物理量
であるといえる。
【0077】そして、微小ゲイン演算部36は、図10
に示すように、振動系の共振周波数ω∞((15)式)
でブレーキ圧を微小励振したときの、車輪速度Vw の共
振周波数ω∞の微小振幅(車輪速微小振幅ωwv)を検出
する車輪速微小振幅検出部40と、共振周波数ω∞のブ
レーキ圧の微小振幅Pv を検出するブレーキ圧微小振幅
検出部42と、検出された車輪速微小振幅ωwvをブレー
キ圧微小振幅Pv で除算することにより微小ゲインGd
を出力する除算器44と、から構成される。
【0078】ここで、車輪速微小振幅検出部40は、共
振周波数ω∞の振動成分を抽出するフィルタ処理を行う
図11のような演算部として実現できる。例えば、この
振動系の共振周波数ω∞が40[Hz]程度であるの
で、制御性を考慮して1周期を24[ms]、約41.
7[Hz]に取り、この周波数を中心周波数とする帯域
通過フィルタ75を設ける。このフィルタにより、車輪
速度信号ωi から約41.7[Hz]近傍の周波数成分
のみが抽出される。さらに、このフィルタ出力を全波整
流器76により全波整流、直流平滑化し、この直流平滑
化信号から低域通過フィルタ77によって低域振動成分
のみを通過させることにより、車輪速微小振幅ωwvを出
力する。
【0079】なお、周期の整数倍、例えば1周期の24
[ms]、2周期の48[ms]の時系列データを連続
的に取り込み、41.7[Hz]の単位正弦波、単位余
弦波との相関を求めることによっても車輪速微小振幅検
出部40を実現できる。
【0080】ここで、平均ブレーキ圧Pm の回りに共振
周波数のブレーキ圧微小振幅Pv を印加する微小励振手
段について説明する。まず、平均ブレーキ圧指令及び微
小励振指令を実際の車輪への制動トルクに変換する部分
(バルブ制御系)は、図12に示すように、マスタシリ
ンダ48、制御バルブ52、ホイールシリンダ56、リ
ザーバー58及びオイルポンプ60を備えている。
【0081】ブレーキペダル46は、ブレーキペダル4
6の踏力に応じて増圧するマスタシリンダ48を介して
制御バルブ52の増圧バルブ50へ接続されている。ま
た、制御バルブ52は、減圧バルブ54を介して低圧源
としてのリザーバー58へ接続されている。さらに、制
御バルブ52には、該制御バルブによって供給されたブ
レーキ圧をブレーキディスクに加えるためのホイールシ
リンダ56が接続されている。この制御バルブ52は、
入力されたバルブ動作指令に基づいて増圧バルブ50及
び減圧バルブ54の開閉を制御する。
【0082】なお、この制御バルブ52が増圧バルブ5
0のみを開くように制御されると、ホイールシリンダ5
6の油圧(ホイールシリンダ圧)は、ドライバがブレー
キペダル46を踏み込むことによって得られる圧力に比
例したマスタシリンダ48の油圧(マスタシリンダ圧)
まで上昇する。逆に減圧バルブ54のみを開くように制
御されると、ホイールシリンダ圧は、ほぼ大気圧のリザ
ーバ58の圧力(リザーバ圧)まで減少する。また、両
方のバルブを閉じるように制御されると、ホイールシリ
ンダ圧は保持される。
【0083】ホイールシリンダ56によりブレーキディ
スクに加えられるブレーキ力(ホイールシリンダ圧に相
当)は、マスタシリンダ48の高油圧が供給される増圧
時間、リザーバー58の低油圧が供給される減圧時間、
及び供給油圧が保持される保持時間の比率と、圧力セン
サ等により検出されたマスタシリンダ圧及びリザーバー
圧とから求められる。
【0084】従って、制御バルブ52の増減圧時間をマ
スタシリンダ圧に応じて制御することにより、所望のブ
レーキトルクを実現することができる。そして、ブレー
キ圧の微小励振は、平均ブレーキ力を実現する制御バル
ブ52の増減圧制御と同時に共振周波数に対応した周期
で増圧減圧制御を行うことにより可能となる。
【0085】具体的な制御の内容として、図13に示す
ように、微小励振の周期(例えば24[ms])の半周
期T/2毎に増圧と減圧のそれぞれのモードを切り替
え、バルブへの増減圧指令は、モード切り替えの瞬間か
ら増圧時間ti 、減圧時間trのそれぞれの時間分だけ
増圧・減圧指令を出力し、残りの時間は、保持指令を出
力する。平均ブレーキ力は、マスタシリンダ圧に応じた
増圧時間ti と減圧時間tr との比によって定まると共
に、共振周波数に対応した半周期T/2毎の増圧・減圧
モードの切り替えによって、平均ブレーキ力の回りに微
小振動が印加される。
【0086】なお、ブレーキ圧微小振幅Pv は、マスタ
シリンダ圧、図13に示したバルブの増圧時間ti の長
さ、及び減圧時間tr の長さによって所定の関係で定ま
るので、図7のブレーキ圧微小振幅検出部42は、上記
のように推定した前回のマスタシリンダ圧PI (P1
4 (図1参照))、増圧時間ti 及び減圧時間tr
らブレーキ圧微小振幅Pv を出力するテーブルとして構
成することができる。
【0087】
【実施例】本発明の上記実施形態に係るABS用路面適
応装置が実際の路面を走行したときの動作結果を図7を
用いて説明する。
【0088】図7は、最上図の車輪速度と車体速度の時
間的変化のグラフが示すように初速約48rad/se
cで走行していた車両が時刻0secでブレーキ制動を
開始するという条件下の動作結果を表しており、各車輪
挙動量の時間的変化を、従来のABS装置(左図)と本
発明に係るABS用路面適応装置(右図)とを対比させ
て各々示したものである。すなわち、最上図以降から順
に車輪減速度と目標減速度、マスタ圧とホイールシリン
ダ圧、及び制動トルク勾配と目標μ勾配の各時間的変化
がそれぞれ示されている。また、図7では、制動開始後
に低μ路から高μ路へ路面が移り変わっており、制動ト
ルク勾配に関する最下図のグラフが示すように、従来技
術では制動中の時刻約2秒で、本発明では時刻約1.5
秒で路面μが変化している。
【0089】同図に示すように、路面μが変化してから
の目標減速度及びこれに追従する車輪減速度の検出値
は、本発明では従来技術に比較して、より急激に増加し
ている。この動作結果に対応して、路面μが変化した後
のホイールシリンダ圧は、従来技術では、緩やかにしか
増大していないのに対し、本発明では急激に増大してい
る。
【0090】そして、路面μが変化した後の制動トルク
勾配は、本発明、従来技術ともに、しばらくの間は目標
値よりも増大するが、この偏差Δαが大きい状態の期間
長については、従来技術が約3秒間継続するのに対し、
本発明では約1秒間となっており、大幅に短縮化されて
いるのがわかる。すなわち、本発明によれば、制動中に
路面μが変化しても従来技術と比べてより迅速に適正な
目標値追従制御に戻ることを示している。
【0091】さらに、車輪速度と車体速度の時間的変化
のグラフが示すように、従来技術では、時刻約5秒で車
両がほぼ停止するのに対し、本発明では、時刻約4秒で
車両がほぼ停止した状態となり、制動時間が短縮化され
ている。一方、制動距離についても、該制動距離は速度
変化曲線の積分値に対応しているので、本発明では、従
来よりも制動距離を短縮化できることがわかる。以上よ
り、本発明は、従来技術よりも制動特性の向上を図るこ
とができることが示された。
【0092】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
制動に関する所定の物理量が該物理量の目標値となるよ
うに、車輪に作用するブレーキ力の制御中に、路面μが
変化したと判定されたとき、変化した路面μに適応した
ブレーキ力が車輪に作用するように、制動に関連する物
理量の目標値を修正するようにしたので、路面μが変化
したときであっても、十分な制動特性を確保することが
できる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るABS用路面適応装置
の構成ブロック図である。
【図2】図1のμ変化判定部における低μ路から高μ路
へのμ変化判定処理を示すフローチャートである。
【図3】図1の路面μ適応部の目標減速度の上昇特性を
示す図であって、(a)は目標減速度をランプ的に上昇
させた場合のグラフ、(b)は目標減速度をステップ的
に上昇させた場合のグラフである。
【図4】図1の路面μ適応部によるPI制御器の制御方
法を示す図であって、(a)は比例ゲインを大きくする
場合のPI制御の概念図、(b)は積分ゲインを大きく
する場合のPI制御の概念図である。
【図5】低μ路から高μ路へ以降したときにフィードバ
ック制御のみを行う従来技術を説明するための図であっ
て、(a)は路面μ勾配及び目標値の時間的変化、
(b)はブレーキ圧の時間的変化を各々示す図である。
【図6】低μ路から高μ路へ以降したときに適応制御を
行う本発明を説明するための図であって、(a)は路面
μ勾配及び目標値の時間的変化、(b)はブレーキ圧の
時間的変化を各々示す図である。
【図7】本発明の実施例における動作結果のグラフであ
る。
【図8】スリップ速度に対する制動トルクの関係を示す
線図である。
【図9】車体と車輪と路面とから構成される振動系の等
価モデルを示す図である。
【図10】微小ゲイン演算部のブロック図である。
【図11】車輪速微小振幅検出部のブロック図である。
【図12】ブレーキ圧微小振幅検出部のブロック図であ
る。
【図13】ブレーキ圧の微小励振と平均ブレーキ力の制
御を同時に行う場合の制御バルブへの指令を示す図であ
る。
【符号の説明】
10 ABS用路面適応装置 14 PI制御器 18 PI制御器 20 制御バルブ 24 車輪速検出器 26 車輪減速度検出器 28 μ勾配推定部 30 μ変化判定部 32 路面μ適応部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山口 裕之 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 梅野 孝治 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 菅井 賢 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 路面とタイヤとのすべり易さを表す物理
    量を推定する推定手段と、 前記推定手段により推定された物理量と、タイヤと路面
    との間の摩擦係数である路面μがピーク近傍となるため
    の前記物理量の目標値と、の偏差を演算する演算手段
    と、 制動に関連する所定の物理量が該物理量の目標値となる
    ように、車輪に作用するブレーキ力を制御するABS制
    御手段と、 前記偏差に基づいて路面μの変化を判定するμ変化判定
    手段と、 前記μ変化判定手段により路面μが変化したと判定され
    たとき、変化した路面μに適応したブレーキ力が車輪に
    作用するように前記所定の物理量の目標値を修正する路
    面μ適応手段と、 を含むABS用路面適応装置。
  2. 【請求項2】 前記路面μ適応手段は、前記μ変化判定
    手段により低い路面μから高い路面μへ路面が変化した
    と判定されたとき、前記偏差に基づく通常のブレーキ力
    よりも大きいブレーキ力が車輪に作用するように制動に
    関連する前記所定の物理量の目標値を修正する請求項1
    記載のABS用路面適応装置。
  3. 【請求項3】 車輪減速度を、制動に関する所定の物理
    量として検出する車輪減速度検出手段と、をさらに含
    み、 前記ABS制御手段は、 前記偏差に基づいて、目標車輪減速度を演算する目標車
    輪減速度演算手段と、前記目標車輪減速度演算手段によ
    り演算された目標車輪減速度と前記車輪減速度検出手段
    により検出された車輪減速度との偏差に基づいて、ブレ
    ーキ力制御信号を演算するブレーキ力演算手段と、 を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の
    ABS用路面適応装置。
  4. 【請求項4】 前記路面μ適応手段は、前記μ変化判定
    手段により低い路面μから高い路面μへ路面が変化した
    と判定されたとき、前記目標減速度を上昇させることを
    特徴とする請求項3に記載のABS用路面適応装置。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6377885B2 (en) 2000-04-03 2002-04-23 Aisin Seiki Kabushiki Kaisha Braking force control device
US7059687B2 (en) 2000-04-03 2006-06-13 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Braking force distribution control device
DE10393181B4 (de) * 2002-08-29 2007-06-28 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha, Toyota Vorrichtung zum Abschätzen einer Strassenoberflächen-Zustandsänderung, entsprechendes Verfahren sowie Kraftfahrzeug mit dieser Vorrichtung
JP2009023463A (ja) * 2007-07-18 2009-02-05 Nissin Kogyo Co Ltd 車両用ブレーキ液圧制御装置

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