JP3792756B2 - アンチロックブレーキ制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアンチロックブレーキ制御装置に係り、特に、車輪の回転速度(車輪速度)に現れる振動特性に基づいてブレーキ力を制御し、車輪と路面との間の摩擦係数が最大値(ピークμ)でのブレーキ動作を行うアンチロックブレーキ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のアンチロックブレーキ制御装置は、車輪速センサの信号に基づいて車体速度、車体加減速度、または車体速度に近似した速度信号等を作成し、これらの比較からブレーキ力を制御してアンチロックブレーキ動作を行っている。
【0003】
すなわち、特開昭61−196853号公報には、推定した推定車体速度と車輪速度等から得られる基準速度との比較から、車輪がロックする可能性があるかどうかを判断し、車輪がロックする可能性がある時にブレーキ力を減少させるアンチロックブレーキ制御装置が記載されている。このアンチロックブレーキ制御装置では、推定車体速度vv は図1に示すように車輪速度より求めた速度vw の谷を一定勾配で接続することにより得られるが、推定車体速度vv と実車体速度vv*との間にずれが生じていることが理解できる。
【0004】
また、このアンチロックブレーキ制御装置では、悪路走行時の車輪接地荷重の変化によって推定車体速度vv が実車体速度vv*より大きくなることを防止するために、推定車体速度の変化以上に車輪速度が変化する場合には推定車体速度の増加割合を抑制している。
【0005】
また、車両がある速度で走行している時、ブレーキをかけていくと車輪と路面との間にスリップが生じるが、車輪と路面との間の摩擦係数μは、下記の(1)式で表されるスリップ率Sに対し、図2のように変化することが知られている。なお、vv*は実車体速度、vw は車輪速度である。
【0006】
S=(vv*−vw )/vv* ・・・(1)
このμ−S特性では、あるスリップ率(図2のA2領域)で摩擦係数μがピーク値をとるようになる。このピーク値をとるスリップ率が予め分かっていれば車体速度と車輪速度とからスリップ率を求めることによりスリップ率制御を行うことができる。
【0007】
このため、特開平1−249559号公報のアンチロックブレーキ制御装置では、車体速度の近似値及び車輪速度等からスリップ率を演算し、演算したスリップ率と設定したスリップ率との比較からブレーキ力を制御している。このアンチロックブレーキ制御装置では、推定車体速度vv と実車体速度vv*とのずれによって長時間ノーブレーキの状態となることを防止するために、必要以上に長い時間ブレーキ圧を減圧状態にしないようにしている。
【0008】
これら従来のアンチロックブレーキ制御装置は、図3に示すように、車輪速度ωw および車体加速度vv ' (=dvv /dt)から車体推定速度vv を推定する車体速度推定部2と、車輪速度ωw と車体推定速度vv とから車輪のロック状態を検出し、車両の運転系1に対してブレーキ力Pb を制御するブレーキ力制御部3とから構成されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のアンチロックブレーキ制御装置では、車体速度推定部が必要であるため、車体速度の推定のために図1に示すように、車輪速度から求めた速度vw と実車体速度vv*とが一致もしくは近い値になるまでブレーキ力を戻す必要があり、そのためには車輪のブレーキ力の増圧減圧を比較的低周波で繰り返す必要があった。また、基準速度と比較する車体速度が車輪速度や車体加減速度等から求めた近似値であるため、実際の車体速度と大きく異なる時があり、場合によっては車輪が長時間ロック状態に陥るとか、復帰のためブレーキ力を極端に減少させてしまう等の問題があった。そのため、車両の挙動に著しい影響を与えて制動距離の増加や不快な振動を起こすことがあった。
【0010】
更に、スリップ率によってブレーキ力を制御するアンチロックブレーキ制御装置では、車両の走行する路面状態によって最大の摩擦係数となるスリップ率が異なることは容易に予想できることであり、この対策として路面状態を検出、推定し、かつ路面状態に応じた基準スリップ率を複数個用意するか、路面状態に応じて基準スリップ率を変化させる必要があった。
【0011】
本発明は上記従来の問題点を解消するためになされたもので、車輪速度や車体速度の比較またはスリップ率の比較から車輪のロック状態を検出するのではなく、またμ−S特性によって決まる車輪速度の振動特性の変化を検出することによって、車体速度を推定することなく、かつ異なった走行路面でも安定にアンチロックブレーキ動作を行うことができるアンチロックブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、車輪速度を検出する検出手段と、該車輪速度のみに基づいて、車体速度を推定することなく、検出された振動特性に基づいてタイヤと路面との間の摩擦係数が略ピーク値となるスリップ率以下のスリップ率になるように車輪に作用する平均的なブレーキ力を制御する制御手段と、を含んで構成したものである。
【0013】
請求項1の発明には、請求項2に示すように、車輪に作用するブレーキ力を所定周波数で微小励振する励振手段をさらに設けることができる。
【0014】
請求項3の発明は、車輪速度の周波数分布から得られるタイヤのグリップ状態によって変化する所定周波数成分又は所定周波数成分の振幅から共振周波数を求める共振周波数検出手段と、該共振周波数が基準値より大きいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるよう制御する制御手段と、を含んで構成したものである。
【0015】
請求項3の発明の制御手段は、前記共振周波数が前記基準値より小さいときに前記平均的なブレーキ力を増加させるように制御するのが好ましい。
【0017】
また、請求項4の発明は、図4に示すように、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数で車輪に作用するブレーキ力を微小励振する励振手段7と、車輪速度の前記共振周波数成分の振幅を検出する検出手段5と、ブレーキ力の微小励振の振幅に対する車輪速度の前記共振周波数成分の振幅のゲインが基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する制御手段6と、を含んで構成したものである。
【0018】
請求項4の発明の励振手段は、運転者が制御するブレーキ力を、タイヤがグリップしている時の車輪速度の共振周波数と同じ周波数で微小励振するのが好ましい。
【0019】
請求項4の発明の制御手段は、車輪速度と車輪速度の共振周波数の単一正弦波との相関を求めて車輪速度の前記振幅を検出するようにすると効果的である。
【0020】
請求項4の発明の検出手段は、車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、前記車輪速度検出手段に接続されると共に、通過帯域がタイヤがグリップしているときの車輪速度の共振周波数を含む所定範囲に設定された帯域通過フィルタと、帯域通過フィルタ出力を直流化して出力する直流化手段と、で構成することができる。
【0021】
また、請求項4の発明の制御手段は、前記ゲインが前記基準値より大きいときに前記平均的なブレーキ力を増加するように制御するのが好ましい。
【0022】
請求項4の発明の制御手段は、ブレーキ力の微小励振の振幅に対する車輪速度の前記共振周波数成分の振幅のゲインを演算する演算手段と、前記ゲインと前記基準値との偏差を演算する演算手段と、前記偏差に基づいた比例積分制御を行うための低減ブレーキ力指令を出力するPI制御手段と、運転者の操作によるブレーキ力を越えて指令されないように前記低減ブレーキ力指令の正値を除去して負値のみを車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるための低減ブレーキ力指令として出力する正値除去手段と、で構成することができる。
【0023】
また、請求項4の発明の制御手段を、ブレーキ力の微小励振の振幅に対する車輪速度の前記共振周波数成分の振幅のゲインを演算する演算手段と、タイヤがロックしない状態での前記ゲインを記憶した記憶手段と、前記演算手段で演算されたゲインと前記記憶手段に記憶されたゲインとの差を演算する演算手段と、前記差と前記基準値との偏差を演算する演算手段と、前記偏差に基づいた比例積分制御を行うための低減ブレーキ力指令を出力するPI制御手段と、運転者の操作によるブレーキ力を越えて指令されないように前記低減ブレーキ力指令の正値を除去して負値のみを車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるための低減ブレーキ力指令として出力する正値除去手段と、で構成するようにしてもよい。
【0024】
さらに、請求項4の発明では、請求項5に示すように、車速又は車速に関連した物理量を検出する物理量検出手段をさらに設け、物理量検出手段により検出された車速又は車速に関連した物理量に依存させて、前記基準値を変化させるようにしてもよい。
【0025】
この場合には、車速又は車速に関連した物理量が大きくなるに従って前記基準値を小さくすると効果的である。
【0026】
請求項6の発明は、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数でかつ一定振幅で車輪に作用するブレーキ力を微小励振する励振手段と、車輪速度の前記共振周波数成分の振幅を検出する検出手段と、検出手段で検出された車輪速度の前記共振周波数成分の振幅が基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する制御手段と、を含んで構成したものである。
【0027】
請求項6の発明の制御手段は、前記共振周波数成分の振幅が前記基準値より大きいときに平均的なブレーキ力を増加するように制御するのが好ましい。
【0028】
請求項7の発明は、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数でかつ振幅指令に応じて車輪に作用するブレーキ力を微小励振する励振手段と、車輪速度の前記共振周波数成分の振幅を検出する検出手段と、検出手段で検出された車輪速度の前記共振周波数成分の振幅が基準値になるように前記振幅指令を求めると共に、該振幅指令が基準振幅値より大きいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する制御手段と、を含んで構成したものである。
【0029】
請求項7の発明の制御手段には、前記振幅指令が前記基準振幅値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を増加させるように制御する手段をさらに設けてもよい。
【0030】
そして、請求項8の発明は、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数で車輪に作用するブレーキ力を微小励振する励振手段と、車輪速度を検出する検出手段と、ブレーキ力の振幅に対する車輪速度の振幅のゲインが最大となるときの周波数が基準値より大きいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する制御手段と、を含んで構成したものである。
【0031】
請求項8の発明の励振手段は、運転者によって制御されたブレーキ力を、タイヤがグリップしている時の車輪速度の共振周波数と同じ周波数で微小励振するのが好ましい。
【0032】
請求項8の発明の制御手段は、前記車輪速度の振幅及び前記ブレーキ力の振幅の各々を周波数系列データに変換する変換手段と、前記周波数系列データにおける各周波数毎の前記ブレーキ力の振幅に対する車輪速度の振幅のゲインを演算する演算手段と、前記ゲインが最大となる周波数を抽出する抽出手段と、で構成することができる。
【0033】
また、請求項8の発明の制御手段には、前記周波数が前記基準値より小さいときに前記平均的なブレーキ力を増加させるように制御する手段をさらに設けと効果的である。
【0034】
まず、本発明の原理を説明する。図5に示すように、重量Wの車体12を備えた車両が速度vで走行している時の車輪での振動現象、すなわち車体と車輪と路面とによって構成される振動系の振動現象を、車輪回転軸で等価的にモデル化した図6に示すモデルを参照して考察する。
【0035】
ここで、ブレーキ力(制動力)は、路面と接するタイヤのトレッド15の表面を介して路面に作用するが、このブレーキ力は実際には路面からの反作用として車体12に作用するため、車体重量の回転軸換算の等価モデル17はタイヤのトレッドと路面との間の摩擦要素16を介して車輪13と反対側に連結したものとなる。これは、シャシーダイナモ装置のように、車輪下の大きな慣性、すなわち車輪と反対側の質量で車体の重量を模擬することができることと同様である。
【0036】
図5、図6でタイヤリムを含んだ車輪13の慣性をJw 、リムとトレッド15との間のばね要素14のばね定数をK、トレッド15の慣性をJt 、トレッド15と路面との間の摩擦要素16の摩擦係数をμ、車体12の重量の回転軸換算の等価モデル17の慣性をJV とすると、系全体の特性は次の(2)〜(4)のようになる。なお、以下では時間に関する1階微分d/dtを「' 」で表し、時間に関する2階微分d2 /dt2 を「" 」で表す。
【0037】
JW θw " = −T+K(θt −θw ) ・・・(2)
Jt θt " = −K(θt −θw )+μWR ・・・(3)
Jv ωv ' = −μWR ・・・(4)
ここで、
ww = θw ' ・・・(5)
Jv = R2 W ・・・(6)
ωv = v/r ・・・(7)
であり、θw は車輪13の回転角、θw " は車輪13の回転角加速度、ww は車輪13の回転角速度、すなわち車輪速度、θt はトレッド15の回転角、θt " はトレッド15の回転角加速度、ωv は車体等価モデル17の回転軸換算の回転角速度、Tは車輪13に加えられる制動トルク、Wは車体の重量、Rは車輪半径である。制動トルクTは実際にはブレーキバルブの圧力Pb の制御によって行う。
【0038】
タイヤがグリップしている時は、トレッド15と車体等価モデル17とが直結されていると考えると、車体等価モデル17の慣性とトレッド15の慣性との和の慣性と車輪13の慣性とが共振し、この時の車輪共振系の共振波数f1 は、
f1 =√{(Jw +Jt +Jv )K/Jw (Jt +Jv )}/2π・・・(8)
となる。この状態は図2上では領域A1 に対応する。
【0039】
逆に、タイヤの摩擦係数μがピークμに近付く場合には、タイヤ表面の摩擦係数μがスリップ率Sに対して変化し難くなり、トレッド15の慣性の振動に伴う成分は車体等価モデル17に影響しなくなる。つまり等価的にトレッド15と車体等価モデル17とが分離され、トレッド15と車輪13とが共振を起こすことになる。この時の車輪共振系の共振周波数f2 は、
f2 =√{(Jw +Jt )K/Jw Jt }/2π ・・・(9)
となる。この状態は図2の領域A2に対応し、一般にピークμの点に達すると瞬時に領域A3へと遷移してタイヤがロックする。一方、共振周波数における車輪速度のゲインもピークμ直前で急激に減少する。
【0040】
各慣性の大小関係は、
Jt <Jw <Jv ・・・(10)
であり、これより、
f1 <f2 ・・・(11)
になる。つまり、タイヤがロックに至る場合、車輪共振系の共振周波数が高周波側にずれることになる。また、この共振周波数の変化はピークμ付近で急激に発生する。
【0041】
モデルを簡単化し、トレッド15の慣性Jt を無視した場合でもピークμ状態に近づくと車輪共振系の共振周波数及び車輪速度のゲインのピークの変化は起こり、同様の解析が可能である。
【0042】
この共振周波数f1 または車輪速度のゲインのピークの変化を観測し、共振周波数をピークμ以下の値、すなわちタイヤがグリップしている状態での値に保つことでタイヤのロックを防ぐことができ、この範囲での最大のブレーキ力を車輪に加えることにより、最適なブレーキ動作を行うことができる。
【0043】
そこで、請求項1の発明では、検出手段で車輪速度を検出し、制御手段によって、車輪速度のみの振動特性に基づいてタイヤと路面との間の摩擦係数がピーク値になるように車輪に作用する平均的なブレーキ力を制御する。
【0044】
車輪に作用する平均的なブレーキ力を制御する制御手段は、通常走行時は、運転者の操作またはコンピュータ制御等による自動運転によるブレーキ力操作手段と、摩擦係数がピークμとなるスリップ率を越えた時にブレーキ力操作手段によるブレーキ力を低減する低減手段とにより構成することができる。ここで、緊急ブレーキ時では、運転者の意思に関係しない最少制動距離実現のために摩擦係数がピークμを維持するように平均的なブレーキ力を作用させる制御手段とすればよい。
【0045】
検出手段は、滑り状態を判定することができる車輪速度を検出するものである。車体、車輪及び路面によって構成される振動系では、車輪速度振動成分の振幅値が最大になる周波数を共振周波数と見做すことができるので、車輪に作用するブレーキ力と車輪速度との各々の周波数成分の振幅ゲインの比較からブレーキ力に対する車輪速度の振幅ゲインが最大となる周波数を求め、この周波数変化から滑り状態を知ることができる。したがって、周波数伝達特性から共振周波数そのものを検出してもよい。
【0046】
また、車輪速度の振幅ゲインのピークは、ピークμへの接近により減少する。そこで、タイヤがグリップしている状態での共振周波数がわかっている場合には、タイヤがグリップしている状態で車輪と路面との間で起こる共振周波数でブレーキ力を励振することにより、ロック時には共振周波数成分のブレーキ力−車輪速度の振幅ゲインが減少し、ピークμへの接近を判定することができる。すなわち、タイヤがグリップしている状態での共振周波数がわかれば、この共振周波数成分のブレーキ力−車輪速度の振幅ゲインからも滑り状態を判定することができるので、共振周波数成分のブレーキ力−車輪速度の振幅ゲインを検出してもよく、車輪速度の共振周波数成分の振幅を検出し、該振幅の変動が所定値となるように励振手段の励振を調整し、その場合のブレーキ力の微小励振の振幅から共振周波数成分のブレーキ力−車輪速度の振幅ゲインを演算してもよい。
【0047】
このため、請求項1の発明では、車輪に作用するブレーキ力を所定周波数で微小励振する励振手段をさらに設けることができる。
【0048】
また、請求項3の発明では、共振周波数検出手段によって車輪速度の周波数分布から共振周波数を求め、制御手段によって共振周波数が基準値より大きいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるよう制御している。
【0049】
請求項4の発明では、励振手段によって、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数で車輪に作用するブレーキ力を微小励振し、検出手段によって車輪速度の共振周波数成分の振幅を検出する。そして、制御手段は、ブレーキ力の微小励振の振幅に対する車輪速度の共振周波数成分の振幅のゲインが基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する。
【0050】
請求項6の発明では、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数でかつ一定振幅で車輪に作用するブレーキ力を微小励振し、車輪速度の共振周波数成分の振幅を検出し、車輪速度振動成分の周波数分布から共振周波数を求める。そして、制御手段は、検出された車輪速度の共振周波数成分の振幅が基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する。
【0051】
請求項7の発明では、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数でかつ一定振幅で車輪に作用するブレーキ力を微小励振し、車輪速度の共振周波数成分の振幅を検出し、検出手段で検出された車輪速度の共振周波数成分の振幅が基準値になるように微小励振の振幅指令を求めると共に、該振幅指令が基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する。
【0052】
そして、請求項8の発明では、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数で車輪に作用するブレーキ力を微小励振し、車輪速度を検出し、ブレーキ力の振幅に対する車輪速度の振幅のゲインが最大となるときの周波数が基準値より大きいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する。
【0053】
また、第4の発明において検出される車輪速度の共振周波数成分の振幅は車速又は車輪速度等の車速に関連した物理量に依存して変化する傾向を示す。
【0054】
そこで、第4の発明では、物理量検出手段により車速又は車速に関連した物理量を検出し、検出された車速又は車速に関連した物理量に依存させて、第4の発明における基準値を変化させ、検出された車輪速度の共振周波数成分の振幅が変化させた基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御することができる。これにより、各車速においてタイヤがグリップした状態での最大のブレーキ力を実現できる。
【0055】
上記各発明では車体速度の推定部を必要とせず、車体加速度を用いる必要がないため、制御装置やセンサの簡略化が行える。
【0056】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0057】
以下で説明する各実施の形態の通常走行時を対象としたアンチロックブレーキ制御装置(ABS)は、図7に示すように、車両運動系22を制御して車輪に加わるブレーキ力を制御する制御部Cと、運転者が操作するブレーキペダル34を含む運転者操作部24によるブレーキ力に微小振動ブレーキ力を加えた時の車輪速度の共振特性を検出する検出部20と、によって構成されている。
【0058】
制御部Cは、この運転者操作部24によるブレーキ力に微小振動を与えるブレーキ力励振部19と、検出部20で検出された車輪速度の共振特性に基づいてブレーキ力増加を抑制するブレーキ力低減部21とを含んで構成されている。
【0059】
また、検出部20は、車輪速度を検出する車輪速センサと車輪速度の共振周波数成分の振幅を検出する振幅検出手段、または車輪速度を検出する車輪速センサとブレーキ力の微小励振の振幅に対する車輪速度の共振周波数成分の振幅のゲインが最大となる周波数を抽出する抽出手段で構成することができる。
(第1の実施の形態)
次に第1の実施の形態のABSについて説明すると、図8に示すように、検出部20は、車輪速度ωw を検出する車輪速センサと車輪速センサに接続されて車輪速度ωw の共振周波数成分の振幅値を検出する振幅値検出部23とで構成されている。この車輪速センサは、制御対象となる車両運動系22に取付けられており、車輪速度ωw に比例した交流信号を出力する。
【0060】
また、制御部Cのブレーキ力励振部19は、振幅値検出部23からの検出値ωd に基づいてブレーキ指令Pb の微小振幅の振幅値であるPv を演算する微小ブレーキ力励振指令演算部26で構成され、ブレーキ力低減部21は、振幅値検出部23からの検出値ωd と微小ブレーキ力励振指令演算部26からの微小ブレーキ力励振振幅指令Pv とに基づいてブレーキ力低減指令Pr を演算するブレーキ力低減指令演算部25で構成されている。
【0061】
このブレーキ力低減指令演算部25及び微小ブレーキ力励振指令演算部26は、ブレーキ力低減指令演算部25からのブレーキ力低減指令Pr 、運転者操作部24によるブレーキ力Pd 及び微小ブレーキ力励振指令演算部26からの微小ブレーキ力励振振幅指令Pv に基づいて制御対象となる車両運動系22への入力であるブレーキ力指令を生成し、このブレーキ力指令を車両運動系22へ加えるブレーキバルブドライバ27に接続されている。
【0062】
振幅値検出部23は、図9に示すように、通過帯域がタイヤがグリップしている時の車輪速度の共振周波数f1 を含む所定範囲に設定された帯域通過フィルタ28、帯域通過フィルタ28出力を整流する全波整流器29、及び全波整流器29出力を平滑化して直流化する低域通過フィルタ30により構成されている。振幅値検出部23は、タイヤがグリップしている時の車輪速度の共振周波数f1 の成分のみを検出し、車輪速度の共振周波数f1 の成分を直流化して出力するので、振幅値検出部23の検出値ωd は車輪速度の共振周波数f1 成分の振幅値となる。
【0063】
ところで、車輪と路面との間で起こる共振は、基本的に減衰振動であり、持続振動とはならないため、路面の凹凸等の外乱による励振ではそのタイヤがグリップしている時の共振周波数f1 成分の検出は困難なものとなる。
【0064】
そこで、本実施の形態では、微小ブレーキ力励振指令演算部26において、運転者が操作指令するブレーキ力にタイヤがグリップしている時の車輪速度の共振周波数f1 と同じ周波数の微小振動を加える際の微小振幅指令Pv を演算し、運転者が操作指令するブレーキ力へ能動的にタイヤがグリップしている時の車輪速度の共振周波数f1 と同じ周波数の微小振動を加えることにより、その増幅特性から、共振周波数f1 の変化を検出している。
【0065】
図10に示すように、車輪共振系の周波数特性は、摩擦係数μがピーク値に近付いていくと、共振周波数における車輪速度のゲインのピークが低くなり、摩擦係数μがピーク値を越えると共振周波数はタイヤがグリップしている時の共振周波数f1 よりも高い周波数側にずれる。タイヤがグリップしている状態での共振周波数f1 の成分についてみると、ピークμ状態に近づくことによって、共振周波数f1 成分の振幅の減少となって現れてくる。従って、車輪速度に現れる共振周波数f1 の微小振動成分のゲインからピークμ状態への接近を検知することが可能である。
【0066】
そこで、本実施の形態では、図11に示すように、車輪に加えられる平均的なブレーキ力である平均ブレーキ力Pm の低減を制御するブレーキ力低減指令演算部25を、振幅値検出部23の検出値ωd の微小ブレーキ力励振振幅指令Pv に対するゲインである微小励振ゲインgd を演算する演算部31と、微小励振ゲインgd と基準値gs との差gd −gs 、比例ゲインGPr1 及び積分ゲインGIr1 を用いた比例積分制御により低減ブレーキ力を演算するPI制御器32と、運転者の操作によるブレーキ力Pd を超えて指令されないように正値を除去して負の値のみを採用して低減ブレーキ力指令Pr として出力する正値除去部33とから構成している。
【0067】
このブレーキ力低減指令演算部25は、微小励振ゲインgd が基準値gs より大きければ、すなわち微小ブレーキ力励振振幅指令Pv で励振したときの検出値ωd が基準値gs Pv (ただし、ωd は回転速度で単位は〔rad/s〕、Pv は圧力またはトルクで単位は〔Pa〕または〔Nm〕である)より大きければ図10で説明したようにタイヤがグリップしているものとして、平均ブレーキ力Pm を維持し、逆に微小励振ゲインgd が基準値gs より小さくなれば、すなわち微小ブレーキ力励振振幅指令Pv で励振したときの検出値ωd が基準値gs Pv より小さくなれば、摩擦係数がピークμに近付きつつあるため平均ブレーキ力Pm を減少させる。
【0068】
図12に示すように、平均ブレーキ力Pm は、
Pm =Pd +Pr ,Pr ≦0 ・・・(12)
であり、低減ブレーキ力指令Pr は常に負の値であるから、運転者操作によるブレーキ力Pd を超えて平均ブレーキ力Pm が指令されることはない。なお、平均ブレーキ力Pm を維持することにより、車輪に作用するブレーキ力はドライバの踏力に応じて増加する。
【0069】
ブレーキバルブドライバ27は、平均ブレーキ力Pm の指令および微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を実際の車輪への制動トルクに変換する部分であり、図13に示すように、ブースタ35、バルブ制御系36、ブレーキキャリパー37、リザーバタンク38及びオイルポンプ39を備えている。
【0070】
ブレーキペダル34は、ブレーキペダル34の操作力を増圧するブースター35を介してバルブ制御系36の増圧側バルブ40へ接続されている。バルブ制御系36には、バルブ動作指令が入力されると共に、ブレーキキャリパー37に連結されかつ減圧側バルブ41を介してリザーバータンク38に連結されている。
【0071】
このバルブ動作指令は、図14に示す回路によって生成される。この回路は、平均ブレーキ力の指令Pm と微小ブレーキ力励振振幅指令Pv とを入力し、図15に示すように、平均ブレーキ力Pm の指令をタイヤがグリップしている時の共振周波数f1 と同じ励振周波数で励振する。
【0072】
この動作原理を以下に説明する。まず、演算部18Aで、平均ブレーキ力Pm の指令と微小ブレーキ力励振振幅指令Pv の和Pm1を演算し、演算部20Aで平均ブレーキ力のPm 指令と微小ブレーキ力励振振幅指令Pv との差Pm2を演算する。和Pm1は、ブレーキ力の指令の上限に対応し、差Pm2はブレーキ力の指令の下限に各々対応する。この2つの和Pm1、差Pm2を指令として、演算部18B、20Bで実ブレーキ圧Pb*との差e1、e2を演算し、指令生成部42、43において各々の差e1、e2からバルブの位置を計算して指令を生成し、この両者を共振周波数f1 と同じ周波数である励振周波数で切替えることによって、ブレーキ圧を励振する。ただし、和Pm1については増圧と保持のみの指令、差Pm2については保持と減圧のみ指令を生成する。このように指令を生成することにより、ブレーキ圧指令の過度の振動を防ぎ、共振周波数f1 と同じ周波数での励振を行うことができる。
【0073】
ブレーキバルブドライバ27は、制動油圧を増圧する場合、ブースター35側の増圧側バルブ40を開き、リザーバータンク38の減圧側バルブ41を閉じて、ブースター圧力をそのままブレーキキャリパー37へ入力する。逆に、制動油圧を減圧する場合は、増圧側バルブ40を閉じて、減圧側バルブ41を開くことにより、オイルオンプ39を介して、ブレーキキャリパー37内の圧力を減少させる。また、両バルブを閉じれば、制動油圧は保持されてブレーキ力は保持される。
【0074】
このようなバルブ動作では、運転者のペダル34の操作によるブレーキ力以上にブレーキキャリパー37内の圧力が上昇することはなく、通常走行時の弱いブレーキング時にはABSは動作しない。運転者のペダル34の操作によるブレーキ力がピークμを超えて制動されようとする時、ABSが動作し、ピークμに追従したブレーキ動作が実現できる。
【0075】
このABSによれば、運転者の操作によるブレーキ力と微小振動ブレーキ力との和のブレーキ力を車輪に加えたときに、摩擦係数がピークμ状態に達すると、ブレーキ力低減部21によって平均ブレーキ力が低減されそれ以上のブレーキ力増加が抑圧され、これによってタイヤがロックするのが防止される。
【0076】
これに対し、自動運転システムにおいて緊急時のブレーキ動作については、運転者の意思とは無関係に最小の制動距離での安定な制動動作が必要とされ、車輪に加えられるブレーキ力は、運転者の操作による値に関係なくピークμ状態となるように平均ブレーキ力が増加・減少され、制動動作されることになる。このような緊急時のブレーキ動作は列車等にも適用することができる。これは、以下に示す全ての実施の形態においても同様である。
【0077】
図16(1)〜(4)は本実施の形態のABSの各部の動作を図示したものである。(1)はブレーキ力、(2)は車輪速度、(3)は微小励振ゲイン、(4)は摩擦係数である。ここで、車両の初速度は40km/h、ピークμ値は0.6、基準微小励振ゲインgs は0.01rad/s/Nmとしている。
【0078】
ドライバの操作と同時にブレーキ力励振を開始し、微小励振ゲインgd が基準値gs 以上の場合は、ドライバの操作によるブレーキ力Pd がそのまま車輪に加わっている。検出される微小励振ゲインgd が基準値gs を下回るとブレーキ力低減部21によって、平均ブレーキ力Pm が低減されている。この結果、タイヤ路面間の摩擦係数μは車輪のロックを起こすことなくピーク付近に固定されていることがわかる。
【0079】
この実施の形態は、基本的に現行のABSを流用する形で実現しており、ブレーキバルブのバルブ動作を変更するだけで実現可能である。このことは現行ABSシステムからの変更を容易なものとしている。また、車体速度の推定を必要としないために車体加減速度検出のためのGセンサ等を不要とし、ハードウエアの簡素化が行える。更に、ブレーキ力励振の周波数は40Hz程度のものであり、十分微小な励振振幅とすることで搭乗者に不快感を与えることなく実現可能である。
【0080】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、入力である微小ブレーキ力の振幅を一定の状態に保持できる場合に本発明を適用したものであり、図17に示すように、一定の微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を出力する微小ブレーキ力励振指令演算部44と、車輪速度振動の共振周波数成分の振幅である振幅値検出部23の検出値ωd のみからブレーキ力低減指令Pr を演算するブレーキ力低減指令演算部45と、を備えている。なお、本実施の形態の微小励振の周波数は第1の実施の形態と同様に車輪共振系の共振周波数である。
【0081】
このブレーキ力低減指令演算部45は、図18に示すように、振幅値検出部23の検出値、すなわち共振周波数成分の振幅ωd と基準値ωs との差ωs −ωd を演算する演算器と、比例ゲインGpr2 及び積分ゲインGIr2 により比例積分制御を行うPI制御器46と、運転者操作によるブレーキ圧Pd を超えて指令されないように正値を除去する正値除去部47とで構成されている。
【0082】
本実施の形態では、振幅値検出部23の出力すなわち共振周波数成分の振幅ωd が基準値ωs より大きければタイヤがグリップしているものとして、平均ブレーキ力Pm を維持するようブレーキ力低減指令Pr を維持し、逆に共振周波数成分の振幅ωd が基準値ωs より小さくなれば、ロック状態に近付きつつあるとしてブレーキ力低減指令Pr を減少させて平均ブレーキ力を減少させる。
【0083】
本実施の形態も、基本的に現行のABSを流用する形で実現しており、ブレーキバルブの動作を変更するだけで実現可能である。本実施の形態では、微小励振によるブレーキ力の振幅に対する車輪速度の共振周波数成分の振幅のゲインを演算する必要がなくなるので、ABSの簡単化を図ることができる。
【0084】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、平均ブレーキ力に加える微小ブレーキ力を制御して、車輪速度に現れる微小振動の振幅を一定にするようにしたものであり、図19に示すように、車輪速度の共振周波数成分の振幅である振幅値検出部23の検出値ωd から微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を出力する微小ブレーキ力励振指令演算部48と、微小ブレーキ力励振振幅指令Pv からブレーキ力低減指令Pr を演算するブレーキ力低減指令演算部49と、を備えている。
【0085】
このブレーキ力励振指令演算部48は、図20に示すように、振幅値検出部23の出力、すなわち共振周波数成分の振幅ωd と基準値ωs との差ωs −ωd を演算する演算器と、比例ゲインGPv及び積分ゲインGIvにより比例積分制御を行うPI制御器50ととで構成されている。
【0086】
また、ブレーキ力低減指令演算部49は、図21に示すように、微小ブレーキ力基準振幅値Ps と微小ブレーキ力励振振幅指令Pv との差Ps −Pv を演算する演算器と、比例ゲインGPr3 及び積分ゲインGIr3 により比例積分制御を行うPI制御器51と、運転者操作によるブレーキ圧Pd を超えて指令されないように正値を除去する正値除去部52とで構成されている。
【0087】
本実施の形態では、車輪速度の共振周波数成分の振幅ωd と基準値ωs との差ωs −ωd をフィードバックして微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を生成している。つまり、振幅ωd が基準値ωs より小さい場合には、微小ブレーキ励振振幅指令Pv を大きくし、逆に振幅ωd が基準値ωs より大きい場合には微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を小さくすることによって、車輪速度に現れる励振周波数成分の振幅値ωd を、微小な一定の基準値ωs に制御している。このように制御することにより、車両運転者が感じ得ない範囲での励振を行うことができる。
【0088】
このように本実施の形態では、車輪速度に現れる微小振動の振幅ωd を一定とするように微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を制御しているから、ピークμへの接近による共振点のずれは、入力であるブレーキ力の励振振幅指令Pv の増加となって現れる。
【0089】
したがって、ある一定の微小ブレーキ力基準振幅値Ps からの偏差をフィードバックし、ブレーキ力の励振振幅指令Pv が微小ブレーキ力基準振幅値Ps より大きい時に平均ブレーキ力Pm を減少させ、逆にブレーキ力の励振振幅指令Pv が微小ブレーキ力基準振幅値Ps より小さい時に平均ブレーキ力Pm を増加させるように制御することによって、ピークμに追従したブレーキ動作を行っている。
【0090】
本実施の形態も、基本的に現行のABSを流用する形で実現しており、ブレーキバルブのバルブ動作方法を変更するだけで実現可能である。この場合も、微小励振による車輪速度の振幅もブレーキ力の振幅に対するゲインを演算する必要がなくなり、制御装置の簡単化が図れる。また、車輪速度に現れる微小振動を十分小さな値とすることにより、運転者の感知しない範囲で常に励振することができ不快振動を防ぐことができる。
【0091】
(第4の実施の形態)
上記各実施の形態では、タイヤグリップ時の車輪速度の共振周波数f1 成分の振幅の変化により共振特性を求めているが、第4の実施の形態は周波数伝達特性から共振周波数そのものを観測して、共振周波数そのものの変化によって平均ブレーキ力を制御するようにしている。
【0092】
本実施の形態は、図22に示すように、微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を演算する微小ブレーキ力励振指令演算部53と、ブレーキ力Pb 及び車輪速度ωw からブレーキ力Pb の振幅に対する車輪速度ωw の振幅のゲインが最大になるときの共振周波数fd を演算する滑り状態判定部55と、ゲインが最大になるときの周波数fd からブレーキ力低減指令Pr を演算するブレーキ力低減指令運算部54と、を備えている。
【0093】
滑り状態判定部55は、図23に示すように、車輪速度ωw 及びブレーキ力Pb の一定時間間隔のデータを高速フーリエ変換するFFT処理部56と、得られた周波数系列データの各周波数毎のブレーキ力Pb に対する車輪速度ωw のゲインを演算する演算部57と、周波数伝達特性を求め、そのゲイン最大の周波数fd を抽出する抽出部58と、により構成されている。
【0094】
この滑り状態判定部55を用いると、平均ブレーキ力Pm の指令を、共振周波数fd が基準値fs より小さければ増加させ、ゲイン最大の周波数fd が基準値fs より大きければ減少させるように指令を演算することにより、ピークμに追従した制動動作を行なうことができる。
【0095】
ブレーキ力低減指令演算部54は、図24のように、ゲイン最大の周波数fd と基準値fs との差fs −fd を演算する演算器と、比例ゲインGPr4 及び積分ゲインGIr4 により比例積分制御を行うPI制御器59と、運転者操作によるブレーキ圧Pd を超えて指令されないように正値を除去する正値除去部60とで構成されている。
【0096】
この実施の形態も車輪速度信号を処理することより共振周波数成分の振幅変化を検出しており、センサ等の追加は必要なく実現できる。
【0097】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態は、車輪速度と車輪速度の共振周波数f1 の単一正弦波との相関を求めて車輪速度の共振周波数f1 の振幅を検出するものであり、ニューラルコンピュータによっても構成可能である。
【0098】
図25は単一正弦波との相関によって所望の共振周波数f1 の振幅成分を検出する回路を示すもので、必要な時系列データを一定時間ΔTだけ保持することにより遅延させる遅延時間回路61と、この一定時間ΔTを周期とする余弦波の各時間値と掛け合わせて加算して積和Rを演算する積和演算部62と、正弦波の各時間値と掛け合わせて加算して積和Iを演算する積和演算部63と、積和Rおよび積和Iの2乗和の平方根を計算する計算部64とから構成されている。
【0099】
ここで車輪速度ωw のサンプリング間隔を1msとし、検出したい周波数を40Hzにすると、検出したい成分の一周期は25サンプル点である。積和Rおよび積和Iは、
であることから、積和Rおよび積和Iは周波数1/ΔT成分に対するフーリエ係数の実数部、虚数部を求めていることに他ならない。したがって、この積和R、積和Iの2乗和の平方根を求めればその振幅値が得られることになる。
【0100】
この実施の形態も車輪速度信号を処理することより共振周波数成分の振幅変化を検出しており、センサ等の追加は必要なく実現できる。
【0101】
(第6の実施の形態)
図26は圧電素子によるブレーキ力励振部を構成した第6の実施の形態のブロック図である。本実施の形態では、タイヤ65への平均的なブレーキ力はブレーキキャリパー66内の圧力制御により行い、同時にブレーキディスク67との接触表面に配置した圧電素子68への微小励振電圧を励振することにより、ブレーキ力を励振している。
【0102】
なお、上記各実施の形態の微小ブレーキ力励振指令演算部26、44、53およびブレーキ力低減指令演算部25、45、49、54は、上記の構成の他により高度な制御系、例えばH∞制御、2自由度制御などのロバスト制御系や、ニューラルコンピュータやファジー制御系、適応制御等用いて構成することも可能である。
【0103】
この場合にも、車輪速センサからの車輪速度を基に処理するもので、新たなハードウェアを必要としない。制御アルゴリズムの変更は制御に用いるコンピュータ内のプログラム変更で可能であり、より最適な制御系を容易に用いることができる。
【0104】
また、上記各実施の形態では実ブレーキ力Pb*をフィードバックすることで圧力制御系を構成しているが、プログラム制御などにより、実ブレーキ力をフィードバックせずに制御系を構成することも可能である。
【0105】
さらに、電気自動車のように駆動・制動トルクが電気によって制御できる場合にはその駆動電流に微小な振動を加えることにより励振することが可能である。
【0106】
この実施の形態では電気自動車の電流制御系の指令に微小励振振幅を加えることでABS装置を簡単に実現でき、また、電動モータの回転数の検出にも新たなセンサを必要としない。電動モータの回転数検出法には瞬時速度オブザーバ等を用いることができ、より精度の高い制御系構成も可能である。
【0107】
従来では、車速の近似値の導出のためには制動中にブレーキ力を極端に減少させる必要があり、これは車輪に比較的低周波で不快な振動を起こさせることにもなっているが、上記の各実施の形態では車輪共振系の物理現象に基づいているため、絶対的な車速を必要とせず、不快制動をなくすことができる。
【0108】
また、ブレーキ力への励振を微小なものとすることで、摩擦係数μをピーク値付近に固定することが可能であり、従来からの比較的大きな振幅変動を必要とするものよりも制動距離が短くなる。
【0109】
さらに、路面状態が変化した場合にも、共振周波数の変化は同様に起こり、その場合にも安定な動作が行える。これによりABS装置の製作に必要なチューニング工程の大幅な削減が可能になる。
【0110】
また処理に必要なセンサ信号は基本的に車輪速度のみであり、ロータリエンコーダなどの比較的安価なセンサを用いることで構成することが可能になる。
【0111】
(第7の実施の形態)
上記の各実施の形態では、ブレーキ力励振を用いてタイヤ共振特性を検出する例について説明したが、タイヤ共振特性の検出は、ブレーキ力励振を用いなくても可能である。つまり、走行中の車輪速度変化の周波数分布から共振周波数を検出することができる。
【0112】
例えば、タイヤ共振系の共振周波数は、車輪速度振動成分が大きなものとなり、その振幅値が最大の周波数のときに共振周波数と見做すことができる。この励振手段を使用しない実施の形態を図27に示す。
【0113】
この場合、滑り状態判定部70の構成は、図28に示すように、車輪速度ωw の時系列データからFFT処理部71によるFFT処理により周波数系列データを計算し、抽出部72によりゲイン最大の周波数を抽出して共振周波数としている。
【0114】
この滑り状態判定部70を用い、平均ブレーキ圧力指令Pm を、共振周波数fd が基準値fs より小さければ増加させ、共振周波数fd が基準値fs より大きければ減少させるように指令を演算すれば、ピークμに追従した制動動作が行なわれる。
【0115】
また、ブレーキ圧力低減指令演算部69は、図29に示すように、共振周波数検出値fd の基準値fs に対する差fs −fd を比例ゲインGPr5 及び積分ゲインGIr5 のPI制御器73の入力とするフィードバック制御系で構成できる。また、本実施の形態においても運転者操作によるブレーキ圧力Pd を越えて指令されないように、正値除去回路74により負の値のみを採用している。
【0116】
また、本実施の形態では振幅値がピーク値となる周波数を共振周波数としているが、振幅−周波数特性そのものの概形から共振特性を当てはめて共振周波数を求めることも可能である。
【0117】
この実施の形態も車速速度信号を処理することにより共振周波数成分の振幅変化を検出しており、従来のABSに対しセンサ等の追加は必要なく実現できる。
【0118】
また、ブレーキの励振が必要でないため、励振用のアクチュエータを省略することができる。
【0119】
(第8の実施の形態)
タイヤがロックしない状態での共振周波数での車輪速−励振ブレーキ圧力ゲインを記憶しておき、相対的にどれだけ減少したかを用いてタイヤがロックに近いか否かを判断し、制御系を構成した第8の実施の形態を図30に示す。本実施の形態では、ブレーキ圧力低減指令演算部75は、図31に示すように、車輪速−励振ブレーキ圧力ゲイン計算部77の出力値gd について、平均ブレーキ圧力Pm が十分小さいときの値をメモリ76に記憶しておき、この記憶値gs2からの相対的なゲインの減少量gs2−gd の基準値gs1との差gs1−(gs2−gd )に対して、比例ゲインGpr6 、積分ゲインGIr6 のPI制御器78を介して低減ブレーキ圧力を演算し、運転者操作によるブレーキ圧力Pd を越えて指令されないように正値除去回路79により負の値のみを採用してPr としている。
【0120】
上記基準値gs1は、車輪等の変化(車輪の交換等)に応じて適切な値となるため、タイヤのロックをより効果的に防止できる。
【0121】
本実施の形態では、車輪速−励振ブレーキ圧力ゲインにより制御系を構成しているが、前述のように、ブレーキ圧力の励振による微小振幅を一定にした場合では、車輪速微小振幅のみで構成可能であり、逆に車輪速微小振幅を一定にするようにブレーキ圧力の励振を行なった場合では、ブレーキ圧力微小振幅のみからタイヤがロックに近いか判断し、指令値を計算することができる。
【0122】
この実施の形態も、現行のABS制御装置を流用する形で実現しており、ブレーキバルブの動作方法を変えるだけで実現可能である。このことは現行システムからの変更を容易なものとしている。また、車体速度の推定を必要としないために車体加減速検出のためのGセンサ等を不要とし、ハードウエアの簡素化が行なわれる。さらに、ブレーキ圧力励振の周波数は数十Hz程度のものであり、十分微小な励振振幅とすることで搭乗者に不快感を与えることなく実現可能である。
【0123】
(第9の実施の形態)
第1の実施の形態のABS制御装置では、摩擦係数μがピークとなる微小励振ゲインgd が、車輪速度によらず一定であると仮定し、検出された微小励振ゲインgd が基準値gs より小さいときに、ブレーキ力を減少させるように制御して、ピークμ付近に固定し、タイヤがグリップした状態での最大のブレーキ力を実現している。
【0124】
しかし、ピークμの状態における微小励振ゲインgd は、車速が低速になるほど大きくなることが実験的にわかっている。そこで、第9の実施の形態では、車速に関連した物理量の1つである車輪速度に依存させて基準値gs を変化させることによって、車速に応じて変化する微小励振ゲインgd と基準値gs との差分に基づくブレーキ制御を最適にしている。
【0125】
本実施の形態の構成ブロックを図32に示す。なお、第1の実施の形態と同一の構成要件は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0126】
図32に示すように、第1の実施の形態との相違点は、車輪速度ωw がブレーキ力低減指令演算部25に入力されるという点である。
【0127】
このブレーキ力低減指令演算部25は、図33に示すように、入力された車輪速度ωw に基づいて最適な基準値を算出し、これを指令ゲインgs として出力する指令ゲイン演算部80をさらに含んで構成されている。この指令ゲイン演算部80には、指令ゲインgs を、車輪速度ωw に応じてどのように変化させるかを示すテーブルが内部メモリに格納されている。
【0128】
このテーブルにおける車輪速度ωw と指令ゲインgs の詳細な関係は、図34に示すように、車輪速度ωw が高速のときの指令ゲインgs は小さく、低速になるに従って指令ゲインgs は大きくなるように、すなわち指令ゲインgs が車輪速度ωw に応じて単調減少するように定められている。これは、車輪速度ωw が低速になるほど大きくなる微小励振ゲインgd に対応するものである。
【0129】
この指令ゲイン演算部80は、車輪速度ωw が入力されると、図34の関係を示すテーブルを参照して、入力された車輪速度ωw に対応する指令ゲインgs の値を求め、これを出力する。従って、入力される車輪速度ωw が小さくなるに従い、大きい値の指令ゲインgs を出力する。
【0130】
演算部31は微小励振ゲインgd を演算するが、前述したようにこの微小励振ゲインgd も、車輪速度ωw が小さくなるに従い大きい値に変化する。
【0131】
次に、演算部31により演算された微小励振ゲインgd と、指令ゲイン演算部80により演算された指令ゲインgs との差分gd −gs がPI制御器32に入力され、この差分に基づいて低減ブレーキ力が演算される。正値除去部33では、演算された低減ブレーキ力から正値を除去して、低減ブレーキ力指令Pr として出力する。
【0132】
この低減ブレーキ力指令Pr による制御では、微小励振ゲインgd が指令ゲインgs より大きければ、タイヤがグリップしているものとして、平均ブレーキ力Pm を維持し、逆に微小励振ゲインgd が指令ゲインgs より小さくなれば、摩擦係数がピークμに近付きつつあるため平均ブレーキ力Pm を減少させる。このとき、車輪速度ωw の変化に伴って微小励振ゲインgd が変化するが、この変化をキャンセルするように指令ゲインgs も変化させるため、各速度においてピークμを維持する最適なブレーキ力の制御が可能となる。
【0133】
以上のように、車輪速度ωw に依存して指令ゲインgs を変化させることにより、各車速においてタイヤがグリップした状態での最大のブレーキ力を実現でき、停止距離や停止時間の短縮化が図れる。
【0134】
なお、本実施の形態においては、車輪速度ωw に依存させて指令ゲインgs を変化させたが、車速又は車輪速度ωw 以外の車速に関連した物理量に依存させて変化させても良い。
【0135】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1〜8の発明によれば、車体速度を推定することなく、車輪速度の振動特性の変化を検出することによってアンチロックブレーキ動作を行なっているので、車輪共振系の共振周波数をタイヤがグリップしている時の値に保ちつつ、タイヤのロックを防ぎ安定なアンチロックブレーキ動作を行うことができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のアンチロックブレーキ制御装置で用いられる車体速度の推定方法の概要を示す線図である。
【図2】タイヤと路面との間の摩擦係数μのスリップ率Sに対する特性を示す線図である。
【図3】従来の車体速度推定部を用いたABS制御装置のブロック図である。
【図4】本発明のピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図5】車両の力学モデルを示す図である。
【図6】車両の力学モデルを回転軸換算したモデルを示す図である。
【図7】本発明のピークμ追従ABS制御系の通常走行時の概念図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図9】滑り状態判定部の構成例を示すブロック図である。
【図10】共振周波数の上昇とタイヤグリップ時の共振周波数成分のゲイン減少を示す線図である。
【図11】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブロック図である。
【図12】車輪に加えるブレーキ力の概形を示す線図である。
【図13】ブレーキ部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図14】バルブ指令生成部の構成を示すブロック図である。
【図15】車輪へ加えるブレーキ力の励振波形を示す線図である。
【図16】(1)〜(4)は第1の実施の形態の制御系の各部の動作を示す線図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置の機能ブロック図である。
【図18】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブロック図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図20】微小ブレーキ力励振指令演算部の構成例を示すブロック図である。
【図21】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブロック図である。
【図22】本発明の第4の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図23】滑り状態判定部の構成例を示すブロック図である。
【図24】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブロック図である。
【図25】滑り状態判定部の構成例を示すブロック図である。
【図26】圧電素子によるブレーキ力励振部の構成例を示すブロック図である。
【図27】本発明の第7の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図28】上記実施の形態の滑り状態判定部の構成例を示す図である。
【図29】上記実施の形態のブレーキ圧力低減指令演算部の構成例を示す図である。
【図30】本発明の第8の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図31】上記実施の形態のブレーキ圧力低減指令演算部の構成例を示す図である。
【図32】本発明の第9の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図33】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブロック図である。
【図34】車輪速度ωw に応じて指令ゲインgs を変化させる関係を示す図である。
【符号の説明】
22 車両運動系
23 振幅値検出部
24 運転者走査部
25 ブレーキ力低減指令部
26 微小ブレーキ力励振指定演算部
27 ブレーキバルブドライバ
【発明の属する技術分野】
本発明はアンチロックブレーキ制御装置に係り、特に、車輪の回転速度(車輪速度)に現れる振動特性に基づいてブレーキ力を制御し、車輪と路面との間の摩擦係数が最大値(ピークμ)でのブレーキ動作を行うアンチロックブレーキ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のアンチロックブレーキ制御装置は、車輪速センサの信号に基づいて車体速度、車体加減速度、または車体速度に近似した速度信号等を作成し、これらの比較からブレーキ力を制御してアンチロックブレーキ動作を行っている。
【0003】
すなわち、特開昭61−196853号公報には、推定した推定車体速度と車輪速度等から得られる基準速度との比較から、車輪がロックする可能性があるかどうかを判断し、車輪がロックする可能性がある時にブレーキ力を減少させるアンチロックブレーキ制御装置が記載されている。このアンチロックブレーキ制御装置では、推定車体速度vv は図1に示すように車輪速度より求めた速度vw の谷を一定勾配で接続することにより得られるが、推定車体速度vv と実車体速度vv*との間にずれが生じていることが理解できる。
【0004】
また、このアンチロックブレーキ制御装置では、悪路走行時の車輪接地荷重の変化によって推定車体速度vv が実車体速度vv*より大きくなることを防止するために、推定車体速度の変化以上に車輪速度が変化する場合には推定車体速度の増加割合を抑制している。
【0005】
また、車両がある速度で走行している時、ブレーキをかけていくと車輪と路面との間にスリップが生じるが、車輪と路面との間の摩擦係数μは、下記の(1)式で表されるスリップ率Sに対し、図2のように変化することが知られている。なお、vv*は実車体速度、vw は車輪速度である。
【0006】
S=(vv*−vw )/vv* ・・・(1)
このμ−S特性では、あるスリップ率(図2のA2領域)で摩擦係数μがピーク値をとるようになる。このピーク値をとるスリップ率が予め分かっていれば車体速度と車輪速度とからスリップ率を求めることによりスリップ率制御を行うことができる。
【0007】
このため、特開平1−249559号公報のアンチロックブレーキ制御装置では、車体速度の近似値及び車輪速度等からスリップ率を演算し、演算したスリップ率と設定したスリップ率との比較からブレーキ力を制御している。このアンチロックブレーキ制御装置では、推定車体速度vv と実車体速度vv*とのずれによって長時間ノーブレーキの状態となることを防止するために、必要以上に長い時間ブレーキ圧を減圧状態にしないようにしている。
【0008】
これら従来のアンチロックブレーキ制御装置は、図3に示すように、車輪速度ωw および車体加速度vv ' (=dvv /dt)から車体推定速度vv を推定する車体速度推定部2と、車輪速度ωw と車体推定速度vv とから車輪のロック状態を検出し、車両の運転系1に対してブレーキ力Pb を制御するブレーキ力制御部3とから構成されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のアンチロックブレーキ制御装置では、車体速度推定部が必要であるため、車体速度の推定のために図1に示すように、車輪速度から求めた速度vw と実車体速度vv*とが一致もしくは近い値になるまでブレーキ力を戻す必要があり、そのためには車輪のブレーキ力の増圧減圧を比較的低周波で繰り返す必要があった。また、基準速度と比較する車体速度が車輪速度や車体加減速度等から求めた近似値であるため、実際の車体速度と大きく異なる時があり、場合によっては車輪が長時間ロック状態に陥るとか、復帰のためブレーキ力を極端に減少させてしまう等の問題があった。そのため、車両の挙動に著しい影響を与えて制動距離の増加や不快な振動を起こすことがあった。
【0010】
更に、スリップ率によってブレーキ力を制御するアンチロックブレーキ制御装置では、車両の走行する路面状態によって最大の摩擦係数となるスリップ率が異なることは容易に予想できることであり、この対策として路面状態を検出、推定し、かつ路面状態に応じた基準スリップ率を複数個用意するか、路面状態に応じて基準スリップ率を変化させる必要があった。
【0011】
本発明は上記従来の問題点を解消するためになされたもので、車輪速度や車体速度の比較またはスリップ率の比較から車輪のロック状態を検出するのではなく、またμ−S特性によって決まる車輪速度の振動特性の変化を検出することによって、車体速度を推定することなく、かつ異なった走行路面でも安定にアンチロックブレーキ動作を行うことができるアンチロックブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、車輪速度を検出する検出手段と、該車輪速度のみに基づいて、車体速度を推定することなく、検出された振動特性に基づいてタイヤと路面との間の摩擦係数が略ピーク値となるスリップ率以下のスリップ率になるように車輪に作用する平均的なブレーキ力を制御する制御手段と、を含んで構成したものである。
【0013】
請求項1の発明には、請求項2に示すように、車輪に作用するブレーキ力を所定周波数で微小励振する励振手段をさらに設けることができる。
【0014】
請求項3の発明は、車輪速度の周波数分布から得られるタイヤのグリップ状態によって変化する所定周波数成分又は所定周波数成分の振幅から共振周波数を求める共振周波数検出手段と、該共振周波数が基準値より大きいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるよう制御する制御手段と、を含んで構成したものである。
【0015】
請求項3の発明の制御手段は、前記共振周波数が前記基準値より小さいときに前記平均的なブレーキ力を増加させるように制御するのが好ましい。
【0017】
また、請求項4の発明は、図4に示すように、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数で車輪に作用するブレーキ力を微小励振する励振手段7と、車輪速度の前記共振周波数成分の振幅を検出する検出手段5と、ブレーキ力の微小励振の振幅に対する車輪速度の前記共振周波数成分の振幅のゲインが基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する制御手段6と、を含んで構成したものである。
【0018】
請求項4の発明の励振手段は、運転者が制御するブレーキ力を、タイヤがグリップしている時の車輪速度の共振周波数と同じ周波数で微小励振するのが好ましい。
【0019】
請求項4の発明の制御手段は、車輪速度と車輪速度の共振周波数の単一正弦波との相関を求めて車輪速度の前記振幅を検出するようにすると効果的である。
【0020】
請求項4の発明の検出手段は、車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、前記車輪速度検出手段に接続されると共に、通過帯域がタイヤがグリップしているときの車輪速度の共振周波数を含む所定範囲に設定された帯域通過フィルタと、帯域通過フィルタ出力を直流化して出力する直流化手段と、で構成することができる。
【0021】
また、請求項4の発明の制御手段は、前記ゲインが前記基準値より大きいときに前記平均的なブレーキ力を増加するように制御するのが好ましい。
【0022】
請求項4の発明の制御手段は、ブレーキ力の微小励振の振幅に対する車輪速度の前記共振周波数成分の振幅のゲインを演算する演算手段と、前記ゲインと前記基準値との偏差を演算する演算手段と、前記偏差に基づいた比例積分制御を行うための低減ブレーキ力指令を出力するPI制御手段と、運転者の操作によるブレーキ力を越えて指令されないように前記低減ブレーキ力指令の正値を除去して負値のみを車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるための低減ブレーキ力指令として出力する正値除去手段と、で構成することができる。
【0023】
また、請求項4の発明の制御手段を、ブレーキ力の微小励振の振幅に対する車輪速度の前記共振周波数成分の振幅のゲインを演算する演算手段と、タイヤがロックしない状態での前記ゲインを記憶した記憶手段と、前記演算手段で演算されたゲインと前記記憶手段に記憶されたゲインとの差を演算する演算手段と、前記差と前記基準値との偏差を演算する演算手段と、前記偏差に基づいた比例積分制御を行うための低減ブレーキ力指令を出力するPI制御手段と、運転者の操作によるブレーキ力を越えて指令されないように前記低減ブレーキ力指令の正値を除去して負値のみを車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるための低減ブレーキ力指令として出力する正値除去手段と、で構成するようにしてもよい。
【0024】
さらに、請求項4の発明では、請求項5に示すように、車速又は車速に関連した物理量を検出する物理量検出手段をさらに設け、物理量検出手段により検出された車速又は車速に関連した物理量に依存させて、前記基準値を変化させるようにしてもよい。
【0025】
この場合には、車速又は車速に関連した物理量が大きくなるに従って前記基準値を小さくすると効果的である。
【0026】
請求項6の発明は、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数でかつ一定振幅で車輪に作用するブレーキ力を微小励振する励振手段と、車輪速度の前記共振周波数成分の振幅を検出する検出手段と、検出手段で検出された車輪速度の前記共振周波数成分の振幅が基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する制御手段と、を含んで構成したものである。
【0027】
請求項6の発明の制御手段は、前記共振周波数成分の振幅が前記基準値より大きいときに平均的なブレーキ力を増加するように制御するのが好ましい。
【0028】
請求項7の発明は、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数でかつ振幅指令に応じて車輪に作用するブレーキ力を微小励振する励振手段と、車輪速度の前記共振周波数成分の振幅を検出する検出手段と、検出手段で検出された車輪速度の前記共振周波数成分の振幅が基準値になるように前記振幅指令を求めると共に、該振幅指令が基準振幅値より大きいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する制御手段と、を含んで構成したものである。
【0029】
請求項7の発明の制御手段には、前記振幅指令が前記基準振幅値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を増加させるように制御する手段をさらに設けてもよい。
【0030】
そして、請求項8の発明は、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数で車輪に作用するブレーキ力を微小励振する励振手段と、車輪速度を検出する検出手段と、ブレーキ力の振幅に対する車輪速度の振幅のゲインが最大となるときの周波数が基準値より大きいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する制御手段と、を含んで構成したものである。
【0031】
請求項8の発明の励振手段は、運転者によって制御されたブレーキ力を、タイヤがグリップしている時の車輪速度の共振周波数と同じ周波数で微小励振するのが好ましい。
【0032】
請求項8の発明の制御手段は、前記車輪速度の振幅及び前記ブレーキ力の振幅の各々を周波数系列データに変換する変換手段と、前記周波数系列データにおける各周波数毎の前記ブレーキ力の振幅に対する車輪速度の振幅のゲインを演算する演算手段と、前記ゲインが最大となる周波数を抽出する抽出手段と、で構成することができる。
【0033】
また、請求項8の発明の制御手段には、前記周波数が前記基準値より小さいときに前記平均的なブレーキ力を増加させるように制御する手段をさらに設けと効果的である。
【0034】
まず、本発明の原理を説明する。図5に示すように、重量Wの車体12を備えた車両が速度vで走行している時の車輪での振動現象、すなわち車体と車輪と路面とによって構成される振動系の振動現象を、車輪回転軸で等価的にモデル化した図6に示すモデルを参照して考察する。
【0035】
ここで、ブレーキ力(制動力)は、路面と接するタイヤのトレッド15の表面を介して路面に作用するが、このブレーキ力は実際には路面からの反作用として車体12に作用するため、車体重量の回転軸換算の等価モデル17はタイヤのトレッドと路面との間の摩擦要素16を介して車輪13と反対側に連結したものとなる。これは、シャシーダイナモ装置のように、車輪下の大きな慣性、すなわち車輪と反対側の質量で車体の重量を模擬することができることと同様である。
【0036】
図5、図6でタイヤリムを含んだ車輪13の慣性をJw 、リムとトレッド15との間のばね要素14のばね定数をK、トレッド15の慣性をJt 、トレッド15と路面との間の摩擦要素16の摩擦係数をμ、車体12の重量の回転軸換算の等価モデル17の慣性をJV とすると、系全体の特性は次の(2)〜(4)のようになる。なお、以下では時間に関する1階微分d/dtを「' 」で表し、時間に関する2階微分d2 /dt2 を「" 」で表す。
【0037】
JW θw " = −T+K(θt −θw ) ・・・(2)
Jt θt " = −K(θt −θw )+μWR ・・・(3)
Jv ωv ' = −μWR ・・・(4)
ここで、
ww = θw ' ・・・(5)
Jv = R2 W ・・・(6)
ωv = v/r ・・・(7)
であり、θw は車輪13の回転角、θw " は車輪13の回転角加速度、ww は車輪13の回転角速度、すなわち車輪速度、θt はトレッド15の回転角、θt " はトレッド15の回転角加速度、ωv は車体等価モデル17の回転軸換算の回転角速度、Tは車輪13に加えられる制動トルク、Wは車体の重量、Rは車輪半径である。制動トルクTは実際にはブレーキバルブの圧力Pb の制御によって行う。
【0038】
タイヤがグリップしている時は、トレッド15と車体等価モデル17とが直結されていると考えると、車体等価モデル17の慣性とトレッド15の慣性との和の慣性と車輪13の慣性とが共振し、この時の車輪共振系の共振波数f1 は、
f1 =√{(Jw +Jt +Jv )K/Jw (Jt +Jv )}/2π・・・(8)
となる。この状態は図2上では領域A1 に対応する。
【0039】
逆に、タイヤの摩擦係数μがピークμに近付く場合には、タイヤ表面の摩擦係数μがスリップ率Sに対して変化し難くなり、トレッド15の慣性の振動に伴う成分は車体等価モデル17に影響しなくなる。つまり等価的にトレッド15と車体等価モデル17とが分離され、トレッド15と車輪13とが共振を起こすことになる。この時の車輪共振系の共振周波数f2 は、
f2 =√{(Jw +Jt )K/Jw Jt }/2π ・・・(9)
となる。この状態は図2の領域A2に対応し、一般にピークμの点に達すると瞬時に領域A3へと遷移してタイヤがロックする。一方、共振周波数における車輪速度のゲインもピークμ直前で急激に減少する。
【0040】
各慣性の大小関係は、
Jt <Jw <Jv ・・・(10)
であり、これより、
f1 <f2 ・・・(11)
になる。つまり、タイヤがロックに至る場合、車輪共振系の共振周波数が高周波側にずれることになる。また、この共振周波数の変化はピークμ付近で急激に発生する。
【0041】
モデルを簡単化し、トレッド15の慣性Jt を無視した場合でもピークμ状態に近づくと車輪共振系の共振周波数及び車輪速度のゲインのピークの変化は起こり、同様の解析が可能である。
【0042】
この共振周波数f1 または車輪速度のゲインのピークの変化を観測し、共振周波数をピークμ以下の値、すなわちタイヤがグリップしている状態での値に保つことでタイヤのロックを防ぐことができ、この範囲での最大のブレーキ力を車輪に加えることにより、最適なブレーキ動作を行うことができる。
【0043】
そこで、請求項1の発明では、検出手段で車輪速度を検出し、制御手段によって、車輪速度のみの振動特性に基づいてタイヤと路面との間の摩擦係数がピーク値になるように車輪に作用する平均的なブレーキ力を制御する。
【0044】
車輪に作用する平均的なブレーキ力を制御する制御手段は、通常走行時は、運転者の操作またはコンピュータ制御等による自動運転によるブレーキ力操作手段と、摩擦係数がピークμとなるスリップ率を越えた時にブレーキ力操作手段によるブレーキ力を低減する低減手段とにより構成することができる。ここで、緊急ブレーキ時では、運転者の意思に関係しない最少制動距離実現のために摩擦係数がピークμを維持するように平均的なブレーキ力を作用させる制御手段とすればよい。
【0045】
検出手段は、滑り状態を判定することができる車輪速度を検出するものである。車体、車輪及び路面によって構成される振動系では、車輪速度振動成分の振幅値が最大になる周波数を共振周波数と見做すことができるので、車輪に作用するブレーキ力と車輪速度との各々の周波数成分の振幅ゲインの比較からブレーキ力に対する車輪速度の振幅ゲインが最大となる周波数を求め、この周波数変化から滑り状態を知ることができる。したがって、周波数伝達特性から共振周波数そのものを検出してもよい。
【0046】
また、車輪速度の振幅ゲインのピークは、ピークμへの接近により減少する。そこで、タイヤがグリップしている状態での共振周波数がわかっている場合には、タイヤがグリップしている状態で車輪と路面との間で起こる共振周波数でブレーキ力を励振することにより、ロック時には共振周波数成分のブレーキ力−車輪速度の振幅ゲインが減少し、ピークμへの接近を判定することができる。すなわち、タイヤがグリップしている状態での共振周波数がわかれば、この共振周波数成分のブレーキ力−車輪速度の振幅ゲインからも滑り状態を判定することができるので、共振周波数成分のブレーキ力−車輪速度の振幅ゲインを検出してもよく、車輪速度の共振周波数成分の振幅を検出し、該振幅の変動が所定値となるように励振手段の励振を調整し、その場合のブレーキ力の微小励振の振幅から共振周波数成分のブレーキ力−車輪速度の振幅ゲインを演算してもよい。
【0047】
このため、請求項1の発明では、車輪に作用するブレーキ力を所定周波数で微小励振する励振手段をさらに設けることができる。
【0048】
また、請求項3の発明では、共振周波数検出手段によって車輪速度の周波数分布から共振周波数を求め、制御手段によって共振周波数が基準値より大きいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるよう制御している。
【0049】
請求項4の発明では、励振手段によって、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数で車輪に作用するブレーキ力を微小励振し、検出手段によって車輪速度の共振周波数成分の振幅を検出する。そして、制御手段は、ブレーキ力の微小励振の振幅に対する車輪速度の共振周波数成分の振幅のゲインが基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する。
【0050】
請求項6の発明では、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数でかつ一定振幅で車輪に作用するブレーキ力を微小励振し、車輪速度の共振周波数成分の振幅を検出し、車輪速度振動成分の周波数分布から共振周波数を求める。そして、制御手段は、検出された車輪速度の共振周波数成分の振幅が基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する。
【0051】
請求項7の発明では、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数でかつ一定振幅で車輪に作用するブレーキ力を微小励振し、車輪速度の共振周波数成分の振幅を検出し、検出手段で検出された車輪速度の共振周波数成分の振幅が基準値になるように微小励振の振幅指令を求めると共に、該振幅指令が基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する。
【0052】
そして、請求項8の発明では、車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数で車輪に作用するブレーキ力を微小励振し、車輪速度を検出し、ブレーキ力の振幅に対する車輪速度の振幅のゲインが最大となるときの周波数が基準値より大きいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する。
【0053】
また、第4の発明において検出される車輪速度の共振周波数成分の振幅は車速又は車輪速度等の車速に関連した物理量に依存して変化する傾向を示す。
【0054】
そこで、第4の発明では、物理量検出手段により車速又は車速に関連した物理量を検出し、検出された車速又は車速に関連した物理量に依存させて、第4の発明における基準値を変化させ、検出された車輪速度の共振周波数成分の振幅が変化させた基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御することができる。これにより、各車速においてタイヤがグリップした状態での最大のブレーキ力を実現できる。
【0055】
上記各発明では車体速度の推定部を必要とせず、車体加速度を用いる必要がないため、制御装置やセンサの簡略化が行える。
【0056】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0057】
以下で説明する各実施の形態の通常走行時を対象としたアンチロックブレーキ制御装置(ABS)は、図7に示すように、車両運動系22を制御して車輪に加わるブレーキ力を制御する制御部Cと、運転者が操作するブレーキペダル34を含む運転者操作部24によるブレーキ力に微小振動ブレーキ力を加えた時の車輪速度の共振特性を検出する検出部20と、によって構成されている。
【0058】
制御部Cは、この運転者操作部24によるブレーキ力に微小振動を与えるブレーキ力励振部19と、検出部20で検出された車輪速度の共振特性に基づいてブレーキ力増加を抑制するブレーキ力低減部21とを含んで構成されている。
【0059】
また、検出部20は、車輪速度を検出する車輪速センサと車輪速度の共振周波数成分の振幅を検出する振幅検出手段、または車輪速度を検出する車輪速センサとブレーキ力の微小励振の振幅に対する車輪速度の共振周波数成分の振幅のゲインが最大となる周波数を抽出する抽出手段で構成することができる。
(第1の実施の形態)
次に第1の実施の形態のABSについて説明すると、図8に示すように、検出部20は、車輪速度ωw を検出する車輪速センサと車輪速センサに接続されて車輪速度ωw の共振周波数成分の振幅値を検出する振幅値検出部23とで構成されている。この車輪速センサは、制御対象となる車両運動系22に取付けられており、車輪速度ωw に比例した交流信号を出力する。
【0060】
また、制御部Cのブレーキ力励振部19は、振幅値検出部23からの検出値ωd に基づいてブレーキ指令Pb の微小振幅の振幅値であるPv を演算する微小ブレーキ力励振指令演算部26で構成され、ブレーキ力低減部21は、振幅値検出部23からの検出値ωd と微小ブレーキ力励振指令演算部26からの微小ブレーキ力励振振幅指令Pv とに基づいてブレーキ力低減指令Pr を演算するブレーキ力低減指令演算部25で構成されている。
【0061】
このブレーキ力低減指令演算部25及び微小ブレーキ力励振指令演算部26は、ブレーキ力低減指令演算部25からのブレーキ力低減指令Pr 、運転者操作部24によるブレーキ力Pd 及び微小ブレーキ力励振指令演算部26からの微小ブレーキ力励振振幅指令Pv に基づいて制御対象となる車両運動系22への入力であるブレーキ力指令を生成し、このブレーキ力指令を車両運動系22へ加えるブレーキバルブドライバ27に接続されている。
【0062】
振幅値検出部23は、図9に示すように、通過帯域がタイヤがグリップしている時の車輪速度の共振周波数f1 を含む所定範囲に設定された帯域通過フィルタ28、帯域通過フィルタ28出力を整流する全波整流器29、及び全波整流器29出力を平滑化して直流化する低域通過フィルタ30により構成されている。振幅値検出部23は、タイヤがグリップしている時の車輪速度の共振周波数f1 の成分のみを検出し、車輪速度の共振周波数f1 の成分を直流化して出力するので、振幅値検出部23の検出値ωd は車輪速度の共振周波数f1 成分の振幅値となる。
【0063】
ところで、車輪と路面との間で起こる共振は、基本的に減衰振動であり、持続振動とはならないため、路面の凹凸等の外乱による励振ではそのタイヤがグリップしている時の共振周波数f1 成分の検出は困難なものとなる。
【0064】
そこで、本実施の形態では、微小ブレーキ力励振指令演算部26において、運転者が操作指令するブレーキ力にタイヤがグリップしている時の車輪速度の共振周波数f1 と同じ周波数の微小振動を加える際の微小振幅指令Pv を演算し、運転者が操作指令するブレーキ力へ能動的にタイヤがグリップしている時の車輪速度の共振周波数f1 と同じ周波数の微小振動を加えることにより、その増幅特性から、共振周波数f1 の変化を検出している。
【0065】
図10に示すように、車輪共振系の周波数特性は、摩擦係数μがピーク値に近付いていくと、共振周波数における車輪速度のゲインのピークが低くなり、摩擦係数μがピーク値を越えると共振周波数はタイヤがグリップしている時の共振周波数f1 よりも高い周波数側にずれる。タイヤがグリップしている状態での共振周波数f1 の成分についてみると、ピークμ状態に近づくことによって、共振周波数f1 成分の振幅の減少となって現れてくる。従って、車輪速度に現れる共振周波数f1 の微小振動成分のゲインからピークμ状態への接近を検知することが可能である。
【0066】
そこで、本実施の形態では、図11に示すように、車輪に加えられる平均的なブレーキ力である平均ブレーキ力Pm の低減を制御するブレーキ力低減指令演算部25を、振幅値検出部23の検出値ωd の微小ブレーキ力励振振幅指令Pv に対するゲインである微小励振ゲインgd を演算する演算部31と、微小励振ゲインgd と基準値gs との差gd −gs 、比例ゲインGPr1 及び積分ゲインGIr1 を用いた比例積分制御により低減ブレーキ力を演算するPI制御器32と、運転者の操作によるブレーキ力Pd を超えて指令されないように正値を除去して負の値のみを採用して低減ブレーキ力指令Pr として出力する正値除去部33とから構成している。
【0067】
このブレーキ力低減指令演算部25は、微小励振ゲインgd が基準値gs より大きければ、すなわち微小ブレーキ力励振振幅指令Pv で励振したときの検出値ωd が基準値gs Pv (ただし、ωd は回転速度で単位は〔rad/s〕、Pv は圧力またはトルクで単位は〔Pa〕または〔Nm〕である)より大きければ図10で説明したようにタイヤがグリップしているものとして、平均ブレーキ力Pm を維持し、逆に微小励振ゲインgd が基準値gs より小さくなれば、すなわち微小ブレーキ力励振振幅指令Pv で励振したときの検出値ωd が基準値gs Pv より小さくなれば、摩擦係数がピークμに近付きつつあるため平均ブレーキ力Pm を減少させる。
【0068】
図12に示すように、平均ブレーキ力Pm は、
Pm =Pd +Pr ,Pr ≦0 ・・・(12)
であり、低減ブレーキ力指令Pr は常に負の値であるから、運転者操作によるブレーキ力Pd を超えて平均ブレーキ力Pm が指令されることはない。なお、平均ブレーキ力Pm を維持することにより、車輪に作用するブレーキ力はドライバの踏力に応じて増加する。
【0069】
ブレーキバルブドライバ27は、平均ブレーキ力Pm の指令および微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を実際の車輪への制動トルクに変換する部分であり、図13に示すように、ブースタ35、バルブ制御系36、ブレーキキャリパー37、リザーバタンク38及びオイルポンプ39を備えている。
【0070】
ブレーキペダル34は、ブレーキペダル34の操作力を増圧するブースター35を介してバルブ制御系36の増圧側バルブ40へ接続されている。バルブ制御系36には、バルブ動作指令が入力されると共に、ブレーキキャリパー37に連結されかつ減圧側バルブ41を介してリザーバータンク38に連結されている。
【0071】
このバルブ動作指令は、図14に示す回路によって生成される。この回路は、平均ブレーキ力の指令Pm と微小ブレーキ力励振振幅指令Pv とを入力し、図15に示すように、平均ブレーキ力Pm の指令をタイヤがグリップしている時の共振周波数f1 と同じ励振周波数で励振する。
【0072】
この動作原理を以下に説明する。まず、演算部18Aで、平均ブレーキ力Pm の指令と微小ブレーキ力励振振幅指令Pv の和Pm1を演算し、演算部20Aで平均ブレーキ力のPm 指令と微小ブレーキ力励振振幅指令Pv との差Pm2を演算する。和Pm1は、ブレーキ力の指令の上限に対応し、差Pm2はブレーキ力の指令の下限に各々対応する。この2つの和Pm1、差Pm2を指令として、演算部18B、20Bで実ブレーキ圧Pb*との差e1、e2を演算し、指令生成部42、43において各々の差e1、e2からバルブの位置を計算して指令を生成し、この両者を共振周波数f1 と同じ周波数である励振周波数で切替えることによって、ブレーキ圧を励振する。ただし、和Pm1については増圧と保持のみの指令、差Pm2については保持と減圧のみ指令を生成する。このように指令を生成することにより、ブレーキ圧指令の過度の振動を防ぎ、共振周波数f1 と同じ周波数での励振を行うことができる。
【0073】
ブレーキバルブドライバ27は、制動油圧を増圧する場合、ブースター35側の増圧側バルブ40を開き、リザーバータンク38の減圧側バルブ41を閉じて、ブースター圧力をそのままブレーキキャリパー37へ入力する。逆に、制動油圧を減圧する場合は、増圧側バルブ40を閉じて、減圧側バルブ41を開くことにより、オイルオンプ39を介して、ブレーキキャリパー37内の圧力を減少させる。また、両バルブを閉じれば、制動油圧は保持されてブレーキ力は保持される。
【0074】
このようなバルブ動作では、運転者のペダル34の操作によるブレーキ力以上にブレーキキャリパー37内の圧力が上昇することはなく、通常走行時の弱いブレーキング時にはABSは動作しない。運転者のペダル34の操作によるブレーキ力がピークμを超えて制動されようとする時、ABSが動作し、ピークμに追従したブレーキ動作が実現できる。
【0075】
このABSによれば、運転者の操作によるブレーキ力と微小振動ブレーキ力との和のブレーキ力を車輪に加えたときに、摩擦係数がピークμ状態に達すると、ブレーキ力低減部21によって平均ブレーキ力が低減されそれ以上のブレーキ力増加が抑圧され、これによってタイヤがロックするのが防止される。
【0076】
これに対し、自動運転システムにおいて緊急時のブレーキ動作については、運転者の意思とは無関係に最小の制動距離での安定な制動動作が必要とされ、車輪に加えられるブレーキ力は、運転者の操作による値に関係なくピークμ状態となるように平均ブレーキ力が増加・減少され、制動動作されることになる。このような緊急時のブレーキ動作は列車等にも適用することができる。これは、以下に示す全ての実施の形態においても同様である。
【0077】
図16(1)〜(4)は本実施の形態のABSの各部の動作を図示したものである。(1)はブレーキ力、(2)は車輪速度、(3)は微小励振ゲイン、(4)は摩擦係数である。ここで、車両の初速度は40km/h、ピークμ値は0.6、基準微小励振ゲインgs は0.01rad/s/Nmとしている。
【0078】
ドライバの操作と同時にブレーキ力励振を開始し、微小励振ゲインgd が基準値gs 以上の場合は、ドライバの操作によるブレーキ力Pd がそのまま車輪に加わっている。検出される微小励振ゲインgd が基準値gs を下回るとブレーキ力低減部21によって、平均ブレーキ力Pm が低減されている。この結果、タイヤ路面間の摩擦係数μは車輪のロックを起こすことなくピーク付近に固定されていることがわかる。
【0079】
この実施の形態は、基本的に現行のABSを流用する形で実現しており、ブレーキバルブのバルブ動作を変更するだけで実現可能である。このことは現行ABSシステムからの変更を容易なものとしている。また、車体速度の推定を必要としないために車体加減速度検出のためのGセンサ等を不要とし、ハードウエアの簡素化が行える。更に、ブレーキ力励振の周波数は40Hz程度のものであり、十分微小な励振振幅とすることで搭乗者に不快感を与えることなく実現可能である。
【0080】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、入力である微小ブレーキ力の振幅を一定の状態に保持できる場合に本発明を適用したものであり、図17に示すように、一定の微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を出力する微小ブレーキ力励振指令演算部44と、車輪速度振動の共振周波数成分の振幅である振幅値検出部23の検出値ωd のみからブレーキ力低減指令Pr を演算するブレーキ力低減指令演算部45と、を備えている。なお、本実施の形態の微小励振の周波数は第1の実施の形態と同様に車輪共振系の共振周波数である。
【0081】
このブレーキ力低減指令演算部45は、図18に示すように、振幅値検出部23の検出値、すなわち共振周波数成分の振幅ωd と基準値ωs との差ωs −ωd を演算する演算器と、比例ゲインGpr2 及び積分ゲインGIr2 により比例積分制御を行うPI制御器46と、運転者操作によるブレーキ圧Pd を超えて指令されないように正値を除去する正値除去部47とで構成されている。
【0082】
本実施の形態では、振幅値検出部23の出力すなわち共振周波数成分の振幅ωd が基準値ωs より大きければタイヤがグリップしているものとして、平均ブレーキ力Pm を維持するようブレーキ力低減指令Pr を維持し、逆に共振周波数成分の振幅ωd が基準値ωs より小さくなれば、ロック状態に近付きつつあるとしてブレーキ力低減指令Pr を減少させて平均ブレーキ力を減少させる。
【0083】
本実施の形態も、基本的に現行のABSを流用する形で実現しており、ブレーキバルブの動作を変更するだけで実現可能である。本実施の形態では、微小励振によるブレーキ力の振幅に対する車輪速度の共振周波数成分の振幅のゲインを演算する必要がなくなるので、ABSの簡単化を図ることができる。
【0084】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、平均ブレーキ力に加える微小ブレーキ力を制御して、車輪速度に現れる微小振動の振幅を一定にするようにしたものであり、図19に示すように、車輪速度の共振周波数成分の振幅である振幅値検出部23の検出値ωd から微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を出力する微小ブレーキ力励振指令演算部48と、微小ブレーキ力励振振幅指令Pv からブレーキ力低減指令Pr を演算するブレーキ力低減指令演算部49と、を備えている。
【0085】
このブレーキ力励振指令演算部48は、図20に示すように、振幅値検出部23の出力、すなわち共振周波数成分の振幅ωd と基準値ωs との差ωs −ωd を演算する演算器と、比例ゲインGPv及び積分ゲインGIvにより比例積分制御を行うPI制御器50ととで構成されている。
【0086】
また、ブレーキ力低減指令演算部49は、図21に示すように、微小ブレーキ力基準振幅値Ps と微小ブレーキ力励振振幅指令Pv との差Ps −Pv を演算する演算器と、比例ゲインGPr3 及び積分ゲインGIr3 により比例積分制御を行うPI制御器51と、運転者操作によるブレーキ圧Pd を超えて指令されないように正値を除去する正値除去部52とで構成されている。
【0087】
本実施の形態では、車輪速度の共振周波数成分の振幅ωd と基準値ωs との差ωs −ωd をフィードバックして微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を生成している。つまり、振幅ωd が基準値ωs より小さい場合には、微小ブレーキ励振振幅指令Pv を大きくし、逆に振幅ωd が基準値ωs より大きい場合には微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を小さくすることによって、車輪速度に現れる励振周波数成分の振幅値ωd を、微小な一定の基準値ωs に制御している。このように制御することにより、車両運転者が感じ得ない範囲での励振を行うことができる。
【0088】
このように本実施の形態では、車輪速度に現れる微小振動の振幅ωd を一定とするように微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を制御しているから、ピークμへの接近による共振点のずれは、入力であるブレーキ力の励振振幅指令Pv の増加となって現れる。
【0089】
したがって、ある一定の微小ブレーキ力基準振幅値Ps からの偏差をフィードバックし、ブレーキ力の励振振幅指令Pv が微小ブレーキ力基準振幅値Ps より大きい時に平均ブレーキ力Pm を減少させ、逆にブレーキ力の励振振幅指令Pv が微小ブレーキ力基準振幅値Ps より小さい時に平均ブレーキ力Pm を増加させるように制御することによって、ピークμに追従したブレーキ動作を行っている。
【0090】
本実施の形態も、基本的に現行のABSを流用する形で実現しており、ブレーキバルブのバルブ動作方法を変更するだけで実現可能である。この場合も、微小励振による車輪速度の振幅もブレーキ力の振幅に対するゲインを演算する必要がなくなり、制御装置の簡単化が図れる。また、車輪速度に現れる微小振動を十分小さな値とすることにより、運転者の感知しない範囲で常に励振することができ不快振動を防ぐことができる。
【0091】
(第4の実施の形態)
上記各実施の形態では、タイヤグリップ時の車輪速度の共振周波数f1 成分の振幅の変化により共振特性を求めているが、第4の実施の形態は周波数伝達特性から共振周波数そのものを観測して、共振周波数そのものの変化によって平均ブレーキ力を制御するようにしている。
【0092】
本実施の形態は、図22に示すように、微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を演算する微小ブレーキ力励振指令演算部53と、ブレーキ力Pb 及び車輪速度ωw からブレーキ力Pb の振幅に対する車輪速度ωw の振幅のゲインが最大になるときの共振周波数fd を演算する滑り状態判定部55と、ゲインが最大になるときの周波数fd からブレーキ力低減指令Pr を演算するブレーキ力低減指令運算部54と、を備えている。
【0093】
滑り状態判定部55は、図23に示すように、車輪速度ωw 及びブレーキ力Pb の一定時間間隔のデータを高速フーリエ変換するFFT処理部56と、得られた周波数系列データの各周波数毎のブレーキ力Pb に対する車輪速度ωw のゲインを演算する演算部57と、周波数伝達特性を求め、そのゲイン最大の周波数fd を抽出する抽出部58と、により構成されている。
【0094】
この滑り状態判定部55を用いると、平均ブレーキ力Pm の指令を、共振周波数fd が基準値fs より小さければ増加させ、ゲイン最大の周波数fd が基準値fs より大きければ減少させるように指令を演算することにより、ピークμに追従した制動動作を行なうことができる。
【0095】
ブレーキ力低減指令演算部54は、図24のように、ゲイン最大の周波数fd と基準値fs との差fs −fd を演算する演算器と、比例ゲインGPr4 及び積分ゲインGIr4 により比例積分制御を行うPI制御器59と、運転者操作によるブレーキ圧Pd を超えて指令されないように正値を除去する正値除去部60とで構成されている。
【0096】
この実施の形態も車輪速度信号を処理することより共振周波数成分の振幅変化を検出しており、センサ等の追加は必要なく実現できる。
【0097】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態は、車輪速度と車輪速度の共振周波数f1 の単一正弦波との相関を求めて車輪速度の共振周波数f1 の振幅を検出するものであり、ニューラルコンピュータによっても構成可能である。
【0098】
図25は単一正弦波との相関によって所望の共振周波数f1 の振幅成分を検出する回路を示すもので、必要な時系列データを一定時間ΔTだけ保持することにより遅延させる遅延時間回路61と、この一定時間ΔTを周期とする余弦波の各時間値と掛け合わせて加算して積和Rを演算する積和演算部62と、正弦波の各時間値と掛け合わせて加算して積和Iを演算する積和演算部63と、積和Rおよび積和Iの2乗和の平方根を計算する計算部64とから構成されている。
【0099】
ここで車輪速度ωw のサンプリング間隔を1msとし、検出したい周波数を40Hzにすると、検出したい成分の一周期は25サンプル点である。積和Rおよび積和Iは、
であることから、積和Rおよび積和Iは周波数1/ΔT成分に対するフーリエ係数の実数部、虚数部を求めていることに他ならない。したがって、この積和R、積和Iの2乗和の平方根を求めればその振幅値が得られることになる。
【0100】
この実施の形態も車輪速度信号を処理することより共振周波数成分の振幅変化を検出しており、センサ等の追加は必要なく実現できる。
【0101】
(第6の実施の形態)
図26は圧電素子によるブレーキ力励振部を構成した第6の実施の形態のブロック図である。本実施の形態では、タイヤ65への平均的なブレーキ力はブレーキキャリパー66内の圧力制御により行い、同時にブレーキディスク67との接触表面に配置した圧電素子68への微小励振電圧を励振することにより、ブレーキ力を励振している。
【0102】
なお、上記各実施の形態の微小ブレーキ力励振指令演算部26、44、53およびブレーキ力低減指令演算部25、45、49、54は、上記の構成の他により高度な制御系、例えばH∞制御、2自由度制御などのロバスト制御系や、ニューラルコンピュータやファジー制御系、適応制御等用いて構成することも可能である。
【0103】
この場合にも、車輪速センサからの車輪速度を基に処理するもので、新たなハードウェアを必要としない。制御アルゴリズムの変更は制御に用いるコンピュータ内のプログラム変更で可能であり、より最適な制御系を容易に用いることができる。
【0104】
また、上記各実施の形態では実ブレーキ力Pb*をフィードバックすることで圧力制御系を構成しているが、プログラム制御などにより、実ブレーキ力をフィードバックせずに制御系を構成することも可能である。
【0105】
さらに、電気自動車のように駆動・制動トルクが電気によって制御できる場合にはその駆動電流に微小な振動を加えることにより励振することが可能である。
【0106】
この実施の形態では電気自動車の電流制御系の指令に微小励振振幅を加えることでABS装置を簡単に実現でき、また、電動モータの回転数の検出にも新たなセンサを必要としない。電動モータの回転数検出法には瞬時速度オブザーバ等を用いることができ、より精度の高い制御系構成も可能である。
【0107】
従来では、車速の近似値の導出のためには制動中にブレーキ力を極端に減少させる必要があり、これは車輪に比較的低周波で不快な振動を起こさせることにもなっているが、上記の各実施の形態では車輪共振系の物理現象に基づいているため、絶対的な車速を必要とせず、不快制動をなくすことができる。
【0108】
また、ブレーキ力への励振を微小なものとすることで、摩擦係数μをピーク値付近に固定することが可能であり、従来からの比較的大きな振幅変動を必要とするものよりも制動距離が短くなる。
【0109】
さらに、路面状態が変化した場合にも、共振周波数の変化は同様に起こり、その場合にも安定な動作が行える。これによりABS装置の製作に必要なチューニング工程の大幅な削減が可能になる。
【0110】
また処理に必要なセンサ信号は基本的に車輪速度のみであり、ロータリエンコーダなどの比較的安価なセンサを用いることで構成することが可能になる。
【0111】
(第7の実施の形態)
上記の各実施の形態では、ブレーキ力励振を用いてタイヤ共振特性を検出する例について説明したが、タイヤ共振特性の検出は、ブレーキ力励振を用いなくても可能である。つまり、走行中の車輪速度変化の周波数分布から共振周波数を検出することができる。
【0112】
例えば、タイヤ共振系の共振周波数は、車輪速度振動成分が大きなものとなり、その振幅値が最大の周波数のときに共振周波数と見做すことができる。この励振手段を使用しない実施の形態を図27に示す。
【0113】
この場合、滑り状態判定部70の構成は、図28に示すように、車輪速度ωw の時系列データからFFT処理部71によるFFT処理により周波数系列データを計算し、抽出部72によりゲイン最大の周波数を抽出して共振周波数としている。
【0114】
この滑り状態判定部70を用い、平均ブレーキ圧力指令Pm を、共振周波数fd が基準値fs より小さければ増加させ、共振周波数fd が基準値fs より大きければ減少させるように指令を演算すれば、ピークμに追従した制動動作が行なわれる。
【0115】
また、ブレーキ圧力低減指令演算部69は、図29に示すように、共振周波数検出値fd の基準値fs に対する差fs −fd を比例ゲインGPr5 及び積分ゲインGIr5 のPI制御器73の入力とするフィードバック制御系で構成できる。また、本実施の形態においても運転者操作によるブレーキ圧力Pd を越えて指令されないように、正値除去回路74により負の値のみを採用している。
【0116】
また、本実施の形態では振幅値がピーク値となる周波数を共振周波数としているが、振幅−周波数特性そのものの概形から共振特性を当てはめて共振周波数を求めることも可能である。
【0117】
この実施の形態も車速速度信号を処理することにより共振周波数成分の振幅変化を検出しており、従来のABSに対しセンサ等の追加は必要なく実現できる。
【0118】
また、ブレーキの励振が必要でないため、励振用のアクチュエータを省略することができる。
【0119】
(第8の実施の形態)
タイヤがロックしない状態での共振周波数での車輪速−励振ブレーキ圧力ゲインを記憶しておき、相対的にどれだけ減少したかを用いてタイヤがロックに近いか否かを判断し、制御系を構成した第8の実施の形態を図30に示す。本実施の形態では、ブレーキ圧力低減指令演算部75は、図31に示すように、車輪速−励振ブレーキ圧力ゲイン計算部77の出力値gd について、平均ブレーキ圧力Pm が十分小さいときの値をメモリ76に記憶しておき、この記憶値gs2からの相対的なゲインの減少量gs2−gd の基準値gs1との差gs1−(gs2−gd )に対して、比例ゲインGpr6 、積分ゲインGIr6 のPI制御器78を介して低減ブレーキ圧力を演算し、運転者操作によるブレーキ圧力Pd を越えて指令されないように正値除去回路79により負の値のみを採用してPr としている。
【0120】
上記基準値gs1は、車輪等の変化(車輪の交換等)に応じて適切な値となるため、タイヤのロックをより効果的に防止できる。
【0121】
本実施の形態では、車輪速−励振ブレーキ圧力ゲインにより制御系を構成しているが、前述のように、ブレーキ圧力の励振による微小振幅を一定にした場合では、車輪速微小振幅のみで構成可能であり、逆に車輪速微小振幅を一定にするようにブレーキ圧力の励振を行なった場合では、ブレーキ圧力微小振幅のみからタイヤがロックに近いか判断し、指令値を計算することができる。
【0122】
この実施の形態も、現行のABS制御装置を流用する形で実現しており、ブレーキバルブの動作方法を変えるだけで実現可能である。このことは現行システムからの変更を容易なものとしている。また、車体速度の推定を必要としないために車体加減速検出のためのGセンサ等を不要とし、ハードウエアの簡素化が行なわれる。さらに、ブレーキ圧力励振の周波数は数十Hz程度のものであり、十分微小な励振振幅とすることで搭乗者に不快感を与えることなく実現可能である。
【0123】
(第9の実施の形態)
第1の実施の形態のABS制御装置では、摩擦係数μがピークとなる微小励振ゲインgd が、車輪速度によらず一定であると仮定し、検出された微小励振ゲインgd が基準値gs より小さいときに、ブレーキ力を減少させるように制御して、ピークμ付近に固定し、タイヤがグリップした状態での最大のブレーキ力を実現している。
【0124】
しかし、ピークμの状態における微小励振ゲインgd は、車速が低速になるほど大きくなることが実験的にわかっている。そこで、第9の実施の形態では、車速に関連した物理量の1つである車輪速度に依存させて基準値gs を変化させることによって、車速に応じて変化する微小励振ゲインgd と基準値gs との差分に基づくブレーキ制御を最適にしている。
【0125】
本実施の形態の構成ブロックを図32に示す。なお、第1の実施の形態と同一の構成要件は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0126】
図32に示すように、第1の実施の形態との相違点は、車輪速度ωw がブレーキ力低減指令演算部25に入力されるという点である。
【0127】
このブレーキ力低減指令演算部25は、図33に示すように、入力された車輪速度ωw に基づいて最適な基準値を算出し、これを指令ゲインgs として出力する指令ゲイン演算部80をさらに含んで構成されている。この指令ゲイン演算部80には、指令ゲインgs を、車輪速度ωw に応じてどのように変化させるかを示すテーブルが内部メモリに格納されている。
【0128】
このテーブルにおける車輪速度ωw と指令ゲインgs の詳細な関係は、図34に示すように、車輪速度ωw が高速のときの指令ゲインgs は小さく、低速になるに従って指令ゲインgs は大きくなるように、すなわち指令ゲインgs が車輪速度ωw に応じて単調減少するように定められている。これは、車輪速度ωw が低速になるほど大きくなる微小励振ゲインgd に対応するものである。
【0129】
この指令ゲイン演算部80は、車輪速度ωw が入力されると、図34の関係を示すテーブルを参照して、入力された車輪速度ωw に対応する指令ゲインgs の値を求め、これを出力する。従って、入力される車輪速度ωw が小さくなるに従い、大きい値の指令ゲインgs を出力する。
【0130】
演算部31は微小励振ゲインgd を演算するが、前述したようにこの微小励振ゲインgd も、車輪速度ωw が小さくなるに従い大きい値に変化する。
【0131】
次に、演算部31により演算された微小励振ゲインgd と、指令ゲイン演算部80により演算された指令ゲインgs との差分gd −gs がPI制御器32に入力され、この差分に基づいて低減ブレーキ力が演算される。正値除去部33では、演算された低減ブレーキ力から正値を除去して、低減ブレーキ力指令Pr として出力する。
【0132】
この低減ブレーキ力指令Pr による制御では、微小励振ゲインgd が指令ゲインgs より大きければ、タイヤがグリップしているものとして、平均ブレーキ力Pm を維持し、逆に微小励振ゲインgd が指令ゲインgs より小さくなれば、摩擦係数がピークμに近付きつつあるため平均ブレーキ力Pm を減少させる。このとき、車輪速度ωw の変化に伴って微小励振ゲインgd が変化するが、この変化をキャンセルするように指令ゲインgs も変化させるため、各速度においてピークμを維持する最適なブレーキ力の制御が可能となる。
【0133】
以上のように、車輪速度ωw に依存して指令ゲインgs を変化させることにより、各車速においてタイヤがグリップした状態での最大のブレーキ力を実現でき、停止距離や停止時間の短縮化が図れる。
【0134】
なお、本実施の形態においては、車輪速度ωw に依存させて指令ゲインgs を変化させたが、車速又は車輪速度ωw 以外の車速に関連した物理量に依存させて変化させても良い。
【0135】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1〜8の発明によれば、車体速度を推定することなく、車輪速度の振動特性の変化を検出することによってアンチロックブレーキ動作を行なっているので、車輪共振系の共振周波数をタイヤがグリップしている時の値に保ちつつ、タイヤのロックを防ぎ安定なアンチロックブレーキ動作を行うことができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のアンチロックブレーキ制御装置で用いられる車体速度の推定方法の概要を示す線図である。
【図2】タイヤと路面との間の摩擦係数μのスリップ率Sに対する特性を示す線図である。
【図3】従来の車体速度推定部を用いたABS制御装置のブロック図である。
【図4】本発明のピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図5】車両の力学モデルを示す図である。
【図6】車両の力学モデルを回転軸換算したモデルを示す図である。
【図7】本発明のピークμ追従ABS制御系の通常走行時の概念図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図9】滑り状態判定部の構成例を示すブロック図である。
【図10】共振周波数の上昇とタイヤグリップ時の共振周波数成分のゲイン減少を示す線図である。
【図11】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブロック図である。
【図12】車輪に加えるブレーキ力の概形を示す線図である。
【図13】ブレーキ部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図14】バルブ指令生成部の構成を示すブロック図である。
【図15】車輪へ加えるブレーキ力の励振波形を示す線図である。
【図16】(1)〜(4)は第1の実施の形態の制御系の各部の動作を示す線図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置の機能ブロック図である。
【図18】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブロック図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図20】微小ブレーキ力励振指令演算部の構成例を示すブロック図である。
【図21】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブロック図である。
【図22】本発明の第4の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図23】滑り状態判定部の構成例を示すブロック図である。
【図24】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブロック図である。
【図25】滑り状態判定部の構成例を示すブロック図である。
【図26】圧電素子によるブレーキ力励振部の構成例を示すブロック図である。
【図27】本発明の第7の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図28】上記実施の形態の滑り状態判定部の構成例を示す図である。
【図29】上記実施の形態のブレーキ圧力低減指令演算部の構成例を示す図である。
【図30】本発明の第8の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図31】上記実施の形態のブレーキ圧力低減指令演算部の構成例を示す図である。
【図32】本発明の第9の実施の形態であるピークμ追従ABS制御装置のブロック図である。
【図33】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブロック図である。
【図34】車輪速度ωw に応じて指令ゲインgs を変化させる関係を示す図である。
【符号の説明】
22 車両運動系
23 振幅値検出部
24 運転者走査部
25 ブレーキ力低減指令部
26 微小ブレーキ力励振指定演算部
27 ブレーキバルブドライバ
Claims (8)
- 車輪速度を検出する検出手段と、
該車輪速度のみに基づいて、車体速度を推定することなく、検出された振動特性に基づいてタイヤと路面との間の摩擦係数が略ピーク値となるスリップ率以下のスリップ率になるように車輪に作用する平均的なブレーキ力を制御する制御手段と、
を含むアンチロックブレーキ制御装置。 - 車輪に作用するブレーキ力を所定周波数で微小励振する励振手段をさらに含む請求項1のアンチロックブレーキ制御装置。
- 車輪速度の周波数分布から得られるタイヤのグリップ状態によって変化する所定周波数成分又は所定周波数成分の振幅から共振周波数を求める共振周波数検出手段と、
該共振周波数が基準値より大きいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるよう制御する制御手段と、
を含むアンチロックブレーキ制御装置。 - 車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数で車輪に作用するブレーキ力を微小励振する励振手段と、
車輪速度の前記共振周波数成分の振幅を検出する検出手段と、
ブレーキ力の微小励振の振幅に対する車輪速度の前記共振周波数成分の振幅のゲインが基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する制御手段と、
を含むアンチロックブレーキ制御装置。 - 車速又は車速に関連した物理量を検出する物理量検出手段をさらに含み、
前記物理量検出手段により検出された車速又は車速に関連した物理量に依存させて、前記基準値を変化させる請求項4のアンチロックブレーキ制御装置。 - 車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数でかつ一定振幅で車輪に作用するブレーキ力を微小励振する励振手段と、
車輪速度の前記共振周波数成分の振幅を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された車輪速度の前記共振周波数成分の振幅が基準値より小さいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する制御手段と、
を含むアンチロックブレーキ制御装置。 - 車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数でかつ振幅指令に応じて車輪に作用するブレーキ力を微小励振する励振手段と、
車輪速度の前記共振周波数成分の振幅を検出する検出手段と、
検出手段で検出された車輪速度の前記共振周波数成分の振幅が基準値になるように前記振幅指令を求めると共に、該振幅指令が基準振幅値より大きいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する手段を有する制御手段と、
を含むアンチロックブレーキ制御装置。 - 車体と車輪と路面とによって構成される振動系の共振周波数で車輪に作用するブレーキ力を微小励振する励振手段と、
車輪速度を検出する検出手段と、
ブレーキ力の振幅に対する車輪速度の振幅のゲインが最大となるときの周波数が基準値より大きいときに車輪に作用する平均的なブレーキ力を減少させるように制御する制御手段と、
を含むアンチロックブレーキ制御装置。
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