JPH11263152A - 制駆動力制御装置 - Google Patents

制駆動力制御装置

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JPH11263152A
JPH11263152A JP10069047A JP6904798A JPH11263152A JP H11263152 A JPH11263152 A JP H11263152A JP 10069047 A JP10069047 A JP 10069047A JP 6904798 A JP6904798 A JP 6904798A JP H11263152 A JPH11263152 A JP H11263152A
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JP
Japan
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braking
wheel
force
driving force
frequency
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Application number
JP10069047A
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English (en)
Inventor
Katsuhiro Asano
勝宏 浅野
Hiroyuki Yamaguchi
裕之 山口
Hidekazu Ono
英一 小野
Koji Umeno
孝治 梅野
Masaru Sugai
賢 菅井
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Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 路面摩擦力の限界を越えたオーバーシュート
を回避する。 【解決手段】 車輪速度を検出する車輪速度検出部30
と、車輪速度の振動成分を分析し、車体と車輪と路面と
から構成される車輪共振系の振動特性を演算する振動特
性演算部32と、車輪減速度等に基づいてVSC又はA
BS制御演算を行い目標制動力を算出するVSC・AB
S制御部34と、演算された振動特性に基づいて高域遮
断周波数を設定し、目標制動力の該高域遮断周波数以上
の高域成分を遮断する高域遮断部36と、高域成分が遮
断された目標制動力に追従するようにホイールシリンダ
圧の平均値を制御するホイールシリンダ油圧制御部38
と、から構成する。車輪共振系の振動特性に基づき目標
制動力の高域成分を遮断して制動力を緩やかに変化させ
るので、摩擦力の限界を越えたオーバーシュートを回避
してタイヤロック等を確実に防止できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車輪に作用する制
駆動力(制動力及び駆動力のいずれか)を制御する制駆
動力制御装置に係り、より詳しくは、車輪の振動特性に
基づいて、目標制駆動力の高域成分を遮断することによ
り、印加した制駆動力以上の摩擦力が路面限界を越えて
オーバーシュートすることを防止した制駆動力制御装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車に対する安全志向の高まり
から、予防安全技術の研究開発が進められ、その代表的
な安全装置であるアンチロックブレーキ制御装置(AB
S装置)は、既に多くの乗用車に装備されている。
【0003】このABS装置は、検出された車輪速度や
車輪減速度などの車輪挙動量に基づいて、タイヤと路面
との間の摩擦係数μがピーク値(ピークμ)に追従する
ような目標制動力(目標ブレーキ圧)を演算し、該目標
制動力に追従するように、車輪に作用する制動力(ブレ
ーキ圧)を制御する。例えば、車輪減速度が一定値(−
a)を越えたとき、そのときのブレーキ圧よりも低い目
標ブレーキ圧を設定し、該目標値に追従させてブレーキ
圧を低下させる制御を行うことにより、ピークμの状態
を越えてタイヤがロックされるのを防止している。ま
た、制動中において、ピークμとなるスリップ率よりも
遙かに小さいスリップ率の領域であると判定した場合に
は、目標ブレーキ圧を上げてピークμ直前のスリップ率
の領域となるようにブレーキ圧を上昇させる制御を行
う。これにより、ブレーキ制動効果が高められ、制動距
離を短縮化することができる。
【0004】また、上記ABS装置以外の制動力制御装
置としては、VSC(Vehicle Stability Contorol) 装
置などがある。このVSC装置は、車輪加速度、ヨーレ
ート、ハンドル操作角、及びブレーキ圧等の車両状態量
に基づいて、各車輪の目標制動力を演算することによ
り、車両の挙動を安定化させるための制動力の目標値追
従制御を行う。
【0005】さらに、電気自動車(EV)の登場によ
り、制動力だけでなく、駆動力(EVの場合、ホイール
モータの発生トルク)についても応答性の良い制御が可
能となったので、EVへの駆動力制御装置の適用も可能
である。この駆動力制御装置では、ドライバの加速要求
に基づいて目標駆動力の演算を行い、駆動力の目標値追
従制御を行う。なお、電気自動車の場合、ドライバの減
速要求に基づいて目標制動力の演算を行うことにより制
動力の目標値追従制御も可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の制駆動力演算装置(制動力及び駆動力の少なくとも
いずれかの制御が可能な制御装置)は、以下のような問
題がある。
【0007】すなわち、図5(a)、(b)(左図)に
示すように、車両発進時或いは高速走行時等に急激に増
大するステップ的な制駆動力を車輪に印加した場合、該
車輪とタイヤバネを介して接続されるタイヤトレッドが
回転振動しようとするので、タイヤと路面との間に発生
する摩擦力が振動する。このとき、図5(a)に示すよ
うに、トレッドは、印加した制駆動力が最大となった状
態を略中心として振動し、印加した制駆動力に対し+側
に最大で2倍の路面摩擦力(発生力TL )が発生する。
【0008】車両発進時などでは、タイヤが路面にグリ
ップしている状態が多いため、この場合には、図5
(a)に示すように、略2倍の摩擦力でも摩擦力が路面
限界を越えることなく、ほぼ同じ振幅の状態が続くこと
となる(実際には僅かにスリップしているため、減衰す
る)。しかし、たとえ駆動力が路面の最大摩擦力以内で
あったとしても、急発進時での制駆動力のステップ変化
量によっては、路面摩擦力のオーバーシュートが最大摩
擦力の範囲を越えるおそれがあり、この場合、タイヤが
大きくスリップして空転する。
【0009】この場合の例として、路面摩擦係数μ=
0.25の路面上を初速0rad/secから発進した
ときの、車輪速度及び車速の時間的変化の実験シミュレ
−ション結果を図10(a)に、同条件下での駆動トル
ク及び路面摩擦トルクの時間的変化の実験シミュレーシ
ョン結果を図10(b)に示す。なお、車輪に関する各
物理量は、図10下部に示した通りであり、この路面に
おける最大摩擦トルクは、330N・m(スリップ率
0.2)である。
【0010】図10(b)に示すように、時刻0sec
で、最大摩擦トルク以下の約270N・mの駆動トルク
ステップ入力を与えた場合、その直後に、路面摩擦トル
クが、最大摩擦トルク330N・mで限界を越えてオー
バーシュートし、その後、急激に減衰してステップ入力
に満たない摩擦トルクとなることがわかる。この場合、
図10(a)では、車輪速度が増加する一方で、車速が
ほとんど0に近いスリップ状態である。すなわち、図1
0(b)のように最大摩擦トルクに近い駆動トルクのス
テップ入力を与えた場合、摩擦力が限界を越えたスリッ
プ状態に陥る。
【0011】また、高速走行時などに急ブレーキ或いは
急加速した場合、ステップ的に増加した目標制駆動力が
最大摩擦力の範囲を越えないように演算出力されても、
該目標値に追従した制駆動力により発生した摩擦力のオ
ーバーシュートが、最大摩擦力の範囲を越える可能性が
ある。この場合、図5(b)に示すように、摩擦力のオ
ーバーシュートが最大摩擦限界を超えたところで、タイ
ヤが大きくスリップしてタイヤロック(急ブレーキの場
合)或いは滑走状態(急加速の場合)が発生し、摩擦力
の振動が急速に減衰していくこととなる。
【0012】さらに、急激な制駆動力の印加によりタイ
ヤの限界である最大摩擦力が減少し、緩やかな制駆動力
の変化に対し、より小さい制駆動力でタイヤのロック又
は滑走状態が発生するおそれもある。このことを図12
及び図13を用いて以下に説明する。
【0013】制動無しの状態(図12(a)の場合)か
ら転動しながら緩やかに制動力を増やしていった場合
は、タイヤトレッドが接地した地点から滑り出す地点ま
での間にトレッドが徐々に変形するため、タイヤ粘着領
域は、図12(b)、(c)のようになる。この場合、
荷重の大きい部分が、大きく変形し大きな摩擦力を受け
持つ。また、荷重の小さい部分は、小さく変形するた
め、小さな摩擦力を受け持つ。ゆえに、摩擦力がバラン
ス良く配分され大きな制動力にも耐えられる。
【0014】一方、制動無しの状態(図13(a))か
らステップ的に最大制動力が加えられた場合には、タイ
ヤの接地面のトレッド変形は図13(b)のように一様
な変形となる。この場合、荷重の小さいところも大きく
変形するため、大きな摩擦力を受け持つことになる。ゆ
えに、荷重の小さい地点から滑り出し、雪崩現象的に全
滑り状態になる。
【0015】従って、ステップ的に制動力が加えられる
場合、持ちこたえることのできる限界の最大摩擦力は、
転動しながら緩やかに制動する場合に比べ低下する。こ
のことは、駆動力についても同様に成り立つ。
【0016】本発明は、上記事実に鑑みなされたもの
で、制駆動力を制御する場合において、オーバーシュー
トにより印加した制駆動力以上の摩擦力が発生すること
に起因するタイヤのロックやタイヤの空転を確実に防止
できる制駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的を実現するため
に、請求項1の発明は、車輪の振動特性を演算する振動
特性演算手段と、前記振動特性演算手段により演算され
た車輪の振動特性に基づいて、制駆動力の高域成分を遮
断するように制駆動力を制御する制駆動力制御手段と、
を含んで構成したものである。
【0018】本発明は、図5(c)に示すように、緩や
かに変化する制駆動力を印加したときには、該制駆動力
とほぼ等しい路面摩擦力が発生することに着眼し、車輪
の振動特性を考慮して、制駆動力から高域成分(例え
ば、所定の高域遮断周波数以上の振動成分)を遮断する
ことにより、路面摩擦力に限界を越えたオーバーシュー
トが発生しないように制駆動力の急激な変化を抑制する
ものである。
【0019】振動特性演算手段は、例えば上記高域遮断
周波数を決定するための振動特性を演算する手段として
構成することができる。この振動特性として、後述する
ように、車輪−タイヤ系の共振周波数や、制駆動力を印
加したときに発生する摩擦力振動に伴う車輪速度振動の
減衰特性などが挙げられる。車輪の振動系としては、後
述するホイ−ル−タイヤ捻じれバネ−車体系(車体と車
輪と路面とから構成される振動系)のみならず、懸架系
を含めた振動系にも拡張できる。
【0020】制駆動力を車輪に印加したとき、車輪回転
方向に対して、2次系で近似できる摩擦力の振動現象が
あり、既に述べたように、この振動現象は、摩擦力振動
が車輪と路面との間の最大摩擦力の範囲を越えようとす
る場合と越えない場合とで、それぞれ異なる特性を示
す。この摩擦力振動は、車輪速度の振動に反映されるの
で、車輪の振動特性に基づいて、最大摩擦力以下の範囲
に収まるように印加すべき制駆動力の変化特性を演算す
ることができる。
【0021】そこで、制駆動力制御手段は、演算された
振動特性に基づいて、制駆動力の高域成分を遮断するよ
うに制駆動力を制御する。例えば、図5(b)に示すよ
うに、摩擦力振動が限界を越えてオ−バ−シュ−トする
直前の状態のとき、摩擦力振動が減衰し、よって車輪速
度振動も減衰するので、この車輪速度振動の減衰特性に
基づいて、摩擦力が限界を越えるか否かを判定すること
ができる。また、摩擦力振動が限界を越えてオ−バ−シ
ュ−トする直前の状態のときは、摩擦力振動により発生
した車輪速度振動の共振周波数も変化するため、この共
振周波数の変化に基づいて、摩擦力が限界を越えるか否
かを判定することができる。
【0022】そして、摩擦力が限界を越えるような制駆
動力の変化と判定したとき、高域遮断周波数を低く設定
することにより、印加する制駆動力をより緩やかに変化
させ、限界を越えて摩擦力がオ−バ−シュ−トすること
を防止する。逆に、摩擦力が限界を越えない制駆動力の
変化と判定したときは、高域遮断周波数を高く設定し、
摩擦力が限界を越えない範囲内の比較的急な変化の制駆
動力の印加を許し、これにより車両の制御性を高めるこ
とができる。
【0023】印加する制駆動力の変化特性により、摩擦
力が限界を越えるか否かは、車輪速度(或いは車速)、
タイヤ空気圧などのタイヤ特性、路面種類、タイヤと路
面との間の摩擦状態、輪荷重の変化などの種々の条件に
より変化するが、本発明では、摩擦状態を敏感に反映す
る振動特性に基づいて制駆動力を制御するため、種々の
条件の相違に依らずに、タイヤロックや滑走状態を確実
に防止することができる。
【0024】本発明の第1の態様では、ステップ的な制
駆動力を車輪に印加しようとするとき(例えば、急発進
時、急ブレーキ時)は、予め解っているならばメモリ等
に記憶しておいた高域遮断周波数を用いて、このステッ
プ入力から該高域遮断周波数以上の振動成分を除去し、
実際には、緩やかに変化する制駆動力を車輪に印加す
る。そして、車輪速度、タイヤ空気圧などの変化により
共振周波数や減衰特性が変化するときは、オンラインで
振動特性を求め、該振動特性に対応する高域遮断周波数
を決定し、該高域遮断周波数に基づいて、制駆動力の高
域成分を遮断する。
【0025】ここで、図10の従来技術と同一条件下
で、本発明の制駆動力制御装置により制駆動力を制御し
たときの車輪速度及び車速の時間的変化の実験シミュレ
−ション結果を図11(a)に、同条件下での駆動トル
ク及び路面摩擦トルクの時間的変化の実験シミュレーシ
ョン結果を図11(b)に示す。なお、車輪に関する各
物理量は、図11下部に示した通りであり、この路面に
おける最大摩擦トルクは、330N・m(スリップ率
0.2)である。
【0026】図11(b)に示すように、本発明では、
高域成分が除去されるため、時刻0secで発進を開始
してから、最大摩擦トルク約270N・mに漸次近づく
駆動トルク入力が与えられる。この間、路面摩擦トルク
も振動するが、これは、最大振幅時でも、最大摩擦トル
ク330N・mを越えることなく、駆動トルクと共に緩
やかに増大する。この場合、図11(a)では、車輪速
度が、路面摩擦トルクの振動に対応して振動しながら増
加する一方で、車速も車輪速度の平均的な増加率とほぼ
同様の増加率で増大していくことがわかる。すなわち、
図11(b)のように高域成分が除去された駆動トルク
入力を与えた場合、摩擦力が限界を越えて滑走状態に陥
ることなく、車両を適切に発進させることが可能であ
る。 (車輪共振系の原理)車輪共振系のの詳細な原理につい
て図2〜図4の図面を参照して説明する。ここで、図2
は、車体と車輪と路面とから構成される車輪共振系の等
価力学モデル、図3は、図2の車輪共振系の振動特性を
規定するタイヤと路面との間の摩擦特性、図4は、車輪
共振系の振動モデルを示したものである。
【0027】まず、図2に示すように、重量Wの車体1
2を備えた車両が車体速度vで走行している時の車輪で
の振動現象を考察する。
【0028】図2の車輪共振系の力学モデルにおいて、
車輪(リム)13に作用した制駆動トルクT1 は、リム
とトレッド15との間のねじれに起因するばね要素14
(タイヤねじればね定数K)を介してトレッド(ベル
ト)15に伝達し、さらに該トレッド表面を介して路面
に作用する。このとき、車輪には、トレッドと路面との
接地点を基点として、路面から制駆動トルクT1 の反作
用としての発生力TL が作用する。
【0029】この発生力TL は、タイヤと路面との間の
摩擦力によるものであり、制駆動トルクT1 の方向と反
対方向に作用する。すなわち、発生力TL は、駆動時に
リムに駆動トルクT1 が作用する場合、車輪回転方向
(車輪13の回転速度ω1 の方向)と反対方向に作用
し、ブレーキ制動時に制動トルクT1 が作用する場合、
車輪の回転方向に作用する。
【0030】ここで、車両がある速度v(回転系に変換
した値をωv )で走行している時から、ブレーキをかけ
ていくとタイヤと路面との間にスリップが生じるが、こ
のときタイヤと路面との間に発生した発生力TL は、以
下の式で表されるスリップ率S1 に対して、図3の関数
関係のように変化する(スリップ率が正の領域)。な
お、ω2 は、トレッド15の回転速度である。
【0031】
【数1】
【0032】同様に、車両がある速度vで走行している
時から、ドライバがアクセルペダルを踏んで加速してい
く場合でも、タイヤと路面との間にスリップが生じる
が、このときの発生力TL は、以下の式で表されるスリ
ップ率S2 に対して、図3の関数関係のように変化する
(スリップ率が負の領域)。
【0033】
【数2】
【0034】ここで、車輪の回転方向を正方向とする
と、タイヤ−路面間の発生力TL を、次式のように表す
ことができる。
【0035】 制動時: TL =Wr Rμ(S1 ) (2) 駆動時: TL =−Wr Rμ(S2 ) (3) ここに、Wr は輪荷重、Rはタイヤの動荷重半径、μは
トレッド15と路面との間の摩擦係数である。なお、μ
は、スリップ率S1 或いはS2 の関数として表されてい
る。
【0036】図3のS−μ曲線に示すように、スリップ
率0のときは発生力TL は0であるが、ある正のスリッ
プ率において、制動時の発生力TL は正のピーク値をと
り、ある負のスリップ率において、制動時の発生力TL
は負のピーク値をとる関係が成り立っていることがわか
る。また、種々の動作点において、スリップ率に対する
発生力TL の勾配(μ勾配)は、例えばピーク値の時に
は0近傍の値というように、各々固有の値をとるので、
μ勾配を用いることによって、タイヤと路面との間のす
べり易さ(摩擦状態)を表すことができる。
【0037】ところで、図2の力学モデルが、ステップ
的な制駆動力の印加等により励振されると、その応答出
力として、車輪速度に振動成分Δω1 が現れる。
【0038】そこで、図2の車輪共振系の振動現象を、
車輪回転軸で等価的にモデル化した図4に示すモデルを
参照して考察する。
【0039】ここで、既に述べたように、制駆動力T1
は、路面と接するタイヤのトレッド15の表面を介して
路面に作用するが、この制駆動力T1 は実際には路面か
らの反作用として車体12に作用するため、車体重量の
回転軸換算の等価モデル17はタイヤのトレッドと路面
との間の摩擦要素16を介して車輪13と反対側に連結
したものとなる。これは、シャシーダイナモ装置のよう
に、車輪下の大きな慣性、すなわち車輪と反対側の質量
で車体の重量を模擬することができることと同様であ
る。
【0040】図2、図4でタイヤリムを含んだ車輪13
の慣性をJw 、リムとトレッド15との間のばね要素1
4のばね定数をK、トレッド15の慣性をJt 、車体1
2の重量Wの回転軸換算の等価モデル17の慣性をJV
とすると、系全体の特性は次の(4) 〜(6) 式のようにな
る。なお、以下では時間に関する1階微分d/dt
を「' 」で表し、時間に関する2階微分d2 /dt2
「" 」で表す。
【0041】 JW θw " = −T1 +K(θt −θw ) (4) Jt θt " = −K(θt −θw )+μWr R (5) Jv ωv ' = −μWr R (6) ここで、θw は車輪13の回転角、θw " は車輪13の
回転角加速度、θt はトレッド15の回転角、θt " は
トレッド15の回転角加速度である。すなわち、 ω1 = θw ' (7) ω2 = θw ' (8) である。
【0042】タイヤが路面にグリップしている時は、ト
レッド15と車体等価モデル17とが直結されていると
考えると、車体等価モデル17の慣性とトレッド15の
慣性との和の慣性と車輪13の慣性とが共振し、この時
の車輪共振系の共振周波数f 1 は、
【0043】
【数3】
【0044】となる。この状態は図3上では、ピークμ
(最大発生力)に至る前の路面μ勾配が正となる領域の
動作点に対応している。
【0045】逆に、タイヤの摩擦係数μがピークμに近
付く場合には、タイヤ表面の摩擦係数μがスリップ率S
に対して変化し難くなり、トレッド15の慣性の振動に
伴う成分は車体等価モデル17に影響しなくなる。つま
り等価的にトレッド15と車体等価モデル17とが分離
され、トレッド15と車輪13とが共振を起こすことに
なる。この時の車輪共振系の共振周波数f2 は、
【0046】
【数4】
【0047】となる。この状態は図3では、ピークμ近
傍で路面μ勾配が0となる動作点の領域に対応し、一般
にピークμの点に達すると瞬時に路面μ勾配が負となる
領域へと遷移する。このとき、制動時ではタイヤがロッ
クし、駆動時では、タイヤが空転する。
【0048】各慣性の大小関係は、 Jt <Jw <Jv (11) であり、これより、 f1 <f2 (12) になる。つまり、タイヤがロック或いは空転に至る場
合、車輪共振系の共振周波数が高周波側にずれることに
なる。また、この共振周波数の変化はピークμ付近で急
激に発生する。このようにタイヤと路面との間の摩擦状
態の変化によって、車輪共振系の振動特性が変化するの
で、逆に、この振動特性に基づいて、摩擦状態(例え
ば、図3の動作点のスリップ率領域)を推定することが
可能となる。
【0049】本発明は、単なる制駆動力の制御のみなら
ず、目標制駆動力に追従するように、制駆動力を制御す
る制駆動力制御装置(ABS装置、VSC装置等)にも
適用することができる。目標制駆動力へ追従しようと印
加される制駆動力がステップ的な変化となり、これによ
り、該制駆動力以上の摩擦力が発生して、路面摩擦力の
限界を越える場合もありうるからである。
【0050】例えば、本発明の第2態様として、図1に
示すように、車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、
前記車輪速度に基づいて、車輪の振動特性を演算する振
動特性演算手段と、目標制駆動力を演算する目標制駆動
力演算手段と、演算された目標制駆動力に基づいて、前
記目標制駆動力の高域成分を遮断する高域遮断手段と、
該高域遮断手段により高域成分が遮断された目標制駆動
力に追従するように、車輪に作用する制駆動力を制御す
る制駆動力制御手段と、から構成することができる。
【0051】ABS装置の場合、目標制駆動力演算手段
は、ピークμ(摩擦係数最大)に追従するように目標制
駆動力を演算する。このとき、車輪速度振動のパワース
ペクトルのピークを与える周波数fpeakは、ピークμ直
前の状態に移行すると、高周波数側に移行するので、こ
の周波数変化を観測することにより、ピークμ直前の状
態に移行していると判定してもよい。
【0052】そして、図1の高域遮断手段は、演算され
た振動特性(周波数fpeak)に基づいて、目標制駆動力
の高域成分を遮断する。例えば、振動特性によりタイヤ
と路面との間の摩擦状態を判定し、該摩擦状態がピーク
μとなるスリップ率より小さいスリップ率の領域である
場合、高域遮断周波数を高めに設定し、ある基準帯域よ
り高周波数側にある目標制駆動力の高域成分を遮断す
る。この場合、基準帯域より低い周波数の高域成分がま
だ残っているので、比較的急に目標制駆動力が変化す
る。
【0053】一方、判定された摩擦状態がピークμに近
づいたスリップ率の領域である場合、高域遮断周波数
を、ピークμに遠い領域にある前者の場合より、低く設
定する。これにより、前者の場合より広い周波数帯域の
高域成分が遮断されるので、緩やかに目標制駆動力が変
化する。
【0054】このように本発明の1つの実施態様では、
ピークμに遠い摩擦状態の場合は、制駆動力のステップ
的な変化量の2倍の摩擦力が発生しても余裕摩擦力(最
大摩擦力−発生した摩擦力)が大きい故に最大摩擦限界
を超えたオーバーシュートが起こらないので、比較的急
に変化する目標制駆動力を設定することにより、ピーク
μへの追従を促進する(図5(a)参照)。その一方
で、ピークμに近づいた状態では、余裕摩擦力が小さく
なるため、目標制駆動力を緩やかに増加させることによ
り摩擦力の増加を緩やかとし(図5(c)参照)、タイ
ヤスリップを起こすことなく、ピークμ直前の状態に維
持する制御を行う。これにより、本発明では、目標追従
制御の迅速性と、限界を越えた摩擦力のオーバーシュー
トを回避した安全走行と、を高いレベルで両立すること
ができる。
【0055】なお、最大摩擦力は、摩擦係数μが同じ状
態でも、輪荷重Wr によって変化することは(2) 、(3)
式より明らかである。車両の加減速度運動や旋回運動に
よって、各車輪の輪荷重Wr は変化する。このとき、輪
荷重Wr が減少した車輪では、最大摩擦力が減少し、輪
荷重Wr が増加した車輪では、最大摩擦力が増加する。
従って、輪荷重が減少した車輪では、印加すべき制駆動
力を抑制することにより限界を越えたオーバーシュート
を防止する必要がある。
【0056】上記振動特性は、輪荷重Wr の変化も反映
しているので、例えば、振動特性に基づいて輪荷重が減
小したと判定された車輪については、緩やかに摩擦力が
変化するように目標制駆動力の高域成分を遮断すること
によってタイヤロック等を防止することができる。
【0057】
【発明の実施の形態】以下、本発明の制駆動力制御装置
の各実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。 (第1の実施の形態)第1の実施の形態は、本発明の制
動力制御装置をVSC装置若しくはABS装置に適用し
たものであり、図6には、該装置の構成が示されてい
る。同図に示すように、第1の実施の形態に係る制動力
制御装置は、各車輪の車輪速度信号ωを検出する車輪速
度検出部20と、検出された車輪速度信号ωに基づい
て、振動特性Fd を各車輪毎に演算する振動特性演算部
32と、車輪速度又は該車輪速度から演算された車輪減
速度に基づいて、VSC又はABS制御演算を行い、各
車輪の目標制動力Tc を演算出力するVSC・ABS制
御部34と、振動特性Fd に応じた高域遮断周波数f
cut を設定し、目標制動力Tc から該高域遮断周波数f
cut 以上の高域成分を遮断する高域遮断部36と、各車
輪のホイールシリンダ油圧の平均値を、高域遮断部36
により高域成分が遮断された目標制動力Tc ’に追従さ
せるように各車輪毎に制御するホイールシリンダ油圧制
御部38と、から構成される。
【0058】本実施の形態では、目標制動力に追従する
ように車輪に作用する制動力を変化させる場合、ホイー
ルシリンダ圧をステップ的に変化させることにより平均
的な制動力の制御を行っている。例えば、制動力を急激
に変化させる場合は、大きな変化量で変化させ、緩やか
に変化させる場合は、小さな変化量を何回かに分けて変
化させる。
【0059】そして、振動特性演算部32では、ホイー
ルシリンダ油圧制御部38から、このステップ変化の時
点を示す同期信号及びホイールシリンダ圧のステップ的
な変化量ΔPを得ている。この振動特性演算部32は、
同期信号に基づいてステップ変化の時点を検知し、該時
点或いは時間遅れを考慮して該時点の所定時間経過後か
ら車輪速度のステップ応答成分の検出を開始する。
【0060】この振動特性演算部32の詳細な演算手段
について以下に説明する。なお、この演算手段は、車輪
速度ステップ応答成分の振動特性として、車輪速度振動
の減衰特性及び共振周波数のいずれを抽出するかによ
り、例えば図14の第1態様、図15の第2態様とがあ
る。
【0061】図14の第1態様は、車輪速度ステップ応
答成分のうちタイヤグリップ時の共振周波数f1 振動成
分の時間変化特性を検出するもので、ステップ応答検出
時の車輪速度信号ω1 から、タイヤグリップ時の共振周
波数f1 を含む所定帯域の周波数成分のみを通過させる
帯域通過フィルタ62と、該フィルタの出力信号を整流
化する全波整流器63と、該全波整流器の出力信号の低
域周波数成分のみを通過させることによって直流平滑化
された信号ωd を出力する低域通過フィルタ64と、該
フィルタの出力信号ωd をホイールシリンダ圧のステッ
プ的な変化量ΔPで除算する除算器65と、該出力信号
ωd /ΔPに基づいて、車輪速度ステップ応答成分の時
間変化特性を演算する時間変化特性演算部66と、から
構成される。
【0062】図14に示すように、低域通過フィルタ6
4は、入力信号を直流平滑化するので、出力信号ω
d は、車輪速度ステップ応答成分の共振周波数f1 近傍
での平均振幅値となる。従って、時間変化特性演算部6
6によって、この振幅値の時間変化特性を求めることが
可能となる。なお、この振幅値は、ステップ的な制動力
の変化量によって異なってくるので、この変化量によら
ずに普遍的な時間変化特性を抽出するために、ホイール
シリンダ圧のステップ的な変化量ΔP(変化直後のホイ
ールシリンダ圧−変化直前のホイールシリンダ圧)で出
力信号ωd を除算することにより、正規化された振幅値
ωd /ΔPを得ている。すなわち、振動特性として、制
動力印加により発生した車輪速度振動の振幅減衰率が求
められることになる。この振幅減衰率は、既に述べたよ
うに、印加した制動力により発生する路面での摩擦力が
路面限界に近づいたか否かにより異なる特性を示す。
【0063】具体的な振幅減衰率の演算方法として、例
えば、最初の所定時間での平均振幅値と、次に続く所定
時間での平均振幅値とを求め、該平均振幅値の比率を減
衰特性として求める方法がある。また、他の方法とし
て、車輪速度ステップ応答成分が減衰する場合には、ス
テップ応答検出時の振幅Aが、A/e(eは1より大き
い定数、例えば自然定数とする)まで減衰するに要した
時間Tを減衰特性として抽出することができる。
【0064】さらに、図15の第2態様は、車輪速度ス
テップ応答成分の共振周波数を振動特性として抽出する
もので、車輪速度ステップ応答成分を所定サンプル時間
τ毎に離散化した時系列データに対し、高速フーリエ変
換することにより周波数系列データに変換するFFT処
理部71と、この周波数系列データからゲインが極大と
なる共振周波数を抽出する抽出部72と、から構成され
る。なお、この共振周波数は、既に述べたように、印加
した制動力により発生する路面上の摩擦力が路面限界に
近づいたか否かにより異なる特性を示す。
【0065】また、VSC・ABS制御部34では、例
えば、ABS制御を行う場合、ドライバの踏力に対応し
たホイールシリンダ圧を目標制動力として設定すると共
に、車輪速度ωより演算された車輪減速度がある一定の
減速度−a以上となったとき、ピークμを越えてタイヤ
ロックのおそれがあるとみなして、該目標制動力を低減
させる演算を行う。演算された目標制動力は、ホイール
シリンダ油圧制御部38への指令信号として出力され
る。
【0066】なお、ピークμであるか否かの判断には、
車輪減速度以外の物理量、例えば、スリップ速度に対す
る制動トルクの勾配(制動トルク勾配)を演算し、該制
動トルク勾配が基準値(0近傍の正値)になったときピ
ークμ直前の状態と判断することができる。この制動ト
ルク勾配は、車輪速度の時系列データやブレーキトルク
の時系列データなどから演算してもよい。このような制
動トルク勾配を用いた場合、VSC・ABS制御部34
を、制動トルク勾配と基準値との偏差を0に一致させる
演算を行うPI制御器により構成してもよい。勿論、微
分制御も含めたPID制御器として構成してもよいし、
さらに、いわゆるH∞制御や2自由度制御などを行うロ
バスト制御器など、より高次の制御を行う制御器により
構成してもよい。
【0067】さらに、VSC・ABS制御部34により
VSC制御を行う場合、ヨーレート、ハンドル操作角、
及びブレーキ圧等の車両状態量に基づいて、車両の挙動
を安定化させるための各車輪の目標制動力を演算する。
【0068】次に、高域遮断部36の詳細な構成を、図
8を用いて説明する。図8に示すように、高域遮断部3
6は、車速補償された振動特性Fd (ここでは、振幅減
衰率又は共振周波数)を用いて現在走行中の路面とタイ
ヤとの間の摩擦状態を判定する摩擦状態判定部40と、
判定された摩擦状態k(kは、1,2,...nのいずれか)に
対応するフィルタパラメータkを選択するフィルタパラ
メータ選択部41と、選択されたフィルタパラメータk
に対応する高域遮断周波数fcu tkのデジタルフィルタと
して構成される高域遮断フィルタ42と、から構成され
る。
【0069】このうち高域遮断フィルタ42は、入力さ
れた目標制動力Tc に対し、0から高域遮断周波数f
cut までの周波数帯域の振動成分のみを通過させ、f
cut 以上の高域成分を遮断して目標制動力Tc ’として
出力するローパスフィルタで構成することができる。又
は、ある一定の周波数f0 から高域遮断周波数fcut
での周波数帯域のみを通過させるバンドパスフィルタと
して構成してもよい。
【0070】また、摩擦状態判定部40は、図3の摩擦
特性における各動作点の摩擦状態(制動力制御装置の場
合、S1 領域のみを対象とする)を、n段階に分類する
ことにより得られる摩擦状態1,2,...,nにおい
て実測された各々の振動特性の値Fd1
d2,....,Fdn(ここでは、Gd1
d2,...,Gdn)をデータとして備えている。摩擦
状態判定部40では、入力された振動特性Fd と、これ
らのデータFd1,Fd2,....,Fdnとの差を各々演
算し、最も差が小さかったデータに対応する摩擦状態k
を現時点の摩擦状態として選択する。
【0071】なお、摩擦状態の分類は、印加した制動力
以上の摩擦力が限界にどれだけ離れているかに従って、
例えば、摩擦状態1(μ勾配が正値)、摩擦状態2(μ
勾配が0近傍)、摩擦状態3(μ勾配が負)というよう
に分類することができる。勿論、摩擦状態をもっときめ
細かく分類することもできる。
【0072】また、フィルタパラメータ選択部41は、
摩擦状態1,2,...,nに応じて各々設定されたフ
ィルタパラメータ1,2,...,nのデータを備えて
いる。これらのフィルタパラメータ1,2,...,n
により構成された高域遮断フィルタ42の高域遮断周波
数は、それぞれfcut1,fcut2,...,fcutnとな
る。これらの高域遮断周波数は、μ勾配が0近傍の摩擦
状態の場合、μ勾配が正値の摩擦状態の場合よりも、低
い周波数に設定されている。すなわち、発生した摩擦力
が限界に近づくほど、緩やかに制動力を変化させる必要
から、より広い周波数範囲の高域成分を遮断することと
している。
【0073】ただし、μ勾配が負値となる摩擦状態の場
合、タイヤロックのおそれがあり、直ちに制動力を急激
に減少させる必要があるので、高域遮断周波数を最も高
く設定し、ステップ的な変化を許容するようにしてい
る。なお、このような場合や、μ勾配が大きい正値とな
る摩擦状態の場合には、目標制動力Tc の指令信号を高
域遮断フィルタ42を通過させないで、そのまま出力す
るようにしてもよい。
【0074】次に、ホイールシリンダ油圧制御部38の
指令により動作するブレーキ部の構成を図9を用いて説
明する。
【0075】図9に示すように、ブレーキ部45は、制
御バルブ52、マスタシリンダ48、ホイールシリンダ
56、リザーバー58及びオイルポンプ60を備えてい
る。
【0076】このうちブレーキペダル46は、ブレーキ
ペダル46の踏力に応じて増圧するマスタシリンダ48
を介して制御バルブ52の増圧バルブ50へ接続されて
いる。また、制御バルブ52は、減圧バルブ54を介し
て低圧源としてのリザーバー58へ接続されている。さ
らに、制御バルブ52には、該制御バルブによって供給
されたブレーキ圧をブレーキディスクに加えるためのホ
イールシリンダ56が接続されている。この制御バルブ
52は、ドライバの踏力によるブレーキ圧Pdを供給す
ると共に、ホイールシリンダ油圧制御部38から入力さ
れた増圧・減圧指令に基づいて増圧バルブ50及び減圧
バルブ54の開閉を制御する。
【0077】なお、この制御バルブ52が増圧バルブ5
0のみを開くように制御されると、ホイールシリンダ5
6の油圧(ホイールシリンダ圧)は、ドライバがブレー
キペダル46を踏み込むことによって得られる圧力に比
例したマスタシリンダ48の油圧(マスタシリンダ圧)
まで上昇する。逆に減圧バルブ54のみを開くように制
御されると、ホイールシリンダ圧は、ほぼ大気圧のリザ
ーバ58の圧力(リザーバ圧)まで減少する。また、両
方のバルブを閉じるように制御されると、ホイールシリ
ンダ圧は保持される。
【0078】ホイールシリンダ56によりブレーキディ
スクに加えられる平均制動力は、マスタシリンダ48の
高油圧が供給される増圧時間とリザーバー58の低油圧
が供給される減圧時間との比率(デューティ比)、及び
圧力センサ等により検出されたマスタシリンダ圧に依存
する。従って、ホイールシリンダ油圧制御部38は、検
出されたマスタシリンダ圧に応じて、演算された目標平
均制動力を実現するための増圧時間及び減圧時間を演算
する。
【0079】次に、第1の実施の形態の作用を説明す
る。VSC又はAB制御を開始するための所定条件が成
立すると、VSC・ABS制御部34が、検出された車
輪速度等に基づく目標制動力Tc を演算出力する。ま
た、振動特性演算部32は、ホイールシリンダ圧の印加
により発生した車輪速度の振動成分を分析し、車輪共振
系の振動特性Fd (振幅減衰率又は共振周波数)を演算
する。ここで、この振動特性Fd は、車輪速度を用い
て、車速依存性を補償された値に変換してもよい。
【0080】高域遮断部36では、演算された振動特性
d に基づき、摩擦状態kが判定され、該摩擦状態kに
対応したフィルタパラメータkが選択される。そして、
選択されたフィルタパラメータkから構成された高域遮
断フィルタ42を目標制動力Tc の信号が通過する。こ
のとき、目標制動力Tc の周波数成分のうち、高域遮断
周波数fcutk以下の低域成分のみが通過し、目標制動力
c ’の信号として出力される。これにより、発生した
摩擦力振動が限界から遠い摩擦状態では、高域遮断周波
数が高く設定されるので、目標制動力の比較的急な変化
が許容される。一方、摩擦力振動がオーバーシュートに
より限界に近づくような摩擦状態では、高域遮断周波数
が低く設定されるので、目標制動力は緩やかに変化す
る。
【0081】そして、ホイールシリンダ油圧制御部38
が、高域成分が遮断された目標制動力Tc ’に追従する
ように、ホイールシリンダ圧の平均値を制御する。
【0082】このように本実施の形態では、ピークμに
遠い摩擦状態と判定した場合は、制動力のステップ的な
変化量の2倍の摩擦力が発生してもオーバーシュートが
起こらないので、比較的急激に変化する目標制動力を許
容することにより、制動力の急激な変化を引き起こして
ピークμへの追従を促進する。一方、ピークμに近づい
た摩擦状態と判定した場合には、制動力の急激な増大は
タイヤロックのおそれがあるため、目標制駆動力を緩や
かに増加させることにより摩擦力の増加を緩やかとし
(図5(c)参照)、ピークμ直前の状態に維持する制
御を行う。これにより、本実施の形態では、目標追従制
御の迅速性と、タイヤロックを回避した安全走行とを高
いレベルで両立することができる。また、印加した制動
力の変化特性により、路面摩擦力が限界を越えるか否か
は、車輪速度(或いは車速)、タイヤ空気圧などのタイ
ヤ特性、路面種類、タイヤと路面との間の摩擦状態、輪
荷重の変化などの種々の条件により変化するが、本実施
形態では、摩擦状態を敏感に反映する振幅減衰率や共振
周波数に基づいて制駆動力を制御するため、種々の条件
の相違に依らずに、タイヤロックを確実に防止すること
ができる。勿論、図12に示すように、最大摩擦力が制
動力の変化特性に応じて変化する場合にも対応できる。 (第2の実施の形態)第1の実施の形態と同様の目標制
動力の高域遮断処理は、電気自動車(EV)におけるE
V制駆動力制御装置に応用することができる。このよう
なEV制駆動力制御装置の構成を、第2の実施の形態と
して図7に示す。なお、第1の実施の形態と同様の構成
については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0083】図7に示すように、第2の実施の形態に係
るEV制駆動力制御装置は、各車輪の車輪速度信号ωを
検出する車輪速度検出部20と、検出された車輪速度信
号ωから、車輪共振系における制駆動時の振動特性Fd
を各車輪毎に演算する振動特性演算部33と、ドライバ
の加速要求又は減速要求に基づき、目標制駆動力Rc
演算する目標制駆動力演算部35と、振動特性Fd に応
じた高域遮断周波数f cut を設定し、目標制駆動力Rc
から該高域遮断周波数fcut 以上の高域成分を遮断する
高域遮断部37と、ホイールモータの発生トルクの平均
値を、高域遮断部36により高域成分が遮断された目標
制駆動力Rc ’に追従させるように各車輪毎に制御する
ホイールモータトルク制御部39と、から構成される。
【0084】このうちホイールモータトルク制御部39
は、第1の実施の形態に係るホイールシリンダ油圧制御
部38が制動力のみの制御を行っていたのに対し、電気
自動車が応答性の高いホイールモータを用いているた
め、制動力及び駆動力のいずれも制御することが可能で
ある。
【0085】これに対応して、高域遮断部37の摩擦状
態判定部40(図8)では、図3の摩擦特性における各
動作点の摩擦状態が、S1 領域及びS2 領域の両方にわ
たって分類されている。また、目標制動力だけでなく目
標駆動力に対しても、判定された摩擦状態に対応して設
定された最適な高域遮断周波数により高域成分が遮断さ
れる。
【0086】このように第2の実施の形態では、駆動制
御についても第1の実施の形態と同様の効果を奏するこ
とができる。
【0087】以上が本発明の各実施の形態であるが、本
発明は、上記例にのみ限定されるものではなく、本発明
の要旨を逸脱しない範囲内において任意好適に変更可能
である。例えば、車両発進時などのように目標制駆動力
に追従する以外の場合でも、駆動力を高域遮断するよう
に制御することにより、滑走状態を防止できる。
【0088】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
車輪の振動特性に基づいて制駆動力の高域成分を遮断す
るように制御するようにしたので、オーバーシュートに
より印加した制駆動力以上の摩擦力が発生することに起
因するタイヤのロックやタイヤの空転を確実に防止する
ことができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る車輪共振系と等価な力学モデルを
示す図である。
【図3】本発明に係る車輪共振系におけるタイヤ−路面
間の摩擦特性を示す図である。
【図4】本発明に係る車輪共振系の振動モデルの概念図
である。
【図5】路面摩擦力の振動特性を示す図であって、
(a)は、発進時に印加されるステップ的な制駆動力の
変化に対する摩擦力振動、(b)は、高速走行時に印加
されるステップ的な制駆動力の変化に対する摩擦力振
動、(c)は、緩やかに制駆動力を変化させたときの摩
擦力変化を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るVSC装置又
はABS装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るEV制駆動力
制御装置の構成を示すブロック図である。
【図8】図6及び図7に示す高域遮断部の詳細な構成を
示すブロック図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ部の
ハードウェア構成を示すブロック図である。
【図10】車両発進時における従来技術の問題点を説明
するための図であって、(a)は車輪速度及び車速の時
間的変化、(b)は駆動トルク及び路面摩擦トルクの時
間的変化をそれぞれ示すグラフである。
【図11】車両発進時における本発明の効果を説明する
ための図であって、(a)は車輪速度及び車速の時間的
変化、(b)は駆動トルク及び路面摩擦トルクの時間的
変化をそれぞれ示すグラフである。
【図12】緩やかに制動した場合には、最大摩擦力が大
きな値を維持できることを説明するための図であって、
(a)は制動なしのトレッドの状態、(b)は弱い制動
時のトレッドの状態、(c)は強い制動時のトレッドの
状態をそれぞれ示す概念図である。
【図13】急激に制動した場合には、最大摩擦力が小さ
くなることを説明するための図であって、(a)は制動
なしのトレッドの状態、(b)は強い制動時のトレッド
の状態をそれぞれ示す概念図である。
【図14】本発明の第1実施形態に係る振動特性演算部
が振動特性として振幅減衰率を演算する場合の構成ブロ
ック図である。
【図15】本発明の第1実施形態に係る振動特性演算部
が振動特性として共振周波数を演算する場合の構成ブロ
ック図である。
【符号の説明】
30 車輪速度検出部 32 振動特性検出部 33 振動特性検出部 34 VSC・ABS制御部 35 目標制駆動力演算部 36 高域遮断部 37 高域遮断部 38 ホイールシリンダ油圧制御部 39 ホイールモータトルク制御部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小野 英一 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 梅野 孝治 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 菅井 賢 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車輪の振動特性を演算する振動特性演算
    手段と、 前記振動特性演算手段により演算された車輪の振動特性
    に基づいて、制駆動力の高域成分を遮断するように制駆
    動力を制御する制駆動力制御手段と、 を含む制駆動力制御装置。
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