JP3424535B2 - 路面状態推定装置 - Google Patents

路面状態推定装置

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JP3424535B2
JP3424535B2 JP32692197A JP32692197A JP3424535B2 JP 3424535 B2 JP3424535 B2 JP 3424535B2 JP 32692197 A JP32692197 A JP 32692197A JP 32692197 A JP32692197 A JP 32692197A JP 3424535 B2 JP3424535 B2 JP 3424535B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、路面状態推定装置
に係り、より詳しくは、車両が走行する路面の路面状態
を推定する路面状態推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、車輪と路面との間の摩擦係数
μがピーク値を超えて車輪がロック状態に移行する直前
に、車輪に作用するブレーキトルクを低下させることに
よって、車輪のロックを防止しピークμ値に追従制御す
るアンチロックブレーキ制御装置が提案されている。
【0003】ところで、車両がある速度で走行している
時、ブレーキをかけていくと車輪と路面との間にスリッ
プが生じるが、車輪と路面との間の摩擦係数μは、
(1)式で表されるスリップ率sに対し、図20のよう
に変化することが知られている。
【0004】
【数1】s = (V−Vw )/V・・・(1) ただし、Vは車体速度(角速度換算)、Vw は車輪速度
であり、よって、(V−Vw )はスリップ速度ΔVとな
る。
【0005】図20に示すように、このμ−s特性で
は、あるスリップ率(図20のA2領域)で摩擦係数μ
がピーク値をとるようになる。
【0006】そこで、特開平1−249559号公報に
は、車体速度の近似値、及び検出された車輪速度から
(1)式よりスリップ率を演算し、演算したスリップ率
が、予め設定してある基準スリップ率(ピークμを与え
るスリップ率)に略一致するように、ブレーキ力を制御
することにより、ピークμに追従するアンチロックブレ
ーキ制御装置が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、車輪が
走行する路面状態によってピークμとなるスリップ率が
異なる。このため、上記公報記載の発明のように固定さ
れた基準スリップ率の追従制御を行った場合、路面状態
によって制動距離が大きくなり過ぎたり、或いはピーク
μを超えてブレーキ制動されることによりタイヤロック
が発生するおそれがある。
【0008】この対策として路面状態を推定演算し、演
算された路面状態に応じて基準スリップ率を変化させる
必要があるが、路面状態を精度よく推定する技術がな
い。
【0009】本発明は、上記事実に鑑みて成されたもの
で、路面状態を精度よく推定することの可能な路面状態
推定装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的達成のため、請
求項1の発明は、車両の車輪の制動状態を表す第1の物
理量を検出する第1の検出手段と、前記車両の速度を検
出する第2の検出手段と、前記車輪のすべり易さを表し
かつ前記車輪が走行する路面状態、前記第1の物理量、
及び車両の速度に応じて定まる第2の物理量を検出する
第3の検出手段と、前記第1の検出手段により検出され
た第1の物理量及び前記第2の検出手段により検出され
た車速に基づいて、予め定められた複数の路面状態毎に
第2の物理量を演算する演算手段と、前記車輪の制動状
態を表す第1の物理量に対する前記第3の検出手段によ
り検出された第2の物理量の軌跡と、前記第1の物理量
に対する前記演算手段により複数の路面状態毎に演算さ
れた第2の物理量の軌跡の各々と、を比較する比較手段
と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記演算され
た軌跡の内の前記検出された軌跡に最も近い軌跡に対応
する路面状態を、前記車輪が走行している実際の路面状
態として推定する推定手段と、を備えている。
【0011】第1の検出手段は、車両の車輪の制動状態
を表す第1の物理量を検出する。ここで、第1の物理量
は、車輪に対する制動力やスリップ速度がある。
【0012】第2の検出手段は、車両の速度(車速)を
検出する。第3の検出手段は、車輪のすべり易さを表す
第2の物理量を検出する。この第2の物理量は、車輪が
走行する路面状態、第1の物理量、及び車両の速度に応
じて定まる。具体的には、第2の物理量は、路面と車輪
との間の摩擦係数又は車輪に対する制動トルクのすべり
速度に対する勾配である。即ち、これらの勾配が高い
と、車輪の周速が大きく、すべりにくい。一方、これら
の勾配が低いと、車輪の周速が小さく、すべり易い。よ
って、これらの勾配は、車輪のすべり易さを表す。
【0013】演算手段は、第1の検出手段により検出さ
れた第1の物理量及び第2の検出手段により検出された
車速に基づいて、予め定められた複数の路面状態毎に第
2の物理量を演算する。また、演算手段は、第1の物理
量と第2の物理量との車速に応じて定まる関係を複数の
路面状態毎に予め求めておき、検出された第1の物理量
及び車速に基づいて、複数の路面状態毎に第2の物理量
を演算してもよい。
【0014】比較手段は、車輪の制動状態を表す第1の
物理量に対する第3の検出手段により検出された第2の
物理量の軌跡と、第1の物理量に対する演算手段により
複数の路面状態毎に演算された第2の物理量の軌跡の各
々と、を比較する。推定手段は、比較手段の比較結果に
基づいて、上記演算された軌跡の内の上記検出された軌
跡に最も近い軌跡に対応する路面状態を、車輪が走行し
ている実際の路面状態として推定する。
【0015】このように、第2の物理量を検出し、検出
された第2の物理量の軌跡と、複数の路面状態各々に対
応して演算された第2の物理量の軌跡の各々と、を比較
するので、比較結果に基づいて、複数の路面状態各々に
対応して演算された軌跡の内の検出された軌跡に最も近
い軌跡を選択すれば、選択した軌跡に対応する路面状態
は車輪が走行している実際の路面状態に対応し、実際の
路面状態を精度よく推定することができる。
【0016】ところで、上記第2の物理量は、種々の原
因により誤差が含まれる。そこで、第1の検出手段は第
1の物理量を、第2の検出手段は車速を、第3の検出手
段は第2の物理量を、車輪に対して制動が開始されたと
きから所定時間毎に検出し、演算手段は、複数の路面状
態各々毎に第2の物理量を車輪に対して制動が開始され
たときから第1の物理量が所定量変化する毎に演算す
る。
【0017】そして、比較手段は、車輪に対して制動が
開始されたときから第1の物理量が所定量変化する毎
に、該所定時間毎に検出された第2の物理量と複数の路
面状態各々毎及び第1の物理量が所定量変化する毎に演
算された第2の物理量各々とを比較するようにしても
い。
【0018】このように、車輪に対して制動が開始され
たときから第1の物理量が所定量変化する毎に、所定時
間毎に検出された第2の物理量と、複数の路面状態各々
毎及び第1の物理量が所定量変化する毎に演算された物
理量各々と、を比較するので、誤差の影響を少なくする
ことができ、より精度よく路面状態を推定することがで
きる。請求項2の発明は、請求項1の発明において、前
記第1の検出手段は、前記第1の物理量として制動力を
検出し、前記演算手段は、すべり速度、制動力及び車速
の関係を路面状態毎に示した第1の関係式に基づいて、
路面状態毎のすべり速度を演算し、路面摩擦状態、制動
力及び車速の関係を路面状態毎に示した第2の関係式に
基づいて、路面状態毎の路面摩擦状態を演算し、演算さ
れた路面状態毎の路面摩擦状態の変化と演算された路面
状態毎のすべり速度の変化とに基づいて、路面状態毎に
前記第2の物理量として路面μ勾配基準値を演算するこ
とを特徴とする。請求項3の発明は、請求項2の発明に
おいて、前記第2の関係式に基づいて、前記路面状態推
定手段で推定された実際の路面状態に対応する最大路面
摩擦状態を推定する路面摩擦状態推定手段を更に備えた
ことを特徴とする。請求項4の発明は、請求項2または
3の発明において、前記演算手段で演算された路面状態
毎のすべり速度の中から、前記路面状態推定手段で推定
された実際の路面状態に対応するすべり速度を選択する
すべり速度選択手段を更に備えたことを特徴とする。請
求項5の発明は、請求項1の発明において、前記演算手
段は、μ勾配、第1の物理量及び車速の関係を路面状態
毎に示した関係式に基づいて、路面状態毎に前記第2の
物理量としてμ勾配基準値を演算することを特徴とす
る。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して詳細に説明する。
【0020】図1に示すように、本実施の形態に係る路
面状態推定装置は、車輪速度を検出する車輪速センサ2
8、車輪に作用する制動力を検出する制動力検出部3
4、及び路面μ勾配として後述する微小ゲインを演算す
る微小ゲイン演算部36、及び路面状態及びすべり速度
を演算する演算回路10を備えている。
【0021】演算回路10は、予め定められた路面状
態、即ち、Dry、Snow、Iceに対応する路面μ
勾配の基準値を、制動力検出部34で検出された制動力
が所定量変化する毎に作成・記憶する基準値作成記憶回
路12D、12S、12Iと、前記制動力が所定量変化
する毎に微小ゲインを記憶する微小ゲイン記憶回路12
Jと、を備えている。基準値作成記憶回路12D、12
S、12I及び微小ゲイン記憶回路12Jには、基準値
作成記憶回路12D、12S、12Iに記憶された路面
μ勾配の基準値の時系列データと、実際に検出され、微
小ゲイン記憶回路12Jに記憶された路面μ勾配の基準
値の時系列データと、を照合して、路面状態を演算する
時系列データ軌跡照合部14が接続されている。時系列
データ軌跡照合部14の出力側には、すべり速度選択部
16が接続されている。
【0022】基準値作成記憶回路12D、12S、12
Iは各々同一の構成であるので、基準値作成記憶回路1
2Dのみを説明し、他の説明を省略する。基準値作成記
憶回路12Dは、車輪速センサ28に接続された車速演
算部18を備えている。車速演算部18には、すべり速
度を演算するすべり速度演算部20が接続されている。
すべり速度演算部20には、制動力検出部34が接続さ
れている。すべり速度演算部20は、路面μ勾配の基準
値を作成するμ勾配基準値作成部22に接続されてい
る。μ勾配基準値作成部22には、車速演算部18及び
制動力検出部34が接続されている。μ勾配基準値作成
部22は、μ勾配基準値作成部22により作成された路
面μ勾配の基準値の時系列データを記憶する基準値時系
列データ記憶部24が接続されている。基準値時系列デ
ータ記憶部24は、時系列データ軌跡照合部14に接続
されている。
【0023】微小ゲイン記憶回路12Jは、検出された
微小ゲインの時系列データを記憶する微小ゲイン時系列
データ記憶部25を備えている。微小ゲイン時系列デー
タ記憶部25には、制動力検出部34及び微小ゲイン演
算部36が接続されている。微小ゲイン時系列データ記
憶部25は、時系列データ軌跡照合部14に接続されて
いる。
【0024】すべり速度選択部16には、基準値作成記
憶回路12D、12S、12Iの各すべり速度演算部2
0が接続されている。
【0025】制動力検出部34は、路面から車輪に対し
摩擦力として作用する制動力を、車輪の力学的モデルに
従って以下のように推定する。
【0026】すなわち、車輪には、車輪に対し車輪の回
転方向と反対方向に作用するブレーキトルクTB と、車
輪に対し摩擦力として車輪の回転方向に作用する制動力
FによるタイヤトルクTf と、が作用する。ブレーキト
ルクTB は、車輪のブレーキディスクに対し車輪の回転
を妨げるように作用するブレーキ力に由来するものであ
り、制動力F及びタイヤトルクTf は、車輪と路面との
間の摩擦係数をμB 、車輪半径をr、車輪荷重をWとし
たとき、(2)式、(3)式によって表される。
【0027】
【数2】F= μB W・・・(2)
【0028】
【数3】Tf = F×r = μB Wr・・・(3) 従って、車輪の運動方程式は、
【0029】
【数4】 となる。ただし、Iは車輪の慣性モーメント、ωは車輪
の回転速度(車輪速度)である。
【0030】車輪加速度(dω/dt)を検知し、ブレ
ーキディスクに加えられるホイールシリンダ圧に基づい
てブレーキトルクTB を求めれば、(4) 式に基づいて制
動力Fを推定することができる。具体的には、アクセル
開度などから求めた車輪の駆動トルクと、外乱としての
制動力Fが車輪に作用する(4) 式と等価な力学モデルを
オブザーバとして構成する。このオブザーバでは、(4)
式を2階積分することにより得られる回転位置と実際に
検出された回転位置との偏差を0に一致させるように制
御周期毎に等価モデルの外乱及び回転速度を修正し、修
正された外乱を制動力として推定する。
【0031】次に、微小ゲイン演算部36を説明する。
まず、路面μ勾配としての微小ゲインを説明する。
【0032】重量Wの車体を備えた車両が車体速度ωv
で走行している時の車輪での振動現象、すなわち車体と
車輪と路面とによって構成される振動系の振動現象を、
車輪回転軸で等価的にモデル化した図3に示すモデルを
参照して説明する。
【0033】図3のモデルにおいて、ブレーキ力は、路
面と接するタイヤのトレッド115の表面を介して路面
に作用する。しかし、このブレーキ力は実際には路面か
らの反作用(制動力)として車体に作用する。このた
め、車体重量の回転軸換算の等価モデル117は、タイ
ヤのトレッドと路面との間の摩擦要素116(路面μ)
を介して車輪113と反対側に連結したものとなる。こ
れは、シャシーダイナモ装置のように、車輪下の大きな
慣性、すなわち車輪と反対側の質量で車体の重量を模擬
することができることと同様である。
【0034】図3でタイヤリムを含んだ車輪113の慣
性をJw 、リムとトレッド115との間のばね要素11
4のばね定数をK、車輪半径をR、トレッド115の慣
性をJt 、トレッド115と路面との間の摩擦要素11
6の摩擦係数をμ、車体の重量の回転軸換算の等価モデ
ル117の慣性をJV とすると、ホイールシリンダ圧に
より生じるブレーキトルクTb ’から車輪速ωw までの
伝達特性は、車輪運動の方程式より、
【0035】
【数5】
【0036】となる。なお、sはラプラス変換の演算子
である。ここで、タイヤが路面にグリップしている時
は、トレッド115と車体等価モデル117とが直結さ
れていると考える。この場合、車体等価モデル117と
トレッド115との和の慣性と、車輪113の慣性とが
共振する。即ち、この振動系は、車輪と車体と路面とか
ら構成された車輪共振系とみなすことができる。このと
きの車輪共振系の共振周波数ω∞は、(5))式の伝達特性
において、
【0037】
【数6】
【0038】となる。ここで、図20において(6) 式が
成立する摩擦状態は、ピークμに達する前の領域A1に
対応する。
【0039】逆に、タイヤの摩擦係数μがピークμに近
づく場合には、タイヤ表面の摩擦係数μがスリップ率に
対して変化し難くなる。即ち、トレッド115の慣性の
振動に伴う成分は車体等価モデル117に影響しなくな
る。つまり等価的にトレッド115と車体等価モデル1
17とが分離され、トレッド115と車輪113とが共
振を起こすことになる。このときの車輪共振系は、車輪
と路面とから構成されているとみなすことができる。そ
の共振周波数ω∞’は、(6) 式において、車体等価慣性
v を0とおいたものと等しくなる。すなわち、
【0040】
【数7】
【0041】となる。この状態は、図20では、ピーク
μ近傍の領域A2に対応する。なお、ピークμを越えて
ブレーキ制動されると、領域A3に瞬時に移行し、タイ
ヤがロックされる。
【0042】車体等価慣性Jv が車輪慣性Jw 、トレッ
ド慣性Jt より大きいと仮定する。この場合、(7) 式の
場合の車輪共振系の共振周波数ω∞’は(6) 式のω∞よ
りも高周波数側にシフトすることになる。
【0043】ここで、車輪と車体と路面とからなる振動
系の共振周波数ω∞((7) 式) でブレーキ力を微小励振
すると(ここでは、ブレーキ圧Pb を微小励振するとす
る)、車輪速度ωw も平均的な車輪速度の回りに共振周
波数ω∞で微小振動する。ここで、このときのブレーキ
圧Pb の共振周波数ω∞の微小振幅をPv 、車輪速度の
共振周波数ω∞の微小振幅をωwvとした場合、微小ゲイ
ンGd
【0044】
【数8】Gd =ωwv/Pv ・・・(8) とする。なお、この微小ゲインGd を、ブレーキ圧Pb
に対する車輪速ωw の比(ωw /Pb )の共振周波数ω
∞の振動成分とみなし、
【0045】
【数9】 Gd =((ωw /Pb )|s=jω∞)・・・(9) と表すこともできる。
【0046】この微小ゲインGd は、(9) 式に示すよう
に(ωw /Pb )の共振周波数ω∞の振動成分であるの
で、摩擦状態がピークμ近傍の領域に至ったとき、共振
周波数がω∞’にシフトするため急激に減少する。すな
わち、微小ゲインGd は、路面μ特性を規定する物理量
であるといえる。
【0047】そして、微小ゲイン演算部36は、図2に
示すように、振動系の共振周波数ω∞((6) 式)でブレ
ーキ圧を微小励振したときの、車輪速度Vw の共振周波
数ω∞の微小振幅(車輪速微小振幅ωwv)を検出する車
輪速微小振幅検出部40と、共振周波数ω∞のブレーキ
圧の微小振幅Pv を検出するブレーキ圧微小振幅検出部
42と、検出された車輪速微小振幅ωwvをブレーキ圧微
小振幅Pv で除算することにより微小ゲインGd を出力
する除算器44と、から構成される。
【0048】ここで、車輪速微小振幅検出部40は、共
振周波数ω∞の振動成分を抽出するフィルタ処理を行う
図4のような演算部として実現できる。例えば、この振
動系の共振周波数ω∞が40[Hz]程度であるので、
制御性を考慮して1周期を24[ms]、約41.7
[Hz]に取り、この周波数を中心周波数とする帯域通
過フィルタ75を設ける。このフィルタにより、車輪速
度信号ωi から約41.7[Hz]近傍の周波数成分の
みが抽出される。さらに、このフィルタ出力を全波整流
器76により全波整流、直流平滑化し、この直流平滑化
信号から低域通過フィルタ77によって低域振動成分の
みを通過させることにより、車輪速微小振幅ωwvを出力
する。
【0049】なお、周期の整数倍、例えば1周期の24
[ms]、2周期の48[ms]の時系列データを連続
的に取り込み、41.7[Hz]の単位正弦波、単位余
弦波との相関を求めることによっても車輪速微小振幅検
出部40を実現できる。
【0050】ここで、平均ブレーキ圧Pm の回りに共振
周波数のブレーキ圧微小振幅Pv を印加する微小励振手
段について説明する。まず、平均ブレーキ圧指令及び微
小励振指令を実際の車輪への制動トルクに変換する部分
(バルブ制御系)は、図5に示すように、マスタシリン
ダ48、制御バルブ52、ホイールシリンダ56、リザ
ーバー58及びオイルポンプ60を備えている。
【0051】ブレーキペダル46は、ブレーキペダル4
6の踏力に応じて増圧するマスタシリンダ48を介して
制御バルブ52の増圧バルブ50へ接続されている。ま
た、制御バルブ52は、減圧バルブ54を介して低圧源
としてのリザーバー58へ接続されている。さらに、制
御バルブ52には、該制御バルブによって供給されたブ
レーキ圧をブレーキディスクに加えるためのホイールシ
リンダ56が接続されている。この制御バルブ52は、
入力されたバルブ動作指令に基づいて増圧バルブ50及
び減圧バルブ54の開閉を制御する。
【0052】なお、この制御バルブ52が増圧バルブ5
0のみを開くように制御されると、ホイールシリンダ5
6の油圧(ホイールシリンダ圧)は、ドライバがブレー
キペダル46を踏み込むことによって得られる圧力に比
例したマスタシリンダ48の油圧(マスタシリンダ圧)
まで上昇する。逆に減圧バルブ54のみを開くように制
御されると、ホイールシリンダ圧は、ほぼ大気圧のリザ
ーバ58の圧力(リザーバ圧)まで減少する。また、両
方のバルブを閉じるように制御されると、ホイールシリ
ンダ圧は保持される。
【0053】ホイールシリンダ56によりブレーキディ
スクに加えられるブレーキ力(ホイールシリンダ圧に相
当)は、マスタシリンダ48の高油圧が供給される増圧
時間、リザーバー58の低油圧が供給される減圧時間、
及び供給油圧が保持される保持時間の比率と、圧力セン
サ等により検出されたマスタシリンダ圧及びリザーバー
圧とから求められる。
【0054】従って、制御バルブ52の増減圧時間をマ
スタシリンダ圧に応じて制御することにより、所望のブ
レーキトルクを実現することができる。そして、ブレー
キ圧の微小励振は、平均ブレーキ力を実現する制御バル
ブ52の増減圧制御と同時に共振周波数に対応した周期
で増圧減圧制御を行うことにより可能となる。
【0055】具体的な制御の内容として、図6に示すよ
うに、微小励振の周期(例えば24[ms])の半周期
T/2毎に増圧と減圧のそれぞれのモードを切り替え、
バルブへの増減圧指令は、モード切り替えの瞬間から増
圧時間ti 、減圧時間tr のそれぞれの時間分だけ増圧
・減圧指令を出力し、残りの時間は、保持指令を出力す
る。平均ブレーキ力は、マスタシリンダ圧に応じた増圧
時間ti と減圧時間tr との比によって定まると共に、
共振周波数に対応した半周期T/2毎の増圧・減圧モー
ドの切り替えによって、平均ブレーキ力の回りに微小振
動が印加される。
【0056】なお、ブレーキ圧微小振幅Pv は、マスタ
シリンダ圧、図6に示したバルブの増圧時間ti の長
さ、及び減圧時間tr の長さによって所定の関係で定ま
るので、図2のブレーキ圧微小振幅検出部42は、マス
タシリンダ圧、増圧時間ti 及び減圧時間tr からブレ
ーキ圧微小振幅Pv を出力するテーブルとして構成する
ことができる。
【0057】次に、本実施の形態の作用を説明する。最
初に、基準値作成記憶回路12D、12S、12Iによ
る路面μ勾配の基準値の作成方法を説明する。
【0058】路面μ勾配Gd は、すべり速度ΔVに対す
る路面と車輪との間の摩擦係数μの勾配であり、制動
力、路面状態及び車速毎に、(10)式により表され
る。
【0059】
【数10】
【0060】よって、路面μ勾配Gd は、制動力Pc、
路面状態、車速V、すべり速度ΔV、及び摩擦係数μに
より特定することができる。
【0061】ところで、すべり速度ΔVと制動力Pと
は、各路面状態に応じて、図7〜図9に示すように、車
速に応じて、固有の関係を有することが分かっている。
【0062】そこで、基準値作成記憶回路12D、12
S、12Iの各すべり速度演算部20は、車速に応じ
て、図7〜図9に示す制動力Pとすべり速度ΔVとの関
係式を記憶している。従って、制動力Pc及び車速Vが
入力されるとすべり速度演算部20は、上記関係式、制
動力Pc及び車速Vに基づいて、制動力Pc及び車速V
に対応するすべり速度ΔVを演算し、演算により求めた
すべり速度ΔVを、μ勾配基準値作成部22に出力す
る。
【0063】なお、すべり速度演算部20に入力される
車速Vは、車速演算部18により演算したものである。
具体的には、次のように求める。車速演算部18には、
上記すべり速度演算部20により演算されたすべり速度
ΔVと、車輪速センサ28からの車輪速Vωと、が入力
される。すべり速度ΔVは、車速Vから車輪速Vωを減
算した値(V−Vω)である。よって、車速演算部18
は、入力されたすべり速度ΔVと入力された車輪速Vω
とを加算して、車速Vを求め、すべり速度演算部20に
出力する。
【0064】また、路面μと制動力Pとは、各路面状態
に応じて、図10〜図12に示すように、車速に応じ
て、固有の関係を有することが分かっている。
【0065】そこで、基準値作成記憶回路12D、12
S、12Iの各μ勾配基準値作成部22は、車速に応じ
て、図10〜図12に示す制動力Pと路面μとの関係式
を記憶している。従って、制動力Pc及び車速Vが入力
されるとμ勾配基準値作成部22は、上記関係式、制動
力Pc及び車速Vに基づいて、制動力Pc及び車速Vに
対応する路面μを演算する。
【0066】このように、μ勾配基準値作成部22に
は、すべり速度演算部20から、制動力Pc及び車速V
に対応するすべり速度ΔV(2ポイント、ΔV1 、ΔV
2 )が入力され、制動力Pc及び車速Vに対応する路面
μ(2ポイント、μ1 、μ2 )を演算している。そこ
で、μ勾配基準値作成部22は、これらのすべり速度Δ
Vと路面μとを、(10)式に代入することにより、路
面μ勾配Gd の基準値を演算する。そして、車輪速度セ
ンサ28、制動力検出部34からは、制動開始時から所
定時間経過まで所定サンプリング時間毎にサンプリング
された車輪速Vω、制動力Pc が入力され、μ勾配基準
値作成部22は、制動開始時から所定量制動力が経過す
るまで所定量制動力が変化する毎に路面μ勾配Gd の基
準値を演算し、各路面μ勾配Gd の基準値の時系列デー
タを、基準値時系列データ記憶部24に出力する。そし
て、基準値時系列データ記憶部24は、路面μ勾配Gd
の基準値の時系列データを記憶する。
【0067】また、微小ゲイン時系列データ記憶部25
は、μ勾配基準値作成部22から基準値時系列データ記
憶部24への基準値の時系列データの出力タイミングに
同期して、微小ゲインの時系列データが記憶される。即
ち、微小ゲイン時系列データ記憶部25へは、制動開始
時から所定時間経過まで所定サンプリング時間毎にサン
プリングされた微小ゲインGd T、制動力Pc が入力さ
れ、微小ゲイン時系列データ記憶部25は、制動開始時
から前出の所定量制動力が経過するまで所定量制動力が
変化する毎に、微小ゲインGd Tを記憶する。
【0068】次に、制動開始時に、時系列データ軌跡照
合部14が実行する照合処理ルーチンを図13を参照し
て説明する。
【0069】図13のステップ82で、制動開始時から
制動力が所定量変化した時刻を表す変数kを初期化し、
ステップ84で、変数kを1インクリメントする。
【0070】ステップ86で、変数kにより表される時
刻(k・τ,τ:サンプリング周期)において微小ゲイ
ン演算部36により演算された路面μ勾配Gd T(k)
(微小ゲイン)を取り込む。
【0071】ステップ88で、路面状態を識別する変数
sを初期化し、ステップ90で、変数sで、変数kを1
インクリメントする。
【0072】ステップ92で、路面状態sに対応する基
準値時系列データ24に記憶された路面μ勾配Gd の時
系列データの内、時刻kにおける基準値Gd s(k)を
取り込む。
【0073】ステップ94で、照合値zs を(11)式
より演算する。
【0074】
【数11】 zs =zs +(Gd T(k)−Gd s(k))2 ・・・(11) ステップ96で、変数sが予め定められた路面状態の総
数s0 (本実施の形態では、3)以上か否かを判断す
る。変数s≧総数s0 でない場合には、時刻kにおける
照合値zs を演算していない路面状態があるので、ステ
ップ90に戻って、以上の処理(ステップ90〜ステッ
プ96)を実行する。変数s≧総数s0 の場合には、全
ての路面状態の時刻kにおける照合値zs を演算したの
で、ステップ98で、変数kが、制動開始から所定時間
経過した時刻を表すn以上か否かを判断する。変数k≧
nでない場合には、制動開始から所定時間経過していな
いので、ステップ84に戻って以上の処理(ステップ8
4〜ステップ98)を実行する。変数k≧nの場合に
は、制動開始から所定時間経過したので、ステップ10
0で、照合値zs (z1 〜z3 )の内の最小の照合値z
s に対応する路面状態が、現在走行している路面状態で
あると推定する。
【0075】即ち、zs は(12)式により表される。
【0076】
【数12】
【0077】このように、zs を、制動開始から所定時
間経過までの時系列データにより演算しているのは、図
14に示すように、微小ゲイン演算部36により演算さ
れた路面μ勾配Gd T(k)は、現在走行している路面
状態の路面μ勾配Gd s(k)(図14では、Snow
の路面状態である)と必ずしも一致するとは限らず、現
在走行している路面状態の路面μ勾配Gd sの基準値ま
わりにふらつく。よって、制動開始から所定量制動力が
経過するまでの時系列データを用いて精度よく路面状態
を推定するためである。
【0078】そして、各路面状態に対応して予め記憶し
ている摩擦係数のピーク値μMAX の内から、推定した路
面状態に対応する摩擦係数のピーク値μMAX を、図示し
ないABS制御部等に出力し、推定した路面状態を表す
データをすべり速度選択部16に出力する。
【0079】時系列データ軌跡照合部14からピーク値
μMAX を入力したABS制御部は、入力したピーク値μ
MAX を与えるスリップ率を基準スリップ率とし、ピーク
μに追従するようにブレーキ力を制御する。
【0080】時系列データ軌跡照合部14から路面状態
を表すデータを入力したすべり速度選択部16は、基準
値作成記憶回路12D、12S、12Iの各すべり速度
演算部20から出力されたすべり速度の内、入力した路
面状態を表すデータに基づいて、推定された路面状態に
対応するすべり速度ΔVを出力する。
【0081】以上のように本実施の形態では、現在走行
中の路面の路面状態やピークμ値を正確に求めることが
できるので、VSC、ABS、TRC等の車両の安定化
制御(制御ゲインの変更、制御目標値の設定))やドラ
イバへの路面状態の警告、車体横すべり角、ヨーレート
等の各車両状態の推定することが可能となる。
【0082】以上説明した実施の形態では、図7〜図9
に示す制動力Pとすべり速度ΔVとの関係式、図10〜
図12に示す制動力Pと路面μとの関係式を記憶してい
るが、本発明はこれに限定されず、制動力Pc と路面μ
勾配とは図15に示す関係を有するので、図15に示す
関係式を、車速Vに対応して記憶し、車速V、制動力P
c 、及び制動力Pc と路面μ勾配との関係式から、車速
V及び制動力Pc に対応する路面μ勾配を演算するよう
にしてもよい。
【0083】また、前述した実施の形態では、路面μ勾
配Gd T(k)と基準値Gd s(k)との二乗法の最小
値により路面状態を推定しているが、本発明はこれに限
定されず、制動開始から所定時間経過までの路面μ勾配
d T(k)及び基準値Gds(k)の時系列データの
相関関係を演算して、路面状態を推定するようにしても
い。
【0084】更に、前述した例では、図7〜図9に示す
制動力Pとすべり速度ΔVとの関係式、図10〜図12
に示す制動力Pと路面μとの関係式、又は、図15に示
す制動力Pと路面μ勾配Gd との関係式を記憶するよう
にしているが、本発明はこれに限定されず、すべり速度
ΔVと、すべり速度ΔV、路面μ、路面μ勾配Gd との
関係の各々も、制動力Pと、すべり速度ΔV、路面μ、
路面μ勾配Gd との関係の各々と同様な関係となるの
で、すべり速度ΔVと、すべり速度ΔV、路面μ、路面
μ勾配Gd との関係式を記憶し、同様に処理するように
してもよい。
【0085】また、前述した例では、路面μ勾配Gd
して、微小ゲインを求めているが、本発明はこれに限定
されず、微小ゲインが制動トルク勾配と等価な物理量で
あるので、微小ゲイン演算部36に代えて制動トルク勾
配演算部を備え、路面μ勾配Gd に代えて、制動トルク
勾配を求めて、同様に処理するようにしてもよい。以
下、微小ゲインが、制動トルク勾配と等価な物理量であ
ることを説明する。
【0086】図20、図16の特性では、スリップ速度
ΔVと、車輪−路面間の摩擦係数μとの間には、あるス
リップ速度で摩擦係数μがピークをとる関数関係が成立
する。
【0087】ところで、ブレーキ圧を微小励振すると、
車輪速度が微小励振するので、スリップ速度もあるスリ
ップ速度の回りで微小振動する。ここで、図16の特性
を有する路面において、あるスリップ速度の回りで微小
振動したときの摩擦係数μのスリップ速度ΔVに対する
変化を考える。
【0088】このとき、路面の摩擦係数μは、
【0089】
【数13】μ = μ0 +αRΔω・・・(13) と近似できる。すなわち、微小振動によるスリップ速度
の変化が小さいため、傾きαRの直線で近似できる。
【0090】ここで、タイヤと路面間の摩擦係数μによ
り生じる制動トルクTb =μWRに(13)式を代入す
ると、
【0091】
【数14】 Tb = μWR = μ0 WR+αR2 ΔωW・・・(14) となる。ここで、Wは輪荷重である。(14)式の両辺
をΔωで1階微分すると、
【0092】
【数15】
【0093】を得る。よって、(15)式により、制動
トルク勾配(dTb /Δω)が、αR2 Wに等しいこと
が示された。
【0094】一方、ブレーキトルクTb ’がブレーキ圧
b と比例関係にあることから、微小ゲインGd は、ブ
レーキトルクTb ’に対する車輪速度ωw の比(ωw
b’)の共振周波数ω∞の振動成分と比例関係にあ
る。従って、(5) 式の伝達特性により、微小ゲインGd
は次式によって表される。
【0095】
【数16】
【0096】但し、
【0097】
【数17】 JA =Jt +Jv +Jw 、JB =Jt +Jv ・・・(17)
【0098】
【数18】
【0099】一般に、(18)式において、
【0100】
【数19】 |A| = 0.012 << |B| = 0.1・・・(19) となることから、(15)、(16)式より、
【0101】
【数20】
【0102】を得る。すなわち、スリップ速度ΔVに対
する制動トルクTb の勾配(制動トルク勾配)は微小ゲ
インGd に比例する。
【0103】よって、制動トルク勾配を求め、求めた制
動トルク勾配に基づいて、上記と同様に処理すればよ
い。
【0104】次に、制動トルク勾配を求める方法を説明
する。各車輪の車輪運動及び車体運動は、(21)式、
(22)式の運動方程式によって記述される。
【0105】
【数21】
【0106】
【数22】 ただし、Fi ’は、第i輪に発生した制動力、Tbiは踏
力に対応して第i輪に加えられたブレーキトルク、Mは
車両質量、Rc は車輪の有効半径、Jは車輪慣性、vは
車体速度である(図8参照)。なお、・は時間に関する
微分を示す。(21)式、(22)式において、Fi
はスリップ速度(v/Rc −ωi )の関数として示され
ている。
【0107】ここで、車体速度を等価的な車体の角速度
ωv で表す((23)式)と共に、制動トルクR
c i ’をスリップ速度の1次関数(傾きki 、y切片
i )として記述する((24)式)。
【0108】
【数23】v = Rc ωv ・・・(23)
【0109】
【数24】 Rc i ’(ωv −ωi )=ki ×(ωv −ωi )+Ti ・・・(24) さらに、(23)式、(24)式を、(21)式、(2
2)式へ代入し、車輪速度ωi 及び車体速度ωv をサン
プル時間τ毎に離散化された時系列データωi[k] 、ω
v [k] (kはサンプル時間τを単位とするサンプル時
刻、k=1,2,.....)として表すと、(25)式、(2
6)式を得る。
【0110】
【数25】
【0111】
【数26】
【0112】ここで、(25)式、(26)式を連立
し、車体の等価角速度ωv を消去すると、
【0113】
【数27】
【0114】を得る。ところで、スリップ速度3rad/s
という条件下でRc Mg/4(gは重力加速度)の最大
制動トルクの発生を仮定すると、
【0115】
【数28】
【0116】を得る。ここで、具体的な定数として、τ
=0.01 (sec)、Rc =0.3 (m) 、M=1000(kg)を考慮す
ると、
【0117】
【数29】
【0118】となり、(27)式は次式のように近似す
ることができる。
【0119】
【数30】
【0120】ただし、
【0121】
【数31】
【0122】である。(31)式中のTb について、ブ
レーキ油圧(マスタシリンダ圧又はホイールシリンダ
圧)が計測できる場合、次のようにおくことができる。
【0123】
【数32】Tb =kb ・Pc (k)・・・(32) 但し、Pc はブレーキ油圧、kb はブレーキ油圧からブ
レーキトルクへの変換係数である。この場合、(30)
式、(31)式は、(33)式、(34)式に変換され
る。
【0124】
【数33】
【0125】
【数34】
【0126】但し、
【0127】
【数35】
【0128】ここで、現サンプリング時点kにおけるブ
レーキ油圧Pc (k)と、1サンプリング前の時点k−
1におけるブレーキ油圧Pc (k−1)とは、ほとんど
等しいとする(Pc (k)=Pc (k−1))。
【0129】また、(35)式中のμ勾配kj は、前回
の推定値を使用する。このように整理することにより、
(33)式は未知係数ki 、fi に関し、線形の形で記
述することが可能となり、(33)式にオンラインのパ
ラメータ同定手法を適用することにより、スリップ速度
に対する制動トルク勾配ki を推定することができる。
【0130】すなわち、以下のステップ1及びステップ
2を繰り返すことにより、検出された車輪速度の時系列
データωi [k] から制動トルク勾配の時系列データを推
定することができる(最小自乗推定法)。
【0131】ステップ1:
【0132】
【数36】φi [k] T ・θi =yi [k] ・・・(36) 但し、
【0133】
【数37】
【0134】
【数38】
【0135】
【数39】 yi [k] =−ωi [k] + 2ωi [k−1]−ωi [k−2]−Pci(k)・・・(39) とおく。なお、(37)式の行列φi [k] の第1要素
は、1サンプル時間での車輪速度の変化に関する物理量
であり、(39)式は、1サンプル時間の車輪速度の変
化の1サンプル時間での変化に関する物理量である。
【0136】ステップ2:
【0137】
【数40】
【0138】
【数41】
【0139】
【数42】
【0140】という漸化式からθi の推定値を演算し、
θi の推定値の行列の第一要素を推定された制動トルク
の勾配として抽出する。ただし、λは過去のデータを取
り除く度合いを示す忘却係数(例えばλ=0.98)で
あり、”T ”は行列の転置を示す。
【0141】なお、(40)式の左辺は、車輪速度の変
化に関する物理量の履歴及び車輪速度の変化の変化に関
する物理量の履歴を表す物理量である。
【0142】図17〜図19に示すように、Dry、S
now、Ice の各路面において、(31)式から求
めた制動トルク勾配に変換係数を乗算して求めた路面μ
勾配Gd の時系列データGd 1 は、路面μ勾配Gd
基準値の時系列データGdsに精度よく一致し、より実走
行路面の軌跡に近づいており、路面状態の推定精度が向
上する。なお、図17〜図19には、(29)式から求
めた制動トルク勾配に変換係数を乗算して求めた路面μ
勾配Gd の時系列データGd 2 を示している。時系列
データGd 1 は、時系列データGd 2 より、時系列
データGdsに精度よく一致している。よって、時系列デ
ータGd 1 は、時系列データGd 2より改善されて
いる。
【0143】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、第2の物
理量を検出し、検出された第2の物理量の軌跡と、複数
の路面状態各々に対応して演算された第2の物理量の軌
跡の各々と、を比較するので、比較結果に基づいて、複
数の路面状態各々に対応して演算された軌跡の内の検出
された軌跡に最も近い軌跡を選択すれば、選択した軌跡
に対応する路面状態は車輪が走行している実際の路面状
態に対応し、実際の路面状態を精度よく推定することが
できる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る路面状態推定装置のブロッ
ク図である。
【図2】微小ゲイン演算部のブロック図である。
【図3】車輪と車体と路面とから構成される振動系の等
価モデルを示す図である。
【図4】車輪速微小振幅検出部のブロック図である。
【図5】ブレーキ圧微小振幅検出部のブロック図であ
る。
【図6】ブレーキ圧の微小励振と平均ブレーキ力の制御
を同時に行う場合の制御バルブへの指令を示す図であ
る。
【図7】Dry路面状態における所定速度のときの制動
力とすべり速度との関係を示す線図である。
【図8】Snow路面状態における所定速度のときの制
動力とすべり速度との関係を示す線図である。
【図9】Ice路面状態における所定速度のときの制動
力とすべり速度との関係を示す線図である。
【図10】Dry路面状態における所定速度のときの制
動力と路面μとの関係を示す線図である。
【図11】Snow路面状態における所定速度のときの
制動力と路面μとの関係を示す線図である。
【図12】Ice路面状態における所定速度のときの制
動力と路面μとの関係を示す線図である。
【図13】時系列データ軌跡照合部が、制動開始時に実
行する照合処理ルーチンを示したフローチャートであ
る。
【図14】時系列データ軌跡照合部の照合処理(軌跡)
の様子を示した図である。
【図15】制動力と路面μ勾配との関係を示す線図であ
る。
【図16】スリップ速度に対する摩擦係数μの変化特性
を示すと共に、微小ゲインが制動トルク勾配と等価であ
ることを説明するため、微小振動の中心の回りのμの変
化が直線で近似できることを示す図である。
【図17】Dry路面状態における所定速度のときの制
動力と路面μ勾配との関係を示す線図である。
【図18】Snow路面状態における所定速度のときの
制動力と路面μ勾配との関係を示す線図である。
【図19】Ice路面状態における所定速度のときの制
動力と路面μ勾配との関係を示す線図である。
【図20】タイヤと路面との間の摩擦係数μのスリップ
率sに対する特性を示す線図である。
【符号の説明】
10 演算回路 12D、12S、12I 基準値作成記憶回路 14 時系列データ軌跡照合部 28 車輪速センサ 34 制動力検出部 36 微小ゲイン演算部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 梅野 孝治 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 菅井 賢 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1株式会社豊田中央研究所内 (56)参考文献 特開 平4−224447(JP,A) 特開 平7−112659(JP,A) 特開 平7−186928(JP,A) 特開 昭62−255284(JP,A) 特開 平1−249559(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/00 B60T 8/32 - 8/96 G01N 19/02 G01B 21/00 G01P 3/56

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の車輪の制動状態を表す第1の物理
    量を検出する第1の検出手段と、 前記車両の速度を検出する第2の検出手段と、 前記車輪のすべり易さを表しかつ前記車輪が走行する路
    面状態、前記第1の物理量、及び車両の速度に応じて定
    まる第2の物理量を検出する第3の検出手段と、 前記第1の検出手段により検出された第1の物理量及び
    前記第2の検出手段により検出された車速に基づいて、
    予め定められた複数の路面状態毎に第2の物理量を演算
    する演算手段と、 前記車輪の制動状態を表す第1の物理量に対する前記第
    3の検出手段により検出された第2の物理量の軌跡と、
    前記第1の物理量に対する前記演算手段により複数の路
    面状態毎に演算された第2の物理量の軌跡の各々と、を
    比較する比較手段と、 前記比較手段の比較結果に基づいて、前記演算された軌
    跡の内の前記検出された軌跡に最も近い軌跡に対応する
    路面状態を、前記車輪が走行している実際の路面状態と
    して推定する推定手段と、 を備えた路面状態推定装置。
  2. 【請求項2】 前記第1の検出手段は、前記第1の物理
    量として制動力を検出し、 前記演算手段は、すべり速度、制動力及び車速の関係を
    路面状態毎に示した第1の関係式に基づいて、路面状態
    毎のすべり速度を演算し、路面摩擦状態、制動力及び車
    速の関係を路面状態毎に示した第2の関係式に基づい
    て、路面状態毎の路面摩擦状態を演算し、演算された路
    面状態毎の路面摩擦状態の変化と演算された路面状態毎
    のすべり速度の変化とに基づいて、路面状態毎に前記第
    2の物理量として路面μ勾配基準値を演算することを特
    徴とする請求項1記載の路面状態推定装置。
  3. 【請求項3】 前記第2の関係式に基づいて、前記路面
    状態推定手段で推定された実際の路面状態に対応する最
    大路面摩擦状態を推定する路面摩擦状態推定 手段を更に
    備えたことを特徴とする請求項2記載の路面状態推定装
    置。
  4. 【請求項4】 前記演算手段で演算された路面状態毎の
    すべり速度の中から、前記路面状態推定手段で推定され
    た実際の路面状態に対応するすべり速度を選択するすべ
    り速度選択手段を更に備えたことを特徴とする請求項2
    または3記載の路面状態推定装置。
  5. 【請求項5】 前記演算手段は、μ勾配、第1の物理量
    及び車速の関係を路面状態毎に示した関係式に基づい
    て、路面状態毎に前記第2の物理量としてμ勾配基準値
    を演算することを特徴とする請求項1記載の路面状態推
    定装置。
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