JPH1148940A - ブレーキ圧振動装置 - Google Patents

ブレーキ圧振動装置

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JPH1148940A
JPH1148940A JP21509897A JP21509897A JPH1148940A JP H1148940 A JPH1148940 A JP H1148940A JP 21509897 A JP21509897 A JP 21509897A JP 21509897 A JP21509897 A JP 21509897A JP H1148940 A JPH1148940 A JP H1148940A
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braking force
frequency
excitation
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vibration
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JP21509897A
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English (en)
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Masaru Sugai
賢 菅井
Katsuhiro Asano
勝宏 浅野
Hidekazu Ono
英一 小野
Koji Umeno
孝治 梅野
Hiroyuki Yamaguchi
裕之 山口
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Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ブレーキ力の励振周波数を低下させ、制御バル
ブの長寿命化を図る。 【解決手段】 運転者操作部24によるブレーキ力に、
微小振動を与えるブレーキ力励振部19と、タイヤグリ
ップ時の共振周波数f1 での車輪速度の振動特性を検出
する検出部20と、検出された振動特性に基づいてブレ
ーキ力の低減指令を出力するブレーキ力低減部21と、
から構成する。そして、ブレーキ力励振部の励振周波数
の値を、共振周波数f1 を2以上の整数nで除算した値
の周波数に設定する。ブレーキ力の振動成分には励振振
動の高調波が発生するので、車輪速度の振動成分にも共
振周波数f1 の振動成分が現れ、この振動成分に基づい
てピークμの滑り状態を越えないようににブレーキ力の
制御を行うことができる。すなわち、ブレーキ力の励振
周波数を低下できるので、制御バルブの長寿命化を図る
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はブレーキ圧振動装置
に係り、特に、ブレーキ圧を微小励振するブレーキ圧振
動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、車体と車輪と路面とから構成され
る車輪共振系の共振周波数でブレーキ圧を微小励振した
ときの、車輪速度に現れる車輪共振系の振動特性の変化
に基づいてピークμ直前の状態を判定し、この判定結果
に応じて車輪に作用するブレーキ力を制御するアンチロ
ックブレーキ制御装置(以下、「ABS装置」という)
が提案されている(特願平7−220920号等)。こ
のABS装置の1つの応用例では、共振周波数でのブレ
ーキ圧微小振幅と車輪速度微小振幅との比(微小励振ゲ
イン)を演算し、この微小励振ゲインが基準値以下とな
った状態をピークμ直前の摩擦状態とみなしてブレーキ
力を低減させる制御を行う。
【0003】この従来技術によれば、車輪と路面との間
の摩擦状態を敏感に反映する車輪共振系の振動特性に基
づいてブレーキ制御を行うため、車体速度を推定するこ
となく、路面状態に係わらず安定かつ正確なアンチロッ
クブレーキ動作が可能となる、という優れた効果があっ
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のアンチロックブレーキ制御装置では、車体と車輪と
路面とから構成される車輪共振系の共振周波数(約40
Hz)で、制御バルブの増圧側バルブと減圧側バルブと
をそれぞれ開閉することによりホイールシリンダ圧の増
圧モードと減圧モードとを切り替える必要があった。
【0005】本発明は上記事実に鑑みなされたもので、
上記従来技術の優れた効果を保ちつつ、共振周波数より
小さい周波数でブレーキ圧の微小励振を可能とすること
により制御バルブなどの寿命をさらに向上させたブレー
キ圧振動装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1の発明は、車体と車輪と路面とから構成され
る振動系の共振周波数の値を2以上の整数で除算した値
の周波数又は該周波数近傍の周波数でブレーキ圧を微小
励振するものである。
【0007】また、請求項2の発明は、請求項1の前記
整数を奇数としたことを特徴とする。すなわち、請求項
2の発明では、上記共振周波数の奇数分の1の周波数で
ブレーキ圧を微小励振する。
【0008】(本発明の原理)まず、本発明の原理を説
明する。図5に示すように、重量Wの車体12を備えた
車両が速度vで走行している時の車輪での振動現象、す
なわち車体と車輪と路面とによって構成される振動系の
振動現象を、車輪回転軸で等価的にモデル化した図6に
示すモデルを参照して考察する。
【0009】ここで、ブレーキ力(制動力)は、路面と
接するタイヤのトレッド15の表面を介して路面に作用
するが、このブレーキ力は実際には路面からの反作用と
して車体12に作用するため、車体重量の回転軸換算の
等価モデル17はタイヤのトレッドと路面との間の摩擦
要素16を介して車輪13と反対側に連結したものとな
る。これは、シャシーダイナモ装置のように、車輪下の
大きな慣性、すなわち車輪と反対側の質量で車体の重量
を模擬することができることと同様である。
【0010】図5、図6でタイヤリムを含んだ車輪13
の慣性をJw 、リムとトレッド15との間のばね要素1
4のばね定数をK、トレッド15の慣性をJt 、トレッ
ド15と路面との間の摩擦要素16の摩擦係数をμ、車
体12の重量の回転軸換算の等価モデル17の慣性をJ
V とすると、系全体の特性は次の(2)〜(4)のよう
になる。なお、以下では時間に関する1階微分d/dt
を「' 」で表し、時間に関する2階微分d2 /dt2
「" 」で表す。
【0011】 JW θw " = −T+K(θt −θw ) ・・・(2) Jt θt " = −K(θt −θw )+μWR ・・・(3) Jv ωv ' = −μWR ・・・(4) ここで、 ww = θw ' ・・・(5) Jv = R2 W ・・・(6) ωv = v/r ・・・(7) であり、θw は車輪13の回転角、θw " は車輪13の
回転角加速度、ww は車輪13の回転角速度、すなわち
車輪速度、θt はトレッド15の回転角、θt "はトレ
ッド15の回転角加速度、ωv は車体等価モデル17の
回転軸換算の回転角速度、Tは車輪13に加えられる制
動トルク、Wは車体の重量、Rは車輪半径である。制動
トルクTは実際にはブレーキバルブの圧力Pb の制御に
よって行う。
【0012】タイヤがグリップしている時は、トレッド
15と車体等価モデル17とが直結されていると考える
と、車体等価モデル17の慣性とトレッド15の慣性と
の和の慣性と車輪13の慣性とが共振し、この時の車輪
共振系の共振周波数f1 は、 f1 =√{(Jw +Jt +Jv )K/Jw (Jt +Jv )}/2π ・・・(8) となる。
【0013】ところで、車輪と路面との間の摩擦係数μ
は、スリップ率S((実車体速度−車輪速度)/実車体
速度)に対し、図2のように変化する。上記のようにタ
イヤがグリップしている状態は図2のμ−S特性では領
域A1 に対応する。
【0014】逆に、タイヤの摩擦係数μがピークμに近
付く場合には、タイヤ表面の摩擦係数μがスリップ率S
に対して変化し難くなり、トレッド15の慣性の振動に
伴う成分は車体等価モデル17に影響しなくなる。つま
り等価的にトレッド15と車体等価モデル17とが分離
され、トレッド15と車輪13とが共振を起こすことに
なる。この時の車輪共振系の共振周波数f2 は、 f2 =√{(Jw +Jt )K/Jw t }/2π ・・・(9) となる。この状態は図2の領域A2に対応し、一般にピ
ークμの点に達すると瞬時に領域A3へと遷移してタイ
ヤがロックする。
【0015】各慣性の大小関係は、 Jt <Jw <Jv ・・・(10) であり、これより、 f1 <f2 ・・・(11) になる。つまり、タイヤがロックに至る場合、車輪共振
系の共振周波数が高周波側にずれることになり、これと
共に、共振周波数f1 の車輪速度の振動成分は、急激に
減少する。なお、この共振周波数の変化と、この変化に
よる共振周波数f1 の振動成分の減少はピークμ付近で
急激に発生する。
【0016】モデルを簡単化し、トレッド15の慣性J
t を無視した場合でもピークμ状態に近づくと車輪共振
系の共振周波数及び振動成分の変化は起こり、同様の解
析が可能である。
【0017】以上より、路面と車輪との間の滑り状態が
変化すると車輪速度に現れる共振周波数f1 での振動特
性も変化するので、この振動特性に基づいて、滑り状態
がピークμ直前の状態であるか否かを検出できることが
わかる。
【0018】そこで、本発明では、車輪速度に現れる振
動特性を顕在化させるため、ブレーキ圧を微小励振す
る。これにより、車輪速度は共振周波数f1 の微小振幅
が印加される。ここで、上記従来技術では、共振周波数
1 でブレーキ力を微小励振していたが、請求項1の発
明では、共振周波数f1 の値を2以上の整数n(n=2,
3,4,..... のいずれかの数)で除算した値の周波数(f
1 /n)又は該周波数近傍の周波数でブレーキ圧を微小
励振する。
【0019】ところで、ブレーキ圧を微小励振する場
合、その励振波形は、一般には、正弦波形のような単一
周波数の振動波形とはならず、高調波を含んだ歪みを生
じている。例えば、共振周波数f1 が40Hz程度の振
動系で、制御性を考慮して1周期24[ms],周波数
41.67[Hz]でホイールシリンダ圧を励振した場
合の油圧波形は、図4(a)に示すように、歪みを伴っ
た波形となる。このホイールシリンダ圧は、車輪に作用
するブレーキ圧と略等価とみなせるので、ブレーキ圧も
図4(a)の油圧波形と同様に歪みを生じていると考え
られる。
【0020】ここで、図4(a)の油圧波形の周波数ス
ペクトルを図4(b)に示す。励振周波数の41.67
Hzの付近でパワーがピークとなっている共に、その高
調波成分、すなわち41.67×2,41.67×3,
41.67×4,....の各周波数でもパワーが極大
値をとっていることがわかる。
【0021】次に、本発明のようにf1 /n(nは2以
上の任意の整数)の周波数でブレーキ圧を励振する場合
を考える。図3(a)には、上記具体例の振動系におい
て、n=2、すなわち、励振周波数を41.67/2=
20.83Hzとしたときのホイールシリンダ圧の油圧
波形が示されている。この油圧波形も歪みを生じている
ため、図3(b)に示すように、その周波数スペクトル
は、20.83,20.83×2,20.83×
3,....の各周波数で極大値をとっている。ここ
で、2倍の高調波は、共振周波数f1 と同じ41.67
Hzの周波数である。
【0022】これにより、f1 /2の周波数でブレーキ
圧を励振した上記例の場合でも、ブレーキ圧に共振周波
数f1 の励振成分が印加されるため、共振周波数f1
の車輪速度の微小振動が発生することがわかる。
【0023】一般に、f1 /nの周波数でブレーキ圧を
励振したとき、車輪速度に現れる振動成分には、その高
調波成分、すなわち、(f1 /n)×2,(f1 /n)
×3,(f1 /n)×4,.....の振動成分が生
じ、その振動成分の中には、共振周波数f1 の振動成分
も必ず存在している。
【0024】このため、f1 /nの周波数でブレーキ力
が励振されたとき、共振周波数f1 での車輪速度の振動
特性を検出することができるので、この振動特性に基づ
いて、タイヤと路面との間の摩擦係数が略ピーク値とな
るスリップ率以下のスリップ率となるように制御するこ
とができる。例えば、ブレーキ圧の微小振幅に対する共
振周波数f1 での車輪速度の振幅の比である微小励振ゲ
インが基準値以下となったとき、滑り状態がピークμ直
前の状態であると判定し、車輪に作用する平均的なブレ
ーキ力を低減する。これにより、ピークμを越えてブレ
ーキ制動されることによるタイヤのロックを確実に防止
できる。
【0025】このように本発明では車体速度の推定部を
必要とせず、車体加速度を用いる必要がないため、制御
装置やセンサの簡略化が行えると共に、ブレーキ力の励
振周波数を低減することができる。
【0026】さらに、請求項2の発明では、上記共振周
波数f1 の奇数分の1の周波数でブレーキ力を微小励振
するので、共振周波数f1 の高調波と該共振周波数の奇
数分の1の周波数の励振波との干渉が低減し、車輪速度
の正確な振動特性を得ることができる。
【0027】例えば、周波数f1 /2の励振波形、周波
数f1 /3の励振波形、及び該励振波による高調波とし
ての共振周波数f1 の波形を図7に示す。同図に示すよ
うに、周波数f1 /2の励振波形で極大となる各時点
は、共振周波数f1の波形での極小となる各時点に一致
するのに対し、周波数f1 /3の励振波形で極大となる
各時点は、共振周波数f1 の波形での極大となる各時点
に一致する。
【0028】よって、周波数f1 /2の励振波と共振周
波数f1 の高調波との干渉が大きく、これに比べて、周
波数f1 /3の励振波と共振周波数f1 の高調波との干
渉が小さくなる。このことは、一般に、共振周波数の偶
数分の1の周波数の励振波及び奇数分の1の励振波にお
いても成り立ち、よって励振周波数を共振周波数の奇数
分の1とすることで干渉を少なくできる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて詳細に説明する。
【0030】以下で説明する各実施の形態の通常走行時
を対象としたブレーキ圧振動装置は、図1に示すよう
に、車両運動系22を制御して車輪に加わるブレーキ圧
(以下、ブレーキ力という)を制御する制御部Cと、運
転者が操作するブレーキペダル34を含む運転者操作部
24によるブレーキ力に微小振動ブレーキ力を加えた時
の車輪速度の共振特性を検出する検出部20と、によっ
て構成されている。
【0031】制御部Cは、この運転者操作部24による
平均的なブレーキ力に微小振動を与えるブレーキ力励振
部19と、検出部20で検出された車輪速度の共振特性
に基づいてブレーキ力増加を抑制するブレーキ力低減部
21とを含んで構成されている。なお、このブレーキ力
励振部19による微小振動の周波数は、タイヤがグリッ
プしている時の車輪速度の共振周波数f1 を2以上の整
数n(2,3,4,....のいずれかの数) で除算した値の周波
数とされている。
【0032】また、検出部20は、車輪速度を検出する
車輪速センサと車輪速度の共振周波数成分の振幅を検出
する振幅検出手段、または車輪速度を検出する車輪速セ
ンサとブレーキ力の微小励振の振幅に対する車輪速度の
共振周波数成分の振幅のゲインが最大となる周波数を抽
出する抽出手段で構成することができる。 (第1の実施の形態)次に、第1の実施の形態のブレー
キ圧振動装置について説明すると、図8に示すように、
検出部20は、車輪速度ωw を検出する車輪速センサと
車輪速センサに接続されて車輪速度ωw の共振周波数成
分の振幅値を検出する振幅値検出部23とで構成されて
いる。この車輪速センサは、制御対象となる車両運動系
22に取付けられており、車輪速度ωw に比例した交流
信号を出力する。
【0033】また、制御部Cのブレーキ力励振部19
は、振幅値検出部23からの検出値ω d に基づいてブレ
ーキ指令Pb の微小振幅の振幅値であるPv を演算する
微小ブレーキ力励振指令演算部26で構成され、ブレー
キ力低減部21は、振幅値検出部23からの検出値ωd
と微小ブレーキ力励振指令演算部26からの微小ブレー
キ力励振振幅指令Pv とに基づいてブレーキ力低減指令
r を演算するブレーキ力低減指令演算部25で構成さ
れている。
【0034】このブレーキ力低減指令演算部25及び微
小ブレーキ力励振指令演算部26は、ブレーキ力低減指
令演算部25からのブレーキ力低減指令Pr 、運転者操
作部24によるブレーキ力Pd 及び微小ブレーキ力励振
指令演算部26からの微小ブレーキ力励振振幅指令Pv
に基づいて制御対象となる車両運動系22への入力であ
るブレーキ力指令を生成し、このブレーキ力指令を車両
運動系22へ加えるブレーキバルブドライバ27に接続
されている。
【0035】振幅値検出部23は、図9に示すように、
通過帯域がタイヤがグリップしている時の車輪速度の共
振周波数f1 を含む所定範囲に設定された帯域通過フィ
ルタ28、帯域通過フィルタ28出力を整流する全波整
流器29、及び全波整流器29出力を平滑化して直流化
する低域通過フィルタ30により構成されている。振幅
値検出部23は、タイヤがグリップしている時の車輪速
度の共振周波数f1のみを検出し、車輪速度の共振周波
数f1 の成分を直流化して出力するので、振幅値検出部
23の検出値ωd は車輪速度の共振周波数f1 成分の振
幅値となる。
【0036】ところで、車輪と路面との間で起こる共振
は、基本的に減衰振動であり、持続振動とはならないた
め、路面の凹凸等の外乱による励振ではそのタイヤがグ
リップしている時の共振周波数f1 成分の検出は困難な
ものとなる。
【0037】そこで、本実施の形態では、微小ブレーキ
力励振指令演算部26において、タイヤがグリップして
いる時の車輪速度の共振周波数f1 を2以上の整数n
(2,3,4,....のいずれかの数) で除算した値の周波数の
微小振動を加える際の微小振幅指令Pv を演算し、運転
者が操作指令するブレーキ力へ能動的にf1 /nの周波
数の微小振動を加えることにより、その増幅特性から、
共振周波数f1 の変化を検出している。
【0038】ここに、励振周波数f1 /nでブレーキ力
を微小励振するが、ブレーキ力波形の歪み等に起因して
該励振周波数の高調波成分のブレーキ圧振動が発生す
る。この高調波成分の中には、グリップ時の共振周波数
1 の振動成分が含まれているため、車輪速度には、振
幅値検出部23でωd を算出するのに必要となる共振周
波数f1 の振動成分が発生する。なお、励振周波数の振
動成分及び他の高調波成分は、帯域通過フィルタ28に
よりカットされ、共振周波数f1 の振動成分のみが通過
されるため、高調波等の影響を除去することができる。
【0039】図10に示すように、車輪共振系の周波数
特性は、摩擦係数μがピーク値に近付いていくと、共振
周波数における車輪速度のゲインのピークが低くなり、
摩擦係数μがピーク値を越えると共振周波数はタイヤが
グリップしている時の共振周波数f1 よりも高い周波数
側にずれる。タイヤがグリップしている状態での共振周
波数f1 の成分についてみると、ピークμ状態に近づく
ことによって、共振周波数f1 成分の振幅の減少となっ
て現れてくる。従って、車輪速度に現れ共振周波数f1
の微小振動成分のゲインからピークμ状態への接近を検
知することが可能である。
【0040】そこで、本実施の形態では、図11に示す
ように、車輪に加えられる平均的なブレーキ力である平
均ブレーキ力Pm の低減を制御するブレーキ力低減指令
演算部25を、振幅値検出部23の検出値ωd の微小ブ
レーキ力励振振幅指令Pv に対するゲインである微小励
振ゲインgd を演算する演算部31と、微小励振ゲイン
d と基準値gs との差gd −gs 、比例ゲインGPr1
及び積分ゲインGIr 1 を用いた比例積分制御により低減
ブレーキ力を演算するPI制御器32と、運転者の操作
によるブレーキ力Pd を超えて指令されないように正値
を除去して負の値のみを採用して低減ブレーキ力指令P
r として出力する正値除去部33とから構成している。
【0041】このブレーキ力低減指令演算部25は、微
小励振ゲインgd が基準値gs より大きければ、すなわ
ち微小ブレーキ力励振振幅指令Pv で励振したときの検
出値ωd が基準値gs v (ただし、ωd は回転速度で
単位は〔rad/s〕、Pvは圧力またはトルクで単位
は〔Pa〕または〔Nm〕である)より大きければ図1
0で説明したようにタイヤがグリップしているものとし
て、平均ブレーキ力P m を維持し、逆に微小励振ゲイン
d が基準値gs より小さくなれば、すなわち微小ブレ
ーキ力励振振幅指令Pv で励振したときの検出値ωd
基準値gs vより小さくなれば、摩擦係数がピークμ
に近付きつつあるため平均ブレーキ力P m を減少させ
る。
【0042】図12に示すように、平均ブレーキ力Pm
は、 Pm =Pd +Pr ,Pr ≦0 ・・・(12) であり、低減ブレーキ力指令Pr は常に負の値であるか
ら、運転者操作によるブレーキ力Pd を超えて平均ブレ
ーキ力Pm が指令されることはない。なお、平均ブレー
キ力Pm を維持することにより、車輪に作用するブレー
キ力はドライバの踏力に応じて増加する。
【0043】ブレーキバルブドライバ27は、平均ブレ
ーキ力Pm の指令および微小ブレーキ力励振振幅指令P
v を実際の車輪への制動トルクに変換する部分であり、
図13に示すように、ブースタ35、バルブ制御系3
6、ブレーキキャリパー37、リザーバタンク38及び
オイルポンプ39を備えている。
【0044】ブレーキペダル34は、ブレーキペダル3
4の操作力を増圧するブースター35を介してバルブ制
御系36の増圧側バルブ40へ接続されている。バルブ
制御系36には、バルブ動作指令が入力されると共に、
ブレーキキャリパー37に連結されかつ減圧側バルブ4
1を介してリザーバータンク38に連結されている。
【0045】このバルブ動作指令は、図14に示す回路
によって生成される。この回路は、平均ブレーキ力の指
令Pm と微小ブレーキ力励振振幅指令Pv とを入力し、
図15に示すように、平均ブレーキ力Pm の指令をf1
/nの励振周波数で励振する。
【0046】この動作原理を以下に説明する。まず、演
算部18Aで、平均ブレーキ力Pmの指令と微小ブレー
キ力励振振幅指令Pv の和Pm1を演算し、演算部20A
で平均ブレーキ力のPm 指令と微小ブレーキ力励振振幅
指令Pv との差Pm2を演算する。和Pm1は、ブレーキ力
の指令の上限に対応し、差Pm2はブレーキ力の指令の下
限に各々対応する。この2つの和Pm1、差Pm2を指令と
して、演算部18B、20Bで実ブレーキ圧Pb*との差
e1、e2を演算し、指令生成部42、43において各
々の差e1、e2からバルブの位置を計算して指令を生
成し、この両者を励振周波数f1 /nで切替えることに
よって、ブレーキ圧を励振する。ただし、和Pm1につい
ては増圧と保持のみの指令、差Pm2については保持と減
圧のみ指令を生成する。このように指令を生成すること
により、ブレーキ圧指令の過度の振動を防ぎ、励振周波
数f1 /nでの励振を行うことができる。
【0047】ブレーキバルブドライバ27は、制動油圧
を増圧する場合、ブースター35側の増圧側バルブ40
を開き、リザーバータンク38の減圧側バルブ41を閉
じて、ブースター圧力をそのままブレーキキャリパー3
7へ入力する。逆に、制動油圧を減圧する場合は、増圧
側バルブ40を閉じて、減圧側バルブ41を開くことに
より、オイルオンプ39を介して、ブレーキキャリパー
37内の圧力(ホイールシリンダ圧)を減少させる。ま
た、両バルブを閉じれば、制動油圧は保持されてブレー
キ力は保持される。
【0048】このようなバルブ動作では、運転者のペダ
ル34の操作によるブレーキ力以上にブレーキキャリパ
ー37内の圧力が上昇することはなく、通常走行時の弱
いブレーキング時にはブレーキ圧振動装置は動作しな
い。運転者のペダル34の操作によるブレーキ力がピー
クμを超えて制動されようとする時、ブレーキ圧振動装
置が動作し、ピークμに追従したブレーキ動作が実現で
きる。
【0049】このブレーキ圧振動装置によれば、運転者
の操作によるブレーキ力と微小振動ブレーキ力との和の
ブレーキ力を車輪に加えたときに、摩擦係数がピークμ
状態に達すると、ブレーキ力低減部21によって平均ブ
レーキ力が低減されそれ以上のブレーキ力増加が抑圧さ
れ、これによってタイヤがロックするのが防止される。
【0050】これに対し、自動運転システムにおいて緊
急時のブレーキ動作については、運転者の意思とは無関
係に最小の制動距離での安定な制動動作が必要とされ、
車輪に加えられるブレーキ力は、運転者の操作による値
に関係なくピークμ状態となるように平均ブレーキ力が
増加・減少され、制動動作されることになる。このよう
な緊急時のブレーキ動作は列車等にも適用することがで
きる。これは、以下に示す全ての実施の形態においても
同様である。
【0051】図16(1)〜(4)は本実施の形態のブ
レーキ圧振動装置の各部の動作を図示したものである。
(1)はブレーキ力、(2)は車輪速度、(3)は微小
励振ゲイン、(4)は摩擦係数である。ここで、車両の
初速度は40km/h、ピークμ値は0.6、基準微小励
振ゲインgs は0.01rad/s/Nmとしている。
【0052】ドライバの操作と同時にブレーキ力励振を
開始し、微小励振ゲインgd が基準値gs 以上の場合
は、ドライバの操作によるブレーキ力Pd がそのまま車
輪に加わっている。検出される微小励振ゲインgd が基
準値gs を下回るとブレーキ力低減部21によって、平
均ブレーキ力Pm が低減されている。この結果、タイヤ
路面間の摩擦係数μは車輪のロックを起こすことなくピ
ーク付近に固定されていることがわかる。
【0053】この実施の形態は、基本的に現行のブレー
キ圧振動装置を流用する形で実現しており、ブレーキバ
ルブのバルブ動作を変更するだけで実現可能である。こ
のことは現行ブレーキ圧振動装置からの変更を容易なも
のとしている。また、車体速度の推定を必要としないた
めに車体加減速度検出のためのGセンサ等を不要とし、
ハードウエアの簡素化が行える。
【0054】(第2の実施の形態)次に第2の実施の形
態について説明する。本実施の形態は、入力である微小
ブレーキ力の振幅を一定の状態に保持できる場合に本発
明を適用したものであり、図17に示すように、一定の
微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を出力する微小ブレー
キ力励振指令演算部44と、車輪速度振動の共振周波数
成分の振幅である振幅値検出部23の検出値ωd のみか
らブレーキ力低減指令Pr を演算するブレーキ力低減指
令演算部45と、を備えている。なお、本実施の形態の
微小励振の周波数は第1の実施の形態と同様にグリップ
時の共振周波数f1 を2以上の整数nで除した周波数
(f1 /n)である。
【0055】このブレーキ力低減指令演算部45は、図
18に示すように、振幅値検出部23の検出値、すなわ
ち共振周波数成分の振幅ωd と基準値ωs との差ωs
ωdを演算する演算器と、比例ゲインGpr2 及び積分ゲ
インGIr2 により比例積分制御を行うPI制御器46
と、運転者操作によるブレーキ圧Pd を超えて指令され
ないように正値を除去する正値除去部47とで構成され
ている。
【0056】本実施の形態では、振幅値検出部23の出
力すなわち共振周波数成分の振幅ω d が基準値ωs より
大きければタイヤがグリップしているものとして、平均
ブレーキ力Pm を維持するようブレーキ力低減指令Pr
を維持し、逆に共振周波数成分の振幅ωd が基準値ωs
より小さくなれば、ロック状態に近付きつつあるとして
ブレーキ力低減指令Pr を減少させて平均ブレーキ力を
減少させる。
【0057】本実施の形態も、基本的に現行のブレーキ
圧振動装置を流用する形で実現しており、ブレーキバル
ブの動作を変更するだけで実現可能である。本実施の形
態では、微小励振によるブレーキ力の振幅に対する車輪
速度の共振周波数成分の振幅のゲインを演算する必要が
なくなるので、ブレーキ圧振動装置の簡単化を図ること
ができる。
【0058】(第3の実施の形態)次に第3の実施の形
態について説明する。本実施の形態は、平均ブレーキ力
に加える微小ブレーキ力を制御して、車輪速度に現れる
微小振動の振幅を一定にするようにしたものであり、図
19に示すように、車輪速度の共振周波数成分の振幅で
ある振幅値検出部23の検出値ωd から微小ブレーキ力
励振振幅指令Pv を出力する微小ブレーキ力励振指令演
算部48と、微小ブレーキ力励振振幅指令P v からブレ
ーキ力低減指令Pr を演算するブレーキ力低減指令演算
部49と、を備えている。
【0059】このブレーキ力励振指令演算部48は、図
20に示すように、振幅値検出部23の出力、すなわち
共振周波数成分の振幅ωd と基準値ωs との差ωs −ω
d を演算する演算器と、比例ゲインGPv及び積分ゲイン
Ivにより比例積分制御を行うPI制御器50とで構成
されている。
【0060】また、ブレーキ力低減指令演算部49は、
図21に示すように、微小ブレーキ力基準振幅値Ps
微小ブレーキ力励振振幅指令Pv との差Ps −Pv を演
算する演算器と、比例ゲインGPr3 及び積分ゲインG
Ir3 により比例積分制御を行うPI制御器51と、運転
者操作によるブレーキ圧Pd を超えて指令されないよう
に正値を除去する正値除去部52とで構成されている。
【0061】本実施の形態では、車輪速度の共振周波数
成分の振幅ωd と基準値ωs との差ωs −ωd をフィー
ドバックして微小ブレーキ力励振振幅指令Pv を生成し
ている。つまり、振幅ωd が基準値ωs より小さい場合
には、微小ブレーキ励振振幅指令Pv を大きくし、逆に
振幅ωd が基準値ωs より大きい場合には微小ブレーキ
力励振振幅指令Pv を小さくすることによって、車輪速
度に現れる励振周波数の高調波成分の振幅値ωd を、微
小な一定の基準値ωs に制御している。このように制御
することにより、車両運転者が感じ得ない範囲での励振
を行うことができる。
【0062】このように本実施の形態では、車輪速度に
現れる微小振動の振幅ωd を一定とするように微小ブレ
ーキ力励振振幅指令Pv を制御しているから、ピークμ
への接近による共振点のずれは、入力であるブレーキ力
の励振振幅指令Pv の増加となって現れる。
【0063】したがって、ある一定の微小ブレーキ力基
準振幅値Ps からの偏差をフィードバックし、ブレーキ
力の励振振幅指令Pv が微小ブレーキ力基準振幅値Ps
より大きい時に平均ブレーキ力Pm を減少させ、逆にブ
レーキ力の励振振幅指令Pvが微小ブレーキ力基準振幅
値Ps より小さい時に平均ブレーキ力Pm を増加させる
ように制御することによって、ピークμに追従したブレ
ーキ動作を行っている。
【0064】本実施の形態も、基本的に現行のブレーキ
圧振動装置を流用する形で実現しており、ブレーキバル
ブのバルブ動作方法を変更するだけで実現可能である。
この場合も、微小励振による車輪速度の振幅もブレーキ
力の振幅に対するゲインを演算する必要がなくなり、制
御装置の簡単化が図れる。また、車輪速度に現れる微小
振動を十分小さな値とすることにより、運転者の感知し
ない範囲で常に励振することができ不快振動を防ぐこと
ができる。
【0065】(第4の実施の形態)第4の実施の形態に
係る振幅値検出部は、車輪速度と車輪速度の共振周波数
1 の単一正弦波との相関を求めて車輪速度の共振周波
数f1 の振幅を検出するものであり、ニューラルコンピ
ュータによっても構成可能である。
【0066】図22は単一正弦波との相関によって所望
の共振周波数f1 の振幅成分を検出する回路を示すもの
で、必要な時系列データを一定時間ΔTだけ保持するこ
とにより遅延させる遅延時間回路61と、この一定時間
ΔTを周期とする余弦波の各時間値と掛け合わせて加算
して積和Rを演算する積和演算部62と、正弦波の各時
間値と掛け合わせて加算して積和Iを演算する積和演算
部63と、積和Rおよび積和Iの2乗和の平方根を計算
する計算部64とから構成されている。
【0067】ここで車輪速度ωw のサンプリング間隔を
1msとし、検出したい周波数を40Hzにすると、検出し
たい成分の一周期は25サンプル点である。積和Rおよ
び積和Iは、 であり、係数ci 、si は ci =cos{2π(i−1)/25} (15) si =sin{2π(i−1)/25} (i=1,2,...25) (16) であることから、積和Rおよび積和Iは周波数1/ΔT
成分に対するフーリエ係数の実数部、虚数部を求めてい
ることに他ならない。したがって、この積和R、積和I
の2乗和の平方根を求めればその振幅値が得られること
になる。
【0068】この実施の形態も車輪速度信号を処理する
ことより共振周波数成分の振幅変化を検出しており、セ
ンサ等の追加は必要なく実現できる。
【0069】(第5の実施の形態)図23は圧電素子に
よるブレーキ力励振部を構成した第5の実施の形態のブ
ロック図である。本実施の形態では、タイヤ65への平
均的なブレーキ力はブレーキキャリパー66内の圧力制
御により行い、同時にブレーキディスク67との接触表
面に配置した圧電素子68への微小励振電圧を励振する
ことにより、ブレーキ力を励振している。
【0070】本実施の形態のブレーキ力の励振において
も、ブレーキ力励振波形が歪むか、或いは高調波成分を
含むような波形に励振制御することにより、上記各実施
の形態と同様に、励振周波数をグリップ時の共振周波数
の整数分の1とすることができる。
【0071】なお、上記各実施の形態の微小ブレーキ力
励振指令演算部26、44、53およびブレーキ力低減
指令演算部25、45、49、54は、上記の構成の他
により高度な制御系、例えばH∞制御、2自由度制御な
どのロバスト制御系や、ニューラルコンピュータやファ
ジー制御系、適応制御等用いて構成することも可能であ
る。
【0072】この場合にも、車輪速センサからの車輪速
度を基に処理するもので、新たなハードウェアを必要と
しない。制御アルゴリズムの変更は制御に用いるコンピ
ュータ内のプログラム変更で可能であり、より最適な制
御系を容易に用いることができる。
【0073】また、上記各実施の形態では実ブレーキ力
b*をフィードバックすることで圧力制御系を構成して
いるが、プログラム制御などにより、実ブレーキ力をフ
ィードバックせずに制御系を構成することも可能であ
る。
【0074】さらに、電気自動車のように駆動・制動ト
ルクが電気によって制御できる場合にはその駆動電流に
微小な振動を加えることにより励振することが可能であ
る。
【0075】この実施の形態では電気自動車の電流制御
系の指令に微小励振振幅を加えることでブレーキ圧振動
装置を簡単に実現でき、また、電動モータの回転数の検
出にも新たなセンサを必要としない。電動モータの回転
数検出法には瞬時速度オブザーバ等を用いることがで
き、より精度の高い制御系構成も可能である。
【0076】なお、この励振方法においても、ブレーキ
力励振波形が歪むか、或いは高調波成分を含むような波
形に励振制御することにより、上記各実施の形態と同様
に、励振周波数をグリップ時の共振周波数の整数分の1
とすることができる。
【0077】従来では、車速の近似値の導出のためには
制動中にブレーキ力を極端に減少させる必要があり、こ
れは車輪に比較的低周波で不快な振動を起こさせること
にもなっているが、上記の各実施の形態では車輪共振系
の物理現象に基づいているため、絶対的な車速を必要と
せず、不快制動をなくすことができる。
【0078】また、ブレーキ力への励振を微小なものと
することで、摩擦係数μをピーク値付近に固定すること
が可能であり、従来からの比較的大きな振幅変動を必要
とするものよりも制動距離が短くなる。
【0079】さらに、路面状態が変化した場合にも、共
振周波数の変化は同様に起こり、その場合にも安定な動
作が行える。これによりブレーキ圧振動装置の製作に必
要なチューニング工程の大幅な削減が可能になる。
【0080】また処理に必要なセンサ信号は基本的に車
輪速度のみであり、ロータリエンコーダなどの比較的安
価なセンサを用いることで構成することが可能になる。
【0081】(第6の実施の形態)タイヤがロックしな
い状態での共振周波数での車輪速−励振ブレーキ圧力ゲ
インを記憶しておき、相対的にどれだけ減少したかを用
いてタイヤがロックに近いか否かを判断し、制御系を構
成した第6の実施の形態を図24に示す。本実施の形態
では、ブレーキ圧力低減指令演算部75は、図25に示
すように、車輪速−励振ブレーキ圧力ゲイン計算部77
の出力値gd について、平均ブレーキ圧力P m が十分小
さいときの値をメモリ76に記憶しておき、この記憶値
s2からの相対的なゲインの減少量gs2−gd の基準値
s1との差gs1−(gs2−gd )に対して、比例ゲイン
pr6 、積分ゲインGIr6 のPI制御器78を介して低
減ブレーキ圧力を演算し、運転者操作によるブレーキ圧
力Pd を越えて指令されないように正値除去回路79に
より負の値のみを採用してPr としている。
【0082】上記基準値gs1は、車輪等の変化(車輪の
交換等)に応じて適切な値となるため、タイヤのロック
をより効果的に防止できる。本実施の形態では、車輪速
−励振ブレーキ圧力ゲインにより制御系を構成している
が、前述のように、ブレーキ圧力の励振による微小振幅
を一定にした場合では、車輪速微小振幅のみで構成可能
であり、逆に車輪速微小振幅を一定にするようにブレー
キ圧力の励振を行なった場合では、ブレーキ圧力微小振
幅のみからタイヤがロックに近いか判断し、指令値を計
算することができる。
【0083】この実施の形態も、現行のブレーキ圧振動
装置を流用する形で実現しており、ブレーキバルブの動
作方法を変えるだけで実現可能である。このことは現行
システムからの変更を容易なものとしている。また、車
体速度の推定を必要としないために車体加減速検出のた
めのGセンサ等を不要とし、ハードウエアの簡素化が行
なわれる。さらに、ブレーキ圧力励振の周波数は数十H
z程度のものであり、十分微小な励振振幅とすることで
搭乗者に不快感を与えることなく実現可能である。
【0084】(第7の実施の形態)第1の実施の形態の
ブレーキ圧振動装置では、摩擦係数μがピークとなる微
小励振ゲインgd が、車輪速度によらず一定であると仮
定し、検出された微小励振ゲインgd が基準値gs より
小さいときに、ブレーキ力を減少させるように制御し
て、ピークμ付近に固定し、タイヤがグリップした状態
での最大のブレーキ力を実現している。
【0085】しかし、ピークμの状態における微小励振
ゲインgd は、車速が低速になるほど大きくなることが
実験的にわかっている。そこで、第7の実施の形態で
は、車速に関連した物理量の1つである車輪速度に依存
させて基準値gs を変化させることによって、車速に応
じて変化する微小励振ゲインgd と基準値gs との差分
に基づくブレーキ制御を最適にしている。
【0086】本実施の形態の構成ブロックを図26に示
す。なお、第1の実施の形態と同一の構成要件は、同一
の符号を付して説明を省略する。また、本実施の形態の
微小励振の周波数も第1の実施の形態と同様にグリップ
時の共振周波数f1 を2以上の整数nで除した周波数
(f1 /n)である。
【0087】図26に示すように、第1の実施の形態と
の相違点は、車輪速度ωw がブレーキ力低減指令演算部
25に入力されるという点である。
【0088】このブレーキ力低減指令演算部25は、図
27に示すように、入力された車輪速度ωw に基づいて
最適な基準値を算出し、これを指令ゲインgs として出
力する指令ゲイン演算部80をさらに含んで構成されて
いる。この指令ゲイン演算部80には、指令ゲインgs
を、車輪速度ωw に応じてどのように変化させるかを示
すテーブルが内部メモリに格納されている。
【0089】このテーブルにおける車輪速度ωw と指令
ゲインgs の詳細な関係は、図28に示すように、車輪
速度ωw が高速のときの指令ゲインgs は小さく、低速
になるに従って指令ゲインgs は大きくなるように、す
なわち指令ゲインgs が車輪速度ωw に応じて単調減少
するように定められている。これは、車輪速度ωw が低
速になるほど大きくなる微小励振ゲインgd に対応する
ものである。
【0090】この指令ゲイン演算部80は、車輪速度ω
w が入力されると、図28の関係を示すテーブルを参照
して、入力された車輪速度ωw に対応する指令ゲインg
s の値を求め、これを出力する。従って、入力される車
輪速度ωw が小さくなるに従い、大きい値の指令ゲイン
s を出力する。
【0091】演算部31は微小励振ゲインgd を演算す
るが、前述したようにこの微小励振ゲインgd も、車輪
速度ωw が小さくなるに従い大きい値に変化する。
【0092】次に、演算部31により演算された微小励
振ゲインgd と、指令ゲイン演算部80により演算され
た指令ゲインgs との差分gd −gs がPI制御器32
に入力され、この差分に基づいて低減ブレーキ力が演算
される。正値除去部33では、演算された低減ブレーキ
力から正値を除去して、低減ブレーキ力指令Pr として
出力する。
【0093】この低減ブレーキ力指令Pr による制御で
は、微小励振ゲインgd が指令ゲインgs より大きけれ
ば、タイヤがグリップしているものとして、平均ブレー
キ力Pm を維持し、逆に微小励振ゲインgd が指令ゲイ
ンgs より小さくなれば、摩擦係数がピークμに近付き
つつあるため平均ブレーキ力Pm を減少させる。このと
き、車輪速度ωw の変化に伴って微小励振ゲインgd
変化するが、この変化をキャンセルするように指令ゲイ
ンgs も変化させるため、各速度においてピークμを維
持する最適なブレーキ力の制御が可能となる。
【0094】このように、車輪速度ωw に依存して指令
ゲインgs を変化させることにより、各車速においてタ
イヤがグリップした状態での最大のブレーキ力を実現で
き、停止距離や停止時間の短縮化が図れる。
【0095】本実施の形態においては、車輪速度ωw
依存させて指令ゲインgs を変化させたが、車速又は車
輪速度ωw 以外の車速に関連した物理量に依存させて変
化させても良い。
【0096】以上のように上記いずれの実施の形態にお
いても、ブレーキ力励振の周波数の値は、タイヤのグリ
ップ時の共振周波数を2以上の整数nで除した値として
いるので、該共振周波数を40Hzとした場合、n=2
で、約20Hz程度、n=3で約13.3Hzとなっ
て、バルブ制御系36或いは圧電素子68を、より低周
波数で切り替え制御できるので、これらの微小励振手段
の磨耗を防ぎ、耐用年数を向上させることができる。
【0097】なお、本発明は、上記各実施の形態に限定
されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内
において任意好適に変更可能である。
【0098】
【発明の効果】以上説明したように請求項1及び請求項
2の発明によれば、車体と車輪と路面とから構成される
振動系の共振周波数の値を2以上の整数で除算した値の
周波数又は該周波数近傍の周波数でブレーキ圧を微小励
振しているので、車体速度を推定することなく、タイヤ
のロックを防ぎ安定かつ正確なアンチロックブレーキ動
作を行うことができると共に、バルブ制御系などの寿命
をさらに向上させることができる、という優れた効果が
得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のピークμ追従ABS制御系の通常走行
時の概念図である。
【図2】タイヤと路面との間の摩擦係数μのスリップ率
Sに対する特性を示す線図である。
【図3】グリップ時の共振周波数の1/2の周波数でホ
イールシリンダ圧を微小励振したときの油圧の振動特性
を示す図であって、(a)はホイールシリンダ圧の時間
的変化を示す波形、(b)は該波形の周波数スペクトル
である。
【図4】グリップ時の共振周波数でホイールシリンダ圧
を微小励振したときの油圧の振動特性を示す図であっ
て、(a)はホイールシリンダ圧の時間的変化を示す波
形、(b)は該波形の周波数スペクトルである。
【図5】車両の力学モデルを示す図である。
【図6】車両の力学モデルを回転軸換算したモデルを示
す図である。
【図7】グリップ時の共振周波数の1/2及び1/3の
周波数の励振波形と、この励振により高調波として生じ
た共振周波数の波形を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態であるピークμ追従
ブレーキ圧振動装置のブロック図である。
【図9】振幅値検出部の構成例を示すブロック図であ
る。
【図10】共振周波数の上昇とタイヤグリップ時の共振
周波数成分のゲイン減少を示す線図である。
【図11】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブ
ロック図である。
【図12】車輪に加えるブレーキ力の概形を示す線図で
ある。
【図13】ブレーキ部のハードウェア構成を示すブロッ
ク図である。
【図14】バルブ指令生成部の構成を示すブロック図で
ある。
【図15】車輪へ加えるブレーキ力の励振波形を示す線
図である。
【図16】(1)〜(4)は第1の実施の形態の制御系
の各部の動作を示す線図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態であるピークμ追
従ブレーキ圧振動装置の機能ブロック図である。
【図18】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブ
ロック図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態であるピークμ追
従ブレーキ圧振動装置のブロック図である。
【図20】微小ブレーキ力励振指令演算部の構成例を示
すブロック図である。
【図21】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブ
ロック図である。
【図22】振幅値検出部の構成例を示すブロック図であ
る。
【図23】圧電素子によるブレーキ力励振部の構成例を
示すブロック図である。
【図24】本発明の第6の実施の形態であるピークμ追
従ブレーキ圧振動装置のブロック図である。
【図25】上記実施の形態のブレーキ圧力低減指令演算
部の構成例を示す図である。
【図26】本発明の第7の実施の形態であるピークμ追
従ブレーキ圧振動装置のブロック図である。
【図27】ブレーキ力低減指令演算部の構成例を示すブ
ロック図である。
【図28】車輪速度ωw に応じて指令ゲインgs を変化
させる関係を示す図である。
【符号の説明】
22 車両運動系 23 振幅値検出部 24 運転者走査部 25 ブレーキ力低減指令部 26 微小ブレーキ力励振指定演算部 27 ブレーキバルブドライバ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小野 英一 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 梅野 孝治 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 山口 裕之 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車体と車輪と路面とから構成される振動
    系の共振周波数の値を2以上の整数で除算した値の周波
    数又は該周波数近傍の周波数でブレーキ圧を微小励振す
    るブレーキ圧振動装置。
  2. 【請求項2】 前記整数を、奇数としたことを特徴とす
    る請求項1のブレーキ圧振動装置。
JP21509897A 1997-08-08 1997-08-08 ブレーキ圧振動装置 Pending JPH1148940A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4754766B2 (ja) * 2000-06-28 2011-08-24 株式会社ブリヂストン 車両制御方法及び車両制御装置

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JP4754766B2 (ja) * 2000-06-28 2011-08-24 株式会社ブリヂストン 車両制御方法及び車両制御装置

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