JP3228127B2 - 摩擦状態検出装置 - Google Patents

摩擦状態検出装置

Info

Publication number
JP3228127B2
JP3228127B2 JP15727596A JP15727596A JP3228127B2 JP 3228127 B2 JP3228127 B2 JP 3228127B2 JP 15727596 A JP15727596 A JP 15727596A JP 15727596 A JP15727596 A JP 15727596A JP 3228127 B2 JP3228127 B2 JP 3228127B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
force
resonance
state
gain
frictional
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP15727596A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH102813A (ja
Inventor
賢 菅井
勝宏 浅野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Central R&D Labs Inc
Priority to JP15727596A priority Critical patent/JP3228127B2/ja
Publication of JPH102813A publication Critical patent/JPH102813A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3228127B2 publication Critical patent/JP3228127B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Control Of Driving Devices And Active Controlling Of Vehicle (AREA)
  • Vehicle Body Suspensions (AREA)
  • Force Measurement Appropriate To Specific Purposes (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は振動系の共振特性に
基づいて摩擦状態を検出する摩擦状態検出装置に係り、
特に振動系の共振特性に基づいて接触面が所定の摩擦力
が生じた状態となるように振動系への作用力を制御し、
該作用力に基づいて摩擦状態を検出する摩擦状態検出装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】摩擦力若しくは摩擦係数を測定する技
術、及び摩擦状態を検出して制御を行う技術として以下
のようなものがある。
【0003】図7に示すモデルにおいて、質量Mの物体
1と被計測面2との間に発生する最大摩擦力Fmax は、
荷重をW(=Mg;gは重力加速度)、静止摩擦係数を
μstatとすると、 Fmax = μstat・W で表される。ここで、外部から印加される外力Fext が
最大摩擦力Fmax 以下であれば、静止状態に留まる。し
かし、外力Fext が一旦最大摩擦力Fmax を超えると突
然滑りだす。その時の摩擦力Ftranは、動摩擦係数μtr
ans により、 Ftrans = μtrans ・W で表される。
【0004】しかし、このように、外力Fext が最大摩
擦力Fmax を超えるまでは全く変化がなく、最大摩擦力
を超えたと同時に状態が大きく変化するため、滑りだす
前に滑りだす直前の状態にあるか否かを知ることは大変
難しい。
【0005】そこで、従来の摩擦力測定装置では、事前
に外力を加えて滑らせ、その時の最大摩擦力Fmax を調
べることにより摩擦力を測定し、さらに最大摩擦力Fma
x を装置の自重で除算することにより静止摩擦係数μst
atを測定するようにしていた。
【0006】また、鋳造技術の分野では、連続鋳造用の
鋳型を振動台に固定支持すると共に加振ビームを介して
加振源に連結し、この加振源の動作により加振ビームを
所定の支点回りに揺動させ、この鋳型を加振しつつ行わ
れる鋳片の引き抜きに際し、鋳片と鋳型との間に作用す
る摩擦力を測定する技術がある。これらの技術は、鋳型
と鋳片との間の摩擦力が加振源の負荷に影響を与えるこ
とを利用するもので、鋳型の振動系の特性を伝達関数に
て表現し、この伝達関数に基づいて鋳型と鋳片との間の
摩擦力を測定するというものである。このような鋳造技
術の分野における摩擦力測定技術で特に演算速度の向上
と正確さを期した技術として、特開平4−84652号
公報に開示された技術などがある。
【0007】特開平4−84652号公報の技術は、加
振された鋳型から鋳片を引き抜くに際し、両者間に作用
する摩擦力を、加振ビームの支点よりも鋳型寄りの部分
をモード分解法にて定式化した状態空間モデルに従い、
加振する際に鋳型に働く揺動トルクと、加振により鋳型
に生じる変位とに基づいて演算するというものである。
なお、鋳型に働く揺動トルクを正確に求めるため、加振
シリンダなどの加振源が発する加振力及び加振ビームの
支点よりも加振源よりの部分において加振ビームに生じ
る歪みを検出し、検出された加振力を加振ビームに生じ
た歪みで補正して揺動トルクを演算するという方法を用
いている。このように、この技術では、加振ビームの支
点から加振対象となる鋳型までの間を支点に作用する揺
動トルクにより振動台と鋳型とからなる集中質量を加振
する撓み梁として簡略にモデル化することにより高速演
算を達成し、さらに揺動トルクを演算する際に、加振力
を加振ビームの歪みで補正することによって正確な摩擦
力の測定を可能にしている。
【0008】また、自動車の制御技術の分野で、車輪と
路面との間の摩擦係数を測定し、この摩擦係数に基づい
て制御を行う技術として、特開平4−230472号公
報に開示された電子制御パワーステアリング装置などが
ある。
【0009】特開平4−230472号公報に開示され
た摩擦係数の測定方法は、コントローラからソレノイド
バルブへ加振信号を入力することにより例えば後輪を±
1mm相当の舵角、周波数2Hzで周期的に転舵し、こ
の周期的な転舵により後輪に発生したコーナリングフォ
ースやセルフアライングトルクに対する反力をロードセ
ル等の反力センサにより検出し、検出された反力の値に
基づいてコーナリングパワーやセルフアライニングパワ
ーを演算し、これらのパワーと路面摩擦係数との関係に
基づいて演算結果により路面摩擦係数を計測するという
ものである。
【0010】また、路面と車輪との摩擦状態を推測し
て、接触面が滑りだす直前の状態になるようにブレーキ
力を制御することにより、急ブレーキをかけても車輪が
ロックされてスリップすることを防ぐ技術としてアンチ
ロックブレーキ制御装置がある。
【0011】ここで、車両がある速度で走行している
時、ブレーキをかけていくと車輪と路面との間にスリッ
プが生じるが、車輪と路面との間の摩擦係数μは、下記
の(1)式で表されるスリップ率Sに対し、図9のよう
に変化することが知られている。なお、vv*は実車体速
度、vw は車輪速度である。
【0012】 S=(vv*−vw )/vv* ・・・(1) このμ−S特性では、あるスリップ率(図9のA2領
域)で摩擦係数μがピーク値をとるようになる。
【0013】そこで、従来のアンチロックブレーキ制御
装置では、車体速度と車輪速度とからスリップ率を検出
し、摩擦係数μがピーク値をとるようなスリップ率にな
るようにブレーキ力を制御するようにしていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の摩擦力検出装置では、滑ることが許されない場合や
摩擦係数が変化する場合などにおいて、摩擦状態が現在
いかなる状態にあるのかをリアルタイムに検出すること
が極めて困難になる。
【0015】また、特開平4−84652号公報の摩擦
力測定装置では、揺動トルクにより振動している集中質
量で近似された鋳型の線形モデルを仮定し、単に揺動ト
ルクと鋳型の変位に基づいて、鋳型の振動に影響を与え
ている摩擦力を演算するため、ノイズ等の影響を受けや
すい、という問題がある。また、上記の仮定を満たさな
い条件下では、このモデルでは摩擦力の正確な測定がで
きなくなるため、応用範囲がきわめて狭いという問題が
生じる。仮に条件に合ったモデルを構築できたとしても
モデルによっては複雑な演算が必要となる場合が多く、
かかる場合にはリアルタイムに摩擦力を演算できなくな
るという新たな問題も生じる。
【0016】また、特開平4−230472号公報に開
示された摩擦係数の測定方法では、、車輪を周期的に転
舵してコーナリングフォース等を発生させ、これに対す
る車輪の反力を検出する必要があり、測定システムが複
雑になるという問題がある。さらに、コーナリングパワ
ー等と路面摩擦係数との関係を所定のモデルで仮定して
いるため、ノイズに弱いという問題もある。
【0017】また、従来のアンチロックブレーキ制御装
置では、運転中のタイヤと路面との間の摩擦係数μが時
々刻々変化し、かつノイズも多いので、摩擦係数μがピ
ークとなるスリップ率も変化し、適切なブレーキ制御は
きわめて困難となる。
【0018】本発明は上記従来の問題点を解消するため
になされたもので、システム構成や条件の依存度の大き
いモデルを仮定して単なる振動特性や変位応答等に基づ
いて摩擦状態を検出するのではなく、車輪と路面との間
の摩擦状態を敏感に反映する共振ゲインに基づいて摩擦
力がピーク又はピーク近傍となるように振動系への作用
力を制御し、この作用力に基づいて摩擦状態を検出する
ことにより、ノイズが多く、また摩擦状態が時々刻々と
変化する状況においても摩擦状態を正確に検出できると
共に、適用範囲の広いシンプルな構成の摩擦状態検出装
置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1の発明は、摩擦力の生じる接触面の片面側
要素に該接触面と略平行な方向に変位するばね要素を接
続し、該ばね要素の他端に慣性体を接続してなると共に
前記片面側要素に作用力が印加される振動系と、前記振
動系に印加された作用力及び該作用力の状態量を検知す
る作用力検知手段と、前記作用力が印加された振動系の
状態量を検知する状態量検知手段と、前記作用力の状態
量に対する前記振動系の状態量の比である共振ゲインを
演算する共振特性演算手段と、前記共振特性演算手段に
より演算された共振ゲインが予め定められた基準ゲイン
に一致又は略一致した状態で検知された前記作用力に基
づいて前記接触面における摩擦状態を検出する摩擦状態
検出手段と、を含んで構成したものである。
【0020】請求項1の発明では、作用力検知手段が振
動系に印加された作用力及び作用力の状態量を検知し、
状態量検知手段が振動系の状態量を検知する。なお、こ
の作用力には、本装置の外部から振動系に印加されるも
のと、本装置の内部に備えられた作用力を発生する手段
により振動系に印加されるものとがある。また、作用力
の状態量を例えば印加された作用力の所定周波数成分の
パワー値、振動系の状態量を例えば振動系の所定周波数
成分のパワー値として求めることができる。
【0021】次に、共振特性演算手段が検知された作用
力の状態量に対する振動系の状態量の比である共振ゲイ
ンを演算する。ここで、接触面で摩擦力が変化すると、
摩擦力を介して振動系に与える慣性体の慣性の影響が変
化するので振動系の共振特性が変化し共振ゲインが変化
する。すなわち、共振ゲインには接触面の摩擦力の状態
が反映されており、例えば摩擦力がピーク値に近づく
と、共振ゲインは大きく変化する。ここで、基準ゲイン
を所定の値に定めると、共振ゲインが基準ゲインに一致
又は略一致した状態は、該基準ゲインに対応した所定の
摩擦力の状態、例えば摩擦力のピーク値付近の状態を反
映しており、該状態の時に検知された作用力は、接触面
の摩擦状態、例えば摩擦力ピーク値付近の状態では最大
摩擦力を反映している。そこで、摩擦状態検出手段が、
共振ゲインが予め定められた基準ゲインに一致又は略一
致した状態で検知された作用力に基づいて接触面におけ
る摩擦状態を検出することができる。
【0022】このように本発明では、接触面の摩擦状態
を敏感に反映する共振ゲインと作用力とに基づいて摩擦
状態を検出するので、ノイズ等が多い状況でもシンプル
な構成の装置で摩擦状態を正確に検出することができ
る。
【0023】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、前記共振ゲインが前記基準ゲインに一致又は略一致
した状態となるように前記作用力を制御する作用力制御
手段と、をさらに含むことを特徴とする。
【0024】請求項2の発明では、作用力制御手段が、
共振ゲインが基準ゲインに一致又は略一致した状態とな
るように作用力を制御する。なお、基準ゲインを、摩擦
力がピーク値付近となる状態に対応する所定の値に設定
しておけば、作用力制御手段によって摩擦力ピーク値付
近の状態に対応する作用力にほぼ保持される。そして、
摩擦状態検出手段が、制御された作用力に基づいて接触
面における摩擦状態を検出する。このように本発明で
は、接触面の摩擦状態を敏感に反映する共振ゲインを用
いて一定の摩擦力の状態となるように作用力を制御し、
該作用力に基づいて接触面の摩擦状態を検出するように
したので、ノイズ等が多い状況でもシンプルな構成の装
置で摩擦状態を常に正確に検出することができる。
【0025】請求項3の発明は、請求項2の前記作用力
制御手段が、前記基準ゲインに対する前記共振ゲインの
比の逆数と1との偏差が0に一致又は略一致するように
前記作用力を制御することを特徴とする。
【0026】請求項3の発明では、作用力制御手段が、
共振ゲインが基準ゲインに一致又は略一致するように作
用力を制御する際に、まず基準ゲインに対する前記共振
ゲインの比(共振ゲイン/基準ゲイン)の逆数(基準ゲ
イン/共振ゲイン)と1との偏差が0に一致又は略一致
するように作用力を制御する。ここで、単純に、共振ゲ
イン/基準ゲインと1との偏差を用いるようにすること
も可能であるが、この方法では、共振ゲイン/基準ゲイ
ンが1より小さくなる時、作用力は摩擦力ピーク状態の
値に十分に近い値を取り、少しの作用力変動で接触面で
のすべりが急増する可能性が高い。しかし、本発明のよ
うに共振ゲイン/基準ゲインの逆数を用いれば、共振ゲ
イン/基準ゲインが1より小さい状態、すなわち接触面
のすべりが急増する状態に近づくに従い、偏差が急激に
大きくなって感度が大きくなるため、すべりが急増する
状態に陥る可能性を回避しつつ、作用力をピーク値に保
持して摩擦状態を正確に検出できる。
【0027】
【実施の形態】まず、本発明の原理を図8の振動系15
をモデルにして説明する。図8に示すように、振動系1
5は、質量Ma の慣性体11、この慣性体11と接触面
10を介して接触する質量Mb の慣性体12、慣性体1
1の一端に取り付けられたばね定数Kのばね要素13、
このばね要素の他端に取り付けられた質量Mc の慣性体
14から構成されている。
【0028】振動系15は、接触面10で発生する摩擦
力が最大摩擦力以内で接触面10が滑っていない状態で
は、慣性体11の振動に慣性体12が連動して振動する
ため、質量(Ma +Mb )とばね定数Kのばねと質量M
c とからなる2慣性系と等価になる。従って、摩擦力が
最大摩擦力以内の場合における振動系15における共振
周波数f1 は、 f1 =√{(Ma +Mb +Mc )K/(Ma +Mb )Mc }/2π ・・・(2) となる。また、他方の慣性体12が固定端であれば、
(2)式の共振周波数f1は、 f1 =√(K/Mc )/2π ・・・(3) に近似できる。
【0029】これに対し、摩擦力が最大摩擦力を超えて
滑り出した状態では、慣性体11の振動に慣性体12が
追随できず、その慣性の影響が小さくなるため、振動系
15は質量Ma と質量Mc からなる2慣性系と等価とな
り、その共振周波数f2 は、 f2 =√{(Ma +Mc )K/Ma Mc }/2π ・・・(4) となる。
【0030】ここで、この振動系15を接触面10と平
行な方向に共振周波数f1 又はf1近傍の周波数の加振
力16で微小振動させた場合を想定する。接触面10が
滑っていない状態のときは、振動系15の共振周波数は
1 なので、振動系15において、周波数f1 の振動成
分は増幅される。すなわち、振動系15は周波数f1
傍の振動成分が強く現れる共振状態となる。なお、振動
系15の共振特性を表すものとして、例えば加振力16
の最大振幅に対する振動系15の振動成分の最大値との
比で表される共振ゲインがある。この共振ゲインは、共
振状態の場合には1より遙に大きくなり、共振状態でな
い場合には、共振状態と比較して小さくなる。
【0031】一方、接触面10で摩擦力と反対方向の力
が最大摩擦力に近づき、滑りだす直前までくると、加振
力16による振動と慣性体の振動とに位相差が出始め、
共振ゲインは急激に減少する。
【0032】そして、接触面10が完全に滑っている状
態に移行すると、振動系15の共振周波数はf2 に一致
するので、加振力16により与えられた周波数f1 の振
動成分は減衰し、振動系15は共振しなくなる。
【0033】また、振動系15をf2 近傍の周波数の加
振力16で加振する場合には、接触面10が滑っていな
い状態のとき、振動系15は共振せず、接触面10が滑
りだすと、振動系15は周波数f2 の振動成分が強く現
れる共振状態となる。
【0034】また、加振力16がf1 とf2 近傍の周波
数の振動成分を共に含む場合、振動系15は、接触面1
0が滑っていない状態と滑っている状態のいずれの場合
でも共振するが、振幅がピークとなる共振周波数が変化
することになる。
【0035】なお、上述の慣性体が直線に沿って振動す
る振動系のモデルは、回転振動系にも容易に拡張でき
る。この回転振動系のモデルとして例えば図10に示す
ように、重量Wの車体112を備えた車両が速度vで走
行している時の車輪での振動現象、すなわち車体と車輪
と路面とによって構成される振動系がある。そこで、こ
の振動系の振動現象を、車輪回転軸で等価的にモデル化
した図11に示すモデルを参照して説明する。
【0036】ここで、ブレーキ力(制動力)は、路面と
接するタイヤのトレッド115の表面を介して路面に作
用するが、このブレーキ力は実際には路面からの反作用
として車体112に作用するため、車体重量の回転軸換
算の等価モデル117はタイヤのトレッドと路面との間
の摩擦要素116を介して車輪113と反対側に連結し
たものとなる。これは、シャシーダイナモ装置のよう
に、車輪下の大きな慣性、すなわち車輪と反対側の質量
で車体の重量を模擬することができることと同様であ
る。
【0037】図10、図11でタイヤリムを含んだ車輪
113の慣性をJw 、リムとトレッド15との間のばね
要素114のばね定数をK、トレッド115の慣性をJ
t 、トレッド115と路面との間の摩擦要素116の摩
擦係数をμ、車体112の重量の回転軸換算の等価モデ
ル117の慣性をJV とすると、系全体の特性は次の
(5)〜(7)のようになる。なお、以下では時間に関
する1階微分d/dtを「' 」で表し、時間に関する2
階微分d2 /dt2 を「" 」で表す。
【0038】 JW θw " = −T+K(θt −θw ) ・・・(5) Jt θt " = −K(θt −θw )+μWR ・・・(6) Jv ωv ' = −μWR ・・・(7) ここで、 ww = θw ' ・・・(8) Jv = R2 W ・・・(9) ωv = v/r ・・・(10) であり、θw は車輪113の回転角、θw " は車輪11
3の回転角加速度、wwは車輪113の回転角速度、θ
t はトレッド115の回転角、θt " はトレッド115
の回転角加速度、ωv は車体等価モデル117の回転軸
換算の回転角速度、Tは車輪113に加えられる制動ト
ルク、Wは車体の重量、Rは車輪半径である。制動トル
クTは実際にはブレーキバルブの圧力Pb の制御によっ
て行う。
【0039】タイヤがグリップしている時は、トレッド
115と車体等価モデル117とが直結されていると考
えると、車体等価モデル117の慣性とトレッド115
の慣性との和の慣性と車輪113の慣性とが共振し、こ
の時の車輪共振系の共振波数f1 は、 f1 =√{(Jw +Jt +Jv )K/Jw (Jt +Jv )}/2π ・・・(11) となり、式(2)と全く同じ形式となる。この状態は図
9上では領域A1 に対応する。
【0040】逆に、タイヤの摩擦係数μがピークμに近
付く場合には、タイヤ表面の摩擦係数μがスリップ率S
に対して変化し難くなり、トレッド115の慣性の振動
に伴う成分は車体等価モデル117に影響しなくなる。
つまり等価的にトレッド115と車体等価モデル117
とが分離され、トレッド115と車輪113とが共振を
起こすことになる。この時の車輪共振系の共振周波数f
2 は、 f2 =√{(Jw +Jt )K/Jw t }/2π ・・・(12) となり、式(4)と全く同じ形式となる。この状態は図
9の領域A2に対応し、一般にピークμの点に達すると
瞬時に領域A3へと遷移してタイヤがロックする。一
方、共振周波数における車輪速度のゲインのピークもピ
ークμ直前で急激に減少する。
【0041】各慣性の大小関係は、 Jt <Jw <Jv であり、これより、 f1 <f2 になる。つまり、タイヤがロックに至る場合、車輪共振
系の共振周波数が高周波側にずれることになる。また、
この共振周波数の変化はピークμ付近で急激に発生す
る。
【0042】モデルを簡単化し、トレッド115の慣性
t を無視した場合でもピークμ状態に近づくと車輪共
振系の共振周波数及び車輪速度のゲインのピークの変化
は起こり、同様の解析が可能である。
【0043】以上のように、接触面の摩擦状態によっ
て、振動系15や車輪共振系の共振の有無、共振周波数
の変化、加振力のどの周波数成分がどの程度の共振ゲイ
ンで増幅又は減衰したか等といった共振特性が大きく変
わる。逆に、この共振特性を検出すれば、接触面の摩擦
状態(滑りだす直前の状態など)や摩擦係数などが演算
できることになる。
【0044】(第1実施の形態)以下、共振特性を利用
した摩擦状態検出装置の実施の形態について、図面に基
づいて詳細に説明する。
【0045】第1実施の形態は、本発明の摩擦状態検出
装置を例えばクレーンのように荷物を把持し移動させる
荷物把持装置に応用することにより、荷物を落とすこと
なく、また、荷物を破損することなく適切な力で把持す
ることを可能にしたものである。この第1実施の形態に
係る荷物把持装置を図1及び図2を参照しつつ説明す
る。
【0046】図1(A)の正面図が示すように、本実施
の形態に係る荷物把持装置は、荷物21を把持する把持
部22、この把持部22に把持力を与えるための把持力
発生部23、全体をつり上げるためにこの把持力発生部
23に取り付けられたワイヤ24、及びこのワイヤ24
を牽引するための牽引装置(図示なし)から構成され
る。また、この荷物把持装置の外観を側面から見ると、
図1(B)のように示され、荷物21を把持する把持力
25が、図の示す方向に与えられていることがわかる。
【0047】なお、把持部22と荷物21との接触面に
発生する最大摩擦力は、把持力25とこの接触面におけ
る静止摩擦係数μstatの積により決定される。従って、
把持力25が十分に大きく最大摩擦力が荷物21の荷重
以上の時には、荷物21は滑り落ちず、逆に把持力が小
さくなって最大摩擦力が荷物21の荷重より小さくなる
と、荷物21は滑り落ちることになる。
【0048】図2に、把持力25を制御するための制御
系と把持部22の詳細な構成を示す。図2に示すよう
に、把持部22は、その外郭部分を構成する質量Mc の
慣性体35、及びこの慣性体35に各々ばね定数K/2
のばね要素33とばね要素34とを介して質量Mb の荷
物21と接触する側に取り付けられた質量Ma の接触部
31を含んで構成される。
【0049】なお、接触部31は、ばね要素33とばね
要素34を介して水平方向に変位するように取り付けら
れる。すなわち、本実施の形態では、ばね要素の変位方
向は、接触面30と略平行で、荷物21の荷重に抗する
摩擦力の発生方向とは垂直になる。
【0050】また、接触部31と慣性体35との間に
は、接触部31を、ばね要素33とばね要素34とが変
位する方向に加振周波数f2 (=√{(Ma +Mc )K
/MaMc }/2π)の加振力36を加えて微小加振す
る加振力発生手段40が取り付けられている。図1
(A)に示すように、この加振力36によって荷物21
は接触部31と共に、水平方向26に微小振動すること
になる。この加振力発生手段40は、例えば、ばね要素
33とばね要素34の取付け部分に圧電素子を取付け、
この圧電素子を電気駆動で変位させることにより容易に
実現できる。また、接触部31、慣性体35にそれぞれ
磁性体とコイルを取付け、電磁石の吸引反発力で微小加
振させることによっても容易に実現できる。
【0051】さらに、接触部31には、加振力発生手段
40により微小加振された際の接触部31の応答特性を
検出する加振応答検出手段41が取り付けられている。
この応答検出手段41は、例えば加振力36による接触
部31の加速度38を応答特性として計測する加速度計
37により実現できる。
【0052】また、加振力発生手段40により与えられ
る加振力36、及び加振応答検出手段41により検出さ
れる加速度38などの応答特性に基づいて荷物21を把
持した把持部22の共振特性を演算する共振特性演算手
段42が設けられている。この共振特性は、例えば加振
力36の最大振幅に対する加速度38の振動成分の最大
振幅の比(共振ゲイン)、共振周波数の変化などで表さ
れる。
【0053】さらに、共振特性演算手段42により演算
された共振特性に基づいて接触部31と荷物21との接
触面の摩擦状態を判定する摩擦状態演算手段43、この
判定された摩擦状態に基づいて、把持力発生部23を制
御して把持部22に印加する把持力を最適に調節する把
持力制御手段44が設けられている。
【0054】次に、この荷物把持装置の作用について説
明する。加振力発生手段40により与えられる加振力の
加振周波数f2 は、接触部31が荷物21と離れている
ときの接触部31、ばね要素33、ばね要素34、慣性
体35から成る振動系の共振周波数である。
【0055】ところで、荷物21が把持部22の把持力
25によりしっかりと把持されている時は、加振力36
による接触部31の微小振動と共に荷物21が完全に追
随して振動するので、この振動系は、質量Ma の接触部
31に荷物21の質量Mb を加えた振動系と等価とな
り、共振周波数はf1 (=√{(Ma +Mb +Mc )K
/(Ma +Mb )Mc }/2π)になる。このため、荷
物21がしっかりと把持されている時には、加振周波数
2 の加振力ではこの振動系は共振せず、加振応答検出
手段41により検出される加速度38、そして共振特性
演算手段42により演算される共振ゲインは、共振した
場合と比較して小さい値となる。
【0056】一方、把持部22の把持力25が次第に弱
まり、接触面30における最大摩擦力が一定の値以下に
小さくなってくると、加振力36による接触部31の微
小振動に荷物21が追随できず、質量Mb の影響が小さ
くなるため、振動系の共振周波数はf2 に近づいてい
く。従って、加振応答検出手段41により検出される加
速度38の周波数f2 の振動成分は増幅していき、これ
により共振ゲインも次第に増加する。特に、荷物21が
滑り出す直前になると、加速度の加振周波数成分は急激
に増加する。
【0057】共振特性演算手段42により共振ゲインが
演算されると、摩擦状態演算手段43は、この共振ゲイ
ンに基づいて接触面30における摩擦状態を演算する。
例えば、共振ゲインが基準値より小さい場合は滑ってい
ない状態にある摩擦状態を、共振ゲインが基準値以上の
場合、滑り出す直前にある摩擦状態を演算する。この摩
擦状態を示す演算値により、接触面30の状態が、滑っ
ていない状態、滑りだす直前の状態、滑りだした状態の
いずれにあるかが識別判定できる。なお、本実施の形態
の場合、この摩擦状態演算手段43は、単に滑りだす直
前になったか否かを判定するだけでも良い。
【0058】そして、把持力制御手段44は、演算され
た摩擦状態に基づいて、把持力25が必要最小限の値に
保たれるように把持力発生部23を制御する。すなわ
ち、滑っていない摩擦状態の場合には、荷物21がしっ
かりと把持されているので、把持力25を減少させるよ
うに制御し、滑りだす直前と判定された摩擦状態の場合
には、把持力25を増加させるように制御する。なお、
共振特性演算手段42で演算された共振ゲイン等の共振
特性を把持力制御手段44に伝達するようにし、直接、
共振特性の値に基づいて把持力25を制御するようにし
ても良い。この場合には、摩擦状態演算手段43は不要
となる。
【0059】以上のように摩擦状態を連続的にかつ正確
に検出できるので、荷物が滑り出す直前の必要最小限の
把持力に制御することが可能となる。これにより、必要
以上に大きい把持力による荷物の破損を避けることも可
能となる。また、摩擦状態により振動系の共振周波数が
大きく変動する性質を利用しているため、検出感度が高
く外乱の影響も受けにくい。さらに、制御系もシンプル
かつ安価に構成でき、信頼性も高いという利点がある。
【0060】(第2実施の形態)共振特性を利用した摩
擦状態検出の原理を、摩擦係数を計測する摩擦係数計測
装置にも応用することができる。これを第2実施の形態
に係る摩擦係数計測装置として図3及び図4を参照しつ
つ説明する。
【0061】図3(A)の正面図が示すように、この摩
擦状態計測装置は、被計測面54(路面)にこの計測装
置の自重でもって接触するタイヤ51、このタイヤ51
を支持するための取付けステー53及び図示しない制御
系を含んで構成されている。この取付けステー53は、
この計測装置によって計測された摩擦係数を利用する装
置、例えば車体(図示なし)などに取り付けられる。以
下では、取付けステー53は、車体に取り付けられてい
る場合を想定する。
【0062】また、図3(B)の側面図が示すように、
タイヤ51のホイール側には、タイヤ51を回転させる
ホイールモータ52が備えられている。
【0063】ここで、図3のように構成された摩擦係数
計測装置の制御系全体の構成、及びこの計測装置と被計
測面54と車体とから構成される振動系の等価モデルを
図4に示す。
【0064】図4によれば、図3の摩擦係数計測装置の
制御系は、慣性モーメントMc のホイールモータ52の
トルク指令に共振周波数f1 (=√(K/Mc )/2
π)の微小振動成分を重畳させる加振力発生手段67、
微小振動成分が重畳されたホイールモータ52の回転速
度の振動成分を検出して共振特性を演算する共振特性演
算手段69、検出された共振特性に基づいてタイヤ51
と被計測面54の摩擦状態を判定する摩擦状態演算手段
70、判定された摩擦状態に基づいてホイールモータ5
2への制動力/駆動力が最大値となるように制御する制
動力/駆動力制御手段71、及び制動力/駆動力をこの
計測器の自重で除算することにより接触面の静止摩擦係
数を計測する摩擦係数演算手段72を含んで構成され
る。
【0065】また、図4に示された振動系の等価モデル
の各要素は、それぞれ図3における次の要素と等価であ
る。慣性体61は慣性モーメントMc のホイールモータ
52の回転子、ばね要素62はタイヤ51のタイヤサイ
ドウオールのばね定数Kの捻じればね、慣性体63は慣
性モーメントMa のタイヤ51のベルト部に各々相当す
る。また、接触面64はタイヤ51と被計測面54との
接触面に相当し、慣性体65は、ホイールモータ52の
固定子部と取付けステー53及びこの計測器が取り付け
られた車体の慣性を同軸上の等価慣性モーメントMb と
して表したものである。なお、図4の等価モデルにおけ
る接触面64の摩擦状態に依存する共振特性は、上述し
た図11の等価モデルと全く同じ原理に従うので、詳細
な説明を省略する。
【0066】次に、本実施の形態に係る摩擦係数計測装
置の作用について、図4の等価モデルを参照して説明す
る。
【0067】最初に被計測面54をタイヤ51が滑らず
に転動している場合を想定する。この場合、この計測装
置と被計測面54と車体から構成される振動系は、慣性
モーメント(Ma +Mb )と慣性モーメントMc とから
なる2慣性系に近似され、その共振周波数はf1 (=√
{(Ma +Mb +Mc )K/(Ma +Mb )Mc }/2
π)となる。
【0068】ここで、(Ma +Mb )>>Mcを考慮す
ると、 f1 = √(K/Mc )/2π に近似できる。
【0069】加振力発生手段67は、ホイールモータ5
2へのトルク指令に周波数f1 (√(K/Mc )/2
π)の微小振動成分を重畳させる。従って、ホイールモ
ータ52の回転子に相当する慣性体61には、周波数f
1 で振動する加振トルク66がかかる。接触面が滑らな
い状態のとき、この振動系の共振周波数f1 と加振トル
ク66の周波数が一致し、振動系は共振する。
【0070】次に、加振応答検出手段68は、加振トル
ク66により生じた慣性体61の回転速度の振動成分を
検出する。上記のように接触面が滑っていない状態のと
きは、この加振応答検出手段68により、共振周波数f
1 の大きな回転速度振動成分が検出される。
【0071】次に、共振特性演算手段69は、共振特性
として、共振周波数f1 の振動成分の振幅値を演算す
る。これは、加振トルク66の最大振幅が常に一定値を
とる場合に有効である。なお、第1実施の形態のよう
に、加振トルク66の最大振幅に対する回転速度の振動
成分の最大値との比(共振ゲイン)を求めても良い。
【0072】そして、摩擦状態演算手段70は、共振特
性に基づいて、接触面の摩擦状態を演算する。例えば、
振幅値が基準値を超えた場合は滑っていない状態にある
摩擦状態を、振幅値が基準値より小さい場合は、滑りだ
した摩擦状態を演算する。なお、この場合には、大きな
回転速度振動成分が現れているので、演算された摩擦状
態により接触面は滑っていないと判定される。
【0073】次に、制動力/駆動力制御手段71は、演
算された摩擦状態に基づいて、接触面が滑る直前の摩擦
状態になるように、タイヤ51を介して被計測面54に
作用する制動力/駆動力を制御する。すなわち、この装
置がある速度で走っている車体等に取り付けられている
場合には、タイヤ51の回転を抑えるようなブレーキ力
を制動力として与え、逆に、駆動力を持たない装置に取
り付けられていたり、単独の場合には、ホイールモータ
52によりタイヤ51を回転させるための駆動力を与え
る。なお、駆動力を増加させると、これに抗する摩擦力
が最大摩擦力まで直ちに増加するように、この計測装置
に大きな負荷をかけておいても良い。
【0074】上記のように接触面が滑っていない状態と
判定された場合には、制動力/駆動力制御手段71は、
制動力/駆動力を増加させるように制御する。これによ
り、制動力/駆動力に抗する摩擦力は増大する。
【0075】ここで、スリップ速度(タイヤ51のトレ
ッドと被計測面54との相対速度)に対する制動力/駆
動力の関係を図5に示す。図5において、この領域
(A)のスリップ速度の範囲が接触面64が滑っていな
い状態に対応している。図より領域(A)において制動
力/駆動力はスリップ速度の増加と共に増加しているこ
とがわかる。なお、本来滑っていないはずの領域(A)
でスリップ速度が0より大きくなるのは、タイヤ51の
トレッドが接地してから離れるまでの間に、トレッド自
体が弾性変形するためで、接触面64は滑っていない
が、車体速度とタイヤ51の回転速度との関係で見る
と、あたかも滑っているかのように見えるからである。
【0076】このように接触面が滑っていないと判定さ
れた場合には、制動力/駆動力は増加していくが、この
力が最大摩擦力を超えるようになると接触面64は実際
に滑りだすようになる。図5では、制動力/駆動力がピ
ークに達した以降の領域(B)が、接触面64が実際に
滑りだす状態に相当する。
【0077】接触面が滑りだすと、慣性体65は周波数
1 の振動に追随できず、その慣性モーメントMb の影
響が小さくなるので、この振動系は慣性モーメントMa
と慣性モーメントMc とからなる2慣性系に近似され、
共振周波数はf2 (=√{(Ma +Mc )K/Ma Mc
}/2π)となる。これより、加振力発生手段67が
周波数f1 の加振トルク66で微小加振しても振動系は
共振せず、加振応答検出手段68により検出された回転
速度の振動成分は小さくなる。そして、共振特性演算手
段69により演算された最大振幅値が減少して基準値以
下となると、摩擦状態演算手段70は、接触面が滑って
いる状態の摩擦状態を演算する。この摩擦状態に基づい
て制動力/駆動力制御手段71は、制動力/駆動力が減
少するように制御する。図5の例では、領域(B)にお
いてスリップ速度の増加と共に、制動力/駆動力が減少
していくことがわかる。
【0078】以上のように、接触面64が滑っていない
と判定したときは、制動力/駆動力を増加させるように
制御し、接触面64が滑っていると判定したときは、制
動力/駆動力を減少させるように制御することにより、
接触面の摩擦状態が滑る直前の状態に保持される。すな
わち、制動力/駆動力によりタイヤのトレッドにかかる
力の値(図7のピークに対応)は、接触面64における
最大摩擦力付近の値になるように保たれる。
【0079】そして、摩擦係数演算手段72は、最大摩
擦力となるよう保持された制動力/駆動力をこの摩擦係
数計測器の自重で除算して、接触面64における静止摩
擦係数を計測する。これにより、接触面64の摩擦係数
が連続的に変化する場合においても容易に静止摩擦係数
を計測できる。また、被計則面54が、例えば路面のよ
うに凹凸の多い場合、この計測器の自重に加えて余計な
垂直方向の力が被計測面54にかかったり、逆に接触し
なくなったりするため、演算される摩擦係数に大きな誤
差が生じる。そこで、図6(A)及び(B)に示すよう
に、タイヤ51の回転中心軸が上下に移動できるような
軸取付けステー54を設けても良い。これにより、多少
の凹凸のある場合でも、本実施の形態に係る摩擦計測装
置は、被計測面54に常に自重でもって接触するので、
正確な摩擦係数の測定が可能となる。なお、この場合、
最大摩擦力の割数である自重は、タイヤ51とホイール
モータ52の構成部分の荷重和であって、取付けステー
53等の荷重は除外される。
【0080】また、本実施の形態に係る摩擦係数計測装
置は単独でも利用できるが、取付けステー53を介して
自動車等に第5輪として取り付ければ、自動車の制御に
も応用できる。なお、この場合、タイヤ51と路面間の
摩擦係数が、取り付けられた自動車のタイヤと路面間の
摩擦係数と等しいか、或いは両摩擦係数間の一定の関係
が予めわかっていることが必要である。
【0081】例えば、パワーステアリング装置に応用し
た場合、この装置により計測された路面摩擦係数と、走
行中の横加速度に基づいて、旋回状態(横加速度)が限
界状態になったときを判断し、このときにパワーステア
リングの操舵力を通常時とは異なった大きさに変更する
制御を行う。これによって、外乱が多く、路面の摩擦係
数が刻々と変わる場合でも、摩擦係数計測装置により正
確に摩擦係数を測定できるので、旋回状態の限界状態を
より正確かつ安定に判断でき、安全性を向上させること
ができる。
【0082】さらに、アンチロックブレーキ制御にも応
用することができる。この場合、車体側では、摩擦係数
測定装置により測定された摩擦係数に基づいてタイヤと
路面間の最大摩擦力を演算し、タイヤと路面間に働く力
が演算された最大摩擦力となるように、ブレーキ力を制
御する。或いは、この装置で演算した摩擦係数を直接渡
すのでなく、摩擦状態演算手段70により演算された摩
擦状態を車体の制御部に渡し、検出された摩擦状態が滑
りだす直前になるようにブレーキ力を制御するようにし
ても良い。なお、後者の場合、摩擦係数計測装置のタイ
ヤ51は、車体側のタイヤと同じ摩擦状態になるように
制動を受けることが必要である。
【0083】以上が本発明に係る実施の形態であるが、
上記例のみに限定されるものではない。例えば、上記第
1実施の形態、第2実施の形態共に、加振力発生手段を
用いて慣性体を振動系の共振周波数で微小加振するよう
にしていたが、応用分野によっては、加振力発生手段を
用いない実施態様もあり得る。
【0084】第1の実施態様として、例えばホワイトノ
イズのような周波数特性を持つ外力が外乱として常に入
力されている場合には、検出した振動成分から、共振周
波数成分の実効値と全周波数成分の実効値とを求め、そ
れらの比に基づいて共振特性を検出することができる。
【0085】また,第2の実施態様として、インパルス
的又はステップ的な外力が頻繁に入力される場合には、
この入力に対する応答波形から、共振周波数成分と、そ
れ以外の周波数成分(若しくは全周波数成分)を分離
し、それらの成分比から共振特性を求めることができ
る。
【0086】このように、第1の実施態様及び第2の実
施態様は、加振力発生手段を用いないため、シンプルな
構成となり、信頼性のみならず経済的にも有利になる。
【0087】また、共振特性として、共振ゲインや振動
系の振幅値を演算したが、例えば、各摩擦状態に対応す
る振動系の共振周波数すべてを含む加振力で振動系を共
振させ、最大振幅時の共振周波数の変化を演算するよう
にしても良い。
【0088】さらに、加振力の周波数は、共振周波数と
丁度一致しなくても、振動系の共振特性を明確に識別で
きる範囲であれば、共振周波数近傍の周波数でも良い。
【0089】(第3実施の形態)第3の実施の形態に係
る摩擦状態検出装置の原理を説明する。
【0090】すなわち、車輪がロックに至るまで制動力
を増していくと、路面の制動力のピーク値付近で共振特
性は変化し、グリップ時の共振周波数での共振ゲインは
小さくなる。ここで、ある基準のゲインを十分小さな値
として、検出された共振ゲインがこの基準のゲインと一
致するように平均的な制動力を制御すると、制動力はピ
ーク値に近い値で保持することができ、その制動力の大
小に基づいて路面摩擦状態を検出することができる。
【0091】次に、第3の実施の形態に係る摩擦状態検
出装置の概略の構成を図12に示す。
【0092】図12に示すように、本摩擦状態検出装置
は、本装置が出力した共振ゲイン/基準ゲインの比と1
との偏差を計算する偏差計算部120と、この偏差計算
部により計算された偏差を0に一致させるための制御信
号を演算するPI制御器122と、このPI制御器によ
り演算された制御信号に応じて路面と車体と車輪とによ
り構成される車輪共振系126(図10、図11参照)
へ制動力(車輪へのブレーキ圧)を作用させる制動力制
御系124と、この制動力と基準ゲインと検出された車
輪速度とに基づいて共振ゲイン/基準ゲインとの比を出
力する共振成分検出部128と、制動力制御系124が
車輪に作用する制動力の大小に基づいて路面の摩擦状態
を検出する摩擦状態検出部125と、から構成される。
【0093】共振成分検出部128の出力端には、偏差
計算部120の入力端が接続されている。また、車輪共
振系126には、図示しない車輪速度検出センサーが備
えられており、このセンサーは共振成分検出部128に
検出した車輪速度を出力する。
【0094】次に、共振成分検出部128の詳細な構成
を図13に示す。共振成分検出部128は、所定の振動
成分を検出する構成とされており、例えば、いわゆるA
Dコンバータなどで検出信号を計算機内に読み込んだ場
合に、計算機の動作サンプリング時間を1[ms]に取
ると、半周期が12サンプル点となる41.7[Hz]
の振動成分を検出する。
【0095】図13に示すように、共振成分検出部に
は、車輪速度ωw 、制動力制御系124から車輪共振系
126への制動力Pb 、基準ゲインgs 、が各々入力さ
れる構成とされている。
【0096】車輪速度ωw が入力される入力端(図示し
ない)には、直流成分とノイズ成分除去のためのBPF
(いわゆるバンドパスフィルタ)130を介して相関係
数検出部134が接続されている。この相関係数検出部
134は、車輪速度ωw の所定周波数成分のパワーωv
2 を算出する。なお、ωv は車輪共振系126の当該周
波数成分の振幅値となる。
【0097】また、車輪へのブレーキ圧としての制動力
b が入力される入力端(図示しない)には、直流成分
とノイズ成分除去のためのBPF132を介して相関係
数検出部136が接続されている。この相関係数検出部
136は、制動力Pb の所定周波数成分のパワーPv 2
を算出する。なお、Pv は制動力の当該周波数成分の振
幅値となる。
【0098】また、基準ゲインgs が入力される入力端
(図示しない)には、入力信号の平方を計算するための
平方器142が接続されており、この平方器142に
は、2つの入力信号同士の乗算を行う乗算器140の一
方の入力端が接続されている。すなわち、乗算器140
の一方の入力端には、gs 2 が入力される。
【0099】さらに、乗算器140の他方の入力端に
は、相関係数検出部136の出力端が接続されており、
v 2 が入力される。これより、乗算器140は、gs
2 ×P v 2 を出力する。
【0100】相関係数検出部134と乗算器140の出
力端には、2つの入力信号の除算を計算し、その比を求
める除算器138が接続されている。この接続では、除
算器138はωv 2 /(Pv 2 s 2 )=gd 2 /gs
2 を出力する。ここで、共振ゲインgd =ωv /Pv
する。
【0101】実際に検出したいのは、基準ゲインに対す
る共振ゲインの比gdfであるから、除算器138の出力
端には、入力値の平方根を演算する平方根演算部144
が接続されている。この平方根演算部144は、gdf
d /gs を出力し、これが共振成分検出部128の出
力となる。
【0102】なお、平方根演算部144による平方根の
演算手段として、プログラムルーチンを作っても構成で
きるが、実際には制御周期の関係で困難であるため、予
め用意された平方根テーブルより、その値を補間する手
段が好ましい。ここで、制御系全体を考慮すると、制御
によって達成すべき状態は、共振ゲインgd が、基準ゲ
インgs に近い値にある。このことは、gdf=gd /g
s がほぼ1近辺にあることを示しており、従って、その
2乗値gdf 2 もほぼ1近辺にある。図13の構成では、
平方根を演算する前にパワーの次元のgd 2 を基準ゲイ
ンgs 2 で除したgdf 2 を演算し、ほぼ1近辺の値を平
方根演算手段144への入力値としている。これによ
り、平方根演算手段144の平方根テーブルとして1近
辺の値の平方根を参照できるテーブルを1つ用意してお
けば、少容量かつ高速で平方根値が得られることとな
る。
【0103】ここで、時系列データの時間長をT1 とす
れば、得られる周波数スペクトルの最小周波数は1/T
1 [Hz]であり、この整数倍の周波数成分を得ることがで
きる。制御系のサンプリング時間を1[ms]として、48
サンプル点のデータを用いると、最小周波数は約20.
8[Hz]となり、第2成分が約41.7[Hz]となる。相関
係数検出部134、136は、41.7[Hz]成分のパワ
ーを算出するため、図14のような構成とされている。
【0104】図14に示すように、本相関係数検出部
は、一定の時間長の入力信号xの時系列データ{x1
2 、.....、xn }を1サンプル毎に遅延させて
各々出力する遅延回路150と、この時系列データのフ
ーリエ係数の実数部Rを演算する実数部演算部152
と、このフーリエ係数の虚数部Iを演算する虚数部演算
部158と、演算されたRとIの2乗和R2 +I2 を演
算する出力部164と、から構成されている。
【0105】遅延回路150は、時系列データを各々1
サンプルずつ遅延させる複数の単位遅延素子z-1を直列
に接続した構成とされている。この単位遅延素子z-1
数は、時系列データのサンプル数48に一致するように
設定されている。そして、時系列データが各々の単位遅
延素子z-1に入力する前に実数部演算部152及び虚数
部演算部158へ各々のサンプルデータを送るための出
力信号線が設けられている。
【0106】これらの出力信号線は、実数演算部152
の係数乗算器154及び虚数演算部158の係数乗算器
160に各々接続されている。係数乗算器154は、サ
ンプルデータx1 、x2 、...、x48に各々係数
1 、c2 、...、c48を乗じ、係数乗算器160
は、サンプルデータx1 、x2 、...、x48に各々係
数s 1 、s2 、...、s48を乗じる。
【0107】係数乗算器154の出力端は、加算器15
6に接続されており、この加算器は乗算結果をすべて加
算してRとして出力する。また、係数乗算器160の出
力端は、加算器162に接続されており、この加算器は
乗算結果をすべて加算してIとして出力する。
【0108】すなわち、R及びIは、 となる。ここで、係数ci 、si を、 に取ると、R及びIは周波数41.7[Hz]の成分に対す
るフーリエ係数の実数部、虚数部を求めていることに他
ならない。
【0109】加算器156、162は、出力部164に
接続されており、出力部は、R、Iの2乗和y=R2
2 を出力する。これにより、周波数41.7[Hz]の成
分のパワー値が得られる。
【0110】次に、第3の実施の形態に係る摩擦状態検
出装置の作用を説明する。共振成分検出部128は、検
出された車輪速度ωW 、制動力Pb 、及び入力された基
準ゲインgs に基づいて、車輪共振系126の基準ゲイ
ンに対する共振ゲインの比gdfを演算する。偏差計算部
120は、gdfと1との差分を演算し、PI制御器12
2に出力する。PI制御器122は、演算された差分を
0に一致させるための制御信号を制動力制御系124に
出力する。制動力制御系124は、制御信号に基づいて
車輪共振系126の制動力を制御する。そして、摩擦状
態検出部125が、制動力の大小に基づいて路面摩擦状
態を検出する。
【0111】すなわち、gdfが1より大きい時は、制動
力がタイヤ−路面間の摩擦力ピーク値より十分小さい値
であると判定し、制動力を増加させることによりピーク
値に接近させる。逆に、制動力のピーク値付近では、共
振特性が変化し、グリップ時の共振ゲインは小さくなる
ため、gdfが1より小さくなった状態をピーク値に接近
していると判断できる。かかる場合には、それ以上の制
動力の増加を防ぐように制動力を減少させる。このよう
にgdfが1になるように制動力を制御すると、摩擦力が
ピーク値に十分近い状態における制動力を実現でき、そ
の制動力の値から、タイヤ−路面間の摩擦状態を正確に
検出することができる。
【0112】(第4実施の形態)まず、第4の実施の形
態に係る摩擦状態検出装置の原理を説明する。第4の実
施の形態は、共振成分検出部128をより簡単な構成と
するものである。
【0113】図11に示された車体とタイヤと路面とに
より構成される共振系において、既に述べたように、タ
イヤ表面が路面をグリップしている時の系の共振周波数
gは、 fg =√{(Jw +Jt +Jv )K/Jw (Jt +Jv )}/2π (15) となり、式(2) 、式(11)と同様の形式となる。そして、
この時の制動力(ブレーキ圧)の微小振幅に対する車輪
速度の微小振幅の比は、 Gd = jA + αB(jは虚数単位) (16) となる。但し、 とする。ここで、αはスリップ速度Δω=ωv −ωw
対するタイヤ−路面間の摩擦係数μの傾きである。つま
り、実車での各パラメータが既知であれば、その位相特
性も予め知ることができる。式(16)の位相θd がわかっ
ていると、相関を取る単一正弦波は、 とする単一成分のみで可能となる。従って、 のみの計算で、共振成分の振幅を得ることが可能とな
る。この場合、ブレーキ圧力の励振に相関のある振動成
分のみを抽出することが可能なため、路面の振動ノイズ
などの影響も受けにくく、車体と車輪と路面から構成さ
れる振動系の共振特性のみを検出することができる。一
般に式(16)のAの値は小さく、位相差は0若しくはπ[r
ad] の近傍の値となる。車輪がロックされた状態に近づ
くと、位相差にずれを生じるがグリップ時の位相成分だ
けを見ることにより、共振ゲインの減少の割合は大きく
なり、検出感度はより改善されることとなる。
【0114】図16に、約41.7Hzの周期を持った
(20)式の単一正弦波のグラフを示す。図16に示すよう
に、入力信号xのサンプルidx(xの離散化指標)
は、対象に加える加振力(制動力)に同期して、各サン
プル毎に1msec刻みに1から24まで単調に増加
し、24の次に1にリセットされる。z-48 の部分の初
期値は0であり、最初の48サンプルの時点をj時点と
すると、yj は、式(21)により、 となる。ここで、csj i 、xj i は、j時点での過去
48点のデータに過去の値から1から48まで番号を付
けたものである。ここで、次のサンプル時点j+1での
値yJ+1 は、 となる。明らかに、 csj+1 i = csj i+1 、xj+1 i = xj i+1 (24) であり、csj i の周期性により結果的に、 yj+1 = yj +csj+1 48 (xj+1 48 −xj 1 ) (25) を得る。
【0115】csj+1 48 はj+1時点でのCSn そのも
のであり、xj+1 48 はj+1時点でのxの最新値、xj
1 はj+1時点では48サンプル前の値であるから、共
振成分検出部を図15のように構成することができる。
【0116】図15に示すように、本摩擦状態検装置
は、入力信号xに対して48サンプル前の信号値x-48
を求める遅延素子170と、入力信号xとx-48 との差
分を求める差分手段172と、idxに対するCSn
演算する演算手段174と、出力yの1サンプル前の信
号値y-1を求める遅延素子178と、演算手段174と
遅延素子178の出力の和を演算する加算手段176
と、から構成されており、(25)式の結果を演算すること
ができる。
【0117】この構成によると、計算量は、1サンプル
当たり、2つの和算と1つの乗算だけとなり第3の実施
の形態と比較して処理を簡単化、高速化できる。
【0118】(第5実施の形態)第5の実施の形態の摩
擦状態検出装置の原理を説明する。なお、構成について
は、第3の実施の形態或いは第4の実施の形態と同様で
あるので、詳細な説明を省略する。
【0119】第5の実施の形態では、偏差計算部120
による演算結果、すなわちPI制御器122への入力Δ
を、次式のようにgdfの逆数から1を差し引いたものと
する。
【0120】 第3の実施の形態のように単純に1からgdfを差し引い
た値を偏差Δとして用いることも可能であるが、この場
合、gdfが1より小さくなる時では、制動力はピーク値
に十分近い値を取り、少しの制動力変動でロックに陥る
可能性が高い。制御性の面から、gdfが1より小さくな
るに従い感度が大きくなる(26)式を入力として用いるこ
とが好ましい。
【0121】(26)式の値ΔをPI制御器122への入力
とすることにより、共振ゲイン/基準ゲインが1より小
さい状態、すなわちロック状態に近づくに従い、Δが急
激に大きくなる。すなわち、感度が高くなるため、ロッ
クに陥る可能性を回避しつつ、制動力をピーク値に保持
して摩擦状態をより正確に検出できる。
【0122】以上が本発明に係る実施の形態であるが、
上記例にのみ限定されるものではない。例えば、第3〜
第5の実施の形態におけるPI制御器を、いわゆるH∞
制御や2自由度制御器といったロバスト制御器など、よ
り高性能なものを用いることも可能である。この場合、
制動力制御器はPI制御器の出力に基づいて、平均的な
制動力の増減を行い、同時に共振周波数での励振も行
う。
【0123】また、第3〜第5の実施の形態に係る摩擦
状態検出装置の検出方法を、第1の実施の形態に係る荷
物把持装置や第2の実施の形態に係る摩擦係数計測装置
に適用することができる。勿論、アンチロックブレーキ
制御装置等のように摩擦状態を検出する他の装置すべて
に適用することが可能である。
【0124】
【実施例】本発明の第5の実施の形態に係る摩擦状態検
出装置が実際の路面で摩擦状態を検出した際の動作結果
について以下に説明する。なお、共振成分検出部128
は、第3の実施の形態と同様のものが用いられている。
【0125】既に述べたように、路面摩擦係数μとスリ
ップ率Sとの関係は、図9に示したような特性を示す。
このμ−S特性では、あるスリップ率(図9のA2領
域)で摩擦係数μがピーク値をとる。
【0126】ここで、図17(a)に示すようにμのピ
ーク値が0.5〜0.8の範囲で正弦波状に変化した場
合における、車輪速度[rad/s] 、スリップ率、本摩擦状
態検出装置により推定された推定路面摩擦係数、共振ゲ
イン[rad/s/Nm]、この時に車輪に作用した制御力(制御
トルク;[Nm])の時間波形を図17(b)〜(f)の各
図に示す。
【0127】図17(e)より、検出された共振ゲイン
は、ほぼ0.013 [rad/s/Nm]に保持され、制動力のピーク
値におけるゲイン値に保持されていることがわかる。こ
の時の制動力の変化は、図17(f)に示したように、
路面摩擦係数の特性を良く反映している。そして、図1
7(d)に示したように、この制動力の値より求めた路
面摩擦係数の推定値は、実路面の摩擦係数のピーク値に
近いものとなっている。
【0128】次に、図18(a)に示すようにμのピー
ク値が0.4〜0.8の範囲でステップ状に変化した場
合における、車輪速度[rad/s] 、スリップ率、本摩擦状
態検出装置により推定された推定路面摩擦係数、共振ゲ
イン[rad/s/Nm]、この時に車輪に作用した制御力(制御
トルク;[Nm])の時間波形を図18(b)〜(f)の各
図に示す。
【0129】図18(e)より、検出された共振ゲイン
は、ほぼ0.013 [rad/s/Nm]に保持され、制動力のピーク
値におけるゲイン値に保持されていることがわかる。路
面摩擦係数μがステップ状に減少する際には、スリップ
率が急上昇し、一瞬、車輪はロック傾向を示す(図18
(b)、(c)参照)が、その後、安定に復帰してい
る。この時の制動力の変化は、図18(f)に示したよ
うに、路面摩擦係数の特性を良く反映している。そし
て、図18(d)に示したように、この制動力の値より
求めた路面摩擦係数の推定値は、実路面の摩擦係数のピ
ーク値に近いものとなっている。
【0130】これらの動作結果より、制動力の値から求
められた路面摩擦係数は、本発明の摩擦状態検出装置に
より正確に求められることがわかる。
【0131】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、請求項1の
発明によれば、接触面の摩擦状態を敏感に反映する共振
ゲインが予め定められた基準ゲインに一致又は略一致し
た状態で検知された作用力に基づいて摩擦状態を検出す
るので、ノイズ等が多い状況でもシンプルな構成の装置
で摩擦状態を高精度に検出することができる、という効
果が得られる。
【0132】また、請求項2の発明によれば、接触面の
摩擦状態を敏感に反映する共振ゲインを用いて一定の摩
擦力の状態となるように作用力を制御し、該作用力に基
づいて接触面の摩擦状態を検出するようにしたので、ノ
イズ等が多い状況でもシンプルな構成の装置で常に摩擦
状態を高精度に検出することができる、というさらなる
効果が得られる。
【0133】また、請求項3の発明によれば、基準ゲイ
ンに対する共振ゲインの比の逆数と1との偏差が0に一
致又は略一致するように作用力を制御するようにしたの
で、接触面のすべりが急増する状態に近づくに従い、偏
差が急激に大きくなって感度が大きくなるため、すべり
が急増する状態に陥る可能性を回避しつつ、作用力をピ
ーク値に保持して摩擦状態を正確に検出することができ
る、というさらなる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る荷物把持装置の
外観図であり、(A)は正面図、(B)は側面図を示
す。
【図2】第1実施の形態に係る荷物把持装置の把持部の
詳細な構成及び構成ブロック図である。
【図3】本発明の第2実施の形態に係る摩擦係数測定装
置の外観図であり、(A)は正面図、(B)は側面図を
示す。
【図4】第2実施の形態に係る摩擦係数測定装置の回転
軸換算したモデル及び構成ブロック図である。
【図5】制動力/駆動力のスリップ速度に対する特性を
示す線図である。
【図6】第2実施の形態に係る摩擦係数測定装置の変形
例であり、(A)は正面図、(B)は側面図を示す。
【図7】外力と最大摩擦力との関係を示す図である。
【図8】共振特性を利用した摩擦状態検出の原理を説明
するための振動系の等価モデルを示す図である。
【図9】タイヤと路面との間の摩擦係数μのスリップ率
Sに対する特性を示す線図である。
【図10】車両の力学モデルを示す図である。
【図11】車両の力学モデルを回転軸換算したモデルを
示す図である。
【図12】第3の実施の形態に係る摩擦状態検出装置の
構成を示す図である。
【図13】第3の実施の形態に係る共振成分検出部の構
成を示す図である。
【図14】第3の実施の形態に係る相関係数検出部の構
成を示す図である。
【図15】第4の実施の形態に係る共振成分検出部の構
成を示す図である。
【図16】第4の実施の形態において、入力信号との相
関をとる単一正弦波の波形を示す図である。
【図17】路面摩擦係数のピーク値が正弦波状に変化す
る場合において測定された本発明の実施例に係る摩擦状
態検出装置の動作結果等を示すグラフであり、(a)は
測定の対象とされた実際の路面摩擦係数のピークμ値、
(b)は車輪速度ωw 、(c)はスリップ率、(d)は
本実施例の摩擦状態検出装置により推定された路面摩擦
係数、(e)は本実施例の摩擦状態検出装置により推定
された共振ゲイン、(f)は車輪に作用された制動トル
ク、の時間的変化を各々示す図である。
【図18】路面摩擦係数のピーク値がステップ状に変化
する場合において測定された本発明の実施例に係る摩擦
状態検出装置の動作結果等を示すグラフであり、(a)
は測定の対象とされた実際の路面摩擦係数のピークμ
値、(b)は車輪速度ωw 、(c)はスリップ率、
(d)は本実施例の摩擦状態検出装置により推定された
路面摩擦係数、(e)は本実施例の摩擦状態検出装置に
より推定された共振ゲイン、(f)は車輪に作用された
制動トルク、の時間的変化を各々示す図である。
【符号の説明】
120 偏差計算部 122 PI制御器 124 制動力制御系 126 車輪共振系 128 共振成分検出部
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−334454(JP,A) 特開 平7−152429(JP,A) 特開 平4−84652(JP,A) 特開 平6−258196(JP,A) 実開 昭58−148651(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01L 5/00 G01N 19/02 JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 摩擦力の生じる接触面の片面側要素に該
    接触面と略平行な方向に変位するばね要素を接続し、該
    ばね要素の他端に慣性体を接続してなると共に前記片面
    側要素に作用力が印加される振動系と、 前記振動系に印加された作用力及び該作用力の状態量を
    検知する作用力検知手段と、 前記作用力が印加された振動系の状態量を検知する状態
    量検知手段と、 前記作用力の状態量に対する前記振動系の状態量の比で
    ある共振ゲインを演算する共振特性演算手段と、 前記共振特性演算手段により演算された共振ゲインが予
    め定められた基準ゲインに一致又は略一致した状態で検
    知された前記作用力に基づいて前記接触面における摩擦
    状態を検出する摩擦状態検出手段と、 を含む摩擦状態検出装置。
  2. 【請求項2】 前記共振ゲインが前記基準ゲインに一致
    又は略一致した状態となるように前記作用力を制御する
    作用力制御手段と、 をさらに含むことを特徴とする請求項1の摩擦状態検出
    装置。
  3. 【請求項3】 前記作用力制御手段は、前記基準ゲイン
    に対する前記共振ゲインの比の逆数と1との偏差が0に
    一致又は略一致するように前記作用力を制御することを
    特徴とする請求項2の摩擦状態検出装置。
JP15727596A 1996-06-18 1996-06-18 摩擦状態検出装置 Expired - Fee Related JP3228127B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15727596A JP3228127B2 (ja) 1996-06-18 1996-06-18 摩擦状態検出装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15727596A JP3228127B2 (ja) 1996-06-18 1996-06-18 摩擦状態検出装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH102813A JPH102813A (ja) 1998-01-06
JP3228127B2 true JP3228127B2 (ja) 2001-11-12

Family

ID=15646099

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP15727596A Expired - Fee Related JP3228127B2 (ja) 1996-06-18 1996-06-18 摩擦状態検出装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3228127B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3344951B2 (ja) 1998-10-02 2002-11-18 株式会社豊田中央研究所 物理量推定装置及びabs制御装置
JP3769435B2 (ja) * 1999-11-05 2006-04-26 株式会社豊田中央研究所 路面摩擦状態推定装置
EP1223071A4 (en) * 2000-06-28 2004-10-20 Bridgestone Corp VEHICLE CONTROL METHOD AND VEHICLE CONTROL APPARATUS
JP2006126164A (ja) 2004-09-30 2006-05-18 Hitachi Ltd タイヤグリップセンサ及び該センサを用いた制御装置
JP7463839B2 (ja) * 2020-05-20 2024-04-09 株式会社デンソー 判定装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPH102813A (ja) 1998-01-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5948961A (en) Apparatus and method for detecting friction characteristics
US6324461B1 (en) Road surface condition estimating apparatus and variation reduction processing apparatus
EP0699568B1 (en) Anti-lock brake controlling apparatus
JP2006126164A (ja) タイヤグリップセンサ及び該センサを用いた制御装置
CN101848826A (zh) 探测车轮滑移的方法
WO2015130901A1 (en) Dual kalman filter for torsional damping of electric traction drives
JP3228127B2 (ja) 摩擦状態検出装置
JP3409702B2 (ja) 車輪状態推定装置
JPH11334555A (ja) 路面摩擦係数推定装置
JP3228168B2 (ja) 回転速度検出装置及びタイヤ発生力検出装置
JPH06258196A (ja) 路面摩擦係数検出装置
JP3319407B2 (ja) 路面状態推定装置
JPH1191539A (ja) 摩擦状態演算装置及び制駆動力制御装置
JP3769410B2 (ja) 物理量推定装置及びabs制御装置
JP3424535B2 (ja) 路面状態推定装置
JP4225255B2 (ja) 車両の振動判定装置および振動抑制装置
JP2000221207A (ja) 走行速度検出装置
JP3644218B2 (ja) アンチロックブレーキ制御装置
JP4027585B2 (ja) 物理量推定装置及び路面摩擦状態推定装置
JP3792756B2 (ja) アンチロックブレーキ制御装置
JP3341236B2 (ja) 速度及び距離の検出方法
JP3640126B2 (ja) スリップ率サーボ制御装置
JP4696211B2 (ja) 路面摩擦状態推定装置
JPH07117656A (ja) ブレーキ制御装置及びブレーキ制御用センサ
JP4527244B2 (ja) 路面状態推定装置

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees