JPH0538352U - 内燃機関の吸気ダクト - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 吸気ダクトの配設用スペースを削減するとと
もに、吸音部材の消耗を防ぎ、もって吸気ダクトの開口
の面積を大きくとり、吸気騒音の低減効果を十分に得
る。 【構成】 ダクト本体１の途中壁２に複数の透孔３によ
る開口を設け、この途中壁２の外周面に、発泡ポリウレ
タン樹脂により筒状に成形した吸音部材４を、前記開口
を覆うように外嵌した。この吸音部材４は、ダクト本体
１内の脈動を伴った負圧により吸引されても、ほとんど
消耗しない。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、内燃機関の吸気ダクトに関し、詳しくは吸気騒音の低減技術に係る ものである。

【０００２】

【従来の技術】

内燃機関の吸気ダクトにおいては、内燃機関の吸気作用により発生する吸気の 脈動が、吸気ダクト内の共鳴を引き起こして吸気騒音を発生させていた。そこで 、この吸気騒音を低減させるために、従来より次のような構造が採用又は検討さ れている。 (1) 共鳴室、サイドブランチ、干渉管等を備えたレゾネータを吸気ダクトの途中 壁に接続した構造。

【０００３】 (2) 特開昭６３−２８５２５７号公報に開示されているように、ダクト本体の壁 面に開口を穿設し、この開口を多孔質繊維材料を中空筒状に成形してなる被覆部 材で覆う構造。この被覆部材としては、ポリエステル等の合成樹脂繊維に対して 変性アクリル樹脂等の合成樹脂バインダを含浸させた合成樹脂製不織布をホット プレス成形等してなるものが挙げられる。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

ところが、前記(1) のレゾネータは体積の大きいものが多く、大きな配設用ス ペースを必要とするという問題があった。さらに、内燃機関が収納される場所、 例えば自動車のエンジンルーム内のスペースは、近年、デザイン上の制約や周辺 機器の増加により徐々に限られてきており、レゾネータの配設用スペースの確保 は難しくなっている。

【０００５】 また、前記(2) の被覆部材は体積の小さいもので済むので、格別の配設用スペ ースをほとんど必要としない。ところが、この被覆部材は多孔質繊維材料で形成 されていたため、ダクト本体の開口の面積を大きくとると、その多孔質繊維材料 がダクト本体内の脈動を伴った負圧により開口から吸引されて徐々に被覆部材か ら剥れていき、長時間の使用により消耗する可能性があった。また、ダクト本体 内に吸引された多孔質繊維材料が内燃機関の性能に影響を及ぼすことも考えられ る。そのため、開口の面積を大きくとることができず、吸気騒音の低減効果が十 分に得られないおそれがあった。また、被覆部材の製造に手間がかかり、コスト が高いという問題もあった。

【０００６】 本考案の目的は、上記課題を解決し、従来の吸気ダクト以上の格別の配設用ス ペースをほとんど必要としないばかりでなく、長時間使用しても吸音部材がほと んど消耗せず、よって、ダクト本体の開口の面積を大きくとって、吸気騒音の低 減効果を十分に得ることができ、また、吸音部材の製造が容易で、コストを低く することもできる新規な吸気ダクトを提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために、本考案の吸気ダクトは、ダクト本体の途中壁に開 口を設け、この途中壁の外周面に発泡高分子材料よりなる吸音部材を前記開口を 覆うように設けて構成した（請求項１）。この吸音部材の内面は、開口に食い込 んで、途中壁の内周面と略面一になっていることが好ましい（請求項２）。

【０００８】 ここで、前記「開口」としては、ダクト本体の途中壁に穿設した１個又は複数 個の透孔又はスリットによる開口や、途中壁を分断してその分断口を互いに離間 した間隙による開口等を例示することができる。

【０００９】 前記「吸音部材」の「発泡高分子材料」としては、発泡した、ポリウレタン樹 脂、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ゴム等を例示することができる。こ の「吸音部材」の途中壁に対する設け方としては、次のような態様を例示するこ とができる。

【００１０】 筒状に成形した吸音部材を途中壁の外周面に外嵌して止め、必要に応じて接 着した態様。 板状に成形した吸音部材を途中壁の外周面に巻き付け、さらに接着したり外 側から締め付けたりして止めた態様。 内部に中子を挿入した途中壁を型にセットし、この途中壁の外周面に筒状の 吸音部材を一体成形した態様。特に、この態様によると、吸音部材の内周面を開 口に容易に食い込ませて途中壁の内周面と略面一にすることができる。

【００１１】

【作用】

請求項１記載の吸気ダクトは、吸音部材が体積の小さいもので済むので、従来 の吸気ダクト以上の格別の配設用スペースをほとんど必要としない。また、この 吸音部材は発泡高分子材料で形成されているため、長時間に亘りダクト本体内の 脈動を伴った負圧により吸引されてもほとんど消耗しない。よって、ダクト本体 の開口の面積を大きくとることができ、吸気騒音の低減効果を高めることができ る。また、従来の多孔質繊維材料よりなる被覆部材と比べて、この吸音部材は製 造が容易である。

【００１２】 さらに、請求項２記載の吸気ダクトによれば、吸音部材の内周面が開口に食い 込んで途中壁の内周面と略面一になっているので、該途中壁の内周面が開口によ る段差の少ない滑らかな面になり、ダクト本体内を流れる吸気の乱流が防止され る。

【００１３】

【実施例】

以下、本考案を、自動車用内燃機関のエアクリーナと燃料噴射装置との間を結 ぶ吸気ダクトに具体化した第一実施例について、図１〜図３を参照して説明する 。このダクト本体１はポリエチレン樹脂により内径６６ｍｍ、肉厚３ｍｍ、長さ １２６２ｍｍの円筒形に成形されたものである。ダクト本体１の略中央部の途中 壁２には直径１０ｍｍの透孔３が、途中壁２の円周方向に９０度間隔且つ長手方 向に３０ｍｍ間隔で、合計１６個穿設されている。従って、これらの透孔３によ る開口の総面積は１２５６ｍｍ²である。

【００１４】 前記途中壁２の外周面には、密度０．０５ｇ／ｃｍ³の発泡ポリウレタン樹脂 により内径７２ｍｍ、肉厚３０ｍｍ、長さ１５０ｍｍの円筒形に成形された吸音 部材４が、全ての透孔３を覆うように外嵌され、さらにウレタン用接着剤により 接着されている。

【００１５】 本実施例による吸気騒音の低減効果を調べるため、ダクト本体１の片端口にス ピーカを、他端口にマイクロフォンをセットし、スピーカからホワイトノイズを 発生させたときにマイクロフォンで拾った音をＦＦＴ（高速フーリエ変換）アナ ライザで分析するという方法で試験を行った。図３はその試験で得られた５００ Ｈｚ以下の周波数成分の音圧レベルを示すもので、同図中の破線は比較例として の透孔も吸音部材も無い単なる吸気ダクトの場合の試験結果を示し、同図中の実 線は本実施例の場合の試験結果を示している。同図から明らかなように、比較例 では、１４０Ｈｚ、２３０Ｈｚ、３４０Ｈｚ及び４６０Ｈｚを中心とする各共鳴 周波数で明瞭な共鳴を起こし音圧レベルが高くなるが、本実施例ではこれらのう ち１４０Ｈｚ、２３０Ｈｚ及び４６０Ｈｚの各共鳴周波数における共鳴が抑えら れ、音圧レベルが顕著に低減している。

【００１６】 本実施例の吸気ダクトによれば、吸音部材４が体積の小さいもので済むので、 自動車のエンジンルーム内に、従来の吸気ダクト以上の格別の配設用スペースを ほとんど必要としない。また、この吸音部材４は発泡ポリウレタン樹脂で形成さ れているため、長時間に亘りダクト本体１内の脈動を伴った負圧により吸引され てもほとんど消耗しない。よって、透孔３による開口の総面積を大きくとること ができ、上記の通り吸気騒音の低減効果を十分に得ることができる。また、従来 の多孔質繊維材料よりなる被覆部材と比べて、この吸音部材４は製造が容易であ り、コストを低くすることもできる。

【００１７】 次に、本考案を同じく自動車用内燃機関の吸気ダクトに具体化した第二実施例 について、図４及び図５を参照して説明する。本実施例では、ダクト本体１の途 中壁２が二つに分断され、その分断口が互いに離間されることにより長さ５ｍｍ の間隙５が設けられており、その開口の面積は１１３０ｍｍ²である。

【００１８】 また、吸音部材６は密度０．２ｇ／ｃｍ³の発泡ゴムにより成形され、その内 面は間隙５に食い込んで途中壁２の内周面と略面一になっている。この吸音部材 ６は、間隙５にかかるよう内部に中子を挿入した途中壁２を図示しない型にセッ トし、この途中壁２の外周面に発泡ゴム材料を注入して一体成形した後、中子を 取り除くという方法で形成されたものである。その他の構成は、第一実施例と略 同一である。

【００１９】 本実施例によれば、第一実施例と同様の作用及び効果を奏するのに加え、吸音 部材６の内面が間隙５に食い込んで途中壁２の内周面と略面一になっているので 、該途中壁２の内周面が間隙５による段差の少ない滑らかな面になり、ダクト本 体１内を流れる吸気の乱流が防止される。そのため、間隙等の無い単なる吸気ダ クトと比べて流動抵抗の増加が無く、内燃機関の吸気効率に悪影響を与えない。

【００２０】 なお、本考案は前記実施例の構成に限定されず、例えば自動車用以外の内燃機 関の吸気ダクトに具体化する等、考案の趣旨から逸脱しない範囲で任意に変更し て具体化することもできる。

【００２１】

【考案の効果】

請求項１記載の吸気ダクトは、従来の吸気ダクト以上の格別の配設用スペース をほとんど必要としないばかりでなく、長時間使用しても吸音部材がほとんど消 耗せず、よって、ダクト本体の開口の面積を大きくとって、吸気騒音の低減効果 を十分に得ることができ、また、吸音部材の製造が容易で、コストを低くするこ ともできるという優れた効果を奏する。

【００２２】 また、請求項２記載の吸気ダクトは、上記効果に加え、ダクト本体内を流れる 吸気の乱流が防止され、内燃機関の吸気効率に悪影響を与えないという優れた効 果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】第一実施例の吸気ダクトの斜視図である。

【図２】同吸気ダクトの断面図である。

【図３】同吸気ダクトの吸気騒音の低減効果を示すグラ
フである。

【図４】第二実施例の吸気ダクトの斜視図である。

【図５】同吸気ダクトの断面図である。

【符号の説明】

１ ダクト本体 ２ 途中壁 ３ 透孔 ４ 吸音部材 ５ 間隙 ６ 吸音部材

フロントページの続き (72)考案者 権田 雅宏 愛知県西春日井郡春日町大字落合字長畑１ 番地 豊田合成株式会社内 (72)考案者 藤原 和夫 愛知県西春日井郡春日町大字落合字長畑１ 番地 豊田合成株式会社内

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ダクト本体の途中壁に開口が設けられ、
   前記途中壁の外周面に発泡高分子材料よりなる吸音部材
   が前記開口を覆うように設けられた内燃機関の吸気ダク
   ト。
2. 【請求項２】 前記吸音部材の内面は、前記開口に食い
   込んで、前記途中壁の内周面と略面一になっている請求
   項１記載の内燃機関の吸気ダクト。