JPH05331477A - 油圧作動油組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 低摩擦係数の油圧作動油組成物特に、パワー
ステアリングフルードとして好適な油圧作動油組成物を
提供すること。 【構成】 基油に対し、組成物全量基準で、（Ａ）ジチ
オりん酸亜鉛、亜りん酸エステル、及びりん酸エステル
からなる群より選ばれる少なくとも１種の化合物０．１
〜７重量％、及び（Ｂ）グリセリン脂肪酸エステル０．
０２〜３重量％を含有せしめてなることを特徴とする油
圧作動油組成物。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、油圧作動油組成物に関
し、さらに詳しくは、摩擦係数が大幅に低減された油圧
作動油組成物に関する。本発明の油圧作動油組成物は、
自動車用油圧作動油、その中でも特にパワーステアリン
グフルード（ＰＳＦ）として好適である。

【０００２】

【従来の技術】油圧作動油は、油圧機器、流体継手、ト
ルクコンバーター、自動変速機、緩衝器などにおける動
力伝達、力の制御、緩衝、潤滑、防錆などの重要な機能
を果たし、油圧システムの信頼性、耐久性に直接影響す
るため、潤滑性能、耐摩耗性、摩擦特性、その他の諸性
能に優れていることが要求される。特に、パワーステア
リングに使用される油圧作動油に関しては、耐摩耗性が
良好で、かつ、低摩擦係数であることが求められる。

【０００３】パワーステアリングは、ステアリング装置
の途中に動力機構を設け、かじ取りの際、補助力を与え
るようにしたもので、ハンドル操作を軽減し自動車の運
転を容易にするための機構である。パワーステアリング
は、オイル・タンク、オイル・ポンプ、コントロール・
バルブ、パワーシリンダー、ステアリングギア・ボック
スなどで構成されており、そこには油圧作動油が使用さ
れている。ＰＳＦは、この油圧作動油に当たり、パワー
ステアリングの作用に重要な役割を果たしている。

【０００４】ＰＳＦは、油圧作動やピストンとシリンダ
間、ギア部などの潤滑の役割を果たしており、これらの
働きに対する必要な性能としては、（１）適正な粘度特
性を有すること、（２）耐摩耗性に優れていること、
（３）摩擦特性に優れていること、（４）熱・酸化安定
性に優れ、長期間の使用に耐えること、（５）耐焼き付
き性に優れていること、（６）ゴムシール材との適合性
があること、（７）泡立ちが少ないこと、等が挙げられ
る。

【０００５】近年、これらの要求性能に対して、耐摩耗
性や低温流動性などを向上させた各種ＰＳＦが開発さ
れ、市販されている。しかしながら、従来のＰＳＦは、
特に、ポンプ摺動部やバルブにおける摩擦係数が高いと
いう問題点を有している。ＰＳＦの摩擦特性は、パワー
ステアリングの円滑な操作に欠かせない性能である。ま
た、ＰＳＦの摩擦特性が不十分であると、グー音が発生
し、パワーステアリングの静粛性が損なわれる。

【０００６】ところで、ＰＳＦは、一般に、鉱油などの
基油に、ジチオりん酸亜鉛（以下、Ｚｎ−ＤＴＰと略
記）などの耐摩耗剤や粘度指数向上剤、酸化防止剤、消
泡剤などの各種添加剤を添加して、必要な性能を付与し
たものである。ところが、Ｚｎ−ＤＴＰなどの耐摩耗剤
を添加したＰＳＦは、耐摩耗性は改善されるものの、摩
擦係数が高いという欠点を有している。そこで、ＰＳＦ
の摩擦特性を改良するために、ソルビタン脂肪酸エステ
ルなどの摩擦調整剤を併用しているが、摩擦係数低減効
果は未だ不十分であり、その改善が求められている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、低摩
擦係数の油圧作動油組成物を提供することにある。ま
た、本発明の目的は、特に、パワーステアリングフルー
ドとして好適な油圧作動油組成物を提供することにあ
る。

【０００８】本発明者は、前記従来技術の問題点を克服
するために鋭意研究した結果、ジチオりん酸亜鉛や亜り
ん酸エステル、りん酸エステルなどの耐摩耗剤を添加し
た油圧作動油に、グリセリン脂肪酸エステルを含有せし
めたところ、摩擦係数が大幅に低減することを見いだ
し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。

【０００９】

【課題を解決するための手段】かくして、本発明によれ
ば、基油に対し、組成物全量基準で、（Ａ）ジチオりん
酸亜鉛、亜りん酸エステル、及びりん酸エステルからな
る群より選ばれる少なくとも１種の化合物０．１〜７重
量％、及び（Ｂ）グリセリン脂肪酸エステル０．０２〜
３重量％を含有せしめてなることを特徴とする油圧作動
油組成物が提供される。

【００１０】以下、本発明について詳述する。 （基油）本発明で用いる基油としては、特に限定され
ず、従来公知の各種鉱油や合成油等が使用できる。鉱油
としては、例えば、軽質ニュートラル油、中質ニュート
ラル油、重質ニュートラル油、ブライトストックなどが
挙げられる。合成油としては、例えば、ポリ−α−オレ
フィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、ポリオールエ
ステル、二塩基酸エステル、シリコーン油などが挙げら
れる。これらの基油は、それぞれ単独で、あるいは２種
以上を混合して使用することができ、鉱油と合成油を混
合使用してもよい。基油は、１００℃での粘度が通常
１．５〜３０ｃＳｔの範囲内にあることが好ましい。

【００１１】（Ａ成分）本発明では、ジチオりん酸亜
鉛、りん酸エステル、及び亜りん酸エステルからなる群
より選ばれる少なくとも１種の化合物を組成物の全量を
基準として０．１〜７重量％の割合で使用する。このＡ
成分は、主として耐摩耗性を得るために基油に加えられ
る。

【００１２】ジチオりん酸亜鉛 本発明で使用するジチオりん酸亜鉛（Ｚｎ−ＤＴＰ）
は、下記一般式で表されるジアルキルジチオりん酸亜鉛
である。

【００１３】

【化１】 （式中、Ｒは、炭素数３〜８のアルキル基を表し、４つ
のＲは、それぞれ同一または異なっていてもよい。）

【００１４】Ｚｎ−ＤＴＰは、その４つのＲが全て同一
であるものから、それぞれ異なるものまで各種のものが
使用できる。また、２種以上のＺｎ−ＤＴＰを混合して
用いてもよい。

【００１５】Ｚｎ−ＤＴＰは、好ましくは０．３〜３重
量％の割合で使用する。Ｚｎ−ＤＴＰの配合割合が過小
であると、耐摩耗性付与効果が小さすぎ、逆に、過大で
あると、耐摩耗性付与効果が飽和し、また、腐食を発生
させる場合がある。

【００１６】亜りん酸エステル 本発明で使用する亜りん酸エステルとしては、次の３種
の化合物がある。 （１）ＨＰ（Ｏ）（ＯＨ）（ＯＲ） （２）ＨＰ（Ｏ）（ＯＲ）₂ （３）Ｐ（ＯＲ）₃ Ｒは、炭素数４以上の飽和または不飽和のアルキル基、
アリール基、アルキル置換アリール基であり、１つの化
合物中にＲが２〜３個ある場合には、それぞれ同一また
は異なっていてもよい。これらの亜りん酸エステルの中
でも、特に下記一般式で表される化合物が好ましい。

【００１７】

【化２】 （式中、Ｒは、炭素数４〜２４のアルキル基、アリール
基、アルキルアリール基を表し、２つのＲは、それぞれ
同一または異なっていてもよい。）

【００１８】Ｒの炭素数が少な過ぎると摩擦力が高くな
り、逆に、多過ぎると基油との相溶性が低下する。亜り
ん酸エステルの具体例としては、ジブチルハイドロゲン
ホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、
ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジステアリルハ
イドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホス
ファイトなどが挙げられる。これらの亜りん酸エステル
は、それぞれ単独で、あるいは２種以上を組み合わせて
使用することができる。亜りん酸エステルは、好ましく
は０．３〜３重量％の割合で使用する。この使用割合が
少なすぎると耐摩耗性が低下し、多すぎると酸化安定性
が低下する。

【００１９】りん酸エステル 本発明で使用するりん酸エステルとしては、次の３種の
化合物がある。 （１）Ｏ＝Ｐ（ＯＨ）₂（ＯＲ） （２）Ｏ＝Ｐ（ＯＨ）（ＯＲ）₂ （３）Ｏ＝Ｐ（ＯＲ）₃ Ｒは、炭素数４以上の飽和または不飽和のアルキル基、
アリール基、アルキル置換アリール基であり、１つの化
合物中にＲが２〜３個ある場合には、それぞれ同一また
は異なっていてもよい。これらのりん酸エステルの中で
も、特に下記一般式で表される化合物が好ましい。

【００２０】

【化３】 （式中、Ｒは、炭素数４〜２４のアルキル基、アリール
基、アルキルアリール基を表し、２つのＲは、それぞれ
同一または異なっていてもよい。）

【００２１】Ｒの炭素数が少な過ぎると摩擦力が高くな
り、逆に、多過ぎると基油との相溶性が低下する。りん
酸エステルの具体例としては、ブチルアシッドホスフェ
ート、２−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ラウ
リルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェ
ート、ステアリルアシッドホスフェートなどを挙げるこ
とができる。これらのりん酸エステルは、それぞれ単独
で、あるいは２種以上を組み合わせて使用することがで
きる。りん酸エステルは、好ましくは０．３〜３重量％
の割合で使用する。この使用割合が少なすぎると耐摩耗
性が低下し、多すぎると酸化安定性が低下する。

【００２２】（Ｂ成分）本発明において、グリセリン脂
肪酸エステルは、主として摩擦調整剤として使用し、そ
の使用割合は、組成物全量基準で０．０２〜３重量％、
好ましくは０．１〜２重量％である。グリセリン脂肪酸
エステルは、前記Ａ成分と併用することにより、摩擦係
数を顕著に低減することができる。グリセリン脂肪酸エ
ステルとしては、次の３つの一般式で表されるモノ−、
ジ−及びトリ−エステルがある。

【００２３】

【化４】

【００２４】

【化５】

【００２５】

【化６】 （これらの式中、Ｒ₁〜Ｒ₃は、炭素数８〜２０のアルキ
ル基を表し、それぞれ同一または異なっていてもよ
い。）

【００２６】グリセリン脂肪酸エステルの具体例として
は、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグ
リセライド、オレイン酸ジグリセライド、ステアリン酸
ジグリセライド、オレイン酸トリグリセライド、ステア
リン酸トリグリセライドなどを挙げることができる。

【００２７】これらのグリセリン脂肪酸エステルは、そ
れぞれ単独で、あるいは２種以上を組み合わせて使用す
ることができる。２種以上を組み合わせて使用する場合
には、モノ−体／ジ−体／トリ−体の好ましい重量比
は、３０〜７０重量％／３０〜７０重量％／０〜３０重
量％である。グリセリン脂肪酸エステルの使用割合が少
なすぎると、摩擦係数低減効果が小さく、多すぎると酸
化安定性が低下する。

【００２８】（その他の添加剤）本発明の油圧作動油組
成物には、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じ
てその他の耐摩耗剤や摩擦低減剤、無灰清浄分散剤、酸
化防止剤、金属清浄剤、粘度指数向上剤、流動点降下
剤、防錆剤、消泡剤、腐食防止剤などを適宜添加するこ
とができる。

【００２９】無灰清浄分散剤としては、例えば、こはく
酸イミド系、こはく酸アミド系、ベンジルアミン系、エ
ステル系のもの等があり、ホウ素含有無灰清浄分散剤も
使用できる。これらは、通常、０．５〜７重量％の割合
で使用される。

【００３０】酸化防止剤としては、例えば、アルキル化
ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ア
ルキル化−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止
剤、２，６−ジターシャリーブチルフェノール、４，
４′−メチレンビス−（２，６−ジターシャリーブチル
フェノール）等のフェノール系酸化防止剤等を挙げるこ
とができ、これらは、通常、０．０５〜２重量％の割合
で使用される。

【００３１】金属清浄剤としては、例えば、Ｃａ−スル
ホネート、Ｍｇ−スルホネート、Ｂａ−スルホネート、
Ｃａ−フェネート、Ｂａ−フェネート等があり、これら
は、通常、０．１〜５重量％の割合で使用される。

【００３２】粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメ
タクリレート系、ポリイソブチレン系、エチレン−プロ
ピレン共重合体系、スチレン−ブタジエン水添共重合体
系等が挙げられ、通常、０．５〜３５重量％の割合で使
用される。

【００３３】防錆剤としては、例えば、アルケニルこは
く酸またはその部分エステル等が挙げられ、適宜添加す
ることができる。消泡剤としては、例えば、ジメチルポ
リシロキサン、ポリアクリレート等が挙げられ、適宜添
加することができる。

【００３４】（油圧作動油組成物）前記Ａ成分及びＢ成
分を必須成分として含有する油圧作動油組成物は、優れ
た耐摩耗性と低摩擦係数を兼ね備えている。これらＡ成
分とＢ成分のそれぞれ単独使用では、摩擦係数低減効果
は小さいが、両者を併用することにより、摩擦係数を大
幅に低減することができる。本発明の油圧作動油組成物
は、各種機器の油圧作動油として使用することができる
が、特に、ＰＳＦとして好適である。

【００３５】

【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明
についてさらに具体的に説明するが、本発明は、これら
の実施例のみに限定されるものではない。

【００３６】［実施例１〜４、比較例１〜５］基油とし
て１００℃での粘度が２．５ｃＳｔの高度精製鉱油を用
い、表１に示す各成分を添加して潤滑油組成物を調製し
た。使用した各成分は、以下のとおりである。 （１）粘度指数向上剤：ポリメタクリレート （２）酸化防止剤：２，６−ジターシャリーブチルパラ
クレゾール （３）消泡剤：ジメチルシロキサン （４）ジチオりん酸亜鉛：ｓｅｃ−Ｃ₃／Ｃ₄アルキル基
混合タイプ （５）亜りん酸エステル：ジオレイルハイドロゲンホス
ファイト （６）りん酸エステル：オレイルアシッドホスフェート （７）グリセライド：Ｃ₁₈アルキル基；モノ−体／ジ−
体／トリ−体＝５０／２５／２５（重量比）の混合物 （８）ソルビタンエステル：下記化学式の化合物。

【００３７】

【化７】 （Ｒは、Ｃ₁₈アルキル基） 各成分の配合割合、及び摩擦係数の測定結果を一括して
表１に示す。

【００３８】

【表１】

【００３９】（＊１）摩擦係数の測定法：ＬＦＷ−１に
よる。即ち、図１に示す試験機を用いて、油温５０℃、
荷重４０ｋｇ、回転数１０ｒｐｍ、鉄−ポリテトラフル
オロエチレン（ＰＴＦＥ）間の摩擦により測定した。図
１中、１は鉄製回転リングであり、２はＰＴＦＥ製ブロ
ックであり、３は歪み計である。ＰＴＦＥ製ブロックに
荷重をかけ、リングを回転する時に生じる抵抗を歪み計
で検出し、摩擦係数を算出する。試験油は、リングの半
分程度まで浸っている。

【００４０】表１の結果から、本発明の組成物（実施例
１〜４）が優れた摩擦低減効果を示すことが分かる。

【００４１】〔市販品との比較〕前記実施例１の組成物
と市販のＰＳＦ（市販油Ａ）〜（市販油Ｄ）について、
摩擦係数の測定結果を表２に示す。

【００４２】

【表２】 （＊１）前記と同じ測定法による。

【００４３】表２の結果から、本発明の組成物が従来品
と比較して顕著に優れた低摩擦係数を示すことが分か
る。

【００４４】

【発明の効果】本発明によれば、従来品と比較して、摩
擦係数が顕著に低減された油圧作動油組成物が提供され
る。本発明の油圧作動油組成物は、自動車および工業用
油圧作動油として使用することができるが、特に、ＰＳ
Ｆとして好適である。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、摩擦係数を測定する試験機の外観略図
である。

【符号の説明】

１：鉄製回転リング ２：ポリテトラフルオロエチレン製ブロック ３：歪み計

フロントページの続き (51)Int.Cl.⁵ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｃ１０Ｎ 10:04 30:06 40:04 40:08

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 基油に対し、組成物全量基準で、（Ａ）
   ジチオりん酸亜鉛、亜りん酸エステル、及びりん酸エス
   テルからなる群より選ばれる少なくとも１種の化合物
   ０．１〜７重量％、及び（Ｂ）グリセリン脂肪酸エステ
   ル０．０２〜３重量％を含有せしめてなることを特徴と
   する油圧作動油組成物。