JP4689583B2 - 油圧作動油組成物 - Google Patents
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ところで、最近の油圧機器は小型化かつ高出力化が進んでおり、それに伴い、作動圧力は一段と高圧となり(例えば、従来14〜20MPaであったものが、現在では30MPa以上となる。)、一方油タンクは小容量となってきている。そのため、作動油が受ける熱負荷はこれまで以上に厳しくなり、早期劣化,スラッジ発生,異臭,シリンダーのビビリ現象,作動不良などが問題となってきた。
従来、油圧作動油には、酸化防止能と潤滑性能を合わせもつアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)が使用されてきた。しかしながら、このような油圧作動油においては、該ZnDTPが高圧化に伴って気泡の圧縮熱により生じる局部的高温部で熱分解し、その結果、スラッジの発生、このスラッジによる作動不良、あるいは異臭などを引き起こすという問題があった。
すなわち、本発明は、
(1)%CA 5以下の基油に対し、組成物全量に基づき、(A)アミン系酸化防止剤0.01〜5重量%、(B)フェノール系酸化防止剤0.01〜5重量%、(C)リン酸エステル0.01〜5重量%、及び(D)脂肪酸アミド及び/又は多価アルコールエステル0.001〜5重量%を配合してなる油圧作動油組成物を提供するものである。
(2)基油が、40℃における動粘度2〜500mm2/secであり、かつ粘度指数100以上のものである上記(1)の油圧作動油組成物、
(3)(A)成分のアミン系酸化防止剤が炭素数3〜20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミンである上記(1),(2)の油圧作動油組成物、
(4)(B)成分のフェノール系酸化防止剤が単環フェノール類である上記(1)〜(3)の油圧作動油組成物、
(5)(C)成分のリン酸エステルが芳香族リン酸エステルである上記(1)〜(4)の油圧作動油組成物、及び
(6)作動圧力が30MPa以上の油圧機器に使用される上記(1)〜(5)の油圧作動油組成物、
である。
したがって、本発明の油圧作動油組成物は、例えば建設機械や一般産業機械の油圧装置、あるいは水門,水力発電機等の油圧機器などの作動油として好適に用いられる。
また、この基油は、40℃における動粘度2〜500mm2/secの範囲にあるものが好ましい。この動粘度が2mm2 /sec未満では潤滑性能に劣り、異常摩耗や焼付が生じるおそれがあり、また火災の危険性が高い。一方、500mm2 /secを超えると低温時における粘性抵抗が大きくなり、ポンプへの吸込みが困難となって機械の作動不良をもたらすおそれがある。潤滑性能,火災の危険性及び低温時の粘性抵抗などの面から、より好ましい動粘度は10〜100mm2 /secの範囲である。
本発明の組成物においては、基油として、%CA 及び40℃における動粘度が上記条件を満たすとともに、粘度指数100以上のものを用いるのが、作動油組成物の性能の点から特に好ましい。粘度指数100未満では高温時に粘度が低くなり、潤滑性能が低下し、一方低温時には粘度が高くなり、ポンプの吸込み不良をもたらす。粘度指数100以上では温度による粘度変化が少なく、特に低温から高温までの使用可能温度領域が広くなる。この効果は粘度指数110以上の基油で顕著に認められる。通常の基油にポリマーを配合して高粘度指数化したものは、使用中にポリマーが切断されて粘度指数が低下するが、上記基油には、このような現象は全く認められない。
このような基油としては、例えば常圧蒸留残油や燃料油の脱硫工程で得られる残油を原料とし、減圧蒸留,溶剤脱れき,脱ろう処理を行い、さらに水素化仕上げ,水素化改質、場合によっては溶剤抽出,硫酸処理,白土処理などして得られるパラフィン系基油又はパラフィン系高粘度指数基油、さらにはスラックワックス分の水素化分解によって得られるパラフィン系高粘度指数基油などを挙げることができる。
本発明の組成物においては、上記鉱油系の基油以外にも、合成油系の基油を用いることができる。この合成油としては、例えば、ポリブテン,ポリオレフィン〔α−オレフィン単独重合体や共重合体(例えばエチレン−α−オレフィン共重合体)など〕,各種のエステル(例えば、ポリオールエステル,二塩基酸エステルなど),各種のエーテル,ポリグリコールなどが挙げられる。これらのうち、特にポリオレフィン,ポリオールエステルが好ましい。
これらの基油は一種のみ用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのアミン系酸化防止剤は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、組成物全量に基づき、0.01〜5重量%の範囲で選定される。この量が0.01重量%未満では該酸化防止剤を配合した効果が充分に発揮されないおそれがあり、一方5重量%を超えるとその量の割には効果の向上が認められず、むしろ低温時にこのものが析出することがあり、また経済的にも不利である。酸化防止剤としての効果、低温時での析出抑制及び経済性などの面から、このアミン系酸化防止剤の好ましい配合量は、組成物全量に基づき、0.1〜2重量%の範囲である。
これらの中で、高圧下での瞬時の高温熱履歴に対して効果が高い点から、単環フェノール類が好適である。
本発明においては、上記のアミン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤とを併用することが必要であり、これにより、高圧下での瞬時の高温熱安定性が飛躍的に向上する。該アミン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤との使用割合は、重量比1:9ないし9:1の範囲で適宜選定するのがよい。
本発明の組成物においては、(C)成分としてリン酸エステルが用いられる。このリン酸エステルは、潤滑性能を向上させるためのものであり、その種類については特に制限はなく、従来、極圧剤などとして使用されている公知のものを用いることができる。このようなものとしては、例えばトリイソプロピルホスフェート,トリブチルホスフェート,トリヘキシルホスフェート,トリ−2−エチルヘキシルホスフェート,トリラウリルホスフェート,トリステアリルホスフェート,トリオレイルホスフェートなどの炭素数3〜30のアルキル基もしくはアルケニル基を有する脂肪族リン酸エステル、もしくはそれらのアミン塩、さらにはトリフェニルホスフェート,トリクレジルホスフェート,トリキシレニルホスフェートなどの炭素数6〜30のアリール基を有する芳香族リン酸エステルなどが挙げられる。
このリン酸エステルは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、組成物全量に基づき、0.01〜5重量%の範囲で選ばれる。この量が0.01重量%未満では焼付防止や摩耗防止効果が充分に発揮されないおそれがあり、また、5重量%を超えるとその量の割には効果の向上が認められず、むしろ経済的に不利となる。焼付防止や摩耗防止効果及び経済性などの面から、このリン酸エステルの好ましい配合量は、組成物全量に基づき、0.1〜2重量%の範囲である。
本発明の組成物においては、(D)成分として、脂肪酸アミド及び/又は多価アルコールエステルが用いられる。この(D)成分は、主としてシリンダーのビビリ現象を防止する作用を有するものであり、脂肪酸アミドとしては、例えばイソステアリン酸トリエチレンテトラミド,イソステアリン酸テトラエチレンペンタミド,オレイン酸ジエチレントリアミド,オレイン酸ジエタノールアミドなど、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和脂肪酸と脂肪族アミン,芳香族アミン,ポリアルキレンポリアミンなどとの反応物が挙げられる。一方、多価アルコールエステルとしては、例えばトリメチロールプロパンモノオレエート,トリメチロールプロパンジオレエート,ペンタエリスリトールモノオレエート,ペンタエリスリトールテトラオレエート,オレイン酸モノグリセリド,ソルビタンモノオレエート,ソルビタンセスキオレエートなど、ネオペンチルグリコール,トリメチロールプロパン,ペンタエリスリトール,ジペンタエリスリトール,ソルビタン,ソルビトール,グリセリンなどの多価アルコールと炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和脂肪酸との完全又は部分エステルなどを挙げることができる。
この(D)成分の配合量は、組成物全量に基づき、0.001〜5重量%の範囲で選定される。この量が0.001重量%未満ではシリンダーのビビリ現象防止効果が充分に発揮されないおそれがあり、一方5重量%を超えるとその量の割には効果の向上が認められず、むしろ酸化安定性が低下するとともに、経済的にも不利となる。シリンダーのビビリ現象防止効果、酸化安定性及び経済性などの面から、この(D)成分の好ましい配合量は、組成物全量に基づき、0.01〜2重量%範囲である。また、(D)成分として、脂肪酸アミドと多価アルコールエステルとの併用がシリンダーのビビリ現象防止の点で好ましい。この際、脂肪酸アミドと多価アルコールエステルとの使用割合は、重合比5:95ないし95:5の範囲で適宜選ぶのがよい。
各添加剤の配合量は、通常組成物全量に基づき0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%の範囲である。
本発明の油圧作動油組成物は、高圧下での酸化安定性及び潤滑性能に優れ、特に作動圧力が30MPa以上の油圧機器に好適に用いられる。そして、高圧化に伴う作動油の早期劣化やスラッジ発生などを効果的に防止して長期間にわたって使用することができ、またシリンダーのビビリ現象を解消して安定した作動特性を示す。
基油として、以下に示す性状を有する基油I〜III を用いた。
基油I: 水素化改質油;40℃動粘度46mm2/sec,粘度指数120,%CA
0.1
基油II: 水素化仕上げ油;40℃動粘度46mm2 /sec,粘度指数105,%C
A 2.5
基油III : 溶剤精製油;40℃動粘度46mm2 /sec,粘度指数98,%CA 7. 0
(%CA :n−d−M環分析法による)
第1表に示す組成の油圧作動油を調製し、その性能を以下に示す方法に従って評価した。結果を第1表に示す。
(1)高圧熱安定性試験
高圧用ポンプを用いた油圧回路において、タンクに空気を吹込み、気泡を含んだ油を瞬時に35MPaまで昇圧して気泡の圧縮熱で局部的に熱履歴を与えた。そして、作動油の高圧時の熱安定性を、720時間後に油中に発生したスラッジ量(ミリポア値)を測定することで評価した。
(2)ポンプの摩耗試験
ベーンポンプ(ビッカース社製,V−104C)を用いて、14MPa,250時間後のベーンとカムリングの摩耗量を測定した。
(3)シリンダービビリ特性試験
シリンダーのパッキン材を半球状にし、これに5〜20ニュートン(N)の荷重を加えて、クロムメッキ鋼板上で25mgの作動油の存在下、往復動させた際の摩擦力の変動状態を観察し、ビビリ現象の有無を判定した。
アミン系酸化防止剤: 4,4’−ジオクチルジフェニルアミン
フェノール系酸化防止剤: 2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール
リン酸エステル: トリクレジルホスフェート
脂肪酸アミド: イソステアリン酸トリエチレンテトラミド
多価アルコールエステル: ソルビタンモノオレエート
その他: 防錆剤,金属不活性化剤,粘度指数向上剤,無灰分散剤など
第1表から、以下に示すことが分かる。すなわち、実施例1は、比較例1,2及び3と比べて、高圧熱安定性に優れており(低スラッジ量)、かつポンプの耐摩耗性,シリンダーの耐ビビリ特性も良好である。実施例2及び3は、シリンダーのビビリ特性については、脂肪酸アミド及び多価アルコールエステルのいずれか一つでも良いことを示すが、脂肪酸アミドと多価アルコールエステルとの併用がさらに効果的である。実施例4は%CA 2.5の基油を使用したものであるが、高圧熱安定性は比較的良好である。比較例1〜5は、高圧熱安定性,耐摩耗性及びビビリ特性のいずれかの特性が不良である。
市販のZnDTP系耐摩耗性作動油について、上記と同様にして性能を評価した。その結果、高圧熱安定性試験におけるスラッジ量は300mg/100ミリリットル,ポンプ摩耗試験における摩耗量は5mgであり、シリンダービビリ特性試験ではビビリ現象が認められた。すなわち、この作動油は、高圧熱安定性試験でZnDTPが熱分解して、スラッジ量が特に多くなり、また、ビビリ現象も解消されてないことが分かる。
Claims (6)
- %CA5以下の鉱油系基油及び/又はポリブテン、ポリオレフィン、二塩基酸エステル、エーテル及びポリグリコールから選ばれる合成油系基油に対し、組成物全量に基づき、(A)アミン系酸化防止剤0.01〜5重量%、(B)フェノール系酸化防止剤0.01〜5重量%、(C)炭素数3〜30のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族リン酸エステル若しくはそれらのアミン塩、炭素数6〜30のアリール基を有する芳香族リン酸エステルから選ばれる一種以上のリン酸エステル0.01〜5重量%、及び(D)多価アルコールエステル又は脂肪酸アミドと多価アルコールエステルの混合物0.001〜5重量%を配合してなる油圧作動油組成物。
- 基油が40℃における動粘度2〜500mm2/secであり、かつ粘度指数100以上のものである請求項1記載の油圧作動油組成物。
- (A)成分のアミン系酸化防止剤が炭素数3〜20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミンである請求項1記載の油圧作動油組成物。
- (B)成分のフェノール系酸化防止剤が単環フェノール類である請求項1記載の油圧作動油組成物。
- (C)成分のリン酸エステルが芳香族リン酸エステルである請求項1記載の油圧作動油組成物。
- 作動圧力が30MPa以上の油圧機器に使用されるものである請求項1記載の油圧作動油組成物。
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