JPH05320075A - アルケニルベンゼン及びその誘導体の製造方法 - Google Patents

アルケニルベンゼン及びその誘導体の製造方法

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JPH05320075A
JPH05320075A JP4128825A JP12882592A JPH05320075A JP H05320075 A JPH05320075 A JP H05320075A JP 4128825 A JP4128825 A JP 4128825A JP 12882592 A JP12882592 A JP 12882592A JP H05320075 A JPH05320075 A JP H05320075A
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reaction
catalyst
alkylbenzene
alkali metal
butadiene
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JP4128825A
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Keizo Shimada
恵造 島田
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Teijin Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明はアルキルベンゼンと共役ジオレフィ
ンとを反応せしめて、アルケニルベンゼンを効率よく製
造する方法を提供することにある。 【構成】 アルキルベンゼンと共役ジオレフィンとを触
媒の存在下で反応せしめ、アルケニルベンゼンを製造す
るに当り、触媒として、金属ナトリウムを、焼成脱水処
理したポリハライト鉱物と分散処理した触媒を使用し、
かつ、酸素及び水が実質的に存在しない環境下で反応さ
せる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアルキルベンゼンと共役
ジオレフィンとをアルカリ金属の存在下で反応せしめ
て、アルケニルベンゼンを効率よく、安全に製造する方
法に関する。更に詳細には、例えばo―キシレンと1,
3―ブタジエンとの反応によって得られるアルケニルベ
ンゼンである5―(o―トリル)―ペンテンはそれを環
化してジメチルテトラリンとなし、これを脱水素してジ
メチルナフタレンとし、次いで、酸化することによって
高分子原料として有用なナフタレンジカルボン酸に転換
できる工業的価値の高い化合物であり、本発明はこのよ
うな有用な原料を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、アルキルベンゼンと1,3―ブタ
ジエンとをアルカリ金属の存在下に反応せしめ、モノア
ルケニルベンゼンを製造する方法は知られている(米国
特許第3244758号明細書参照)。
【0003】しかしながら、上記方法は、高収率でモノ
アルケニルベンゼンを得ようとすれば、高価な金属カリ
ウムを多量に使用しなれればならない欠点があった。ま
た、この問題を解決するために、アルキルベンゼンに
1,3―ブタジエンを吹き込んで反応させる際に、触媒
として金属カリウムと金属ナトリウムを併用すると高価
な金属カリウムの使用が少量で済む方法が提案された
(特公昭56―34570号公報、米国特許第3766
288号、米国特許第3953535号参照)。
【0004】更に金属カリウムを炭酸カリウム又はアル
ミナに担持して固定床でo―キシレンとブタジエンの反
応を行わしめる製造工程の改良を行った方法が提案され
ている(米国特許第4990717号)。
【0005】しかしながら、これらの方法はいずれも金
属カリウムを直接使用するため、空気、酸素、水等に対
して反応性が強く、これらの化合物と接触するだけで発
火し、火災安全上危険であり、特にナトリウム―カリウ
ム(Na―K:ナック)合金は酸素、水に対して活性が
高く、微量の酸素、水、等と接触して発火し、周辺の可
燃物(石油類)との共存下では、きわめて危険である。
【0006】また英国特許1269280号(1972
年4月6日)には、ナトリウムと無水カリウム化合物を
触媒として使用する、オレフィンによる芳香族の側鎖ア
ルキル化反応において、ジエンが反応阻害作用を有する
旨記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述の課題
を解決し、高価で発火の危険性の大きい金属カリウムを
直接使用することなくアルケニルベンゼンを高収率で製
造することを目的とする。しかもアルケニル化反応に高
活性、高選択性の触媒の存在下で、アルキルベンゼンと
例えば1,3―ブタジエンとを反応することにより、目
的物から分離することが困難でかつ煩雑な副生成物の生
成を抑制し、高純度の目的物、すなわち、アルケニルベ
ンゼンを高収率で製造することを目的とするものであ
る。更に該アルケニルベンゼンを環化し、アルキルテト
ラリンを製造する方法及び該アルキルテトラリンを脱水
素しアルキルナフタレンを製造する方法を提供すること
を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、アルキルベン
ゼンと共役ジオレフィン、例えば1,3―ブタジエンと
を触媒の存在下で反応せしめ、アルケニルベンゼンを製
造するに当り、触媒として、アルカリ金属を、焼成脱水
処理したポリハライト(鉱物)の粉末と分散処理した触
媒を使用し、かつ、酸素及び水が実質的に存在しない環
境下で、アルキルベンゼンと共役ジオレフィン(例えば
1,3―ブタジエン)とを反応せしめることを特徴とす
るアルケニルベンゼン及びその誘導体の製造方法であ
る。
【0009】すなわち、アルキルベンゼンと共役ジオレ
フィンとを反応せしめ、アルケニルベンゼンを製造する
のに際し、酸素及び水分を実質的に存在せしめることな
く、かつ、触媒として、アルカリ金属及と、焼成脱水処
理したポリハライト(鉱物)の粉末とを分散処理した触
媒の存在下でアルケニルベンゼンと1,3―ブタジエン
とを反応せしめることにより目的物から分離することが
困難で、かつ煩雑な副生成物の生成を抑制し高純度のア
ルケニルベンゼンを高収率で製造することを特徴とする
アルケニルベンゼン及びその誘導体の製造方法である。
以下本発明を詳細に説明する。
【0010】本発明方法で用いる原料のアルキルベンゼ
ンはベンゼン核に1〜2個のメチル基又はエチル基を持
つアルキルベンゼンであり、具体的な化合物としてはト
ルエン、エチルベンゼン、o―キシレン、m―キシレ
ン、p―キシレンがあげられる。これらのアルキルベン
ゼンは、それぞれ単品で使用することが好ましく、混合
物を使用すると反応生成物であるアルケニルベンゼン類
から目的物を純度よく分離する事が困難になる。
【0011】例えばo―キシレンと1,3―ブタジエン
の反応においては、トルエンやp―キシレン、m―キシ
レン、エチルベンゼン等のアルキルベンゼンが不純物と
して混入すると目的物の純度を著しく低下させる要因と
なる。従って、o―キシレンの純度は95%以上、好ま
しくは98%以上のものが好ましい。ただし、ベンゼン
やシクロヘキサン等のアルキル基を有しない微量の炭化
水素の混入は差支えない。
【0012】同様にトルエン、エチルベンゼン、m―キ
シレン、p―キシレンを用いる場合においても、それぞ
れの単品の純度は95%以上、好ましくは98%以上の
ものが好ましく、ベンゼンやシクロヘキサン等のアルキ
ル基を有しない少量の炭化水素の混入は差支えない。
【0013】出発原料であるアルキルベンゼンは脱水し
て、反応に用いることが好ましい。脱水方法としては、
例えば適当な乾燥剤(例えば活性アルミナ、シリカゲ
ル、モレキュラーシーブス、活性炭等)による吸着分
離、深冷分離、あるいは金属ナトリウム、金属カリウム
と予め接触させて脱水する方法等がある。原料中の含水
量は、低ければ低い程好ましく、通常の含水量の測定法
であるカールフィッシャー法の測定感度以下、例えば数
ppm以下が特に好ましい。
【0014】本発明において使用する共役ジオレフィン
としてはブタジエン、イソプレン等が挙げられる。1,
3―ブタジエンは、如何なる方法で製造されたものでも
よく、また1,3―ブタジエンの純度は如何なるもので
あってもよい。例えばブタン又はブテンの脱水素によっ
て得られる粗ブタジエンをそのまま用いることもできる
し、また該粗ブタジエンを抽出等の方法によって精製し
た1,3―ブタジエンであってもよい。また1,3―ブ
タジエンは、脱水して反応に用いることが好ましい。脱
水方法としては適当な乾燥剤例えば活性アルミナ、シリ
カゲル、モレキュラーシーブス、活性炭等による吸着分
離あるいは深冷分離等がある。1,3―ブタジエン中の
含水量は低ければ低いほど、好ましく、数ppm以下が
特に好ましい。
【0015】本発明においてアルキルベンゼンと共役ジ
オレフィンとの反応に用いられる触媒は、アルカリ金属
と、焼成脱水したポリハライト(鉱物)の微粒子とを分
散処理した触媒である。
【0016】アルカリ金属は、ナトリウムが好ましく、
その純度は高いものほどよいが、少量のカリウム、カル
シウム、マグネシウム、アルミニウム等の金属を含有し
ていても差支えない。純度としては90%以上、できれ
ば99%以上が好ましい。
【0017】(分散剤)分散剤としてのポリハライト
(鉱物)は、カリウム、カルシウム、マグネシウムの含
水硫酸塩鉱物であり、岩塩鉱床中の一成分である。その
化学組成は、K2Ca2 Mg(SO4 4 ・2H2 Oま
たはK2 SO4 ・2CaSO4 ・MgSO 4 ・2H2
である。含水塩中および無水塩(焼成脱水塩)中のKの
含有率は12.9〜13.8%である。
【0018】主な産地はドイツのStassfurt、
オーストリアのIschlの岩塩鉱山、アメリカ、テキ
サス州のMc Dowell Wellである。化学的
な性質として、水で分解すると石膏(CaSO4 ・2H
2 O)を遊離するのでこれを分離した溶液を乾燥、焼成
して用いると効果が大きい。またこのポリハライト鉱物
を酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム
と水溶液で処理した濾液を乾燥焼成すると更に効果が向
上する。 (触媒の調製)金属ナトリウムとポリハライト(鉱物)
との割合はどのような割合でもよいが、金属ナトリウム
の最終割合は触媒全量に対して0.1〜30重量%、好
ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1〜1
0重量%である。本発明方法において用いられる触媒の
調製方法としては、金属ナトリウムを上記焼成脱水処理
した。ポリハライト(鉱物)の微粒子に分散処理する方
法がとられる。分散処理は窒素、ヘリウム、アルゴン、
水素等の不活性ガス中で行うことが好ましい。
【0019】分散処理は不活性溶媒を用いて分散担持す
るいわゆる湿式分散担持方法と、溶媒を使用しない乾式
分散担持方法が採用される。本方法においては、いずれ
の方法によって調製された触媒を用いることができる。
担体に分散処理する温度は100〜450℃、好ましく
は100〜250℃、さらに好ましくは110〜200
℃の範囲で行なわれる。
【0020】不活性溶媒を用いて分散担持する方法は、
不活性溶媒中で金属ナトリウムを分散処理剤とともに撹
拌する方法である。例えば、金属ナトリウム3重量%
を、分散担持する場合に金属ナトリウム3部に分散処理
剤となるポリハライト(鉱物)97部を溶媒o―キシレ
ン1000部に同時に入れて130〜160℃で加圧高
速撹拌する方法が採用されるが、あらかじめ適当な分散
比で分散させた分散液を作製しておき、それにさらに溶
媒中に不活性溶媒を加えるか、分散剤であるポリハライ
ト(鉱物)の微粒子を投入して分散させる方法で行うこ
ともできる。
【0021】不活性溶媒としては、n―オクタン、n―
ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の炭素数が8
〜20からなり沸点100〜230℃の、好ましくは1
30〜200℃のパラフィン等があげられるが、なかで
も、反応原料として用いられるアルキルベンゼンを用い
ることが工業的に好ましい。
【0022】このように均一分散処理した触媒は、共役
ジオレフィン、例えば、1,3―ブタジエンを導入して
反応する前に、アルキルベンゼンと触媒との混合物を1
00〜200℃で1〜5時間、前処理して反応すると活
性を向上させることができる。
【0023】本発明においては、アルカリ金属を、焼成
脱水処理したポリハライト鉱の微粒子とのと分散処理す
る際に、さらに炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マ
グネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、あるいは、水
酸化ナトリウム等の水酸化物を共存させ分散処理した触
媒を使用することができる。
【0024】本発明方法ではアルキルベンゼンと1,3
―ブタジエンとの反応は水分及び酸素を実質的に存在せ
しめないで行う。従って、系外から反応系に導入される
原料、すなわちアルキルベンゼン及び1,3―ブタジエ
ンは、前述の如く脱水することが望ましい。更に、反応
系の空間部は酸素や水分を実質上存在せしめないため
に、例えば乾燥窒素、乾燥アルゴン等の如き乾燥不活性
ガスで充たすか、あるいはアルキルベンゼンの沸点以上
の加圧反応条件では、空間部をアルキルベンゼン等の蒸
気で満たすことが望ましい。
【0025】本発明において反応は100〜200℃の
範囲の温度で行うことが好ましい。反応温度が100℃
以下では反応時間が長くなり200℃を越えると副反応
生成物が多くなり好ましくない。好ましい反応温度は1
10〜180℃である。またアルキルベンゼンに対する
1,3―ブタジエンの反応モル比は通常の条件内で適当
に選択できる。例えばアルキルベンゼン:1,3―ブタ
ジエン=1:0.001〜0.5、好ましくは1:0.
01〜0.3、特に好ましくは1:0.05〜0.2の
範囲で実施し得る。
【0026】反応時間は、0.05〜10時間の範囲の
時間が採用される。反応時間は、触媒量(g―触媒/g
―アルキルベンゼン)、触媒組成(g―金属ナトリウム
/g―ポリハライト(鉱物)粉末)、反応温度(℃)及
びアルキルベンゼンと1,3―ブタジエンの比(g―ア
ルキルベンゼン/g―1,3―ブタジエン)とそれぞれ
関連があり、目的生成物の純度や触媒の使用様式、例え
ば循環使用の有無等から適当な時間が採用される。一般
には上記要因の数値が減少すれば反応時間は長くなる
が、好ましい反応時間は0.2〜20時間、特に好まし
くは0.3〜5時間である。
【0027】反応は、最初から原料であるアルキルベン
ゼン、1,3―ブタジエン及び触媒を同時に仕込み反応
させるバッチ反応、最初にアルキルベンゼンと触媒を仕
込み、次に1,3―ブタジエンを反応時間の経過と共に
定量導入するセミバッチ反応、反応器にアルキルベンゼ
ン、1,3―ブタジエン及び触媒を連続的に導入する連
続反応のいずれの反応方法を採用してもよく、またそれ
らを適当に組み合わせたものでもよいが、セミバッチ反
応または連続反応が好ましい。
【0028】連続反応には二つの形式が採用される。す
なわち本発明の方法においては触媒が金属ナトリウムを
ポリハライト(鉱物)粉末担体に分散処理した固体微粉
末触媒であるため触媒の固定床に連続的にアルキルベン
ゼンを流し、アルキルベンゼン中に1,3―ブタジエン
を導入しながら連続反応を実施する方法と、触媒を反応
系中に分散撹拌下に反応を実施する方法がある。
【0029】連続反応形式では、管形反応器、塔形式の
反応器及び槽形式の反応器のいずれの形式でもよい。連
続反応で好ましい方式は、複数個の反応区域を設け、
1,3―ブタジエンを各反応区域に定量導入する所謂十
字流形連続方式である。
【0030】反応操作は、触媒の存在下にアルキルベン
ゼンと1,3―ブタジエンとが十分触媒混合できればよ
く、特別な制約はないが、触媒の存在する反応系へ1,
3―ブタジエンを導入する導入方式は、1,3―ブタジ
エンの導入口付近に1,3―ブタジエンの重量物と推測
される樹脂状又はガム状物が付着して、閉塞現象を起す
傾向があるので、触媒の存在する反応系へ、1,3―ブ
タジエンとアルキルベンゼンとの混合相、例えば液状ブ
タジエンとアルキルベンゼンとの液相混合物、気体状
1,3―ブタジエンと液体状アルキルベンゼンとの気―
液混合物などの形態で、1,3―ブタジエンとアルキル
ベンゼンを導入する方式が好ましい。
【0031】あるいは反応域空間部に、1,3―ブタジ
エンを供給して、触媒の存在する反応液表面で吸収反応
を行わせることによって閉塞現象を防止することもでき
る。またブタジエンの導入の際にキャリアガスと共に吹
き込むと同時に撹拌効果を増加させることもできる。キ
ャリアガスとしては酸素、水分を除去した不活性ガス、
例えば窒素、アルゴン、水素が適当である。
【0032】更に反応は、適当な撹拌を設けることによ
って、好ましく行うことができるが、1,3―ブタジエ
ンを気相で反応系に導入し、該ガスで撹拌効果をもたせ
ることもできる。撹拌は、触媒を反応系内に均一に分散
し、更に、反応原料と反応生成物とを均一に混合するた
めに必要な強さであることが望ましい。液相分散反応系
で反応した場合、反応後、使用した触媒を反応生成物系
から分離するには、例えば遠心沈降、重力沈降等の公知
の手段、あるいは、より低い温度においての液―固相か
らの固相の分離、例えば濾過、遠心分離等の公知の手段
を用いればよい。分離した触媒は反応系に循環再使用す
ることができる。
【0033】触媒が失活して触媒機能が失われた時、ポ
リハライト(鉱物)の相は金属ナトリウムが失活してい
る。従って有機物付着のまま酸化焼成して、再生し、金
属ナトリウムと分散加熱処理することにより再使用する
ことができる。
【0034】本発明方法によれば、トルエンと1,3―
ブタジエンの反応においては5―フェニル―ペンテンが
合成され、またo―キシレンと1,3―ブタジエンの反
応では5―(o―トリル)―ペンテンが、p―キシレン
と1,3―ブタジエンの反応においては5―(p―トリ
ル)―ペンテンが、m―キシレンと1,3―ブタジエン
の反応においては5―(m―トリル)ペンテンが、エチ
ルベンゼンとブタジエンの反応においては5―(フェニ
ル)―ヘキセンがそれぞれ合成される。
【0035】本発明の目的生成物であるアルケニルベン
ゼンは前述の如く、環化反応させ、次いで脱水素するこ
とにより、医薬品や高分子材料の原料として有用な化合
物、すなわち、モノアルキルナフタレン、ジアルキルナ
フタレンにすることができる。この場合、フェニル―ペ
ンテン、フェニル―ヘキセンやトリル―ペンテンを環化
する時のペンテンやヘキセンの純度が問題となる。すな
わち、主目的物たるフェニル―ペンテン、フェニル―ヘ
キセン、トリル―ペンテン類のいわゆるアリールアルケ
ンオレフィン性二重結合の位置が1又は2の位置のもの
であるが、従来公知の方法ではオレフィン性二重結合の
位置の異なる異性体、例えばo―キシレンとブタジエン
の反応では5―(o―トリル)―ペンテン―(1)、5
―(o―トリル)―ペンテン―(2)、5―(o―トリ
ル)―ペンテン―(3)、5―(o―トリル)―ペンテ
ン―(4)等がかなりの量副生し、混入する。他のトル
エン、エチルベンゼン、p―キシレン、m―キシレンと
ブタジエンの反応で合成されるフェニルペンテン、フェ
ニルヘキセン、トリルペンテンにおいてもオレフィン性
二重結合の位置の異なる異性体が副生し、混入する。こ
れらの異性体のうちオレフィン性二重結合が1又は2の
位置にあるものは環化されてアルキルテトラリンに転化
し得るが、他のものはアルキルテトラリンに転化しない
のみならず、目的物たるアルキルテトラリンと反応して
高沸点生成物となり目的物の収率を低下させる。しかも
本発明方法の目的生成物のアルケニルベンゼンから前記
オレフィン性二重結合が3,4,5の位置にある異性体
を除去することは極めて困難であって、例えばo―キシ
レンと1,3―ブタジエンとの反応混合物(目的生成物
は5―(o―トリル)―ペンテン―(2)と5―(o―
トリル)―ペンテン―(1)である)を粗精留したもの
を理論段数50段の精留等を用いて還流比20で精留し
ても、前記異性体はほとんど分離できない。これに対
し、本発明方法によって得られた反応物中には、かかる
分離困難な副反応が極めて少なく、従って環化反応生成
物の収率も極めて高いという特長がある。
【0036】アルケニルベンゼンはそれ自体公知の方
法、すなわち硫酸、固体リン酸、シリカアルミナの如き
酸触媒と100〜250℃の温度で10秒〜10時間接
触させることにより環化してアルキルテトラリンとする
ことができる。
【0037】アルキルテトラリンは、それ自体公知の方
法、すなわち、アルミナ―クロミヤ、Pt/Al2 3
などの脱水素触媒と350〜450℃の温度で5秒〜1
0時間接触させることにより脱水素されアルキルナフタ
レンとすることができる。
【0038】アルキルナフタレンはそれ自体公知の方
法、すなわち、シリカ―アルミナ、SDM―5、Y型ゼ
オライト、H型モルディナイト等の固体酸触媒と200
〜450℃の温度で5秒〜10時間触媒させることによ
り、異性化することができる。例えば1,5―ジメチル
ナフタレンを2,6―ジメチルナフタレンとすることが
できる。
【0039】本発明によればアルキルベンゼンから高分
子材料の原料として有用な化合物であるジメチルナフタ
レンを以下のように製造することが可能となる。
【0040】すなわち、例えばo―キシレンと1,3―
ブタジエンとを金属ナトリウムをアルミン酸カリウムと
分散処理した触媒により反応せしめ、5―(o―トリ
ル)―ペンテンを製造し、次いで、該5―(o―トリ
ル)―ペンテンをそれ自体公知の方法で環化せしめ、
1,5―ジメチルテトラリンを製造し、その後、該1,
5―ジメチルナフタレンを異性化して2,6―ジメチル
ナフタレンを製造することができる。
【0041】さらに該2,6―ジメチルナフタレンを酸
化することにより、ナフタレン―2,6―ジカルボン酸
を製造することができる。
【0042】
【発明の効果】本発明方法によって得られた反応生成物
中には、分離困難な副反応物が極めて少なく、従って、
環化反応生成物の収率も極めて高い。
【0043】本発明方法によれば、酸素と水分を実質的
に存在せしめないで、触媒として金属ナトリウムを、焼
成して脱水したポリハライト(鉱物)微粉末と特定割合
で分散処理した触媒の存在下で、アルキルベンゼンと
1,3―ブタジエンとを反応せしめることによって、高
価発火の危険性の大きい金属ナトウリム―カリウム(N
a―K:ナック)合金を直接使用することなく、しかも
アルケニル化反応に高活性で選択性が高く、従って目的
物から分離することが困難でかつ煩雑な、副生成物の生
成を抑制し、高純度の目的物を高収率で製造することが
可能になった。本発明方法で使用する触媒は触媒調整の
際、ナックのように分離に手間がかかることなく容易に
分離可能でしかもコストが安いという利点を有してい
る。
【0044】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を詳述する。
【0045】なお、本発明はかかる実施例に限定される
ものではないことはいうまでもない。以下の実施例及び
比較例において、目的物の収率、純度は以下の定義に従
う。また、単に「部」とあるのは、重量部を意味する。
【0046】(収率及び純度)全反応混合物を常温で濾
過後、約500gをウイドマー精留塔で22mmHg(abs
)の減圧下で蒸留し、精留塔頂温度が75℃以下の留
分、75〜170℃の留分、及び残留物に分離した。そ
して75〜175℃の留分を、キシレンを1,3―ブタ
ジエンでアルケニル化したアルケニル化物として採取し
た。このアルケニル化物留分のサンプル中で占める割合
から全反応混合物のアルケニル化物の収量を計算した。
【0047】また、前記アルケニル化物の留分をガスク
ロマトグラフ法で分析し、5―(トリル)―ペンテン
(2)及び5―(トリル)ペンテン(1)の含有量(重
量%)を求め、目的物の収量を計算した。なお、該アル
ケニル化物留分中には、未反応のキシレンは0.1重量
%以下しか含有されていなかった。
【0048】トルエンとブタジエンの反応物についても
同様に5―フェニルペンテン(1)及び5―フェニル―
ペンテン(2)の含有量を求めて、目的物の収量を計算
したアルキルベンゼンとしてキシレン類及びエチルベン
ゼンを用いた時の収率は下記の式で計算した。
【0049】
【数1】
【0050】トルエンとブタジエンの反応物の計算は次
式で計算した。
【0051】
【数2】
【0052】
【実施例1】(A)金属ナトリウムの微粒子分散液の調
製 予め金属ナトリウムの存在下で加熱還流後、蒸留して更
にモレキュラーシーブで脱水した実質的に水分を含まな
い。o―キシレン500部に、乾燥高純度窒素(酸素含
有率1ppm以下、水分含有率0.1ppm以下)を吹
込、溶存酸素を追い出し除去したのち、金属ナトリウム
(純度99.9%)4.0部を入れ、上記窒素雰囲気下
110〜120℃で乳化分散機を用いて30分間、乳化
分散し、金属ナトリウムの乳化分散液を調製した。
【0053】(B)ポリハライト鉱物無水物及び分散液
の調製 ポリハライト(鉱物)水和物の粉末を、50〜200℃
で2時間、200〜250℃で2時間、250℃から4
50℃まで2時間で昇温後450℃で5時間焼成脱水処
理した後、乾燥窒素ガス中で常温まで冷却し、100部
のポリハライト鉱物無水物を得た。平均粒度100μm
に微粒子化して、反応容器中で窒素雰囲気中において2
00℃で更に乾燥し、120℃冷却後、脱水精製o―キ
シレン所定部を投入して、乳化分散機を用いて、30分
間分散して、ポリハライト鉱物微粒子の分散液とした。
【0054】(C)金属ナトリウム/ポリハライト鉱石
粉末粒子・分散触媒の調製 上記ポリハライト鉱石微粒子の分散液に上記金属ナトリ
ウムの微粒子分散液を窒素雰囲気下、高速撹拌下に投入
し、充分に混合分散した後、溶媒であるo―キシレンを
145〜170℃で蒸発留去し、更に170℃で1時間
撹拌加熱分散処理して、金属ナトリウム分散処理触媒と
した。
【0055】(D)5―(o―トリル)ペンテンの合成 上記(C)で調製した触媒分散液に上記の如く精製した
o―キシレンの所定量を窒素雰囲気下に投入し、140
〜144℃で1時間撹拌加熱処理した後、1,3―ブタ
ジエンをo―キシレンに対して0.1モル量を所定時間
をかけて導入して反応せしめた。
【0056】反応終了後、速やかに100℃に冷却後、
100℃に保ったまま撹拌を停止して30分間静置し、
反応生成混合物を触媒と目的物の液相とに分離した。目
的物の5―(o―トリル)ペンテンを22mmHg obs. 減
圧下で蒸留して、5―(o―トリル)ペンテンの収率及
び純度を求めた結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【実施例2〜7及び比較例1〜5】更に実施例2〜7及
び比較例1〜5として触媒組成、量、反応温度、反応時
間を種々変更する他は上記実施例1と同じ条件で反応を
行って得た結果を表1及び表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】表1、表2からわかるように本発明方法に
よれば高収率で高純度の5―(o―トリル)ペンテンが
得られることがわかる。
【0061】
【実施例8〜12及び比較例6〜7】実施例1において
o―キシレンのかわりにp―キシレンを用いて、1,3
―ブタジエンによるアルケニル化反応を行った。
【0062】触媒の調製及び反応は実施例1と同様な条
件、操作方法で実施した。その結果を表3に示す。
【0063】表3からわかるように本発明の方法によれ
ば高収率で高純度の5―(p―トリル)ペンテンが得ら
れることがわかる。
【0064】
【表3】
【0065】
【実施例13】(A)触媒の調製 本実施例においては、金属ナトリウムを溶融して、Na
2 CO3 10%、MgCO3 5%担持したポリハライト
に分散担持して調製した触媒を用いた。すなわち、Na
2 CO3 10%、MgCO3 5%担持ポリハライトを4
50℃で5時間焼成して調製したポリハライト鉱物を平
均粒度100μm以下に微粒子化して、更に窒素雰囲気
下、200℃で乾燥した後、冷却した200部に、金属
ナトリウム10部を加え、150℃で60分間高速分散
処理した後、脱水エチルベンゼン1000部を加えて、
130℃で60分間処理して触媒を調製した。
【0066】(B)5―(フェニル)―ヘキセンの合成
反応 上記(A)で調製した触媒に実施例1の如く脱水精製し
たエチルベンゼン2000部を加え、135〜140℃
で1,3―ブタジエン150部を導入し反応せしめた。
反応終了後、速やかに80℃に冷却しその温度に保った
まま撹拌を停止して30分間静置し、反応生成物液を触
媒と目的物液相に分離した。目的物である5―フェニル
―ヘキセンを25mmHg abs. 減圧条件で蒸留して、収率
及び純度を求めた結果、純度98.3%、収率88.5
%であった。
【0067】
【実施例14】実施例1の操作方法と同様な条件下で調
製した金属ナトリウム―ポリハライト分散処理触媒を用
いて、反応温度105〜115℃でトルエンと1,3―
ブタジエンの反応を行った。
【0068】その結果82%収率で純度98.5%の5
―フェニル―ペンテンが得られた。
【0069】
【実施例15】本例は5―(o―トリル)―ペンテンの
環化反応及び脱水素反応、異性化反応により2,6―ジ
メチルナフタレンの合成を行う例である。
【0070】(A)5―(o―トリル)―ペンテンの環
化反応による1,5―ジメチルテトラリンの合成 実施例1で得られた純度99.0%の5―(o―トリ
ル)―ペンテンのトルエン10%溶液を用いて環化反応
を行った。触媒として特殊処理した固体リン酸を用い、
反応温度150〜200℃で窒素雰囲気中で実施した結
果、原料の転化率100%、環化生成物である1,5―
ジメチルテトラリンの生成選択率は95%以上であっ
た。
【0071】(B)1,5―ジメチルテトラリンの脱水
素反応による1,5―ジメチルナフタレンの合成 上記(A)の方法で得られた1,5―ジメチルテトラリ
ンのトルエン10%溶液を用いて脱水素反応を行った。
脱水素触媒として特殊処理した0.3%Pt/Al2
3 触媒を用いて水素雰囲気中で400℃で脱水素した結
果、1,5―ジメチルテトラリンの転化率100%で
1,5―ジメチルナフタレンの選択率97%で1,5―
ジメチルナフタレンが得られた。
【0072】(C)1,5―ジメチルナフタレンの異性
化による2,6―ジメチルナフタレンの合成 上記(B)の方法で脱水素して得られた1,5―ジメチ
ルナフタレンを異性化して2,6―ジメチルナフタレン
を合成する実験を行った。
【0073】1,5―ジメチルナフタレンの10%トル
エン溶液を用いて、350〜400℃の温度でH型モル
デナイト30%を含むアルミナ分散触媒の存在下、窒素
雰囲気下で異性化反応を実施した結果、1,5―ジメチ
ルナフタレン10%、2,6―ジメチルナフタレン43
%、1,6―ジメチルナフタレン44%、その他のナフ
タレン化合物3%の組成の混合物が得られた。これを結
晶化分離した所、純度98%の2,6―ジメチルナフタ
レンの50%が回収された。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07C 13/48 9280−4H 15/24 9280−4H // C07B 61/00 300

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルキルベンゼンと共役ジオレフィンと
    を触媒の存在下で反応せしめ、アルケニルベンゼンを製
    造するにあたり、触媒として、アルカリ金属を、焼成脱
    水処理したポリハライト粉末と分散処理した触媒を使用
    し、かつ、酸素および水が実質的に存在しない環境下で
    アルキルベンゼンと共役ジオレフィンとを反応せしめる
    ことを特徴とするアルケニルベンゼン及びその誘導体の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 アルキルベンゼンが、トルエン、エチル
    ベンゼン、o―キシレン、p―キシレン及びm―キシレ
    ンから選ばれたいずれか一種である請求項1記載の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 共役ジオレフィンが、1,3―ブタジエ
    ン又はイソプレンである請求項1記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 アルカリ金属が、ナトリウムである請求
    項1記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 ポリハライト粉末が、200℃以上の温
    度で焼成脱水処理したものである請求項1記載の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 アルカリ金属と、焼成脱水処理したポリ
    ハライト粉末との分散処理を不活性ガス雰囲気中で行う
    請求項1記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 不活性ガスとして、窒素、ヘリウム、ア
    ルゴン及び水素から選ばれた少なくとも一種を用いる請
    求項6記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 アルカリ金属と、焼成脱水処理したポリ
    ハライト粉末との分散処理温度が100〜500℃であ
    る請求項1記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 アルカリ金属と、焼成脱水処理したポリ
    ハライト粉末との分散処理を不活性溶媒を用いて分散担
    持することにより行う請求項1記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 不活性溶媒としてアルキルベンゼン、
    炭素数8〜20からなる沸点100〜230℃好ましく
    は130〜200℃のパラフィン系炭化水素を用いる請
    求項9記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水
    酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩及びアルカリ金属類水
    酸化物からなる群より選ばれた少なくとも一種の存在下
    で、アルカリ金属を焼成脱水処理したポリハライト粉末
    と分散処理した触媒を使用する請求項1〜10に記載の
    製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項1記載の方法により得られたア
    ルケニルベンゼンを環化することからなるアルキルテト
    ラリンの製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項12記載の方法により得られた
    アルキルテトラリンを脱水素することからなるアルキル
    ナフタレンの製造方法。
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