JPH05311512A - ポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents

ポリエステル繊維の製造方法

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JPH05311512A
JPH05311512A JP11287192A JP11287192A JPH05311512A JP H05311512 A JPH05311512 A JP H05311512A JP 11287192 A JP11287192 A JP 11287192A JP 11287192 A JP11287192 A JP 11287192A JP H05311512 A JPH05311512 A JP H05311512A
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JP
Japan
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yarn
strength
heating cylinder
polyester
temperature
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JP11287192A
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English (en)
Inventor
Koichi Sugimoto
浩一 杉本
Hiroyuki Makino
広行 牧野
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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  • Artificial Filaments (AREA)
  • Yarns And Mechanical Finishing Of Yarns Or Ropes (AREA)
  • Spinning Methods And Devices For Manufacturing Artificial Fibers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】高強度かつ低収縮率のポリエステル繊維を生産
性良く製造する方法を提供。 【構成】極限粘度1.1以上のポリエステルを紡糸口金
より溶融吐出し、特定の、温度(T)と加熱水蒸気雰囲
気(Y)とが(1)Y≧(320−T)/0.2、
(2)0重量%<100重量%、(3)300℃≦40
0℃ である、加熱筒内を通過させ、糸条の固化点直前
でネッキング変形が発生する速度以上で引取り、引取る
直前または引取った後別途、延伸熱処理を行い巻き取る
製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は産業資材用途、特にタイ
ヤコード、コンベアベルト補強材、自動車用ベルト補強
材、あるいは熱可塑性コンポジットの補強材の用途に有
用な、高強度かつ低収縮物性を有するポリエステル繊維
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル繊維は、優れた物性バラン
ス、即ち高弾性率、高強度、低収縮性を有し、更にはコ
スト面で優位なために、産業資材用繊維として広範囲か
つ大量に使用されている。しかし、タイヤコード及び産
業資材用途における繊維物性に対する要求は近年厳しい
ものがある。特に、タイヤコードに用いるポリエステル
繊維には、環境汚染を低減するための低燃費化をタイヤ
の軽量化により実現する必要から更に高強度物性が要求
され、また、高速走行での安定性やタイヤ成形時の安定
性を実現するため更に低収縮率物性が要求されている。
【0003】ポリエステル繊維の高強度化、低収縮率化
を図るために、従来から様々な技術が提案されてきた。
例えば、特開昭53−58031号公報、及び特開昭5
3−58032号公報においては比較的高配向な未延伸
糸(以下POYと称する)を延伸することにより、低収
縮率の延伸糸が得られることが開示されているが、実施
例にも示されているごとくその強度は7.3g/dない
し9.1g/dと必ずしも高いとは言えず、現在の要求
水準ではその強度物性はすでに不十分なレベルである。
【0004】また、特公昭64−8086号公報、特開
昭57−161121号公報、特開昭58−20841
5号公報では、ネッキング変形が発現する速度以上で引
取られたPOYよりも高配向の繊維(以下FOYと称す
る)により、1.1%という低収縮率が達成されている
が、得られる効果は染色性の改善であり、しかもその繊
維の強度は4g/d程度と低いものである。
【0005】また、特開昭59−168119号公報で
は、高分子量ポリエステルを溶融しネッキング変形の発
生する高速で引取った後に延伸する事により、熱寸法安
定性の優れた、即ち収縮率の低い延伸糸を得る方法が開
示されているが、その強度は8g/d未満であり高強度
化は十分とは言えない。また、特開昭62−97921
号公報では、鞘芯構造を有する繊維の芯の相対粘度を鞘
の相対粘度よりも大きくし、延伸性を向上させ高強度化
をはかる技術が開示されているが、その強度は9g/d
未満である。これは、その鞘芯構造に由来する構造の不
連続面において延伸時の歪が残留することが原因である
と推定される。
【0006】一方、特開昭59−1714号公報では、
比較的低紡速で得た未延伸糸を繊維断面内の複屈折率分
布を限定する延伸方法により12.5g/dという高強
度のポリエステル繊維を得ているが、その収縮率は9.
3%と高いものであり、また、紡糸速度も高々350m
/分と生産性は高いとは言い難い。さらには、特開平3
−90615号公報では、高分子量ポリエステルを溶融
紡糸する際に水蒸気による可塑化効果により高強度糸を
得る方法が開示されているが、低紡速の未延伸糸を延伸
する方法でありその延伸糸の低収縮率化は不十分なもの
である。
【0007】また、特開平3−167307号公報で
は、高速紡糸時に水蒸気を使用することにより糸切れの
減少を果す方法と装置が開示されているが、得られる繊
維の強度物性については不十分なものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上、従来の技術で述
べた如く、高強度かつ低収縮率のポリエステル繊維を得
ることは困難である。特に、高分子量のポリエステルを
紡糸する際にネッキング変形の発生する高紡速により得
られた配向の高い未延伸糸(FOY)を延伸する方法で
は、低収縮率ポリエステル繊維は得られるものの、強度
的には9g/d未満と十分なレベルに達し得ず、また、
紡糸工程、延伸工程で発生する糸切れが多く生産性が良
好ではない。本発明はこのような課題を解決し、高強度
かつ低収縮率のポリエステル繊維を生産性良好に得る製
造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決し、高強
度かつ低収縮率のポリエステル繊維を生産性良好に得る
ために、本発明者らはネッキング変形の発生する高紡速
領域における繊維構造を鋭意研究した結果、特定の製造
方法により単糸断面において中央から外側にかけ、連続
的に極限粘度が低下しかつ複屈折率分布がほぼ均一であ
る繊維構造を実現することにより高強度かつ低収縮率の
ポリエステル繊維が得られる事を発見し本発明に到っ
た。
【0010】すなわち本発明は、極限粘度1.1以上の
ポリエステルを紡糸口金から紡糸して溶融糸条とし、上
記溶融糸条をネッキング変形が発現する以上の速度で引
取り、上記溶融糸条の引取りの前に上記紡糸口金直下に
加熱筒を設け下記条件を満たす上記加熱筒内を通過さ
せ、(イ)上記加熱筒内に過熱水蒸気を存在させ上記過
熱水蒸気の濃度(Y)と雰囲気温度(T)の関係が、
(1)Y≧(320−T)/0.2、(2)0重量%<
Y≦100重量%、(3)300℃≦T≦400℃、の
三つの条件を満たし、(ロ)上記加熱筒の長さがネッキ
ング変形の発現する位置より短い長さである、次いで上
記引取りした糸条を延伸及び熱処理を行うことを特徴と
するポリエステル繊維の製造方法、である。
【0011】本発明に用いるポリエステルとは、ポリマ
ーの主鎖を構成する結合がエステル結合であるものをい
い、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフ
タレート等が上げられる。好ましくは、ポリエチレンテ
レフタレートであり、この他に繊維として要求される高
強度物性を損わない程度に他の成分を含んでいてもよ
い。
【0012】他の成分とは、例えばイソフタル酸、スル
ホイソフタル酸、アジピン酸、ネオベンチルグリコー
ル、ペンタエリスリトール、2,2−ビス(4−ヒドロ
キシ−フェニル)プロパン、グリセリン、ポリエチレン
グリコール、パラヒドロキシ安息香酸等であり、その
他、公知の成分が使用できる。本発明で使用されるポリ
エステルは産業資材用途を目的とし、高強度及び耐疲労
性の優れている事が必要であることから、より高分子量
が望ましく、その極限粘度は1.1以上好ましくは1.
3以上、更に好ましくは1.5以上である。
【0013】また、本発明では、加熱筒内を過熱水蒸気
雰囲気とする事により糸条全体の極限粘度が低下するた
めに、その低下分をあらかじめ見込んで溶融紡糸される
ポリエステルの極限粘度を高めに設定することが好まし
い。本発明に使用する溶融紡糸されるポリエステルは常
法の固相重合法により得ることができる。本発明では、
溶融糸条をネッキング変形が発現する引取り速度以上で
引取ることが必要である。ネッキング変形の発生する引
取り速度未満で引取った未延伸糸では、これを延伸して
も本発明で示す低収縮率を達成できない。ネッキング変
形の発生する引取り速度は、吐出時のポリマー温度、糸
径、冷却条件等々により変わるが、分子量が高くなるに
つれて低速度になる。また、紡糸速度を上げすぎると収
縮率の低下は進まず、強度のみ低下する。すなわち本発
明での引取り速度は2000m/分以上7000m/分
以下が好ましく、更に好ましくは3000m/分以上6
500m/分以下、最も好ましくは3500m/分以上
6000m/分以下である。
【0014】溶融糸条のネッキング変形の発現とは、紡
糸口金よりポリエステルの溶融糸条が紡出され、紡出さ
れた溶融糸条が引取られるに際し、引取過程中の特定の
点に、フィラメントが急激に細化し完成されたフィラメ
ントの半径にまで一気に細化が完了する現象が発現する
ことをいう。 これは例えば、G.Perez,C.L
ecluse,International Man−
Made Fibers Conference Re
port,P.1−37.(1979.Austri
a)などの文献により、既に知られている現象である。
【0015】本発明では、加熱筒内に過熱水蒸気を存在
させ、過熱水蒸気の濃度(Y)と雰囲気温度(T)の関
係が下記式で表される三つの条件を満足する必要があ
る。 Y≧(320−T)/0.2 0重量%<Y≦100重量%、 300℃≦T≦400℃ 更に好ましくは、 exp(81040/T+273-139) ≦Y/100 ≦exp(57950/T+86.1)+1 310℃≦T≦400℃ である。
【0016】ポリエステル繊維を高強度化するためにポ
リエステルの高分子量化を図ると、紡糸口金から吐出し
た後の糸条の伸張粘性が高くなり、ついには凝集破壊に
よる破断につながる。これを防止するために紡口直下に
設けた加熱筒内の温度を高温に維持する必要がある。ま
た、温度を上げすぎると逆に伸張粘性が低くなりすぎつ
いには液滴破壊による破断につながる。
【0017】本発明では、高分子量ポリエステルを使用
するために、加熱筒内の温度は300℃以上が好まし
い。また加熱筒内の温度は400℃以下が好ましく、更
に好ましくは380℃以下、最も好ましくは350℃以
下である。この場合、加熱筒内の温度とは加熱筒内の気
相温度を言い、これは加熱筒の壁面より25mm内側で
測定した温度を言う。
【0018】また、加熱筒内の過熱水蒸気の濃度は雰囲
気温度との上述の関係を満たす必要がある。この範囲を
外れる場合は、本発明の目的とする高強度かつ低収縮率
のポリエステル繊維を生産性よく得る事ができない。雰
囲気温度が高い場合は、上述の範囲内で過熱水蒸気濃度
が低い条件においても本発明の高強度かつ低収縮率のポ
リエステル繊維が得られるが、加熱筒内の雰囲気温度が
低い場合は上述の関係で示す濃度の水蒸気が加熱筒内に
存在しないと、延伸時に延伸倍率が上がらず本発明の目
的とする高強度かつ低収縮率のポリエステル繊維が生産
性よく得られない。
【0019】本発明における加熱筒の長さは、紡口直下
の過熱水蒸気雰囲気の濃度及び温度が定常状態となるに
十分な長さを有する必要があり、50cm以上が好まし
い。また、糸条のネッキング変形が発現する位置は加熱
筒より引取り側に出ている、つまり加熱筒内でネッキン
グ変形を発現させない事が好ましく、この長さ未満に加
熱筒長を設定する必要がある。ネッキング変形が加熱筒
内で発現する場合は、延伸の際に延伸倍率が上がらず高
強度のポリエステル繊維が得られないので好ましくな
い。
【0020】この理由は、ポリエステル繊維のネッキン
グ変形が加熱筒内で発現すると、ネッキング変形発生位
置以降で糸条の速度が急激に速くなるのに伴い随伴気流
が増大し、加熱筒内の過熱水蒸気雰囲気の定常性が乱
れ、未延伸糸の構造及び物性のばらつきに結びつき、そ
の結果、延伸糸強度の低下につながるためであると考え
られる。
【0021】また、加熱筒内の雰囲気温度は、加熱筒上
部から下部に向って温度が低くなる温度条件を有するこ
とが好ましい。この温度条件を採用する事により、引取
り段階において高伸度の高配向糸条を得る事ができ、そ
の結果、延伸時に延伸倍率を上げる事が可能となり、高
強度の延伸糸を得る事ができる。本発明では、上述の、
加熱筒内の過熱水蒸気濃度、温度及び加熱筒長の条件を
満たす場合に極めて糸切れが少なく、生産性良好に高強
度かつ低収縮率のポリエステル繊維を得る事ができる。
これは、本発明に示す極限粘度1.1以上の高分子量ポ
リエステルを紡糸する際に顕著であり、この極限粘度未
満では本発明の方法を用いても顕著な効果は見られな
い。
【0022】また、過熱水蒸気は少なくとも加熱筒内紡
口直下50cmの範囲に存在させることが好ましい。そ
の吹き込み方は、例えば、加熱筒下部より糸条と対流方
向に、上部より糸条と同方向へ、または加熱筒中間より
吹込む等、任意に設定できる。吹込み直前の過熱水蒸気
の温度は、100℃以上が好ましく、更に好ましくは1
30℃以上、最も好ましくは180℃以上であり、必要
な冷却プロファイルに合わせて適宜選択する。また、加
熱筒内の過熱水蒸気濃度の均一性を増加させる目的で加
熱筒上部から一部過熱水蒸気を吸引抜出す事も好まし
い。
【0023】紡口直下の加熱筒内の過熱水蒸気の濃度
は、過熱水蒸気と他の気体との重量%の割合で加熱筒内
に吹き込む前に他の気体で希釈することにより調整す
る。さらには、加熱筒内に希釈用の気体を別途吹き込ん
でもよい。この気体は過熱水蒸気の効果を緩和するもの
であれば特に限定するものではないが、予め気体の水分
率をコントロールできる気体が工業生産上好ましく、脱
湿した空気、窒素、ヘリウム等が使用できる。
【0024】本発明では、加熱筒を通過した溶融糸条を
冷却風にて冷却し固体糸条とする。冷却方法は、特に限
定されるものではなく、糸条に対して、一方向から垂直
に、あるいは外周から冷却風を吹付ける等適宜選択でき
る。本発明で高配向糸条とは固体糸条を引取った下記特
性を満足する糸条をいう。イ )極限粘度 0.9以上ロ )複屈折率 0.060以上ハ )150℃における熱収縮率 15%以下ニ )切断伸度 60%以上ホ )高配向糸条を構成する単糸において、その中心の極限
粘度(IVc)が、外側の極限粘度(IVs)よりも高
く、次式を満足する、 IVc/IVs≧1.05 但し、IVcは単糸中心の極限粘度であり、IVsは単
糸外側の極限粘度である。単糸横断面において単糸中心
からの距離をr,単糸の半径をRとしたとき、単糸中心
とはr/R=0.0で定義される位置である。また、単
糸外側とはr/R=0.9で定義される位置である。
【0025】ヘ)高配向糸条を構成する単糸において、そ
の中心の複屈折率(Δnc)が、外側の複屈折率(Δn
s)よりも高く、次式を満足する、 1.05≦Δnc/Δns≦1.50 但し、Δncは単糸中心の複屈折率であり、Δnsは単
糸外側の複屈折率である。
【0026】本発明では、IVc/IVsが1.05以
上ある事により、高速紡糸特有の繊維の単糸断面の配向
分布、つまり外側の分子配向が中心部よりも高いという
分布を制御する事が可能となり、その結果、延伸時に延
伸倍率を上げる事が可能となり、本発明の目的とする高
強度のポリエステル繊維を得る事ができるものと考えら
れる。
【0027】本発明で得られる高強度かつ低収縮率のポ
リエステル繊維は上記の高配向糸条に延伸熱処理を行う
ことによりその物性の特徴を発現することが出来る。つ
まり本発明では、高強度かつ低収縮率のポリエステル繊
維を得るに際し、高配向糸条を一旦引取った後に別工程
で、または一旦引取らずに連続的に、延伸及び熱処理を
行い巻取る方法のどちらでもよい。延伸熱処理方法につ
いては加熱したゴデット対群を用いて多段にて、延伸
比、熱処理温度、延伸速度、延伸段数等適宜選択するこ
とにより達成することが可能である。例えば、延伸糸が
10%以上の伸度を有するように延伸比およびリラック
ス率を調整し、目的の強度及び収縮率を得ることが出来
る。その間に糸条を加熱する目的で必要に応じて加熱水
蒸気等を配置してもよい。
【0028】本発明でいう高強度とは強度が9.0g/
d以上であることが好ましく、更に好ましくは9.5g
/d、最もに好ましくは10.0g/dをいう。また低
収縮率とは150℃で測定した熱収縮率が3.0%以下
が好ましく、更に好ましくは1.5%以下、最も好まし
くは1.0%以下をいう。強度が9.0g/d未満、ま
たは収縮率が3.0%を越えるポリエステル繊維では従
来技術によるポリエステル繊維に比して産業上特に優位
な物性を有するとは言えない。
【0029】本発明の方法で得る事ができる高強度かつ
低収縮率のポリエステル繊維は、下記特性を有する。 1). 単糸全体の極限粘度 ≧ 0.9 2). IVc/IVs≧1.05 単糸中心(r/R=0.0)の極限粘度 : IVc 単糸外側(r/R=0.9)の極限粘度 : IVs r:単糸横断面の中心からの距離 R:単糸横断面の半径 3). 1≦△nc/△ns≦1.15 単糸中心の複屈折率: △nc 単糸外側の複屈折率: △ns 4). 25℃での繊維破断強度 TS≧9.0g/d 5). 150℃の空気中での熱収縮率 HS≦3.0
% 6). 繊維破断伸度 TE≧10% 7). 単糸全体の複屈折率 ≧0.190 8). 力学的損失正接曲線のピーク温度 Tmax.≦145℃ 9). 結晶化度 Xcρ≧0.55 10). 結晶体積 1.5×105Å≦Vc≦4.0×1
5Å 11). 結晶配向度 fc≧0.95 12). 非晶配向度 fa≧0.55 13). (010)の結晶サイズ D≧60Å 14). 繊維の長周期 145Å≦Lp≦200Å 15). 融点 Tm≧255℃ 16). 単糸のデニ−ル d 1≦d≦15 本発明の方法では、上述のごとく、紡口直下の加熱筒内
を特定の過熱水蒸気濃度と雰囲気温度の条件に設定し、
糸条の固化点直前でいわゆるネッキング変形が発生する
速度以上で引取り、これを延伸熱処理することにより、
高強度かつ低収縮率のポリエステル繊維が生産性良く得
られる。本発明により得られる高強度かつ低収縮率エス
テル繊維は単糸の中心部から外側部に向かって極限粘度
が連続的に低くなる微細構造を有している。この微細構
造を有さないポリエステル繊維では、低収縮率化を実現
するためにネッキング変形が発生する速度以上で引取り
を実施しても、低収縮率は実現できるものの、本発明の
目的とするような高強度かつ低収縮率のポリエステル繊
維を得ることができない。
【0030】本発明における過熱水蒸気の効果は明かで
はないが、過熱水蒸気により高温度の加熱筒内で水分子
が単糸表面から内部に拡散し、加水分解により単糸の表
面より分子量が低下する微細構造を有するものと考えら
れる。この微細構造は高分子量のポリエステルを本発明
に開示した製造方法により製造する際に発現するもので
あり、極限粘度が1.1以上のポリエステルを使用した
場合に顕著なものであり、1.1未満の低分子量では顕
著な効果を示さないものである。
【0031】
【実施例】以下、本発明中で示した測定値の測定方法を
示した後に、実施例により本発明を説明する。 (A)極限粘度 35℃においてオルトクロロフェノールに対し1g/デ
シリットルの濃度になるよう試料を溶解し、ウベローデ
型粘度計にて測定した還元粘度を下記式により25℃に
おける極限粘度に換算した値により定義する。
【0032】オルトクロロフェノール溶媒35℃におけ
る極限粘度(IV35℃) IV35℃=((1+ηsp/c)0.5−1)/0.5 オルトクロロフェノール溶媒25℃における極限粘度
(IV25℃) IV25℃=0.98×IV35℃+0.045 (B)複屈折率 △n オリンパス光学工業(株)製偏光顕微鏡を用い、Na光
線を光源としてベレックコンペンセーター法により求め
た。 (C)単糸の中心部と側面部の極限粘度比 IVc/I
Vs 水酸化ナトリウム5重量%水溶液250ml中に試料5
gを入れ、これを沸騰溶解処理し、単糸半径で中心から
1/2、及び3/4まで減量処理する。残った試料の極
限粘度を、上記(A)の方法で測定する。単糸半径で中
心から1/2(IVc)については測定値のまま、単糸
半径で中心から3/4から表面までの極限粘度(IV
s)は、単糸全体の極限粘度から単糸半径から3/4ま
での極限粘度を差し引いて算出した。このIVc/IV
sを単糸の中心部と側面部の極限粘度比とする。 (D)単糸横断面の複屈折率及び単糸中心部と側面部の
複屈折率比△nc/△n 透過定量干渉顕微鏡(カールツァイスイエナ社製干渉顕
微鏡商品名インターファコ)を使用し、干渉縞法によっ
て、単糸の側面から観察した平均屈折率の分布を測定し
た。単糸の屈折率は繊維軸に対して平行な屈折率(△n
//)と、垂直な屈折率(△n⊥)により特徴づけられ
る。本測定には、波長549nmの緑色光線を使用し
た。
【0033】光学的に均一なスライドガラスおよびカバ
ーガラスの間に、0.2〜2波長の範囲内の干渉縞のず
れを与える屈折率(N)を有し、且つ繊維に対し不活性
な浸液を注入し、その浸液に単糸を浸漬する。単糸は、
その軸が干渉縞に対して垂直になるように設置する。こ
の干渉縞のパターンを写真撮影し、約1500倍に拡大
して解析する。
【0034】写真上、単糸横断面の各位置における△n
//と、△n⊥を測定し、単糸横断面の各位置における厚
みをt、使用光線の波長λ、バックグランドの平行干渉
縞の間隔(1λに相当)をD、繊維による干渉縞のずれ
をdとすると、光路差Pは、 P=(d/D)λ=(n//(またはn⊥)−N)t で表される。
【0035】従って、n//(またはn⊥)=P/d+N
が成立する。厚みtは単糸の断面形状が円であれば、座
標xと半径Rより(R2−x2)0.5で与えられる。単糸
半径をRとすると、単糸の中心から単糸側面までの各位
置での光路差から各位置での屈折率n//及びn⊥の分布
を求めることができ、次式より複屈折率△nを算出し単
糸断面における複屈折率を算出した。
【0036】△n=n//−n⊥ 単糸半径をR、単糸横断面での中心からの距離をrとす
ることで、単糸断面の位置を限定した。r/R=0.0
の複屈折率を単糸中心の複屈折率△ncとし、r/R=
0.9の複屈折率を単糸外側の複屈折率 △nsとし、
△nc/△nsを単糸の中心部と側面部の複屈折率比と
した。 (E)動的弾性損失正接 Tmax. 東洋ボールドウィン社製 商品名 DDV−II−EA型
を使用し、110Hz、昇温速度5℃/minの条件で
損失弾性率、貯蔵弾性率を求め(損失弾性率/保存弾性
率)より動的弾性損失正接を算出し、ピークトップの温
度をTmax.とした。また、動的弾性損失正接のピークの
より半価幅を求めた。 (F)結晶化度 Xc 繊維の密度dを、重液として四塩化炭素、軽液としてト
ルエンとした密度勾配管を用い、30℃で測定し、下式
より結晶化度Xcを算出した。
【0037】Xc(%)=(dk×(d−da))/d
×(dk−da)×100 d:測定した繊維の密度(g/cm3) dk:完全結晶相の密度(1.455g/cm3) da:完全非晶相の密度(1.335g/cm3) (G)結晶サイズ D 結晶サイズは、(010)(100)面の干渉ピークの
半価幅を求めシェラーの式より算出した。 (H)繊維の長周期 Lp 繊維の長周期は、小角度X線回折装置を用い、小角度X
線散乱像より回折角度を計算し、下記式より算出した。
【0038】Lp=X線波長(Cu;1.5418Å)
/回折角度(Å) (I)結晶体積 Vc 結晶体積=a軸方向結晶サイズ×b軸方向結晶サイズ×
繊維の長周期×結晶化度により算出した。 Vc=Lp×D(010)面×D(100)面
(Å3) (J)結晶配向度 fa 非晶配向度は、下式により算出した。
【0039】fa=(△n−Xc×fc×△nc)/
(△na×(1−Xc)) △n :繊維全体の複屈折率 △nc:結晶の固有複屈折率(0.220) △na:非晶の固有複屈折率(0.275) (K)融点 Tm 島津製作所製 商品名 DSC−50を用い、昇温速度
20℃/分で測定し、吸熱ピークトップの値とし求め
た。 (L)強度、伸度 島津製作所製 商品名 オートグラフ商品名DSS50
0型を用いて試長250mm、伸長速度300mm/分
でS−S曲線を求め強伸度を算出した。 (M)150℃の空気中での熱収縮率 試料を検尺機(1周1.125m)で10回巻きのかせ
状にし、そのかせに0.7グラムの初荷重をかけて原長
L0を測定する。次に無荷重の状態で150℃の乾熱オ
ーブン中に入れ30分処理する。再び荷重をかけて処理
後の長さL1を測定し、次式により150℃の空気中で
の熱収縮率を求めた。150℃の空気中での熱収縮率
(%)=((L0−L1)/L0)×100
【0040】
【実施例1】極限粘度1.5のポリエチレンテレフタレ
ートを、スクリュー押出機で溶融し、紡糸温度310℃
で孔径1mm、孔数24ホールの紡糸口金から吐出し
た。吐出孔の下には長さ3mの加熱筒を設置した。この
加熱筒の上部1mの加熱部を3ゾーンに分割し内部温度
を上部330℃、中部300℃、下部270℃と設定
し、下部2mはさらに加熱部を上部と下部の2ゾーンに
分け上部250℃、下部200℃に設定した。
【0041】加熱筒内の雰囲気温度(T)は紡口から2
5cm下部の位置の気相温度で定義し、330℃であっ
た。加熱筒下部から温度180℃の濃度(Y)100重
量%の過熱水蒸気を18Nm3/時間吹込んだ。過熱蒸
気は加熱筒上部、すなわち紡糸口金直下より1Nm3
時間排出した。吐出孔から吐出されたポリエチレンテレ
フタレート溶融糸条を上記加熱筒を通過させ、その後、
冷風により冷却した後に油剤を付与し、3,500m/
分で高配向糸条として引取った。この際にネッキング変
形は加熱筒の下端より20cm引取り側の位置に発現し
た。
【0042】また、1時間連続して引取りを行っても糸
が切れる事はなかった。この引取った高配向糸条の強度
は2.8g/d、伸度は148%、収縮率は13.0%
であり、高配向糸条全体の極限粘度は1.03、IVc
/IVsは1.13、糸条のΔnは0.064、Δnc
/Δnsは1.30であった。この高配向糸条を9本合
糸し、1ロール(室温)、2ロール(85℃)、ホット
プレート(240℃)、3ロール(室温)、4ロール
(220℃)、5ロール(室温)で全延伸比2.2倍、
2ロールと3ロール間の延伸比2.35倍で延伸熱処理
を行い、54m/分の巻取り速度で巻取った。
【0043】この巻き取った延伸糸の、強度は9.6g
/d、伸度は12.3%、収縮率は2.1%であり、高
強度かつ低収縮率のポリエステル繊維を得ることができ
た。この高強度かつ低収縮率のポリエステル繊維のΔn
は0.190であり、Δnc/Δnsは1.06であっ
た。また、この高強度かつ低収縮率のポリエステル繊維
を500m毎に10ヶ所サンプリングし強度を測定した
がその最大値と最少値の差Rは0.2g/dであり、物
性バラツキの少ないものであった。この延伸糸の繊維断
面方向の極限粘度の分布を図2に実線で示す。
【0044】
【実施例2】加熱筒上部1mの温度条件を上部340
℃、中部310℃、下部280℃と設定し、下部2mの
温度条件を上部260℃、下部210℃と設定し、紡速
5,500m/分で引取った以外は実施例1と同じ条件
で紡糸を行い表1に示す高配向糸条を引取った。得られ
た高配向糸条を用い全延伸倍率を1.40とし実施例1
と同様の延伸を行い、表1に示す強度9.2g/d、熱
収縮率0.7%の高強度かつ低収縮率のポリエステル繊
維を巻取る事ができた。
【0045】
【実施例3】ポリマーの極限粘度を1.75とし紡糸温
度を315℃とし、引取り速度を4,500m/分とし
た以外は実施例2と同様の条件で紡糸を行い表1に示す
高配向糸条を引取った。得られた高配向糸条を用い全延
伸倍率を1.50とし実施例1と同様の延伸を行い、表
1に示す強度10.9g/d、熱収縮率0.8%の高強
度かつ低収縮率のポリエステル繊維を巻取る事ができ
た。
【0046】
【実施例4】ポリマーの極限粘度を1.90とし、引取
り速度を3,500m/分とした以外は実施例3と同様
の条件で紡糸を行い表1に示す高配向糸条を引取った。
得られた高配向糸条を用い全延伸倍率を1.70とし実
施例1と同様の延伸を行い、表1に示す強度12.2g
/d、熱収縮率0.7%の高強度かつ低収縮率のポリエ
ステル繊維を巻取る事ができた。
【0047】
【実施例5】加熱筒内に吹込む過熱水蒸気の濃度を窒素
で希釈し30重量%とした以外は実施例1と同様の条件
で紡糸を行い表1に示す高配向糸条を引取った。得られ
た高配向糸条を用い全延伸倍率を2.20とし実施例1
と同様の延伸を行い、表1に示す強度9.8g/d、熱
収縮率1.9%の高強度かつ低収縮率のポリエステル繊
維を巻取る事ができた。
【0048】
【実施例6】加熱筒内に吹込む過熱水蒸気の濃度を窒素
で希釈し70重量%とした以外は実施例1と同様の条件
で紡糸を行い表1に示す高配向糸条を引取った。得られ
た高配向糸条を用い全延伸倍率を2.10とし実施例1
と同様の延伸を行い、表1に示す強度9.7g/d、熱
収縮率2.1%の高強度かつ低収縮率のポリエステル繊
維を巻取る事ができた。
【0049】
【実施例7】全長2mの加熱筒を設置し、この加熱筒の
上部1mの加熱部を3ゾーンに分割し内部温度を上部3
30℃、中部300℃、下部270℃と設定し、下部1
mを全部230℃に設定した以外は実施例1と同様の条
件で紡糸を行い表2に示す高配向糸条を引取った。得ら
れた高配向糸条を全延伸倍率を2.15倍とし実施例1
と同様の延伸を行い、強度9.5g/d、熱収縮率1.
8%の高強度かつ低収縮率のポリエステル繊維を巻取る
事ができた。
【0050】
【実施例8】加熱筒内に吹込む過熱水蒸気の濃度を窒素
で希釈し50重量%とし、加熱筒の上部1mの加熱部を
3ゾーンに分割し内部温度を上部320℃、中部300
℃、下部270℃と設定し、雰囲気温度を320℃とし
た以外は実施例1と同様の条件で紡糸を行い表2に示す
高配向糸条を引取った。得られた高配向糸条を用い全延
伸倍率を2.10とし実施例1と同様の延伸を行い、表
2に示す強度9.2g/d、熱収縮率1.8%の高強度
かつ低収縮率のポリエステル繊維を巻取る事ができた。
【0051】
【実施例9】加熱筒内に吹込む過熱水蒸気の濃度を窒素
で希釈し90重量%とし、加熱筒の上部1mの加熱部を
3ゾーンに分割し内部温度を上部320℃、中部300
℃、下部270℃と設定し、雰囲気温度を320℃とし
た以外は実施例1と同様の条件で紡糸を行い表2に示す
高配向糸条を引取った。得られた高配向糸条を用い全延
伸倍率を2.15とし実施例1と同様の延伸を行い、表
2に示す強度9.1g/d、熱収縮率1.9%の高強度
かつ低収縮率のポリエステル繊維を巻取る事ができた。
【0052】
【比較例1】極限粘度1.50のポリエチレンテレフタ
レートを用い、過熱水蒸気の代りに180℃の加熱窒素
を使用し過熱水蒸気濃度を0重量%とする以外は実施例
1と同様の方法で紡糸を行い引取り糸条を得た。得られ
た引取り糸条のΔnc/Δnsは0.85であり、これ
を全延伸倍率1.50倍とし実施例1と同様の延伸を行
い巻取ったポリエステル繊維の強度は、6.8g/dで
あり高強度物性を示さなかった。また、紡糸時の糸切れ
の頻度も多く10分以上連続して引取る事ができなかっ
た。
【0053】
【比較例2】極限粘度1.20のポリエチレンテレフタ
レートを用い,過熱水蒸気の代りに180℃の加熱窒素
を使用し過熱水蒸気濃度を0重量%とする以外は実施例
1と同様の方法で紡糸を行い引取り糸条を得た。得られ
た引取り糸条のΔnc/Δnsは0.90であり、これ
を全延伸倍率1.90倍とし実施例1と同様の延伸を行
い巻取ったポリエステル繊維の強度は7.0g/dであ
り高強度物性を示さなかった。
【0054】比較例1、2より過熱水蒸気が加熱筒内に
存在しなければ、高強度物性が得られない事がわかる。
【0055】
【比較例3】加熱筒の温度およびその他の条件を表3に
示すとおりに設定し、雰囲気温度を310℃とし、過熱
水蒸気濃度を10重量%とした以外は実施例1と同様に
紡糸を行い引取り糸条を得た。得られた引取り糸条のΔ
nc/Δnsは1.03であり、これを全延伸倍率1.
50倍とし実施例1と同様の延伸を行い巻取ったポリエ
ステル繊維の強度は7.8g/dであり高強度物性を示
さなかった。
【0056】本比較例より、雰囲気温度が低く水蒸気濃
度が低い場合には高強度物性が得られない事がわかる。
【0057】
【比較例4】引取り速度を1,500m/分とした以外
は実施例1と同様の条件で紡糸を行った。この際に、ネ
ッキング変形は発現しなかった。得られた高配向ではな
い引取り糸の収縮率は35.0%であり、これを全延伸
倍率2.60倍とした以外は実施例1と同様の延伸を行
い巻取ったポリエステル繊維の収縮率は7.1%であり
低収縮率物性を示さなかった。
【0058】本比較例より、ネッキング変形の発現しな
い低紡速で紡糸を行った引取り糸を延伸熱処理しても低
収縮率物性が得られない事がわかる。
【0059】
【比較例5】紡糸に用いたポリエステルポリマーの極限
粘度を0.9とした以外は実施例1と同様の紡糸を行い
引取り糸条を得た。得られた引取り糸条の極限粘度は
0.77であり、これを全延伸倍率2.40倍とした以
外は実施例1と同様の延伸を行い巻取ったポリエステル
繊維の強度は8.4g/d、収縮率は3.8%と本発明
のポリエステル繊維に比して低強度高収縮率であった。
【0060】本比較例より、ポリエステルポリマーの極
限粘度が低い場合には高強度物性を得られない事がわか
る。
【0061】
【比較例6】引取り速度を150m/分とし低配向の引
取り糸を得た。得られた引取り糸を実施例1と同様の延
伸を延伸倍率6.8倍にて行い巻取ったポリエステル繊
維の強度は11.6g/dと高いものであったが、その
収縮率は9.2%と高く不十分なものであった。
【0062】本比較例より、ネッキング変形の発現しな
い低紡速で紡糸を行った引取り糸を延伸熱処理しても低
収縮率物性が得られない事がわかる。
【0063】
【比較例7】加熱筒下部の温度およびその他の条件を表
4に示すとおりに設定し、ネッキング変形の発現を加熱
筒内に設定した。この場合は引取りに際し糸切れが多発
し、10分間連続して引取る事ができなかった。た。ま
た、この引取り糸を全延伸倍率1.65倍とし実施例1
と同様の延伸を行い巻取ったポリエステル繊維の強度は
6.6g/dであり高強度物性を示さなかった。また、
このポリエステル繊維を500m毎に10ヶ所サンプリ
ングし強度を測定したがその最大値と最少値の差Rは
1.4g/dであり、強度物性バラツキの大きいもので
あった。
【0064】本比較例より、ネッキング変形を加熱筒内
で発現させた場合は引取時に糸切れが多く、また、延伸
熱処理を行っても高強度物性が得られず、強度物性のバ
ラツキも大きい事がわかる。
【0065】
【比較例8】加熱筒の温度およびその他の条件を表4に
示すとおりに設定し、加熱筒の雰囲気温度を上部から下
部に向って低くはせず、等しく設定し紡糸を行った。こ
の場合もネッキング変形の発現は加熱筒内となり、引取
りに際し糸切れが多発し10分間連続して引き取る事が
できなかった。また、この引取り糸を全延伸倍率1.5
5倍とし実施例1と同様の延伸を行い巻取ったポリエス
テル繊維の強度は6.0g/dであり高強度物性を示さ
なかった。また、このポリエステル繊維を500m毎に
10ヶ所サンプリングし強度を測定したがその最大値と
最少値の差Rは1.9g/dであり、強度物性バラツキ
の大きいものであった。
【0066】本比較例より、ネッキング変形を加熱筒内
で発現させた場合は引取時に糸切れが多く、また、延伸
熱処理を行っても高強度物性を得られず、強度物性のバ
ラツキの大きい事がわかる。
【0067】
【比較例9】加熱筒の温度およびその他の条件を表4に
示すとおりに設定し、加熱筒の雰囲気温度を上部から下
部に向って低くはせず、等しく設定し紡糸を行った。こ
の場合は紡糸中に単糸同士の融着が発生し引取りができ
なかった。
【0068】
【比較例10】加熱筒の温度を表4に示すとおりに設定
し、雰囲気温度を310℃とし、過熱水蒸気濃度を30
重量%とした以外は実施例1と同様の条件で紡糸を行い
引取り糸を得た。得られた引取り糸条のΔnc/Δns
は1.04であり、これを全延伸倍率1.45倍とし実
施例1と同様の延伸を行い巻取ったポリエステル繊維の
強度は8.2g/dであり高強度物性を示さなかった。
【0069】本比較例より、雰囲気温度が低く水蒸気濃
度が低い場合には延伸熱処理を行っても高強度物性が得
られない事がわかる。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【発明の効果】ポリエステルを高速紡糸すると紡糸過程
中にネッキング変形が発現し配向結晶化が進む。得られ
た巻取糸は低収縮率を示すが高強度物性を示すものでは
ない。しかし、本発明の製造方法によれば、産業資材用
途、特にタイヤコードに適した、9g/dを越える高強
度物性、かつ3%以下の低収縮率ポリエステル繊維を、
繊維の長さ方向の物性のバラツキを少なく製造すること
が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法における紡口直下の過熱水蒸
気濃度(Y)と雰囲気温度(T)との関係を示すグラフ
【図2】本発明の製造方法における実施例1と比較例1
で得られた延伸糸の繊維断面方向の極限粘度の分布を示
すグラフ図
【図3】実施例1と比較例1で得られた延伸前の高配向
糸条の繊維横断面の複屈折率分布を示すグラフ図
【図4】実施例1と比較例1で得られた延伸熱処理後の
ポリエステル繊維の繊維横断面の複屈折率分布を示すグ
ラフ図
【図5】本発明の製造方法の吐出から巻取りまでの一例
の概略を示す図
【図6】本発明の製造方法の吐出から巻取りまでの一例
の概略を示す図
【図7】本発明の製造方法の実施例1で得られた高強度
かつ低収縮率のポリステル繊維の強伸度曲線を示すグラ
フ図
【符号の説明】
1 実施例1で得られた高強度かつ低収縮率のポリエ
ステル繊維 2 比較例1で得られたポリエステル繊維 3 紡糸口金 4 加熱筒 5 加熱水蒸気吹込口 6 冷却風装置 7 オイリングノズル 8 引取装置 9 延伸熱処理装置 10 巻取装置 11 吸引装置 12 延伸熱処理する前の引取糸 13 延伸糸 r 単糸横断面の中心からの距離 R 単糸横断面の半径
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D02J 13/00 Q // D02G 3/48

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 極限粘度1.1以上のポリエステルを紡
    糸口金から紡糸して溶融糸条とし、上記溶融糸条をネッ
    キング変形が発現する以上の速度で引取り、上記溶融糸
    条の引取りの前に上記紡糸口金直下に加熱筒を設け下記
    条件を満たす上記加熱筒内を通過させ、(イ)上記加熱
    筒内に過熱水蒸気を存在させ上記過熱水蒸気の濃度
    (Y)と雰囲気温度(T)の関係が、(1)Y≧(32
    0−T)/0.2、(2)0重量%<Y≦100重量
    %、(3)300℃≦T≦400℃、の三つの条件を満
    たし、(ロ)上記加熱筒の長さがネッキング変形の発現
    する位置より短い長さである、次いで上記引取りした糸
    条を延伸及び熱処理を行うことを特徴とするポリエステ
    ル繊維の製造方法。
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