JPH05271498A - 食品包装材および包装体 - Google Patents

食品包装材および包装体

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JPH05271498A
JPH05271498A JP10541792A JP10541792A JPH05271498A JP H05271498 A JPH05271498 A JP H05271498A JP 10541792 A JP10541792 A JP 10541792A JP 10541792 A JP10541792 A JP 10541792A JP H05271498 A JPH05271498 A JP H05271498A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 エチレン−ビニルアルコ−ル共重合体(A)
100重量部に対し、多官能アリル系化合物、多官能
(メタ)アクリル系化合物、多価アルコールおよび金属
酸化物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤および/ま
たは架橋助剤(B)を0.001〜20重量部含有し、
かつ水−フェノール混合溶媒の不溶解率が1%以上であ
る食品包装材。 【効果】 本発明の食品包装材は、高いガスバリアー性
と高温加熱殺菌性、とくにレトルト殺菌性に優れてい
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、食品などの保存性に優
れた食品包装材に関し、とりわけ、高度なカスバリアー
性と同時に優れた透明性を具備する点で従来例を見ない
加熱殺菌、とくにレトルト処理用包装材に関する。
【0002】
【従来の技術】レトルト用包装材料としてはアルミニウ
ム箔とポリオレフィンフィルムとのラミネートフィルム
などはガスバリアー性の点で良好であるが、不透明で内
容物が見えない欠点があり、消費者の購買意欲をそそる
上からも内容物が透視できる事が求められている。さら
に、該アルミニウム包装体は電子レンジ加熱が出来ない
欠点がある。しかるに、現在使用しうる透明プラスチッ
クフィルム包装材はガスバリアー性が不足しているため
限られた用途にのみ使用されているのが現状である。す
なわち、ガスバリアー樹脂の代表とされるポリ塩化ビニ
リデン系樹脂(以下PVDCと記す)はヘイズが高い上
に黄色味が強く食品の外観を損ねるだけでなく、レトル
ト処理により白色不透明化、バリアー性の悪化などの欠
点がある。PVDC系以外のガスバリアー性樹脂として
メタキシリレンジアミイン−アジピン酸縮合体(MX−
ナイロン)、ポリアミドあるいはPVDCコートポリア
ミドなどが使用されるが、いずれも酸素ガスバリアー性
が低く限られた食品、あるいは低温流通食品なおに利用
されているに過ぎない。特にスキンパック包装、シュリ
ンク包装、深絞り包装、ロケット包装などに使用される
透明フィルム包材はレトルト処理には適さず、またガス
バリアー性も十分でないため低温で流通させているのが
現状である。
【0003】一方、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合
体(EVOH)に電子線照射する事は特公平3−464
90等公知であるが、EVOHに電子線照射するだけで
は、本発明のレトルト性改善の効果が得られないだけで
なく、そこには白化、ガスバリアー性の改善に関する記
載はみあたらない。さらに、文献(繊維学会誌Vol.
No.4(1981))で示される様に、EVOHを含
水させ高線量で照射した場合、EVOHが架橋ゲル化す
る事が報告されてはいるが、高含水、高線量の為かフィ
ルムに微少なしわ、発泡が生じやすく、また着色もとも
なう事により、外観上問題である。また本発明のレトル
ト時の白化防止、バリヤー性に改善に関する記載もみあ
たらない。また、特公昭44−933に示される様に、
EVOHに含水エチレンクロルヒドリンを20〜100
%膨潤させた後、電子線照射し、架橋する方法が水ある
いは含水フェノール系より容易に架橋し、強度改善(ヤ
ング率増加)、耐久性(熱水中のフィルム融着性)改善
が示されているが、含水エチレンクロルヒドリンはEV
OHに体して良溶剤であり、20〜100%膨潤させた
場合、少しの昇温で軟化溶解したり、フィルム膜面のム
ラ、しわが生じる事また、バリアー性が大巾に低減し、
バリアー材としては使用に耐えない。また該発明は上記
同様、レトルト時の日化防止、バリアー性の改善に関す
る記載がまったくない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】EVOHは現在最高の
ガスバリアー性を有する熱可塑性樹脂であり、半透明あ
るいは不透明で厚いPP層を内外層とし、EVOHを中
間層とする構成のカップやトレーなどの硬い容器とした
場合にガスバリアー性の優れた容器として汎用されてい
るが、フレキシブルな薄手の透明フィルム包材として使
用した場合、熱水高温加熱殺菌、レトルト殺菌時、ガス
バリアー性に顕著に低下し、またEVOH層の白濁、波
状のしわや模様が発生するなど重大な問題点があり、ガ
スバリヤーフィルム包材としての外観上、実用に耐えな
い状況にある。この様なEVOH層のレトルト時の以上
は90℃以上の熱水、とりわけ120℃以上の熱水中で
は、EVOHが吸水膨潤すると同時に溶融流動し不定形
状態になるためと推定される。そこで、改善策として、
EVOHにポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、
ポリエステル系樹脂あるいはポリカーボネート系樹脂を
ブレンドする提案(特開平1−308626)がなされ
てはいるが、改善効果、および樹脂の熱安定性不良によ
る為か、製膜時、フィルムにゲル、ブツが発生しやすく
外観上、必ずしも十分ではない。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、加熱殺
菌、とくにレトルト処理によりEVOHのガスバリアー
性が顕著に低下し、またEVOH層の白濁、波状のしわ
や模様の発生をおこさぬような手段について広範な検討
を実施した。その結果、EVOH100重量部に対し、
多官能アリル系化合物、多官能(メタ)アクリル系化合
物、多価アルコールおよび金属酸化物から選ばれる少な
くとも1種の架橋剤(B)0.001〜1重量部含有し
てなる組成物からなり、かつ水(10重量%)−フェノ
ール(90重量%)の混合溶媒の不溶解率が1%以上で
ある食品包装材を用いた場合、加熱殺菌とくにレトルト
処理によるEVOH層の白濁、波状のしわや模様の発生
など外観不良を起こさない上に、EVOH本来の高度な
ガスバリアー性を備えた透明レトルト用フィルムが得ら
れ、さらには、EVOH層を外層に使用時、レトルト中
に包材同士が接触した場合、融着粘着が生じる問題をも
解決するという。従来のEVOHに対する常識を覆す驚
くべき事実を確認し、本発明を完成したものである。
【0006】本発明において、EVOHとはエチレン−
ビニルエステル共重合体けん化物であり、エチレン含有
量は10〜70モル%、好適には20〜60モル%、さ
らには25〜58モル%の範囲から選ばれる。エチレン
含有量10モル%未満では溶融成形性が悪く、一方70
モル%以上では、ガスバリアー性が不足する。また、け
ん化度が90%未満では、ガスバリアー性および熱安定
性が悪くなる。
【0007】また、EVOHが共重合あるいはグラフト
重合体としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2
モル%を含有する場合には低照射線量でレトルト時の問
題点を顕著に改善する。従って、架橋剤の低減、照射に
よるEVOH層を含む基材層のフィルム強伸度特性、着
色などの劣化低減に有効である。ここで、ビニルシラン
系化合物としては、下記(I)、(II)、(III)で示さ
れる化合物が好適である。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
【0010】
【化3】
【0011】[ただし、ここでnは0〜1、mは0〜
2、R1は低級アルキル基、アリール基、またはアリー
ル基を有する低級アルキル基、R2は炭素数1〜40の
アルコキシル基であり、そのアルコキシル基は酸素を含
有する置換基を有していてもよい。R3は水素原子また
はメチル基、R4は水素原子または低級アルキル基、R5
はアルキル基または連鎖炭素原子が酸素もしくは窒素に
よって相互に結合された2価の有機残基、R6は水素原
子、ハロゲン原子、低級アルキル基、アリール基、また
はアリール基を有する低級アリール基、R7はアルコキ
シル基またはアシロキシル基(ここでアルコキシル基ま
たはアシロキシル基は酸素もしくは窒素を含有する置換
基を有していてもよい。)、R8は水素原子、ハロゲン
原子、低級アルキル基、アリール基、またはアリール基
を有する低級アルキル基、R9は低級アルキル基であ
る。]。さらに詳しく述べれば、R1は炭素数1〜5の
低級アルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または
炭素数6〜18のアリール基を有する炭素数1〜5の低
級アルキル基、R4は水素原子または炭素数1〜5の低
級アルキル基を示し、R5は炭素数1〜5のアルキル基
または連鎖炭素原子が酸素若しくは窒素によって相互に
結合された2価の有機残基を示し、R6は水素原子、ハ
ロゲン原子、炭素数1〜5の低級アルキル基、炭素数6
〜18のアリール基、または炭素数6〜18のアリール
基を有する炭素数1〜5の低級アルキル基を示し、R7
はアルコキシル基またはアシロキシル基(ここでアルコ
キシル基またはアシロキシル基は酸素もしくは窒素を含
有する置換基を有していてもよい。)、R8は水素原
子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の低級アルキル基、炭
素数6〜18のアリール基、または炭素数6〜18のア
リール基を有する炭素数1〜5の低級アルキル基を示
し、R9は炭素数1〜5の低級アルキル基を示す。ビニ
ルシラン化合物(I)、(II)、(III)の具体的な化合
物名としては、例えばビニルエトキシシラン、ビニルメ
トキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ、エトキシ)
シランが挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシ
ラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられてい
る。
【0012】また、該EVOHには本発明の目的が阻害
されない範囲で、他の共単量体[例えば、プロピレン、
ブチレン、不飽和カルボン酸又はそのエステル{(メ
タ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルメチル、
エチルなど}、ビニルピロリドン(N−ビニルピロリド
ンなど)を共重合体することも出来るし、さらに可塑
剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フ
ィラー、他の樹脂(ポリアミド、部分けん化エチレン−
酢酸ビニル共重合体など)をブレンドすることも自由で
ある。また、本発明に用いるEVOHの好適なメルトイ
ンデックス(MI)190℃、2160g荷重下)は好
適には0.1〜50g/10min.、最適には0.5
〜20g/10min.である。
【0013】架橋剤(B)のうち、多官能アリル系化合
物、多官能(メタ)アクリル系化合物としては官能基を
少なくとも2個以上有するアリル系化合物および(メ
タ)アクリル系化合物があげられる。具体的にはトリア
リルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレ
ート(TAIC)、ペンタエリスリトールテトラメタク
リレート(PETMA)、グルタルアルデヒド(G
A)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDM
A)、ジアリルマレエート(DAM)、ジプロパジルマ
レエート(DPM)、ジプロパジルモノアリルシアヌレ
ート(DPMAC)、トリメチロールプロパントリアク
リレート(TMPTAT)、テトラエチレングリコール
ジアクリレート(TEGDA)、1,6ヘキサグリコー
ルジアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアク
リレート、ジプロパジルサクシネート、ジアリルフマレ
ート、ジアリルフタレートなどがあげられる。また、架
橋助剤(B)の金属酸化物としては、たとえば、酸化亜
鉛、二酸化ケイ素、三酸化アンチモンなどがあげられ
る。さらに架橋助剤(B)の多価アルコールとしては、
たとえば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレ
ングリコールなどがあげられる。また、架橋剤および/
または架橋助剤(B)としてこれらの化合物を二種類以
上混合して使用する事が有効な場合もある。中でも、ト
リアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシア
ヌレート(TAIC)、ジアリルマレエート(DA
M)、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、トリ
メチロールプロパントリアクリレート(TMPAT)、
トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPA
TA)、テトラエチレングリコールジアクリレート(T
EGDA)、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、グリセリンなど
が好適である。ただし、EVOHを架橋する手段とし
て、水を用いる事は公知であるが、水単独の場合、ガス
バリアー性、特にレトルト殺菌等、高温高湿下でのバリ
アー性の悪化が顕著であり、必ずしも有効な手段ではな
い。しかしながら、上記架橋剤および/または架橋助剤
(B)と併用する時、予想外に架橋度の向上が認めら
れ、架橋剤の低減に有効である。またこれらの架橋剤の
うち多官能アリル系化合物、多官能(メタ)アクリル系
化合物をEVOHの共重合あるいはグラフト成分として
使用することもできる。
【0014】組成物を形成するEVOH(A)と架橋剤
および/または架橋助剤(B)との組成比はEVOH
(A)100重量部に体して架橋剤および/または架橋
助剤(B)を0.001〜20重量部、好適には0.0
1〜10重量部である。架橋助剤(B)の成分が少ない
と、照射線量を大きくしても照射組成物(C)の水−フ
ェノール混合溶媒不溶解率(以下、不溶解率と記す)が
上昇せず、レトルト処理時のEVOH(A)層の白化、
保存時の白身残留、形態変形、ガスバリアー性悪化など
の以上が改善出来ないだけでなく、フィルム強度の大幅
低下、着色などの問題が発生する。一方、架橋剤および
/または架橋助剤(B)の成分が多すぎる場合には、E
VOH(A)と架橋剤および/または架橋助剤(B)と
を押出機でブレンドペレット化、あるいは製膜時の熱に
より、樹脂の増粘、ゲル化などが生じ、良好なフィルム
が得られず、延伸、熱成形などの二次成形性の悪化、ま
た、照射時フィルム強度の大幅低下、着色などの問題が
発生する場合がある。
【0015】EVOH(A)と架橋剤および/または架
橋助剤(B)との組成物には、本発明の目的が損なわれ
ない範囲で他のポリマーあるいは安定剤、酸化防止剤、
紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充
填剤、などを添加することが出来る。より具体的な例と
して、例えば次のようなものが挙げられる。 安定剤: 酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸亜
鉛、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、
ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ス
テアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステ
アリン酸亜鉛、ハイドロタルサイト類、エチレンジアミ
ン四酢酸の金属塩など。 酸化防止剤: 2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノ
ン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4
´−チオビス−(6−tブチルフェノール)、2,2´
−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノ
ール)、オクタデシル−3−(3´,5´−ジ−t−ブ
チル−4´−ヒドロキシルフェニル)プロピオネート、
4,4´−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)な
ど。 紫外線吸収剤: エチル−2−シアノ−3.3−ジフェ
ニルアクリレート、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メ
チルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2´ヒドロ
キシ−3´−t−ブチル−5´−メチルフェニル)−5
−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メ
トキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−
メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキ
シベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベ
ンゾフェノンなど。 可塑剤: フタール酸ジエチル、フタール酸ジメチル、
フタール酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リ
ン酸エステルなど。 帯電防止剤: ペンタエリスリットモノステアレート、
ソルビタンモノパルミテート、硫酸化オレイン酸、ポリ
エチレオキシド、カーボワックスなど。 滑剤: エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレ
ートなど。 着色剤: カーボンブラック、フタロシアニン、キナク
リドン、アゾ系顔料、酸化チタン、ベンガラなど。 充填剤: グラスファイバー、アスベスト、マイカ、セ
リサイト、タルクガラスフレーク、バッラストナイト、
ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウ
ム、酸化ケイ素、モンモリロナイトなど。 このうちで、マイカ、タルク、セリサイト、モンモリロ
ナイトなどから選ばれる粉体10〜60重量%と上記の
樹脂ブレンド組成物99〜40重量%との組成物はガス
バリアー性が向上することにより、主としてカップ、ト
レーなどの容器に応用可能である。
【0016】組成物を得る方法としてはEVOH(A)
と架橋剤および/または架橋助剤(B)を押出機でブレ
ンドペレット化または両者をドライブレンドした後、押
出機で製膜する方法、あるいは製膜したEVOH(A)
フィルムを常温あるいは加熱下で溶剤等に溶解した架橋
剤および/または架橋助剤(B)溶液に浸漬し、含浸さ
せる方法などがある。ブレンド方法においては、単軸あ
るいは二軸スクリュー押出機、インテンシブルミキサ
ー、連続インテンシブルミキサーなどにより可能な限り
低温下溶融押出後、冷却下にペレット化する方法が用い
られる。ところで、溶融ブレンド方法と溶液浸漬方法と
を比較した場合、溶液浸漬方法がブツなどのフィルム外
観およびレトルト性改善効果の面で優れている。
【0017】このようにして得られた組成物(ペレット
など)から得られたフィルム、シートまたは容器は水−
フェノール混合溶媒の不溶解率が1重量%以上であるこ
とが重要であり、好適には5重量%以上、さらには10
重量%以上である。ここで水−フェノール混合溶媒の不
溶解率とは水(10重量%)−フェノール(90重量
%)の混合溶媒100重量部にフィルム、シートまたは
容器を1重量部入れ、70℃、3時間加熱溶解した後、
瀘過し、瀘液を蒸発乾固し、その濃度から測定されるも
のであり、下記式により算出される。なおここで瀘過に
は溶解したEVOHが実質的に100%通過する瀘過器
材(瀘紙、瀘布、メンブランなど)が使用される。 [100−(b×c/a)]% a: フィルム、シートまたは容器の最初の重量(m
g) b: 瀘液の重さ(mg) c: 瀘液のEVOH濃度(重量%) この不溶解率が1重量%未満の場合は本発明の目的であ
るレトルト時の白化、融着、ガスバリアー性の劣化を防
止する効果が少なくなる。
【0018】このような不溶解率を付与する方法として
は、フィルム、シート、または容器を電子照射する方法
が好適である。照射法としては電子線を用いるのが有利
である。電子線源としては、加速電圧100〜3000
KVの電子線加速機が使用され、例えばパンタグラフ式
などの走査型装置やカーテン型装置、あるいはエレクト
ロカーテン等の任意の装置を用いることが出来る。照射
線量は、共重合体の種類や、厚みによっても相違する
が、一般的には0.5〜50Mard、特に1〜30M
ardの範囲から、所望する改善が生ずる線量を決定す
ればよい。上記範囲より照射線量が低い場合、不溶解率
が上昇せずレトルト処理時のEVOH層の白化、保存時
の白味残留、形態変形、ガスバリアー性悪化などの異常
が改善出来ない。一方、照射線量が多すぎる場合には、
延伸、熱成形などの二次成形性の悪化、また、フィルム
強度の大幅低下、着色などの問題が発生する場合があ
る。他の照射条件は広範囲に変更可能であり、照射温度
は室温以上、より好適には40〜80℃であり、雰囲気
としては、特に限定され無いが、窒素などの不活性雰囲
気中で行う事がのぞましい。また、照射線源として、コ
バルト60、セシウム137などの放射性同位を用いる
事も出来る。ところでEVOHに電子線照射した場合、
通常、樹脂の分解、重合度の低下を示し、かつ融点が下
がる傾向にある。一方EVOHに該架橋剤等を添加する
と、左記の含水フェノール不溶解率が増加し、本発明の
レトルト時の白化、バリアー性悪化を大幅に改善する
が、含水フェノール可溶分のEVOHは溶液粘度の低下
より、重合度も低下しており、照射により架橋と分解が
同時に進行していることがわかる。また照射品の融点は
上記同様未照射品と比較して低下する傾向にある。
【0019】このようにして得られた本発明の食品包装
材は通常、他の熱可塑性樹脂との多層構成で使用され
る。ガスバリアー性を担う該組成物層の厚みは5〜25
0μ、通常10〜100μの範囲から選ばれる。一方、
内外層に使用する熱可塑性樹脂は任意のものが採用さ
れ、特に制限はないが、目的によっては透湿性、耐熱
性、ヒートシール性、透明性などの点を配慮することに
より優れた包材を得ることが出来る。用いる樹脂として
は、ポリプロピレン、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミ
ド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、
ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニ
リデン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネー
ト系樹脂および照射架橋したポリプロピレン、ポリエチ
レン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタ
クリル酸系共重合体、エチレン−アクリル酸エステル系
共重合体エチレン−メタクリル酸エスレル系共重合体な
どが挙げられ、これらの樹脂が単独あるいは積層して使
用される。
【0020】また、多層構造体を共押出法にて製膜する
場合、EVOH(A)組成物層と熱可塑性樹脂層とを接
着性樹脂をはさんで積層する通常の方法が採用される。
接着性樹脂としてはポリプロピレン、ポリエチレン、あ
るいはエチレンとこれと共重合しうるモノマー(酢酸ビ
ニル、アクリル酸エステルなど)との共重合体などのポ
リオレフィン類に無水マレイン酸などを付加して変性し
た樹脂などが使用される。
【0021】多層構造体は次のような各種の積層方法に
よって製造可能であり、共押出法、ドライラミネート
法、サンドラミネート法、押出ラミネート法、共押出ラ
ミネート法、溶液コート法などがある。共押出法とは熱
可塑性樹脂(場合によっては、架橋剤および/または架
橋助剤(B)配合)、接着性樹脂、EVOH組成物など
を押出機より溶融状態下積層し、ダイス出口よりフィル
ム状に製膜した後、電子線などにより照射架橋を行い、
必要に応じて延伸、熱成形が行われる。ドライラミネー
ト法としてはあらかじめ製膜しておいたEVOH組成物
(C)単層を、あるいはEVOH(A)単層に架橋剤お
よび/または架橋助剤(B)に浸漬した後、電子線など
により照射架橋を行い、その後、接着剤をコートした熱
可塑性樹脂層を熱ロールで接着多層化するか、あるい
は、左記方法で多層化したフィルムに電子線などにより
照射架橋を行い必要に応じて延伸、熱成形を行なう方法
があげられる。ドライラミネートなどに使用されるフィ
ルムとしてはナイロンフィルム(CN,ON)、ポリプ
ロピレンフィルム(CPP,OPP)、ポリエチレンフ
ィルム(PE,架橋PE)、ポリ塩化ビニリデン、エチ
レン−酢酸ビニル共重合体フィルム(EVA,架橋EV
A)などが挙げられる。このようにして得られた多層構
造体は食品包装材、とりわけ加熱殺菌用、なかんずくレ
トルト用包装材として使用した時、最もその特徴が発揮
される。食品包装材の用途としては、ふた材、パウチ
類、真空包装、スキンパック、深絞り包装、ロケット包
装などが好適であるが、さらに、フィルム包装以外にカ
ップあるいはトレー型の容器としても優れた性能を発揮
する。また、ボトル形状あるいはチューブ状となすこと
も出来る。
【0022】本発明の食品包装材に内容物を充填し、加
熱殺菌、とくにボイル殺菌またはレトルト殺菌すること
により、保存性の優れた包装体を得ることができる。レ
トルト処理は回収式、置換式、上記式、シャワー式、ス
プレー式など各種の方法が採用される。レトルト処理を
実施した直後は、本発明の包材でも白色不透明になる場
合があるが、包材の表面水を除去した後、しばらく放置
することで透明化する。より確実に透明化、ガスバリア
ー性の回復をはかりた場合には、40〜150℃1〜1
20分間熱風で乾燥することが好適である。また他の加
熱殺菌法としては熱間充填法などもあげられる。
【0023】
【実施例】
実施例1 エチレン含有量32モル%、けん化度99.6%、メル
トインデックス(MI190℃、2160g荷重)1.
3g/10min.のEVOH(A)100重量部と、
架橋剤(B)としてトリアリルシアヌレート(TAC)
0.1重量部をドライブレンドし、30φ二軸押出機、
220℃にてペレット化を行い、EVOH組成物を得
た。次いで、該EVOH組成物を40φ一軸押出機、2
20℃にて20μの単層フィルムを作成し、加速電圧3
00KVの電子線で5Mradの照射を行った。この
時、水/フェノール=10/90重量比混合溶媒、70
℃−3時間加熱溶解試験による該フィルムの不溶解分の
含量、即ち不溶解率は28%であった。該照射フィルム
の20℃−100℃RH下でのガスバリアー性を測定し
た所、14 cc.20μ/m2.24hr.atm
(モコン社製10/50型により測定)であった。該フ
ィルムを120℃、30分間レトルト殺菌処理した結
果、フィルム形態は良好であり、処理直後は多少しろ味
を帯びてはいたが、3時間放置後には透明であった。こ
の時のガスバリアー性は24 cc.20μ/m2.2
4hr.atmと比較的良好なガスバリアー性を示し
た。
【0024】実施例2〜6 比較例1〜5 表1に示す以外は実施例1と同様の条件でフィルムを得
た。その結果を表1〜表2に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】実施例7 エチレン含有量32モル%、けん化度の99.6%、メ
ルトインデックス(MI 190℃、2160g荷重)
1.3g/10min.のEVOH(A)を40φ一軸
押出機、220℃で20μの単層フィルムを作成した
後、架橋剤(B)としてジアリアリルフタレート溶液に
1日浸漬した後、加速電圧300KVの電子線で5Mr
adの照射を行った。この時、不溶解率は45%であっ
た。該照射フィルムの20℃−100%RH下でのガス
バリアー性は18 cc.20μ/m2.24hr.a
tmであった。該フィルムを120℃、30分間レトル
ト殺菌処理した結果、フィルム形態は良好であり、処理
直後は多少しろ味を帯びていたが、3時間放置後には透
明であった。この時のガスバリアー性は22cc.20
μ/m2.24hr.atmと比較的良好なガスバリア
ー性を示した。
【0028】実施例8 実施例1で得られた照射フィルムを多層化する為、延伸
ナイロンフィルム(ON)および、延伸ポリプロピレン
フィルム(OPP)をアンカーコート用接着剤を介して
EVOH組成物層の両側にドライラミネートした。該多
層フィルムを製袋機にかけ袋状のパウチを作り食品充填
後、真空下で投入口をヒートシールした。その後、12
0℃、30分間レトルト殺菌処理した結果、フィルム形
態は良好であり、処理直後は多少白味を帯びていたが、
3時間放置後には透明であった。この時のガスバリアー
性は35acc.20μ/m2.24hr.atmと比
較的良好なガスバリアー性を示した。
【0029】実施例9 実施例2で得られた架橋剤(B)浸漬ずみ(未照射品)
フィルムを多層化する為、延伸ナイロンフィルム(O
N)および、延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)を
アンカーコート用接着剤を介してEVOH組成物層の両
側にドライラミネートした。その後、加速電圧300K
Vの電子線で2.5Mradの照射を行った。この時、
不溶解分率は25%であった。該照射フィルムの20℃
−100%RH下でのガスバリアー性は18 cc.2
0μ/m2.24hr.atmであった。該多層フィル
ムを製袋機にかけ袋状のパウチを作り食品充填後、真空
下で投入口をヒートシールした。その後、120℃、3
0分間レトルト殺菌処理した結果、フィルム形態は良好
であり、処理直後は多少白味を帯びていたが、3時間放
置後には透明であった、この時のガスバアリアー性は2
8cc.20μ/m224hr.atmと比較的良好な
ガスバリアー性を示した。
【0030】実施例10 実施例1で得られたEVOH(A)と架橋剤(B)のブ
レンド(未照射品)フィルムを多層化する為、延伸ナイ
ロンフィルム(ON)および、延伸ポリプロピレンフィ
ルム(OPP)をアンカーコート用接着剤を介してEV
OH組成物層の両側にドライラミネートした。その後、
加速電圧300KVの電子線で10Mradの照射を行
った。この時、不溶解分率は48%であったが、OPP
またはONフィルムの電子線による分解劣化の為か、フ
ィルムに着色が認められた。該照射フィルムの20℃−
100%RH下でのガスバリアー性は19 cc.20
μ/m2.24hr.atmであった。該多層フィルム
を製袋機にかけ袋状のパウチを作り食品充填後、真空下
で投入口をヒートシールした。その後、120℃、30
分間レトルト殺菌処理した結果、フィルム形態は良好で
あり、処理直後は多少白味を帯びていたが、3時間放置
後には透明であった。この時のガスバアリアー性は32
cc.20μ/m224hr.atmと比較的良好なガ
スバリアー性を示した。
【0031】実施例12 エチレン含有量27モル%、けん化度の99.6%、メ
ルトインデックス(MI 210℃、2160g荷重)
2.5g/10min.のEVOH(A)100重量部
と、架橋助剤(B)としてグリセリン1重量部をドライ
ブレンドし、30φ二軸押出機、220℃にてペレット
化を行いEVOH組成物を得た。該EVOH組成物を用
いて3種3層共押出装置にかけ、多層シートを作成し
た。シートの構成は内層PP樹脂層(三菱油化:ノーブ
レンMA−6)が500μまた接着性樹脂層(三井石油
化学 アドマーQF−500、EVA樹脂の無水マレイ
ン酸変性物)50μ、さらに外層には上記EVOH組成
物層50μである。このシートをEVOH層を温水吸湿
させた後、加速電圧300KVの電子線で20Mrad
の照射を行い、さらに、シート温度160℃にて熱成形
を行い、トレーを得た。食品充填、シール後、120
℃、30分間レトルト殺菌処理した結果、トレー形態は
良好であり、処理直後は多少白味を帯びていたが、3時
間放置後には透明であった。この時のガスバリアー性は
24 cc.20μ/m2.24hr.atmと比較的
良好なガスバリアー性を示した。
【0032】実施例13 エチレン含有量27モル%、けん化度の99.6%、メ
ルトインデックス(MI 210℃、2160g荷重)
2.5g/10min.のEVOH(A)を用いて3種
3層共押出装置にかけ、多層シートを作成した。シート
の構成は内層PP樹脂層(三菱油化:ノーブレンMA−
6)が500μまた接着性樹脂層(三井石油化学 アド
マーQF−500、EVA樹脂の無水マレイン酸変性
物)50μ、さらに外層には上記EVOH組成物層50
μである。このシートを160℃にて熱成形を行い、ト
レーを得、次にEVOH層を温水吸湿させた後、加速電
圧300KVの電子線で20Mradの照射を行った。
食品充填、シール後、120℃、30分間レトルト殺菌
処理した結果、トレー形態は良好であり、トレー同士
(トレー外表面EVOH層同士)の粘着、融着もなく
(未照射品では粘着融着発生)、処理直後は多少白味を
帯びていたが、3時間放置後には透明であった。この時
のガスバリアー性は22 cc.20μ/m2.24h
r.atmと比較的良好なガスバリアー性を示した。
【0033】実施例14 エチレン含有量27モル%、けん化度の99.6%、メ
ルトインデックス(MI 210℃、2160g荷重)
2.5g/10min.のEVOH(A)を水/プロパ
ノール=50/50混合溶剤に溶解し、円筒状紙状物
(ファイバラスケーシング)の両面に塗布した後、熱風
乾燥工程の途中(半乾燥)、あるいは乾燥完了後、EV
OH層を温水吸湿させた後、加速電圧300KVの電子
線で20Mradの照射を行った。食品充填、シール後
(通称、ロケット包装)、120℃、30分間レトルト
殺菌処理した結果、チューブの形態は良好であり、チュ
ーブ同士(チューブ外表面EVOH層同士)の粘着、融
着もなく、処理直後は多少白味を帯びていたが、3時間
放置後には光沢が改善されていた。この時のガスバリア
ー性は26 cc.20μ/m2.24hr.atmと
比較的良好なガスバリアー性を示した。
【0034】実施例15 エチレン含有量44モル%、けん化度の99.6%、メ
ルトインデックス(MI 190℃、2160g荷重)
5.5g/10min.のEVOH(A)100重量部
と、架橋剤(B)としてトリアリルシアヌレート(TA
C)0.1重量部をドライブレンドし、30φ二軸押出
機、220℃にてペレット化を行い、EVOH組成物を
得た。該EVOH組成物を用いて3種5層共押出装置に
かけ、多層シートを作成した。シートの構成は両最外層
EVA樹脂層(三井デュポンケミカル:エバフレックス
P1403)が各300μまた接着性樹脂層(三井石油
化学 アドマーVF−600、EVA樹脂の無水マレイ
ン酸変性物)各50μ、さら内層中央には上記EVOH
組成物層50μである。得られたシートをパンタグラフ
式二軸延伸機にかけ90℃で延伸倍率3×3倍で同時二
軸延伸を行った。得られた多層熱収縮フィルムはクラッ
ク、ムラ、偏肉も少なく、外観、透明性も比較的良好で
あった。このフィルムを20×−100%RHに調湿
し、ガスバリアー性を測定した所、15 cc.20μ
2.24hr.atmと良好なガスバリアー性を示し
た。また、90℃での熱収縮性を測定した所65%の面
積収縮率を示した。該遠視フィルムを120℃、30分
間レトルト殺菌処理した結果、処理直後は多少白味を帯
びていたが、3時間放置後には透明であった。この時の
ガスバリアー性は24cc.20μ.m2.24hr.
atmと比較的良好なガスバリアー性を示した。一方、
上記多層シートの厚み構成を両最外層EVA樹脂層が各
30μまた接着性樹脂層が各5μ、最内層中央には上記
EVOH(A)層10μに変更し、得られたシートをス
キンパック包装機(ムルチバック社製 180℃)にか
けスキンパック包装を実施した。その結果、包装フィル
ムの外観は折れジワ、内容物のブツレも少なく、比較的
良好であった。また、該スキンパック包装袋を120
℃、30分間レトルト殺菌処理した結果、処理直後は多
少白味を帯びていたが、1時間放置後には透明であっ
た。この時のガスバリアー性は29 cc.20μ/m
2.24hr.atmと比較的良好なガスバリアー性を
示した。
【0035】
【発明の効果】本発明の食品包装材は、高いガスバリア
ー性と高温加熱殺菌性、とくにレトルト殺菌性に優れて
いる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08K 5/00 C08L 29/04

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレン−ビニルアルコール共重合体
    (A)100重量部に対し、多官能アリル系化合物、多
    官能(メタ)アクリル系化合物、多価アルコールおよび
    金属酸化物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤および
    /または架橋助剤(B)を0.001〜20重量部含有
    し、かつ水(10重量%)−フェノール(90重量%)
    の混合溶媒中での不溶解率が1%以上である食品包装
    材。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の食品包装材に内容物を充
    填し、加熱殺菌した包装体。
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