JPH0521406Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、例えば生鮮野菜、生鮮果実、鮮
魚、海苔、水産練製品等の輸送や保管に使用する
段ボール製の保鮮箱に関する。

〔従来技術〕

従来の保鮮箱は、生鮮野菜や鮮魚等の腐敗を防
止するために、発泡スチロール等で成形すること
により断熱性を高めた構造に構成され、使用する
ときには、氷や蓄冷剤を入れて内部を保冷する方
法が採られている。発泡スチロール等のプラスチ
ツク製の保鮮箱は、傷みが酷くなつて使用済みと
して焼却処分するときには、焼却温度が高いため
に炉が傷みやすく、また有毒ガスの発生が伴うた
めに公害の問題が生じるという欠点があつた。

段ボール箱は、焼却の面において問題がなく、
また優れた断熱性を有しているために内部の保冷
に適しているし、軽量で運搬しやすい等の利点を
有している。しかし、従来の段ボール製の保冷箱
は、その材質上耐水性に劣るために氷や保冷剤の
使用に適しないという欠点があつた。

そこでこの出願人においては、一面または両面
にプラスチツク防水フイルムを貼り合わせた段ボ
ールで組み立てることにより、耐水性に優れた保
冷箱を提供することに成功した。この保冷箱によ
れば、氷や蓄冷剤の使用が可能であるために、保
冷による食料品等の保鮮輸送に適するが、通気性
が少なくなるので、その面での保鮮の改良を更に
進めることがテーマとして提案された。しかし通
気性をよくすることと耐水性を高めることとは相
反することであるために、この問題を有効に解決
することは困難であつた。

食料品等が腐敗する原因は、細菌によることの
他に、有毒ガスによることが考えられる。殊に、
生鮮野菜や生鮮果実、生花等に植物は、エチレン
ガスの自己発生により密封包装では腐敗しやす
い。すなわち、植物は、エチレンの助けを借りて
生体活動を活発化している訳であるが、エチレン
の少ない環境下においても成長できるようにエチ
レンの自己生成機能を持つており、この生成機能
は植物が根から切り離されても失わないために、
密閉中においては、エチレンガス濃度の異常な高
まりにより生態活動がさらに活発化される結果、
水分を蒸発し栄養分を消費し、萎れ、黄変、腐敗
が発生し、蒸れにより殺菌やかびの増殖しやすい
状態となる。

また、このエチレンガスの発生は、温度の上昇
とともに多くなる。

〔考案の目的〕

この考案は、上記のような実情に鑑みて、耐水
性に優れるために氷や保冷剤の使用が可能であ
り、且つ包装植物からのエチレンガスの発生を保
冷により抑制しやすく、また、エチレンガスを吸
着するためにエチレンの内部濃度の高まりが極力
少くなる段ボール製の保鮮箱を提供することを目
的としたものである。

〔考案の構成〕

上記の目的を達成するためのこの考案の構成
は、箱内側の段ボール構造体表面に、箱の内面側
より順にエチレン吸着性防水フイルム、熱反射層
及び／又は断熱シートをそれぞれ積層させてなる
ことを特徴とする段ボール製の保鮮箱をその要旨
とするものである。

段ボール構造体や箱の組み立て形態は特に制限
されるものではなく、例えば、段ボール構造体に
ついては、片面段ボールや両面段ボールは勿論、
複両面段ボールや複々両面段ボール等であつても
よい。

エチレン吸着剤としては、エチレン酸化吸着剤
例えばミネラル鉱石の微粉末を挙げることができ
る。このミネラル鉱石としては、石川県に産出さ
れる「医王石」や、長野県で産出される「麦飯
石」、九州地方で産出される「太陽石」等を挙げ
ることができる。これ等のミネラル鉱石は、水中
に投入すると、鉄、カルシウム、マグネシウム等
のミネラルを溶出するほか、シアン、水銀、カド
ミウム等の重金属や、塩素、大腸菌等の細菌を吸
着するために、現在、健康飲料水の製造に使用さ
れているものである。

また増量剤として使用されている「ビルダーク
レイ」も珪素を主成分とするミネラル鉱石である
ので、エチレン酸化吸着剤として有効に使用し得
る。さらにその他のエチレン吸着剤例えば活性炭
等も使用し得る。

〔実施例〕

第１図及び第２図は一実施例を示したもので、
保鮮箱Ｃは、Ａ−型の段ボール箱であつて、内側
の全面、つまり側壁１、底壁２、内外フラツプ
３，４の各内面にエチレン吸着性防水フイルムｆ
を張り合わせ、そのフイルムｆの内面には予めア
ルミ蒸着面１４が形成してある。

保鮮箱Ｃの素材として段ボールＦは、中芯５の
両面にライナー６，７を貼り合わされた両面段ボ
ールであつて、一面のライナー６の外面に前記の
エチレン吸着性防水フイルムｆを貼り合わせたも
のが使用されている。なお防水フイルム貼着段ボ
ールの有利な製造方法については本出願人におい
て既に成功している。

エチレン吸着性防水フイルムｆは、ポリエステ
ルのプラスチツク原料に前記医王石を300メツシ
ユ程度に粋砕した微粉末を重量で５％程度混入し
て防水フイルム成形したものである。

「医王石」は、金沢市と富山県の福光町との間
の県境にある「医王山」（いおうぜんと読む）に
産出し、希皇石とも称されるもので、その成分
は、珪酸（61.64％）、酸化アルミニウム（16.47
％）、酸化第二鉄（6.88％）、酸化カルシウム
（4.29％）、ナトリウム（2.39％）、酸化カリウム
（2.02％）、酸化マグネシウム（1.99％）、チタン
（0.31％）、金属マンガン（0.11％）、ゲルマニウ
ム（0.003〜0.005％）である。

このようにミネラル鉱石の粉末を混入した防水
フイルムは、普通の防水フイルムに比し通気性は
良好である。

次に上記の保鮮箱Ｃと、普通の一般的段ボール
箱（形と大きさは同じ）とで鮮度試験をした結果
を示す。

供試体 ５月25日収穫のほうれん草 試験期間 ５月25日から 温 度 15℃〜24℃ 湿 度 55〜65 上記の条件において、普通の段ボールである
と、翌日から葉が萎縮し水々しさを失いかけ、商
品価値を無くしてしまい、３日目には黄変した
が、保鮮箱Ｃであると、４日目まで水々しさを失
わず商品価値を保持し、一週間目でようやく黄変
が生じた。

また普通の段ボール箱であると、５日目でかび
の発生が認められたが、保鮮箱Ｃであると、20日
以上経過してもかびの発生は認められなかつた。

このように、鮮度を長期に亘つて維持できるの
は、エチレンガスの吸着のほかに、防水フイルム
ｆの通気性が良好なことが挙げられる。

また保鮮箱Ｃに保冷剤を入れた場合には、２週
間以上水々しさを失わなかつた。なお保冷剤とし
てはプラスチツク製防水フイルムのチユーブに水
を詰めたものを氷結して使用し、氷が全部氷解し
ないように取り代えた。

このように保冷効果が長期に亘つて保持される
のは、フイルムｆの内面に予め形成されているア
ルミ蒸着面１４が断熱効果に寄与しているためで
ある。

〔他の実施例〕

第３図は他の実施例を示したもので、保鮮箱Ｃ
は、Ｂ−型の組み立て構造であつて、箱の内面
に、前記と同様に下面に予めアルミ蒸着面が形成
してあるエチレン吸着性防水フイルムｆを貼り合
わせてあるが、箱の外面には、プラスチツク防水
フイルムを延伸したフラツトヤーンのクロス９を
貼りあわせ、破裂強度や引裂強度を高めることに
より通函として使用したものである。

第４図はさらに他の実施例を示したもので、そ
の保鮮箱ＣはＣ−型の組み立て構造であつて、身
１０と蓋１１とからなり、その両方の内面にエチ
レン吸着性防水フイルムｆを貼り合わせ、外面に
は普通のプラスチツク防水フイルムを１２を貼り
合わせて、耐水性に万全を期し、氷や畜冷剤の使
用に適するようにしてある。また前記第１図及び
第３図に示した実施例らと同様に、エチレン吸着
性防水フイルムｆの下面にはアルミ蒸着が施さ
れ、保冷に適するようにアルミ蒸着面で断熱性を
高めている。

第５図ないし第１０図は、さらに他の実施例を
示す。なお、各図は段ボールシートの断面図であ
るが、本考案はこれらによつて形成される保鮮箱
である。

第５図は、保鮮箱の保冷性を高めるために、段
ボールＦの内側ライナー６の表面には、プラスチ
ツクフオームシートからなる断熱シート１３を介
してエチレン吸着性防水フイルムf′を貼り合わ
せ、またその防水フイルムf′の下面にアルミ蒸着
面１４を形成してある。

第６図は、一面にアルミ蒸着層の被膜１４を形
成したアルミ蒸着エチレン吸着防水フイルムf′の
そのアルミ蒸着層１４を内側にして貼着された内
面と、アルミ蒸着防水フイルム１５又はアルミ箔
等の熱反射層を貼着した外面とから成る両面段ボ
ールＦである。

第７図ないし第１０図は、上記エチレン吸着防
水フイルムｆ、アルミ蒸着エチレン吸着性防水フ
イルムf′、アルミ蒸着防水フイルム１５（熱反射
層）の組合せに加えて、更にプラスチツクフオー
ムの断熱シート１３、プラスチツククロス９、プ
ラスチツクエアーキヤツプの断熱シート１６を組
み入れた両面段ボールＦの各実施例である。な
お、各図において中芯５より上のライナは箱Ｃの
内面を形成し、下のライナは外面を形成するもの
である。

このように、保冷性を高めた保鮮箱において
は、エチレンガス濃度の高まりを抑制すること
と、保冷することの両作用により、生鮮野菜や果
物類の活性を有効に止め、さらに長期間に亘つて
その鮮度を保持できる。

なお、箱内側における、エチレン吸着性防水フ
イルム、熱反射層及び／又は断熱シート、並びに
段ボール構造体との各接合関係は、本考案の目的
を達成し得る限りは、部分貼りの関係であつても
よい。

また、箱内側の段ボール構造体表面における上
記エチレン吸着性防水フイルム、熱反射層及び／
又は断熱シートの積層順序は、箱の内面側より段
ボール構造体表面に向けてこの順序でさえあれば
よく、本考案の目的を達成し得る限り、箱の最内
面や上記積層間に第三の介在層が存することは何
ら支障がない。

〔考案の効果〕

以上説明したように、この考案の段ボール製の
保鮮箱によれば、次のような優れた効果がある。

１ 殊に、生鮮野菜や花、生鮮果実等を包装した
場合に、それから発生するエチレンガスがエチ
レン吸着性防水フイルムにより吸着されるた
め、その鮮度を保持することができる。

２ 内面が防水フイルムであるために、氷や保冷
剤の使用が可能であり、その保冷により内容物
の鮮度を保持できることはもちろん、植物から
のエチレンガスの発生を抑制してその鮮度を保
持することもできる。

３ 段ボールの断面における断熱構造として、エ
チレン吸着性防水フイルムの内側に熱反射層及
び／又は断熱シートを組み合わせてあるので、
エチレンの発生を抑制するための氷や保冷剤の
有効性が高くなる。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は第１の実施例を示し、第
１図は斜視図、第２図はその段ボールシートの拡
大断面図である。第３図および第４図はそれぞれ
第２および第３の実施例の斜視図、第５図ないし
第１０図は順次第４ないし第９の実施例に係る各
段ボールシートの拡大断面図である。 Ｆ……段ボール、ｆ……エチレン吸着性防水フ
イルム、f′……アルミ蒸着エチレン吸着性防水フ
イルム、１３……プラスチツクフオームの断熱シ
ート、１４……熱反射層としてのアルミ蒸着面、
１５……熱反射層を有するアルミ蒸着防水フイル
ム、１６……プラスチツクエアーキヤツプの断熱
シート。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 箱内側の段ボール構造体表面に、箱の内面側よ
   り順にエチレン吸着性防水フイルム、熱反射層及
   び／又は断熱シートをそれぞれ積層させてなるこ
   とを特徴とする段ボール製の保鮮箱。