JPH0519614Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は乗用車、産業建設機用車両などに採用
されるクラツチデイスクに関する。

（従来技術） 一般にこの種のクラツチデイスクは、ハブフラ
ンジに対して相対的に回動自在に配置されるクラ
ツチデイスクやリテイニングプレートなどのサイ
ドプレートを備えている。このハブフランジには
トーシヨンスプリングを収容する窓孔が形成され
ており、上記サイドプレートには、上記ハブフラ
ンジの窓孔に対向して円周方向に延びる角窓が形
成されている。

そして上記サイドプレートの角窓のクラツチデ
イスク内周側縁及び外周側縁は、それを形成する
際に反ハブフランジ側へ切り起こされてトーシヨ
ンスプリングを受ける庇を一体に備えている。

（考案が解決しようとする課題） ところがその構造では、クラツチデイスクが回
転している間、トーシヨンスプリングは遠心力を
受けてクラツチデイスクの半径方向外方へ張出
し、上記角窓のクラツチデイスク外周側縁に形成
された庇と強く摺接する。このため上記庇が摩耗
して損傷しやすくなる。そのような不具合を解決
するためにサイドプレートの板厚を充分厚く設定
することが考えられるが、クラツチデイスク全体
の質量が増加するので好ましくない。

さらに円周方向に長く延びるトーシヨンスプリ
ングを採用して滑らかな伝達トルクを得るため
に、角窓を極力クラツチデイスクの外周側部分に
配置する必要がある。

しかし、上記従来の構造では、サイドプレート
を切り起こして形成した庇でトーシヨンスプリン
グの遠心力を受けているので、庇の強度上、角窓
をクラツチデイスクの半径方向外側へ配置するこ
とが困難であつた。またそれらの課題を解決する
ために、剛性の高い材質でサイドプレートを形成
することも考えられるが、その場合にはサイドプ
レートの製造コストが著しく高くなる。

本考案は上記課題を解決することを目的として
いる。

（課題を解決するための手段） 上記課題を解決するために本考案は、ハブフラ
ンジに対して相対的に回動自在に配置されるサイ
ドプレートを備え、上記ハブフランジはトーシヨ
ンスプリングを収容する窓孔を備え、上記サイド
プレートは上記窓孔に対向して円周方向に延びる
角窓を備えたクラツチデイスクにおいて、上記角
窓のクラツチデイスク外周側縁を区画するサイド
プレート外周部は、その反ハブフランジ側面にク
ラツチデイスクの円周方向に延びて上記サイドプ
レート外周部を補強する剛性の高い金属プレート
を一体的に備え、上記金属プレートは、上記角窓
のクラツチデイスク外周側縁を覆つて上記トーシ
ヨンスプリングの外周部を受ける庇を一体に備え
たことを特徴としている。

（作用） トーシヨンスプリングに遠心力が作用し、クラ
ツチデイスクの半径方向外方へ張出すと、金属プ
レートほ庇は、トーシヨンスプリングの外周部を
受け止める。

（実施例） 本考案の断面部分図である第１図において、図
の左方を仮に前方としている。

第１図中、１０は筒状のハブで、その内周部が
トランスミツシヨンの入力軸でもある出力軸１１
の外周部にスプライン嵌合している。ハブ１０の
外周部には、ハブフランジ１２が一体に形成され
ている。ハブフランジ１２には、矩形の窓孔１３
が形成されている。窓孔１３は例えばハブフラン
ジ１２の同一円周上60°間隔を隔てたところに形
成されており、この窓孔１３内にトーシヨンスプ
リング１４がクラツチデイスクの回転方向（矢印
Ｒ方向）に伸縮自在に収容されている。

ハブフランジ１２の前面には、ハブ１０の外周
面に回動自在に嵌合する概ね環状のクラツチプレ
ート１５が配置されている。クラツチプレート１
５の外周部には、リベツト１６を介してクツシヨ
ニングプレート１７が固定されている。そしてク
ツシヨニングプレート１７の前後両面には、クラ
ツチデイスクの入力部材となる摩擦フエーシング
１８が張付けられており、プレツシヤプレート１
９によりフライホイール２０に押圧されてエンジ
ン側の回転力が入力される構造になつている。

ハブフランジ１２の背面には、ハブ１０の外周
面に回動自在に嵌合する概ね環状のリテイニング
プレート２１が配置されている。リテイニングプ
レート２１は、図外のスタツドピンによりクラツ
チプレート１５と一体的に回動自在に連結されて
いる。なお２８は周知のヒステリシス発生機構
で、ハブフランジ１２とリテイニングプレート２
１の間の内周部分に配置されている。またハブフ
ランジ１２とクラツチプレート１５の間の内周部
分にも概ね環状のヒステリシス発生用摩擦材２９
が配置されている。

両プレート１５，２１は、ハブフランジ１２の
窓孔１３に対向して矢印Ｒ方向に延びる角窓２
２，２３をそれぞれ備えている。各角窓２２，２
３のクラツチデイスク半径方向内側縁は、プレス
加工により反ハブフランジ１２側へ切り起こされ
て形成された庇２４，２５をそれぞれ一体に備え
ている。そして各角窓２２，２３のクラツチデイ
スク半径方向外側縁２６，２７は、本考案の骨子
である金属プレート３０，３１の庇３２，３３に
より覆われている。これら金属プレート３０，３
１は炭素工具鋼（例えばSK4）や、はだ焼鋼（例
えばSNC415）などの耐摩耗性、耐衝撃性に優れ
た剛性の高い材質により、それぞれ庇３２，３３
と一体に形成される。これら庇３２，３３は、組
立時において僅かな隙間をへだててトーシヨンス
プリング１４の外周部を覆つており、後述するよ
うにトーシヨンスプリング１４が遠心力を受けて
半径方向外方へ張出した時に、その外周部を受け
止めるためのものである。

第２図に示すように、金属プレート３０の円周
方向の幅W1は、角窓２２の円周方向の幅W2より
も幅W3だけ両端部３０ａが長く延びるように設
定されている。金属プレート３０の外周縁はクラ
ツチプレート１５の外周縁近傍部分に溶接されて
いる。これにより金属プレート３０は、角窓２２
のクラツチデイスク外周側縁を区画するクラツチ
プレート１５の外周部を補強する。特にこの実施
例においては、金属プレート３０の幅W1を角窓
２２の幅W2よりも幅W3だけ両端部３０ａが長く
延びるように設定しているので、クラツチプレー
ト１５の外周部の半径方向の長さL1を比較的短
く設定し、角窓２２、窓孔１３（第１図）の位置
を従来の構造よりも半径方向外側に設定すること
ができる。また庇３２はこの金属プレート３０と
一体に形成されているので、角窓２２、窓孔１３
（第１図）の位置を従来の構造よりも半径方向外
側に設定しても、トーシヨンスプリング１４の遠
心力を充分に受け止めることができる。

第３図は金属プレート３０の固着方法を示して
いる。４０は板状のゲージで、クラツチプレート
１５の角窓に対向する突起４１を備えている。突
起４１は断面で見て第１図、第２図で説明したト
ーシヨンスプリング１４と同一曲率半径を有する
外周面４２を備えている。そしてこの突起４１を
角窓２２に嵌合させて突起４１の外周面４２で金
属プレート３０の位置決めを行ない、金属プレー
ト３０の外周縁を溶接することにより、クラツチ
プレート１５と一体的に固着される。

第４図は第１図で説明したリテイニングプレー
ト２１及び金属プレート３１の分解斜視部分図を
示している。金属プレート３１の円周方向の幅
W3も、角窓２３の円周方向の幅W4よりも幅W6
だけ両端部３１ａが長く延びるように設定されて
いる。金属プレート３１の両端部３１ａ及びその
間には、一定間隔をへだてて４個のリベツト孔３
６が穿設されている。またリテイニングプレート
２１にも各リベツト孔３６に対向する孔３７が穿
設されている。そしてこれら孔３６，３７を通る
リベツト３８を組立後かしめることにより、金属
プレート３１はリテイニングプレート２１に固定
される。これにより金属プレート３１も、角窓２
３のクラツチデイスク外周側縁を区画するクラツ
チプレート外周部２３ａを補強する。

次に第１図により動作を説明する。

車両の運転中において、具体的には図示してい
ないクラツチ接続遮断機構のクラツチペダルを離
すと、図示のクラツチ遮断状態からプレツシヤプ
レート１９が前方へ移動し、摩擦フエーシング１
８をフライホイール２０へ押圧する。これにより
フライホイール２０の矢印Ｒ方向の回転力は、摩
擦フエーシング１８、クツシヨニングプレート１
７を介してクラツチプレート１５及びリテイニン
グプレート２１に伝達される。そして両プレート
１５，２１の角窓２２，２３の端面からトーシヨ
ンスプリング１４の端面に回転力が伝達される。
これによりトーシヨンスプリング１４は圧縮され
るので、両プレート１５，２１とハブフランジ１
２の間に相対的な捩れが生じ、両プレート１５，
２１の回転力がトーシヨンスプリング１４を介し
て滑らかにハブフランジ１２に伝達され、ハブ１
０を介して出力軸１１に至る。またヒステリシス
発生機構２８及び摩擦材２９にすべりが生じ、ヒ
ステリシストルクが発生する。

ハブフランジ１２と両プレート１５，２１との
捩れ角度が一定の値を越えると、ハブフランジ１
２及び両プレート１５，２１は一体的に回転す
る。この回転力によりトーシヨンスプリング１４
が遠心力を受けてクラツチデイスクの半径方向外
方へ張出すと、金属プレート３０，３１の庇３
２，３３はトーシヨンスプリング１４の外周部を
受け止める。そのため庇３２，３３は強い摩擦抵
抗を受けてトーシヨンスプリング１４と摺接する
が、両庇３２，３３は炭素工具鋼や、はだ焼鋼な
どの耐摩耗性、耐衝撃性に優れた剛性の高い材質
により形成されているので、トーシヨンスプリン
グの遠心力を充分に受け止めることができる。

しかもこの実施例においては、金属プレート３
０，３１の幅W1（第２図）、幅W4（第４図）をそ
れぞれ角窓２２，２３の幅W2（第２図）、幅W5
（第４図）よりも両端部３０ａ（第２図）、両端部
３１ａ（第４図）が長く延びるように設定してい
るので、クラツチプレート１５及びリテイニング
プレート２１の外周部の半径方向の長さL1，L2
をそれぞれ短く設定し、窓孔１３及び角窓２２，
２３の位置を従来の構造よりも半径方向外側に設
定することができる。従つて窓孔１３、角窓２
２，２３の円周方向の幅を長く設定し、トーシヨ
ンスプリング１４の高さを従来よりも高く設定で
きるので、一層大きな捩じりトルクを得ることが
でき、従来よりも滑かなトルク伝達特性を得るこ
とができる。

また庇３２は剛性の高い金属プレート３１と一
体に形成されているので、角窓２２、窓孔１３
（第１図）の位置を従来の構造よりも半径方向外
側に設定しても、上記トーシヨンスプリング１４
の遠心力を充分に受け止めることができる。

（考案の効果） 以上説明したように本考案によると、剛性の高
い金属プレート３０，３１により、各角窓２２，
２３のクラツチデイスク外周側縁を区画するサイ
ドプレート（クラツチプレート１５、リテイニン
グプレート２１）の外周部を補強しているので、
耐久性が向上し、サイドプレートの外周部の半径
方向の長さL1，L2をそれぞれ短く設定し、窓孔
１３及び角窓２２，２３の位置を従来の構造より
も半径方向外側に設定することができる。従つて
窓孔１３、角窓２２，２３の円周方向の幅を長く
設定し、トーシヨンスプリング１４の高さを従来
よりも高く設定できるので、一層大きな捩じりト
ルクを得ることができ、従来よりも滑かなトルク
伝達特性を得ることができる。

さらにこの剛性の高い金属プレート３０，３１
に庇３２，３３を一体に形成しているので、角窓
２２、窓孔１３（第１図）の位置を従来の構造よ
りも半径方向外側に設定しても、上記トーシヨン
スプリング１４の遠心力を充分に受け止めること
ができる。従つて従来のクラツチデイスクよりも
一層滑かな捩じり特性を得ることができる。

しかも各角窓２２，２３の半径方向外周側縁に
この金属プレート３０，３１を設けているので、
サイドプレート全体の材質を変更する場合に比べ
てコストを低減でき、クラツチデイスクの軽量化
を図ることも可能になる。

（別の実施例） 本考案を実施するに当たり、金属プレート３０
または金属プレート３１を溶接により固着する場
合には、両端部３０ａ（または両端部３１ａ）を
省略して軽量化を図ることも可能である。

また環状の金属プレートに庇を形成した構造を
採用してもよい。

さらにリベツトにより金属プレートをサイドプ
レートに固定する構造を採用する場合には、サイ
ドプレートのスタツドピンなどを利用して固定し
てもよい。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の縦断面図、第２図は本考案の
骨子を示す金属プレート及びクラツチプレートの
一部切欠き部分斜視図、第３図は本考案のクラツ
チプレート及びゲージの断面部分略図、第４図は
本考案の骨子を示す金属プレート及びリテイニン
グプレートの一部切欠き分解斜視部分図である。 １２……ハブフランジ、１５……クラツチプレ
ート（サイドプレート）、１４……トーシヨンス
プリング、１３……窓孔、２２，２３……角窓、
２１……リテイニングプレート（サイドプレー
ト）、３０，３１……金属プレート、３２，３３
……庇。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ハブフランジに対して相対的に回動自在に配置
   されるサイドプレートを備え、上記ハブフランジ
   はトーシヨンスプリングを収容する窓孔を備え、
   上記サイドプレートは上記窓孔に対向して円周方
   向に延びる角窓を備えたクラツチデイスクにおい
   て、上記角窓のクラツチデイスク外周側縁を区画
   するサイドプレート外周部は、その反ハブフラン
   ジ側面にクラツチデイスクの円周方向に延びて上
   記サイドプレート外周部を補強する剛性の高い金
   属プレートを一体的に備え、上記金属プレート
   は、上記角窓のクラツチデイスク外周側縁を覆つ
   て上記トーシヨンスプリングの外周部を受ける庇
   を一体に備えたことを特徴とするクラツチデイス
   ク。