JPH05171343A - 高強度高靱性高温圧力容器用鋼 - Google Patents

高強度高靱性高温圧力容器用鋼

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JPH05171343A
JPH05171343A JP3342906A JP34290691A JPH05171343A JP H05171343 A JPH05171343 A JP H05171343A JP 3342906 A JP3342906 A JP 3342906A JP 34290691 A JP34290691 A JP 34290691A JP H05171343 A JPH05171343 A JP H05171343A
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Tomoya Koseki
智也 小関
Fumimaru Kawabata
文丸 川端
Kenichi Amano
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 靭性が高く、しかも高温のみならず低温域で
も優れた強度を示す高温圧力容器用鋼を安価に提供する
こと。 【構成】 Moの含有量を0.005 〜0.35wt%に低くすると
同時に、B,Alを添加し、さらにCと炭化物形成元素
(Mo, Cr, V, Nb)との関係が、C−(0.06Mo+0.08Cr
+0.18V) ≧0.06 となるように成分調整した鋼組成と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高温強度および靱性
に優れた高温圧力容器用鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】300 ℃を超えるような高温で使用される
圧力容器用鋼材としては、従来、1/2Mo鋼やMn−Mo鋼、M
n−Ni−Mo鋼などが用いられている。しかし、この種の
既知高温高圧容器用鋼の場合、高温強度を確保するため
一般に多量のC量を含有させるのが普通である。そのた
め、このCの多量添加に伴って鋼の溶接性や加工性が劣
化し、あるいは溶接部の靱性が劣化するという大きな問
題点があった。
【0003】これに対し、最近、これら問題点を解決す
るいくつかの提案がなされている。例えば、特開昭59−
153866号公報には、0.5 wt%Mo含有鋼を基本とし、この
鋼にCr, Nb, Vを複合添加した高強度高靱性圧力容器用
鋼が開示されており、特開昭59−153867号公報には、Mn
−Mo鋼を基本とし、低C化およびCrとNb又はVを複合添
加した溶接性に優れた高靱性圧力容器用鋼が開示されて
おり、また特開昭62−37342 号公報には、0.5 wt%Mo含
有鋼を基本とし、この鋼について低C化とCr,V,Bの
微量添加により靱性、高温強度を改善した高温高圧容器
用鋼が開示提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した既
知の高温圧力容器用鋼についての発明者らの研究によれ
ば、これらの鋼材の引張強度(TS)の高温特性は、図1に
示すように、初めに温度の上昇とともに急激に減少し、
その後温度の上昇に伴って約300 ℃程度では逆に上昇し
てピークを示し、そしてこの温度が350 ℃以上になる
と、温度上昇にほぼ比例して次第に減少する傾向のある
ことが判った。
【0005】この現象についての本発明者らの考えで
は、最初の100 〜200 ℃の急激な引張強度TSの減少は、
鋼材の回復現象によるものであり、その後の200 〜300
℃における引張強度TSの上昇は、炭化物の析出によるも
のであると考えている。
【0006】もちろん、この発明で対象としている高温
圧力容器用鋼というのは、一般に300 ℃を超える温度域
で使用されるのが普通であるが、100 〜200 ℃の温度域
ではTSが低くてもよいという理由はなく、事実この種の
鋼も低温域で使用される場合も多い。それ故に、従来こ
の種の鋼について低温(100〜200 ℃) 域でも高いTSを確
保するような努力が払われており、その方法としてCr,
Mo, V等の強化元素を比較的多量に添加して常温TSの改
善を図る方法が、採用されていた。
【0007】しかしながら、このような方法では、Cr,
Mo, V等の添加元素を多く使用するために、溶接性の劣
化を招く他、コスト高になるという欠点を招いた。
【0008】この発明は、このような従来技術が抱えて
いる問題点を解決し、靱性が高く、しかも高温のみなら
ず低温域でも優れた強度を示す高温圧力容器を安価に提
供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述した従来技術の抱え
ている技術的課題を解決するべく鋭意研究した結果、発
明者らはその解決手段として有効と思われる次のような
知見を得た。すなわち、種々の成分組成の焼入れ焼きも
どし鋼材について、それの高温強度特性を調査したとこ
ろ、鋼材の200 , 350 ℃の高温強度と、炭素および炭化
物形成元素との関係〔C−(0.06Mo+0.08Cr+0.18
V)〕とは図2に示すような関係のあることが判った。
【0010】この図は、縦軸に室温TSからの低下量を示
し、また横軸に添加したC量から炭化物形成元素である
Mo, Cr, Vが全て炭化物になったものとしてその炭化物
中のC量を引いた値を示したものであるが、C−(0.06
Mo+0.08Cr+0.18V)が0.06以上では、200 ℃における
室温TSからの低下量が、小さくなることが判ったのであ
る。
【0011】この現象の根拠については明確ではない
が、発明者らの考えでは、C−(0.06Mo+0.08Cr+0.18
V)が0.06以上では、焼入れ焼きもどし後も固溶してい
るCがかなりあり、そのため鋼材の回復現象が抑制さ
れ、200 ℃におけるTSの低下量が少なくなるためであ
る。また、この固溶Cのため200 ℃より高温の温度域、
例えば350 ℃でも析出する炭化物がまだ残っており、こ
の温度域(350℃) でのTSの低下量も小さくなっている。
【0012】このような知見に基いて、本発明は、 C : 0.07 〜0.20wt%、 Si : 0.10 〜0.7 wt%、 Mn : 0.8 〜2.0 wt%、 Cr : 0.05 〜0.40wt%、 Ni : 0.40 〜2.00wt%、 Mo : 0.05 〜0.35wt%、 V : 0.01 〜0.05wt%、 B : 3〜20 ppm、 Al : 0.04 〜0.1 wt%、 N≦ 40 ppm 、 P≦ 0.020wt% および S≦ 0.005wt% を含有し、かつ炭素および炭化物形成元素が C−(0.06Mo+0.08Cr+0.18V) ≧0.06 の関係を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純
物からなる高強度高靱性高温圧力容器用鋼(第1発
明)、 C : 0.07 〜0.20wt%、 Si : 0.10 〜0.7 wt%、 Mn : 0.8 〜2.0 wt%、 Cr : 0.05 〜0.40wt%、 Ni : 0.40 〜2.00wt%、 Mo : 0.05 〜0.35wt%、 V : 0.01 〜0.05wt% B : 3〜20 ppm、 Al : 0.04 〜0.1 wt%、 N≦ 40 ppm 、 P≦ 0.020wt% および S≦ 0.005wt% を含有し、かつ Cu : 0.05 〜0.30wt%、 Nb : 0.005
〜0.05wt%のいずれか1種または2種を含有し、そし
て、炭素および炭化物形成元素が C−(0.06Mo+0.08Cr+0.18V+0.13Nb) ≧0.06 の関係を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純
物からなる高強度高靱性高温圧力容器用鋼(第2発
明)、に想到したのである。
【0013】
【作用】以下に各発明鋼の成分組成を上記のように限定
した理由について、その詳細を添加の作用, 効果ととも
に説明する。
【0014】C : 0.07 〜0.20wt% 高温強度を確保するためには、Cは0.07wt%以上が必要
である。しかしながら、多量に添加すると靱性の劣化、
および耐低温割れ性等の溶接性が劣化するので、その上
限を0.20wt%とした。
【0015】Si : 0.10 〜0.7 wt% 脱酸剤として必要な元素であり、また強化元素としても
有効な元素である。その量が、0.10wt%未満では上記の
効果がなく、一方0.7 wt%を超えて添加すると母材靱性
を劣化させるため、その範囲を0.10〜0.70wt%とした。
【0016】Mn : 0.8 〜2.0 wt% 焼入れ性を向上させ、また強度、靱性を向上させるのに
必要な元素である。その量が 0.8wt%未満では上記の効
果が得られず、一方 2.0wt%を超える添加は溶接性を大
きく劣化させ溶接熱影響部の硬さを著しく高くするた
め、その範囲を0.8 〜2.0 wt%とした。
【0017】Cr : 0.05 〜0.40wt% 焼入れ性を増加させ、また炭化物として析出して高温強
度の向上に効果がある。この量が0.05wt%未満では上記
の効果がなく、一方0.40wt%を超える添加は溶接性、靱
性を劣化させるので、0.05〜0.40wt%の範囲で添加する
必要がある。
【0018】Ni : 0.40 〜2.00wt% 焼入れ性を向上させ、靱性を改善する元素である。その
量が、0.40wt%より少ないと焼入れ性が十分でなく、一
方2.00wt%より多い添加は得られる効果に比較してコス
トアップによるデメリットがあるので、0.40〜2.00wt%
の範囲にする必要がある。
【0019】Mo : 0.05 〜0.35wt% 焼入れ性を増加させ、また炭化物として析出し高温強度
の向上させると同時に、焼きもどし脆化を防止する元素
である。その量が0.05wt%未満では上記の効果がなく、
一方0.35wt%を超える添加は溶接部靱性を劣化させ、ま
た著しく溶接性を阻害し、またSR割れを起こし、同時に
経済性を低下させるので、0.05〜0.35wt%の範囲にする
必要がある。
【0020】V : 0.01 〜0.05wt% 炭化物として析出し常温、高温強度の向上に効果があ
る。その量が、0.01wt%未満では上記の効果がなく、一
方0.05wt%を超える添加は溶接性、靱性を劣化させるの
で、0.01〜0.05wt%の範囲にする必要がある。
【0021】B : 3〜20 ppm 焼入れ性を向上させ、強度と靱性確保に有効な元素であ
る。その量が3ppm 未満では上記の効果がなく、一方20
ppm を超えると溶接性の劣化をまねくため、3〜20ppm
の範囲内で添加する必要がある。
【0022】Al : 0.04 〜0.1 wt% 脱酸剤として必要な元素であり、かつ固溶NをAlとして
固定するため、組織微細化による靱性向上、またB添加
の効果を助成する効果があるが、0.04wt%未満ではその
効果が得られず、一方0.1 wt%を超えると熱間加工時の
延性低下を招くため、その範囲は0.04〜0.1 wt%とし
た。
【0023】N : 0.0040 wt%(40ppm) 以下 BあるいはAlと親和力が強いため窒化物を形成する。BN
が形成されるとBの焼入れ性改善効果が失なわれるた
め、Al添加に加えてN量を低減することが重要である。
したがって、焼入れ性改善のため40ppm 以下に制限す
る。
【0024】以上の主要成分に対し、さらなる高温強
度、靱性の向上を目指す場合には以下の範囲内で、さら
にCuおよびNbのいずれか一種または二種添加してもよ
い。
【0025】Cu : 0.05 〜0.30wt% 固溶して常温、高温強度を高めるのに有効な元素であ
る。その量が0.05wt%未満では上記の効果が少なく、一
方の0.30wt%を超えて多量に添加すると鋼板製造時の表
面きず、また加工時の熱間加工割れを招くため、0.05〜
0.30wt%の範囲で添加する。
【0026】Nb : 0.005〜0.05wt% 微細な炭(窒)化物を形成し、組織の微細化を計り、靱
性向上と、析出強化による常温、高温強度の向上をもた
らす元素である。その量が0.005 wt%未満では上記の効
果が少なく、一方0.05wt%を超える添加は溶接性を損な
うため、0.005〜0.05wt%の範囲とした。
【0027】なお本発明において、Nbを添加する場合
は、このNbも炭化物形成元素であるため、前記式; C−(0.06Mo+0.08Cr+0.18V) ≧0.06% は次のようになる。 C−(0.06Mo+0.08Cr+0.18V+0.13Nb) ≧0.06%とす
る。
【0028】上記式が0.06未満では、高温での引張強さ
が常温にくらべ低下が著しい。なお、硫化物形態制御元
素、例えばCa, REM, Zr などの添加は本発明の効果を損
なうものではないので必要に応じて添加してもよい。ま
た、本発明鋼を製造するにあたっては、常法に従って溶
製・鋳造・熱間・冷間圧延を施すが、熱処理時は、Ac3
点以上より空冷または強制冷却し、(場合によってはさ
らにAc3 点以上に再加熱後空冷または強制冷却し、)そ
の後Ac1 点以下での焼きもどしを経るのが、好ましい実
施の態様である。
【0029】P : 0.020wt%以下 不純物元素として不可避的に含有される元素であり、少
ない方が望ましくその量が0.020 wt%を超えると、低温
靱性、SR脆化および焼きもどし脆化を起こすため、上限
を0.020 wt%とする。
【0030】S : 0.005wt%以下 不純物元素として不可避的に含有される元素であり、材
質の劣化、材質の異方性を招くため、その上限を0.005
wt%とする。
【0031】
【実施例】この実施例における供試材の化学成分を表1
に示す。また、表2には供試材の機械的性質についての
結果を示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】これらの鋼はいずれも焼入れ焼きもどしに
より製造され、機械的性質は1/4t部、C方向について調
べたものである。なお、溶接割れ試験のSR割れは、斜
めY形溶接われ試験(JIS Z 3158, 30mm)、また低温割れ
の停止温度は、斜めY形溶接われ試験(JIS Z 3158, 30m
m)により、それぞれ評価したものである。
【0035】表2に示す結果から明らかなように、比較
鋼1は、Cr, Bが無添加であり本発明の範囲外であるた
め、高温におけるTSの低下量は小さいものの、常温強度
が低く、また焼入れ性が低いため衝撃特性も劣ってい
る。比較鋼2は、Ni量が、本発明の範囲よりも少なくや
はり衝撃特性が劣っている。比較鋼3は、C−(0.06Mo
+0.08Cr+0.18V)の値が0.06より小さく、常温TSから
の低下量が大きい。比較鋼4は、Mo量が本発明の範囲よ
り多く、溶接割れ性に劣っている。これに対し本発明鋼
5〜9は、成分組成の範囲が本発明の範囲内であり、常
温強度、衝撃特性がともに優れており、また常温TSから
の低下量も少ない。本発明鋼10,11は、それぞれNb、Nb
+Cuを添加したものであり、常温強度、衝撃特性が優れ
ており、また常温TSからの低下量も少ない。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、高
温強度と靱性がともに優れ、とくに溶接性を解決する高
温での強度低下の小さい高強度高靱性高温圧力容器用鋼
を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高温圧力容器用鋼の強度についての温度特性を
示すグラフである。
【図2】鋼材の高温強度とC−(0.06Mo+0.08Cr+0.18
V)との関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川端 文丸 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株式 会社技術研究本部内 (72)発明者 天野 虔一 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株式 会社技術研究本部内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C : 0.07 〜0.20wt% Si : 0.1
    0 〜0.7 wt%、 Mn : 0.8 〜2.0 wt% Cr : 0.05 〜0.40wt%、 Ni : 0.40 〜2.00wt% Mo : 0.05 〜0.35wt%、 V : 0.01 〜0.05wt% B : 3〜20 ppm、 Al : 0.04 〜0.1 wt% N≦ 40 ppm 、 P≦ 0.020wt% および S≦ 0.005wt% を含有し、かつ炭素および炭化物形成元素が C−(0.06Mo+0.08Cr+0.18V) ≧0.06 の関係を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純
    物からなる高強度高靱性高温圧力容器用鋼。
  2. 【請求項2】 C : 0.07 〜0.20wt%、 Si : 0.1
    0 〜0.7 wt%、 Mn : 0.8 〜2.0 wt%、 Cr : 0.05 〜0.40wt%、 Ni : 0.40 〜2.00wt%、 Mo : 0.05 〜0.35wt%、 V : 0.01 〜0.05wt%、 B : 3〜20 ppm、 Al : 0.04 〜0.1 wt%、 N≦ 40 ppm 、 P≦ 0.020wt% および S≦ 0.005wt% を含有し、かつ Cu : 0.05 〜0.30wt% Nb : 0.005〜0.05wt% のいずれか1種または2種を含有し、そして、炭素およ
    び炭化物形成元素が C−(0.06Mo+0.08Cr+0.18V+0.13Nb) ≧0.06 の関係を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純
    物からなる高強度高靱性高温圧力容器用鋼。
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