JP3223543B2 - 高耐食性・高強度ボルト用鋼材 - Google Patents

高耐食性・高強度ボルト用鋼材

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐食性及び耐遅れ破壊
性に優れ、且つ130kgf/mm2以上の引張強さを有する高耐
食性・高強度ボルト用鋼材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、特に自動車等の車輛業界では、燃
費向上や排ガス量低減のための車体重量の軽量化あるい
はエンジンの高出力化に対応することを目的として高強
度鋼材の需要が高まっている。一方従来の高強度鋼材で
は、引張強さが130kgf/mm2を超えるあたりから遅れ破壊
感受性が急激に高まるという欠点がある。遅れ破壊を生
じ易くする原因の一つに部材自体の形状に由来する応力
集中が挙げられるが、ボルトにはねじ部や首下部といっ
た大きな応力集中部が存在するため、遅れ破壊の問題が
一層顕著に現われてくる。
【0003】また一般にボルト等は、防錆や美感向上を
目的としてめっき処理されることが多いが、めっき工程
で受ける水素侵入による水素脆化も加わって遅れ破壊を
起こす危険が更に著しくなる。そのため強度に主眼を置
く自動車用等のボルトでは、防錆や美感等を犠牲にして
あえてめっきを施さないといった対策も講じられてい
る。
【0004】この様にボルトは非常に遅れ破壊を起こし
易い部材であるので、高強度化の要請が強いにもかかわ
らず、耐遅れ破壊性を確保することの必要上引張強さは
120kgf/mm2程度が上限とされている。こうしたことは、
JIS B 1051に規定される「ボルト小ねじの機械的
性質」においても、過去に140kgf/mm2級の「14.9」まで
規格化されていたものが、遅れ破壊の問題がクローズア
ップされるに及び「14.9」が削除され、現在における規
格の上限が120kgf/mm2級の「12.9」に下げられた経緯に
よっても知ることができる。更に高強度ボルト用鋼材で
は、高強度と高靭性の2つの要求特性を満足させるた
め、一般鋼材に比べて合金元素の添加量が多く、ボルト
成形時の冷間加工性が悪いという問題も指摘されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、ボル
ト成形時の冷間加工性に優れ、焼入れ焼戻し後の遅れ破
壊感受性が低く、且つ耐食性が良好であってボルト成形
後のめっき処理を必要としない高強度ボルト用鋼材を提
供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る高耐食性・高強度ボルト用鋼材の
構成は、C:0.30〜0.50%、Mn:0.20〜0.60%、C
r:2.0 〜3.5 %、Mo:0.3 〜1.0 %、Cu:0.05〜
0.30%、Ni:0.1 〜1.0 %(但しNi/Cu≧2)、
Al:0.01〜0.06%の要件を満たすと共に、残部がFe
及び不可避不純物で特にSi:0.10%以下、P:0.01%
以下、S:0.01%以下であり、あるいは更に他の成分と
してTi:0.01〜0.07%、B:0.0005〜0.003 %及び
V:0.02〜0.10%よりなる群から選択される少なくとも
1種の元素を含有し、450 ℃以上の高温で焼戻し処理し
た後の引張強さが130kgf/mm2以上を示すものであるとこ
ろに要旨を有するものである。
【0007】
【作用】本発明者らは上記の様な課題のもとで、ボルト
成形時の冷間加工性や耐食性及び耐遅れ破壊性を満足し
つつ、焼戻し処理後の引張強さを130kgf/mm2レベル以上
に高めることを目的として、鋼材の構成元素を主体にし
て遅れ破壊、耐食性、強度、冷間加工性に及ぼす各種元
素の影響を詳細に検討した。その結果、以下に示す様な
事実を確認した。
【0008】遅れ破壊は粒界破壊が支配的であり、耐
遅れ破壊性を高めるには粒界強度を高めることが有効と
考えられる。そこで本発明では粒界強度を高めるための
手段として、まず第1に粒界に偏析し易い元素であるP
及びMn量を低減することが有効であること、また第2
に結晶粒微細化元素であるAl及びTiを適量含有させ
れば、結晶粒が微細化して粒界面積が拡大すると共に、
上記PやMn等の偏析成分も分散され、粒界強度が高め
られることを知った。しかも結晶粒が微細化すると、当
該鋼材自身の靭性が向上してクラックの発生が抑えられ
るばかりでなく、発生したクラックの伝播及び進展も抑
えられ、遅れ破壊の向上に好結果をもたらす。
【0009】高強度ボルト用鋼として必要な強度を確
保しつつ十分な耐食性を得るには、通常の強化元素であ
るC,Mn,Mo等を適量含有させると共に、耐食性向
上元素であるCrやCuを適量含有させる必要がある。
殊にCrは優れた耐食性改善効果を有しており、通常は
10%以上添加されている。しかしながら高強度ボルト用
鋼でこの様に多量のCrを添加すると、冷間加工性が著
しく低下してボルト成形が困難になるばかりでなく、鋼
材コストも高くなる。従って高強度ボルト用鋼において
は、冷間加工性を考慮してCr添加量を少なめに抑える
べきであり、耐食性不足は他の元素の添加によって補う
べきである。この様なところから本発明では、Cr含有
量をステンレス鋼レベルよりもはるかに少い2〜3.5 %
の範囲に抑えると共に、冷間加工性に悪影響を及ぼす他
の元素であるSi量も極力少なくし、耐食性については
冷間加工性を阻害しない耐食性向上元素であるCuを適
量含有させることによって耐食性と冷間加工性の両立を
図っている。尚Cuは熱間加工性を悪くする傾向がある
が、こうした問題は、Cuと共に適量のNiを複合添加
することによって回避することができる。
【0010】遅れ破壊を生ずる他の因子として焼戻し
脆性があり、高強度ボルト用鋼材では該焼戻し脆化温度
域での脆化を防止する必要がある。そこで本発明では、
焼戻し脆化抑制元素であるCr,Mo,Ni,V等を適
量添加すると共に、焼戻し脆化促進元素であるSi量を
低減し、これらにより焼戻し脆化を抑え450 ℃以上の高
温焼戻し処理後の引張強さを130kgf/mm2以上に高めてい
る。
【0011】本発明では上記〜を湊合することによ
り、素材としての冷間加工性が良好で且つ優れた耐食性
及び耐遅れ破壊性を有し、しかも450 ℃以上の焼戻しに
よって130kgf/mm2以上の引張強さを示す高強度ボルト用
鋼を得ることに成功したものである。以下、本発明で規
定する各構成元素の作用及び含有率を定めた理由を詳細
に説明する。
【0012】C:0.30〜0.50% Cは高強度ボルト用鋼に必要な強度と焼入性を与えるの
に欠くことのできない元素であり、0.30%未満では450
℃以上で焼戻し処理した後の引張強さを130kgf/mm2以上
に高めることができなくなる。しかし0.50%を超えると
鋼材の靭性が低下し、耐遅れ破壊性が悪くなる。 Si:0.10%以下 Siは不可避不純物として混入するほか脱酸元素として
積極的に添加されることも多いが、Si脱酸鋼並みの0.
2 %程度の量を含む鋼材はボルト成形時の冷間加工性が
非常に悪く、且つSiは鋼の靭性及び耐遅れ破壊性にも
悪影響を及ぼすので、目的達成のためには0.10%以下に
抑えなければならない。
【0013】Mn:0.20〜0.60% Mnは鋼材溶製時の脱酸・脱硫剤として作用すると共
に、強化元素として高強度化にも寄与するものであり、
0.20%未満ではそれらの作用が有効に発揮されない。し
かし多過ぎると加工性が悪化するばかりでなく、靭性及
び耐遅れ破壊性にも悪影響を及ぼすので0.60%以下に抑
えなければならない。 P:<0.01%,S:<0.01% Pは耐食性の向上に寄与するという効果を有している
が、粒界に偏析して粒界強度を弱め、遅れ破壊感受性を
高めるというボルト用鋼では致命的な欠陥を生ずる原因
になる。従ってPは0.01%以下に抑えなければならな
い。またSはMnS等の硫化物系非金属介在物を形成
し、加工性及び耐遅れ破壊性を劣化させる要因となるの
で、こうした問題を避けるには0.01%以下に抑えなけれ
ばならない。
【0014】Cr:2.0 〜3.5 % Crは強化元素として作用し焼入性を高めると共に、焼
戻し軟化抵抗を高めて焼戻し脆性域での焼戻し脆化を抑
え、更には耐食性を高めるうえでも欠くことのできない
成分であり、2.0 %以上含有させなければならない。し
かし多過ぎると冷間加工性が低下するばかりでなく、靭
性が低下して耐遅れ破壊性にも悪影響を及ぼす様になる
ので、3.5 %以下に抑えなければならない。 Mo:0.3 〜1.0 % Moは鋼の焼入性を高め、強度及び靭性の向上に寄与す
ると共に、焼戻し軟化抵抗を高めて焼戻し脆化を抑える
作用がある。Mo量が0.3 %未満ではこうした効果が有
効に発揮されず、焼戻し脆化温度域を避けた高温焼戻し
処理後のボルト強度を130kgf/mm2レベル以上に高め難く
なる。しかしこうした効果は1.0 %程度で飽和し、それ
以上添加することは経済的に全く無駄であるので、1.0
%を上限とする。 Cu:0.05〜0.30% Cuは、Cr含有量を少なく抑えたことによる耐食性不
足を補うものとして添加されるものであり、めっきなし
で十分な耐食性を得るには0.05%以上含有させなければ
ならない。しかし多過ぎると靭性及び耐遅れ破壊性を悪
くするばかりでなく、熱間加工性にも悪影響が現れてく
るので、0.30%以下に抑えるべきである。
【0015】Ni:0.1 〜1.0 % Niは、上記Cuの添加に伴なう熱間加工性の低下を軽
減すると共に、靭性、殊に低温靭性を高める作用を有す
るものであり、これらの作用を有効に発揮させるには0.
1 %以上含有させなければならない。しかしそれらの添
加効果は1%程度で飽和し、それ以上添加してもコスト
アップを招くだけであるので、Niの上限は1.0 %と定
めた。尚Niは、上記の様にCu添加によって生ずる熱
間加工性の低下を軽減する点に大きな添加目的を有する
ものであり、こうした目的を有効に発揮させるには、N
i含有量をCu含有量に対して2倍以上[即ちNi/C
u≧2]とする必要がある。 Al:0.01〜0.06% Alは脱酸性元素として作用すると共に、結晶粒の粗大
化を抑えて粒界破壊による遅れ破壊を抑制する作用を有
するものであり、0.01%未満ではこれらの作用が有効に
発揮されない。しかし多過ぎると酸化物系介在物量が増
大して疵の増加及び靭性低下の原因となるので、0.06%
以下に抑えなければならない。
【0016】Ti:0.01〜0.07%,B:0.0005〜0.003
%,V:0.02〜0.10%の1種以上 これら3種の元素は本発明において必須成分という訳で
はないが、これらは以下に示す様な作用によりボルト用
鋼材としての靭性及び耐遅れ破壊性を一段と改善し、性
能を更に高める効果がある。即ちTiは結晶粒を微細化
して粒界面積を拡大すると共に粒界偏析成分を分散させ
て粒界強度を高め、耐遅れ破壊性の向上に寄与する。こ
うした効果は0.01%以上の添加で有効に発揮されるが、
多過ぎると非金属介在物を形成して遅れ破壊をむしろ助
長する傾向も表われてくるので、0.07%以下に抑えるべ
きである。またBは太径のボルトを製造する場合に特に
その効果を発揮するものであり、これを0.0005%以上添
加することによって焼入れ性が向上し芯部まで容易に焼
入れを行える様になる。しかし多過ぎると不純介在物と
なって疵の増加及び靭性低下の原因になるので、0.003
%以下に抑えるべきである。Vは焼戻し軟化抵抗を増大
して耐遅れ破壊性を高めるのに有効な元素であり、その
効果は0.02%以上添加することによって有効に発揮され
る。しかし多過ぎると不純介在物として作用し靭性及び
耐遅れ破壊性をかえって悪化させるので、0.1 %以下に
抑える必要がある。
【0017】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明の構成及び作用
効果をより具体的に説明する。表1,2に示す如く化学
成分の異なる種々のボルト用鋼を溶製し、直径22mmに熱
間圧延した後球状化焼なまし処理を行ない、次いで伸線
加工した後、据込試験を行なって加工率60%における割
れ発生率と変形抵抗を測定した。また伸線加工後の各供
試鋼材を焼入れ焼戻し処理して引張強さ150kgf/mm2を目
標に調質した後、夫々について機械的性質、遅れ破壊強
さ及び腐食減量を調べた。
【0018】尚引張試験用としては、平行部の直径が14
mmであるJIS4号試験片を使用し、衝撃試験にはJI
S 3号衝撃試験片を用いた。また遅れ破壊試験には、
図1の首下切付き試験片を使用し、水中環境下で200 時
間放置した後の遅れ破壊強さを求めた。耐食性は、自動
車の使用環境で最も厳しいとされる塩水環境を想定し、
3か月間の塩水噴霧試験後の腐食減量によって評価し
た。結果を表3,4に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】表1〜4より次の様に考察することができ
る。No.1〜3はC量の影響を調べたものであり、適正
量のCを含む No.1に対しC量が不足する No.2では、
焼戻し温度を400 ℃に抑えた場合でも128kgf/mm2の引張
強さしか得られておらず、また焼戻し温度が低いため遅
れ破壊強さも No.1に比べて低い。またC量が多過ぎる
No.3は、割れ発生率や変形抵抗として表われる冷間鍛
造性が悪く、ボルトの頭部成形を満足に行なえないこと
が予想される。 No.4はSi量が多過ぎるものであり、
耐食性は良好であるが割れ発生が10%となっており、冷
間鍛造性に問題がある。
【0024】No.5,6はMn量の影響を調べたもので
あり、Mn量が不足する No.5は No.1の実施例に比べ
て引張強さがやや低く、また脱硫不足によりS含有量も
やや高くなっており、冷間鍛造性にやや問題があると思
われる。またMn量が多過ぎる No.6でも割れの発生が
見られると共に遅れ破壊強さが不足気味となっている。
【0025】No.7,8はP量またはS量が多過ぎる比
較例であり、冷間鍛造時の割れ発生率が高く且つ遅れ破
壊強さも乏しい。 No.9〜11はMo量の影響を調べたも
のであり、Mo量が不足する No.9では焼戻し軟化抵抗
が小さいため、焼戻し温度を500 ℃としたときの引張強
さが目標レベルまで上がらず、高強度ボルト用鋼として
は強度不足である。 No.10は本発明の規定範囲内でMo
量を高めにしたものであり、焼戻し軟化抵抗が大きいた
め550 ℃といった高めの焼戻し温度を採用した場合でも
150kgf/mm2レベルの引張強さが得られている。 No.11は
Mo量を更に増大したものであり、焼戻し軟化抵抗や遅
れ破壊強さは良好であるが、Mo量が多過ぎるため変形
抵抗が高く、冷間鍛造性に問題が生じてくる。
【0026】No.12〜14はNi量の影響を調べたもので
あり、Ni量が不足する No.12では低温衝撃値が低く、
寒冷地での使用に不安がある。 No.14はNiを過剰添加
したものであるが、低温衝撃値は、規定範囲のNiを添
加したものと殆んど変わらず経済的に無駄であることが
分かる。
【0027】No.15,16はAl量の影響を調べたもので
あり、Al量が不足する No.15では脱酸不足による割れ
発生が見られ、一方Al量が多過ぎる No.16では、アル
ミナ等の酸化物系介在物の増大によって表面傷が増加
し、冷間鍛造性や遅れ破壊強さも低くなっている。 No.
17〜 19 は特にTiの添加効果を調べたものであり、適
量のTiを添加すると( No.18)、Tiの結晶粒微細化
効果により遅れ破壊強さが向上することを確認できる。
しかしNo.19 の様にTi量が多過ぎると、粗大な窒化物
系介在物を形成して冷間鍛造性や耐遅れ破壊性をかえっ
て悪化させる。
【0028】No.20,21はVの添加効果を調べたもので
あり、適量のVを添加した No.20では、焼戻し軟化抵抗
の増大により550℃の高温焼戻しでも150kgf/mm2レベル
の引張強さが得られており、また高温焼戻しと結晶粒微
細化効果により遅れ破壊強さも向上している。しかし規
定量を超えるVを添加した No.21では、不純介在物の増
大により低温衝撃強さ、冷間鍛造性及び遅れ破壊強さが
いずれも著しく悪化している。
【0029】No.22〜24はCr量の影響を調べたもので
あり、Cr量が不足する No.22では腐食減量の増大によ
り耐食性不足を確認することができ、一方Cr量が多過
ぎるNo.24では、割れ発生率及び変形抵抗として現われ
る冷間鍛造性が悪化している。 No.25,26はCu量の影
響を調べたものであり、Cu量の少ない No.25は、 No.
1(本発明鋼)に比べて腐食減量が大きく耐食性に欠け
る。またCu量が規定範囲を超える No.26では、耐食性
は良好であるが、衝撃特性、遅れ破壊強さ及び冷間鍛造
性に劣る。
【0030】次に図1は、鋼中のCr量と腐食減量及び
変形抵抗の関係を整理してグラフ化したものである。但
し、鋼材の基本組成はC:0.42%、Si:0.05%、M
n:0.45%、P:0.006 %、S:0.006 %、Mo:0.50
%、Cu:0.10%、Ni:0.30%、Al:0.030 %とし
た。この図からも明らかである様に、Cr量を増やすに
つれて腐食減量は減少し耐食性が向上するのに対し、変
形抵抗は逆に増大し加工性が悪くなる。そしてCr量を
2〜3.5 %の範囲に設定してやれば、耐食性と加工性を
いずれも満足させることができる。
【0031】また図2は、熱間加工性に影響を与えるN
i/Cu比の関係を示したグラフである。但し、基本組
成はC:0.42%、Si:0.05%、Mn:0.45%、P:0.
006%、S:0.006 %、Mo:0.50%、Cu:0.01〜0.1
3%、Ni:0〜0.60%、Al:0.03%とした。尚割れ
発生率は、加工温度1000〜1100℃で加工率90%の据込試
験を行なったときの割れ発生状況によって求めた。この
図からも明らかである様に、Ni/Cu比を2以上に設
定すれば、熱間加工時における割れの発生をほぼ完全に
防止し得ることが分かる。
【0032】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、前
述の如く鋼材の成分組成を特定することによって、ボル
トへの成形加工性が良好であると共に、めっきなしでも
優れた耐食性を示し、且つ優れた耐遅れ破壊性を有する
と共に高温焼戻しを行なった場合でも130kgf/mm2レベル
以上の引張強さを与える高強度ボルト用鋼材を提供し得
ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼材中のCr含有量と腐食減量及び変形抵抗の
関係を示すグラフである。
【図2】鋼中のNi/Cu比と熱間加工時の割れ発生率
の関係を示すグラフである。
【図3】遅れ破壊試験片の寸法、形状を示す図である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−114551(JP,A) 特開 昭49−9423(JP,A) 特開 昭49−121718(JP,A) 特開 昭49−112822(JP,A) 特開 昭55−2785(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 301 C21D 6/00 C21D 9/00 C22C 38/44 C22C 38/54

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.30〜0.50%(重量%を意味する:
    以下同じ)、Mn:0.20〜0.60%、Cr:2.0 〜3.5
    %、Mo:0.1 〜1.0 %、Cu:0.05〜0.30%、Ni:
    0.1 〜1.0 %(但しNi/Cu≧2)、Al:0.01〜0.
    06%の要件を満たすと共に、残部がFe及び不可避不純
    物で特にSi:0.10%以下、P:0.01%以下、S:0.01
    %以下であり、450 ℃以上の高温で焼戻し処理した後の
    引張強さが130kgf/mm2以上であることを特徴とする高耐
    食性・高強度ボルト用鋼材。
  2. 【請求項2】 更に他の成分としてTi:0.01〜0.07
    %、B:0.0005〜0.0030%及びV:0.02〜0.10%よりな
    る群から選択される少なくとも1種の元素を含有する請
    求項1記載の高耐食性・高強度ボルト用鋼材。
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AU2009336436B2 (en) * 2009-01-09 2011-12-01 Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. Testing method for bolts
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