JP3036125B2 - 溶接性に優れた高耐候性鋼板とその製造方法 - Google Patents

溶接性に優れた高耐候性鋼板とその製造方法

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JP3036125B2 JP3182284A JP18228491A JP3036125B2 JP 3036125 B2 JP3036125 B2 JP 3036125B2 JP 3182284 A JP3182284 A JP 3182284A JP 18228491 A JP18228491 A JP 18228491A JP 3036125 B2 JP3036125 B2 JP 3036125B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、橋梁、建築、その他の
構造物に用いるのに好適な溶接性に優れた高耐候性鋼板
とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に低合金鋼にP、Cu、Cr、Ni
などの合金元素を添加することにより、大気中における
耐食性を向上させることができる。この低合金鋼は耐候
性鋼と呼ばれており、橋梁をはじめ、建築、その他の構
造物に広く用いられている。この耐候性鋼は、屋外にお
いて数年で腐食に対して保護性のある錆(以下耐候性錆
という)を形成し、以後塗装等の防食処理作業を不要と
するいわゆるメンテナンスフリーになるといった特徴を
有しているが、P、Cr、Cuなどの合金元素を含有し
ていることから溶接性に問題がある。
【0003】そこで、溶接性を改善した耐候性鋼が開発
されている。例えば、特公平1−29859 号公報に、極低
C化、極低N化および極低S化した耐候性が提案されて
いる。しかし、この耐候性鋼は腐食に対して保護性のあ
る上記の耐候性錆が形成されるまでに数年かかるため、
それまでの期間中に赤錆や黄錆などの浮き錆や流れ錆が
生じてしまい、外見的に好ましくないばかりでなく周囲
環境の汚染原因にもなるという問題点を残している。
【0004】一方、このような浮き錆や流れ錆の発生を
防止する方法として、特開平1−142088号公報に、酸性
水溶液で処理した後にリン酸塩処理を施す耐候性鋼の表
面処理方法が提案されているが、このような処理はコス
トを上昇させるので好ましくない。
【0005】このようなことから、表面処理や塗装など
の防食処理を施さなくても、無処理でメンテナンスフリ
ーの溶接性に優れた高耐候性鋼の開発が強く望まれてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
の要望に応えることにあり、優れた溶接性を備え、早期
に緻密な耐候性錆が生成し、無処理で使用することがで
きるメンテナンスフリーの高耐候性鋼と、このような高
耐候性鋼を安定して製造することができる方法を提供す
ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】耐候性は前述のように
P、Cr、Cu等の合金元素の添加により改善されると
考えられるが、これらの合金元素は溶接性を阻害する。
一方、外観を著しく損なう浮き錆や流れ錆は緻密な耐候
性錆が早期に形成されることにより抑制されると考えら
れるが、従来の耐候性鋼ではこのような耐候性錆が形成
されるまでに長期間を要する。
【0008】ところが、本発明者らはSを適量添加する
ことにより早期に耐候性錆が形成されること、Cおよび
Nを極力低減することにより溶接性が改善されること、
さらに、熱間圧延後に加速冷却を採用して鋼板表層をそ
の表面積の80%以上がベイナイトである組織にすること
により、耐候性錆の早期形成が一段と促進されるととも
に耐候性が向上すること、および極低C化にともなう強
度低下も加速冷却により補われて高強度化することを見
出した。
【0009】ここに本発明の要旨は下記の高耐候性鋼板
とその製造方法にある。
【0010】 C:0.05%以下、Si: 0.5%以下、
Mn: 2.0%以下、P:0.05〜0.25%、Al:0.003 〜
0.2%、Cr 1.0%以下、Cu: 1.0%以下、Ni:
1.0%以下、S: 0.005%を超えて 0.020%以下を含有
し、さらにNを 0.004%以下に制限し、残部はFeおよ
び不可避不純物からなり、表面積の80%以上がベイナイ
トである表層組織をもつ溶接性に優れた高耐候性鋼板。
【0011】 上記の成分組成を有する鋼を、1000
℃以上1200℃以下に加熱した後Ar3 点以上の温度範囲
で50%以上の熱間圧延を行い、次いで、Ar3 点以上の
温度から空冷以上の冷却速度で連続的に冷却し 550℃以
下 300℃以上の温度範囲で冷却を終了する溶接性に優れ
た高耐候性鋼板の製造方法。
【0012】
【作用】以下に、本発明を更に詳細に説明する。
【0013】まず、本発明の高耐候性鋼板における合金
成分の作用とその含有量および表層組織を前記のように
限定する理由を説明する。なお、合金成分における含有
量の「%」は特に断りがないかぎり『重量%』である。
【0014】C:Cは一般に溶接性を低下させる元素で
ある。特にPおよびSの含有量が多い場合には、Cとこ
れらの元素との相互作用により耐溶接割れ性が大きく低
下する。
【0015】しかしながら、本発明者らの知見によれ
ば、C含有量を0.05%以下に抑え、且つ、PおよびSの
含有量をそれぞれ0.25%以下、0.02%以下に調整すれば
溶接割れ感受性はそれほど高くならない。この知見から
C含有量を0.05%以下とした。
【0016】Si:Siは溶鋼の脱酸のために添加され
るが、溶接性と耐候性に悪影響をおよぼす元素である。
Si含有量が 0.5%を超えると特に耐候性の低下が大き
くなるので、その含有量を 0.5%以下とした。
【0017】Mn:Mnは耐候性には影響しないが、脱
酸、熱間加工性および溶接性向上のために添加する。ま
た、本発明ではC含有量を0.05%以下に抑えたことによ
る強度不足を補うためにMnを添加する。これらの目的
にはMnが多いほどよいが、 2.0%を超えて含有しても
前記の効果が飽和し、コストのみが上昇するようになる
ので、その含有量を 2.0%以下とした。
【0018】P:Pは耐候性に大きな影響を及ぼす元素
であるが、通常の0.15%C鋼では極めて溶接性を阻害す
る元素となる。C含有量が0.05%以下の極低炭素鋼では
Pの添加とともに耐候性は大きく向上する。この効果を
得るためには、0.05%以上を含有させるのが望ましい
が、0.25%を超えて含有するとC含有量が0.03%以下で
あっても溶接性が劣化してくるので、その含有量を0.05
〜0.25%とした。
【0019】Al:Alは組織の微細化と耐食性を向上
させる作用がある。また、P、Cr、Cuなどの耐候性
向上元素の効果を一層大きくする作用もある。これらの
作用を発揮させるためには 0.003%以上を含有させる必
要があるが、 0.2%を超えて含有しても効果が飽和し、
コストのみが上昇するようになるので、その含有量を0.
003〜 0.2%とした。
【0020】Cr、Cu、Ni:Cr、CuおよびNi
は耐候性錆の防食性を向上させる効果を有する元素であ
る。しかし、いずれも 1.0%を超えて含有しても耐候性
の向上効果は飽和し、コストのみが上昇するようになる
ので、いずれも 1.0%以下の含有量とした。
【0021】S:Sは本発明では重要な元素である。
0.005%を超えるSを含有した場合、暴露時の板厚減少
量は小さくなり、しかもその時間にともなう増加率もS
が 0.005%以下の場合に比べて小さいことがわかった。
すなわち、 0.005%を超えてSを含有することにより早
期に高い防食能力を有する耐候性錆が形成されるのであ
る。
【0022】しかし、Pの溶接性および溶接継手の靭性
に対する悪影響をなくし、C、Nとの相互作用により溶
接割れ感受性を低くするためには、 0.020%を超えて含
有させないのがよい。このようなことから、S含有量を
0.005%を超えて 0.020%以下とした。
【0023】N:NはPの溶接性および溶接継手の靭性
に対する悪影響をなくし、溶接割れ感受性を高めるCお
よびSとの相互作用を可能な限り回避するためには、そ
の含有量を極力少なく抑えるのがよいので、0.004 %以
下とした。
【0024】本発明の高耐候性鋼板は、上記の成分の
他、残部はFeおよび不可避不純物からなり、鋼板表層
がその表面積の80%以上がベイナイトの組織である。表
層部をその表面積の80%以上をベイナイトの組織とする
のは、こうすることにより緻密な耐候性錆が早期に形成
され赤錆などの浮き錆や流れ錆の生成が抑制されること
がわかったからである。なお、表層部とは鋼板表面から
5mm程度の深さまでを指し、この表層部がその表面積の
80%以上がベイナイトの組織であれば錆の生成は抑制さ
れる。これより内部がベイナイト80%以上の組織であっ
ても錆の抑制に何ら影響しない。また、表層部のベイナ
イト以外の組織は主にフェライトであり、内部はフェラ
イト、パーライトおよびベイナイトの混合組織である。
【0025】次に、本発明の高耐候性鋼板の望ましい製
造方法について述べる。
【0026】前述の成分組成をもつ鋼を加熱した後、所
定板厚に熱間圧延する。加熱は合金元素を均質に固溶さ
せるために1000℃以上で、かつ高P材であるために生じ
る鋼塊割れを回避するために1200℃以下の温度範囲で行
うのが望ましい。また、熱間圧延はγ粒の再結晶による
組織の微細化をはかるためにAr3 点以上の温度範囲で
50%以上の圧下率で行うのが望ましい。
【0027】熱間圧延後は、Ar3 点以上の温度から空
冷以上の冷却速度で連続的に冷却し、変態が完了する 5
50℃以下 300℃以上の温度範囲で冷却を終了する。冷却
が前記の条件から逸脱すると、表面積の80%以上がベイ
ナイトである表層組織とならないばかりか、加速冷却の
効果が得られずに鋼板は高強度化しない。Ar3 点以上
の温度から空冷以上の冷却速度で冷却を行うことによ
り、ポリゴナルフェライトの析出を抑制しベイナイト生
成が促進される。
【0028】
【実施例】表1に示す成分組成の鋼を、表2(1)およ
び(2)に示す製造条件で加熱、熱間圧延および冷却し
て厚鋼板とした。
【0029】次いで、これらの厚鋼板から試験片を切り
出し、機械的性質および耐候性を評価した。表3(1)
および(2)にこれらの評価結果を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2(1)】
【0032】
【表2(2)】
【0033】
【表3(1)】
【0034】
【表3(2)】
【0035】表3表から明らかなように、本発明例はい
ずれも溶接性、強度、靭性ともに良好であり、且つ耐候
性にも優れている。これに対して、成分組成または製造
条件が本発明で規定する条件から外れる比較例は機械的
性質、溶接性、耐候性のいずれかが劣っている。C量の
多い試料No.1、P量の多い試料No.4およびNo.5、S量の
多い試料No.9は、良好な溶接性が得られていない。S量
の少ない試料No.6、Si量の多い試料No.10 およびJIS
G3106 でSM50A (溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材)に規
格される成分組成である試料No.11 は、良好な耐候性が
得られていない。
【0036】冷却開始温度の低い試料No.12 、13、14お
よび15、冷却却終了温度の高い試料No.20 、21、22およ
び23、加熱温度の低い試料No.32 、33、34および35は、
鋼表層の80%以上がベイナイトの組織とならず比較的粗
粒なフェライトの析出をともない耐候性が悪いうえに、
十分な強度が得られていない。なお、加熱温度の高い試
料No.28 、29、30および31は圧延開始直後から鋼塊割れ
を生じ、圧延が不可能であった。
【0037】
【発明の効果】本発明によって、溶接性に優れ、早期に
緻密な耐候性錆が生成し、無処理で使用することができ
るメンテナンスフリーの高耐候性鋼およびそれを安価に
安定して製造する方法が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 301 C21D 8/02 C22C 38/42

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.05%以下、Si: 0.5%以下、M
    n: 2.0%以下、P:0.05〜0.25%、Al:0.003 〜
    0.2%、Cr 1.0%以下、Cu: 1.0%以下、Ni: 1.
    0%以下、S: 0.005%を超えて 0.020%以下を含有
    し、さらにNを 0.004%以下に制限し、残部はFeおよ
    び不可避不純物からなり、表面積の80%以上がベイナイ
    トである表層組織をもつことを特徴とする溶接性に優れ
    た高耐候性鋼板。
  2. 【請求項2】C:0.05%以下、Si: 0.5%以下、M
    n: 2.0%以下、P:0.05〜0.25%、Al:0.003 〜
    0.2%、Cr 1.0%以下、Cu: 1.0%以下、Ni: 1.
    0%以下、S: 0.005%を超えて 0.020%以下を含有
    し、さらにNを 0.004%以下に制限し、残部はFeおよ
    び不可避不純物からなる鋼を、1000℃以上1200℃以下に
    加熱した後Ar3 点以上の温度範囲で50%以上の熱間圧
    延を行い、次いで、Ar3 点以上の温度から空冷以上の
    冷却速度で連続的に冷却し 550℃以下 300℃以上の温度
    範囲で冷却を終了することを特徴とする溶接性に優れた
    高耐候性鋼板の製造方法。
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CN114438411A (zh) * 2022-01-21 2022-05-06 安阳钢铁股份有限公司 一种光伏支架用耐候钢及其生产方法

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