JP5103988B2 - 高強度溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents
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Description
このような観点から、高強度鋼板の製造技術に関し、以下の技術が開示されている。
また、特許文献3,4には、鋼板成分と析出物を規定することによって、強度−延性バランスに優れた高強度鋼板が提案されている。しかしながら、これらの技術でも、やはり溶接部やボンド部の硬化に対しては何ら考慮が払われていない。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、優れた溶接性とプレス成形性を兼ね備えた590 MPa超級の高強度溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。
溶接部の硬化は主に溶接部およびボンド部で、鋼が溶融もしくはオーステナイト単相域に加熱されたのち、急冷されるために生じる。また、軟化は主にHAZ部(熱影響部)で、硬質第二相の焼戻しや、細粒化強化を活用している場合には、結晶粒の粗粒化により生じる。このとき、HAZ軟化部では、フェライトの軟化は生じないため、HAZの軟化抑制のためには、硬質第二相の焼戻し軟化抵抗を高めると共に、硬質第二相の分率を極力低減した状態で強度確保を図ることにより、硬質第二相の焼戻しによる強度低下を抑制することが有効である。また、急冷組織である溶接部の硬化の抑制には、C量の低減が有効である。
そして、このときの強度確保にSiを活用することにより、Siによるフェライトの固溶強化能とマルテンサイトの焼戻し軟化抵抗の向上を積極的に活用して、第二相低減時の強度確保とHAZ部のマルテンサイトの焼戻し軟化抑制、およびフェライトフォーマーであるSiの多量添加と低C化により、溶融部やボンド部の焼入れ硬化の抑制が可能であることを見出した。
さらに、HAZ部のマルテンサイトの軟化に対しては、マルテンサイトを含む硬質第二相の平均粒径を適正に制御することにより、軟化の抑制が可能であることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.質量%で、C:0.005%以上 0.09%以下、Si:0.7%以上 2.7%以下、Mn:0.5%以上 2.8%以下、P:0.1%以下、S:0.07%以下、Al:1.0%以下およびN:0.008%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、面積率で90%以上のフェライト主相中に、硬質第二相として面積率で2%以上10%以下のマルテンサイトを含む組織を有し、該フェライトの硬度がHVで140以上で、該硬質第二相の平均粒径が7μm 以下であり、しかもめっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域の地鉄中にSi,Mn,AlおよびPから選んだ1種以上の元素を含む酸化物が地鉄結晶粒内および/または結晶粒界に析出し、かつめっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域でSi,Mn,AlおよびPから選んだ1種以上の元素を含む酸化物が析出していない領域における、SiおよびMnの固溶量がそれぞれ母材の平均濃度の77%以下であり、さらに鋼板表面に片面当たりの付着量:20〜150 g/m2の溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
まず、本発明において、鋼板の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.005%以上 0.09%以下
Cは、鋼板の高強度化に必要不可欠な元素であり、含有量が0.005%未満では、鋼板の強度の確保と所定の特性を満たすことが難しい。一方、C量が0.09%を超えると、フェライト分率の確保が困難になったり、マルテンサイト中のC量の増加により、溶接部およびボンド部の硬化が著しくなる。これらの観点から、C量は0.005%以上 0.09%以下の範囲に限定した。好ましいC量の上限値は0.05%である。
Siは、フェライト生成元素であるだけでなく、フェライトの固溶強化に有効な元素であり、延性確保とフェライトの硬度確保のために0.7%以上の添加が必要である。しかしながら、Si量が2.7%を超えると、赤スケール等の発生によって表面性状の劣化やめっき付着・密着性の劣化を引き起こす。従って、Si量は0.7〜2.7%の範囲に限定した。好ましいSi量の下限値は0.9%である。
Mnは、フェライトの強化や第二相の分率調整に必要な元素である。このためには、Mnは0.5%以上の添加が必要である。一方、Mnを2.8%を超えて過剰に添加すると、第二相分率が過大となりフェライト分率の確保が困難となる。従って、Mn量は0.5%以上 2.8%以下の範囲に限定した。好ましいMn量の下限値は1.6%である 。
Pは、鋼の強化に有効な元素であるが、0.1%を超えて過剰に添加すると、粒界偏析により脆化を引き起こし、耐衝撃性を劣化させる。また、P量が0.1%超えると、合金化速度を大幅に遅延させる。従って、P量は0.1%以下に限定した。
Sは、MnSなどの介在物をとなって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となるので、極力低減することが好ましい。しかしながら、0.07%までは許容されるので、S量の上限値は0.7%とした。
Alは、フェライト生成元素であり、製造時におけるフェライト生成量をコントロールするのに有効な元素である。このためには、Alを0.005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Alを1.0%を超えて過剰に添加すると製鋼時におけるスラブ品質の劣化を招くので、Al量は1.0%以下に限定した。 好ましくは0.5%以下である。
Nは、鋼の耐時効性を最も大きく劣化させる元素であり、極力低減することが好ましく、特に0.008%を超えると耐時効性の劣化が著しい。そこで、N量は0.008%以下に限定した。
Cr;0.05%以上 1.2%以下、V:0.005%以上 1.0%以下およびMo:0.005%以上 0.5%以下のうちから選んだ1種または2種以上
Cr,V,Moはいずれも、フェライト安定化元素であり、焼鈍からの冷却時にパーライトの生成を抑制する作用を有するので、必要に応じて添加することができる。その効果は、Cr:0.05%以上、V:0.005以上、Mo:0.005%以上で得られる。しかしながら、それぞれCr:1.2%、V:1.0%、Mo:0.5%を超えて過剰に添加すると、第二相分率過大による著しい強度上昇などの懸念が生じる。従って、これらの元素を添加する場合には、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。
Ti:0.01%以上 0.1%以下、Nb:0.01%以上 0.1%以下
Ti,Nbはいずれも、鋼の析出強化に有効であり、その効果はそれぞれ0.01%以上で得られる。しかしながら、含有量がそれぞれ0.1%を超えると加工性および形状凍結性が低下する。従って、Ti,Nbはいずれも、0.01%以上 0.1%以下の範囲で含有させるものとした。
B:0.0003%以上 0.0050%以下
Bは、オーステナイト粒界からのフェライトの生成・成長を抑制する作用を有するので必要に応じて添加することができる。その効果は、0.0003%以上で得られるが、0.0050%を超えると加工性が低下する。従って、Bを添加する場合は0.0003%以上 0.0050%以下の範囲で含有させるものとした。
Ni:0.05%以上 2.0%以下、Cu:0.05%以上 2.0%以下
Ni,Cuはいずれも、鋼の強化に有効なだけでなく、内部酸化を促進してめっき密着性を向上させる効果もある。これらの効果を得るには少なくとも0.05%の添加が必要であるが、それぞれ2.0%を超えて添加すると、鋼板の加工性を低下させる。従って、Ni,Cuを添加する場合には、それぞれ0.05%以上 2.0%以下の範囲で含有させるものとした。
Ca:0.001%以上 0.005%以下、REM:0.001%以上 0.005%以下
CaおよびREMはいずれも、硫化物の形状を球状化し、伸びフランジ性に対する硫化物の悪影響を改善するために有効な元素である。その効果は、それぞれ0.001%以上で得られるが、0.005%を超える過剰な添加は、介在物等の増加を招き、表面および内部欠陥などを引き起こす。したがって、Ca,REMを添加する場合には、それぞれ0.001%以上 0.005%以下で含有させるものとした。
フェライト面積率:90%以上
本発明のように、第二相が焼戻しされていない硬質なマルテンサイトの場合、延性を確保すると同時に熱影響部の軟化を抑制するためには、フェライトの面積率を90%とする必要がある。
また、強度を確保し、かつ熱影響部の軟化を抑制するためには、フェライトの硬度をビッカース硬さ(HV)で140以上とする必要がある。好ましくは、フェライト硬さ(HV):150以上である。
硬質第二相は、マルテンサイト以外のベイナイトなどの組織を含んでもよいが、強度確保およびフェライトの加工硬化促進のためにはマルテンサイトは2%以上が必要である。また、フェライト面積率は上述した理由により90%以上必要なこと、またマルテンサイト面積率が過大になるとHAZ部の焼戻しによる軟化が進行することから、マルテンサイト面積率は10%以下とする必要がある。
硬質第二相の平均粒径が過大になると、HAZ部の焼戻し時における硬質第二相の軟化が著しくなりHAZ部の軟化が進むことから、硬質第二相の平均粒径は7μm以下とする必要がある。
鋼中にSi,Mn量が多いと、焼鈍段階で溶融亜鉛めっきの直前にSi,Mnが表面濃化するため、めっき密着性が劣化する。このため、めっき密着性の観点から、地鉄表層に焼鈍時に選択酸化する易酸化性元素を内部酸化させて、表層部における易酸化性元素の固溶絶対量を大幅に低下させておく必要がある。このため、めっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域において、地鉄中にSi,Mn,Al,Pから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物を、地鉄結晶粒内および/または結晶粒界に析出させることによって内部酸化を促進させ、一方めっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域におけるS,Mn,Al,Pから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物が析出していない領域においては、SiおよびMnの固溶量をそれぞれ母材の平均濃度の77%以下とする必要がある。
いずれも、精度を向上させるためには、評価数を多くとることが重要である。例えば、SEM観察では5000倍で任意の5視野以上、分析点に関しては任意の10点以上について評価し、それらの平均値をもって評価値とすることが好ましい。
片面当たりの溶融亜鉛めっきの付着量が20g/m2未満では、耐食性の確保が困難であり、一方150g/m2を超えると、耐食効果は飽和し、コストアップとなるので、溶融亜鉛めっきの付着量は片面当たり20〜150 g/m2とする。
スラブ製造から冷延板とするまでの製造条件については特に制限はなく、従来から公知の方法いずれで行ってもよい。
得られた冷延板は、焼鈍を行ったのち、溶融亜鉛めっきに供する。
この焼鈍に際し、冷延板を、まず700〜940℃の第1温度域、具体的にはオーステナイト単相域もしくはオーステナイト相とフェライト相の2相域で、15〜600秒間焼鈍する。
焼鈍温度が700℃未満の場合や、焼鈍時間が15秒未満の場合には、鋼板中の炭化物が十分に溶解しない場合や、フェライトの再結晶が完了せず目標とする特性が得られない場合が生じる。一方、焼鈍温度が940℃を超える場合には、オーステナイト粒の成長が著しく、後の冷却によって生じるオーステナイト相からのフェライトの核生成サイトの減少を引き起こす場合がある。また、焼鈍時間が600秒間を超える焼鈍は、多大なエネルギー消費に伴うコスト増を招く。このため、焼鈍温度を700〜940℃、焼鈍時間を15〜600秒間とする。好ましくは、焼鈍温度:760〜900℃、焼鈍時間:30〜300秒間である。
表1に示す成分組成に調整した鋳片を、熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延によって1.2mm厚の冷延板とした。ついで、DFF炉(直火加熱炉:Direct Fired Furnace)を有するCGLで、DFF炉内の空気比を上流側では1.0〜1.2、下流側では0.9に制御すると共に、加熱帯出側温度を適宜変更して加熱し、オーステナイト単相域またはオーステナイト−フェライト二相域で熱処理後、463℃の亜鉛めっき浴で目付け量(片面当たり):約35〜65g/m2の溶融亜鉛めっきを施した。その後、合金化する場合には、目標条件としてめっき層のFe%が9〜10質量%となるように合金化処理を実施した。合金化度の調整に際し、適宜通板速度や合金化温度を変更した。
さらに、得られためっき鋼板に対しては、0.3%の調質圧延を施した。
なお、本発明では、溶接部の硬化に関してはHVW(溶接部の最高硬さ)一HVB(母材の平均硬さ)≦100、熱影響部の軟化に関してはHVB(母材の平均硬さ )−HVHAZ(熱影響部の最軟化部の硬さ)≦50を満たす場合を良好とした。
表2,表3に、それらの評価結果をまとめて記す。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.005%以上 0.09%以下、Si:0.7%以上 2.7%以下、Mn:0.5%以上2.8%以下、P:0.1%以下、S:0.07%以下、Al:1.0%以下およびN:0.008%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、面積率で90%以上のフェライト主相中に、硬質第二相として面積率で2%以上10%以下のマルテンサイトを含む組織を有し、該フェライトの硬度がHVで140以上で、該硬質第二相の平均粒径が7μm 以下であり、しかもめっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域の地鉄中にSi,Mn,AlおよびPから選んだ1種以上の元素を含む酸化物が地鉄結晶粒内および/または結晶粒界に析出し、かつめっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域でSi,Mn,AlおよびPから選んだ1種以上の元素を含む酸化物が析出していない領域における、SiおよびMnの固溶量がそれぞれ母材の平均濃度の77%以下であり、さらに鋼板表面に片面当たりの付着量:20〜150 g/m2の溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 質量%で、鋼板がさらに、Cr;0.05%以上 1.2%以下、V:0.005%以上 1.0%以下およびMo:0.005%以上 0.5%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 質量%で、鋼板がさらに、Ti:0.01%以上 0.1%以下、Nb:0.01%以上 0.1%以下、B:0.0003%以上 0.0050%以下、Ni:0.05%以上 2.0%以下およびCu:0.05%以上 2.0% 以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 質量%で、鋼板がさらに、Ca:0.001%以上 0.005%以下およびREM:0.001%以上 0.005%以下のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記溶融亜鉛めっき層が合金化溶融亜鉛めっき層である場合、該合金化溶融亜鉛めっき層中のFe含有率を7〜15質量%としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
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