JP5103988B2 - 高強度溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車部晶や家電・電機製品等の用途に供して好適なプレス成形性と溶接性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造技術に関するものである。
近年、地球環境保全の見地から、自動車の燃費向上が重要な課題となっている。このため、車体材料の高強度化により薄肉化を図り、車体そのものを軽量化しようとする動きが活発である。しかしながら、鋼板の高強度化は成形加工性の低下を招くことから、高強度と高加工性を併せ持つ材料の開発が望まれている。
鋼板の高強度化には、変態組織強化や析出強化が活用されているが、前者に代表されるDP(Dual Phase)鋼の場合、強度と延性のバランスに優れ、プレス成形性が良好である反面、炭素などの焼入れ元素が多く添加されているため、溶接性が低いという問題がある。一方、後者の析出強化鋼の場合、DP鋼よりも溶接性に優れるものの、延性が低いことから、プレス成形性に問題がある。
このような観点から、高強度鋼板の製造技術に関し、以下の技術が開示されている。
すなわち、特許文献1,2には、所定成分の鋼に対してめっき後に、伸び率で1.0%以上 10.0%未満の歪を加えることによって、溶接後の熱影響部の軟化を抑制し、溶接部の疲労強度と耐食性に優れた高強度めっき鋼板が提案されている。しかしながら、これらの技術では、鋼板に1.0%以上の歪を加えることから、十分な延性は得られない。また、溶接部やボンド部の硬化に対する考慮はなされていない。
また、特許文献3,4には、鋼板成分と析出物を規定することによって、強度−延性バランスに優れた高強度鋼板が提案されている。しかしながら、これらの技術でも、やはり溶接部やボンド部の硬化に対しては何ら考慮が払われていない。
特許第3157888号公報 特許第3241075号公報 特開2006−183138号公報 特開2006−183140号公報
上述したとおり、従来技術ではいずれも、良好な溶接性(溶接部の硬化抑制および溶接熱影響部の軟化抑制)と、優れたプレス成形性を併せ持つ590 MPa超級の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は得られていない。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、優れた溶接性とプレス成形性を兼ね備えた590 MPa超級の高強度溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。
発明者らは、フェライトとマルテンサイトを含む複合組織鋼について、成形性と溶接性を向上させるべく、鋼板の組織因子と成形性および溶接部の特性に関して綿密な検討を行った。特に、溶融亜鉛めっきラインでの熱処理において、特別な設備の必要なしに最も安定した製造が可能と考えられ、かつ優れた延性を有するフェライトと焼戻されていないマルテンサイトからなるDP鋼での特性向上の可能性に着目して、詳細に研究を進めた。
その結果、延性を確保しつつ、溶接部(ボンド部を含む)の硬化とHAZ部(熱影響部)の軟化を抑制するためには、第二相分率を極力低減した組織での強度確保が有効であるとの知見を得た。
溶接部の硬化は主に溶接部およびボンド部で、鋼が溶融もしくはオーステナイト単相域に加熱されたのち、急冷されるために生じる。また、軟化は主にHAZ部(熱影響部)で、硬質第二相の焼戻しや、細粒化強化を活用している場合には、結晶粒の粗粒化により生じる。このとき、HAZ軟化部では、フェライトの軟化は生じないため、HAZの軟化抑制のためには、硬質第二相の焼戻し軟化抵抗を高めると共に、硬質第二相の分率を極力低減した状態で強度確保を図ることにより、硬質第二相の焼戻しによる強度低下を抑制することが有効である。また、急冷組織である溶接部の硬化の抑制には、C量の低減が有効である。
そして、このときの強度確保にSiを活用することにより、Siによるフェライトの固溶強化能とマルテンサイトの焼戻し軟化抵抗の向上を積極的に活用して、第二相低減時の強度確保とHAZ部のマルテンサイトの焼戻し軟化抑制、およびフェライトフォーマーであるSiの多量添加と低C化により、溶融部やボンド部の焼入れ硬化の抑制が可能であることを見出した。
さらに、HAZ部のマルテンサイトの軟化に対しては、マルテンサイトを含む硬質第二相の平均粒径を適正に制御することにより、軟化の抑制が可能であることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、C:0.005%以上 0.09%以下、Si:0.7%以上 2.7%以下、Mn:0.5%以上 2.8%以下、P:0.1%以下、S:0.07%以下、Al:1.0%以下およびN:0.008%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、面積率で90%以上のフェライト主相中に、硬質第二相として面積率で2%以上10%以下のマルテンサイトを含む組織を有し、該フェライトの硬度がHVで140以上で、該硬質第二相の平均粒径が7μm 以下であり、しかもめっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域の地鉄中にSi,Mn,AlおよびPから選んだ1種以上の元素を含む酸化物が地鉄結晶粒内および/または結晶粒界に析出し、かつめっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域でSi,Mn,AlおよびPから選んだ1種以上の元素を含む酸化物が析出していない領域における、SiおよびMnの固溶量がそれぞれ母材の平均濃度の77%以下であり、さらに鋼板表面に片面当たりの付着量:20〜150 g/m2の溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
2.質量%で、鋼板がさらに、Cr;0.05%以上 1.2%以下、V:0.005%以上 1.0%以下およびMo:0.005%以上 0.5%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする上記1に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
3.質量%で、鋼板がさらに、Ti:0.01%以上 0.1%以下、Nb:0.01%以上 0.1%以下、B:0.0003%以上 0.0050%以下、Ni:0.05%以上 2.0%以下およびCu:0.05%以上 2.0%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする上記1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
4.質量%で、鋼板がさらに、Ca:0.001%以上 0.005%以下およびREM:0.001%以上 0.005%以下のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
5.前記溶融亜鉛めっき層が合金化溶融亜鉛めっき層である場合、該合金化溶融亜鉛めっき層中のFe含有率を7〜15質量%としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
本発明によれば、強度−延性のバランスに優れ、溶接性の良好な高強度溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。その結果、これまでプレス成形や溶接施工が困難であった自動車車体の骨格・構造用の部品等への高強度溶融亜鉛めっき鋼板の適用が可能となり、自動車車体の軽量化に多大に貢献する。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼板の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.005%以上 0.09%以下
Cは、鋼板の高強度化に必要不可欠な元素であり、含有量が0.005%未満では、鋼板の強度の確保と所定の特性を満たすことが難しい。一方、C量が0.09%を超えると、フェライト分率の確保が困難になったり、マルテンサイト中のC量の増加により、溶接部およびボンド部の硬化が著しくなる。これらの観点から、C量は0.005%以上 0.09%以下の範囲に限定した。好ましいC量の上限値は0.05%である。
Si:0.7%以上 2.7%以下
Siは、フェライト生成元素であるだけでなく、フェライトの固溶強化に有効な元素であり、延性確保とフェライトの硬度確保のために0.7%以上の添加が必要である。しかしながら、Si量が2.7%を超えると、赤スケール等の発生によって表面性状の劣化やめっき付着・密着性の劣化を引き起こす。従って、Si量は0.7〜2.7%の範囲に限定した。好ましいSi量の下限値は0.9%である。
Mn:0.5%以上 2.8%以下
Mnは、フェライトの強化や第二相の分率調整に必要な元素である。このためには、Mnは0.5%以上の添加が必要である。一方、Mnを2.8%を超えて過剰に添加すると、第二相分率が過大となりフェライト分率の確保が困難となる。従って、Mn量は0.5%以上 2.8%以下の範囲に限定した。好ましいMn量の下限値は1.6%である 。
P:0.1%以下
Pは、鋼の強化に有効な元素であるが、0.1%を超えて過剰に添加すると、粒界偏析により脆化を引き起こし、耐衝撃性を劣化させる。また、P量が0.1%超えると、合金化速度を大幅に遅延させる。従って、P量は0.1%以下に限定した。
S:0.07%以下
Sは、MnSなどの介在物をとなって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となるので、極力低減することが好ましい。しかしながら、0.07%までは許容されるので、S量の上限値は0.7%とした。
Al:1.0%以下
Alは、フェライト生成元素であり、製造時におけるフェライト生成量をコントロールするのに有効な元素である。このためには、Alを0.005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Alを1.0%を超えて過剰に添加すると製鋼時におけるスラブ品質の劣化を招くので、Al量は1.0%以下に限定した。 好ましくは0.5%以下である。
N:0.008%以下
Nは、鋼の耐時効性を最も大きく劣化させる元素であり、極力低減することが好ましく、特に0.008%を超えると耐時効性の劣化が著しい。そこで、N量は0.008%以下に限定した。
以上説明した、基本成分および抑制成分の残部は、Feを主成分とするものである。ここに、主成分とは、不可避的不純物の含有はもとより、上記基本成分の作用を損なうことがなく、むしろこれらの作用を向上させ、あるいは機械的、化学的特性を改善できる元素の含有を妨げない趣旨であり、例えば以下に述べるCr,V,Moのうちから選んだ1種以上の元素を適宜含有させることができる。
Cr;0.05%以上 1.2%以下、V:0.005%以上 1.0%以下およびMo:0.005%以上 0.5%以下のうちから選んだ1種または2種以上
Cr,V,Moはいずれも、フェライト安定化元素であり、焼鈍からの冷却時にパーライトの生成を抑制する作用を有するので、必要に応じて添加することができる。その効果は、Cr:0.05%以上、V:0.005以上、Mo:0.005%以上で得られる。しかしながら、それぞれCr:1.2%、V:1.0%、Mo:0.5%を超えて過剰に添加すると、第二相分率過大による著しい強度上昇などの懸念が生じる。従って、これらの元素を添加する場合には、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。
さらに、次に述べるTi,Nb,B,NiおよびCuのうちから選んだ1種以上の元素を適宜含有させることもできる。
Ti:0.01%以上 0.1%以下、Nb:0.01%以上 0.1%以下
Ti,Nbはいずれも、鋼の析出強化に有効であり、その効果はそれぞれ0.01%以上で得られる。しかしながら、含有量がそれぞれ0.1%を超えると加工性および形状凍結性が低下する。従って、Ti,Nbはいずれも、0.01%以上 0.1%以下の範囲で含有させるものとした。
B:0.0003%以上 0.0050%以下
Bは、オーステナイト粒界からのフェライトの生成・成長を抑制する作用を有するので必要に応じて添加することができる。その効果は、0.0003%以上で得られるが、0.0050%を超えると加工性が低下する。従って、Bを添加する場合は0.0003%以上 0.0050%以下の範囲で含有させるものとした。
Ni:0.05%以上 2.0%以下、Cu:0.05%以上 2.0%以下
Ni,Cuはいずれも、鋼の強化に有効なだけでなく、内部酸化を促進してめっき密着性を向上させる効果もある。これらの効果を得るには少なくとも0.05%の添加が必要であるが、それぞれ2.0%を超えて添加すると、鋼板の加工性を低下させる。従って、Ni,Cuを添加する場合には、それぞれ0.05%以上 2.0%以下の範囲で含有させるものとした。
また、さらに、次に述べるCaおよびREMのうちから選んだ1種以上の元素を適宜含有させることもできる。
Ca:0.001%以上 0.005%以下、REM:0.001%以上 0.005%以下
CaおよびREMはいずれも、硫化物の形状を球状化し、伸びフランジ性に対する硫化物の悪影響を改善するために有効な元素である。その効果は、それぞれ0.001%以上で得られるが、0.005%を超える過剰な添加は、介在物等の増加を招き、表面および内部欠陥などを引き起こす。したがって、Ca,REMを添加する場合には、それぞれ0.001%以上 0.005%以下で含有させるものとした。
次に、本発明の鋼組織、フェライト硬度およびめっき付着量を前記の範囲に限定した理由について説明する。
フェライト面積率:90%以上
本発明のように、第二相が焼戻しされていない硬質なマルテンサイトの場合、延性を確保すると同時に熱影響部の軟化を抑制するためには、フェライトの面積率を90%とする必要がある。
フェライト硬さ(HV):140以上
また、強度を確保し、かつ熱影響部の軟化を抑制するためには、フェライトの硬度をビッカース硬さ(HV)で140以上とする必要がある。好ましくは、フェライト硬さ(HV):150以上である。
マルテンサイト面積率:2%以上 10%以下
硬質第二相は、マルテンサイト以外のベイナイトなどの組織を含んでもよいが、強度確保およびフェライトの加工硬化促進のためにはマルテンサイトは2%以上が必要である。また、フェライト面積率は上述した理由により90%以上必要なこと、またマルテンサイト面積率が過大になるとHAZ部の焼戻しによる軟化が進行することから、マルテンサイト面積率は10%以下とする必要がある。
硬質第二相の平均粒径:7μm以下
硬質第二相の平均粒径が過大になると、HAZ部の焼戻し時における硬質第二相の軟化が著しくなりHAZ部の軟化が進むことから、硬質第二相の平均粒径は7μm以下とする必要がある。
めっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域の地鉄中にSi,Mn,Al,Pから選んだ1種以上の元素を含む酸化物が地鉄結晶粒内および/または結晶粒界に析出し、かつめっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域におけるSi,Mn,Al,Pから選んだ1種以上の元素を含む酸化物が析出していない領域における、SiおよびMnの固溶量がそれぞれ母材の平均濃度の77%以下
鋼中にSi,Mn量が多いと、焼鈍段階で溶融亜鉛めっきの直前にSi,Mnが表面濃化するため、めっき密着性が劣化する。このため、めっき密着性の観点から、地鉄表層に焼鈍時に選択酸化する易酸化性元素を内部酸化させて、表層部における易酸化性元素の固溶絶対量を大幅に低下させておく必要がある。このため、めっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域において、地鉄中にSi,Mn,Al,Pから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物を、地鉄結晶粒内および/または結晶粒界に析出させることによって内部酸化を促進させ、一方めっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域におけるS,Mn,Al,Pから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物が析出していない領域においては、SiおよびMnの固溶量をそれぞれ母材の平均濃度の77%以下とする必要がある。
めっき層直下の鋼板表層部における酸化物の析出状況を確認するには、断面を鏡面研摩したサンプルのSEM(走査型電子顕微鏡)観察、またはFIB(集束イオンビーム)などにより薄片化したサンプルの断面TEM(透過型電子顕微鏡)観察などが有効である。酸化物の同定は、例えば、断面研摩サンプルのSEM−EDS(エネルギー分散型X線分析)、EPMA(電子線マイクロアナライザー)、FE−AES(電界放出型オージェ電子分光)、さらに詳細な解析には、薄片化サンプルや断面研摩試料から取得したレプリカ試料のTEM−EDSなどで行うことができる。
めっき層下の地鉄表層部の酸化物の存在しない領域での添加元素の固溶量についても、酸化物の分析と同様の前記の手法を用いることができ、酸化物を避けて点分析、もしくはライン分析を行うことにより定量が可能である。
いずれも、精度を向上させるためには、評価数を多くとることが重要である。例えば、SEM観察では5000倍で任意の5視野以上、分析点に関しては任意の10点以上について評価し、それらの平均値をもって評価値とすることが好ましい。
なお、易酸化性元素が析出していない領域におけるP,Al量は特に規定しないが、母材中に含有される量と比較して半分未満になることが好ましい。但し、P,Alの含有量が少ないと分析して確認することが困難なため、P,Alについては特に上限を規定しない。
溶融亜鉛めっき付着量(片面当たり):20〜150 g/m2
片面当たりの溶融亜鉛めっきの付着量が20g/m2未満では、耐食性の確保が困難であり、一方150g/m2を超えると、耐食効果は飽和し、コストアップとなるので、溶融亜鉛めっきの付着量は片面当たり20〜150 g/m2とする。
また、合金化溶融亜鉛めっきとした場合、めっき層中の鉄含有量(Fe%)が7%未満では、合金化ムラが生じ、外観が劣化したり、いわゆるζ相が生成して摺動性が劣化する。一方、Fe%が15%を超えると、めっき/地鉄界面に硬質のΓ相が生成し、めっき密着性の劣化を招く。従って、合金化溶融亜鉛めっきとする場合には、Fe%は7〜15%とすることが好ましい。
次に、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の好適製造条件について説明する。
スラブ製造から冷延板とするまでの製造条件については特に制限はなく、従来から公知の方法いずれで行ってもよい。
得られた冷延板は、焼鈍を行ったのち、溶融亜鉛めっきに供する。
この焼鈍に際し、冷延板を、まず700〜940℃の第1温度域、具体的にはオーステナイト単相域もしくはオーステナイト相とフェライト相の2相域で、15〜600秒間焼鈍する。
焼鈍温度が700℃未満の場合や、焼鈍時間が15秒未満の場合には、鋼板中の炭化物が十分に溶解しない場合や、フェライトの再結晶が完了せず目標とする特性が得られない場合が生じる。一方、焼鈍温度が940℃を超える場合には、オーステナイト粒の成長が著しく、後の冷却によって生じるオーステナイト相からのフェライトの核生成サイトの減少を引き起こす場合がある。また、焼鈍時間が600秒間を超える焼鈍は、多大なエネルギー消費に伴うコスト増を招く。このため、焼鈍温度を700〜940℃、焼鈍時間を15〜600秒間とする。好ましくは、焼鈍温度:760〜900℃、焼鈍時間:30〜300秒間である。
上記の焼鈍後、3℃/s以上100℃/s以下の冷却速度で、500〜550℃まで冷却した後、200秒以内に溶融亜鉛めっきを施す。冷却速度が3℃/s未満の場合には、パーライト等が析出し、目標とする組織が得られない場合がある。逆に、冷却速度が100℃/sを超える場合には、高温焼鈍時にフェライト分率が十分に確保できない場合がある。また、500℃未満、特に470℃以下の温度域でめっき浴への浸漬までの時間が200秒を超える場合にはベイナイト変態等が進行し、目標とする組織が得られない場合がある。逆に、550℃を超える場合には、パーライトや擬似パーライトなど炭化物を含む組織が生成して、目標とする組織が得られない。
溶融亜鉛めっきは、純亜鉛めっき(GI)鋼板の製造時は0.12〜0.22%の溶解Al量、合金化溶融亜鉛めっき(GA)鋼板の製造時は0.08〜0.18%の溶解Al量のめっき浴において、めっき浴温を450〜500℃として鋼板をめっき浴中に浸入させて行い、ガスワイピングなどで付着量を調整する。溶融亜鉛めっき浴温度は通常の450〜500℃の範囲であればよく、めっき後合金化処理を施す場合には600℃以下で処理することが望ましい。これは、合金化処理温度が600℃を超えると、未変態オーステナイト中から炭化物が析出(場合によりパーライト化)して、目標とする組織が得られず、延性の劣化が生じるだけでなく、パウダリング性も劣化する。また、合金化処理温度が450℃未満ではめっきの合金化が進行しない。
なお、本発明の鋼板の製造過程における一連の熱処理においては、上述した温度範囲内であれば保持温度は一定である必要はなく、また冷却速度が冷却中に変化した場合においても規定した範囲内であれば本発明の趣旨を損なわない。また、熱履歴さえ満足されれば、鋼板はいかなる設備で熱処理を施されてもかまわない。加えて、熱処理後に形状矯正のため本発明の鋼板に調質圧延を行うことも本発明の範囲に含まれる。
また、本発明では、鋼素材を通常の製鋼、鋳造、熱延の各工程を経て製造する場合を想定しているが、例えば薄手鋳造などにより熱延工程の一部もしくは全部を省略して製造してもよい。
めっき性確保のためのめっき層直下における酸化物等の介在物の導入は、焼鈍過程において鋼板の表層における酸素ポテンシャルを増加させ、地鉄表屠部を内部酸化させることにより可能である。例えば、鋼板をDFF(Direct Fired Furnace)またはNOF(Non-Oxidation Furnace)型の加熱帯を有するCGLで、加熱帯からの出側温度を600℃以上とすることで鋼板表面を高温で酸化させ、鋼板表層に十分な量のFe系スケールを付着させ、このFe系スケールが還元帯において酸素供給源となり、鋼板表層が内部酸化する方法や、加熱帯や還元帯の露点が通常−20℃〜−60℃であるところを−20℃以上+20℃以下にアップさせる方法などがある。また、事前に冷延鋼板表面に酸素を含むFeプレめっきを実施することで、再結晶焼鈍時における鋼板の酸素ポテンシャルを上げることも可能である。さらに、冷延の前段階で、黒皮スケールが付着した熱延鋼板の巻き取り温度を上げたり、熱延鋼板を別途熱処理したりして、鋼板表層を予め内部酸化させることでも同様な効果が得られる。
以上の方法で、Si,Mn,Al,P等の易酸化性元素が酸化物として固定されることで焼鈍後のSi,Mn,Al,P等の表面濃化が抑制され良好なめっき性が確保できる。さらに、合金化遅延元素でもあるこれら元素の固溶量が低減することで、同時に合金化特性が向上し、めっき密着性も改善される。
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
表1に示す成分組成に調整した鋳片を、熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延によって1.2mm厚の冷延板とした。ついで、DFF炉(直火加熱炉:Direct Fired Furnace)を有するCGLで、DFF炉内の空気比を上流側では1.0〜1.2、下流側では0.9に制御すると共に、加熱帯出側温度を適宜変更して加熱し、オーステナイト単相域またはオーステナイト−フェライト二相域で熱処理後、463℃の亜鉛めっき浴で目付け量(片面当たり):約35〜65g/m2の溶融亜鉛めっきを施した。その後、合金化する場合には、目標条件としてめっき層のFe%が9〜10質量%となるように合金化処理を実施した。合金化度の調整に際し、適宜通板速度や合金化温度を変更した。
さらに、得られためっき鋼板に対しては、0.3%の調質圧延を施した。
鋼板断面組織(圧延方向に平行な面)は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2000倍で10視野観察して、各相の面積率を測定し、各結晶粒の相構造を固定した。フェライト相はVαで、マルテンサイト相はVMで示す。
引張試験は、鋼板をJIS 5号試験片に加工した試験片に対して、JIS Z 2241に準拠して行った。TS(引張り強さ)、T.El(全伸び)を測定し、強度と全伸びの積(TS×T.El)で表される強度−伸びバランスの値を求めた。なお、本発明では、TS×T.El≧17000(MPa・%)の場合を良好と判定した。
溶接部の硬化および熱影響部の軟化の評価は、C02レーザ溶接部に対して行った。溶接条件は、レーザ出力:3 kW、溶接速度:4 m/min、シールドガス:Ar、レーザ焦点位置を鋼板表面とした。溶接部の硬度は、板厚断面における板厚方向1/4位置でのビッカース硬さを荷重:200gで、0.1mm間隔で測定し、母材部の平均ビッカース硬さと溶接部の最高ビッカース硬さ、熱影響部の最軟化部のビッカース硬さと差で評価した。
なお、本発明では、溶接部の硬化に関してはHVW(溶接部の最高硬さ)一HVB(母材の平均硬さ)≦100、熱影響部の軟化に関してはHVB(母材の平均硬さ )−HVHAZ(熱影響部の最軟化部の硬さ)≦50を満たす場合を良好とした。
また、めっき層直下の鋼板表層部の固溶量を評価するため、供試綱を鋼板圧延方向に垂直な断面で鏡面研摩することでめっき/母材界面の断面試料を作製し、EPMAで加速電圧:10kVでめっき/母材界面より地鉄側約1μmの位置で析出物のない部分のSiおよびMnの点分析を行った。任意の10点の測定を行いその平均値を固溶量の評価値とし、表1に示す母材の平均濃度と比較した。
表2,表3に、それらの評価結果をまとめて記す。
Figure 0005103988
Figure 0005103988
Figure 0005103988
表2,3から明らかなように、本発明で規定する要件を満足する鋼板はいずれも、強度−伸びバランスが良好で、しかも溶接部の硬化および熱影響部の軟化が抑制されており、目標とした特性が得られていることが分かる。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.005%以上 0.09%以下、Si:0.7%以上 2.7%以下、Mn:0.5%以上2.8%以下、P:0.1%以下、S:0.07%以下、Al:1.0%以下およびN:0.008%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、面積率で90%以上のフェライト主相中に、硬質第二相として面積率で2%以上10%以下のマルテンサイトを含む組織を有し、該フェライトの硬度がHVで140以上で、該硬質第二相の平均粒径が7μm 以下であり、しかもめっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域の地鉄中にSi,Mn,AlおよびPから選んだ1種以上の元素を含む酸化物が地鉄結晶粒内および/または結晶粒界に析出し、かつめっき層直下の地鉄表層2μmまでの領域でSi,Mn,AlおよびPから選んだ1種以上の元素を含む酸化物が析出していない領域における、SiおよびMnの固溶量がそれぞれ母材の平均濃度の77%以下であり、さらに鋼板表面に片面当たりの付着量:20〜150 g/m2の溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 質量%で、鋼板がさらに、Cr;0.05%以上 1.2%以下、V:0.005%以上 1.0%以下およびMo:0.005%以上 0.5%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 質量%で、鋼板がさらに、Ti:0.01%以上 0.1%以下、Nb:0.01%以上 0.1%以下、B:0.0003%以上 0.0050%以下、Ni:0.05%以上 2.0%以下およびCu:0.05%以上 2.0% 以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 質量%で、鋼板がさらに、Ca:0.001%以上 0.005%以下およびREM:0.001%以上 0.005%以下のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 前記溶融亜鉛めっき層が合金化溶融亜鉛めっき層である場合、該合金化溶融亜鉛めっき層中のFe含有率を7〜15質量%としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
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