JP5326362B2 - 高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車、電気等の産業分野で使用して好適な、引張強さが980MPa以上で、成形性なかでも曲げ加工性に優れる高強度鋼板とその製造方法に関するものである。なお、本発明の高強度鋼板には、鋼板の表面に溶融亜鉛めっきまたは合金化溶融亜鉛めっきを施したものを含むものとする。
近年、地球環境保全の見地から、自動車の燃費向上が重要な課題となっている。このため、車体材料の高強度化により薄肉化を図り、車体そのものを軽量化しようとする動きが活発である。しかしながら、鋼板の高強度化は成形性の低下を招くことから、高強度と高成形性を併せ持つ材料の開発が望まれている。このような要求に対して、これまでフェライト−マルテンサイト二相鋼(DP鋼)や残留オーステナイトの変態誘起塑性を利用したTRIP鋼など、種々の複合組織鋼板が開発されてきた。
例えば、DP鋼について、特許文献1には、成分組成と熱間圧延および焼鈍条件を規定することにより、表面性状と曲げ加工性に優れた引張強さ:588〜882MPaの低降伏比高張力鋼板およびその製造方法、特許文献2には、所定の成分組成の鋼を熱間圧延、冷間圧延および焼鈍条件を規定することにより、曲げ加工性に優れた高張力冷延鋼板の製造方法が提案されている。また、特許文献3には、マルテンサイト分率とその粒径および機械的特性を規定することにより衝突安全性と成形性に優れた鋼板およびその製造方法、特許文献4には、成分組成とマルテンサイト分率およびその粒径を規定することにより伸びフランジ性と耐衝突特性に優れた高強度鋼板、高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法、特許文献5には、成分組成とフェライト粒径とその集合組織およびマルテンサイト分率を規定することにより、伸びフランジ性や形状凍結性と耐衝突特性に優れた高強度鋼板、高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法、特許文献6には、成分組成とマルテンサイト量および製造方法を規定することにより、優れた機械的性質を有する高強度鋼板およびその製造方法が提案されている。さらに、特許文献7および8には、成分組成と溶融亜鉛めっきラインでの製造条件を規定することにより伸びフランジ性や曲げ加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板や高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および設備が提案されている。
特許第1853389号公報 特許第3610883号公報 特開平11-61327号公報 特開2003-213369号公報 特開2003-213370号公報 特表2003-505604号公報 特開平6-93340号公報 特開平6-108152号公報
硬質第二相にマルテンサイト以外を含む組織も有する鋼板としては、特許文献9には、硬質第二相をマルテンサイト及び/またはベイナイトとし、成分組成と粒径、硬さ比などを規定することにより疲労特性に優れた鋼板、特許文献10には、硬質第二相をベイナイト又はパーライトを主体とし、成分組成とその硬さ比を規定することにより、伸びフランジ性に優れた鋼板が提案されている。特許文献11には、硬質第二相としてベイナイトとマルテンサイトからなる穴広げ性に優れた高強度高延性溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法、特許文献12には、硬質第二相にベイナイトとマルテンサイトをともに含有し、各構成相の分率、粒径と硬さおよび硬質相全体の平均自由行程を規定することにより、疲労特性に優れた複合組織鋼板、特許文献13には、成分組成と残留オーステナイト量を規定することにより、延性および穴広げ性に優れた高張力鋼板、特許文献14には、ベイナイトと残留オーステナイトおよび/またはマルテンサイトを含む鋼板で成分組成と各相の分率などを規定することにより成形性に優れた高強度複合組織冷延鋼板が提案されている。また、特許文献15には、フェライト中の硬質第二相粒の分布状態とその中で焼戻しマルテンサイトとベイナイトからなる粒の存在比率を規定することにより、成形性に優れる高強度鋼板とその製造方法が提案されている。さらに、ベイナイト主体の組織として、特許文献16には、成分組成と製造工程を規定することにより、引張強さが1180MPa以上の耐遅れ破壊性に優れた超高張力冷延鋼板及びその製造方法、特許文献17には、成分組成と製造方法を規定することにより引張強さが980MPa以上の曲げ加工性に優れた超高張力冷延鋼板及びその製造方法、特許文献18には、マルテンサイトの体積率と所定の大きさ以上のFe-C系炭化物の密度を規定することにより水素脆化を防止する引張強さが980MPa以上の高強度鋼板とその製造方法が提案されている。
特開平7-11383号公報 特開平10-60593号公報 特開2005-281854号公報 特許第3231204号公報 特開2001-207234号公報 特開平7-207413号公報 特開2005-264328号公報 特許第2616350号公報 特許第2621744号公報 特許第2826058号公報
しかしながら、上述した技術には次に述べる課題がある。特許文献1〜7、9〜10および12〜14は、引張強さ:900MPa未満の鋼板についての技術であり、さらなる高強度化を進めると成形性を確保できない場合が多い。また、特許文献1では、単相域で焼鈍し、その後の冷却は6〜20℃/秒で400℃まで冷却することが規定されているが、溶融亜鉛めっき鋼板の場合、めっき密着性を考慮する必要があること、また400℃までの冷却はめっき浴温以下まで冷却するため、めっき前に昇温する必要があり、めっき浴前に昇温設備を有さない連続溶融亜鉛めっきラインでは製造することができない。さらに、特許文献7および8では、溶融亜鉛めっきライン内での熱処理中に焼戻しマルテンサイトを生成させる必要があるため、Ms点以下までの冷却後に再加熱する設備が必要である。特許文献14では、硬質第二相の相構成をベイナイトおよびマルテンサイトとしてその分率を規定しているが、規定の範囲では特性のばらつきが大きく、かつばらつきを抑制するためには、操業条件の精密制御が必要となる。特許文献15においても、ベイナイト変態の前にマルテンサイトを生成させるためにMs点以下まで冷却するため、再加熱する設備が必要であり、また安定した特性を得るためには操業条件の精密制御が必須となるため、設備・操業面でのコスト高が生じる。特許文献16および17の鋼板では、ベイナイトを主体とした組織であるため、延性の確保が困難であるほか、焼鈍後にベイナイト生成温度域で保持する必要があり、溶融亜鉛めっきを施す場合にはめっき浴温以上に再加熱する必要が生じる。特許文献18では、鋼板の水素脆化については改善されているものの、成形性に関しては曲げ加工性の検討が若干行われているにすぎず、成分組成や鋼組織等が規定の範囲内であっても、製造条件等によっては十分な曲げ加工性を得られないことがあった。
また、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板において、成形性のなかでも、特に曲げ加工性に優れる鋼板が求められるようになってきた。これは、鋼板の高強度化に伴い、従来施されていた張り出し加工や絞り加工が困難となり、曲げ加工が多用されるようになるためである。
一般に、鋼板の高強度化を図るためには、全組織に対する硬質相の面積率を増加させる必要があり、特に、引張強さが980MPa級以上の高強度を得るためには、硬質相の面積率を大幅に高める必要があり、鋼板の成形性は劣化する傾向にある。
高強度と優れた成形性を兼ね備える鋼板として、従来からフェライト−マルテンサイト二相鋼板がある。このフェライト−マルテンサイト二相鋼板において、硬質相であるマルテンサイトの面積率が小さい場合には、フェライトが変形することにより成形性が確保される。
これに対し、引張強さ:980MPa以上の高強度を得るため、硬質相であるマルテンサイトの面積率を増加させた場合、鋼板の成形性は、フェライトの変形能だけでなく、マルテンサイトの変形能の影響を強く受けるようになる。従って、成形時に亀裂が発生する限界点においては、フェライト−マルテンサイト界面ではなく、マルテンサイト自体が破壊の起点となり、優れた成形性、特に曲げ加工性が得られないことが問題であった。
このため、例えば、冷延鋼板の場合には、水焼入れ機能を有する連続焼鈍設備で、フェライトとオーステナイトの分率を調整してから、水焼入れしてマルテンサイトを生成させた後、昇温・保持してマルテンサイトを焼戻すことにより、硬質相の変形能を向上させてきた。
しかしながら、マルテンサイトを生成させた後に、昇温や高温保持によって焼戻しすることが不可能な設備の場合には、強度の確保は可能なものの、マルテンサイトなどの硬質相の変形能の改善が望めないため、成形性の面では依然として問題を残していた。
本発明は、上記の課題を有利に解決するもので、高強度化と優れた成形性、なかでも優れた曲げ加工性とを兼ね備える引張強さが980MPa以上の高強度鋼板を、その有利な製造方法と共に提供することを目的とする。
なお、本発明では、曲げ加工性をRmin/tの値で評価し、Rmin/t≦3.0を目標とする。
上記の課題を解決すべく、発明者らは、マルテンサイトの面積率が高い場合において、マルテンサイト内部の組織状態が鋼板の加工性に与える影響について鋭意研究を行った。
その結果、冷延鋼板の焼鈍後の冷却過程を適正に制御することにより、マルテンサイトの各ブロック中に鉄系炭化物を均一に析出させることができ、これにより鋼板の曲げ加工性が向上することを見出し、引張強さ:980MPa以上の高強度と優れた成形性、なかでも優れた曲げ加工性が併せて得られることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を重ねて完成されたもので、その要旨構成は、次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.15%以上0.5%以下、
Si:2.0%以下、
Mn:1.0%以上5.0%以下、
P:0.1%以下、
S:0.07%以下、
Al:1.0%以下および
N:0.008%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、鋼組織として面積率で、マルテンサイトが60%以上、フェライトが40%以下、ベイナイトが10%以下および残留オーステナイトが5%以下であり、該マルテンサイトにおける各ブロックのうち、大きさ:5nm以上500nm以下の鉄系炭化物が1mm2あたり1×104個以上析出しているブロックが、該マルテンサイト全体に対して面積率で90%以上であり、引張強さが980MPa以上であることを特徴とする高強度鋼板。
2.前記鋼板がさらに、質量%で、
Cr:0.05%以上0.5%未満、
V:0.005%以上1.0%未満および
Mo:0.005%以上0.5%未満
のうちから選ばれる1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする上記1に記載の高強度鋼板。
3.前記鋼板の表面に、溶融亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層をそなえることを特徴とする上記1または2に記載の高強度鋼板。
4.上記1または2に記載の成分組成になる鋼片を、熱間圧延後、冷間圧延により冷延鋼板とし、ついで該冷延鋼板を、850℃以上1000℃以下の温度域で15秒以上600秒以下焼鈍した後、150℃以上(M−50)℃以下の温度域で定める冷却停止温度:T℃まで20℃/秒以上で冷却し、その後、150℃以上T℃以下の温度域で40秒以上保持することを特徴とする
鋼組織として面積率で、マルテンサイトが60%以上、フェライトが40%以下、ベイナイトが10%以下および残留オーステナイトが5%以下であり、該マルテンサイトにおける各ブロックのうち、大きさ:5nm以上500nm以下の鉄系炭化物が1mm 2 あたり1×10 4 個以上析出しているブロックが、該マルテンサイト全体に対して面積率で90%以上であり、引張強さが980MPa以上である高強度鋼板の製造方法。

M(℃)=540−361×{[C%]/(1−[α%]/100)}−6×[Si%]−40×[Mn%]+30×[Al%]−20×[Cr%]−35×[V%]−10×[Mo%]・・・(1)
ただし、[X%]は鋼板の成分元素Xの質量%、[α%]はフェライトの面積率(%)とする。
5.前記熱処理後、溶融亜鉛めっき処理、あるいはさらに合金化溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする上記4に記載の高強度鋼板の製造方法。
6.前記鋼片において、上記(1)式で表されるMが300℃以上であることを特徴とする上記4または5に記載の高強度鋼板の製造方法。
本発明によれば、焼入れ後の鋼板を再加熱するような特別な製造設備を用いることなく、強度と成形性、なかでも曲げ加工性に優れる引張強さ:980MPa以上の高強度鋼板を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼板の組織を上記のように限定した理由について述べる。
マルテンサイトの面積率:60%以上
マルテンサイトは、鋼板を高強度化するための硬質相である。マルテンサイトの面積率が60%未満の場合、鋼板の引張強さを980MPa以上とすることができないため、マルテンサイトの面積率は60%以上とする。好ましくは70%以上である。本発明においては、後述するように、マルテンサイトの内部組織を調整し、マルテンサイト自体に変形能を付与して、曲げ加工性を改善する。このため、本発明においては、所定条件を満足する限りマルテンサイトの面積率が100%であってもよい。
マルテンサイトにおける各ブロックのうち、大きさ:5nm以上500nm以下の鉄系炭化物が1mm2あたり1×104個以上析出しているブロックの面積率:マルテンサイト全体に対して面積率で90%以上
硬質相であるマルテンサイトに変形能を付与して、鋼板の曲げ加工性を十分に確保するためには、マルテンサイト内に析出させた鉄系炭化物が均一に分布していることが重要である。マルテンサイトの内部組織は、図1に模式的に示すように、パケットおよびブロックに分割される。パケットは、マルテンサイト変態する前の旧オーステナイト粒を数個に分割し、パケットはさらにいくつかの帯状のブロックに分割される。なお、パケットとは、平行に並んだ(晶へき面がオーステナイトの同一{111}面またはその近傍の)ラスの集団からなる領域のことである。また、このような組織は、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction Pattern)を用いた結晶方位測定によって確認することができる。
各ブロックにおいて、大きさが5nm以上500nm以下の範囲である鉄系炭化物が1mm2あたり1×104個以上析出しているブロックの面積率が、マルテンサイト全体に対して90%未満の場合、所望の曲げ加工性が得られない。これは、後述するように鉄系炭化物を適正化して加工性を向上したマルテンサイト以外のマルテンサイトが多くなり、これら加工性に劣るマルテンサイトの影響が大きくなるためである。従って、所望のブロックの面積率は、マルテンサイト全体に対して90%以上とした。
対象とする鉄系炭化物の大きさを5nm以上500nm以下の範囲としたのは、大きさが5nm未満の鉄系炭化物は、量やサイズ、分布状態を定量的に評価するのが困難であり、かつマルテンサイトの硬度を低下させて加工性を向上させる効果が小さいため鋼板の曲げ加工性を改善することができず、一方、500nmを超える大きさの鉄系炭化物は、加工性を劣化させたり、析出物の近傍が破壊の起点となることがある。従って、鉄系炭化物の大きさは5nm以上500nm以下の範囲とする。なお、鉄系炭化物の大きさは、長径と短径の平均値とする。
また、鉄系炭化物の個数が1mm2あたり1×104個未満の場合は、所望の曲げ加工性が得られない。これは、マルテンサイトの焼戻しが十分でなく硬質なマルテンサイトとなるためである。
なお、上記した鉄系炭化物とは、主としてFe3Cであるが、その他ε炭化物などが含まれる場合もある。
また、鉄系炭化物の析出状況を確認するためには、鏡面研摩したサンプルをSEM(走査型電子顕微鏡)またはTEM(透過型電子顕微鏡)観察することが有効である。鉄系炭化物の同定は、例えば、断面研摩サンプルのSEM-EDS(エネルギー分散型X線分析)、EPMA(電子線マイクロアナライザー)、FE-AES(電界放射型−オージェ電子分光)などで行うことができる。
フェライトの面積率:40%以下(0%を含む)
フェライトはマルテンサイトに比べ軟質であり、成形性を良好にする上では有利であるが、フェライトの面積率が40%を超えると、硬質相の面積率を確保できず、引張強さを980MPa以上とすることができないため、フェライトの面積率は40%以下とする。好ましくは35%以下である。なお、前述のように本発明ではマルテンサイトの面積率が100%であってもよく、すなわちフェライトは0%であってもよい。
本発明において、鋼板組織は、上記した範囲のマルテンサイトあるいはさらにフェライトからなるものとすることが好ましい。これらの組織を形成する上で、ベイナイトや残留オーステナイトといったその他の相が形成される場合があるが、以下に述べる許容範囲内であれば、これらの相が形成されていても問題はない。以下、これらの許容範囲について述べる。
ベイナイトの面積率:10%以下(0%を含む)
ベイナイトは、生成温度域によって特性が大きく変化して材質のバラツキを増加させる場合があるため、鋼板組織中に極力含有させない方が望ましいが10%までは許容できる。好ましくは5%以下である。
残留オーステナイト面積率:5%以下(ただし0%を含む)
残留オーステナイトは、鋼板が加工される際に歪誘起変態して硬質なマルテンサイトとなり、鋼板の曲げ加工性を低下させる。このため、残留オーステナイトは鋼板組織中に極力含有させない方が望ましいが、5%までは許容できる。好ましくは3%以下である。
次に、本発明において、成分組成を上記の範囲に設定した理由について述べる。なお、以下の成分組成を表す%は質量%を意味するものとする。
C:0.15%以上0.5%以下
Cは、鋼板の高強度化に必要不可欠な元素であり、C量が0.15%未満では、所望の鋼板強度を確保することが難しい。一方、C量が0.5%を超えると溶接部および熱影響部の硬化が著しく溶接性が劣化する。従って、C量は0.15%以上0.5%以下の範囲とする。好ましくは0.15%以上0.4%以下の範囲である。
Si:2.0%以下
Siは、炭化物の析出状態の制御に有用な元素であるが、Siの過剰な添加は、赤スケール等の発生により表面性状の劣化や、めっき付着・密着性の劣化を招く。従って、Si量は2.0%以下とする。好ましくは、1.6%以下である。なお、Si量は、上記効果を得るために0.1%以上であることが好ましい。
Mn:1.0%以上5.0%以下
Mnは、鋼の強化に有効な元素である。また、オーステナイトを安定化させる元素であり、硬質相の面積率確保に必要な元素である。このためには、Mnは1.0%以上の含有が必要である。一方、Mnが5.0%を超えて過剰に含有されると、鋳造性の劣化などを引き起こす。従って、Mn量は1.0%以上5.0%以下の範囲とする。好ましくは1.5%以上4.0%以下の範囲である。
P:0.1%以下
Pは、0.1%を超えて過剰に含有されると粒界偏析により脆化を引き起こし耐衝撃性を劣化させる。また、合金化溶融亜鉛めっきを施す場合、0.1%を超えるP量は、合金化速度を大幅に遅延させる。従って、P量は0.1%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
S:0.07%以下
Sは、MnSなどの介在物となって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となるので極力低減することが望まれるが、製造コストの観点から0.07%までは許容される。好ましいS量は0.04%以下である。
Al:1.0%以下
Alは、フェライト生成元素であり、製造時におけるフェライト生成量をコントロールするのに有用な元素である。しかしながら、Alの過剰な含有は製鋼時におけるスラブ品質を劣化させる。従って、Al量は1.0%以下とする。好ましくは、0.5%以下である。なお、Al量が少なすぎる場合は、脱酸が難しくなることがあるため、Al量は0.01%以上とすることが好ましい。
N:0.008%以下
Nは、鋼の耐時効性を最も大きく劣化させる元素であり、少ないほどよく、0.008%を超えると耐時効性の劣化が顕著となる。従って、N量は0.008%以下とする。好ましくは0.006%以下である。
また、本発明では、上記した基本成分のほか、鋼板の特性のさらなる改善を目的として、以下に述べる成分を必要に応じて適宜含有させることができる。
Cr:0.05%以上0.50%未満、V:0.005%以上1.0%未満およびMo:0.005%以上0.50%未満のうちから選んだ1種または2種以上
Cr、VおよびMoはいずれも、焼鈍温度からの冷却時にパーライトが生成することを抑制する効果を有するので、必要に応じて含有させることができる。その効果は、Cr:0.05%以上、V:0.005%以上およびMo:0.005%以上で得られる。一方、Cr:0.50%以上、V:1.0%以上およびMo:0.50%以上含有させると、バンド組織の発達によってマルテンサイトの焼戻し度合いに大きな差が生じ、目的とする組織が得られないために成形性の劣化を招く。これは、常温近傍まで焼入れしマルテンサイトを生成させた後、再加熱して焼戻す場合は、バンド組織の影響がある程度緩和されるのに対して、後述する本発明の熱処理では、バンド組織の影響が避けられないからである。従って、これらの元素を含有させる場合には、Cr:0.05%以上0.50%未満、V:0.005%以上1.0%未満およびMo:0.005%以上0.50%未満の範囲とする。
なお、本発明では、上記した成分元素以外に、Ti、Nb、B、Ni、Cu、Ca、REMなどの元素を含有させても良い。以下、これらの元素について好ましい含有量の範囲を記載する。
Ti:0.01%以上0.1%以下およびNb:0.01%以上0.1%以下のうちから選ばれる1種または2種
TiおよびNbはいずれも、鋼の析出強化に有効で、その効果はそれぞれ0.01%以上で得られ、一方、0.1%を超えると成形性および形状凍結性が低下する。従って、TiおよびNbを含有させる場合には、それぞれ0.01%以上0.1%以下の範囲とする。
B:0.0003%以上0.0050%以下
Bは、オーステナイト粒界からのフェライトの生成・成長を抑制する作用を有するため、必要に応じて含有させることができる。その効果は、B量が0.0003%以上で得られ、一方、0.0050%を超えると成形性が大きく低下する。従って、Bを含有させる場合には、0.0003%以上0.0050%以下の範囲とする。
Ni:0.05%以上2.0%以下およびCu:0.05%以上2.0%以下のうちから選んだ1種または2種
NiおよびCuはいずれも、鋼の強化に有用であり、鋼板に溶融亜鉛めっきを施す場合には、鋼板表層部の内部酸化を促進して、めっき密着性を向上させる。これらの効果はそれぞれ0.05%以上で得られ、一方、2.0%を超えると鋼板の成形性が低下する。従って、NiおよびCuを含有させる場合には、それぞれ0.05%以上2.0%以下の範囲とする。
Ca:0.001%以上0.005%以下およびREM:0.001%以上0.005%以下のうちから選んだ1種または2種
CaおよびREMはいずれも、硫化物の形状を球状化し、曲げ加工性への硫化物の悪影響を改善するために有効な元素である。その効果は、それぞれ0.001%以上で得られる。一方、0.005%を超える含有は、介在物等の増加を招き、鋼板の表面欠陥や内部欠陥を引き起こす。従って、CaおよびREMを含有させる場合には、それぞれ0.001%以上0.005%以下の範囲とする。
本発明の鋼板において、上記以外の成分はFeおよび不可避的不純物である。ただし、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記以外の成分の含有を拒むものでない。
また、後述するように、本発明鋼板の成分組成は、フェライトの面積率との関係式であるM≧300℃を満足していることが、安定した生産上好ましく、製造条件のばらつきによる特性ばらつきを抑制する上で好ましい。
次に、本発明の鋼板の好適製造方法および製造条件の限定理由について説明する。
まず、上記の好適成分組成に調整した鋼片を製造後、熱間圧延し、ついで冷間圧延を施して冷延鋼板とする。本発明において、これらの処理に特に制限はなく、常法に従って行えば良い。
なお、好適な製造条件は次のとおりである。鋼片を、1100℃以上1300℃以下の温度域に加熱したのち、仕上げ熱間圧延終了温度を870℃以上950℃以下として熱間圧延し、得られた熱延鋼板を350℃以上720℃以下の温度域の巻取温度で巻き取る。ついで、熱延鋼板を酸洗後、40%以上90%以下の範囲の圧下率で冷間圧延を行い冷延鋼板とする。
なお、本発明では、鋼板を通常の製鋼、鋳造、熱間圧延、酸洗および冷間圧延の各工程を経て製造する場合を想定しているが、例えば、薄スラブ鋳造やストリップ鋳造などにより熱間圧延工程の一部または全部を省略して製造してもよい。
得られた冷延鋼板を、850℃以上1000℃以下の温度域で、15秒以上600秒以下の焼鈍を施す。焼鈍温度が850℃未満では、フェライトの再結晶が完了せず、目的の特性が得られない場合がある。一方、焼鈍温度が1000℃を越えると、オーステナイト粒が著しく成長し、所望の特性が得られない。従って、焼鈍温度は850℃以上1000℃以下の範囲とする。好ましくは850℃以上900℃以下の範囲である。また、焼鈍時間が15秒未満では、鋼板中の炭化物が十分に溶解しない場合がある。一方、焼鈍時間が600秒を超えると、多大なエネルギー消費にともなうコスト増を招く。従って、焼鈍時間は、15秒以上600秒以下の範囲とする。好ましくは30秒以上400秒以下の範囲である。
焼鈍後の熱処理サイクルが、本発明で規定する鋼組織を得る上で最も重要である。以下に、本発明における焼鈍後の熱処理サイクルについて説明する。
本発明では、焼鈍後の鋼板は、150℃以上(M-50)℃以下の範囲の冷却停止温度:T℃まで20℃/秒以上の速度で冷却され、その後、150℃以上T℃以下の温度域で40秒以上保持される。
焼鈍を終え、20℃/秒以上の速度で急冷された鋼板は、マルテンサイト変態開始温度(Ms点)に達するとマルテンサイト変態が開始する。
本発明では、このような急冷をT℃で停止し、T〜150℃の温度域で40秒以上保持する。T℃で冷却を停止した時点では、鋼板組織中には、Ms点からT℃までの間に形成されたマルテンサイトと未変態のオーステナイトが存在する。T〜150℃の温度域で所定時間以上保持する間に、急冷中に形成されたマルテンサイトはオートテンパされ、未変態オーステナイトはマルテンサイト変態すると同時にオートテンパされる。このような変態過程を経ることにより、マルテンサイトの内部組織を、前記のように調整することができる。
なお、ここでオートテンパとは、生成したマルテンサイトを、昇温過程を経ることなく、徐冷または一定温度保持により焼戻すことである。
また、本発明では、Ms点は下記Mにより求めるものとする。
M(℃)=540−361×{[C%]/(1−[α%]/100)}−6×[Si%]−40×[Mn%]+30×[Al%]−20×[Cr%]−35×[V%]−10×[Mo%]・・・(1)
ただし、[X%]は鋼板の成分元素Xの質量%、[α%]はフェライトの面積率(%)とする。
なお、上記(1)式は、発明者らが求めたMs点の近似式である。
冷却速度が20℃/秒未満の場合、パーライトやベイナイトの生成のため目的の組織が得られないことから、冷却速度は20℃/秒以上とする。好ましくは25℃/秒以上である。一方、冷却速度が200℃/秒を超えると、特別な冷却設備が必要とされ、急冷停止後の制御が難しくなることが懸念されるため、200℃/秒以下が好ましい。
冷却停止温度:T℃が、(M−50)℃より高い場合、マルテンサイト変態が十分に進んでいない状態で焼戻しが段階的に進むようになり、マルテンサイト中の炭化物の析出状態にバラツキが生じてしまう。一方、冷却停止温度Tが150℃未満の場合、生成したマルテンサイトの焼戻しが困難となる。従って、冷却停止温度Tは150℃以上(M−50)℃以下の範囲とする。好ましくは180℃以上である。
冷却が停止された鋼板は、150℃以上T以下の温度域で保持されるが、該温度域での保持時間が40秒未満の場合、マルテンサイトの焼戻しが十分に行われず所望の炭化物を得ることができない。従って、保持時間は40秒以上とする。好ましくは60秒以上である。一方、保持時間の上限は特に規定しないが、製造効率の観点から600秒以下とすることが好ましい。
保持が終了した鋼板のその後の冷却速度については特に制限はなく、そのまま室温まで放冷してもよいし、急冷してもよい。
さらに、本発明の製造方法では、上記(1)式で示すMが300℃以上の場合に安定してオートテンパ処理を施すことができる。
M(℃)=540−361×{[C%]/(1−[α%]/100)}−6×[Si%]−40×[Mn%]+30×[Al%]
−20×[Cr%]−35×[V%]−10×[Mo%]・・・(1)
ただし、[X%]は合金元素Xの質量%、[α%]はフェライトの面積率(%)
とする。
上掲式(1)であらわされるMは、経験的に求められるマルテンサイト変態が開始するMs点の近似式であり、このMはマルテンサイトからの鉄系炭化物の析出挙動と大きく関係していると考えられる。従って、Mは、マルテンサイトを安定して焼戻すことの指標として用いることができる。Mが300℃未満であってもオートテンパは進行するが、マルテンサイト変態とオートテンパが進行する温度が低温となるため、これらの進行が遅くなりやすく、所望の鉄系炭化物の分布を得るためには、Mが300℃以上の場合に比べて、冷却速度を遅くする、あるいは長時間の低温保持が必要となり、製造効率を著しく悪化させるおそれがあるので、Mは300℃以上とすることが好ましい。
なお、フェライトの面積率は、例えば、1000〜3000倍のSEM写真の画像処理・解析によって測定される。フェライトは、上記した条件での焼鈍・冷却後の鋼板において観察されるものである。上記Mを300℃以上とするためには、所望の成分組成の冷延鋼板を製造後、フェライトの面積率を求め、鋼板組成から求まる合金元素の含有量とともに上記(1)式からMの値を求めればよい。Mが300℃未満となる場合には、フェライトの面積率がより小さくなるように、例えば、焼鈍温度を高くして、その後の冷却を速くするなど適宜熱処理条件を調整して所望のMを得られるようにすればよく、また(1)式中の成分組成の含有量を調整してもよい。
なお、本発明における一連の熱処理では、上述した所定の温度範囲内であれば、保持温度は一定である必要はなく、規定の範囲内であれば変動しても本発明の趣旨を損なわない。冷却速度についても同様である。また、熱履歴さえ満足すれば、鋼板はいかなる設備で熱処理を施されてもかまわない。さらに、オートテンパ処理後に、形状矯正のため本発明の鋼板に調質圧延をすることも本発明の範囲に含まれる。
また、本発明の鋼板には、溶融亜鉛めっき処理さらには合金化溶融亜鉛めっき処理を施すことができる。溶融亜鉛めっきおよび合金化溶融亜鉛めっき処理は、一連の焼鈍工程の後に行うことができる。この際、溶融亜鉛めっき処理および合金化処理を450℃以上580℃以下の温度域で行うことが好ましく、この場合、溶融亜鉛めっき処理あるいはさらに合金化処理時間を含めて、450℃以上580℃以下の温度域での保持時間を100秒以下とするのがよい。
なお、上記した本発明の製造方法によって高強度鋼板を製造した後、改めて溶融亜鉛めっき処理および合金化溶融亜鉛めっき処理を施すこともできる。
溶融亜鉛めっきおよび合金化溶融亜鉛めっきの方法は以下のとおりである。まず、鋼板をめっき浴中に浸入させ、ガスワイピングなどで付着量を調整する。めっき浴中の溶解Al量は、溶融亜鉛めっきの場合には、0.12%以上0.22%以下の範囲、合金化溶融亜鉛めっきの場合には、0.08%以上0.18%以下の範囲とする。処理温度は、溶融亜鉛めっきの場合は450℃以上500℃以下の範囲とし、さらに合金化を施す場合には450℃以上580℃以下の範囲で処理することが望ましい。処理温度が580℃を超えると、マルテンサイトから炭化物が過剰に析出し、場合によってはパーライト化するため、目標とする強度や延性が得られないことがあり、パウダリング性も低下する。一方、処理温度が450℃未満の場合には、合金化が進行しない。
めっき付着量は片面当たり20〜150g/m2とすることが好ましい。めっき付着量が20g/m2未満では耐食性が不足し、一方150g/m2を超えても耐食効果は飽和し、コストアップを招く。また、めっき層の合金化度は、めっき層中のFe含有量で7質量%以上15質量%以下の範囲とすることが好ましい。合金化度が7質量%未満では、合金化ムラが生じ外観品質が劣化したり、めっき層中にζ相が生成され鋼板の摺動性が劣化したりする。一方、合金化度が15質量%を超えると硬質で脆いΓ相が多量に形成され、めっき密着性が劣化する。
以下、本発明を実施例によってさらに説明するが、下記の実施例は本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨構成の範囲内で構成を変更することは、本発明の範囲に含まれるものとする。
表1に示す成分組成になる鋼片を、1250℃に加熱したのち、880℃で仕上げ熱間圧延した熱延鋼板を600℃で巻き取り、ついで熱延鋼板を酸洗後、65%の圧延率で冷間圧延し、板厚:1.2mmの冷延鋼板とした。得られた冷延鋼板を、表2に示す条件で熱処理を施した。同表中のいずれのサンプルも焼入れは実施していない。
溶融亜鉛めっきは、めっき浴の温度:463℃、目付け量(片面あたり):50g/m2となるように両面めっきを施した。また、合金化溶融亜鉛めっきは、処理温度:500℃として、めっき層の合金化度(Fe質量%(Fe含有量))が9質量%となる条件で行った。なお、合金化溶融亜鉛めっき処理での450℃以上580℃以下の温度域での保持時間は100秒以下であった。得られた鋼板は、めっきの有無にかかわらず圧延率(伸び率):0.3%の調質圧延を施した。
Figure 0005326362
Figure 0005326362
かくして得られた鋼板の諸特性を以下の方法で評価した。
各鋼板から試料を切出し、圧延方向に平行な面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて3000倍で組織観察を行い、各相の面積率を測定した。面積率は10視野観察した平均値とした。
マルテンサイト中のブロックは、EBSDにより結晶方位測定することによって同定した。
測定条件は、(40〜100μm)×(40〜100μm)の範囲でステップサイズを0.05〜0.5μm
とし、他の領域と10°以上の結晶方位差を有するラスの集団を同一のブロックと判断した。
鉄系炭化物については、SEMを用いて、その大きさと析出状態に応じて10,000〜30,000倍で観察することにより、鉄系炭化物数を測定した。鉄系炭化物数は5〜20視野観察した平均値とした。なお、鉄系炭化物の大きさは、長径と短径の平均値で評価した。
強度は、鋼板の圧延方向に対して平行方向からJIS5号試験片を採取し、引張試験をJIS Z 2241に準拠して行った。引張強さ(TS)および全伸び(T.El)を測定し、強度と伸びのバランスを評価する引張強さと全伸びの積(TS×T.El)を算出した。
曲げ加工性は、U曲げ試験の結果で評価した。鋼板の圧延方向に対して平行方向から20×100mmの大きさの試験片を採取して試験を行い、割れることなく成形することができる最小曲げ半径:Rmin(mm)を測定し、鋼板板厚:t(mm)で除したRmin/tを算出した。
なお、試験は、JIS Z 2248に規定される押曲げ法に準拠して行った。
なお、曲げ加工性の評価にはV曲げやU曲げなど様々な評価方法があるが、本発明では鋼板そのもの曲げ加工性を評価するためには、他の要因の影響が少ないU曲げ試験によって測定されるRminを用いることが有効であると判断し、U曲げ試験によって得られる結果によって鋼板の曲げ加工性を評価した。
以上の評価結果を表3に示す。
Figure 0005326362
同表から明らかなように、本発明の鋼板はいずれも、引張強さ:980MPa以上であり、曲げ加工性を示すRmin/tも目標値を満たすことから、高強度と優れた曲げ加工性を両立していることが確認できる。なお、発明例中、Mが300℃以上のものは、曲げ加工性、特に高強度化を図った場合にも曲げ加工性が劣化しない点で優れている。
本発明の鋼板のマルテンサイトの内部組織を模式的に示したものである。
符号の説明
1 旧オーステナイト粒界
2 パケット粒界
3 ブロック

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.15%以上0.5%以下、
    Si:2.0%以下、
    Mn:1.0%以上5.0%以下、
    P:0.1%以下、
    S:0.07%以下、
    Al:1.0%以下および
    N:0.008%以下
    を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、鋼組織として面積率で、マルテンサイトが60%以上、フェライトが40%以下、ベイナイトが10%以下および残留オーステナイトが5%以下であり、該マルテンサイトにおける各ブロックのうち、大きさ:5nm以上500nm以下の鉄系炭化物が1mm2あたり1×104個以上析出しているブロックが、該マルテンサイト全体に対して面積率で90%以上であり、引張強さが980MPa以上であることを特徴とする高強度鋼板。
  2. 前記鋼板がさらに、質量%で、
    Cr:0.05%以上0.5%未満、
    V:0.005%以上1.0%未満および
    Mo:0.005%以上0.5%未満
    のうちから選ばれる1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
  3. 前記鋼板の表面に、溶融亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層をそなえることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼板。
  4. 請求項1または2に記載の成分組成になる鋼片を、熱間圧延後、冷間圧延により冷延鋼板とし、ついで該冷延鋼板を、850℃以上1000℃以下の温度域で15秒以上600秒以下焼鈍した後、150℃以上(M−50)℃以下の温度域で定める冷却停止温度:T℃まで20℃/秒以上で冷却し、その後、150℃以上T℃以下の温度域で40秒以上保持することを特徴とする
    鋼組織として面積率で、マルテンサイトが60%以上、フェライトが40%以下、ベイナイトが10%以下および残留オーステナイトが5%以下であり、該マルテンサイトにおける各ブロックのうち、大きさ:5nm以上500nm以下の鉄系炭化物が1mm 2 あたり1×10 4 個以上析出しているブロックが、該マルテンサイト全体に対して面積率で90%以上であり、引張強さが980MPa以上である高強度鋼板の製造方法。

    M(℃)=540−361×{[C%]/(1−[α%]/100)}−6×[Si%]−40×[Mn%]+30×[Al%]−20×[Cr%]−35×[V%]−10×[Mo%]・・・(1)
    ただし、[X%]は鋼板の成分元素Xの質量%、[α%]はフェライトの面積率(%)とする。
  5. 前記熱処理後、溶融亜鉛めっき処理、あるいはさらに合金化溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする請求項4に記載の高強度鋼板の製造方法。
  6. 前記鋼片において、上記(1)式で表されるMが300℃以上であることを特徴とする請求項4または5に記載の高強度鋼板の製造方法。
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