JP4362319B2 - 耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4362319B2 JP4362319B2 JP2003156473A JP2003156473A JP4362319B2 JP 4362319 B2 JP4362319 B2 JP 4362319B2 JP 2003156473 A JP2003156473 A JP 2003156473A JP 2003156473 A JP2003156473 A JP 2003156473A JP 4362319 B2 JP4362319 B2 JP 4362319B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- delayed fracture
- steel sheet
- fracture resistance
- strength steel
- temperature
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Metal Rolling (AREA)
- Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車部品などに用いられる1180MPa以上の引張強度を有し、かつ耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題への対応のため炭酸ガス排出低減や燃費低減を目的として、自動車の軽量化が望まれている。また、衝突安全性向上に対する要求はますます高くなっている。自動車の軽量化や衝突安全性向上のためには鋼材の高強度化が有効な手段であり、近年ではバンパーやドアインパクトビームなどの補強材やシートレールなどの用途に、引張強度を1180MPa以上に高めた超高強度鋼板が要望されている。
【0003】
しかしながら、一般に鋼材を高強度化すると、切欠き感受性が高まり環境の悪影響を受けやすくなる。特に腐食環境下では表面に腐食ピットが形成されると、これが応力集中源となり、さらに腐食反応の進行に伴って発生する水素により、水素脆化による割れ、所謂遅れ破壊が発生するという問題があった。
【0004】
遅れ破壊を防止する方法については、これまで高強度ボルトやPC鋼棒などで検討されており、結晶粒を微細化させる方法やP,Sなどの結晶粒界に偏析する不純物元素を低減して結晶粒界を強化する方法などが考えられているが、いずれの方法も本発明者らの試験では大幅な耐遅れ破壊特性の改善には至っていない。
【0005】
また、高強度ボルトやPC鋼棒などは、通常C量が0.3%を超える中炭素鋼を焼き入れ焼戻し処理して製造されるため、高温焼き戻し時に析出するVCやMO2 Cなどの炭化物を水素トラップサイトとして用いる方法が考えられている。しかしながら、炭化物の析出に長時間を要するため製造性に問題があることに加え、炭素量が高いがゆえに薄鋼板で要求される加工性や溶接性が劣悪である。一方、炭素量を下げると高温焼き戻しでは所要の強度が得られない。従って、上記の方法を薄鋼板に適用することは困難である。
【0006】
高強度鋼板の耐遅れ破壊特性を向上させる技術として、例えば特許文献1には、フェライトを面積率で3〜50%含有する組織とする技術が提案されているが、本発明者らの試験では大幅な耐遅れ破壊特性の改善には至っていない。
以上のように、従来の技術では、1180MPa以上の引張強度を有し、かつ耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板を製造することは困難であった。
【0007】
【特許文献1】
特許第3286047号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような問題点を解決しようとするものであって、1180MPa以上の引張強度を有し、かつ耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、まず通常の薄鋼板製造プロセスによって製造した種々の強度レベルの高強度鋼板を用いて、耐遅れ破壊特性を詳細に解析した。高強度鋼板の耐遅れ破壊特性の評価は、遅れ破壊が発生しない「限界拡散性水素量」を求めることにより評価した。この評価方法は、電解水素チャージにより種々のレベルの拡散性水素量を試料に含有させた後、遅れ破壊試験中に試料から大気中に水素が抜けることを防止するためCdめっきを施し、その後、大気中で所定の荷重を負荷し、遅れ破壊が発生しなくなる拡散性水素量を評価するものである。
【0010】
ここで遅れ破壊試験片は、図1に示すような形状の切り欠き付きのものであり、遅れ破壊試験の負荷応力は引張強度の0.9倍である。なお、試料中の拡散性水素量はガスクロマトグラフによる昇温水素分析法で測定することができる。本発明では、鋼材を100℃/hourの昇温速度で加熱した際に、室温から300℃までに鋼材から放出される水素量を「拡散性水素量」と定義している。
【0011】
図2に、拡散性水素量と遅れ破壊に至るまでの破断時間の関係について解析した一例を示す。試料中に含まれる拡散性水素量が少なくなるほど遅れ破壊に至るまでの時間が長くなり、拡散性水素量がある値以下では遅れ破壊が発生しなくなる。この水素量を「限界拡散性水素量」と定義する。この限界拡散性水素量が高いほど鋼材の耐遅れ破壊特性は良好であり、鋼材の成分、熱処理等の製造条件によって決まる鋼材固有の値である。なお、試料中の拡散性水素量はガスクロマトグラフで容易に測定することができる。
【0012】
そこで、高強度鋼板の限界拡散性水素量を増加させる手段を種々検討した。その結果、(Mo,V)2 Cが水素トラップサイトとして非常に有効であり、限界拡散性水素量を大幅に高めることを見出した。さらに、(Mo,V)2 Cは成分と熱間圧延条件を適切に制御することにより、通常の薄鋼板製造プロセスで有効に析出させることができることを見出した。
また、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイトまたはベイナイトの何れか1種以上を面積率にて70%以上含み、残留オーステナイトの含有率が面積率で10%以下とすることにより、限界拡散性水素量を大幅に高めることを見出した。
【0013】
さらに研究を進めた結果、MoとVの添加比率(Mo/V)を1以上とし、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイトまたはベイナイトの何れか1種以上を面積率にて70%以上含み、残留オーステナイトの含有率が面積率にて5%以下とすることにより、1180MPa上の引張強度を有しかつ耐水素疲労特性に優れた高強度鋼板が得られることを知見した。
【0014】
本発明はこのような知見に基づいて構成したものであり、その要旨は、下記のとおりである。
(1)質量%で、
C :0.05〜0.3%、 Si:3.0%未満、
Mn:0.5〜3.0%、 Mo:0.2〜3.0%、
V :0.02〜0.5%、 P :0.02%以下、
S :0.02%以下、 Al:0.005〜0.1%、
N :0.001〜0.05%
を含有し、かつ
1≦(Mo/V)
を満足し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、引張強度が1180MPa以上であることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
(2) 前記(1)記載の成分を含有し、さらに質量%で、
Cr:0.05〜3.0%、 Ni:0.05〜5.0%、
Cu:0.05〜2.0%、 W :0.05〜3.0%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
【0015】
(3)前記(1)又は(2)記載の成分を含有し、さらに質量%で、
Ti:0.005〜0.3%、 Nb:0.005〜0.3%、
B :0.0003〜0.05%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の成分を含有し、さらに質量%で、
Ca:0.001〜0.01%、Mg:0.0005〜0.01%、
Zr:0.001〜0.05%、REM:0.001〜0.05%、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
【0016】
(5) 限界拡散性水素量が0.2ppm以上であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
(6) マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイトの何れか1種以上を面積率にて70%以上含み、残留オーステナイトの含有率が面積率にて5%以下であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
【0017】
(7) 前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の高強度鋼板を製造する方法であって、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の成分からなる鋼スラブを1100℃以上の温度に加熱し、850℃以上の仕上げ圧延温度で熱間圧延し、500℃以上700℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
(8) 鋼板を巻き取った後、酸洗し、冷間圧延を行い、Ac3 変態点以上の温度に均熱して連続焼鈍を行い、加熱温度からマルテンサイト変態開始温度以下まで20〜300℃/秒で冷却し、その後、再加熱するかまたはそのままの状態で100℃〜Ac1 変態点で焼戻すことを特徴とする前記(7)記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明における各要件の意義及び限定理由について具体的に説明する。
まず、本発明における高強度鋼板の成分限定理由について説明する。
C:Cは鋼の強度を増加させる元素として添加されるものである。0.05%未満では1180MPa以上の引張強度の確保が困難であり、0.3%を超える過剰の添加は延性、溶接性、靭性などを著しく劣化させる。従ってC含有量は0.05〜0.3%とした。
【0019】
Si:Siは固溶強化により鋼板の強度を増大させるのに有用な元素であるが、3.0%を超える過剰の添加は熱間圧延で生じるスケールの剥離性や化成処理性を著しく劣化させるため、Si含有量は3.0%未満とした。Si量の下限は特に限定しないが、強度を増大させるためには0.05%以上含有することが好ましい。
【0020】
Mn:Mnは焼入れ性を高めるために有効な元素であるが、一方で粒界を脆化させ耐遅れ破壊特性を劣化させる有害な元素である。0.5%未満では焼入れ性を高める効果が発現されず、3.0%を超える過剰の添加は耐遅れ破壊特性を劣化させる。従ってMn含有量は0.5〜3.0%とした。
【0021】
Mo:MoはV,Cとともに(Mo,V)2 Cを形成し、拡散性水素をトラップすることにより耐遅れ破壊特性を向上させる必須の元素であるが、0.1%未満ではその効果が発現されず、3.0%を超える過剰の添加は靭性を低下させるため、Mo含有量は0.1〜3.0%とした。なお、Mo含有量の下限値は、本発明の実施例に基づき、0.2%以上とする。
【0022】
V:VはMo,Cとともに(Mo,V)2 Cを形成し、拡散性水素をトラップすることにより耐遅れ破壊特性を向上させる必須の元素であるが、0.02%未満ではその効果が発現されず、0.5%を超える過剰の添加は靭性を低下させるため、V含有量は0.02〜0.5%とした。
【0023】
P:Pは粒界に偏析して粒界強度を低下させ、靱性を劣化させる不純物元素であり、可及的低レベルが望ましいが、現状精錬技術の到達可能レベルとコストを考慮して、上限を0.02%とした。
【0024】
S:Sは熱間加工性及び靭性を劣化させる不純物元素であり、可及的低レベルが望ましいが、現状精錬技術の到達可能レベルとコストを考慮して、上限を0.02%とした。
【0025】
また、本発明者らは、0.15%C−0.5%Si−1.5%Mnをベース成分とし、MoとVの添加比率を種々に変えた鋼を通常の薄鋼板製造プロセスによって製造した。焼鈍条件を調整することにより同一強度レベルに調質し、限界拡散性水素量を測定した。MoとVの添加比率(Mo/V)と限界拡散性水素量の関係を図3に示す。図3より、Mo/Vが1以上のとき限界拡散性水素量が大幅に向上することを知見した。その他のC,Si,Mn量でも同じことが成立することを確認した。従って、Mo/Vを1以上とした。
【0026】
以上にAlとNを加えた元素が本発明の基本成分であり、上記以外はFe及び不可避的不純物からなるが、所望の強度レベルやその他の必要特性に応じて、Cr,Ni,Cu,Ti,Nb,B,Ca,Mg,Zr,REMの1種または2種以上を添加しても良い。
【0027】
Cr,Ni,Cu,W:Cr,Ni,Cu,Wは、いずれも耐食性及び強度を向上させる有効な元素である。この効果はそれぞれ0.05%未満では発現されず、Crは3%、Niは5%、Cuは2%、Wは3%を超える過剰添加は靭性を劣化させる。従って、Crの含有量を0.05〜3.0%、Niの含有量を0.05〜5.0%、Cuの含有量を0.05〜2.0%、Wの含有量を0.05〜3.0%とした。
【0028】
Al:Alは脱酸剤として、またAlNを形成し結晶粒粗大化を抑制する効果があるが、0.005%未満ではその効果が発現されず、0.1%を超えて過剰添加すると靭性が劣化するため、Alの含有量を0.005〜0.1%とした。
【0029】
Ti:TiはTiNを形成し結晶粒粗大化を抑制する効果があるが、0.005%未満ではその効果が発現されず、0.3%を超えて過剰添加すると靭性が劣化するため、Tiの含有量を0.005〜0.3%とした。
【0030】
Nb:Nbは微細な炭窒化物を形成し結晶粒粗大化を抑制する効果があるが、0.005%未満ではその効果が発現されず、0.3%を超えて過剰添加すると靭性が劣化するため、Nbの含有量を0.005〜0.3%とした。
【0031】
B:Bは自ら粒界に偏析することにより粒界結合力を向上させるとともに、P,S及びCuの粒界偏析を抑制し、粒界強度を高め、遅れ破壊特性や靭性を向上させるのに有効な元素であり、また焼入れ性を高めるのに有効な元素でも有る。これらの効果は0.0003%未満では発現されず、0.05%を超えて過剰添加すると粒界に粗大な析出物が生成し熱間加工性や靭性が劣化するため、Bの含有量を0.0003〜0.05%とした。
【0032】
N:Nは窒化物を形成し結晶粒粗大化を抑制する効果があるが、0.001%未満ではその効果が発現されず、0.05%を超えて添加すると靭性が劣化するため、N含有量を0.001〜0.05%とした。
【0033】
Ca,Mg,Zr,REM:Ca,Mg,Zr,REMは、いずれもSによる熱間加工性や靭性の劣化を抑制し、かつ耐遅れ破壊特性を向上させる有効な元素である。Caは0.001%未満、Mgは0.0005%未満、Zrは0.001%未満、REMは0.001%未満ではこの効果は発現されず、Caは0.01%、Mgは0.01%、Zrは0.05%、REMは0.05%を超える過剰添加は靭性を劣化させる。従って、Caの含有量を0.001〜0.01%、Mgの含有量を0.0005〜0.01%、Zrの含有量を0.001〜0.05%、REMの含有量を0.001〜0.05%とした。
【0034】
限界拡散性水素量については0.2ppm未満であると、耐遅れ破壊特性が十分ではなく実際に使用される代表的な環境で遅れ破壊を生じる場合があるため、0.2ppm以上とする。
【0035】
次に本発明における高強度鋼板の組織について説明する。
本発明による鋼板の組織はマルテンサイト、焼戻しマルテンサイトまたはベイナイトの何れか1種以上を面積率にて70%以上含み、残留オーステナイトの含有率が面積率にて5%以下とする。本発明のマルテンサイト、焼戻しマルテンサイトは均質な組織であることを特徴とし、残部組織としてフェライトなどを含む場合においてもそれらはランダムに存在し規則性を有しない。
【0036】
マルテンサイト、焼戻しマルテンサイトまたはベイナイトの何れか1種以上を面積率にて70%以上とするのは、これらの硬質の低温変態組織が面積率で70%未満であれば、応力負荷時にフェライト等の軟質層に変形が集中し、軟質層と硬質層の境界に生じるボイドの連結が促進され耐遅れ破壊特性が劣化するためである。
【0037】
また、残留オーステナイトの含有率を5%以下とするのは、残留オーステナイトが5%を超えると耐遅れ破壊特性が大幅に劣化するためである。これは、曲げ加工やプレス成形などにより水素固溶度の高い残留オーステナイトが加工誘起変態して、水素固溶度の低いマルテンサイトに変態すると、残留γ中に固溶していた水素が吐き出されこれが水素供給源となるためと考えられる。
【0038】
残部組織として、フェライト、残留オーステナイト、パーライトの1種又は2種以上を含有してもよい。フェライトはポリゴナルフェライト、アシキュラーフェライトのいずれでもよい。これらの組織は光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡で観察することにより同定することができる。
尚、本発明において、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイト、残留オーステナイトの各組織の面積率は、鋼板のC断面t/4部を光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡により、200〜1000倍で10視野観察した場合の平均値と定義する。
【0039】
次に製造条件の限定理由について述べる。
本発明においては、上記化学成分を有する鋼スラブを1100℃以上の温度に加熱し、850℃以上の仕上げ圧延温度で熱間圧延し、500℃以上700℃以下の温度で巻き取ることにより、熱間圧延を行う。スラブ加熱温度が1100℃未満であると、V等が十分に固溶せずに必要な強度や耐遅れ破壊特性が得られないため、スラブ加熱温度の下限は1100℃とした。
【0040】
仕上げ圧延温度が850℃未満であると、熱延中に(Mo,V)2 C等が析出し粗大化するために必要な耐遅れ破壊特性が得られないので、仕上げ圧延温度の下限は850℃にした。
巻き取り温度が500℃未満では、水素トラップサイトとして有用な(Mo,V)2 C等が析出せず、巻き取り温度が700℃を超えると、(Mo,V)2 C等が粗大化し有効な水素トラップサイトとして機能しなくなるため、いずれの場合も必要な耐遅れ破壊特性が得られない。そこで、巻き取り温度は500℃以上700℃以下とした。
【0041】
冷延鋼板を製造する場合には、鋼板を巻き取った後、酸洗し、冷間圧延を行い、連続焼鈍を行う。連続焼鈍を行うに際し、全体をオーステナイト変態させるために、連続焼鈍時の加熱温度はAc3 変態点以上とした。Ac3 変態点以上に加熱後、加熱温度から冷却を開始するが、冷却速度が20℃/秒未満であると、冷却中に多量のフェライト、パーライト、ベイナイトが生成し強度が低下する可能性が高くなるため、冷却速度の下限を20℃/秒に限定した。
【0042】
冷却中に生成しやすいフェライト、パーライト、ベイナイトをできるだけ防止する観点で、より望ましい冷却速度は50℃/秒以上である。一方、冷却速度が300℃/秒を超えると焼割れが発生しやすくなるので、冷却速度を300℃/秒以下とする。なお、マルテンサイトを生成させるため冷却の終了温度はマルテンサイト変態開始温度(MS点)以下である。
冷却後、後述の焼戻し温度まで再加熱しても良く、再加熱せずに冷却を終了した温度でそのまま保持し後述の焼戻し処理をしてもかまわない。
【0043】
次に焼戻し処理条件について述べる。上記焼鈍後の鋼はマルテンサイト主体の組織である。マルテンサイト中の過剰な転位や残留応力を回復により消滅させ、過飽和炭素原子を炭化物として析出させることによって、靭性、延性を高めるために焼戻しを行う。この焼戻し処理において加熱温度がAc1 変態点を超えると逆変態が生じて最終的にマルテンサイト、焼戻しマルテンサイトまたはベイナイト主体の組織の組織が得られず、また、析出物が粗大化し水素トラップサイトとしての効果が低下するため、加熱温度はAc1 変態点以下に制限した。一方、加熱温度が100℃未満であれば前記の効果が得られないので、加熱温度は100℃以上とする。
【0044】
なお、300℃を超える温度で焼戻しする場合には、1180MPa以上の強度を安定して確保するために多量の合金元素の添加を必要とするため、望ましくは焼戻し温度の範囲は100〜300℃とする。また、耐遅れ破壊特性向上の点で、焼戻し時の加熱速度は5℃/秒以上が望ましく、焼戻し後の冷却速度は20℃/秒以上が望ましい。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明の効果をさらに具体的に説明する。
表1に示す組成を有する鋼を、表2に示す条件で熱間圧延し、冷間圧延した後、表2に示す条件で焼鈍した。焼鈍後の組織分率、降伏応力及び引張強度を表2に併せて示す。本発明例(No. 1〜5)ではいずれも1180MPa以上の引張強度が得られている。これらの鋼板の耐遅れ破壊特性について前述した限界拡散性水素量で評価した。耐遅れ破壊特性評価結果を表2に併せて示す。
【0046】
表1、表2より、本発明例(No. 1〜5)ではいずれも限界拡散性水素量が0.2ppm以上であり、耐遅れ破壊特性が優れている。
Mo量、V量、又は(Mo/V)のいずれか一つ以上が本発明の範囲から逸脱している比較例(No. 6、7、8)では、いずれも限界拡散性水素量が0.1ppm以下と低く、耐遅れ破壊特性に劣ることがわかる。
また、熱延条件あるいは焼鈍条件が本発明の範囲から逸脱している比較例(No. 9〜11)では、引張強度が1180MPaに未達であり、マルテンサイト+焼戻しマルテンサイト+ベイナイトの面積率、あるいは残留オーステナイトの面積率が本発明で示した範囲から逸脱しており、かつ限界拡散性水素量が0.1ppm以下と低く、耐遅れ破壊特性に劣ることがわかる。
【0047】
以上より、鋼成分及びMoとVの添加比率(Mo/V)を本発明で示した範囲に特定し、本発明で示した条件で製造することにより、1180MPa以上の引張強度を有しかつ耐遅れ破壊特性に優れた鋼板が得られることが明らかである。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、1180MPa以上の引張強度を有し、かつ耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】遅れ破壊試験片の形状と寸法を示す図である。
【図2】遅れ破壊試験における拡散性水素量と破断時間の関係の一例を示す図である。
【図3】MoとVの添加比率(Mo/V)と限界拡散性水素量の関係を示す図である。
Claims (8)
- 質量%で、
C :0.05〜0.3%、
Si:3.0%未満、
Mn:0.5〜3.0%、
Mo:0.2〜3.0%、
V :0.02〜0.5%、
P :0.02%以下、
S :0.02%以下、
Al:0.005〜0.1%、
N :0.001〜0.05%
を含有し、かつ
1≦(Mo/V)
を満足し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、引張強度が1180MPa以上であることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。 - さらに質量%で、
Cr:0.05〜3.0%、
Ni:0.05〜5.0%、
Cu:0.05〜2.0%、
W :0.05〜3.0%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。 - さらに質量%で、
Ti:0.005〜0.3%、
Nb:0.005〜0.3%、
B :0.0003〜0.05%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。 - さらに質量%で、
Ca:0.001〜0.01%、
Mg:0.0005〜0.01%、
Zr:0.001〜0.05%、
REM:0.001〜0.05%、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。 - 限界拡散性水素量が0.2ppm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
- マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイトの何れか1種以上を面積率にて70%以上含み、残留オーステナイトの含有率が面積率にて5%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度鋼板を製造する方法であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の成分からなる鋼スラブを1100℃以上の温度に加熱し、850℃以上の仕上げ圧延温度で熱間圧延し、500℃以上700℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
- 鋼板を巻き取った後、酸洗し、冷間圧延を行い、Ac3 変態点以上の温度に均熱して連続焼鈍を行い、加熱温度からマルテンサイト変態開始温度以下まで20〜300℃/秒で冷却し、その後、再加熱するかまたはそのままの状態で100℃〜Ac1 変態点で焼戻すことを特徴とする請求項7記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003156473A JP4362319B2 (ja) | 2003-06-02 | 2003-06-02 | 耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003156473A JP4362319B2 (ja) | 2003-06-02 | 2003-06-02 | 耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004359974A JP2004359974A (ja) | 2004-12-24 |
JP4362319B2 true JP4362319B2 (ja) | 2009-11-11 |
Family
ID=34050549
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003156473A Expired - Fee Related JP4362319B2 (ja) | 2003-06-02 | 2003-06-02 | 耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4362319B2 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20180031751A (ko) | 2015-09-04 | 2018-03-28 | 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 | 고강도 박강판 및 그 제조 방법 |
KR20180108722A (ko) | 2016-03-07 | 2018-10-04 | 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 | 고강도 강판 및 그 제조 방법 |
Families Citing this family (12)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4802682B2 (ja) * | 2004-11-30 | 2011-10-26 | Jfeスチール株式会社 | 高強度冷延鋼板およびその製造方法 |
JP4823991B2 (ja) * | 2007-09-13 | 2011-11-24 | 新日本製鐵株式会社 | 薄鋼板の水素脆化評価方法 |
JP5326362B2 (ja) * | 2008-05-30 | 2013-10-30 | Jfeスチール株式会社 | 高強度鋼板およびその製造方法 |
JP5463715B2 (ja) * | 2009-04-06 | 2014-04-09 | Jfeスチール株式会社 | 自動車構造部材用高強度溶接鋼管の製造方法 |
JP5348268B2 (ja) | 2012-03-07 | 2013-11-20 | Jfeスチール株式会社 | 成形性に優れる高強度冷延鋼板およびその製造方法 |
JP5609945B2 (ja) | 2012-10-18 | 2014-10-22 | Jfeスチール株式会社 | 高強度冷延鋼板およびその製造方法 |
KR20160078603A (ko) | 2014-12-24 | 2016-07-05 | 주식회사 포스코 | 중심부 물성이 우수한 극후물 오스테나이트계 구조용 강판 및 그 제조방법 |
KR101797316B1 (ko) * | 2015-12-21 | 2017-11-14 | 주식회사 포스코 | 고강도 및 우수한 내구성을 가지는 자동차용 부품 및 그 제조방법 |
CN105908055A (zh) * | 2016-06-15 | 2016-08-31 | 成都高普石油工程技术有限公司 | 用于石油钻采的抗高压流体压力的钢材制备方法 |
CN105886920A (zh) * | 2016-06-15 | 2016-08-24 | 成都高普石油工程技术有限公司 | 一种抗高压流体压力的石油钻采用钢材 |
KR101977474B1 (ko) | 2017-08-09 | 2019-05-10 | 주식회사 포스코 | 표면 품질, 강도 및 연성이 우수한 도금강판 |
US20220090223A1 (en) * | 2018-12-26 | 2022-03-24 | Jfe Steel Corporation | High-strength hot-dip galvanized steel sheet and method for manufacturing the same |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002327235A (ja) * | 2001-04-26 | 2002-11-15 | Nippon Steel Corp | 耐水素疲労破壊特性に優れた機械構造用鋼およびその製造方法 |
JP2003105485A (ja) * | 2001-09-26 | 2003-04-09 | Nippon Steel Corp | 耐水素疲労破壊特性に優れた高強度ばね用鋼およびその製造方法 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2723013B2 (ja) * | 1993-10-27 | 1998-03-09 | 住友金属工業株式会社 | 耐遅れ破壊特性に優れた高強度電縫鋼管製造法 |
JPH0953119A (ja) * | 1995-08-18 | 1997-02-25 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 高強度電縫鋼管の製造方法 |
JPH101740A (ja) * | 1996-06-12 | 1998-01-06 | Kobe Steel Ltd | 耐遅れ破壊特性にすぐれる超高強度鋼板及びその製造方法 |
-
2003
- 2003-06-02 JP JP2003156473A patent/JP4362319B2/ja not_active Expired - Fee Related
Patent Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002327235A (ja) * | 2001-04-26 | 2002-11-15 | Nippon Steel Corp | 耐水素疲労破壊特性に優れた機械構造用鋼およびその製造方法 |
JP2003105485A (ja) * | 2001-09-26 | 2003-04-09 | Nippon Steel Corp | 耐水素疲労破壊特性に優れた高強度ばね用鋼およびその製造方法 |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20180031751A (ko) | 2015-09-04 | 2018-03-28 | 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 | 고강도 박강판 및 그 제조 방법 |
KR20180108722A (ko) | 2016-03-07 | 2018-10-04 | 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 | 고강도 강판 및 그 제조 방법 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2004359974A (ja) | 2004-12-24 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US11111553B2 (en) | High-strength steel sheet and method for producing the same | |
JP5359168B2 (ja) | 延性に優れる超高強度冷延鋼板およびその製造方法 | |
US9464337B2 (en) | High strength steel sheet having excellent hydrogen embrittlement resistance | |
KR101232972B1 (ko) | 연성이 우수한 고강도 강 시트의 제조 방법 및 그 제조 방법에 의해 제조된 시트 | |
JP3854506B2 (ja) | 溶接性、穴拡げ性および延性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP6306711B2 (ja) | 耐遅れ破壊特性を有するマルテンサイト鋼および製造方法 | |
JP4362318B2 (ja) | 耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板及びその製造方法 | |
JP6700398B2 (ja) | 高降伏比型高強度冷延鋼板及びその製造方法 | |
CN113748219A (zh) | 经冷轧的马氏体钢及其马氏体钢的方法 | |
JP6750772B1 (ja) | 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 | |
AU2005227564A1 (en) | High-rigidity high-strength thin steel sheet and method for producing same | |
EP1731626A1 (en) | High-rigidity high-strength thin steel sheet and method for producing same | |
WO2003106723A1 (ja) | 高強度冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP4362319B2 (ja) | 耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP5543814B2 (ja) | 熱処理用鋼板及び鋼部材の製造方法 | |
CN113811624A (zh) | 经冷轧的马氏体钢及其马氏体钢的方法 | |
JP4156889B2 (ja) | 伸びフランジ性に優れた複合組織鋼板およびその製造方法 | |
JPH1060593A (ja) | 強度−伸びフランジ性バランスにすぐれる高強度冷延鋼板及びその製造方法 | |
JP2003253385A (ja) | 高速変形特性および曲げ特性に優れた冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP4265152B2 (ja) | 伸びおよび伸びフランジ性に優れた高張力冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP4051999B2 (ja) | 形状凍結性と成形後の耐久疲労特性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法 | |
JP4265153B2 (ja) | 伸びおよび伸びフランジ性に優れた高張力冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP3247908B2 (ja) | 延性と耐遅れ破壊特性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 | |
JP6473022B2 (ja) | 成形性に優れた高強度鋼板 | |
JP3895986B2 (ja) | 溶接性および穴拡げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050914 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20071010 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080930 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20081118 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20090811 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20090817 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 4362319 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120821 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120821 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120821 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120821 Year of fee payment: 3 |
|
R157 | Certificate of patent or utility model (correction) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R157 |
|
R157 | Certificate of patent or utility model (correction) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R157 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120821 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130821 Year of fee payment: 4 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130821 Year of fee payment: 4 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |