JPH0428804B2 - - Google Patents

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JPH0428804B2
JPH0428804B2 JP59230304A JP23030484A JPH0428804B2 JP H0428804 B2 JPH0428804 B2 JP H0428804B2 JP 59230304 A JP59230304 A JP 59230304A JP 23030484 A JP23030484 A JP 23030484A JP H0428804 B2 JPH0428804 B2 JP H0428804B2
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Fujio Ueda
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Description

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野] 本発明は結節強度に優れた高強度ポリビニルア
ルコール系繊維およびその製造方法に関するもの
である。 [従来の技術] 従来、ポリビニルアルコール(以下、PVAと
略称)系繊維は弾性率が高く、熱収縮率が小さい
ことから、ゴム補強材、プラスチツク補強材など
の補強材用途に使用されているが、結節強度が低
く、耐疲労性、耐熱水性が劣るため、その用途は
限られているというのが現状である。そこで、こ
れらの物性を向上させようとする試みが種々提案
されている。 例えば、特公昭47−8186号公報や特公昭48−
9209号公報には、紡糸原液に硼酸を添加し、アル
カリ性凝固浴を用いて凝固せしめることによつて
未延伸糸の延伸性を向上させ、その結果として
PVA系繊維の引張強度、耐疲労性、耐熱水性が
改善できる方法が提案されている。 しかしながら、このような方法によつて得られ
るPVA系繊維は、引張強度の向上は認められる
ものの、ポリアミドやポリエステル繊維に匹敵す
る結節強度や耐疲労性などの繊維物性を有するも
のではないし、しかも延伸倍率の増大が結節強度
を低下させるという問題があつた。 最近、重合度が数万から数十万に及ぶ超高重合
度のPVA系重合体(ポリマ)を使用すると、引
張強度や初期弾性率の高いPVA系繊維が得られ
ることが見出され(例えば、特開昭59−130314号
公報)、注目されているが、このような超高重合
度のPVA系ポリマは工業的または商業的に製造、
入手することが難しく、少なくとも現在では工業
的ではないと言える。 そこで、本発明者らは工業的または商業的に生
産、入手可能な重合度を有するPVA系ポリマか
らなり、高強度で、かつ前記ポリアミドやポリエ
ステル繊維に匹敵する結節強度た耐疲労性などの
繊維物性を有するPVA系繊維について鋭意検討
した結果、本発明に至つたのである。 [発明が解決しようとする問題点] 本発明の目的は、PVA系ポリマとしては従来
のPVA系繊維に比べて高い重合度を有するが、
工業的または商業的に製造および入手可能な範囲
の重合度を有し、前記ポリアミドやポリエステル
繊維に匹敵する結節強度や耐疲労性などの繊維物
性を有し、しかも延伸倍率が大きいにも拘らず高
い結節強度を有するPVA系繊維の製造方法を提
供するにある。 [問題点を解決するための手段] このような本発明の目的は、 ポリビニルアルコール系重合体の紡糸溶液を紡
糸ノズルから一旦空気または不活性雰囲気中に吐
出した後、凝固浴中に導入して凝固、脱溶媒、延
伸するポリビニルアルコール系繊維の製造方法に
おいて、ポリビニルアルコール系重合体の重合度
が2500以上6000以下であること、全延伸倍率が15
倍以上で延伸すること、延伸の最終工程において
チユーブ内雰囲気温度が230℃以上、糸条の融断
温度以下に設定された加熱チユーブを通して熱延
伸することを特徴とする引張強度が14g/d以
上、結節強度が5.0g/d以上でかつ、繊維の内
外層における複屈折率差が下式を満足する結節強
度に優れた高強度ポリビニルアルコール系繊維の
製造方法。 −8×10-3≦(Δn)s−(Δn)c<0 (但し、上式中、(Δn)sは繊維の表面から2μ
の位置における複屈折率、(Δn)cは繊維の中心
部における複屈折率を示す。) によつて達成することができる。 本発明に使用されるPVA系ポリマとしては、
工業的にまたは商業的に製造および入手可能な重
合度を有するPVA系ポリマおよびその誘導体で
あり、例えば完全ケン化または部分ケン化PVA
系ポリマ、主鎖中に共重合成分として例えばエチ
レン、プロピレン、ブチレンなどのオレフイン系
モノマが少量共重合されたもの、および化学的に
後処理されたPVA系ポリマ並びに10重量%以下
の少量のPVA系ポリマに対して混和性を有する
他種のポリマとのブレンドなどを挙げることがで
きる。 しかしながら、これらのPVA系ポリマの重合
度は、2500以上とするものであり、重合度が2500
よりも小さくなると本発明の目的とする結節強度
がポリアミドやポリエステル繊維に匹敵し、耐疲
労性、耐熱水性などの優れたPVA系繊維を形成
することができない。 また、PVA系ポリマの重合度の上限は、工業
的にまたは商業的に製造および入手可能な範囲の
6000以下とするものである。 本発明においてPVA系ポリマを溶解する溶媒
としては、ジメチルスルホキシド(以下、
DMSOと略称)およびエチレングリコール、グ
リセリン、プロピレングリコール、ジエチレング
リコール、トリエチレングリコールなどの多価ア
ルコール系溶媒、レゾシノール、ホルムアミド、
尿素の飽和水溶液などのアミン系溶媒、あるいは
臭化リチウム、塩化リチウムなどのハロゲン化リ
チウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化マグ
ネシウムなどの無機塩水溶液、またはこれらの混
合溶媒などを用いることができる。 PVA系ポリマを上記溶媒に溶解して得られる
紡糸原液の紡糸方法としては、一旦気体雰囲気に
吐出してから凝固浴に導入する乾湿式紡糸法を採
用するものである。通常の湿式紡糸法では延伸倍
率を高くすることができず、凝固せしめることな
く冷却してゲル化させるゲル紡糸法では単繊維間
の融着が問題となる。 この場合の凝固浴液体としては、メタノール、
エタノール、アセトン、トルエンなど、またはこ
れらと重合体溶媒との混合溶媒、無機塩水溶液な
どが挙げられるが特定するものではない。 このような紡糸方法によつて得られた未延伸糸
は、脱溶媒され延伸されるが、途中の延伸手段は
特に限定されるものではなく、加熱チユーブ、熱
板、加熱ロール、加熱ピン、加熱液体、流動床な
どを適用した各種の延伸手段を単独または組合せ
て適用することができる。またこれらは一段で延
伸しても、多段で延伸してもよい。 しかしながら、本発明の最大の特徴はこれらの
中途の上記延伸、その他熱処理などの工程などに
あるのではなくて、全延伸倍率15倍以上で延伸す
ること、さらに、延伸の最終工程においてチユー
ブ内雰囲気温度が230℃以上、糸条の融断温度以
下に設定された加熱チユーブを通して熱延伸する
ことにある。 さらに具体的には、上記の加熱チユーブ延伸
は、予めある程度延伸された糸条を加熱雰囲気、
例えば空気または窒素、ヘリウム、アルゴンなど
の不活性雰囲気気体の温度が230℃以上、繊維の
融断温度以下に設定された加熱チユーブ中に通す
こと、さらに全延伸工程を通しての延伸倍率、即
ち、全延伸倍率が少なくとも15倍以上になるよう
延伸する。すなわち、この加熱チユーブ延伸の倍
率は、それまでの延伸倍率によつて相違するが、
より好ましくはこの延伸倍率を含めて後述する複
屈折率差が形成されるように加熱チユーブ延伸の
条件を設定するのがよい。 なお、加熱チユーブ中は重合体の熱酸化分解を
抑制するため窒素ガスでブローしておくのが好ま
しい。 このような本発明の製造方法によつて得られた
PVA系繊維は、繊維の断面方向の配向度分布を
異にし、繊維の内外層における複屈折率差を実質
的に有しない、即ち、繊維の表層と繊維の中心部
の複屈折率が実質的に同等乃至繊維の中心部が繊
維の表層よりも高い複屈折率を有している。 このような繊維の内外層における複屈折率差
は、次式 −8×10-3≦(Δn)s−(Δn)c<0 (但し、上式中、(Δn)sは繊維の表面から2μ
の位置における複屈折率、(Δn)cは繊維の中心
部における複屈折率を示す。) を満足する。 このような複屈折率の差が上式で示される範囲
である繊維は、本発明の製造方法の目的である高
強度、高弾性率、改良された耐水・耐熱性、結節
強度を有する繊維となる。 また、上記加熱チユーブ延伸において、雰囲気
温度が230℃未満では高強度PVA系繊維の製造に
必要な少なくとも15倍という全延伸倍率が得られ
ず、他方、繊維の融断温度より高くなると、延伸
過程で繊維糸条が切断するので好ましくない。 さらに延伸の最終工程として加熱チユーブでは
なくて、熱板や加熱ロールなどの他の延伸手段を
採用すると、本発明の目的である高強度、高弾性
率、改良された耐水・耐熱性、結節強度を有する
繊維が得られにくく、また繊維の融断が起るなど
の問題が生じる。 そして本発明に規定する全延伸倍率は、得られ
るPVA系繊維の繊維物性をポリアミドやポリエ
ステル系繊維並ないしそれ以上の繊維物性、特に
引張強度を14g/d以上、弾性率を200g/d以
上とし、耐水性や耐屈曲性に優れた繊維とする上
で重要である。 [発明の効果] 本発明のPVA系繊維の製造方法によれば、ア
セタール化のような水不溶化処理を施さなくて
も、良好な実用性能を満足する耐水・耐熱性を有
しており、また結節強度が5.0g/d以上という
卓越した性能を有するPVA系繊維が得られる。
特にその延伸倍率が15倍を越える高延伸倍率の繊
維でありながら、高い結節強度を有することは、
本発明の製造方法で得られるPVA系繊維の上記
特異な複屈折率差に関係するものと考えられる。 もちろん、本発明において上記複屈折率差と共
に2500以上6000以下の重合度を有するPVA系ポ
リマから繊維が構成されていることが、繊維物
性、例えば結節強度、耐疲労性、耐熱水性の優れ
た高強度PVA系繊維とする上で密接な関係を有
することはいうまでもない。 以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 なお、本例中、繊維物性および複屈折率は、次
の条件で測定した。 (1) 繊維の強度(引張強度および結節強度) 測定サンプル ;単糸 測定糸長 ;100mm 測定時の引張速度 ;100mm/分 測定雰囲気 ;20℃、65%相対湿度 (2) 複屈折率 装置;カール・ツアイス ジエナ(Carl Zeiss
Jena)社の透過干渉顕微鏡 方法;デユポン社(Du Pont)法 算出法;次式に従う。 n(n‖,n⊥)= (d1/D1)・n12+(d2/D2)・n11/d1/D1+d2/D2 n(n‖,n⊥);試料の屈折率(‖平行、n⊥直
角) d(d1,d2);試料の干渉縞のずれ D(D1.D2);隣接干渉縞の距離 Δn=n‖−n⊥;複屈折率 実施例 1 重合度3900の完全ケン化型PVA系ポリマを
DMSOに溶解して9%溶液を作り、これを紡糸
原液とした。この紡糸原液を孔径0.12mmψ、孔数
27のノズルから押し出し、一旦7mmの空間部分を
介してメタノールからなる凝固浴で凝固させた。 得られた凝固糸条を5m/分で引取り、メタノ
ールでさらに洗浄しDMSOを除去した後、室温
で4倍に延伸し、引続いて内気温度230℃、235℃
の2つの加熱チユーブで全延伸倍率が18倍になる
ように熱延伸した。 その結果、引張強度18.4g/d、結節強度7.6
g/dの物性を有する繊維が得られた。 この繊維の断面方向の複屈折率を第1図にAと
して示した。この複屈折率の値から明らかなよう
に、繊維の断面方向の配向度分布は表層の方が中
心部より低くなつた。 なお、この繊維の内外層における複屈折率差は
次のとおりである。 (Δn)s−(Δn)c=−2.9×10-3 比較例 1 重合度3100の完全ケン化型PVAをDMSOに溶
解して15%溶液を作り、これを紡糸原液とした。
この紡糸原液を孔径0.15mmψ、孔数27のノズルか
ら押し出し、一旦5mmの空間部分を介してメタノ
ールからなる凝固浴で凝固させた。 得られた凝固糸条を5m/分で引取り、メタノ
ールでさらに洗浄しDMSOを除去した後、室温
で4倍に延伸し、引続いて230℃の加熱チユーブ
の代りに同温度の熱板を用い、全延伸倍率が17倍
になるように熱延伸した。 その結果、引張強度13.2g/d、結節強度3.8
g/dの物性を有する繊維が得られた。 この繊維の単糸の断面方向の配向度分布は表層
が中心部に比べて著しく高かつた。 (Δn)s−(Δn)c=8.4×10-3 比較例 2 重合度1900の完全ケン化型PVA系ポリマを
DMSOに溶解して17%溶液を作り、これを紡糸
原液とした。この紡糸原液を孔径0.15mmψ、孔数
27のノズルから押し出し、一旦5mmの空間部分を
介してメタノールからなる凝固浴で凝固させた。 得られた凝固糸条を5m/分で引取り、メタノ
ールでさらに洗浄しDMSOを除去した後、室温
空気中で5倍に延伸し、引続いて230℃の熱板で
全延伸倍率が18倍になるように熱延伸した。 その結果、引張強度12.5g/d、結節強度3.4
g/dの物性を有する繊維が得られた。 この繊維の単糸の断面方向の配向度分布は表層
の方が中心部より高くなつた。 (Δn)s−(Δn)c=3.4×10-3 実施例2、比較例3〜5 熱板に代えて加熱チユーブ内で延伸を行なつた
他は比較例1と同様にし、全延伸倍率を変更して
繊維物性の変化を調べた結果、第1表に示したよ
うに、15倍以上の延伸を施すことによつて14g/
d以上の引張強度と5.0g/d以上の結節強度を
有する繊維が得られることがわかつた。
【表】 比較例 6 熱板に代えて加熱チユーブ内で延伸を行なつた
他は比較例1と同様にし、DMSOを除去し、室
温で4倍に延伸した後、引続いて加熱チユーブの
内気温度を変更して延伸した結果、第2表に示し
たように、230℃を下まわる温度では、延伸倍率
が低くなるにつれて繊維の配向度分布は表層の方
が中心部より高くなり、5.0g/dを越える結節
強度を有する繊維が得られなかつた。
【表】 比較例 7 市販の比較的均質な断面構造を有するビニロン
[登録商標、クラレ(株)製T 5501]について、繊
維断面内の複屈折率分布を測定した。その結果を
第1図にBとして併記した。 この結果から明らかなように、従来繊維(ビニ
ロン、T 5501)は本発明の方法により得られる
繊維と異なり、繊維の外層部の方が中心部より複
屈折率Δnが高い。このように、従来の方法で得
られる繊維は表層部の分子配向度が高いために、
曲げに対して弱く、結節強度や特に屈曲に対する
耐疲労性が劣ることになる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例1により得られた繊維および
従来繊維(ビニロン、T 5501)の断面方向の複
屈折率分布を示す図である。 A……実施例1により得られた繊維、B……比
較例7の従来繊維(ビニロン[登録商標]、T
5501)。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 ポリビニルアルコール系重合体の紡糸溶液を
    紡糸ノズルから一旦空気または不活性雰囲気中に
    吐出した後、凝固浴中に導入して凝固、脱溶媒、
    延伸するポリビニルアルコール系繊維の製造方法
    において、ポリビニルアルコール系重合体の重合
    度が2500以上6000以下であること、全延伸倍率が
    15倍以上で延伸すること、延伸の最終工程におい
    てチユーブ内雰囲気温度が230℃以上、糸条の融
    断温度以下に設定された加熱チユーブを通して熱
    延伸することを特徴とする引張強度が14g/d以
    上、結節強度が5.0g/d以上でかつ、繊維の内
    外層における複屈折率差が下式を満足する結節強
    度に優れた高強度ポリビニルアルコール系繊維の
    製造方法。 −8×10-3≦(Δn)s−(Δn)c<0 (但し、上式中、(Δn)sは繊維の表面から2μの
    位置における複屈折率、(Δn)cは繊維の中心部
    における複屈折率を示す。)
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