JPH0419408B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

〔産業上の利用分野〕 本発明は、内燃機関の振動制御装置に関する。 〔従来の技術〕 第１図は、一般の内燃機関における、往復運動
部および回転運動部を示す説明図であり、このよ
うな内燃機関においては、往復運動部、すなわち
ピストン１、ピストンピン２、およびコンロツド
３のうちでピストン１とともに往復運動をするも
のと仮定できる部分の合計質量MPがピストンピ
ン２の位置に集中して作用し、回転運動部、すな
わちクランク軸のクランクウエブ４、クランクピ
ン５、およびコンロツド３のうちでクランクピン
５とともに回転すると仮定できる部分の合計質量
MCがクランクピン５の位置に集中して作用する
ものと仮定して考えるとともに、クランクウエブ
４のピストンピン２側に粗修正、ならびに微修正
用の釣合修正孔６を穿設し、釣合重錘に基づく釣
合質量Ｗが上記回転運動部の合計質量MCとクラ
ンク軸心に関して対称位置に作用するかの如く設
定している。 〔発明が解決しようとする課題〕 このような内燃機関においては、往復質量およ
び回転質量ならびに釣合重錘による慣性力が、ク
ランク軸心を通り、そのベクトル先端の軌跡がク
ランク軸と逆方向に回転する楕円（以下、慣性力
楕円という）を描く状態で機関の全体に作用す
る。この慣性力は、機関を搭載している機械装置
の各部に加振力として作用し、機械装置の各部に
振動を発生させる。ここで、機械装置に発生する
振動状況は、機関回転速度の変化に応じて変化
し、その共振発生部分も機関回転速度の変化に応
じて変化する。したがつて、例えば内燃機関を搭
載している自動二輪車においては、特定回転速度
下で、ハンドル、フートレスト、シート、タンク
等の体感部のうちの特定部位に共振を生じ、他の
特定回転速度下で他の特定部位に共振を生じ、乗
員の快適な走行を妨げるという問題点がある。 本発明は、機関の搭載スペース、および搭載重
量を大型化することを伴うことなく、機関を搭載
している機械装置の振動発生状況を、回転速度の
変化に応じて制御可能とする内燃機関の振動制御
装置を提供することを目的とする。 〔課題を解決するための手段〕 本発明に係る内燃機関の振動制御装置は、クラ
ンク軸の回転半径に対して、クランク軸方向に見
てその軸芯以外の点で斜交する方向に移動可能な
釣合重錘と、クランク軸の回転にともなつて釣合
重錘に作用する遠心力に対抗する付勢力を釣合重
錘に及ぼす弾発部材とからなる釣合重錘制御機構
を、クランクウエブの、クランク軸芯に関してク
ランクピンと略反対位置に配設して構成されるよ
うにしたものである。 〔作 用〕 本発明成立の背景は次の通りである。第１に、
クランク軸のクランクウエブに配設される釣合重
錘のクランク軸に対する半径方向位置を機関回転
速度の変化に応じて変位すると、慣性力楕円の形
状を変化することが可能となる。すなわち、クラ
ンクウエブに配設される釣合重錘を、クランク軸
から半径方向に遠ざけたり近づけたりすると、釣
合重錘に基づく慣性力の機関全体に働く慣性力へ
の影響が変化し、慣性力楕円は、第２図Ａに示す
ように、その長軸と短軸との比を変化させ、ピス
トン移動方向Ｘに対してたて長になつたり横長に
なつたりし、その形状を変化する。第２に、クラ
ンク軸のクランクウエブに配設される釣合重錘の
クランク軸に対する角度位置を機関回転速度の変
化に応じて変化すると、慣性力楕円の長軸および
短軸のクランク軸に対する傾きを変化することが
可能となる。すなわち、釣合重錘のクランクウエ
ブへの配設位置を、クランク軸とクランクピンと
を結ぶ線上から、クランク軸回りに回転変位させ
ると、釣合重錘に基づく慣性力のエンジン全体に
働く慣性力への影響がこれに応じて変化し、慣性
力楕円は、第２図Ｂに示すように、その長軸もし
くは短軸をピストン移動方向Ｘから角度Ｑを為す
状態に変化する。 そこで、クランク軸のクランクウエブに配設さ
れる釣合重錘のクランク軸に対する半径方向位
置、およびまたは角度位置を、機関回転速度の変
化に応じて変位せしめれば、慣性力楕円は、その
長軸と短軸との比を変化し、およびまたはその長
軸もしくは短軸のクランク軸に対する傾きを変化
することになり、機関が搭載される機械装置各部
に作用する加振力の大きさを機関回転速度の変化
に応じて制御することが可能となり、機械装置各
部の振動発生状況を制御可能となる。 しかるに、本発明が適用される例えば自動二輪
車等にあつては、機関の搭載スペース、および搭
載重量の制約から、クランクケースサイズの大型
化には一定の制限がある。このため、クランクケ
ースサイズを大型化することとなる構成、すなわ
ち、釣合重錘をクランク軸に対する半径方向にお
いてのみ大きく遠ざける如くに変位する構成は採
用不適である。すなわち、釣合重錘をクランク軸
に対する半径方向においてのみ変位する構成で
は、クランクケースサイズの大型化をさける必要
から該重錘をクランク軸から半径方向に大きく遠
ざけることができず、慣性力楕円の形状を大きく
変化させることができないため、回転速度の変化
に応じて慣性力を大きく変化させることができ
ず、内燃機関を搭載している機械装置の振動発生
状況を好適には制御できないのである。 そこで、本発明にあつては、機関の搭載スペー
ス、および搭載重量を大型化することを伴うこと
なく、機関を搭載している機械装置の振動発生状
況を、回転速度の変化に応じて制御可能とすべ
く、「クランク軸の回転半径に対して、クランク
軸方向に見てその軸芯以外の点で斜交する方向に
移動可能な釣合重錘と、クランク軸の回転にとも
なつて釣合重錘に作用する遠心力に対抗する付勢
力を釣合重錘に及ぼす弾発部材とからなる釣合重
錘制御機構を、クランクウエブの、クランク軸芯
に関してクランクピンと略反対位置に配設する」
構成（機関回転速度が異なる毎に釣合重錘の停留
位置が異なる構成）を採用し、慣性力楕円の形状
を機関回転速度の変化に応じて変化させるもので
ある。すなわち、本発明を実施する場合には、ク
ランクケース内壁と該重錘との干渉をあまり気に
する必要がなく、クランクケースサイズの大型化
を伴わない。したがつて、機関の搭載スペース、
および搭載重量の大型化を伴うことなく、慣性力
楕円を大きく傾斜させることができ、クランク軸
に対する所定角度方向の慣性力を大きく変化さ
せ、内燃機関を搭載している機械装置の振動発生
状況を好適に制御できるのである。 ここで、本発明にあつては、特許請求の範囲に
記載の如くの、釣合重錘と弾発部材とを具備する
ことにより、「クランク軸に対する釣合重錘の半
径方向位置およびクランク軸まわりでの角度位置
を、機関回転速度の変化に応じて、変位可能とす
る」もの（＝機関回転速度が異なる毎に釣合重錘
の停留位置が異なるもの）である。すなわち、機
関回転速度が変化する時、釣合重錘はそれに作用
する遠心力によりクランク軸の回転半径に対して
斜交する方向（＝クランク軸に対する半径方向位
置およびクランク軸まわりでの角度位置を変化す
ることとなる方向）に変位しようとし、該釣合重
錘は該遠心力と弾発部材が発生する付勢力とが釣
合うこととなる位置に停留する。この時、遠心力
は、機関回転速度の変化に応じて変化するから、
結局、上記釣合重錘の停留位置は、機関回転速度
に応じた位置（＝クランク軸に対する半径方向位
置およびクランク軸まわりでの角度位置）である
ことになる。 そして、本発明のように、釣合重錘をクランク
軸に対して半径方向位置、およびクランク軸まわ
りでの角度位置の双方にて変化させるものとする
ことによつて、大幅に慣性力を変化させることが
できる。 〔実施例〕 次に、本発明の具体的実施例について説明す
る。 第３図は本発明の一実施例に係るクランクウエ
ブ４を示す正面図であり、第４図は第３図の−
線に沿う断面図であり、第５図は同実施例にお
ける他の作動状態を示す正面図であり、第６図は
同実施例における慣性力楕円の変化を示す線図で
ある。クランクウエブ４の、クランク軸心Ｏに関
してクランクピン５の略反対位置には、クランク
軸心とクランクピンとの連結線に対して傾斜する
方向に長軸を為す長孔状の収容室１１が形成さ
れ、収容室１１の開口部にはカバー１３が止めね
じ１２によつてクランクウエブ４に固定化され、
収容室１１内には短円柱状の釣合重錘１４がその
長軸方向に移動可能に収容されるとともに、釣合
重錘１４を収容室１１のクランク軸心Ｏ側に所定
付勢力で常時押圧する圧縮ばね１５が収容されて
いる。すなわち、釣合重錘１４は、クランク軸の
回転に伴なつてそれに作用する遠心力と、圧縮ば
ね１５の付勢力との釣り合いにより、収容室１１
内で、収容室１１のクランク軸心Ｏ側の一端と外
方側の他端との間を変位可能となつている。 次に、上記実施例の作用について説明する。 クランク軸が所定の回転速度Ｎ１以下で回転す
る場合には、釣合重錘１４は第３図に示すように
収容室１１のクランク軸心Ｏ側の一端に圧縮ばね
１５の付勢力によつて停留保持されている。ここ
で、クランクウエブ４に形成されている釣合修正
孔６、収容室１１、カバー１３、止めねじ１２、
釣合重錘１４および圧縮ばね１５に基づく釣合質
量は、このように釣合重錘１４が収容室１１の一
端側に停留保持されている状態下で、クランク軸
とクランクピンとの連結線上に位置するように設
定されている。したがつて、所定の回転速度Ｎ１
において、機関全体に作用する慣性力は、第６図
に実線で示すように、ピストン移動方向Ｘ軸上に
長軸を置く慣性力楕円を形成する。次に、クラン
ク軸が所定の回転速度Ｎ１を越えると、釣合重錘
１４は、それに作用する遠心力の増大化によつ
て、圧縮ばね１５を圧縮しつつ、収容室１１内を
クランク軸心Ｏ側の一端から外方側の他端に向け
て移動し、所定の回転速度Ｎ２においては、第５
図に示すように、収容室１１の外方側の他端に停
留する。すなわち、クランク軸の回転速度がＮ１
からＮ２に変化することにより、クランクウエブ
４上の釣合質量は、釣合重錘１４の上記移動に基
づき、クランク軸心に対して半径方向外方に変位
するとともに、クランク軸回りに角度位置をも変
位し、機関全体に作用する慣性力が形成する慣性
力楕円は、第６図に破線で示すように、その長軸
と短軸の比を変化するとともに、その長軸方向を
ピストン移動方向Ｘに対して角度Ｑだけ傾斜する
状態に変化する。すなわち、慣性力楕円をこのよ
うに機関回転速度の変化に応じて変化せしめれ
ば、機関回転速度Ｎ１においては、クランク軸心
回りの特定方向Ａにおける慣性力を大とするとと
もに、他の特定方向Ｂにおける慣性力を小とし、
回転速度Ｎ２においては、特定方向Ａにおける慣
性力を小とし、他の特定方向Ｂにおける慣性力を
大とすることが可能となる。 すなわち、上記実施例によれば、慣性力楕円
は、機関回転速度の変化に応じて変位する釣合重
錘の配設位置に基づいて自動的に変化することか
ら、特定回転速度下で、機関が搭載される機械装
置の特定部位に作用する加振力を小としてその部
分の共振の発生を抑制し、また、他の特定回転速
度下で、機械装置の他の特定部位に作用する加振
力を小としてその部分の共振の発生を抑制するこ
とができる。表１は、自動二輪車の、機関回転速
度の変化に応じて変化する各体感部、ハンドル、
フートレスト、シート、タンクにおける振動状況
が、上記実施例に基づく慣性力楕円の変化に基づ
いて制御され、各体感部の振動状況が広範囲にわ
たる回転速度範囲下で軽減可能となることを示し
ている。（表１において、×印は振動小なることを
示し、〇印は振動大なることを示している。）す
な

〔発明の効果〕

以上のように本発明によれば、機関の搭載スペ
ース、および搭載重量を大型化することを伴うこ
となく、機関を搭載している機械装置の振動発生
状況を、回転速度の変化に応じて制御可能とする
内燃機関の振動制御装置を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は一般の内燃機関の往復運動部および回
転運動部を示す正面図、第２図Ａおよび第２図Ｂ
はそれぞれ内燃機関における慣性力楕円の変化の
状態を示す線図、第３図は本発明の一実施例を示
す正面図、第４図は第３図の−線に沿う断面
図、第５図は同実施例における他の作動状態を示
す正面図、第６図は同実施例における慣性力楕円
の変化を示す線図、第７図は本発明の変形例を示
す正面図である。 １…ピストン、２…ピストンピン、３…コンロ
ツド、４…クランクウエブ、５…クランクピン、
６…釣合修正孔、１１，２１…収容室、１４，２
３…釣合重錘、１５，２２…圧縮ばね（弾発部
材）。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ クランク軸の回転半径に対して、クランク軸
   方向に見てその軸芯以外の点で斜交する方向に移
   動可能な釣合重錘と、 クランク軸の回転にともなつて釣合重錘に作用
   する遠心力に対抗する付勢力を釣合重錘に及ぼす
   弾発部材とからなる釣合重錘制御機構を クランクウエブの、クランク軸芯に関してクラ
   ンクピンと略反対位置に配設してなる内燃機関の
   振動制御装置。