JP3550156B2 - パワープラントのバランサ装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、往復運動型エンジンにバランスシャフトを設けて往復動慣性質量により発生する振動を低減させるパワープラントのバランサ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
往復運動型エンジンのバランサ装置は、たとえば特公昭57−44863号公報により知られている。そこでは、クランク軸に平行にバランスシャフトが設けられ、クランク軸と連動してバランスシャフトが回転される。そして、エンジン単体では、図2に示すように、ピストン・コネクティングロッド系の往復質量による慣性力Fと、バランスシャフト2の発生する慣性力(エンジン中心の各側でf)がエンジン1の長手方向中心3でつり合うように設計されている。すなわち、F=2fとなるように設計されている。
【0003】
実際の車両搭載状態では、振動系は、図3に示すように、エンジン+トランスミッション4のパワープラントから成り、該パワープラントにはパワープラント重心5を中心としてエンジン中心3にかかる慣性力によりピッチングモーメントがかかっている。しかし、上記のように2つの慣性力をつり合わせることにより、ピッチングモーメントとしてもつり合っている。すなわち、図3において、エンジンの発生するモーメントME 、およびバランスシャフトの発生するモーメントMB は、それぞれ次のように計算され、互いにつり合っている。
ME =F(a+l)
MB =af+(a+2l)f
=2f(a+l)
=F(a+l)
∴ME =MB
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
バランスシャフト自体はエネルギ損失につながるので、エネルギ損失をできるだけ小さく抑えるために、バランスシャフトを軽量化させバランス率を低下させた場合、エンジンの発生する慣性力に対しバランスシャフトの発生する慣性力が小さくなり、ピッチングモーメントが発生し、エンジン振動、騒音が悪化する。つまり、振動、騒音の悪化なしではバランスウエイトの重量を軽くできない。
【0005】
本発明の目的は、本質的にピッチングモーメントを発生させることなく、バランスシャフトの重量を軽減させることができるパワープラントのバランサ装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、本発明によれば、つぎのパワープラントのバランサ装置によって達成される。すなわち、
エンジンとトランスミッションから成るパワープラントと、エンジンに回転可能に装着された、クランク軸軸芯に平行に、クランク軸軸芯を通るエンジン中心線の両側に配設されたバランスシャフトとから成るパワープラントのバランサ装置において、
エンジンが発生する慣性力(F)による、パワープラント重心まわりのピッチングモーメント(ME =FLF )と、バランスシャフトが発生する慣性力(FX )による、パワープラント重心まわりのピッチングモーメント(MB =FX LX )とをつり合わせたまま、 パワープラント重心からエンジンの発生する慣性力の中心までの距離(LF )よりも、パワープラント重心からバランスシャフトが発生する慣性力の中心までの距離(LX )を長くし、
ピストン・コネクティングロッド系の重心よりもパワープラント重心から遠い方のバランスウエイトのアンバランス成分のマス(慣性力f 1 )をピストン・コネクティングロッド系の重心よりもパワープラント重心から近い方のバランスウエイトのアンバランス成分のマス(慣性力f 2 )よりも大とした、
ことを特徴とするパワープラントのバランサ装置。
【0007】
【作用】
エンジンの発生する慣性力Fによる、パワープラント重心まわりのピッチングモーメントME はME =FLF である。一方、バランスシャフトの発生する慣性力FX による、パワープラント重心まわりのピッチングモーメントMB は、MB =FX LX である。両慣性力によるピッチングモーメントを相殺させた場合は、FLF =FX LX である。ここで、パワープラント重心からエンジンの発生する慣性力の中心までの距離LF よりも、パワープラント重心からバランスシャフトが発生する慣性力の中心までの距離LX を長くすることにより、すなわちLX >LF としたので、FX <Fとすることができる。したがって、バランスウエイトの重量を、従来必要とされていたFに対応する重量から、それよりも小さいFX に対応する重量に、ピッチングモーメントの発生を伴なうことなく、低減できる。
【0008】
【実施例】
図1は、本発明に係るパワープラントのバランサ装置の望ましい実施例を示している。
図1において、往復運動型エンジン11とトランスミッション14は、一体的に連結されて、パワープラント17を構成している。エンジン11のシリンダブロックには、バランスシャフト12がクランク軸軸芯に平行に、クランク軸の両側に配設されており、クランク軸の回転に同期させて回転されることにより、エンジン11のピストン・コネクティングロッド系の質量の往復によって生じる振動を低減している。
【0009】
エンジン11とトランスミッション14とから成るパワープラント17の重心15は、エンジン11の中心13よりもトランスミッション14側にあり、パワープラント重心15とエンジン中心13との間の距離をLF とおく。エンジン11のピストン・コネクティングロッド系の往復運動時の慣性力Fはエンジン中心13にかかるので、慣性力Fによるパワープラント重心15まわりのピッチングモーメントME はME =FLF である。
【0010】
一方、バランスシャフト12の重心、すなわちバランスシャフト12の発生する慣性力中心16とパワープラント重心15との間の距離をLX とおくと、バランスシャフト12の発生する慣性力FX がパワープラント重心15まわりに発生するピッチングモーメントMB は、MB =FX LX である。
【0011】
ピストン・コネクティングロッド系の慣性力Fがパワープラント重心15まわりに発生するピッチングモーメントME と、バランスシャフト12の慣性力FX がパワープラント重心15まわりに発生するピッチングモーメントMB をつり合わせて、パワープラント重心15まわりのピッチングモーメントを0にするには、FLF =FX LX でなければならない。いま、パワープラント重心15からバランスシャフト重心16までの距離LX を、パワープラント重心15からピストン・コネクティングロッド系の重心13までの距離LF より大に設定すれば、すなわちLX >LF と設定すれば、FX <Fとすることができる。したがって、バランスシャフト12の発生する慣性力FX が、従来必要とされていたFよりも小さくでき、パワープラント重心15まわりのピッチングモーメントを生じることなく、バランスシャフト12のバランス率を小にして、バランスウエイトを軽量化することができる。
【0012】
上記のように、パワープラント重心15からバランスシャフト重心16までの距離LX を、パワープラント重心15からピストン・コネクティングロッド系の重心13までの距離LF より大とするための構造は次の通りである。すなわち、バランスシャフト12は、ピストン・コネクティングロッド系の重心13に対応する位置にジャーナル部を有し、ジャーナル軸受を介してシリンダブロックに回転自在に支持される。バランスウエイトはバランスシャフト軸方向に2分割されて前記ジャーナル部の両側に配置され、このジャーナル部よりもパワープラント重心15から遠い方のバランスウエイト12cのアンバランス成分のマス(慣性力f1 )を他方のバランスウエイト12dのアンバランス成分のマス(慣性力f2 )よりも大としてある。ただし、f1 +f2 =FX である。これによって、バランスシャフト12の重心16がピストン・コネクティングロッド系重心13よりも、パワープラント重心から離れる方向に移る。
【0013】
つぎに、作用を説明する。
LX >LF により、FX <Fとすることができ、バランスウエイトを従来より軽量化でき、車両の軽量化、バランスウエイト回転のフリクション低減、エンジン出力向上がはかられる。
【0014】
また、バランスウエイトをエンジン中心13に対して前後に均等に分配する必要がなくなったため、バランスシャフト12を短かくでき、かつ2点支持にすることができる。このため、更なるフリクション低減がはかられるとともに、ベアリング数低減によるコストダウン、給油必要部位が減ることによるオイルポンプ容量の低減が可能となる。
【0015】
さらに、バランスシャフト12を短かくできることにより、エンジンオイルを撹拌する部位が減ることと、バランスシャフト配置の自由度が高いため、シリンダヘッドからシリンダブロックへのエンジンオイル落し穴を避けることが容易となる。その結果、PCV(ポジティブクランクケースベンチレーション)システムからのオイル持ち去り量を低減できること、オイルフィラーキャップ締め忘れ時のオイル飛散量を低減できること、エンジンオイルへの気泡混入を低減できるため、各部ベアリングの焼付きに対して有利になること、などの種々の作用効果が得られる。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、エンジンとトランスミッションから成るパワープラントと、エンジンに回転可能に装着されたバランスシャフトとから成るパワープラントのバランサ装置において、エンジンが発生する慣性力(F)による、パワープラント重心まわりのピッチングモーメント(M E =FL F )と、バランスシャフトが発生する慣性力(F X )による、パワープラント重心まわりのピッチングモーメント(M B =F X L X )とをつり合わせたまま、パワープラント重心からエンジンの発生する慣性力の中心までの距離(L F )よりも、パワープラント重心からバランスシャフトが発生する慣性力の中心までの距離(L X )を長くしたので、パワープラント重心まわりにピッチングモーメントを発生させることなく、バランスシャフトの重量を低減でききる。その結果、エンジン出力向上、バランスシャフトフリクション低減、バランスシャフトの長さの低減等の種々の効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るパワープラントのバランサ装置の概略側面図である。
【図2】従来のエンジンのバランサ装置の概略側面図である。
【図3】従来のパワープラントのバランサ装置の概略側面図である。
【符号の説明】
11 エンジン
12 バランスシャフト
13 エンジン中心(エンジンの発生する慣性力中心)
14 トランスミッション
15 パワープラント重心
16 バランスシャフトの発生する慣性力中心
17 パワープラント
Claims (1)
- エンジンとトランスミッションから成るパワープラントと、エンジンに回転可能に装着された、クランク軸軸芯に平行に、クランク軸軸芯を通るエンジン中心線の両側に配設されたバランスシャフトとから成るパワープラントのバランサ装置において、
エンジンが発生する慣性力(F)による、パワープラント重心まわりのピッチングモーメント(ME =FLF )と、バランスシャフトが発生する慣性力(FX )による、パワープラント重心まわりのピッチングモーメント(MB =FX LX )とをつり合わせたまま、 パワープラント重心からエンジンの発生する慣性力の中心までの距離(LF )よりも、パワープラント重心からバランスシャフトが発生する慣性力の中心までの距離(LX )を長くし、
ピストン・コネクティングロッド系の重心よりもパワープラント重心から遠い方のバランスウエイトのアンバランス成分のマス(慣性力f 1 )をピストン・コネクティングロッド系の重心よりもパワープラント重心から近い方のバランスウエイトのアンバランス成分のマス(慣性力f 2 )よりも大とした、
ことを特徴とするパワープラントのバランサ装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35451591A JP3550156B2 (ja) | 1991-12-20 | 1991-12-20 | パワープラントのバランサ装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35451591A JP3550156B2 (ja) | 1991-12-20 | 1991-12-20 | パワープラントのバランサ装置 |
Related Child Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002046648A Division JP3785102B2 (ja) | 2002-02-22 | 2002-02-22 | パワープラントのバランサ装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05172187A JPH05172187A (ja) | 1993-07-09 |
JP3550156B2 true JP3550156B2 (ja) | 2004-08-04 |
Family
ID=18438081
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP35451591A Expired - Lifetime JP3550156B2 (ja) | 1991-12-20 | 1991-12-20 | パワープラントのバランサ装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3550156B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3731352B2 (ja) | 1998-06-25 | 2006-01-05 | 日産自動車株式会社 | パワープラントのバランサ装置 |
JP4753038B2 (ja) * | 2006-08-11 | 2011-08-17 | スズキ株式会社 | エンジンのバランサ装置 |
-
1991
- 1991-12-20 JP JP35451591A patent/JP3550156B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH05172187A (ja) | 1993-07-09 |
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