JPH04112931U - アンカーの引張材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 引張材の自由長部のグリースが定着長部側に
流れて硬化材との付着切れが生じるのを防ぎ、錆付きに
よる引張材の破断も防ぐ。 【構成】 鋼線２を複数本束にした引張材１の周囲に防
錆材３を被覆する。防錆材３としてはラッカーや、エポ
キシ樹脂のような合成樹脂系硬化材等が使用できる。被
覆は、溶けた自由長部内のグリース５が鋼線２同士の隙
間に入り込んで、それに伝って流れるのを防ぐ。また防
錆材３が錆付きによる引張材１の破断を防ぐ。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案はアンカーの引張材に関するものであり、特に定着長部での付着切れ の生じないアンカーの引張材に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

例えば法面上にコンクリート構造物を固定するための地山アンカーとして、図 ５に示すように複数本の鋼線ａを束ねた鋼より線を引張材ｂとして使用するアン カーが使用されている。引張材ｂの所望長さはアンボンドシースｃの中に挿通し 、この中に防錆グリースｄを充填して自由長部とする。これより先は剥出しにし て硬化材と付着させる定着長部とするものである。複数本をシースの中に通して 地山に形成した掘削孔内に配し、この掘削孔内に硬化材を充填して定着長部を定 着する。引張材の自由長部はアンボンドシースの中で自由に伸縮移動が可能であ り、プレストレス力を与えることを可能とするものである。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

このような引張材ｂには以下のような課題がある。 (ア) 引張材ｂを掘削孔内に配する前に現場に放置して置くことがあるが、この 間に自由長部が日照よって温められると、アンボンドシースｃ内のグリースｄが 溶けて定着長部側に流れ出してしまうことがあった。このようにグリースｄが付 いた引張材ｂを掘削孔に配して硬化材を充填しても、このグリースｄが硬化材と 引張材ｂとの付着を阻害して、付着切れを生じさせることがあった。グリースｄ の流れ出しが引張材の外表面側に現われていれば、視認して拭き取ることも可能 であるが、通常は図５のＺ部に示すように中心の鋼線ａとその周囲の鋼線ａとの 隙間を伝って流れ出るため、作業者が判らずそのまま掘削孔内に挿入してしまう ことが多くあった。

【０００４】 (イ) 現場に放置して置くと、剥出しになった引張材ｂの定着長部が錆びること があり、この錆によって引張材が破断してしまうことがあった。 (ウ) 引張材ｂを掘削孔内に定着してプレストレス力を与えると、大きなプレス トレス力によって引張材が絞られるように変形する。この変形によって周囲の硬 化材との付着が切れてしまうことがあった。

【０００５】 この考案は以上のような課題を解決するためになされたもので、引張材と硬化 材との付着切れが生じず、また引張材の破断も生じないアンカーの引張材を提供 することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

この考案にかかるアンカーの引張材は、引張材の外周に防錆材を被覆するもの である。この防錆材として、ラッカーなどの合成樹脂系の塗料を使用することが できる。またエポキシ樹脂のような合成樹脂系の硬化材を使用することもできる 。塗料などであれば、引張材の周囲に吹き付け塗装することができるし、硬化材 などであれば塗る、或いは含浸付着させることもある。

【０００７】 防錆材の被覆によって、中心の鋼線と周囲の鋼線との間の隙間にグリースが入 り込んだり、ここを伝って流れ出すことがない。防錆材が引張材の錆び付きを防 止する。防錆材が鋼線間の隙間を埋め、鋼線が大きく変形することが無くなり、 硬化材との付着切れもなくなる。

【０００８】

【実施例】

以下、図に示す一実施例に基づきこの考案を詳細に説明する。図４においてＡ はアンカーであって、法面上に載置したコンクリート構造物Ｂを固定するために 使用されている。アンカーＡは図３に示すように複数本の引張材１によって構成 されている。

【０００９】 引張材１には複数本の鋼線２を束ねて撚った鋼より線が使用されている。この 引張材１の周囲には防錆材３の被覆が施されている。防錆材３としては様々なも のが考えられるが、ラッカーなどの合成樹脂系塗料を吹き付けてもよく、またエ ポキシ樹脂などの合成樹脂系の硬化材を塗り付けたり、含浸させて被覆すること もある。防錆材３は鋼線２に充分被覆するもので、隣合う鋼線２間の隙間を埋め るようにする。図１及び図２に示すように、中心の鋼線２とその周囲の鋼線２に よって作られた隙間を防錆材３によって埋めることが最良であるが、周囲の鋼線 ２・２同士の隙間を防錆材３によって塞いで、前記中心の鋼線２と周囲の鋼線の 間にできた隙間にグリース５が浸入しないようにすればよい。

【００１０】 引張材１は自由長部と定着長部からなっており、引張材１の自由長部はアンボ ンドシース４の中に挿通してある。アンボンドシース４にはポリエチレン製シー スが使用されている。このアンボンドシース４の中には防錆用のグリース５が充 填してある。定着長部は防錆材３を被覆した状態で剥出しのままにしておく。

【００１１】 このような複数本の引張材１がシース６・７の中に挿通してある。引張材１の 自由長部は合成樹脂製のストレートシース６の中に通してあり、定着長部はステ ンレス製のワインデイング異形シース７の中に通してある。このように構成され たアンカーＡが地山に形成した掘削孔８内に配され、シース６・７の内外にセメ ントグラウト系硬化材９が充填され定着されている。引張材１にプレストレス力 を与えると、自由長部部分はアンボンドシース４の中で自由に伸長し、定着長部 部分は硬化材９との付着によって定着を確保する。

【００１２】

【考案の効果】

この考案は以上のような構成を有し、引張材の外周に防錆材の被覆をしたため 、グリースが中心の鋼線とその周囲の鋼線との間の隙間に入り込まず、ここを伝 ってグリースが定着長部側に流れることがない。したがって作業者の知らぬ間に グリースが定着長部に流れて硬化材との付着を阻害するなどというようなことが 発生しない。外周に被覆した防錆材によって錆び付きが防止でき、引張材の破断 が生じるのを防ぐ。防錆材が鋼線間の隙間を埋めているため、プレストレス力を 与えたときの引張材の変形が小さく、付着切れの発生も小さい。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案にかかるアンカーの引張材を示すもの
で、図３のＸ部拡大断面図である。

【図２】図３のＹ部拡大断面図である。

【図３】アンカーの一部断面図である。

【図４】アンカーの使用状態を示す説明図である。

【図５】従来のアンカーの引張材の断面図である。

【符号の説明】

１ 引張材 ２ 鋼線 ３ 防錆材 ４ アンボンドシース ５ グリース ６ ストレートシース ７ ワインデイング異形シース ８ 掘削孔 ９ セメントグラウト系硬化材 Ａ アンカー Ｂ コンクリート構造物

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 地表から所要長さはアンボンドシースの
   中に挿通し、そのアンボンドシースの中に防錆グリース
   を充填して自由長部とし、それよりも掘削孔底部側は剥
   き出しにして掘削孔内に充填した硬化材と付着させて定
   着長部とするアンカーの引張材において、その外周に
   は、防錆材を被覆したことを特徴とするアンカーの引張
   材。
2. 【請求項２】 防錆材としてラッカーを使用したことを
   特徴とする請求項１記載のアンカーの引張材。
3. 【請求項３】 防錆材として合成樹脂硬化材を使用した
   ことを特徴とする請求項１記載のアンカーの引張材。