JPH038418Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 本考案は、弾性係数、曲げ強度の相異する繊維
から成る２種のプリプレーグシートを接続して形
成した管状体に係り、特に釣竿に好適な複合体に
関する。 （従来の技術） 近年、炭素繊維或いはガラス維を用いた釣竿は
常用されている。これら釣竿は炭素繊維或いはガ
ラス繊維等の繊維を引揃えて例えばエポキシ樹脂
のような熱硬化性樹脂を含浸させてプリプレーグ
シートを作製し、このプリプレーグシートを繊維
の引揃え方向を軸として捲回して管状体となし、
これに加熱処理を施したものである。そして自然
竹のように細径の先端から根元に至るまで次第に
径が増加し全体として自然な撓みを備えるものが
最適とされて来た。 しかし前記炭素繊維或いはガラス繊維を用いた
釣竿はその先端から根元まで同一材で構成されて
いるため、炭素繊維のように曲げ剛性が大きいも
のにあつては、竿全体の剛性が高められて先端に
自然な撓みが得られず所謂アタリの感度が低下す
る問題がある。またガラス繊維のように曲げ剛性
が小さいものにあつては、先端に自然な撓みが与
えられ所謂アタリの感度は低下することなく好適
であるが竿全体の剛性が低下して竿全体が大きく
曲がつて取扱いが悪いという不都合が生じる。 また第８図示のように釣竿の先端側の竿杆ａに
例えばガラス繊維を用い、根元側の竿杆ｂに例え
ば炭素繊維を用い、両竿杆ａ，ｂの接続部ｃに両
竿杆ａ，ｂの夫々に亘る筒状或いは棒状の接続部
材ｄを内嵌して接続した継竿は知られている。こ
のような構成によるときは、先端側の竿杆ａと根
元側の竿杆ｂとの接続部ｃは曲げ強度が極端に異
なるため先端側の竿杆ａは曲がるが、根元側の竿
杆ｂは曲がらないという現象が生じて接続部ｃに
無理な力が掛り、ときには接続部ｃが破損するこ
ともあり、到底釣竿全体に自然な撓みは求められ
なかつた。 （考案が解決しようとする問題点） 本考案はかかる従来の不都合を解消し、接続部
が破損することなく全体に亘つて自然竹のような
全体として自然な撓みを備える複合管状体を提供
しようとするものである。 （問題点を解決するための手段） 本考案は前記問題点を解消するためになされた
ものであつて、炭素繊維を引揃えて熱硬化性樹脂
を含浸させて形成したカーボンプリプレーグシー
トの繊維の引揃え方向に交叉する方向の一側縁
に、ガラス繊維を引揃えまたは織り込んで熱硬化
性樹脂を含浸させて形成したガラスプリプレーグ
シートの一側縁を突き合せた接続部を設け、該接
続部に両シートの中央を通る繊維の引揃え方向に
対して25度ないし70度の角度を与え、両シートを
繊維の引揃え方向を軸として捲回して管状体とし
たとき接続部を螺施条に形成したことを特徴とす
る。 （実施例） 以下本考案を図面により説明する。 第１図ないし第５図は本考案実施の１例を示す
ものである。 図面で、１は第１図示のように多数の炭素繊維
１ａを引揃えて例えばエポキシ樹脂のような熱硬
化性樹脂を含浸させて形成した曲げ強度115Kg／
mm²（熱処理後の強度）のカーボンプリプレーグシ
ート、２は第１図示のように多数のガラス繊維２
ａを織り込んだ織布にエポキシ樹脂のような熱硬
化性樹脂を含浸させて形成した曲げ強度60Kg／mm
^２（熱処理後の強度）のガラスプリプレーグシート
である。 そして第１図示のようにカーボンプリプレーグ
シート１の繊維１ａの引揃え方向Ａに交叉する方
向の一側縁３に、ガラスプリプレーグシート２の
一側縁４を突き合せて接続部５を設けた。また接
続部５近傍における両プリプレーグシート１，２
の曲げ剛性の著しい差異を解消するために、カー
ボンプリプレーグシート１の一側縁３のなす角度
θを両プリプレーグシート１，２の中央を通る繊
維１ａ，２ａの引揃え方向Ａに対して25度ないし
70度の範囲とした。即ちカーボンプリプレーグシ
ート１の一側縁３のなす角度θが25度未満の場合
はカーボンプリプレーグシート１の線膨張係数
（係数値＝０）とガラスプリプレーグシート２の
線膨張係数（係数値＝0.32×10^-5／℃）とが顕著
に異なるため両プリプレーグシート１，２に含浸
せる熱硬化性樹脂を硬化させる際の熱処理によつ
て歪が生じ接続部５が変形し大きく曲る。また角
度θが70度を超えた場合は接続部５の曲げ剛性、
曲げ強度はその強度が低いガラスプリプレーグシ
ート２と同程度しか得られず従つてカーボンプリ
プレーグシート１の曲げ剛性、曲げ強度との差異
は顕著となつて大きく曲り易くなりときには接続
部５が破損する。 また図示例においては第２図示のように両プリ
プレーグシート１，２の接続部５の上下の夫々の
面に両プリプレーグシート１，２に亘つて例えば
カーボン又はガラススクリムのような補強被膜６
を貼着して接続した。 そして両一側縁３，４を角度25度ないし70度の
範囲で突き合せした接続状態の両プリプレーグシ
ート１，２を第３図示のように芯金７に繊維１ａ
の引揃え方向Ａを軸となるように両プリプレーグ
シート１，２の側端８より捲き回して管状に形成
し、更に熱処理を施して両プリプレーグシート
１，２内に含浸せる熱硬化性樹脂を硬化させ芯金
７を抜き取り第４図および第５図示のように管状
体９を形成すると共に、接続部５は第４図示のよ
うに螺施条に形成した。 従つて両プリプレーグシート１，２を捲き回し
て形成された管状体９はその接続部５においてカ
ーボンプリプレーグシート１とガラスプリプレー
グシート２との比率がカーボンプリプレーグシー
ト１側ではカーボンプリプレーグシート１が高
く、ガラスプリプレーグシート２側に近くなる程
次第に低くなり逆にガラスプリプレーグシート２
の比率が高まる。それに伴つて接続部５の曲げ強
度もその剛性が高いカーボンプリプレーグシート
１側からその剛性が低いガラスプリプレーグシー
ト２側に亘つて徐々に低減しているため接続部５
が破損することなく、管状体９全体に自然の撓み
が得られる。よつて釣竿として用いたときは所謂
アタリ感度が低下しない先端と剛性の高い根元と
を備える自然竹と同様な効果が得られる。 次に炭素繊維を引揃えてエポキシ樹脂を含浸さ
せて形成した厚さ0.16mm、目付120ｇ／m²、シー
ト寸法幅50mm、長さ300mmのカーボンプリプレー
グシート１と、品番＃182のガラス繊維を織り込
んだ織布にエポキシ樹脂を含浸させて形成した厚
さ0.18mm、目付220ｇ／m²、シート寸法幅50mm、
長さ300mmのガラスプリプレーグシート２とを用
い、第６図示のように両一側縁３，４の接続部５
における両プリプレーグシート１，２のラツプ幅
Ｗ（即ち接続部５の角度θ）を種々変えて接続し
外径2.8mmφの芯金に捲回し管状となし熱処理
（温度130℃、時間1.5時間）を施して熱硬化し内
径2.8mmφ、外径4.0mmφ、長さ600mmの管状体９
を形成し、夫々の管状体について曲げ強度、曲り
について調べた結果は表の通りである。

【表】 表に示すように本考案の実施例１，２，３，４の
曲げ強度は両プリプレーグシートの曲げ強度の中
間領域内に入つているため優れた曲げ強度と、荷
重が除かれたときに優れた復元力とを備えている
ことが確認された。従つて全体として自然竹のよ
うな自然な撓みを備える釣竿として用いることが
出来る。 これに対して両プリプレーグシートのラツプ幅
が狭い即ち接続部の角度が78度と急傾斜の比較例
１の曲げ強度はガラスプリプレーグシートの曲げ
強度とほぼ同等であつて接続部に破損を生じた。
また両プリプレーグシートのラツプ幅が広い即ち
接続部の角度が11度と緩傾斜の比較例２の曲げ強
度は両プリプレーグシートの曲げ強度の中間領域
内にあるものの復元力がなく実用性に適しない。 図示例でガラスプリプレーグシートにガラス繊
維を織り込んだ織布を用いたが、カーボンプリプ
レーグシートと同様にガラス繊維を引揃えてこれ
に熱硬化性樹脂を含浸させて形成したシートであ
つても良い。 （考案の効果） このように本考案によるときは、炭素繊維を引
揃えて熱硬化性樹脂を含浸させて形成したカーボ
ンプリプレーグシートの繊維の引揃え方向に交叉
する方向の一側縁に、ガラス繊維を引揃えまたは
織り込んで熱硬化性樹脂を含浸させて形成したガ
ラスプリプレーグシートの一側縁を突き合せた接
続部を設け、該接続部に両シートの中央を通る繊
維の引揃え方向に対して25度ないし70度の角度を
与え、両シートを繊維の引揃え方向を軸として捲
回して管状体としたとき接続部を螺施条に形成し
た。従つて、カーボンプリプレーグシートの一側
縁に、ガラスプリプレーグシートの一側縁を突き
合せた接続部のなす角度を両シートを通る中央の
繊維の引揃え方向に対して25度ないし70度で与
え、更に両シートを繊維の引揃え方向を軸として
捲回して形成した管状体の接続部は螺施条に形成
されているため、管状体の接続部における両プリ
プレーグシート中のカーボンプリプレーグシート
の比率がカーボンプリプレーグシート側からガラ
スプリプレーグシート側に亘つて徐々に低減し、
それに伴つて曲げ強度もその剛性が高いカーボン
プリプレーグシート側からその剛性が低いガラス
プリプレーグシート側に亘つて徐々に低減するこ
ととなり、曲げ強度の顕著な差異が解消されるた
め接続部が破損することなく全体に亘つて自然竹
のような自然な撓みを備える複合管状体を提供す
るの効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第５図は本考案実施の１例を示す
もので、第１図は両プリプレーグシートの展開状
態を示す平面図、第２図はその側面図、第３図は
両プリプレーグシートを芯金に捲き回し状態を説
明するための正面図、第４図は本考案品の側面
図、第５図は第４図の−線拡大截断面図、第
６図および第７図は実施例および比較例の試験方
法を説明するための線図、第８図は従来品の截断
側面図である。 １……カーボンプリプレーグシート、２……ガ
ラスプリプレーグシート、１ａ，２ａ……繊維、
３……カーボンプリプレーグシートの一側縁、４
……ガラスプリプレーグシートの一側縁、５……
接続部、９……管状体、Ａ……引揃え方向、θ…
…角度。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 炭素繊維を引揃えて熱硬化性樹脂を含浸させて
   形成したカーボンプリプレーグシートの繊維の引
   揃え方向に交叉する方向の一側縁に、ガラス繊維
   を引揃えまたは織り込んで熱硬化性樹脂を含浸さ
   せて形成したガラスプリプレーグシートの一側縁
   を突き合せた接続部を設け、該接続部に両シート
   の中央を通る繊維の引揃え方向に対して25度ない
   し70度の角度を与え、両シートを繊維の引揃え方
   向を軸として捲回して管状体としたとき接続部を
   螺施条に形成したことを特徴とする複合管状体。